説明

ガス絶縁機器の放圧装置

【課題】簡素な構造で確実に放圧させることのできるガス絶縁機器の放圧装置を提供する。
【解決手段】遮断器などの電気機器を収納する箱体1に設けた開口部2と、開口部2を閉塞する放圧板3と、開口部2を囲むように放圧板3と箱体1間に設けたOリング7と、放圧板3の外周部に一方端が当接するとともに、他方端が箱体1にボルト5bで固定された複数の押え板6とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱体内に絶縁ガスを封入したガス絶縁キュービクルなどガス絶縁機器の放圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、箱体内に遮断器などの電気機器を収納し、SFガスのような絶縁ガスを封入したガス絶縁機器には、短絡事故などで圧力が異常に上昇したとき、箱体や電気機器を保護するため、絶縁ガスを箱体外に放出する放圧装置が設けられている。放圧装置は、所定の圧力で変形する薄肉の放圧板、変形する放圧板を破断させるナイフ、これらを気密に固定するOリングや固定部材などから構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−119817号公報 (第2〜3ページ、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の従来のガス絶縁機器の放圧装置においては、次のような問題がある。上述のように、放圧装置が放圧板、ナイフ、固定部材などから構成され、部品点数が多いものであった。部品点数が多くなると、コストが上昇するとともに、放圧板やナイフなどに異物の付着や損傷を与えないように慎重に組立てしなければならず、組立作業が困難となっていた。組立てに不適合が生じると、所定の圧力で放圧させることが困難となり、電気機器などに損傷を与えることになる。このため、簡素な構造で組立作業を容易とし、確実に放圧することのできる放圧装置が望まれていた。
【0004】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、簡素な構造で確実に放圧させることのできるガス絶縁機器の放圧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明のガス絶縁機器の放圧装置は、電気機器を収納する箱体に設けた開口部と、前記開口部を閉塞する放圧板と、前記開口部を囲むように前記放圧板と前記箱体間に設けたOリングと、前記放圧板の外周部に一方端が当接するとともに、他方端が前記箱体に固定された複数の押え板とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、箱体の開口部を放圧板で閉塞し、放圧板の外周部を複数枚の押え板で固定しているので、簡素な構造で、箱体内の圧力上昇時に確実に開口部から放圧させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0008】
先ず、本発明の実施例1に係るガス絶縁機器の放圧装置を図1、図2を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1に係るガス絶縁機器の放圧装置の構成を示す正面図、図2は、本発明の実施例1に係るガス絶縁機器の放圧装置の構成を示す断面図である。
【0009】
図1に示すように、ガス絶縁機器の放圧装置は、電気機器を収納し絶縁ガスを封入した箱体1の一側面に設けられた矩形状の開口部2を、開口部2よりも大きい矩形状で板状の放圧板3で閉塞するものである。開口部2は、箱体1に気密溶接された板厚の厚いフランジ4の中央部に設けられている。
【0010】
放圧板3は、図示下部の一辺が複数のボルト5aでフランジ4に固定され、他の三辺がそれぞれ板状の押え板6の一方端の面で押さえつけられている。押え板6の他方端は、複数のボルト5bでフランジ4に固定されている。即ち、放圧板3の外周部には、押え板6の一方端の面が当接し固定される。フランジ4には、開口部2を囲むように環状のOリング7が設けられ、ガスシールが行われる。
【0011】
次に、放圧動作について、図2を参照して説明する。
【0012】
図2に示すように、電気機器などが短絡事故を起こし箱体1内の圧力が上昇し、許容圧力以上の所定の圧力に達すると、放圧板3が図示矢印のように左方向に膨らみ、押え板6との当接が外れる。同時に、各辺の押え板6の一方端も放圧板3の応力によって、図示矢印のように左方向に曲折する。すると、開口部2から圧力の高い絶縁ガスが放出され、箱体1内の圧力上昇が抑えられる。放圧時には、放圧板3が曲折するものの、ボルト5aで一辺が固定されているので、飛散することはない。
【0013】
ここで、放圧板3、押え板6の板厚を、箱体1やフランジ4などと比べて最も薄くすれば、開口部2からの放圧を確実なものにすることができる。また、放圧板3と押え板6の板厚を調整することにより、放圧する圧力を制御することができる。
【0014】
また、箱体1、フランジ4、放圧板3、押え板6などの全てを鋼板で構成してもよいが、同様の厚さにおいて、鋼板よりも曲折し易いスレンレス(SUS304)を放圧板3や押え板6に適用すれば、開口部2からの放圧を確実なものにすることができる。
【0015】
上記実施例1のガス絶縁機器の放圧装置によれば、箱体1の開口部2を矩形状の放圧板3で閉塞し、放圧板3の各辺に押え板6の一方端の面を当接させ固定しているので、箱体1内の圧力上昇時に放圧板3が膨らむと、押え板6との当接が外れ、開口部2から確実に放圧させることができる。また、放圧装置の構造が簡素なものとなる。
【実施例2】
【0016】
次に、本発明の実施例2に係るガス絶縁機器の放圧装置を図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施例2に係るガス絶縁機器の放圧装置の構成を示す正面図である。なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、放圧板の形状である。図3において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0017】
図3に示すように、押え板6間で形成される図示上部の放圧板3の角部を丸めて、曲率部3aを設けている。
【0018】
これにより、放圧板3が膨らんだとき、曲率部3aを設けているので、押え板6との当接が外れ易くなる。
