説明

ガス絶縁開閉装置

【課題】電力系統の大容量化に対応し、一段と小型化及び軽量化を図ったガス絶縁開閉装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、ガス絶縁開閉装置は、絶縁性ガス2を封入した密封容器1と、密封容器1内に設けられ、通電するための接触子3とを備える。接触子3は、中心基材3aと、この中心基材3aの外周面に設けられ中心基材3aより導電率の高い外周材3bとを有し、外周材3bは、コールドスプレー法により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、密閉容器の内部に絶縁性ガスを封入したガス絶縁開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力系統におけるガス絶縁開閉装置に使用される円柱構造の接触子は、例えば図5に示すような構造のものが用いられる。図5に示すように、密封容器1の内部には絶縁性ガス2が封入されている。この密封容器1に接続される絶縁スペーサ7には、接触子3が設けられる。この接触子3は、導体4とフィンガー5を介して接続される。絶縁スペーサ7は、通電する接触子3と密封容器1とを絶縁し、接触子3を支持する機能を有する。
【0003】
通常、接触子3は、中実の円柱形状に形成されており、一般的に通電電流を大きくするため、導電率の高い材料に変更するか、接触子3を大径化し、接触子3の電気抵抗を低下させて発熱を抑えるか、密閉容器1の表面積を大きくして放熱効果を高めるか、もしくは図6に示すような構造が用いられる。
【0004】
すなわち、図6に示す密封容器1内の接触子3は、軽量な中心基材3aと、この中心基材3aより導電率が高く、かつ中空形状の外周材3bとから構成されている。中心基材3aに対する外周材3bは、ばねにより押し付けられるか、あるいはそれ自身のばね性により電気的に接続するスライドコンタクト8を通じて、導通される構成としている。このように接触子3は、交流電流の表皮効果により、電流が多く流れる外周材3bのみを導電率の高い材料としている。
【0005】
ガス絶縁開閉装置の導体は、一例として図7に示すような構造のものが用いられる。図7に示すように、密封容器1の内部には絶縁性ガス2が封入されている。この密封容器1に接続される絶縁スペーサ7には、接触子3が設けられる。この接触子3は、導体4とフィンガー5を介して接続される。絶縁スペーサ7は、通電する接触子3と密封容器1を絶縁する機能を備えている。ガス絶縁開閉装置では、このような構造を有する密封容器1及び導体4が、接触子3を設けた絶縁スペーサ7を介して、軸方向に複数連結して構成されている。
【0006】
通常、導体4は、中空あるいは中実の円柱形状に形成されており、アルミニウム合金の単一導体などが用いられる。また、特許文献1に記載された導体は、アルミニウムからなる中実丸棒状の中心部材と、銅からなるパイプ状の外周部材から構成されている。
【0007】
ガス絶縁開閉装置内において摺動する通電部材は、一例として図8に示すような構造のものが用いられる。図8は通電中の状態を示している。図8に示すように、密封容器1の内部には絶縁性ガス2が封入されている。密封容器1の内部は、投入及び遮断の開閉動作により位置が変化しない固定部と、位置が変化する可動部の部材に分けられる。上記可動部は、主接触子9と、パッファシリンダ10と、アーク接触子19を備える。上記固定部は、固定支え12と、フィンガー13と、アーク接触子18と、通電支え11を備える。
【0008】
図8の通電時の状態では、固定支え12から順に、フィンガー13、主接触子9、パッファシリンダ10、フィンガー15、及び通電支え11まで電気的に接続されている。ガス絶縁開閉装置は、開路指令信号を受信すると、上記可動部の位置が変化し、固定部のフィンガー13と可動部の主接触子9とが切り離され、アークを誘導するアーク接触子18、アーク接触子19により電気的に遮断される。パッファシリンダ10のフィンガー15との通電面、主接触子9のフィンガー13との通電面には、接触抵抗を低減するためにメッキが施されている。
【0009】
図8のアーク接触子18は、一例として図9に示すような構造のものが用いられる。図9に示すように、アーク接触子18は、台金16に耐弧片17を摩擦圧接、ロウ付け、真空ロウ付け、電子ビームなどの異種材料結合法により結合させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−211923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上述したガス絶縁開閉装置においては、装置の小型化や低コスト化の要請が強い。小電流では、ガス絶縁開閉装置の接触子の材料は、軽量かつ高導電率であるアルミニウム合金などが用いられている。
【0012】
