説明

ガス絶縁変電所または開閉所

【課題】各ガス絶縁機器に封入される絶縁ガスの種類を識別表示することにより、ガス絶縁機器への絶縁ガスの誤封入を確実に防止して機能低下を回避し、信頼性の向上を図ったガス絶縁変電所または開閉所を提供する。
【解決手段】ガス絶縁母線1やガス遮断器2及びガス絶縁変圧器3ごとにガス種別表示器5が取り付けられている。ガス種別表示器5には熱伝導率の違いからガス種類を判別するガス種別判別部6が設置されている。ガス種別判別6部は、母線1や各機器2、3に封入されたガスの種類を判別し、その判別結果をガス種別表示器5に送る。ガス種別表示器5は、ガス種別判別6部から受け取った判別結果に基づいて、母線1や各機器2、3に封入されたガスの種類名を表示するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、機器内に封入されたガスの種類を容易に識別できるようにしたガス絶縁変電所または開閉所に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力系統には要所要所にガス絶縁変電所または開閉所(以下、ガス絶縁変電所・開閉所)が配置されている。なお、本明細書中で用いるガス絶縁変電所・または開閉所とは、広義でこれをとらえており、独立した建物である変電所あるいはまたは開閉所は勿論のこと、発電所や工場などに設置されるガス絶縁変電設備あるいは開閉設備なども包含している。
【0003】
一般にガス絶縁変電所・開閉所は、遮断器(GCB)・断路器(DS)・母線(Bus)・変圧器(Tr)などのガス絶縁機器から構成されている。ガス絶縁機器とは、密閉された金属容器に、機器本体が収納されると共に、絶縁ガスが封入された電気機器である。
【0004】
ガスにより絶縁性能を確保するガス絶縁機器は、コンパクト化に優れ、メンテナンス性が良好である上に、安全性も高い。例えば、絶縁油を用いた油絶縁変圧器では、可燃性である絶縁油の爆発、火災などのおそれがある。しかし、ガス絶縁変圧器では絶縁油漏洩による環境破壊はもとより、爆発、火災などを防ぐことができる。
【0005】
以上のようなガス絶縁機器は、ガス絶縁変電所・開閉所の構成機器として主流を成しており、近年ではガス絶縁機器は1100kV級系統へ適用することも計画されている。そのため、ガス絶縁変電所・開閉所の高電圧化及び大容量化は一段と進む傾向にある。
【0006】
以下、従来のガス絶縁変電所・開閉所の構成について、図4を用いて具体的に説明する。図4に示すように、ガス絶縁変電所・開閉所には、ガス絶縁機器であるガス絶縁母線1、ガス遮断器2及びガス絶縁変圧器3が設けられている。これらの母線1や機器2、3には密閉されたガス区分が形成され、ガス区分ごとに最適なガス圧の絶縁ガスが封入されている。
【0007】
上記の母線1や機器2、3におけるガス圧は、次のような基準で設定されている。すなわち、ガス遮断器2には絶縁性能のみならず遮断性能も要求されるので、ガス遮断器2のガス圧力はガス絶縁母線1のガス圧力よりも高く設定されている。ガス絶縁変圧器3は、容量にも依存するが、中小容量の変圧器ではガス容器の製作がより容易であることから、比較的、低ガス圧力に設定される。
【0008】
以上のように、ガス絶縁変電所・開閉所を構成する母線1や各機器2、3は、ガス圧の異なる絶縁ガスを封入しているため、母線1や各機器2、3ごとにガス圧計4(図5に図示)が設置されている。これらガス圧計4はガス系統監視盤に接続されており、この監視盤を用いてガス絶縁変電所・開閉所のガス系統が監視される。なお、監視対象となるガス圧としては、定格ガス圧力、機器の機能を保証する最低保証圧力および所定値以下となると遮断器の開閉動作を制限するロック圧力などがある。
【0009】
ところで、ガス絶縁機器に封入される絶縁ガスとしては従来、SFガスが適用されていた。SFガスは、空気と比べて約100倍の消弧性能と約3倍の絶縁性能を有しており、不燃性であるため安全性も高い。しかし近年では、環境調和を重視する観点から、SFガスは地球温暖化係数が高いことが問題視されている。そのため、SFガスの代替ガス(以下、単に代替ガスと呼ぶ)を用いたガス絶縁機器が提案されている。
