説明

ガス燃焼機器の火力調節装置

【課題】火力調節操作具の位置を分かり易くするためにクリック感を付与する構造の簡素化を図ることができるガス燃焼機器の火力調節装置を提供する。
【解決手段】バーナに供給するガス量を調整する往復移動式の弁体と往復移動操作式の火力調節操作具8Aとを連係するカム式連係機構45を構成する部材として、火力調節操作具8Aの往復移動操作により発生する押付け力にて摺動面Fに押付けられた状態で火力調節操作具8Aの往復移動操作により往復移動する可動体43が設けられ、摺動面Fにおける火力調節操作具8Aが火力調節用移動範囲の特定位置Wに位置するときに可動体43が位置する箇所に、可動体43が入り込むことによりクリック感を付与するクリック感付与用の凹部Zが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナに供給するガス量を調整する往復移動式の弁体と往復移動操作式の火力調節操作具とが、前記火力調節操作具の往復移動操作により前記弁体を往復移動させるようにカム式連係機構により連係されたガス燃焼機器の火力調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかるガス燃焼機器の火力調節装置は、火力調節操作具の往復移動操作により弁体を移動させて、バーナの火力を調節できるようにしたものである。
このように火力調節操作具を移動させてバーナの火力を調節するにあたり、火力調節操作具がその火力調節用移動範囲のうちのどこの位置に位置するか、つまり、火力調節操作具がどのような火力を調節する位置であるかが分かり易いことが望まれるものとなる。
【0003】
このような要望を満足させるために、従来では、バネにて突出付勢された係合体が、火力調節操作具がその火力調節用移動範囲のうちの中間位置に位置すると係合する凹部を設けて、係合体が凹部に入り込むことによりクリック感を付与することが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
尚、係合体と凹部とは、火力調節操作具又はそれと一体移動する部材と、火力調節操作具の移動に拘わらず一定位置に位置する部材とに振り分けて設けることになり、そして、凹部の設置数は、火力調節操作具の特定の1つの位置を分かり易くするために1つだけ設けてもよいが、火力調節操作具の複数の位置を分かり易くするために複数個設けてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−340432号公報(第8頁、図15)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のガス燃焼機器の火力調節装置においては、火力調節操作具の位置を分かり易くするためにクリック感を付与するにあたり、バネにて突出付勢された係合体を用いるものであるため、係合体をバネの付勢力にて移動するように支持しなければならないことや、その係合体を付勢するバネを設けなければならないことに起因して、クリック感を付与するための構造が複雑化する不利があり、改善が望まれている。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、火力調節操作具の位置を分かり易くするためにクリック感を付与する構造の簡素化を図ることができるガス燃焼機器の火力調節装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガス燃焼機器の火力調節装置は、バーナに供給するガス量を調整する往復移動式の弁体と往復移動操作式の火力調節操作具とが、前記火力調節操作具の往復移動操作により前記弁体を往復移動させるようにカム式連係機構により連係されたものであって、その第1特徴構成は、
前記カム式連係機構を構成する部材として、前記火力調節操作具の往復移動操作により発生する押付け力にて摺動面に押付けられた状態で前記火力調節操作具の往復移動操作により往復移動する可動体が設けられ、
前記摺動面における前記火力調節操作具が火力調節用移動範囲の特定位置に位置するときに前記可動体が位置する箇所に、前記可動体が入り込むことによりクリック感を付与するクリック感付与用の凹部が設けられている点を特徴とする。
【0008】
すなわち、火力調節操作具が往復移動操作されると、その操作により発生する押付け力にて可動体が摺動面に押付けられた状態で往復移動することになり、そして、火力調節操作具が火力調節用移動範囲の特定位置に位置すると、可動体が摺動面に設けたクリック感付与用の凹部に入りこむことによって、火力調節操作具を持つ操作者の手にクリック感が与えられることになり、操作者は、火力調節操作具が火力調節用移動範囲の特定位置に位置するものであることが分かるものとなる。
【0009】
そして、カム式連係機構を構成する部材としての、火力調節操作具の往復移動操作により発生する押付け力にて摺動面に押付けられた状態で火力調節操作具の往復移動操作により往復移動する可動体に着目して、その可動体が押し付けられた状態で移動する摺動面にクリック感付与用の凹部を設けることにより、火力調節操作具を持つ操作者の手にクリック感を与えるものであるから、クリック感を与えるために特別な付勢機構等を用いずに、単に摺動面にクリック感付与用の凹部を設けるだけで良いため、簡素な構造にて、火力調節操作具の位置を分かり易くするためにクリック感を付与することができる。
【0010】
説明を加えると、往復移動式の弁体と往復移動操作式の火力調節操作具とを、火力調節操作具の往復移動操作により弁体を往復移動させるようにカム式連係機構にて連係する場合には、カム式連係機構によるカム操作の反力を受けることが必要になるため、カム式連係機構を構成する部材として、摺動面に火力調節操作具の往復移動操作により発生する押付け力にて押付けられた状態で、火力調節操作具の往復移動操作により往復移動する可動体が存在することになる。そこで、その可動体及びその可動体が押し付けられる摺動面を有効利用することにより、簡素な構造にて、火力調節操作具の位置を分かり易くするためにクリック感を付与することができるのである。
【0011】
要するに、本発明の第1特徴構成によれば、火力調節操作具の位置を分かり易くするためにクリック感を付与する構造の簡素化を図ることができるガス燃焼機器の火力調節装置を提供できる。