一方、大電流では、図5に示すガス絶縁開閉装置において、電気抵抗を低減するため、接触子3の材料をアルミニウム合金よりも高導電性材料である銅合金の単一材料に置き換えるという手段がある。
【0013】
このように銅合金の単一材料への置き換えを行うと、接触子3の材料の比重が高くなるため、重量が増加する。接触子3の荷重が絶縁スペーサ7へ加わるため、絶縁スペーサ7の強度を増す必要があり、絶縁スペーサ7を用いたガス絶縁開閉装置が大型化するという問題がある。
【0014】
また、交流電流は、外周側に偏って通電する特徴を活かし、中心基材はアルミニウム合金を用い、外周材は通電容量に必要な厚みのみ銅合金を用いるという手段がある。このような手段としては、例えば図6に示す特許文献1に記載された技術がある。この技術は、内径にアルミニウムの中心基材3a、外径に銅の外周材3bと部材を分けて製作している。これら外周材3bと中心基材3aは、スライドコンタクト8によって電気的に接続されている。しかし、上記特許文献1に記載された技術では、構造が複雑であることから、部品点数が多くなり、製造工数が増加するという問題がある。
【0015】
また、中心基材に高温の粒子を吹き付ける溶射合金の複合材が案出されているものの、この溶射は、製膜中に発生した酸化物を含み、緻密な厚膜を形成することが困難であるという製造上の問題がある。
【0016】
図7に示す三相一括型のガス絶縁開閉装置の構造において、アルミニウム合金を用いた導体4は、長さが数m以上と長尺であることから、端部から中心部に向かうに従って重力による垂れ下がりが大きくなり、上記中心部で最大の撓みが発生する。つまり、導体4の中心部の重力方向で、導体4と密封容器1との間の距離が最も近くなり、密封容器1へ地絡し易くなる。
【0017】
また、短絡電流通電時、導体4間で大きな電磁力が働くと、導体4は振動し、通常の位置より偏心する。したがって、導体4間で絶縁距離を保てなくなると相間短絡が、導体4と密封容器1との間で絶縁距離が保てなくなると地絡が、それぞれ発生する。これらの相間短絡、地絡を防止するため絶縁距離を保つ構造としては、導体4を撓みにくい強度に強化する手段と、導体4の撓みの影響を小さくする手段がある。
【0018】
具体的に、前者の手段は、導体4の大径化、導体4の支持間の距離を短くする導体4の全長の短縮化などであり、後者の手段は、密封容器1の大径化などである。上記導体4の全長の短縮化は、導体4、絶縁スペーサ7、密封容器1の個数の増加を招き、その結果、構成部品の増加によるコストの増加となる。また、導体4と密封容器1の大型化は、機器が大型化するという問題がある。
【0019】
図8に示す摺動する通電部材であるパッファシリンダ10において、フィンガー15と摺動する通電面は、接触抵抗を低減する目的として数十μmの銀メッキ層が施されている。この通電面の銀メッキ層は、多数回の開閉動作によりフィンガー15との摺動によって損耗し、接触抵抗が上昇してしまう可能性がある。
【0020】
図8に示す主接触子9において、開閉時にフィンガー13と接離する部分が損傷するため、一定の回数動作後は交換を要するという問題がある。
【0021】
また、図8に示すアーク接触子18は、電流開閉時のアークにより損耗するため、図9に示すように融点が高くアークに対する耐性の高い耐弧片17と台金16とからなり、接触加圧による摩擦熱を利用した摩擦圧接や、電子ビームなどにより結合して製作される。これらの結合方法は、接合する形状に制約があり設計及び生産上の問題を抱えている。
【0022】
本発明は上述した事情を考慮してなされたものであり、電力系統の大容量化に対応し、一段と小型化及び軽量化を図ったガス絶縁開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、実施形態のガス絶縁開閉装置は、絶縁性ガスを封入した密封容器と、前記密封容器内に設けられ、通電するための接触子とを備えている。前記接触子は、中心基材と、この中心基材の外周面に設けられ前記中心基材より導電率の高い外周材とを有し、前記外周材は、コールドスプレー法により形成している。
【0024】
また、実施形態のガス絶縁開閉装置は、絶縁性ガスを封入した密封容器と、前記密封容器内に設けられた導体とを備えている。前記導体は、中心基材と、この中心基材の外周面に設けられ前記中心基材より弾性率が小さい外周材とを有し、前記外周材は、コールドスプレー法により形成している。
【0025】
さらに、実施形態のガス絶縁開閉装置は、絶縁性ガスを封入した密封容器と、前記密封容器内に設けられ、摺動する通電部材とを備えている。前記通電部材は、中心基材と、この中心基材の外周面に設けられ前記中心基材よりも導電率の高い外周材とを有し、前記外周材は、コールドスプレー法により形成している。
【0026】