【0010】
代替ガスとしては、COガス、Nガス、Oガス、空気、その他の単体または混合ガスなど、主に自然由来で、環境に低負荷なガスが広く使われている。例えば特許文献1では、ガス絶縁機器に封入される絶縁ガスとして、地球温暖化係数がSFよりも低く、C元素を含むガス(例えばCOガス)を消弧媒体として適用し、かつカーボンの生成を抑制するためにO元素を含む混合ガスを用いることが提案されている。
【0011】
これら代替ガスは種類が異なれば当然ながら特性も異なり、この特性の違いが機器性能に与える影響は大きい。そこで代替ガスを用いたガス絶縁変電所・開閉所では、ガス区分に要求される絶縁性能のレベルなどに応じて、最適な種類の代替ガスを封入することが望ましいとされている。
【0012】
具体的には、電流遮断責務を持つ開閉器が含まれるガス区分では、遮断性能を確保することが重要であるため、NガスよりはCOガスを用いる方が適している。また、前記開閉器の遮断性能をより一層高めるために、COガスに添加ガスを加えることもある(非特許文献1参照)。さらに、前記開閉器が含まれないガス区分、例えばガス絶縁変圧器では、基本構成で導体部を被覆しているので、COガスではなく、Nガスを使用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−258137号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】平成16年度NEDO報告書 「電力送変電機器市場へのSF6代替ガス(CF3I)投入可能性調査」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、複数種類の絶縁ガスをガス区分ごとに封入するガス絶縁変電所・開閉所では、作業員が絶縁ガスをガス区分に封入する際、定められたガス以外の非正規ガスを誤って封入してしまうことがある。このようなヒューマンエラーは、機器に封入する絶縁ガスがSFガス単体であった時には起こり得ないミスであった。
【0016】
ところが、SFガスに代わる複数種類の代替ガスを、ガス区分ごとに変えて封入する場合には、前記ヒューマンエラーの発生確率は増すことになる。非正規ガスの誤封入はガス絶縁機器の機能面の低下を招くおそれがある。中でも、ガス遮断器内に遮断性能の低いガスが間違って封入された場合、事故時に電流遮断が失敗する可能性が高まることになる。
【0017】
ガス絶縁変電所・開閉所は現在、高電圧化や大容量化が進められており、より優れた機能と高い信頼性が要求されている。したがって、複数種類の絶縁ガスを用いるガス絶縁変電所・開閉所においては、ガス絶縁機器への非正規ガスの誤封入を防ぐことが求められている。
【0018】
本発明の実施形態は、上記の要請に応えるために提案されたものであり、各ガス絶縁機器に封入される絶縁ガスの種類を識別表示することにより、ガス絶縁機器への絶縁ガスの誤封入を確実に防止して機能低下を回避し、信頼性の向上を図ったガス絶縁変電所または開閉所を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態は、複数のガス絶縁機器から構成され、複数種類の絶縁ガスが用いられるガス絶縁変電所または開閉所において、前記絶縁ガスの種類ごとに1ないし2以上のガス区分が形成され、前記ガス区分毎に当該絶縁ガスの種類を表すガス識別表示手段が設けられたことを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るガス絶縁変電所・開閉所の代表的な実施形態において、その要部であるガス種別表示器の構成を示す説明図。
【図2】本実施形態の構成を示す断面図。
【図3】本実施形態によるガス遮断器の制御を示すフローチャート。
【図4】従来のガス絶縁変電所・開閉所の構成を示す断面図。
