説明

ガス状排出物中の酸性ガスを濃縮する方法

本発明は、次のステップを含むガス状流出物中の酸性化合物を濃縮する方法に関する:供給ガスと、1つの水相を含む少なくとも2種の互いに混和しない液相の混合物とが、接触器R1に供給され、この供給ガスは、少なくともいくつかの酸性化合物を含有し;水と酸性化合物とからなる水和物を形成するための所定の圧力および温度の条件が、前記接触器において達成され、この水和物は、ポンピングP1で注入することによって、水和物解離用の容器R2に水相に混和しない相に分散した状態で搬送され;水和物の解離条件が、容器において達成され;解離で生じた、供給ガスに比べて酸性化合物に富んだガスが、排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ガス流、例えば、天然ガス炭化水素、ヒューム(fumes)、または他の産業流出物(industrial effluents)に含有される硫化水素(H2S)や二酸化炭素(CO2)などの酸性化合物の分離の分野に関する。本発明は、ガス流からできるだけ大量の酸性化合物を取り出して、別のガス状流出物(effluent)を酸性化合物で富化すると同時に送出(delivery)圧力の上昇を可能にするために、ガス水和物の形成を使用することを目的とする。
【0002】
発明の背景
周知のガス脱酸処理法は、処理するガスの圧力で操作しながら吸収器(absorber)中で再生済み溶媒とこのガスを接触させることによって、処理するガスに含有される酸性化合物を抽出する段階、続いて、一般に大気圧よりわずかに高い圧力で操作しながら溶媒を熱によって再生する段階を含む。この熱による再生は、一般に、底部再沸器(reboiler)および頂部凝縮器を備えたカラム(column)で実施され、それによって、再生によって放出される酸性化合物が冷却され、還流として再生器の頂部に凝縮物が再循環できるようになる。
【0003】
従来の方法では、酸性化合物を蓄積した吸収液の再生は、エネルギー消費に関して費用がかかり、これは大きな欠点である。さらに、再生によって送出される酸性ガスは、低い再生圧力、一般に1〜5bar abs(絶対圧で0.1〜0.5MPa)で送出される。これらの酸性ガスを貯蔵器(reservoir)に注入する場合、エネルギー費用が非常にかかる圧縮が必要となる。
【0004】
米国特許第7,128,777号は、ガス流中に含有される酸性ガスの水和物を形成することによって分離する方法を記載している。この特許は、水を、水和物の成分としても、分離器、次いで圧縮機に水和物相を運ぶ搬送媒体(transportation medium)としても使用する。成分としておよび搬送媒体としての水の二元的な機能は、水から水和物への転換を制限し、管をつまらせる恐れのある水和物塊(block)の形成を生じさせる可能性が高い。
【0005】
本発明は、水分散体(water dispersion)および水和物相搬送媒体として非水混和性(non−water−miscible)相を使用し、それによって、水和物スラリーの搬送中に管がつまるリスクが防止され、酸性ガスの水相への移動が改善され、水から水和物への転換率を向上させることができるようになることを目的とする。このスラリーは、水和物形成温度を低下させる特性ならびに/または形成および凝集(agglomeration)のメカニズムを調整する(modify)特性を有するかもしれない1種または複数の両親媒性(amphiphilic)添加剤を使用して得られる。
【0006】
発明の概要
したがって、本発明は、ガス状排出物中の酸性化合物を濃縮する方法であって、次の段階:
− 供給ガスと、水相を含む少なくとも2種の互いに混和しない(non−miscible)液相の混合物とを接触器(contactor)に供給する段階であって、この供給ガスが少なくとも酸性化合物を含有する段階、
− 水と前記酸性化合物とからなる水和物を形成するための所定の圧力および温度の条件を前記接触器において達成する(establish)段階、
− 水相に混和しない相中に分散する前記水和物を、ポンピング(pumping)によって水和物解離(dissociation)ドラムに運ぶ段階、
− 前記ドラムにおいて水和物解離条件を達成する段階、
− 解離から得られたガスを排出する段階であって、このガスが供給ガスに対して酸性化合物が富化されている段階
を含む方法に関する。
【0007】
水和物分散圧力は、供給ガス圧力の2〜200倍の範囲に増大させることができる。
【0008】
少なくとも水和物非凝集特性(hydrate anti−agglomeration property)を有する少なくとも1種の非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、または両性イオン性の両親媒性化合物を、前記混合物に添加することができる。
【0009】