そして、実施形態のガス絶縁開閉装置は、絶縁性ガスを封入した密封容器と、前記密封容器内に互いに接離可能に配置された可動部及び固定部と、前記可動部と前記固定部が接離して通電を行う主接触子と、電流遮断時にアークを誘導するアーク接触子とを備えている。前記主接触子は、中心基材と、この中心基材の外周面に設けられ前記中心基材よりも導電性の高い外周材とを有し、前記外周材は、コールドスプレー法により形成している。
【0027】
また、実施形態のガス絶縁開閉装置は、絶縁性ガスを封入した密封容器と、前記密封容器内に互いに接離可能に配置された可動部及び固定部と、前記可動部と前記固定部が接離して通電を行う主接触子と、電流遮断時にアークを誘導するアーク接触子とを備えている。前記アーク接触子は、中心基材と、この中心基材の外周面に前記中心基材よりも融点の高い外周材とを有し、前記外周材は、コールドスプレー法により形成している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るガス絶縁開閉装置の第1実施形態の接触子を示す断面図である。
【図2】本発明に係るガス絶縁開閉装置の第2実施形態の導体を示す断面図である。
【図3】本発明に係るガス絶縁開閉装置の第3実施形態及び第4実施形態において、摺動する通電部材として、接離する主接触子、及びアーク接触子を示す断面図である。
【図4】本発明に係るガス絶縁開閉装置の第5実施形態のアーク接触子を示す断面図である。
【図5】従来のガス絶縁開閉装置における接触子の一例を示す断面図である。
【図6】従来のガス絶縁開閉装置における通電部材の一例を示す断面図である。
【図7】従来のガス絶縁開閉装置における導体の一例を示す断面図である。
【図8】従来のガス絶縁開閉装置において、摺動する通電部材として、接離する主接触子、及びアーク接触子の一例を示す断面図である。
【図9】従来のガス絶縁開閉装置におけるアーク接触子の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明に係るガス絶縁開閉装置の各実施形態について、図面を参照して説明する。
【0030】
なお、以下の各実施形態では、従来の構成と同一又は対応する部分に同一の符号を付して説明する。
【0031】
(第1実施形態)
(構 成)
図1は本発明に係るガス絶縁開閉装置の第1実施形態の接触子を示す断面図である。
【0032】
図1に示すように、密封容器1の内部には、絶縁性ガス2が封入されている。密封容器1には、絶縁スペーサ7が接続され、この絶縁スペーサ7の中心部分に接触子3が設けられている。この接触子3は、フィンガー5を介して導体4と接続されている。絶縁スペーサ7は、通電する接触子3と密封容器1とを絶縁するとともに、接触子3を支持する機能を備えている。また、絶縁スペーサ7は、エポキシ樹脂などの絶縁物から形成されている。
【0033】
接触子3は、中心基材3aの外周面に、この中心基材3aよりも導電率の高い外周材3bがコールドスプレー法により均一の厚さに形成されている。この外周材3bの厚さは、通常のメッキでは形成することのできない100μm以上の膜厚で形成されている。なお、外周材3bの厚さは、導体4の重量及び通電容量に基づいて設定される。
【0034】
具体的に、本実施形態では、接触子3の中心基材3aに安価で軽量なアルミニウム又はアルミニウム合金が用いられ、外周材3bに比較的安価で導電率の高い銅又は銅合金が用いられている。
【0035】
上記コールドスプレー法とは、粉末を融解せずに、中心基材3aに衝突させる方法であり、搬送ガス温度は低く、不活性ガス雰囲気中での反応であり、中心基材3a表面及び粉末は、熱や酸化による変質がないため、緻密で厚膜の形成が可能である。
【0036】
すなわち、コールドスプレー法は、低温の不活性ガス雰囲気中、中心基材3aに粉末を衝突させてコーティングする方法であり、溶射で問題のあった酸化物を生成させず、緻密な皮膜を形成することができ、メッキよりも厚膜を形成可能である。
【0037】
(作用及び効果)
本実施形態では、中心基材3aの外周面に、高導電率材料の外周材3bを形成したことで、通電電流は、表皮効果により接触子3の外周材3bに偏って流れる比率が高くなるため、接触子3の電気抵抗を低減することが可能である。
【0038】
このように本実施形態によれば、大電流を通電するため、材料として、一般的に重量のある導電率の高い単一材料を用いる代わりに、接触子3にコールドスプレー法によるコーティングを形成したことにより、軽量で通電能力の高い接触部構造とすることができ、絶縁スペーサ7の大型化を回避し、コンパクトで経済的なガス絶縁開閉装置を提供することができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、接触子3の中心基材3aに安価で軽量なアルミニウム又はアルミニウム合金を用い、外周材3bに比較的安価で導電率の高い銅又は銅合金を用いたことにより、安価かつ軽量で、通電能力が高い接触部構造とすることができる。