【0019】
上記実施例2のガス絶縁機器の放圧装置によれば、実施例1による効果のほかに、放圧板3が外れ易くなり、箱体1内の圧力上昇時により確実に放圧させることができる。
【実施例3】
【0020】
次に、本発明の実施例3に係るガス絶縁機器の放圧装置を図4を参照して説明する。図4は、本発明の実施例3に係るガス絶縁機器の放圧装置の構成を示す正面図である。なお、この実施例3が実施例2と異なる点は、押え板の幅である。図4において、実施例2と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0021】
図4に示すように、放圧板3の各辺に設ける押え板8を実施例2の押え板6よりも小さな幅とし、それぞれをボルト5bで固定している。
【0022】
これにより、それぞれの押え板8は、幅が狭いので、圧力上昇時に曲折し易くなる。また、放圧板3の膨らみがいずれかの辺側に偏っても、当該部分の押え板8が最初に曲折し、放圧させることができる。
【0023】
上記実施例3のガス絶縁機器の放圧装置によれば、実施例2と同様の効果を得ることができる。
【実施例4】
【0024】
次に、本発明の実施例4に係るガス絶縁機器の放圧装置を図5を参照して説明する。図5は、本発明の実施例4に係るガス絶縁機器の放圧装置の構成を示す正面図である。なお、この実施例4が実施例3と異なる点は、放圧板にスリットを設けたことである。図5において、実施例3と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0025】
図5に示すように、ボルト5aで固定されている側の放圧板3に、放圧板3が箱体1の外側方向に曲折し易いように窪んだ溝9を設けている。なお、溝9に替えて長円状の窪みを設けてもよい。更には、押え板8にも中間部に曲折し易いように溝9や窪みを設けてもよい。ここで、溝9や窪みを総称してスリットと呼ぶ。
【0026】
上記実施例4のガス絶縁機器の放圧装置によれば、実施例3と同様の効果のほかに、放圧板3や押え板8が曲折し易くなり、箱体1内の圧力上昇時に確実に放圧させることができる。
【実施例5】
【0027】
次に、本発明の実施例5に係るガス絶縁機器の放圧装置を図6を参照して説明する。図6は、本発明の実施例5に係るガス絶縁機器の放圧装置の構成を示す断面図である。なお、この実施例5が実施例4と異なる点は、放圧板の外側に保護板を設けたことである。図6において、実施例4と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0028】
図6に示すように、放圧板3の外側には、板状でコ字状の保護板10を設けている。保護板10は、放圧板3と所定の間隔を保って複数枚が配置されている。両端は、フランジ4にボルト5cで固定されている。
【0029】
上記実施例5のガス絶縁機器の放圧装置によれば、実施例4と同様の効果のほかに、保護板10により放圧板3が曲折する範囲を制限することができるとともに、ボルト5aが抜けたときの放圧板3の飛散を防止することができる。
【0030】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。上記実施例では、開口部2と放圧板3とを矩形状として説明したが、両者を三角形状以上の多角形状、または円形状、楕円状などにしてもよい。押え板6、8は、多角形状では各辺に合わせた複数枚とし、円形状などではその曲率に合わせた扇状の形状とする。
【0031】
即ち、放圧板3や開口部2は形状を限定する必要はなく、複数枚の押え板6、8でその外周部を固定する。押え板6、8の一方端の面は放圧板3の外周部に当接させ、他方端を箱体1にボルト5bで固定する。また、放圧板3の一部分を箱体1にボルト5aで直接固定する。なお、放圧板3の飛散を許容できる場合には、ボルト5aに替えて全て押え板6、8で固定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例1に係るガス絶縁機器の放圧装置の構成を示す正面図。
【図2】本発明の実施例1に係るガス絶縁機器の放圧装置の構成を示す断面図。
【図3】本発明の実施例2に係るガス絶縁機器の放圧装置の構成を示す正面図。
【図4】本発明の実施例3に係るガス絶縁機器の放圧装置の構成を示す正面図。
【図5】本発明の実施例4に係るガス絶縁機器の放圧装置の構成を示す正面図。
【図6】本発明の実施例5に係るガス絶縁機器の放圧装置の構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0033】
1 箱体
2 開口部
3 放圧板
3a 曲率部
4 フランジ
5a、5b、5c ボルト
6、8 押え板
7 Oリング
9 溝
10 保護板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器を収納する箱体に設けた開口部と、
前記開口部を閉塞する放圧板と、
前記開口部を囲むように前記放圧板と前記箱体間に設けたOリングと、
前記放圧板の外周部に一方端が当接するとともに、他方端が前記箱体に固定された複数の押え板と
を備えたことを特徴とするガス絶縁機器の放圧装置。
【請求項2】
前記放圧板および前記押え板の少なくとも一方にスリットを設けたことを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁機器の放圧装置。
【請求項3】
前記放圧板の外側に、前記箱体に固定された保護板を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス絶縁機器の放圧装置。
【請求項4】
前記開口部および前記放圧板を矩形状とし、前記放圧板の一辺を前記箱体にボルトで固定し、他の辺を前記押え板で固定したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガス絶縁機器の放圧装置。
【請求項5】
前記放圧板の角部に曲率を持たせたことを特徴とする請求項4に記載のガス絶縁機器の放圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−98839(P2010−98839A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267424(P2008−267424)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】