【図5】従来のガス絶縁変電所・開閉所におけるガス圧力計の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(1)構成
以下、本発明に係る代表的な実施形態の一例について、図1〜図3を参照して具体的に説明する。図1は本実施形態におけるガス種別表示器の説明図、図2は本実施形態の構成を示す断面図、図3は本実施形態におけるガス遮断器の動作フローを示している。
【0022】
[全体構成]
図2に示すように、本実施形態は、従来のガス絶縁変電所・開閉所(図4)と同じく、ガス絶縁機器として、ガス絶縁母線1、ガス遮断器2及びガス絶縁変圧器3が設けられている。本実施形態では、ガス絶縁母線1や、各機器2、3ごとに独立したガス区分が形成されており、各ガス区分に異なる種類の絶縁ガスが封入されている。
【0023】
ここでは、ガス絶縁母線1には、Nよりも絶縁性能の優れたCOが用いられ、ガス遮断器2にはCOガスにOガスを混合したガス(CO/O)が用いられている。また、ガス容量の大きな変圧器3にはNガスが使用されている。ただし、ガス種類の構成は本実施形態に限らず、様々な組み合わせが考えられる。また、ガス圧力はガスの種類により一定とは限らず、それぞれの機器により圧力を変更することも考えられる。
【0024】
[本実施形態の要部]
本実施形態は、図1に示すようなガス種別表示器5が、母線1や各機器2、3ごとに取り付けられた点に特徴がある。ガス種別表示器5には、制御回路などから構成されるガス種別判別部6、ロック制御部7及び警報出力部8が設置されている。ただし、ロック制御部7は、ガス遮断器2に取り付けたガス種別表示器5のみに設置されている。
【0025】
[ガス圧判定部9]
また図1に示すように、ガス種別表示器5には隣接してガス圧計4が設置されている。つまりガス圧計4もまたガス絶縁母線1や各機器2、3ごとに取り付けられている。これらのガス圧計4にはガス圧判定部9が設置されている。ガス圧判定部9は、予め規定値が設定されており、ガス圧計4の測定結果が前記規定値を満たすのか否かを判定するように構成されている。ガス圧に設定される規定値としては、定格ガス圧力、機器の機能を保証する最低保証圧力や、所定値以下となるとガス遮断器2の開閉動作を制限するロック圧力などがある。
【0026】
[ガス種別表示器5]
ガス種別表示器5は、円盤状の表示面5aの外周付近に3つのガス種類名(CO、CO/O、N)が等間隔で表示されており、ガス種類を選択的に指し示すインジケータ針5bが設置されている。ガス種別表示器5は、ガス種別判別部6からの判別結果を受け取り、この判別結果に従ってインジケータ針5bにて所定のガス種類名を指し示すようになっている。
【0027】
[ガス種別判別部6]
ガス種別判別部6は、母線1や各機器2、3に封入されたガスの種類を物理量の変化、ここでは熱伝導率の違いからガス種類を判別し、判別結果をガス種別表示器5に送る部分である。上記母線1や各機器2、3に封入される代替ガス(CO、CO/O、N)の熱伝導率は物理的に定められている。
【0028】
COガスの熱伝導率は1.45×10−2W/m・K、Nガスの熱伝導率は2.40×10−2W/m・K、Oガスの熱伝導率は2.45×10−2W/m・Kである。そこでガス種別判別部6は、これら代替ガスの熱伝導率に基づいてガスの種別を判別している。
【0029】
より具体的には、代替ガスの熱伝導率を、代替ガスによって冷却される抵抗物の抵抗値に置き換え、この抵抗値に基づいてガスの種別を判別している。この点について詳しく述べる。一般に抵抗物の温度は、抵抗物の通電による発熱と、抵抗物の周囲の雰囲気ガス(代替ガス)による冷却との平衡によって決定され、平衡時に一定値が示される。
【0030】
この時、雰囲気ガス(代替ガス)の熱伝導率が高ければ、抵抗物は冷却され易くなるため、平衡時の温度は低くなる。反対に、雰囲気ガス(代替ガス)の熱伝導率が低ければ、抵抗物は冷却され難くなるため、平衡時の温度は高くなる。このように抵抗物の抵抗値は抵抗物の温度に比例するので、雰囲気ガス(代替ガス)の種類による熱伝導率の変化は、抵抗値の変化として検出することが可能である。