【0040】
(第1実施形態の変更例)
なお、前記第1実施形態では、外周材3bに銅又は銅合金を用いたが、本変更例では、外周材3bに比較的高価であるものの、銅よりも導電率の高い銀又は銀合金を用いている。
【0041】
このように本変更例によれば、外周材3bに銀又は銀合金を用いることで、軽量で前記第1実施形態と比べて通電能力の高い接触部構造とすることができる。
【0042】
(第2実施形態)
(構 成)
図2は本発明に係るガス絶縁開閉装置の第2実施形態の導体を示す断面図である。
【0043】
本実施形態は、前記第1実施形態と同様、図2に示すように、密封容器1の内部に絶縁性ガス2が封入されている。密封容器1には、絶縁スペーサ7が接続され、この絶縁スペーサ7の中心部分に接触子3が設けられている。この接触子3は、フィンガー5を介して導体4と接続されている。絶縁スペーサ7は、通電する接触子3と密封容器1とを絶縁するとともに、接触子3を支持する機能を備えている。
【0044】
本実施形態のガス絶縁開閉装置では、上記のような構造を有する密封容器1及び導体4が、接触子3を含む絶縁スペーサ7を介して複数連結して構成されている。
【0045】
この導体4は、外周材より弾性率の高い中心基材4aの外周面に、この中心基材4aより導電率の高い外周材4bがコールドスプレー法により均一の厚さに形成されている。
【0046】
具体的に、本実施形態では、中心基材4aに鉄又は鉄鋼が用いられ、外周材4bに比較的安価かつ軽量で導電率の比較的高いアルミニウム又はアルミニウム合金が用いられている。
【0047】
(作用及び効果)
本実施形態では、導体4を従来の単一導体よりも、弾性率の大きい中心基材4aに、この中心基材4aよりも導電率の高い外周材4bをコールドスプレーした複合材としたことで、曲げ剛性が高く、通電性能に優れた導体4を構成することができる。そのため、導体4の中心部での重力による最大撓みや、短絡電流の通電時、相間の導体4間に生じる電磁力による撓みを抑制することができる。
【0048】
このように本実施形態によれば、導体4の撓みが抑制されることから、導体4と密封容器1との絶縁距離を十分に保つことができるため、密封容器1を小形化することができる。さらに、導体4が中心基材4aにより高い曲げ剛性を有することで、導体4の全長を長く形成しても撓みにくく、導体4と密封容器1との間の絶縁距離を十分に保つことができるため、接触子3及び絶縁スペーサ7、密封容器1の個数を削減することができ、経済性が向上する。
【0049】
また、本実施形態では、中心基材4aに鉄又は鉄鋼を用い、外周材4bに比較的安価かつ軽量で導電率の比較的高いアルミニウム又はアルミニウム合金を用いることで、曲げ剛性が高く、安価で通電性能に優れた導体4を構成することができる。
【0050】
(第2実施形態の変更例)
なお、前記第2実施形態では、外周材3bにアルミニウム又はアルミニウム合金を用いたが、本変更例では、外周材3bにアルミニウムより比較的高価であるものの、導電率の高い銅又は銅合金を用いることで、より大電流の通電が可能となる。
【0051】
(第3実施形態)
(構 成)
図3は本発明に係るガス絶縁開閉装置の第3実施形態及び第4実施形態において、摺動する通電部材として、接離する主接触子、及びアーク接触子を示す断面図である。
【0052】
図3に示すように、密封容器1の内部には、絶縁性ガス2が封入されている。密封容器1の内部は、投入及び遮断の開閉動作により位置が変化しない固定部と、位置が変化する可動部の部材に分けられる。上記可動部は、主接触子9と、パッファシリンダ10と、アーク接触子19を備える。上記固定部は、固定支え12と、フィンガー13と、アーク接触子18と、通電支え11を備える。これら主接触子9及びパッファシリンダ10は、本実施形態の通電部材を構成する。
【0053】
図3の通電時の状態では、固定支え12から順に、フィンガー13、主接触子9、パッファシリンダ10、フィンガー15、及び通電支え11まで電気的に接続されている。第3実施形態のガス絶縁開閉装置は、開路指令信号を受信すると、上記可動部の位置が変化し、固定部のフィンガー13と可動部の主接触子9とが切り離され、アークを誘導するアーク接触子18、アーク接触子19により電気的に遮断される。
【0054】
第3実施形態では、パッファシリンダ10のフィンガー15と摺動しながら通電する部分は、中心基材10aの外周面に、この中心基材10aよりも導電率の高い外周材10bがコールドスプレー法により均一の厚さに形成されている。
【0055】
上記コールドスプレー法とは、前記第1実施形態で説明したように、粉末を融解せずに中心基材10aに衝突させる方法であり、搬送ガス温度は低く、不活性ガス雰囲気中での反応であり、中心基材10a表面及び粉末は、熱や酸化による変質がないので、従来のメッキに比べて緻密で厚膜の形成が可能である。