【0012】
本発明の第2特徴構成は、上記した第1特徴構成に加えて、
前記摺動面としての、前記弁体を火力減少側に移動させるときに前記可動体が摺動する火力減少側の摺動面と、前記弁体を火力増大側に移動させるときに前記可動体が摺動する火力増大側の摺動面とのうちの一方に、前記クリック感付与用の凹部が設けられている点を特徴とする。
【0013】
すなわち、可動体が摺動する摺動面としては、弁体を火力減少側に移動させるときに可動体が摺動する火力減少側の摺動面と、弁体を火力増大側に移動させるときに可動体が摺動する火力増大側の摺動面とが存在するが、それらの摺動面のうちの一方の摺動面に、クリック感付与用の凹部が設けられるため、火力調節操作具をその火力調節用移動範囲の特定位置に操作したときに、火力を同じ状態に操作し易いものとなる。
【0014】
説明を加えると、可動体が摺動する摺動面としての、火力減少側の摺動面と火力増大側の摺動面とのいずれにも、火力調節操作具の火力調節用移動範囲の特定位置に対応させてクリック感付与用の凹部を設けることが考えられるが、カム式連係機構中に存在するガタ等の影響により、火力調節操作具をその火力調節用移動範囲の特定位置に操作したときに、火力調節操作具を火力減少側に向けて移動させた場合と、火力調節操作具を火力増大側に移動させた場合とでは、弁体の位置が異なるものとなる、いわゆるヒステリシスが発生する虞がある。
【0015】
このため、火力減少側の摺動面と火力増大側の摺動面とのいずれにも、火力調節操作具の火力調節用移動範囲の特定位置に対応させてクリック感付与用の凹部を設けると、火力調節操作具をその火力調節用移動範囲の特定位置に操作したときに、火力調節操作具を火力減少側に向けて移動させた場合と、火力調節操作具を火力増大側に移動させた場合とで異なる火力になる不都合を招く虞があるが、火力減少側の摺動面と火力増大側の摺動面とのうちの一方にクリック感付与用の凹部を設けることにより、火力調節操作具をその火力調節用移動範囲の特定位置に操作したときに、火力を同じ状態に操作できるものとなるのである。
【0016】
ちなみに、火力減少側の摺動面と火力増大側の摺動面とのうちの一方にクリック感付与用の凹部を設けた場合においては、必要に応じて一旦特定位置を越えるように火力調節操作具を操作したのち、火力調節操作具を特定位置に向けて操作する必要がある。
つまり、例えば火力減少側の摺動面にクリック感付与用の凹部を設けた場合においては、火力調節操作具を火力減少側に操作するときにのみクリック感が付与されることになるため、現在の火力調節操作具の位置が特定位置よりも火力減少側の位置にあるときには、一旦特定位置を越える位置まで火力調節操作具を火力増大側に操作したのち、火力調節操作具を火力減少側に操作する必要がある。
【0017】
これとは逆に、例えば火力増大側の摺動面にクリック感付与用の凹部を設けた場合においては、火力調節操作具を火力増大側に操作するときにのみクリック感が付与されることになるため、現在の火力調節操作具の位置が特定位置よりも火力増大側の位置にあるときには、一旦特定位置を越える位置まで火力調節操作具を火力減少側に操作したのち、火力調節操作具を火力増大側に操作する必要がある。
【0018】
尚、特定位置として、異なる位置となる複数の特定位置を設ける場合においては、それら複数の特定位置の全てに対応するクリック感付与用の凹部を、火力減少側の摺動面と火力増大側の摺動面とのいずれか一方に集中して設ける必要はなく、複数の特定位置に対応する複数のクリック感付与用の凹部を、火力減少側の摺動面と火力増大側の摺動面とに分散して設けることができるものである。
つまり、ひとつの特定位置についてのクリック感付与用の凹部を、火力減少側の摺動面と火力増大側の摺動面とのいずれか一方に設けるようにすれば良い。
【0019】
要するに、本発明の第2特徴構成によれば、上記した第1特徴構成による作用効果に加えて、火力調節操作具を火力調節用移動範囲の特定位置に操作したときに、火力を同じ状態に操作できるガス燃焼機器の火力調節装置を提供できる。
【0020】
本発明の第3特徴構成は、上記した第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、
前記弁体がスライド式の弁体であり、前記火力調節操作具が揺動式のレバー状に構成され、
前記弁体に、前記火力調節操作具の揺動軸心方向と並行な方向に向ける状態で被操作ピンが付設され、かつ、前記火力調節操作具に、前記被操作ピンが挿入するカム操作孔が設けられて、前記カム式連係機構が構成され、
前記被操作ピンを前記可動体とし、前記被操作ピンが摺動する前記カム操作孔の内面を前記摺動面とするように構成されている点を特徴とする。
【0021】
すなわち、弁体としてスライド式弁体が用いられる場合には、火力調節操作具を揺動式のレバー状に構成して、火力調節操作具の揺動軸心方向と並行な方向に向ける状態で弁体に付設した被操作ピンを、火力調節操作具に設けたカム操作孔に挿入させることにより、被操作ピン及びカム操作孔を主要部とした、簡素な構成のカム式連係機構を構成することができる。
【0022】
このようにカム式連係機構を構成する場合においては、被操作ピンが、火力調節操作具の往復移動操作により発生する押付け力にてカム操作孔の内面に押付けられた状態で火力調節操作具の往復移動操作により往復移動するものとなるから、被操作ピンを可動体とし、被操作ピンが摺動するカム操作孔の内面を摺動面として、クリック感付与用の凹部を、カム操作孔の内面に設けることにより、火力調節操作具の位置を分かり易くするためにクリック感を付与することができる。
【0023】
そして、火力調節操作具に形成されるカム操作孔の内面にクリック感付与用の凹部を設けているため、被操作ピンがクリック感付与用の凹部に入り込むことにより発生するクリック感が、火力調節操作具に直接的に付与されるため、火力調節操作具を支持して操作している操作者に対して、十分なクリック感を付与し易いものとなる。
【0024】
要するに、本発明の第3特徴構成によれば、上記第1特徴構成又は第2特徴構成による作用効果に加えて、カム式連係機構の簡素化を図り、しかも、火力調節操作具を支持して操作している操作者に対して、十分なクリック感を付与し易いものとなる組ガス燃焼機器の火力調節装置を提供できる。
【0025】
