説明

ガス遮断器

【課題】両接触子の軸を容易に合わせることができ、かつ小形でありながら高い絶縁性を確保することが可能なガス遮断器を提供する。
【解決手段】筒状の絶縁物である絶縁筒12により可動接触子部3と軸が合った状態で固定されるガス遮断器において、絶縁筒12の下側の側面に開口部22を設けた。この絶縁筒12の円周方向に対する開口部22の開口角度Qは60°以上で構成し、開口部22の軸方向の長さL(m)は、両接触子部間に印加され得る最大の直流電圧をU(V)とした場合、「4×10-8 ×U」以上となるような長さで構成する。また、開口部の縁23は角張らず、丸く滑らかに形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力送電システムにおいて電流開閉を行うガス遮断器であって、小形かつ高い絶縁性を確保する技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス遮断器は、電力送配電システムにおいて、電流開閉を行うスイッチの役割を果たす機器である。ここでは、72kV以上の高電圧送電系統の保護用開閉器として広く使用されているパッファ形ガス遮断器を例にとって説明する。
【0003】
図7は、従来のガス遮断器の容器軸方向の断面構造図であり、図8は、容器の軸方向に直交する断面の構造図である。図7に示される各部品は基本的に同軸円筒形状である。また、図7において、中心線の上半分と下半分とは異なる状態を示すものであり、上半分は遮断器投入状態、すなわち通電状態を示しており、下半分は遮断動作中の状態を示している。
【0004】
接地された金属からなる密閉容器1内には、絶縁ガスAが充填されている。絶縁ガスAとしては、絶縁性能およびアーク遮断性能(消弧性能)が非常に優れているSF6 ガスが使用されることが多い。また、近年では、SF6 ガス(六弗化硫黄ガス)が高い地球温暖化作用を有することから、地球環境への影響を考え、SF6 ガスよりも地球温暖化作用の小さいガス、例えばCO2 ガスなどを使用することも検討されている(非特許文献1)。
【0005】
密閉容器1内には、固定通電接触子2aと、固定アーク接触子2bと、固定フレーム2c等で構成される固定接触子部2が設けられ、これが容器1に絶縁固定されている。また、可動通電接触子3a、可動アーク接触子3b、絶縁ノズル3c、パッファシリンダ3dが、駆動ロッド3eに取付けられ構成される可動接触子部3が、密閉容器1内に移動可能に、かつ容器から支持絶縁物11aにより絶縁支持され、さらに、固定接触子部2に対向して設置されている。対向配置された両接触子部は一般的に水平又は垂直に配置されるが、図7に示される接触子部は水平に配置した例である。
【0006】
ここで、固定接触子部2は、密閉容器1および可動接触子部3と電気的に絶縁され、かつ可動接触子部3が投入可能なように両者の軸が合致した状態で固定保持されている必要がある。このためには、固定接触子部2は、一般的に、図7に示めされるように、筒状の絶縁物である絶縁筒12により可動接触子部3と軸が合った状態で固定される(特許文献1参照)。あるいは、図9のように、支持絶縁物11bにより、密閉容器1側に対して直接固定される場合もある。
【0007】
このようなガス遮断器において、電流は、導体4a,4bと図示しないブッシングを介して外部に引き出される。可動接触子部3の可動は、駆動ロッド3eが、図示されていない絶縁操作棒を介して、駆動装置5内の可動部に連結されることにより達成される。
【0008】
固定アーク接触子2bおよび可動アーク接触子3bは、遮断器投入時では接触導通状態にあり、遮断動作時においては相対移動により開離するように構成されている。
【0009】
さらに、この動作とともに、固定されているピストン7がパッファシリンダ3dの内部空間を圧縮して同部の圧力を上昇させる。そして、パッファシリンダ3d内に存在する絶縁ガスAが高圧力のガス流8となり、ノズル3cによって整流されアーク接触子2b,3b間に発生したアーク6に対して強力に吹き付けられる。これにより、アーク接触子2b,3b間に発生した導電性のアーク6は消滅し電流は遮断される。
【0010】
なお、以上の説明においては、固定接触子部2の構成要素である固定通電接触子2a、固定アーク接触子2bは動作しないものとしたが、可動接触子部3の動作に伴い、逆方向、すなわち図7および9の左向きに動作し、両者の相対的な開離速度を高める方式も存在する。
【非特許文献1】内井、河野、中本、溝口、「環境低負荷型72kV級CO2 ガス遮断器モデルの開発」、電気学会論文B、124巻、3号、PP.476〜484、2004年
【特許文献1】特開2000−113782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、接触子部が地面に対し横向きに配置されたガス遮断器において、図7に示すように絶縁筒12により固定接触子部2を絶縁支持した場合、可動接触子部3の投入および遮断動作の繰り返しにより摺動部分から発生する金属異物21が当該絶縁筒12の内面に堆積し、両接触子間の絶縁性が低下する懸念があった。