【0031】
このような原理を利用して、ガス種別判別部6は、母線1や各機器2、3の抵抗値が低い場合には、その母線1や各機器2、3に封入された代替ガスは熱伝導率が高いと判断し、高い熱伝導率に相当する代替ガスであると判別する。またガス種別判別部6は、母線1や各機器2、3の抵抗値が高い場合、その母線1や各機器2、3に封入された代替ガスは熱伝導率が低いと判断し、低い熱伝導率に相当する代替ガスであると判別する。
【0032】
また、ガス種別判別部6は、母線1や各機器2、3に封入されるべき絶縁ガスを予め設定しておき、これを正規ガスとして、ガス種別判別部6にて判別した絶縁ガスがこの正規ガスなのか、あるいは正規ガス以外の非正規ガスなのかといった正規判定も行うように構成されている。ガス種別判別部6は正規判定の結果をロック制御部7及び警報出力部8に送るようになっている。
【0033】
[ロック制御部7]
ロック制御部7は、既に述べたようにガス遮断器2に取り付けたガス種別表示器5のみに設けられており、ガス種別判別部6及びガス圧判定部9に接続されている。ロック制御部7は、ガス種別判別部6の正規判定の結果及びガス圧判定部9のガス圧判定結果を受け取り、これらの結果が所定の条件を満たすとき、ガス遮断器2の投入動作をロックするロック指令を出力するように構成されている。
【0034】
[警報出力部8]
警報出力部8は、ガス種別判別部6及びガス圧判定部9に接続されている。警報出力部8は、ガス種別判別部6の正規判別の結果及びガス圧判定部9のガス圧判定結果を受け取り、これら結果に基づいて「非正規ガス警報」あるいは「圧力不足警報」といった内容の警報を出力するように構成されている。なお、警報出力部8の出力する警報は、ガス種別表示器5の一部に警報表示領域を設けてそこに表示しても良いし、ガス系統監視盤などに警報表示領域を設けるようにしても良い。
【0035】
(2)作用
以上の構成を有する本実施形態の作用について、ガス遮断器2の制御を例にとり、図3のフローチャートを用いて説明する。ガス遮断器2に封入された代替ガスに関して、まず、ガス種別判別部6が各ガスの熱伝導率の違いからガスの種別を判別する(ステップS101)。
【0036】
ガス種別表示器5はガス種別判別部6の判別結果を受け取り、判別結果に従ってインジケータ針5bにて所定のガス種類名を指し示すことで、ガスの種類名を表示する(ステップS102)。また、ガス種別判別部6は、ガスの判別後、判別したガスが正規ガスなのか非正規ガスなのかといった正規判定を行う(ステップS103)。
【0037】
ガス遮断器2ではCOガスにOガスを混合したガス(CO/O)が正規の代替ガスなので、CO/O2ガス以外の非正規ガスとあるといった判定をガス種別判別部6が下した場合には(ステップS103のNo)、この結果を受け取ったロック制御部7はガス遮断器2の投入動作をロックする(ステップS104)。また、前記結果を受け取った警報出力部8は「非正規ガス警報」を所定の表示領域に出力する(ステップS105)。
【0038】
ガス種別判別部6において、ガス遮断器2に封入された代替ガスが正規ガスであるという判定を下した場合には(ステップS103のYes)、ステップS106に進む。ステップS106では、ガス圧計4がガス遮断器2に封入された代替ガス(CO/O)の圧力を測定する。
【0039】
続いて、ガス圧判定部9は、ガス遮断器2に設置したガス圧計4から測定結果を受け取り、測定結果に基づき、ガス遮断器2におけるガス圧が所定の規定値、ここでは、ガス遮断器2の開閉動作を制限するロック圧力の中でも、ガス遮断器2の投入動作を禁止するロック圧力を規定値として、ガス圧計4の測定結果が当該規定値以上かどうかの判定を行う(ステップS107)。
【0040】
ガス圧判定部9にて、ガス圧計4の測定結果が前記規定値未満であるというガス圧判定結果を下した場合(ステップS107のNo)、この結果を受け取ったロック制御部7はガス遮断器2にロック指令を出力して、ガス遮断器2の投入動作をロックする(ステップS108)。また、警報出力部8は、前記ガス圧判定結果をガス圧判定部9から受け取ると、「圧力不足警報」を所定の表示領域に出力する(ステップS109)。一方、ガス圧判定部9にて、ガス圧計4の測定結果が前記規定値以上であるというガス圧判定結果を下した場合には(ステップS107のYes)、ガス遮断器2の投入動作を可能状態とする(ステップS110)。
【0041】
なお、ガス絶縁母線1やガス絶縁変圧器3に関しては、母線1や変圧器3に取り付けたガス種別表示器5はロック制御部7とは接続しておらず、ガス圧が規定値に達していないことによるロック制御は不要である。そのため、ガス絶縁母線1やガス絶縁変圧器3に封入されるガス圧が規定値に達していなければ、警報を出力する処理を行うだけでよく、図3に示したフローチャートのステップS104とS109を省いたフローとなる。
【0042】
(3)効果
本実施形態に係るガス絶縁変電所・開閉所によれば、ガス圧計4とガス圧判定部9との組合せによる母線1内や各機器2、3内のガス圧力の監視に加えて、ガス種別表示器5が母線1内や各機器2、3内のガス種類名を表示するため、代替ガスの種類も監視することが可能である。したがって、作業員が母線1や各機器2、3へのガス封入作業を実施する際、非正規ガスの誤封入というヒューマンエラーの発生を未然に防止することができる。
【0043】
このようなヒューマンエラーの発生防止は、代替ガスの種類が多様化傾向にあるガス絶縁変電所・開閉所において特に有効であり、代替ガス誤封入による機能低下を確実に防ぐことができる。これにより、ガス絶縁変電所・開閉所の信頼性向上に寄与することが可能である。また、ガス種別表示器5の表示を見ながらガス封入作業を行うので、効率よく短時間でガス封入作業を終わらせることもできる。
【0044】
しかも、本実施形態では、ガス遮断器2に封入された代替ガスが正規ガスであっても、そのガス圧が所定の規定値を満たしていなければ、ロック制御部7がガス遮断器2の投入動作をロックする。したがって、非正規ガスあるいは規定値未満のガスが封入されたことで、ガス遮断器2の遮断性能が低下する可能性があれば、ガス遮断器2の投入動作を禁止する。その結果、ガス遮断器2の遮断性能低下に伴う事故時の電流遮断失敗が起きる心配が無く、優れた信頼性を発揮することができる。
【0045】
さらに本実施形態では、母線1や各機器2、3に封入された代替ガスに関して、ガス種別判別部6が非正規ガスであると判断すれば、警報出力部8は「非正規ガス警報」を出力し、ガス種別判別部6が規定値未満であると判断すれば、「圧力不足警報」が出力する。そのため、非正規ガスの誤封入というヒューマンエラーが実際に発生してしまった場合でも、警報を発することにより、これらのミスを早い段階で把握するため、前記ヒューマンエラーが深刻な問題に発展することがない。
【0046】
(4)他の実施形態
なお、上記の実施形態は、本明細書において一例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図するものではない。すなわち、その他の様々な形態で実施されるこが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことが可能である。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0047】
すなわち、ガス識別表示手段としては、前記ガス種類表示器5のように絶縁ガスの種類を表す文字や記号を表示する表示面5aを不可欠とするものではない。例えば、ガス区分に位置するガス絶縁機器の構成要素での色分けや模様分け、さらには構成要素の形状の相違によって表すようにしても良い。構成要素での色分けとしては、ガスバルブ及びガス配管等のジョイント部分の色をガス種類ごとに変化させた実施形態が考えられる。
【0048】
また、構成要素の形状の相違に基づいて絶縁ガスの種類を表す場合には、ジョイント部分の形状として、ネジ径をガス種類ごとに変化させたり、ネジ方向(順ネジ、逆ネジ)をガス種類ごとに変化させたりするようにしても良い。このような実施形態によれば、ガス配管の誤接続を確実に防ぐことが可能となる。