本発明の第4特徴構成は、上記した第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、
前記弁体がスライド式の弁体であり、前記火力調節操作具が揺動式のレバー状に構成され、
前記弁体に、前記火力調節操作具の揺動軸心方向と並行な方向に向ける状態で被操作ピンが付設され、且つ、前記火力調節操作具に、前記被操作ピンが挿入するカム操作孔が設けられて、カム式連係機構が構成され、
前記弁体がそのスライド方向に沿う軸心周りで回転自在に弁ケーシングに支持され、且つ、前記被操作ピンを前記弁体のスライド方向に案内するスリット溝が前記弁ケーシングに設けられ、
前記被操作ピンを前記可動体とし、前記被操作ピンが摺動する前記スリット溝の内面を前記摺動面とするように構成されている点を特徴とする。
【0026】
すなわち、弁体としてスライド式弁体が用いられる場合には、火力調節操作具を揺動式のレバー状に構成して、火力調節操作具の揺動軸心方向と並行な方向に向ける状態で弁体に付設した被操作ピンを、火力調節操作具に設けたカム操作孔に挿入させることにより、被操作ピン及びカム操作孔を主要部とした、簡素な構成のカム式連係機構を構成することにより、カム式連係機構の簡素化を図れるものとなる。
【0027】
このようにカム式連係機構を構成する場合においては、カム操作孔にて被操作ピンを押圧したときに、弁体に対してスライド方向に沿う軸心周りで回転させようとする力が作用するものとなるが、本特徴構成においては、弁体をそのスライド方向に沿う軸心周りで回転自在に支持して、被操作ピンを弁体ケーシングに設けたスリット溝にて案内することにより、つまり、被操作ピンが弁体のスライド方向に沿う軸心周りで回転することを阻止するように、被操作ピンをスリット溝にて受止めることにより、弁体がそのスライド方向に沿う軸心周りで回転することを阻止するものである。
【0028】
このようにカム式連係機構を構成するために設けられている被操作ピンを有効利用して、弁体がそのスライド方向に沿う軸心周りで回転することを阻止するものであるから、例えば、弁体の少なくとも一部に角軸状部を形成して、弁体が挿通する孔を、角軸状部が嵌合する角筒状の孔に形成して、弁体がそのスライド方向に沿う軸心周りで回転することを阻止する等の回転止め構造を用いるに比べて、弁体を円柱状に形成して、その弁体が挿通する孔を円筒状に形成することができるため、弁体の装着構成の簡素化を図れるものとなる。
【0029】
弁体に設けた被操作ピンをスリット状溝にて案内する場合には、被操作ピンが、火力調節操作具の往復移動操作により発生する押付け力にてスリット状溝の内面に押付けられた状態で火力調節操作具の往復移動操作により往復移動するものとなるから、被操作ピンを可動体とし、被操作ピンが摺動するスリット状溝の内面を摺動面として、クリック感付与用の凹部を、スリット状溝の内面に設けることにより、火力調節操作具の位置を分かり易くするためにクリック感を付与することができる。
【0030】
そして、弁体に付設された被操作ピンを弁体のスライド方向に案内するスリット溝の内面にクリック感付与用の凹部を設けているため、つまり、弁体を支持する弁体ケーシングにクリック感付与用の凹部が形成するものであるため、クリック感を付与すべき火力に相当する位置に弁体が位置するときに、被操作ピンがクリック感付与用の凹部に入り込むことが、火力調節操作具のガタ付きなどの経年変化に拘わらず、長期感に亘って的確に行われるものとなり、火力調節操作具にクリック感が付与されたときの火力が長期間に亘って安定する結果、火力調節操作具にて必要とする火力に的確に調節できる。
【0031】
要するに、本発明の第4特徴構成によれば、上記第1特徴構成又は第2特徴構成による作用効果に加えて、カム式連係機構の簡素化並びに弁体の装着構成の簡素化を図ることができ、しかも、火力調節操作具にて必要とする火力に的確に調節できるガス燃焼機器の火力調節装置を提供できる。
【0032】
本発明の第5特徴構成は、上記第1〜第4特徴構成のいずれかに加えて、
前記バーナを点火する点火用操作具が点火操作されたときに前記火力調節操作具を点火用位置に操作する操作手段が設けられ、
前記火力調節操作具の火力調節用移動範囲における前記特定位置を、前記点火用位置とは異なる位置として、前記クリック感付与用の凹部が設けられている点を特徴とする。
【0033】
すなわち、バーナを点火する点火用操作具を点火操作すると、火力調節操作具が点火位置に操作されるため、バーナに供給するガス量を点火に適した量にした状態で、バーナを良好に点火できるものとなる。
そして、バーナの点火の後で、火力調節操作具を特定位置に操作することを、火力調節操作具の位置を分かり易くするためのクリック感が付与されることにより、的確に行えるものとなる。
【0034】
説明を加えると、火力調節用移動範囲の特定位置は、火力調節操作具を操作する頻度が高い位置や火力調節操作具を火力調節のために的確に位置させる必要がある位置等、使用状況に基づいて定められことになるが、火力調節操作具の点火位置は、その火力調節用移動範囲においてバーナの点火を良好に行わせるための位置として定められるため、特定位置と点火用位置とが異なることになるが、バーナの点火の後で、火力調節操作具を特定位置に操作することを、火力調節操作具の位置を分かり易くするためにクリック感を付与することにより、的確に行える。
【0035】
要するに、本発明の第5特徴構成によれば、上記第1〜第4特徴構成による作用効果に加えて、バーナの点火の後で、火力調節操作具を特定位置に操作することを的確に行えるガス燃焼機器の火力調節装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】コンロの斜視図
【図2】ガス燃料の流路構成を示す概略図
【図3】コンロバーナを示す縦断側面図
【図4】閉じ状態のコンロ用器具栓を示す縦断側面図
【図5】点火状態のコンロ用器具栓を示す縦断側面図
【図6】開き状態のコンロ用器具栓を示す縦断側面図
【図7】コンロ用器具栓の平面図
【図8】コンロ用火力調節具と弁体との連係を示す平面図
【図9】制御構成を示すブロック図
【図10】コンロ用器具栓に追加電磁弁を装備した縦断側面図
【図11】コンロ用器具栓に追加電磁弁を装備した場合の回路図
【図12】コンロ用器具栓に追加電磁弁及び閉止体を装備した縦断側面図