【0012】
また、このような金属異物21が存在した場合においても十分な絶縁性を維持しようとすると、絶縁物の沿面方向の電界をあらかじめ低く抑えて設計する必要があった。このためには、沿面距離を長く取る、すなわち絶縁筒12の軸方向長さを長く構成する必要があり、結果として、ガス遮断器を小形化するのが困難となっていた。
【0013】
一方、図9に示すように支持絶縁物11bにより、固定接触子部2を密閉容器1側から固定した場合、固定接触子部2と可動接触子部3は固体絶縁物ではなくガスで絶縁されるため、異物が停滞することもなく、安定した絶縁性を維持することができる。
【0014】
しかしながら、この構成の場合、両接触子を保持する部分が互いに離れているため、両接触子の軸を合わせることが極めて難しかった。接触子の軸ずれは、投入時において接触子にかかる機械的衝撃が大きくなるなどの不具合の原因となり、結果として安定した品質を保つことが困難であった。
【0015】
また、このような構成の場合、接触子の軸ずれ量は密閉容器1、支持絶縁物11a、11bなどの部品の加工精度に依存するため、軸ずれ量がばらつきが発生し、管理し難いという課題があった。
【0016】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、両接触子の軸を容易に合わせることができ、かつ小形でありながら高い絶縁性を確保することが可能なガス遮断器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明は、密閉された容器内に絶縁ガスが充填されるとともに、第1の接触子部と第2の接触子部が対向して配置され、前記第1の接触子部と第2の接触子部とにはそれぞれ第1のアーク接触子と第2のアーク接触子とが設けられ、前記第1のアーク接触子と第2のアーク接触子とは通常運転時には接触導通状態にあり電流遮断動作時においては相対移動により開離するように構成され、前記第1の接触子部と第2の接触子部は筒状の絶縁物からなる絶縁筒により互いに絶縁保持されるよう構成されたガス遮断器において、前記絶縁筒の側面であって、前記第1のアーク接触子と第2のアーク接触子とが開閉動作により摺動する位置の近傍に開口部を設けたことを特徴とする
【0018】
このような本発明のガス遮断器においては、第1のアーク接触子と第2のアーク接触子との開閉動作により摺動部分から金属異物が発生するが、この金属異物は、絶縁筒側面に設けられた開口部から排出され、絶縁筒内面に停滞することがない。したがって、ガス遮断器の小形化を維持しつつ、安定した絶縁性を維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上のような本発明では、両接触子の軸を容易に合わせることができ、かつ小形でありながら高い絶縁性を確保することが可能なガス遮断器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る代表的な実施形態について、図1〜図6を参照して具体的に説明する。
【0021】
(1)第1の実施形態
(1−1)構成
本発明の第1の実施形態におけるガス遮断器について図1および図2を用いて説明する。図1は、ガス遮断器における密閉容器の軸方向の断面構造図であり、図2は同じく密閉容器1の軸に直交する方向の断面構造図である。なお、すでに説明した従来のガス遮断器と同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0022】
本実施形態のガス遮断器の基本的な構成は、図7に示した従来のガス遮断器と同一であり、筒状の絶縁物である絶縁筒12により可動接触子部3と軸が合った状態で固定されるタイプのガス遮断器である。このような本実施形態の特徴的構成は、絶縁筒12の下側の側面であって、固定アーク接触子2bと可動アーク接触子3bとが開閉動作により摺動する位置の近傍に開口部22を設けた点にある。
【0023】
図2の断面図に示すように、この絶縁筒12の円周方向に対する開口部22の開口角度Qは60°以上で構成し、開口部22の軸方向の長さL(m)は、両接触子部間に印加され得る最大の直流電圧をU(V)とした場合、「4×10-8 ×U」以上となるような長さで構成する。また、開口部の縁23は角張らず、丸く滑らかに形成している。
【0024】
さらに、密閉容器1の開口部22と対向する位置に、開口部22よりも大きい面積からなる凹部24が設けられ、金属異物21が溜められるようになっている。また、この凹部24には、蓋25が着脱自在に取り付けられている。
【0025】
(1−2)作用効果
[開口部及び凹部を設けた装置構成上の作用効果]