【0056】
具体的に、第3実施形態では、中心基材10aに安価で軽量なアルミニウム又はアルミニウム合金が用いられ、外周材10bに比較的安価で導電率の高い銅又は銅合金が用いられている。
【0057】
(作用及び効果)
本実施形態では、中心基材10aに、この中心基材10aよりも導電率の高い外周材10bをコールドスプレー法により形成したことで、多数回の開閉動作時の摺動による損耗を受けても、外周材10bが厚膜であるため、外周材10bを長期に亘って維持することが可能である。
【0058】
このように本実施形態によれば、多数回の開閉動作後も、パッファシリンダ10のコーティングが維持され、電気抵抗を低く維持することができるため、摺動する通電部材の延命化が可能となり、経済的なガス絶縁開閉装置を提供することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、中心基材10aに安価で軽量なアルミニウム又はアルミニウム合金を用い、外周材10bに比較的安価で導電率の高い銅又は銅合金を用いることにより、軽量かつ通電能力の高い摺動する通電部材を構成することができるため、可動部を駆動するための操作エネルギーを小さくすることができ、コンパクトで経済的なガス絶縁開閉装置を提供することができる。
【0060】
(第3実施形態の変更例)
なお、前記第3実施形態では、外周材10bに比較的安価で導電率の高い銅又は銅合金を用いたが、本変更例では、外周材10bとしては比較的高価であるものの、銅よりも導電率の高い銀又は銀合金を用いている。
【0061】
このように本変更例によれば、外周材10bに銀又は銀合金を用いることで、前記第3実施形態と比べて一段と通電能力の高い、摺動する通電部材を構成することができる。
【0062】
(第4実施形態)
(構 成)
次に、本発明に係るガス絶縁開閉装置の第4実施形態を図3に基づいて説明する。なお、図3において、密封容器1の内部に設けられた固定部と可動部の構成及び作用は、前記第3実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0063】
本実施形態は、通電部材としての主接触子9のフィンガー13との通電面において、中心基材9aの外周面に、この中心基材9aよりも導電率の高い外周材9bがコールドスプレー法により均一の厚さに形成されている。
【0064】
具体的に、本実施形態では、中心基材9aに安価で軽量なアルミニウム又はアルミニウム合金が用いられ、外周材9bに比較的安価で導電率の高い銅又は銅合金が用いられている。
【0065】
(作用及び効果)
本実施形態では、中心基材9aに、この中心基材9aよりも導電率の高い外周材9bをコールドスプレー法により形成したことで、多数回の開閉動作時の接離による損傷を受けても、外周材9bが厚膜であるため、外周材9bを長期に亘り維持することが可能である。
【0066】
このように本実施形態によれば、多数回の開閉動作後も、主接触子9の外周材9bが長期に亘り維持され、電気抵抗を低く維持することができるため、接離する主接触子9の延命化が可能となり、経済的なガス絶縁開閉装置を提供することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、中心基材9aに安価で軽量なアルミニウム又はアルミニウム合金を用い、外周材9bに比較的安価で導電率の高い銅又は銅合金を用いることにより、軽量かつ通電能力の高い主接触子9を構成することができるため、可動部を駆動するための操作エネルギーを小さくすることができ、コンパクトで経済的なガス絶縁開閉装置を提供することができる。
【0068】
(第4実施形態の変更例)
なお、前記第4実施形態では、外周材9bに比較的安価で導電率の高い銅又は銅合金を用いたが、本変更例では、外周材9bとしては比較的高価であるものの、銅又は銅合金よりも導電率の高い銀又は銀合金を用いている。
【0069】
このように本変更例によれば、外周材9bに銀又は銀合金を用いることで、前記第4実施形態と比べて一段と通電能力が高い、接離する主接触子9を構成することができる。
【0070】
(第5実施形態)
(構 成)
図4は本発明に係るガス絶縁開閉装置の第5実施形態のアーク接触子を示す断面図である。
【0071】
図4に示すように、本実施形態のアーク接触子18は、中心基材18aの外周面に、この中心基材18aよりも融点の高い外周材18bがコールドスプレー法により均一の厚さに形成されている。この外周材18bは、アーク接触子18が高温のアークが点弧することから前記各実施形態より厚く形成されている。
【0072】
具体的に、本実施形態では、中心基材18aに安価な鉄又は鉄鋼材が用いられ、外周材18bにタングステン−銅合金などに代表される高融点の耐弧片材料が用いられている。一般的にタングステンに代表されるような高融点材料は、導電率が低いため、銀、銅といった導電性の高い材料を高融点材料に含有することで、耐アーク性に優れ、かつ導電性の高い耐弧片材料を形成できる。コールドスプレー法によると、各金属の含有量及び添加剤の種類により種々の材料を選択することができる。