【図13】コンロ用器具栓に追加電磁弁及び閉止体を装備した場合の回路図
【図14】別実施形態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0037】
〔実施形態〕
本発明にかかるガス燃焼機器の火力調節装置を、ガス燃焼機器の一例としてのガスコンロに適用した場合の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、例示するガスコンロは、2つのコンロバーナ1A、1Bを備えるコンロ部、及び、グリルバーナ2(図2参照)を装備するグリル部Gを備え、そして、キッチンカウンターに組み込まれるビルトインタイプに構成されている。
【0038】
ガスコンロの上面は、ガラス製のトッププレート3にて覆われ、ガスコンロの上面の後部側には、グリル部Gの燃焼排ガスを排気するためのグリル排気口4が形成されている。
2つのコンロバーナ1A、1Bの夫々にて加熱される鍋等の被加熱物を載置するための五徳5A、5Bが、トッププレート3の上部に設けられている。
【0039】
ガスコンロの前面には、2つのコンロバーナ1A、1Bに対する点火及び消火を指令する押し操作式の一対のコンロ用操作具6A、6B、グリルバーナ2に対する点火及び消火を指令する押し操作式のグリル用操作具7、2つのコンロバーナ1A、1Bの火力を調節する一対のコンロ用火力調節具8A、8B、及び、グリルバーナ2の火力を調節するグリル用火力調節具9が設けられ、加えて、調理情報等の種々の情報を入力するためのコンロ用設定操作部10及びグリル用設定操作部11が設けられている。
尚、ガスコンロの前面には、電池収納部を開閉する電池収納用開閉蓋12が設けられている。
【0040】
図2に示すように、都市ガス等の燃料ガスが供給される元ガス供給路15に、一対のコンロバーナ1A、1Bに対するコンロ用分岐路16A、16B、及び、グリルバーナ2に対するグリル用分岐路17が接続されている。
そして、一対のコンロ用分岐路16A、16Bの夫々には、コンロ用器具栓19が配設され、グリル用分岐路17には、グリル用器具栓20が配設されている。
尚、グリルバーナ2は、一般に、被加熱物を上方から加熱する上バーナと被加熱物を下方から加熱する下バーナとを備えさせることになり、本実施形態においても、上バーナと下バーナとを備えさせるものであるが、図2においては、上バーナのみを記載して、下バーナの記載を省略し、それに合わせて、グリル用器具栓20についても、下バーナに対する部分を省略して記載している。
【0041】
コンロ用器具栓19は、コンロ用操作具6A、6Bの背部箇所に配設され、そして、コンロ用操作具6A、6Bの点火操作によりコンロバーナ1A、1Bへ燃料を供給する状態に操作され、コンロ用操作具6A、6Bの消火操作によりコンロバーナ1A、1Bへの燃料供給を停止する状態に操作され、コンロ用火力調節具8A、8Bの操作や後述する制御部H(図9参照)の指令(操作)にてコンロバーナ1A、1Bへの燃料供給量を調節するように操作され、加えて、制御部Hの指令(操作)によってコンロバーナ1A、1Bへの燃料供給を停止する状態に操作されるように構成されている。
【0042】
グリル用器具栓20は、グリル用操作具7の背部箇所に配設され、そして、グリル用操作具7の点火操作によりグリルバーナ2へ燃料を供給する状態に操作され、グリル用操作具7の消火操作によりグリルバーナ2への燃料供給を停止する状態に操作され、グリル用火力調節具9の操作や制御部Hの指令(操作)にてグリルバーナ2への燃料供給量を調節するように操作され、加えて、制御部Hの指令(操作)にてコンロバーナ1A、1Bへの燃料供給を停止する状態に操作されるように構成されている。
【0043】
図2及び図3に示すように、2つのコンロバーナ1A、1B及びグリルバーナ2の夫々に対して、点火用の点火プラグP、熱電対等を用いて構成される着火状態検出用の着火センサRが装備されている。
尚、グリルバーナ2は、上述の如く、上バーナと下バーナとを備えさせる場合には、夫々のバーナに対して、点火プラグP及び着火センサRが装備されることになる。
【0044】
また、2つのコンロバーナ1A、1Bの夫々に対して、鍋等の被加熱物の存否を検出し且つその温度を検出する被加熱物検出センサSが装備されている。
この被加熱物検出センサSは、上下方向に伸縮自在でかつ上方に復帰付勢された伸縮体S1を備えて、この伸縮体S1が被加熱物に押されて下方に移動したことを伸縮検知部S2にて検出することにより被加熱物の存在を検出するように構成され、また、伸縮体S1の上端部に設けた温度検知部S3が、被加熱物に接触してその温度を検出するように構成されている。
【0045】
図9に示すように、マイクロコンピュータを備えて構成されて、ガスコンロの運転を制御する制御部Hが設けられている。
すなわち、この制御部Hは、コンロ用操作具6A、6Bやグリル用操作具7の点火操作に基づいて、コンロバーナ1A、1Bやグリルバーナ2に対する点火プラグPを作動させ且つ着火センサRにて着火を検出する点火処理、コンロ用操作具6A、6Bやグリル用操作具7の消火操作に基づいて、コンロ用器具栓19やグリル用器具栓20に装備された安全弁24(図2参照)を閉じ操作して、コンロバーナ1A、1Bやグリルバーナ2への燃料の供給を停止する消火処理、及び、コンロバーナ1A、1Bやグリルバーナ2の燃焼中において着火センサRにて着火が検出されなくなると、上記したコンロ用器具栓19やグリル用器具栓20に装備された安全弁24を閉じ操作して、コンロバーナ1A、1Bやグリルバーナ2への燃料の供給を停止する非常停止処理を実行することになる。
【0046】
さらに、制御部Hは、コンロ用設定操作部10の設定情報や被加熱物検出センサSの検出情報等に基づいて、上記したコンロ用器具栓19に装備した電磁弁26(図2参照)や安全弁24を操作して、コンロバーナ1A、1Bに対する燃料供給量の調整やコンロバーナ1A、1Bへの燃料供給を停止する自動調理処理、及び、被加熱物検出センサSにて異常な高温が検出されると、コンロ用器具栓19に装備された安全弁24を閉じ操作して、コンロバーナ1A、1Bへの燃料の供給を停止する異常停止処理を実行し、さらに、グリル用設定操作部11の設定情報等に基づいて、グリル用器具栓20に装備した火力調節用の火力調節用の電磁弁26(図2参照)や安全弁24を操作して、グリルバーナ2に対する燃料供給量の調整やグリルバーナ2に対する燃料供給を停止する自動グリル処理等の各種の処理を実行するように構成されている。
