説明

ガス絶縁機器の放圧装置

【課題】 内部圧力上昇時に開口部を含む放圧板の面積を大きくし、内部ガスの放出効率を向上させる。
【解決手段】 電気機器を収納し絶縁ガスが封入される容器を構成するフランジ板3と、フランジ板3に設けられた開口部4と、開口部4を閉塞する放圧板5と、開口部4を囲むように放圧板5とフランジ板3間に設けられたOリング6と、放圧板5をフランジ板3に固定する帯板7と、放圧板5の外側に点溶接の固定部10で固定された補強部材11と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、容器内に絶縁ガスを封入したガス絶縁キュービクルのようなガス絶縁機器の放圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器内に六弗化硫黄ガスのような絶縁ガスを封入したガス絶縁機器には、短絡事故などで内部圧力が異常に上昇したとき、容器の破損や飛散を防止するため、容器外に圧力上昇した内部ガスを放出する放圧装置が設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この種の放圧装置は、図4に示すように、遮断器などの電気機器を収納した方形体の容器1の背面などの所定の位置に放圧装置2が設けられている。放圧装置2は、図5に示すように、厚さ10mm程度のフランジ板3に設けられた矩形状の開口部4と、この開口部4を閉塞する厚さ1〜2mmの矩形状の放圧板5と、開口部4を囲むように設けられたOリング6と、放圧板5をフランジ板3に固定する板状の帯板7とを有し構成されている。
【0004】
帯板7は、一側辺が放圧板5に係止され、他側辺がボルト8でフランジ板3に固定されている。放圧板5の三辺はそれぞれ帯板7で固定されているが、残りの一辺はボルト8で直接、フランジ板3に固定されている。
【0005】
これにより、容器1内で圧力上昇が起きると、板厚の薄い放圧板5が最初に膨らむように変形を始め、帯板7の一側辺から外れる。すると、開口部4が開放され、圧力上昇した内部ガスを放出し、容器1の破損や飛散を防ぐことができる。また、放圧板5の一辺は、ボルト8で固定されているため、三辺が帯板7から外れても飛散することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−98839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来のガス絶縁機器の放圧装置においては、次のような問題がある。
容器1に絶縁ガスを封入するときには、真空ポンプを接続し、一旦、容器1内を所定の真空度の真空状態とする。そして、ガスボンベを接続し、所定の圧力まで絶縁ガスを封入する。このとき、放圧装置2においても、容器1と同様に、真空状態時に外側から約1気圧の圧力を受ける。特に、放圧板5は、薄板で形成されているため、この負圧に耐え得るようにしなければならず、開口部4を含めた放圧板5の面積を大きくすることが困難であった。
【0008】
一方、短絡事故などで内部圧力が上昇したときには、短時間で放出しなければならず、開口部4を含めた放圧板5の面積を大きくすることが望まれていた。しかしながら、真空状態時の負圧にも耐え得るようにしなければならず、圧力上昇した内部ガスの放出効率を向上させることが困難であった。
【0009】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、開口部を含む放圧板の面積を大きくし、内部圧力上昇時に短時間で内部ガスを放出することが可能なガス絶縁機器の放圧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、実施形態のガス絶縁機器の放圧装置は、電気機器を収納する容器に設けられた開口部と、前記開口部を閉塞する放圧板と、前記開口部を囲むように前記放圧板と前記容器間に設けられたOリングと、前記放圧板を前記容器に固定する帯板と、前記放圧板の外側に点溶接の固定部で固定された補強部材と、を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1に係るガス絶縁機器の放圧装置の構成を示す正面図。
【図2】本発明の実施例1に係るガス絶縁機器の放圧装置の動作を説明する断面図。
【図3】本発明の実施例2に係るガス絶縁機器の放圧装置の構成を示す正面図。
【図4】ガス絶縁機器の外形形状を示す斜視図。
【図5】従来のガス絶縁機器の放圧装置の構成を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
先ず、本発明の実施例1に係るガス絶縁機器の放圧装置を図1、図2を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1に係るガス絶縁機器の放圧装置の構成を示す正面図、図2は、本発明の実施例1に係るガス絶縁機器の放圧装置の動作を説明する断面図である。なお、図1、図2において、従来と同様の構成部分については、同一符号を付した。ガス絶縁機器の外形形状は、従来と同様であるので、説明を省略する。
【0014】
図1に示すように、放圧装置2は、厚さ10mm程度のフランジ板3に設けられた矩形状の開口部4と、この開口部4を閉塞する厚さ1〜2mmの矩形状の放圧板5と、開口部4を囲むように放圧板5とフランジ板3間に設けられたOリング6と、放圧板5をフランジ板3に固定する板状の帯板7と、放圧板5の外側であって開口部4の中央部にスポット溶接などによる点溶接の固定部10で固定された補強部材11とを有し構成されている。フランジ板3は、容器1の一部となる。