【0073】
コールドスプレー法は、上述したように搬送ガス温度は低く、不活性ガス雰囲気中での反応であることから、中心基材18a表面及び粉末は、熱や酸化による変質がないため、アーク接触子18に内部欠陥の少ない、緻密で品質の安定したコーティングが可能である。
【0074】
(作用及び効果)
本実施形態では、アーク接触子18の外周材18bの融点が高いため、耐アーク性に優れたアーク接触子構造とすることが可能である。
【0075】
このように本実施形態によれば、コールドスプレー法は、中心基材18aの形状に制約が少ないため、設計及び生産性の向上したアーク接触子18を提供することが可能となる。
【0076】
また、本実施形態によれば、中心基材18aに安価な鉄又は鉄鋼材を用い、外周材18bに耐弧片の一例としてタングステン−銅合金に代表されるような高融点の耐弧片材料を用いることで、安価で耐アーク性に優れたアーク接触子18を提供することができる。
【0077】
(第4実施形態の変更例)
第5実施形態では、中心基材18aに安価な鉄又は鉄鋼材を用い、外周材18bに耐弧片の一例としてタングステン−銅合金に代表されるような高融点の耐弧片材料を用いたが、例えば、中心基材18aに比較的導電率の高い軽量なアルミニウム又はアルミニウム合金を用い、外周材18bに上記耐弧片を用いることで、通電性能が高く、耐アーク性に優れた軽量なアーク接触子を提供できる。
【0078】
また、中心基材18aに導電率の高い銅又は銅合金を用い、外周材18bに上記耐弧片を用いることで、中心基材18aにアルミニウムを用いたものよりも、さらに通電性能に優れたアーク接触子18を提供することができる。
【0079】
さらに、以上のように本発明の各実施形態を説明したが、これらの実施形態は、単なる例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更をすることができる。
【0080】
例えば、上述した各実施形態では、中心基材の外周面に外周材をコールドスプレー法により均一の厚さでコーティングするようにしたが、これに限らず、例えば第5実施形態におけるアーク接触子18の先端部を他の部分より局部的に厚く形成するようにしてもよい。これにより、耐アーク性に一段と優れたアーク接触子18を提供することができる。
【0081】
また、上述した各実施形態では、中心基材の外周面に外周材をコールドスプレー法によりコーティングするようにしたが、これに限らず、例えば第5実施形態において、キャップ状の外周材をコールドスプレー法により予め形成しておき、その外周材を中心基材に装着するようにしてもよい。
【0082】
これら各実施形態やその変更例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1…密封容器、2…絶縁性ガス、3…接触子、3a…中心基材、3b…外周材、4…導体、4a…中心基材、4b…外周材、5…フィンガー、7…絶縁スペーサ、8…スライドコンタクト、9…主接触子(通電部材)、9a…中心基材、9b…外周材、10…パッファシリンダ(通電部材)、10a…中心基材、10b…外周材、11…通電支え、12…固定支え、13…フィンガー、15…フィンガー、16…台金、17…耐弧片、18…アーク接触子、18a…中心基材、18b…外周材、19…アーク接触子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性ガスを封入した密封容器と、
前記密封容器内に設けられ、通電するための接触子と、を備えたガス絶縁開閉装置において、
前記接触子は、中心基材と、この中心基材の外周面に設けられ前記中心基材より導電率の高い外周材とを有し、
前記外周材は、コールドスプレー法により形成したことを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項2】
前記接触子の中心基材の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記外周材の材料が銅又は銅合金であることを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項3】
前記接触子の中心基材の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記外周材の材料が銀又は銀合金であることを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項4】
絶縁性ガスを封入した密封容器と、
前記密封容器内に設けられた導体と、を備えたガス絶縁開閉装置において、