【0047】
制御部Hが実行する自動調理処理としては、変更設定された設定時間が経過すると自動的に消火するタイマ運転処理、被加熱物検出センサSにて検出される温度が変更設定される目標温度に維持するように火力を大小に調整する揚げもの運転処理、被加熱物検出センサSにて検出される温度が沸騰を検出すると消火する湯沸し運転処理、及び、運転開始からの時間経過に伴って火力を設定パターンにて変更させる炊飯運転処理等がある。
【0048】
次に、ガスコンロの詳細について説明を加えるが、一対のコンロバーナ1A、1Bの夫々について装備されるコンロ用器具栓19は、同じ構造であり、かつ、グリルバーナ2について装備されるグリル用器具栓20は、コンロ用器具栓19と同様な構造であり、そして、コンロ用器具栓19及びグリル用器具栓20の操作構成も同様であるので、以下、左側のコンロバーナ1Aについて装備されるコンロ器具栓19を代表して説明して、右側のコンロバーナ1Bに対するコンロ用器具栓19及びグリル用器具栓20については、左側のコンロバーナ1Aについて装備されるコンロ器具栓19について記載する符合と同じ符合を図面に記載することにより、その説明を省略する。
【0049】
図2及び図4〜図6に示すように、コンロ用器具栓19は、本体ケーシング22の内部に、コンロ用操作具6Aにて開閉操作されるメイン弁23、閉状態に弾性付勢された電磁操作式の安全弁24、コンロ用火力調節具8Aにて操作されるニードル式の流量調整弁25、及び、火力調節用の電磁弁26を組み込んで構成されている。
そして、メイン弁23及び安全弁24を備える本流路28に対して、流量調整弁25及び電磁弁26を備える主流路29Aと、小火用オリフィス27を備える分岐流路29Bとが、並列状態で接続されており、電磁弁26の開状態では、ガス燃料が主流路29A及び分岐流路29Bを通して流動し、電磁弁26の閉状態では、ガス燃料が分岐流路29Bを通して流動するように構成されている。
【0050】
ちなみに、制御部Hは、自動調理処理を実行するときに、火力調節用の電磁弁26を開閉操作することにより、大火力状態と小火力状態とに切換えることになる。
そして、大火力状態における火力は、流量調整弁25の流量調整によって変動することになるため、自動調理処理を実行するときには、大火力状態における火力が適正な火力となるように、コンロ用火力調節具8Aにて流量調整弁25を操作することになる。
【0051】
図4〜図6に示すように、本体ケーシング22は、複数の鋳造部品をそれらの間にパッキンを介装してボルト固定する状態に組み立てることによって構成され、そして、本体ケーシング22には、元ガス供給路15が接続されてガス燃料が供給される導入口30、及び、コンロバーナ1Aのガス混合部1aにガス燃料を噴出するガスノズルN(図3参照)に接続される導出口31が開口されている。そして、本体ケーシング22の内部には、導入口30と導出口31とを連通接続される状態で、本流路28、主流路29A、及び、分岐流路29Bが形成されている。
【0052】
本体ケーシング22の前端側の下方箇所には、合成樹脂製の支持枠33がビス止めされる状態で固着され、この支持枠33に、合成樹脂製のスライダ34が摺動自在に内嵌されている。
このスライダ34には、金属製のバルブロッド35が安全弁24を構成する弁体24Aに向けて延出される状態で固着され、このバルブロッド35には、メイン弁23を構成する弁体23Aが設けられている。
【0053】
スライダ34と支持枠33との間には、スライダ34をコンロ前面側に付勢する第1コイルスプリング36が介装され、メイン弁23を構成する弁体23Aを閉じ側に付勢する第2コイルスプリング37が介装されている。
メイン弁23を構成する弁体23Aは、コンロ前面側に移動すると閉状態となり、コンロ背面側に移動すると開状態となるものであり、スライダ34は、第2コイルスプリング37にても、コンロ前面側に付勢されることになる。
【0054】
コンロ用操作具6Aが、上端側の揺動支点Qを中心にして、コンロ背面側に向けて押し込み移動操作自在に枢支され、そして、その押し込み移動により、スライダ34をコンロ背面側に押し込み移動させるように構成されている。
尚、コンロ用操作具6Aは、その自重によりコンロ背面側に向けて付勢されて、スライダ34に接当する状態に維持されるように構成されている。ちなみに、右側のコンロバーナ1Bに対するコンロ用操作具6B及びグリル用操作具7についても、左側のコンロバーナ1Aに対するコンロ用操作具6Aと同様に、その自重によりコンロ背面側に向けて付勢されて、スライダ34に接当する状態に維持されるように構成されている
【0055】
スライダ34の下面には、ほぼハート型のカム溝を備えたハートカム部材38が取り付けられ、支持枠33に左右方向に揺動自在に保持されたU字状のピン39の遊端部が、支持枠33を貫通してハートカム部材38のカム溝に係合して、いわゆるプッシュ−プッシュ機構が構成されている。
このプッシュ−プッシュ機構は、従来公知であるため詳しい説明は省略するが、このハートカム部材38とピン39との協働作用により、両コイルスプリング36、37によってコンロ前面側に弾性付勢されたスライダ34を、コンロ前面側に位置する閉位置A、及び、この閉位置Aよりもコンロ背面側でかつコンロ背面側に最も大きく押し込んだ点火位置Cよりもコンロ前面側の開位置Bに保持するように構成されている。
【0056】
説明を加えると、スライダ34が閉位置Aに位置保持されている状態で、コンロ用操作具6Aを押し込み操作して、閉位置Aに位置保持されているスライダ34を点火位置Cにまで操作し、その後、コンロ用操作具6Aに対する押し込み操作を解除すると、スライダ34が開位置Bに弾性復帰移動して、その開位置Bに位置保持されることになる。
スライダ34が開位置Bに位置する状態で、コンロ用操作具6Aを押し込み操作することにより、開位置Bに位置保持されているスライダ34を点火位置Cに向けて操作し、その後、コンロ用操作具6A、6Bに対する押し込み操作を解除すると、スライダ34が閉位置Aに弾性復帰移動して、その閉位置Aに保持されることになる。
【0057】
また、支持枠33の横一側部には、点火用の固定接点や安全用の固定接点などを備えた接点板ブロックD(図7、図8参照)が取り付けられ、スライダ34の摺動に伴って、スライダ34側に取り付けた可動接点が各固定接点に対する接触状態と非接触状態とに切り換えられるように構成されている。
この接点板ブロックDの検出情報は、制御部Hに入力されて、制御部Hが、点火プラブPの作動、及び、安全弁24の作動を制御することになる。
【0058】
次に、コンロ用操作具6Aの操作に基づく、コンロ用器具栓19の作動及び制御部Hの制御作動についてまとめて説明する。
すなわち、図4に示すように、スライダ34が閉位置Aにあるときは、可動接点が点火用の固定接点及び安全用の固定接点に対する非接触状態となり、そして、メイン弁23の弁体23Aが本流路28を閉じ、且つ、安全弁24も弾性的に閉弁されて、弁体24Aが本流路28を閉じるように構成されている。
【0059】
コンロバーナ1Aを点火すべくコンロ用操作具6Aを押し込み操作して、スライダ34を閉位置Aから押し込むと、メイン弁23の弁体23Aが本流路28を開き、可動接点が安全用の固定接点に接触する接触状態に切り換えられ、かつ、バルブロッド35の先端が安全弁24の弁体24Aを押圧して開弁するように構成されている。
さらに、コンロ用操作具6Aを押し込み操作して、図5に示すように、スライダ34を点火位置Cにまで押し込むと、可動接点が点火用の固定接点に接触する接触状態に切り換えられるので、制御部Hが、着火センサRにて着火が検出されるまで点火プラグPを作動させる点火処理を実行し、加えて、着火センサRにて着火が検出されると、安全弁24を開き状態に保持すべく、安全弁24に通電することになる。
【0060】
コンロバーナ1Aが着火したのち、コンロ用操作具6Aの押し込み操作を解除すると、図6に示すように、スライダ11が開位置Bにまで弾性復帰してその位置に保持されることになり、可動接点が点火用固定接点に接触しない非接触状態に切り換えられる。
この開位置Bにおいては、可動接点が安全用の固定接点に接触する接触状態となっているので、制御部Hは、着火センサRにて着火が検出されているときには、安全弁24を開き状態に操作することになり、そして、着火センサRにて着火が検出されないときには、安全弁24を閉じ状態に操作する非常停止処理を実行することになる。
【0061】
コンロバーナ1Aを消火すべくコンロ用操作具6Aを押し込み操作すると、スライダ11が閉位置Aに自動復帰してその位置に保持されることになり、メイン弁23の弁体23Aが本流路28を閉じることになる。また、この状態においては、可動接点が点火用の固定接点及び安全用の固定接点に対する非接触状態となるので、制御手段Hが、安全弁24を閉じ状態に操作する消火処理を実行することになる。
【0062】
次に、コンロバーナ1Aの火力の調整について説明する。
図4〜図6に示すように、弁体ケーシングとしての本体ケーシング22には、その前端部の開口から主流路29Aにまで至る円筒状の挿通孔41が穿設され、この挿通孔41の内部に、流量調整弁25を構成するスライド式弁体としての金属製で且つ円柱状のニードル42が摺動自在に挿入されている。
そして、ニードル21が、挿通孔41に対して摺動することにより、主流路29Aと導出口31とを接続する部分の開度を変更して、主流路29Aから導出口31に向けて流動するガス燃料量を調整するように構成されている。つまり、ニードル42をコンロ前方側に移動させるほど、主流路29Aと導出口31とを接続する部分の開度が大きくなり、主流路29Aから導出口31に向けて流動するガス燃料量が大きくなって、コンロバーナ1Aの火力が大きくなるように構成されている。
【0063】
また、火力調節用の電磁弁26の弁体26Aが、本体ケーシング22の弁座26Bに対して接当する閉じ状態と弁座26Bから離れる開き状態に切換えられることにより、上述したごとく、電磁弁26の開状態では、ガス燃料が主流路28A及び分岐流路29Bを通して流動する大火力状態となり、電磁弁26の閉状態では、ガス燃料が分岐流路29Bを通して流動する小火力状態となる。この電磁弁26は、上述の如く、制御部Hにて操作されることになる。
【0064】
流量調整弁25におけるニードル42の先端部には、このニードル42をコンロ用火力調節具8Aにて摺動操作するための被操作部として、金属製の操作ピン43が上下方向を向く姿勢で挿入されて固定されている。
ニードル42がそのスライド方向に沿う軸心周りで回転自在に本体ケーシング22に支持され、本体ケーシング22には、操作ピン25をニードル42のスライド方向に案内するスリット状溝44が、本体ケーシング22の上面から挿通孔41にまで至り、かつ、挿通孔41の長手方向に沿う状態で形成されている。
そして、操作ピン43が、スリット状溝44の内部を挿通して、本体ケーシング22から上方に突出する状態で位置するように構成されている。
【0065】
図4〜図6及び図7に示すように、コンロ用火力調節具8Aは、板材をレバー状に形成して構成され、そして、本体ケーシング22の上部に、上下方向に沿う揺動軸心U周りで左右に揺動自在に枢支されている。つまり、コンロ用火力調節具8Aが、揺動式のレバー状に構成されている。
そして、その火力調節具8Aにおける揺動軸心Uよりもレバー先端側部分には、操作ピン43が係合するカム操作孔Kが形成されている。
カム操作孔Kは、左右方向に伸びる円弧状で、かつ、右端側ほど揺動軸心Uに近づく状態に形成されている。
したがって、コンロ用火力調節具8Aを右側に揺動するほど操作ピン43がコンロ前方側に移動されて、主流路29Aと導出口31とを接続する部分の開度が大きくなり、主流路29Aから導出口31に向けて流動するガス燃料量が大きくなって、コンロバーナ1Aの火力が大きくなるように構成されている。
【0066】
ちなみに、本実施形態では、コンロバーナ1Aに供給するガス量を調整する往復移動式の弁体としての、前後にスライド移動するニードル42と、往復移動操作式の火力調節操作具としての、左右方向に揺動操作されるコンロ用火力調節具8Aとが、カム操作孔K及び操作ピン43を主要部として構成されるカム式の連係機構45にて連係されて、コンロ用火力調節具8Aの左右方向の揺動操作によりニードル42が前後にスライド移動されるように構成されることになる。
【0067】