【0015】
補強部材11は、開口部4の内周の幅よりも僅かに長く、軽量化や強度面から断面コ字状となっているが、板状、棒状でもよい。帯板7は、一側辺が放圧板5に係止され、他側辺がボルト8でフランジ板3に固定されている。放圧板5の三辺はそれぞれ帯板7で固定されているが、残りの一辺はボルト8で直接、フランジ板3に固定されている。
【0016】
次に、補強部材11の作用について、図2を参照して説明する。
【0017】
先ず、絶縁ガスを封入するために容器1内を真空状態にしたときには、図2(a)に示すように、放圧板5が図示下方向の圧力を受ける。しかしながら、放圧板5は、補強部材11の両端が開口部4端部に引っ掛かり、更に、中央部が点溶接の固定部10で固定されているので、図示下方向への変形を防ぐことができる。即ち、放圧板5の容器1内方向への変形を防止する。点溶接は、円状、楕円状、帯状のいずれでもよく、負圧に耐え得る所定の溶接強度を有する。
【0018】
次に、内部圧力上昇があったときには、図2(b)に示すように、放圧板5が図示上方向に変形するとともに、補強部材11も固定部10を頂点にして、図示上方向に移動する。更に圧力が上昇すると、放圧板5の一辺が帯板7から外れ、開口部4から内部ガスを外部に放出する。これは、補強部材11に影響を受けず、従来と同様の放圧となる。
【0019】
これにより、放圧の動作に影響を与えることなく、真空状態時の放圧板5の変形を防ぐことができるので、開口部4を含めた放圧板5の面積を大きくすることができる。このため、内部ガスを短時間で外部に放出することができ、容器1の破損、飛散などを防ぐことができる。
【0020】
なお、補強部材11は、開口部4の幅よりも短くても、補強部材11自体にある程度の面積を有しているので、容器1内方向の変形を防止することができる。また、固定部10は、開口部4の中央部が放圧板5の変形に与える影響が少なく最もよいものの、内側に設けていれば、変形を防ぐことができ、放圧の動作に与える影響も抑えられる。
【0021】
上記実施例1のガス絶縁機器の放圧装置によれば、放圧板5の外側に補強部材11を点溶接の固定部10で固定しているので、真空状態時に、放圧板5が容器1内方向に変形しようとしても補強部材11で変形を防止することができる。このため、開口部4を含めた放圧板5の面積を大きくすることができ、内部圧力上昇時の内部ガスの放出効率を向上させることができる。
【実施例2】
【0022】
次に、本発明の実施例2に係るガス絶縁機器の放圧装置を図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施例2に係るガス絶縁機器の放圧装置の構成を示す正面図である。なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、飛散防止がバーを設けたことである。図3において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0023】
図3に示すように、補強部材11の外側には、断面コ字状の飛散防止カバー12をボルト8で固定している。飛散防止カバー12は、放圧板5の変形に影響を与えないような高さを有している。
【0024】
上記実施例2のガス絶縁機器の放圧装置によれば、実施例1による効果のほかに、補強部材11の飛散防止をすることができる。
【0025】
以上述べたような実施形態によると、真空状態を経て加圧状態となる放圧装置において、開口部を含めた放圧板の面積を大きくすることができ、内部圧力上昇時の内部ガスの放出効率を向上させることができる。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、および変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1 容器
2 放圧装置
3 フランジ板
4 開口部
5 放圧板
6 Oリング
7 帯板
8 ボルト
10 固定部
11 補強部材
12 飛散防止カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器を収納する容器に設けられた開口部と、
前記開口部を閉塞する放圧板と、
前記開口部を囲むように前記放圧板と前記容器間に設けられたOリングと、
前記放圧板を前記容器に固定する帯板と、
前記放圧板の外側に点溶接の固定部で固定された補強部材と、
を備えたことを特徴とするガス絶縁機器の放圧装置。
【請求項2】
前記固定部を前記開口部の中央部としたことを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁機器の放圧装置。
【請求項3】
前記補強部材を断面コ字状としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス絶縁機器の放圧装置。
【請求項4】
前記補強部材の外側に飛散防止カバーを設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガス絶縁機器の放圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−109060(P2012−109060A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255409(P2010−255409)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】