以上のような構成からなる本実施形態のガス遮断器においては、上述のとおり、可動接触子部3の投入および遮断動作の繰り返しにより摺動部分から金属異物21が発生するが、この金属異物21は、絶縁筒12の下側側面に開口部22が設けられているため、絶縁筒内面に停滞することがない。すなわち、金属異物21は、開口部22を通して落下し、その下の凹部24の中に堆積される。
【0026】
また、本実施形態においては、図2に示すように、開口部22の開口角度Qを概ね60°以上の開口角度を設けているため、開口部22の開口角度Qを大きく構成することによる絶縁筒の機械的な強度が低下するという弊害を防止しつつ、絶縁筒12内における金属異物21の停滞を防止することができる。
【0027】
一方、開口部22の下に設けた凹部24は、開口部22より広い面積を確保して構成されているため、開口部22を通じて落下した金属異物は漏れなく凹部24の中に堆積されることとなる。
【0028】
ここで、接地された金属である密閉容器1の内面に金属異物21が堆積した場合、金属異物21は密閉容器1内面の電界によって浮上し、浮上した金属異物が高電圧部に接触すると絶縁破壊が引き起こされる可能性がある。そこで、本実施形態においては、金属異物21は凹部24の中に堆積するが、凹部24の中の電界は静電シールドの効果により低く抑えられているため、金属異物21が浮上し不具合を生じることは無い。
【0029】
また、開口部の縁23は角張らず、丸みを付けて成形することで、開口部の縁部分に電界の集中を避けることができるのみならず、絶縁物に荷重がかけられた際の応力の集中を避けることができ、機械的な信頼性も確保することができる。
【0030】
また、従来のガス遮断器においては、電流遮断を行うと、アーク接触子がアークにより溶損するため、定期的に、あるいは遮断した電流量に応じて、アーク接触子を点検し、必要であれば交換することが必要であるが、本実施形態では、この凹部24に、開閉可能な蓋25を設けたため、蓋25を開けた部分から開口部22を通じてアーク接触子の状態を容易に点検、交換することが可能である。また、凹部24に堆積した金属異物21は、蓋25を開放することで容易に回収除去することができる。
【0031】
なお、本実施形態のガス遮断器では、筒状の絶縁物である絶縁筒12により可動接触子部3と軸が合った状態で固定されるタイプで構成しているため、ガス遮断器の両接触子部を互いに離れた支持絶縁物ではなく、絶縁筒により保持することができる。よって、組立て時において、接触子の軸を安定かつ容易に合わせることができる。
【0032】
[開口部を設けた場合の電界分布について]
ここで、図3と図4を用いて、ガス中に置かれた固体絶縁物の両端に交流電圧、すなわち通常運転時の電圧が印加された場合の電位分布の例を示す。図3は、絶縁筒12に開口部を設けない場合の電位分布を示し、図4は、絶縁筒12に開口部22を設けた場合を電位分布を示す。また、図3及び図4において、固体絶縁物32は絶縁筒12に、両端の電極31は接触子に相当し、等電位線33の密な部分では電界が高く、疎な部分では電界が低いことを示している。
【0033】
図3と図4との対比からわかる通り、図4の固体絶縁物32に開口部を設けた場合には、固体絶縁物32の沿面方向の電界が、図3の開口部なしの場合に比較して低くなる、すなわち等電位線33が疎になっている。一方、図4に表れるように、開口部のガスギャップにおける電界は高く、すなわち等電位線33が密になるものの、一般的にガスの耐電圧性は、固体絶縁物沿面における耐電圧性に比べて高い。
【0034】
このようなことから、本実施形態においては、絶縁筒12に開口部22を設けて固体絶縁物沿面の電界を低く抑えることで、両電極31間の絶縁性を飛躍的に高めることができる。すなわち、印加される電界が同一であれば、両電極31間の距離を短くすることができ、結果として高い絶縁性を維持したまま全体を小形化することが可能である。
【0035】
以上のように、本実施形態におけるガス遮断器においては、開口部22により金属異物21が停滞する可能性が低くなることに加え、たとえ開口部22の周辺に金属異物21が停滞してしまった場合でも、開口部22周辺の電界は低く抑えられているため、十分高い絶縁性を維持することができる。
【0036】
ところで、絶縁筒12には通常運転時における交流電圧以外にも、直流電圧、すなわち一定電圧が長時間にわたって印加される場合がある。この場合、電位分布はガスおよび固体絶縁物の抵抗率により決定される。
【0037】
図5は、図4と絶縁筒12及び開口部の構成を全く同じにして、直流電圧が十分長時間印加された後、すなわち完全に直流場に遷移した後の電位分布を示したものである。一般にガスは、固体絶縁物に比べ抵抗率がはるかに高いため、図5に示すように直流場においては、固体絶縁物の開口部におけるガスギャップに電界が集中する。したがって、直流電圧の印加を想定した場合においても十分高い絶縁性を維持するためには、当該開口部のギャップ距離はある程度の長さを確保し、電界は概ね25MV/m以下に抑える必要がある。