図4〜図7に示すように、コンロ用火力調節具8Aの根元側の右横側部に、点火用位置Wよりも小火力側に位置するコンロ用火力調節具8Aを点火用位置Wに操作するための被操作片8aが下方に向けて連設され、そして、スライダ34には、点火位置Cに移動されるときに被操作片8aを係止して、コンロ用火力調節具8Aを点火用位置Wに移動操作する操作部34Aが設けられている。
ちなみに、本実施形態では、スライダ34に設けた操作部34Aが、コンロバーナ1Aを点火する点火用操作具としてのコンロ用操作具6Aが点火操作されたときにコンロ用火力調節具8Aを点火用位置Wに操作する操作手段を構成することになる。
【0068】
したがって、コンロ用操作具6Aを押し込み操作して、コンロバーナ1Aを点火させるときに、コンロ用火力調節具8Aが点火用位置Wよりも小火力側に位置する場合においても、コンロ用火力調節具8Aが点火用位置Wに操作されることになり、コンロバーナ1Aの点火を良好に行えるものとなる。
ちなみに、本実施形態の点火用位置Wは、最大火力位置Y1よりも小火力側で、且つ、最大火力位置Y1と最小火力位置Y3との中間の中火力位置Y2よりも大火力側に定められている。
【0069】
図8に示すように、コンロ用火力調節具8Aに形成したカム操作孔Kにおける操作ピン43を流量減少側に押圧する大径側内面M1及び操作ピン43を流量増大側に押圧する小径側内面M2が、コンロ用火力調節具8Aの左右方向での往復移動操作により発生する押付け力にて操作ピン43が押し付けられる摺動面Fとして機能することになる。
また、操作ピン43が、コンロ用火力調節具8Aの左右方向での往復移動操作により発生する押付け力にてカム操作孔Kの大径側内面M1及び小径側内面M2に押付けられた状態でコンロ用火力調節具8Aの往復移動操作により往復移動する可動体と機能することになる。
【0070】
そして、カム操作孔Kの大径側内面M1、つまり、ニードル42を火力減少側に移動させるときに操作ピン43が摺動する火力減少側の摺動面としての大径側内面M1と、カム操作孔Kの小径側内面M2、つまり、ニードル42を火力増大側に移動させるときに操作ピン43が摺動する火力増大側の摺動面としての小径側内面M2とのうちの、大径側内面M1におけるコンロ用火力調節具8Aが火力調節用移動範囲の特定位置に位置するときに操作ピン43が位置する箇所に、操作ピン43が入り込むことによりクリック感を付与するクリック感付与用の凹部Zが設けられている。
本実施形態では、コンロ用火力調節具8Aが火力調節用移動範囲の特定位置に位置するときとして、コンロ用火力調節具8Aが中火力位置Y2に位置するときに定めて、図8(a)に示すように、コンロ用操作具6Aを操作してコンロバーナ1Aを点火させたのちにおいて、図8(b)に示すように、点火位置Wに位置するコンロ用火力調節具8Aを中火力位置Y2に操作することを、クリック感を付与することで適切に行えるようにしてある。
【0071】
つまり、上述した自動調理処理のひとつとしての炊飯運転処理においては、制御部Hが、火力調節用の電磁弁26を開閉操作することにより、大火力状態と小火力状態とに切換えることになり、そして、炊飯運転処理においては、大火力状態における火力は、火力調節範囲の中火力が望ましいものである。
このため炊飯運転処理を行うときには、コンロ用操作具6Aを操作してコンロバーナ1Aを点火させた状態において、点火位置Wに位置するコンロ用火力調節具8Aを中火力位置Y2に操作することになるが、このように点火位置Wに位置するコンロ用火力調節具8Aを中火力位置Y2に操作することが、クリック感が付与されることで適切に行えるものとなる。
【0072】
ところで、本実施形態のコンロ用器具栓19には、図2に示すように、主流路29Aの電磁弁26を装備する部分と並列する状態で追加流路29Cが設けられ、図10及び図11に示すように、この追加流路29Cを開閉する追加電磁弁47が本体ケーシング22に装着自在に構成され、また、追加流路29Cは、中火用オリフィス48が装着自在に構成されている。
そして、本実施形態においては、図2及び図4〜図6に示すように、追加電磁弁47の取り付け座を閉じる蓋体49が本体ケーシング22に装着され、追加流路29Cには、これを閉じる閉止体50が装着されている。
【0073】
説明を加えると、図10及び図11に示すように、追加電磁弁47を装着し、且つ、中火用オリフィス48を装着した状態においては、電磁弁26及び追加電磁47を開いた状態にして、流量調整弁25にて流量を調整する形態、電磁弁26を閉じかつ追加電磁47を開いた状態において、流量調整弁25を最大流量に操作して、中火用オリフィス48にて流量を規制する形態、及び、電磁弁26及び追加電磁47を閉じた状態にして、小火用オリフィス27にて流量を規制する形態を選択できることになり、本願発明を実施する際において、追加電磁弁47を装着し、且つ、中火用オリフィス48を装着して、コンロバーナ1Aの火力を調整してもよい。
【0074】
また、図12及び図13に示すように、追加電磁弁47を装着し、且つ、中火用オリフィス48を装着し、加えて、小火用オリフィス27に代えて、分岐流路29Bを閉じる閉止体51を装着した状態においては、電磁弁26及び追加電磁47を開いた状態にして、流量調整弁25にて流量を調整する形態、電磁弁26を閉じかつ追加電磁47を開いた状態において、流量調整弁25を最大流量に操作して、中火用オリフィス48にて流量を規制する形態を選択できることになり、本願発明を実施する際に、追加電磁弁47を装着し、且つ、中火用オリフィス48を装着し、加えて、火火用オリフィス27に代えて、分岐流路29Bを閉じる閉止体51を装着して、コンロバーナ1Aの火力を調整してもよい。
【0075】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、コンロ用火力調節具8Aの左右方向での往復移動操作により発生する押付け力にて操作ピン43が押し付けられる摺動面Fとしての、コンロ用火力調節具8Aに形成したカム操作孔Kにおける操作ピン43を流量減少側に押圧する大径側内面M1及び操作ピン43を流量増大側に押圧する小径側内面M2のうちの、大径側内面M1に、クリック感付与用の凹部Zを形成する場合を例示したが、小径側内面M2にも、クリック感付与用の凹部Zを形成してもよい。
【0076】
(2)上記実施形態では、コンロ用火力調節具8Aを中火力位置Y2に操作するときにクリック感付与用の凹部Zが作用する場合を例示したが、中火力位置Y2以外の種々の位置に対応してクリック感付与用の凹部Zを設けるようにしても良い。
また、クリック感付与用の凹部Zは、種々の位置の夫々に設ける形態で、複数設けるようにしても良い。
【0077】
(3)上記実施形態では、コンロ用火力調節具8Aの左右方向での往復移動操作により発生する押付け力にて操作ピン43が押し付けられる摺動面Fとして、コンロ用火力調節具8Aに形成したカム操作孔Kにおける操作ピン43を流量減少側に押圧する大径側内面M1及び操作ピン43を流量増大側に押圧する小径側内面M2を用いる場合を例示したが、摺動面Fとしは、種々のものを用いることができる。
【0078】
例えば、図14に示すように、本体ケーシング22に形成したスリット状溝44における流量減少側に操作される操作ピン43が押圧する流量減少側内面L1、つまり、ニードル42を火力減少側に移動させるときに操作ピン43が摺動する火力減少側の摺動面としての流量減少側内面L1、及び、スリット状溝44における流量増大側に操作される操作ピン43が押圧する流量増大側内面L2、つまり、ニードル42を火力増大側に移動させるときに操作ピン43が摺動する火力増大側の摺動面としての流量増大側内面L2を、コンロ用火力調節具8Aの左右方向での往復移動操作により発生する押付け力にて操作ピン43が押し付けられる摺動面Fとして用いることができる。
【0079】
ちなみに、図14においては、上記実施形態と同様に、ニードル42を火力減少側に移動させるときに操作ピン43が摺動する流量減少側内面L1に、コンロ用火力調節具8Aが中火力位置Y2に位置するときにクリック感を付与すべく、クリック感付与用の凹部Zを形成する場合を例示する。
【0080】
(4)上記実施形態では、コンロ用火力調節具8Aの左右方向での往復移動操作により発生する押付け力にて摺動面Fに押付けられ状態でコンロ用火力調節具8Aの往復移動操作により往復移動する可動体が、操作ピン43である場合を例示したが、カム式連係機構45の構成が変化すれば、その変化に伴って種々の形態の可動体が現れるものであり、その可動体に対応する摺動面に対してクリック感付与用の凹部を形成できる。
【0081】
(5)上記実施形態では、ガス燃焼機器として、コンロバーナとグリルバーナとを備えたコンロを例示したが、本願発明は、グリルバーナを備えないコンロに適用する等、種々のガス燃焼機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1A バーナ
8A 火力調節操作具
22 弁体ケーシング
34A 操作手段
42 弁体
43 可動体(被操作ピン)
44 スリット溝
45 カム式連係機構
F 摺動面
K カム操作孔
L1 火力減少側の摺動面
L2 火力増大側の摺動面
M1 火力減少側の摺動面
M2 火力増大側の摺動面
W 点火用位置
Y2 特定位置
Z クリック感付与用凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナに供給するガス量を調整する往復移動式の弁体と往復移動操作式の火力調節操作具とが、前記火力調節操作具の往復移動操作により前記弁体を往復移動させるようにカム式連係機構により連係されたガス燃焼機器の火力調節装置であって、
前記カム式連係機構を構成する部材として、前記火力調節操作具の往復移動操作により発生する押付け力にて摺動面に押付けられた状態で前記火力調節操作具の往復移動操作により往復移動する可動体が設けられ、
前記摺動面における前記火力調節操作具が火力調節用移動範囲の特定位置に位置するときに前記可動体が位置する箇所に、前記可動体が入り込むことによりクリック感を付与するクリック感付与用の凹部が設けられているガス燃焼機器の火力調節装置。
【請求項2】
前記摺動面としての、前記弁体を火力減少側に移動させるときに前記可動体が摺動する火力減少側の摺動面と、前記弁体を火力増大側に移動させるときに前記可動体が摺動する火力増大側の摺動面とのうちの一方に、前記クリック感付与用の凹部が設けられている請求項1記載のガス燃焼機器の火力調節装置。
【請求項3】
前記弁体がスライド式の弁体であり、前記火力調節操作具が揺動式のレバー状に構成され、
前記弁体に、前記火力調節操作具の揺動軸心方向と並行な方向に向ける状態で被操作ピンが付設され、且つ、前記火力調節操作具に、前記被操作ピンが挿入するカム操作孔が設けられて、前記カム式連係機構が構成され、
前記被操作ピンを前記可動体とし、前記被操作ピンが摺動する前記カム操作孔の内面を前記摺動面とするように構成されている請求項1又は2記載のガス燃焼機器の火力調節装置。
【請求項4】
前記弁体がスライド式の弁体であり、前記火力調節操作具が揺動式のレバー状に構成され、
前記弁体に、前記火力調節操作具の揺動軸心方向と並行な方向に向ける状態で被操作ピンが付設され、且つ、前記火力調節操作具に、前記被操作ピンが挿入するカム操作孔が設けられて、カム式連係機構が構成され、
前記弁体がそのスライド方向に沿う軸心周りで回転自在に弁ケーシングに支持され、且つ、前記被操作ピンを前記弁体のスライド方向に案内するスリット溝が前記弁ケーシングに設けられ、
前記被操作ピンを前記可動体とし、前記被操作ピンが摺動する前記スリット溝の内面を前記摺動面とするように構成されている請求項1又は2記載のガス燃焼機器の火力調節装置。
【請求項5】
前記バーナを点火する点火用操作具が点火操作されたときに前記火力調節操作具を点火用位置に操作する操作手段が設けられ、
前記火力調節操作具の火力調節用移動範囲における前記特定位置を、前記点火用位置とは異なる位置として、前記クリック感付与用の凹部が設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス燃焼機器の火力調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−47538(P2011−47538A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194507(P2009−194507)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(301066992)株式会社ハーマンプロ (145)
【Fターム(参考)】