【0049】
また、前記ガス種別判別部6では、ガスの種類をその熱伝導率に基づいて判別していたが、ガス中の音の伝搬速度の変化などから、ガスの種類を判別することも可能である。さらに、Oガスの含む混合ガスの場合、市販されている酸素濃度計の原理を用いて簡易的に表示するようにしても良い。
【符号の説明】
【0050】
1…ガス絶縁母線
2…ガス遮断器
3…ガス絶縁変圧器
4…ガス圧力計
5…ガス種類表示器
6…ガス種別判別部
7…ロック制御部
8…警報出力部
9…ガス圧判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガス絶縁機器から構成され、複数種類の絶縁ガスが用いられるガス絶縁変電所または開閉所において、
前記絶縁ガスの種類ごとに1ないし2以上のガス区分が形成され、
前記ガス区分毎に当該絶縁ガスの種類を表すガス識別表示手段が設けられたことを特徴とするガス絶縁変電所または開閉所。
【請求項2】
前記ガス識別表示手段は、絶縁ガスの種類を表す文字や記号、あるいは前記ガス区分に位置する前記ガス絶縁機器の構成要素での色分けもしくは前記構成要素の形状の相違に基づいて前記絶縁ガスの種類を表するように構成されたことを特徴とする請求項1にガス絶縁変電所または開閉所。
【請求項3】
前記絶縁ガスの種類を物理量に基づいて判別するガス判別手段が設けられ、
前記ガス識別表示手段は、前記ガス判別手段の判別した絶縁ガスの種類を表示するように構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のガス絶縁変電所または開閉所。
【請求項4】
前記ガス判別手段の判別基準となる物理量として、ガスの熱伝導率、ガス中の音の伝搬速度及びガス濃度のいずれか、もしくはこれらを組み合わせて用いられることを特徴とする請求項3に記載のガス絶縁変電所または開閉所。
【請求項5】
前記ガス判別手段は前記ガス区分に封入された絶縁ガスが予め定められた正規ガスなのか、あるいは正規ガス以外の非正規ガスなのかを判定するように構成され、
前記ガス区分に封入された絶縁ガスは前記非正規ガスであるとの判定を前記ガス判別手段が下した場合、当該判定を受けることにより、前記判定内容を示す警報を出力する警報出力手段が設けられたことを特徴とする請求項3又は4に記載のガス絶縁変電所または開閉所。
【請求項6】
ガス絶縁変電所または開閉所を構成するガス絶縁機器として、電流遮断責務を有する開閉器が設けられ、
前記ガス判別手段は前記ガス区分に封入された絶縁ガスが予め定められた正規ガスなのか、あるいは正規ガス以外の非正規ガスなのかを判定するように構成され、
前記ガス区分に封入された絶縁ガスは前記非正規ガスであるとの判定を前記ガス判別手段が下した場合、前記開閉器の投入動作をロックするロック手段が備えられたことを特徴とする3〜5のいずれか1項に記載のガス絶縁変電所または開閉所。
【請求項7】
ガス絶縁変電所または開閉所を構成するガス絶縁機器として、電流遮断責務を有する開閉器が設けられ、
前記開閉器には当該開閉器に封入される絶縁ガスのガス圧を測定するガス圧計が設けられ、
前記ガス圧計には前記絶縁ガスが予め設定された規定値を満たすかどうかを判定するガス圧判定手段が接続され、
前記ガス区分に封入された絶縁ガスは前記規定値を満たさないとの判定を前記ガス圧判定手段が下した場合、前記開閉器の投入動作をロックするロック手段が備えられたことを特徴とする1〜6のいずれか1項に記載のガス絶縁変電所または開閉所。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−70443(P2013−70443A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205030(P2011−205030)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】