【0038】
そこで、本実施形態のガス遮断器では、両接触子部間に印加されうる最大の直流電圧をU(V)とした場合、絶縁筒12の開口部22の軸方向の長さL(m)を「4×10-8 ×U」以上となるように構成することで、直流電圧の印加を想定した場合においても十分高い絶縁性を維持することができる。
【0039】
以上示したとおり、本実施形態によれば、接触子の軸を安定かつ容易に合わせることができ、かつ小形でありながら高い絶縁性を確保することが可能なガス遮断器を提供することができる。また、アーク接触子を容易に点検、交換することが可能である。
【0040】
(2)第2の実施形態
(2−1)構成
本発明の第2の形態を図6を用いて説明する。図6において、中心線の上半分と下半分とは異なる遮断器の構成を示すものであり、中心線より上側には第1の実施形態において説明したガス遮断器の遮断動作中の状態を表し、中心線より下側に本実施形態におけるガス遮断器の遮断動作中の状態を表す。なお、図において中心線より上側に表される第1の実施形態の構成においては、上述の通り本来、開口部を絶縁筒12の下側に設けたものであるが、ここでは、本実施形態の構成と対比説明する便宜上、上側に開口部を示したものである。
【0041】
図6に示す通り、本実施形態における基本的な構成は第1の形態と同様であるが、アーク6から絶縁筒12の開口部22に至る経路において、ガスの流れを妨げる覆い27を設けた点に特徴を有する。具体的には、図6に示すように、ノズル3cの先端部に、ノズル3cの外周方向に向けて、円盤状に覆い27を設けたものである。この覆い27は、固定アーク接触子2bおよび可動アーク接触子3bが開離する際に、これらアーク接触子間に発生するアークと、絶縁筒12の開口部22との経路を遮る位置に設けられている。
【0042】
なお、このノズル3cは、上述のとおり、固定アーク接触子2bおよび可動アーク接触子3bの遮断動作時における相対移動により開離し、両接触子2b,3b間にアーク6が発生する際、これに吹き付けられるパッファシリンダ3d内からの高圧力のガス流8を、整流させるものである。
【0043】
(2−2)作用効果
一般的にアークは非常に高温であり、特に大電流遮断時にアーク6へと吹付けられた絶縁ガスAは高温、高圧のガスとなってノズル3cより排出される。高温のガスは密度が低いため、常温のガスにくらべて絶縁性が著しく低下していることが明らかになっている。
【0044】
ここで、図1に示した第1の実施形態においては、絶縁筒12に開口部22があることで、ノズルから開口部22へ至る高温ガスの流れ26が生じ易い。このため、絶縁筒12の沿面及び通電接触子2a、3a間の絶縁性が低下する恐れがあった。
【0045】
そこで、本実施形態のガス遮断器では、ノズル3cの先端部に、ノズル3cの外周方向に向けて、覆い27を設けたことで、絶縁筒12に開口部22を設けた場合においても、開口部22へ至る高温ガスの流れ26を抑制することができ、絶縁性の低下を防止することができる。
【0046】
以上の通り、本実施形態によれば、第1の実施形態における効果に加え、絶縁筒12の開口部22側に流れ込む高温ガスにより絶縁性が低下するのを防止することができ、さらに品質の高いガス遮断器を提供することができる。
【0047】
(3)他の実施形態
本発明は、上記のような実施形態に限定されるものではなく、例えば以下の態様も含むものである。すなわち、上記実施形態においては、絶縁ガスAとしてSF6 ガスを用いて構成しているが、本発明では、SF6 ガスに限られず、これよりも地球温暖化係数の小さいガスを使用することも可能である。例えば絶縁ガスAとしてCO2 ガスを用いたものである。
【0048】
ここで、密閉容器1に封入する絶縁ガスとしては、絶縁および消弧性能に優れたSF6 ガスを使用することが多い。しかしながら、SF6 ガスはCO2 ガスの23,900倍の地球温暖化作用を有するといわれており、その使用を削減することが望まれている。
【0049】
しかしながら、SF6 ガスに比べて環境への影響が小さいガス、例えば空気、N2 ガス、CO2 ガスなどを代替として使用すると、ガス自身の絶縁性能がSF6 ガスよりも劣るため、絶縁筒沿面の絶縁性が低下する懸念があった。逆に、代替ガスを使用した場合においても絶縁筒沿面の十分な絶縁性を維持しようとすると、絶縁物の沿面方向の電界をあらかじめ低く抑えて設計する、つまり絶縁筒12の軸方向長さを長くする必要があり、結果としてガス遮断器を小形化するのが困難であった。
【0050】