両親媒性化合物は、親水性部分、および水相と混和しない相に高い親和性を有する部分を含むことができる。
【0010】
図面の簡単な説明
本発明のその他の特徴および利点は、添付の図を参照して、非限定的な例として挙げる以下の説明を読めば明らかになるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明による方法を概略的に示している。
【図2】図2は、試験装置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本発明は、特に次の長所を有する:
− 従来法に比べてエネルギー利得(energy gain)が高い、
− 酸性化合物を高圧で送出することで、酸性流出物を再注入する場合にエネルギー費用が非常にかかる後続の圧縮なしで行うことが可能になる、
− 水から水和物への転換率が向上する、
− 水和物相の搬送性が改善する、
− 再生熱レベルが余り高くない。
【0013】
濃縮剤(enrichment agent)としてガス水和物を使用してガス状流出物中の酸性ガスを濃縮する方法は、図1に例示する3つの主段階を含む:
(1)酸性化合物を含有する供給ガスを、少なくとも1種が水からなる少なくとも2種の互いに混和しない液相の混合物、および好ましくは両親媒性分子と接触させる第1の処理段階。ガスおよび液相(複数)を、酸性化合物および水で構成される水和物相の形成と適合する(compatible)圧力および温度の条件下で接触させる。1種または複数の適切な添加剤を添加することによって、この形成を補助することができる。この第1の段階により、水和物相中に酸性ガスを高い割合で隔離(sequestration)することが可能になる。こうして酸性化合物に富んだガス水和物粒子は、非水混和性液体中に分散され、固体懸濁物の形で搬送される。したがって、水和物に転換されないガスは、酸性化合物が除去された状態になる。必要とされる仕様に依然として対応しない場合、それを水和物によって減少させる第2の段階にかけることができ、または別のガス脱酸処理法によって処理することができる。図1では、ライン1を経た流入ガスが圧縮機K1によって圧縮された後、供給ガスがライン2を経て流れ込む接触器R1で水和物形成が起こる。ライン7は、好ましくは少なくとも1種の両親媒性化合物が添加されている、2種の互いに混和しない液相の混合物(1種は水)からなる流体を接触器に供給する。ガス脱酸処理済みガス(depleted gas)はライン9を経て排出されるが、水和物スラリーは、接触器の底部からライン3を介して出る。
【0014】
(2)先の段階からの流出物の酸性ガス分圧を上昇させるための第2の処理段階。これは、水和物相を特に含む固体懸濁物を供給ガスの圧力よりも2〜100倍高い圧力にポンピング(P1)し、次いで、この懸濁物を加熱して、酸性ガスに富んだ水和物粒子を、最初の2種の混和しない液体の混合物および場合により両親媒性化合物と、酸性化合物に富んだ高圧のガス相とに解離させることにある。こうして得られたガス流は、酸性ガス含有量すなわち分圧が供給ガスのそれよりも2〜100倍高い。図1では、ポンプP1は、前記スラリーをライン4を介して解離ドラムR2に加圧下で送出する。酸性化合物に富んだガスは、ライン5を介して排出され、場合により圧縮機K2によって圧縮されて、例えばライン8を介して地下の貯蔵器に注入される。
【0015】
(3)2種の混和しない液体、両親媒性化合物(複数可)、および/または場合により分散粒子の形の水和物懸濁物の形成に役立つことのできる他の添加剤を主に含む段階(2)からの液体の混合物は、膨張/冷却されて、ライン6および7を介して段階1の接触器R1に送り戻される。
【0016】
水和物形成条件
水和物形成/解離プロセスは、例えば供給ガス中のCO2を減少させ、次いでこのプロセスからの流出物中にCO2を濃縮させることを意図するものであり、水−水和物成分−および非水混和性溶媒を含む媒体中で実施される。水和物形成温度を低下させる特性ならびに/または形成および凝集のメカニズムを調整する特性を有する少なくとも1種の両親媒性化合物を、好ましくはこの混合物に添加する。これらの変化は、特に、水和物分散物の搬送に利用することができる。
【0017】
水/溶媒混合物の割合は、それぞれ0.5/99.5〜60/40体積%、好ましくは10/90〜50/50体積%、より精密には20/80〜40/60体積%の範囲とすることができる。
【0018】
両親媒性化合物は、水相に高い親和性を有する少なくとも1個の親水性または極性の化学基と、溶媒に高い親和性(一般に疎水性と呼ばれる)を有する少なくとも1個の化学基とを有する化合物(モノマーまたはポリマー)である。
【0019】
水和物を形成することができるガスと水相とを接触させたとき、一方では、本質的にガスの水中への溶解性が低いために水から水和物への転換率が低くなることが観察され、他方では、これらの水和物の形成時に、系でポンプ給送できなくさせる固体の塊、プラグ(plugs)、または沈澱物(deposits)の形成をまねく粒子の強固な凝集が観察される。
【0020】
水/溶媒/両親媒性化合物系では、処理する供給ガスとこうした混合物とが接触するとき、
− 賢明な溶媒選択によって、処理するガスの酸性化合物(複数可)が溶媒中に優先的に可溶化(preferential solubilization)できるようになること、
− 適切な圧力および温度の条件下で、酸性化合物に富んだ水和物が好ましい熱力学条件下で形成され、水から水和物への転換率が高くなること、
− 適切な両親媒性化合物によって、溶媒中で凝塊(aggregate)しない水和物粒子が得られ、したがって、水和物塊の形成が回避され、水和物粒子分散物は依然としてポンプ給送可能であること、
− 非水混和性溶媒の使用によって、水和物の解離時に放出される濃縮酸性化合物の残留水含有量が場合により制限できるようになること
を観察することができる。
【0021】
これらの有利な特性は、非常に広い温度および圧力の範囲内で得られる。
【0022】
両親媒性化合物は、水相に混和しない相、すなわち溶媒に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲の割合で前記混合物に添加することができる。
【0023】
本方法に使用する溶媒は、次のいくつかのファミリー:炭化水素含有溶媒、シリコーンタイプ溶媒、ハロゲン化または過ハロゲン化溶媒の中から選択することができる。
【0024】
炭化水素含有溶媒の場合、溶媒は、次のもの:
− 脂肪族留分(cut)、例えば、本発明による方法と適合する十分に高い引火点を有するイソパラフィン留分、
− 芳香族留分またはナフテン留分タイプの有機溶媒もまた同じ引火点条件で使用することができる、
− 分枝状アルカン、シクロアルカンおよびアルキルシクロアルカン、芳香族化合物、アルキル芳香族化合物の中から選択される純粋な製品または混合物
の中から選択することができる。
【0025】
本方法のための炭化水素含有溶媒は、その引火点が、40℃超、好ましくは75℃超、より精密には100℃超であることを特徴とする。その結晶点は、−5℃未満である。
【0026】
単独または混合物でのシリコーンタイプの溶媒は、例えば、次のものの中から選択される:
− (CH33−SiO−[(CH32−SiO]n−Si(CH33タイプの直鎖状ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ただしnは1〜900の範囲にあり、これは粘度が周囲(ambient)温度で0.1〜10,000mPa.sの範囲にあることに相当する、
− 同じ(the same)粘度範囲のポリジエチルシロキサン、
− D4〜D10、好ましくはD5〜D8の環状ポリジメチルシロキサン(単位Dはモノマー単位ジメチルシロキサンを表す)、
− ポリ(トリフルオロプロピルメチルシロキサン)。
【0027】
本方法で使用するハロゲン化または過ハロゲン化溶媒は、ペルフルオロカーバイド(PFC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、ペルフルオロポリエーテル(PFPE)の中から選択される。
【0028】
本方法で使用するハロゲン化または過ハロゲン化溶媒は、その沸点が大気圧で70℃以上であり、その粘度が周囲温度および大気圧で1Pa.s未満であることを特徴とする。
【0029】
両親媒性化合物は、中性または陰イオン性または陽イオン性または両性イオン性になり得る親水性部分を含む。溶媒に高い親和性を有する(疎水性と呼ばれる)部分は、炭化水素含有、シリコーン含有もしくはフルオロ−シリコーン含有、またはハロゲン化もしくは過ハロゲン化部分とすることができる。
【0030】
本発明による水和物の形成および/または搬送を促進するのに単独でまたは混合して使用される炭化水素含有両親媒性化合物は、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、または両性イオン性両親媒性化合物の中から選択される。
【0031】
非イオン性化合物は、次のもの:
− 酸化アルキレン基、ヒドロキシ基、またはアミノアルキレン基を含む親水性部分、
− アルコール、脂肪酸、フェノールのアルキル化誘導体または例えばイソブテンもしくはブテンから誘導されるポリオレフィンから誘導される炭化水素鎖を含む疎水性部分
を含むことを特徴とする。
【0032】
親水性部分と疎水性部分との間の結合は、例えば、エーテル、エステル、またはアミド官能基とすることができる。この結合はまた、窒素または硫黄原子によって得ることもできる。
【0033】
非イオン性の両親媒性炭化水素含有化合物の例は、オキシエチル化脂肪アルコール、アルコキシル化アルキルフェノール、オキシエチル化および/またはオキシプロピル化誘導体、糖エーテル、ポリオールエステル、例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、およびソルビタンなど、モノおよびジエタノールアミド、カルボン酸アミド、スルホン酸、またはアミノ酸である。
【0034】
陰イオン性の両親媒性炭化水素含有化合物は、負に帯電したイオンを形成するために水相中でイオン化可能な1個または複数の官能基を含むことを特徴とする。これらの陰イオン性基は、分子の表面活性を提供する。こうした官能基は、金属またはアミンによってイオン化される酸性基である。この酸は、例えば、カルボン酸、スルホン酸、硫酸、またはリン酸とすることができる。
【0035】
次の陰イオン性の両親媒性炭化水素含有化合物を挙げることができる:
− カルボン酸塩、例えば、金属セッケン、アルカリセッケン、または有機セッケン(例えば、N−アシルアミノ酸、N−アシルサルコシン酸塩、N−アシルグルタミン酸塩およびN−アシルポリペプチドなど)など、
− スルホン酸塩、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩(すなわちアルコキシル化アルキルベンゼンスルホン酸塩)、パラフィンスルホン酸塩およびオレフィンスルホン酸塩、リゴスルホン酸塩(ligosulfonate)、またはスルホンコハク酸(sulfonsuccinic)誘導体(例えば、スルホコハク酸塩、ヘミスルホコハク酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩(例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)など)など、
− 硫酸塩、例えば、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、およびリン酸塩など。
【0036】
陽イオン性の両親媒性炭化水素含有化合物は、正に帯電したイオンを形成するために水相中でイオン化可能な1個または複数の官能基を含むことを特徴とする。これらの陽イオン性基は、分子の表面活性を提供する。
【0037】
陽イオン性炭化水素含有化合物の例は、次の通りである:
− アルキルアミン塩、例えば、
・アルキルアミンエーテル、
・第四級アンモニウム塩、例えばアルキルトリメチルアンモニウム誘導体またはテトラ−アルキルアンモニウム誘導体またはアルキルジメチルベンジルアンモニウム誘導体など、
・アルコキシル化アルキルアミン誘導体、
− スルホニウムまたはホスホニウム誘導体、例えばテトラ−アルキルホスホニウム誘導体、
− 複素環誘導体、例えば、ピリジニウム、イミダゾリウム、キノリニウム、ピペリジニウム、またはモルホリニウム誘導体など。
【0038】
両性イオン性炭化水素含有化合物は、少なくとも1個が正に帯電されており、少なくとも1個が負に帯電されているような、少なくとも2個のイオン化可能基を有することを特徴とする。これらの基は、上述の陰イオン性および陽イオン性基の中から選択され、例えば、ベタイン、アルキルアミドベタイン誘導体、スルホベタイン、ホスホベタイン、またはカルボキシベタインなどである。
【0039】
中性、陰イオン性、陽イオン性、または両性イオン性の親水性部分を含む両親媒性化合物はまた、シリコーンまたはフルオロ−シリコーン疎水性部分(非水混和性溶媒に高い親和性を有するということができる)を有することもできる。これらのシリコーン、オリゴマーまたはポリマー、両親媒性化合物はまた、水/有機溶媒混合物、水/ハロゲン化もしくは過ハロゲン化溶媒混合物、または水/シリコーン溶媒混合物に使用することもできる。
【0040】
中性シリコーン両親媒性化合物は、PDMSタイプのオリゴマーまたはコポリマーとすることができ、ここでメチル基(複数)は、(エチレンポリオキシドもしくはプロピレンポリオキシドタイプ、またはエチレンポリオキシドとプロピレンポリマーとのブレンドの)アルキレンポリオキシド基またはPDMS/ヒドロキシ−アルキレンオキシプロピル−メチルシロキサン誘導体やアルキルメチルシロキサン/ヒドロキシ−アルキレンオキシプロピル−メチルシロキサン誘導体などのピロリドン基で部分的に置換される。
【0041】
ヒドロシリル化反応によって得られるこれらのコポリオールは、反応性末端ヒドロキシル基を有する。したがって、これらは、例えば脂肪酸の反応によるエステル基、またはアルカノールアミド基、またはグリコシド基を得るのに使用することができる。
【0042】
ケイ素原子に直接結合されたアルキル側鎖基(疎水性)を含むシリコーンポリマーはまた、フルオロアルコール型分子(親水性)と反応させて両親媒性化合物を形成することによって改質(modify)することもできる。
【0043】
界面活性特性は、親水基/疎水基の比で調整する。
【0044】
PDMSコポリマーはまた、リン酸基、カルボン酸基、硫酸基、またはスルホコハク酸基などの陰イオン性基によって両親媒性にすることもできる。これらのポリマーは、一般に、ポリシロキサンアルキレンポリオキシド側鎖の末端ヒドロキシド官能基上の酸の反応によって得られる。
【0045】
PDMSコポリマーはまた、第四級アンモニウム基、四級化アルキルアミドアミン基、四級化アルキルアルコキシアミン基、または四級化イミダゾリンアミンなどの陽イオン性基によって両親媒性にすることもできる。例えば、PDMS/ベンジルトリメチルアンモニウムメチルシロキサン塩化物コポリマーまたはハロゲノN−アルキル−N,N−ジメチル−(3−シロキサニルプロピル)アンモニウム誘導体の使用が可能である。
【0046】
PDMSコポリマーはまた、カルボキシベタイン、アルキルアミドベタイン、ホスホベタイン、またはスルホベタインなどのベタインタイプ基によって両親媒性にすることもできる。この場合、これらのコポリマーは、疎水性シロキサン鎖、および例えば次の一般式の親水性オルガノベタイン部分を含む:
(Me3SiO)(SiMe2O)a(SiMeRO)SiMe3
但し、R=(CH23+NMe2(CH2bCOO-;a=0、10;b=1、2
中性、陰イオン性、陽イオン性、または両性イオン性の親水性部分を含む両親媒性化合物はまた、ハロゲン化または過ハロゲン化疎水性部分(非水混和性溶媒に高い親和性を有すると定義される)を有することもできる。これらのハロゲン化両親媒性化合物、オリゴマーまたはポリマー、はまた、水/有機溶媒、または水/ハロゲン化もしくは過ハロゲン化溶媒、または水/シリコーン溶媒混合物に使用することもできる。
【0047】
例えばフッ素化合物などのハロゲン化両親媒性化合物は、イオン性または非イオン性とすることができる。具体的には、次のものを挙げることができる:
− 一般式Rf(CH2)(OC24nOH(式中、Rfは、部分的に水素化されたペルフルオロカーボンまたはフルオロカーボン鎖であり、nは、1以上の整数である)の化合物などの非イオン性の両親媒性ハロゲン化または過ハロゲン化化合物、ポリオキシエチレン−フルオロアルキルエーテルタイプのフッ素非イオン性界面活性剤、
− 陰イオン性化合物を形成するためのイオン化可能な両親媒性化合物、例えば、ペルフルオロカルボン酸およびそれらの塩、またはペルフルオロスルホン酸およびそれらの塩、ペルフルオロリン酸化合物、ペルフルオロポリエーテルおよびそれらの塩から誘導されるモノおよびジカルボン酸、ペルフルオロポリエーテルおよびそれらの塩から誘導されるモノおよびジスルホン酸、ペルフルオロポリエーテルリン酸塩両親媒性化合物およびペルフルオロポリエーテル二リン酸塩両親媒性化合物など、
− ペルフルオロ化された陽イオン性もしくは陰イオン性の両親媒性ハロゲン化化合物、または疎水性側鎖を1、2、もしくは3個有するペルフルオロポリエーテルから誘導されたもの、エトキシ化フルオロアルコール、フッ素化スルホンアミド、またはフッ素化カルボキシアミド。
【0048】
本発明による方法で使用する非水混和性溶媒および両親媒性化合物を使用して効率を試験するために、図2に記載の装置におけるメタンおよびCO2を含有するガス混合物に関する水和物形成段階およびそれらの搬送をシミュレートした。
【0049】
その装置は、ガスの入口11および出口、液体の入口12および出口13を有する1.5リットルの反応器10を備えている。これらの液体入口および出口は、内直径7.7mmの管で構成される長さ10mの循環ループ14に接続されている。
【0050】
このループと同じ直径を有する管は、ループと反応器との間に位置する歯車ポンプ15によってループから反応器へ、またその逆へ流体循環をもたらす。流路に組み込まれたサファイアセルCによって、循環液体およびもし形成されているならば水和物を表示することが可能になる。
【0051】
本発明による添加剤の効率を測定するために、液体(複数可)(水、または水+溶媒+添加剤)を1.4lの量で反応器に供給する。次いで、装置中の圧力を、検討するガスを用いて7MPaまで上昇させる。ループおよび反応器中の液体循環によって、液体の均質化がもたらされる。圧力降下(pressure drop)および流速変化に従って、温度が17℃から4℃(水和物形成温度より低い)に素早く下げられる。次いで、温度は、この値で維持される。
【0052】
試験は、数分から数時間まで続く可能性がある。水から水和物への転換率を計算し、搬送が可能な場合、一旦形成された水和物スラリーの輸送性を調べる。この場合、ループ中の圧力損失DPおよび流速Fは安定している。
【0053】
次の例は、本発明を例示するものであり、限定すると考えるべきでない。例1は比較のために挙げる。
【0054】
例1
水100%からなる液体で運転する。使用するガスは、メタン90モル%、窒素2モル%、CO28モル%を含む。反応器およびループは7MPaに加圧され、次いでガスの送出が停止される。こうした条件下で、1.45MPaの圧力低下が観察される。水和物が形成するとすぐに、ポンプの流速は不安定になり、ループの入口と出口の間の圧力降下は著しく増大し、その最大値に達する。混合物はきちんとポンプ給送されなくなる。水和物に起因する完全な目詰りが、20分以内に生じる。水和物は塊を形成し、流体の循環は不可能になる。水和物に転換された水の割合は、3%である。
【0055】
例2
比較用の例1と同様に行うが、液体の構成は10体積%の水および90体積%の溶媒で、これにコハク酸ポリイソブテニル無水物とポリエチレングリコールとの間の反応で得られる両親媒性化合物が添加されている。この両親媒性化合物は、溶媒の量(volume)に対して0.17重量%の濃度で添加される。溶媒の重量組成は、以下の通りである:
− 炭素原子が11個未満の分子について:パラフィンおよびイソパラフィンが20%、ナフテンが48%、芳香族化合物が10%、
− 炭素原子が少なくとも11個の分子について:パラフィンとイソパラフィンとナフテンと芳香族化合物との混合物が22%。
【0056】
こうした条件下では、1.95MPaの圧力低下が観察され、系中の圧力はメタン水和物の平衡曲線に達する。ループ中における水和物形成後の流速および圧力降下が安定しており、これは、水和物スラリーがポンプ給送可能なままであることを意味する。水から水和物への転換率は、46%に達する。ガス混合物の最終組成は、CO2が4.2%、窒素が3%、メタンが92.8%である。水和物相の解離によって放出されるガスは、最終的に、CO2を19モル%、メタンを81モル%含み、N2は含まない。したがって、この方法により、解離から生じるガスのCO2を8モル%から19モル%に富化することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状流出物の酸性化合物を濃縮する方法であって、次の段階:
− 供給ガスと、水相を含む少なくとも2種の互いに混和しない液相の混合物とを接触器に供給する段階であって、前記供給ガスが少なくとも酸性化合物を含有する段階、
− 水と前記酸性化合物とからなる水和物を形成するための所定の圧力および温度の条件を前記接触器において達成する段階、
− 前記水相に混和しない相中に分散した前記水和物を、ポンピングによって水和物解離ドラムに運ぶ段階、
− 前記ドラムにおいて水和物解離条件を達成する段階、
− 解離から得られたガスを排出する段階であって、このガスが前記供給ガスに対して酸性化合物が富化されている段階
を含む方法。
【請求項2】
前記水和物の分散圧力が、前記供給ガス圧力の2〜200倍の範囲に増大される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも水和物非凝集特性を有する少なくとも1種の非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、または両性イオン性の両親媒性化合物を、前記混合物に添加する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記両親媒性化合物が、親水性部分、および前記水相と混和しない相に高い親和性を有する部分を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記水相と混和しない相が、次の群:炭化水素含有溶媒、シリコーンタイプ溶媒、ハロゲン化または過ハロゲン化溶媒、およびそれらの混合物の中から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記炭化水素含有溶媒が、次の群:
− 脂肪族留分、特にイソパラフィン留分、
− 芳香族留分またはナフテン酸留分タイプの有機溶媒、
− 分枝状アルカン、シクロアルカンおよびアルキルシクロアルカン、芳香族化合物、アルキル芳香族化合物
の中から選択され、
前記炭化水素含有溶媒は、引火点が、40℃超、好ましくは75℃超、より精密には100℃超であり、結晶点が、−5℃未満である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記シリコーンタイプ溶媒が、単独または混合物で、次の群:
− (CH33−SiO−[(CH32−SiO]n−Si(CH33タイプの直鎖状ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ただしnは1〜900の範囲にあり、これは粘度が周囲温度で0.1〜10,000mPa.sの範囲にあることに相当する、
− 同じ粘度範囲のポリジエチルシロキサン、
− D4〜D10、好ましくはD5〜D8の環状ポリジメチルシロキサン、ただし単位Dはモノマー単位ジメチルシロキサンを表す、
− ポリ(トリフルオロプロピルメチルシロキサン)
の中から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ハロゲン化または過ハロゲン化溶媒が、ペルフルオロカーバイド(PFC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、ペルフルオロポリエーテル(PFPE)の中から選択され、
前記ハロゲン化または過ハロゲン化溶媒は、沸点が、大気圧で70℃以上であり、粘度が、周囲温度および大気圧で1Pa.s未満である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記非イオン性の両親媒性化合物が、
− 酸化アルキレン基、ヒドロキシ、またはアミノアルキレン基を含む親水性部分、
− アルコール、脂肪酸、フェノールのアルキル化誘導体または好ましくはイソブテンもしくはブテンから誘導されるポリオレフィンから誘導される炭化水素鎖を含む疎水性部分
を含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項10】
前記非イオン性の両親媒性化合物が、次の群:オキシエチル化脂肪アルコール、アルコキシル化アルキルフェノール、オキシエチル化および/またはオキシプロピル化誘導体、糖エーテル、ポリオールエステル、例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、およびソルビタンなど、モノおよびジエタノールアミド、カルボン酸アミド、スルホン酸、またはアミノ酸の中から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記陰イオン性の両親媒性化合物が、次の群:
− N−アシルアミノ酸、N−アシルサルコシン酸塩、N−アシルグルタミン酸塩およびN−アシルポリペプチドなどの、金属セッケン、アルカリセッケン、または有機セッケンなどの、カルボン酸塩など、
− スルホコハク酸塩、ヘミスルホコハク酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、などの、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩およびオレフィンスルホン酸塩、リゴスルホン酸塩、またはスルホンコハク酸誘導体などの、スルホン酸塩、
− 硫酸塩、例えば、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、およびリン酸塩
の中から選択される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項12】
前記陽イオン性の両親媒性化合物が、次の群:
− アルキルアミン塩、
・アルキルアミンエーテル、
・第四級アンモニウム塩、例えばアルキルトリメチルアンモニウム誘導体またはテトラ−アルキルアンモニウム誘導体またはアルキルジメチルベンジルアンモニウム誘導体など、
・アルコキシル化アルキルアミン誘導体、
− スルホニウムまたはホスホニウム誘導体、例えばテトラ−アルキルホスホニウム誘導体、
− 複素環誘導体、例えば、ピリジニウム、イミダゾリウム、キノリニウム、ピペリジニウム、またはモルホリニウム誘導体など
の中から選択される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項13】
前記両性イオン性の両親媒性化合物が、次の群:ベタイン、アルキルアミドベタイン誘導体、スルホベタイン、ホスホベタイン、カルボキシベタインの中から選択される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項14】
前記両親媒性化合物が、シリコーンまたはフルオロ−シリコーン部分を含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項15】
前記両親媒性化合物が、ハロゲン化または過ハロゲン化部分を含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項16】
前記水/溶媒混合物の割合が、それぞれ0.5/99.5〜60/40体積%、好ましくは10/90〜50/50体積%、より精密には20/80〜40/60体積%の範囲である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記両親媒性化合物が、前記水相に混和しない相に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲の割合で前記混合物に添加される、請求項3または4に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−523310(P2010−523310A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501551(P2010−501551)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000457
【国際公開番号】WO2008/142262
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】