前記導体は、中心基材と、この中心基材の外周面に設けられ前記中心基材より弾性率が小さい外周材とを有し、
前記外周材は、コールドスプレー法により形成したことを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項5】
前記導体の中心基材の材料が鉄又は鉄鋼材であり、前記外周材の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であることを特徴とする請求項4に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項6】
前記導体の中心基材の材料が鉄又は鉄鋼材であり、前記外周材の材料が銅又は銅合金であること特徴とする請求項4に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項7】
絶縁性ガスを封入した密封容器と、
前記密封容器内に設けられ、摺動する通電部材と、を備えたガス絶縁開閉装置において、
前記通電部材は、中心基材と、この中心基材の外周面に設けられ前記中心基材よりも導電率の高い外周材とを有し、
前記外周材は、コールドスプレー法により形成したことを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項8】
前記通電部材の中心基材の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記外周材の材料が銅又は銅合金であることを特徴とする請求項7に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項9】
前記通電部材の中心基材の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記外周材の材料が銀又は銀合金であることを特徴とする請求項7に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項10】
絶縁性ガスを封入した密封容器と、
前記密封容器内に互いに接離可能に配置された可動部及び固定部と、
前記可動部と前記固定部が接離して通電を行う主接触子と、
電流遮断時にアークを誘導するアーク接触子と、を備えたガス絶縁開閉装置において、
前記主接触子は、中心基材と、この中心基材の外周面に設けられ前記中心基材よりも導電性の高い外周材とを有し、
前記外周材は、コールドスプレー法により形成したことを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項11】
前記主接触子の中心基材の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記外周材の材料が銅又は銅合金であることを特徴とする請求項10に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項12】
前記主接触子の中心基材の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記外周材の材料が銀又は銀合金であることを特徴とする請求項10に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項13】
絶縁性ガスを封入した密封容器と、
前記密封容器内に互いに接離可能に配置された可動部及び固定部と、
前記可動部と前記固定部が接離して通電を行う主接触子と、
電流遮断時にアークを誘導するアーク接触子と、を備えたガス絶縁開閉装置において、
前記アーク接触子は、中心基材と、この中心基材の外周面に前記中心基材よりも融点の高い外周材とを有し、
前記外周材は、コールドスプレー法により形成したことを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項14】
前記アーク接触子の中心基材の材料が鉄又は鉄鋼材であり、前記外周材の材料が耐弧片であることを特徴とする請求項13に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項15】
前記アーク接触子の中心基材の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記外周材の材料が耐弧片であることを特徴とする請求項13に記載のガス絶縁開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−161156(P2012−161156A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18840(P2011−18840)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】