本発明においては、第1及び第2の実施形態で示したガス遮断器の構成を採用することにより、絶縁ガスとしてSF6 ガスよりも地球温暖化係数の小さいガスを使用しながらも、絶縁筒沿面の絶縁性の低下、およびガス遮断器の大形化を防ぐことが可能となる。これにより、本発明では、地球温暖化への影響が低減され、かつ、小形で品質の高いガス遮断器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるガス遮断器の軸方向の断面構造図。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるガス遮断器の軸直交方向の断面構造図。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるガス遮断器の作用を示す開口部を設けない場合の絶縁物周辺の電位分布を示す模式図。
【図4】本発明の第1の実施形態におけるガス遮断器の作用を示す開口部を設けた場合の絶縁物周辺の電位分布を示す模式図。
【図5】本発明の第1の実施形態におけるガス遮断器の作用を示す開口部を設けた場合の絶縁物周辺の直流場電位分布を示す模式図。
【図6】本発明の第2の実施形態におけるガス遮断器の軸方向断面構造図。
【図7】従来のガス遮断器の軸方向断面構造図。
【図8】従来のガス遮断器の軸直交方向断面構造図。
【図9】従来のガス遮断器の軸方向断面構造図。
【符号の説明】
【0052】
1…密閉容器
2…固定接触子部
2a…固定通電接触子
2b…固定アーク接触子
2c…固定フレーム
3…可動接触子部
3a…可動通電接触子
3b…可動アーク接触子
3c…ノズル
3d…パッファシリンダ
3e…駆動ロッド
4a、4b…導体
5…駆動装置部
6…アーク
7…ピストン
8…ガス流
9…接触子部
11a、11b…支持絶縁物
12…絶縁筒
21…金属異物
22…開口部
23…縁
24…凹部
25…蓋
26…高温ガスの流れ
27…覆い
31…電極
32…固体絶縁物
33…等電位線
A…絶縁ガス
L…開口部ギャップ長
Q…開口角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉された容器内に絶縁ガスが充填されるとともに、第1の接触子部と第2の接触子部が対向して配置され、前記第1の接触子部と第2の接触子部とにはそれぞれ第1のアーク接触子と第2のアーク接触子とが設けられ、前記第1のアーク接触子と第2のアーク接触子とは通常運転時には接触導通状態にあり電流遮断動作時においては相対移動により開離するように構成され、前記第1の接触子部と第2の接触子部は筒状の絶縁物からなる絶縁筒により互いに絶縁保持されるよう構成されたガス遮断器において、
前記絶縁筒の側面であって、前記第1のアーク接触子と第2のアーク接触子とが開閉動作により摺動する位置の近傍に開口部を設けたことを特徴とするガス遮断器。
【請求項2】
前記第1接触子部と第2接触子部とは、その軸を水平にして配置され、
前記開口部は、前記第1接触子部と第2接触子部とに対して前記絶縁筒の下側に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のガス遮断器。
【請求項3】
前記開口部は、前記絶縁筒の円周方向に対する開口角度を60°以上として設けられたことを特徴とする請求項2に記載のガス遮断器。
【請求項4】
前記開口部の絶縁筒軸方向に対する長さL(m)は、前記第1の接触子部と第2の接触子部とに印加される最大の直流電圧をU(V)とした場合、
L(m)=4×10-8 ×U(V)
によって求められる値以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項5】
前記密閉容器の前記開口部の下側の位置に、前記開口部より面積が大きい凹部が設けられたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項6】
前記凹部には、開閉可能な蓋が設けられたことを特徴とする請求項5に記載のガス遮断器。
【請求項7】
前記開口部の縁部を、丸みを付けて成形したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項8】
前記第1のアーク接触子と第2のアーク接触子の外周には、これら2つのアーク接触子が開離する際に、アーク接触子間に発生するアークに対して吹き付けられる高圧力のガス流を整流させるノズルが設けられ、
このノズルには、前記アークと、前記絶縁筒の開口部とを結ぶ経路に、前記ガス流を遮る覆いが設けられたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項9】
密閉容器内に充填された前記絶縁ガスとして、六弗化硫黄ガスよりも地球温暖化係数の小さいガスを使用したことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のガス遮断器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate