説明

ガス遮断器

【課題】小形化および低コスト化を実現することができるガス遮断器を提供する。
【解決手段】ガス遮断器100は、消弧ガスが充填されたタンク1と、タンク1内に固定された固定接触子9、及びタンク1内で固定接触子9に対して離接可能に設けられた可動接触子13を含む遮断部30と、可動接触子13に連結された絶縁ロッド(連結ロッド)20を含みこの絶縁ロッド20を介して可動接触子13を進退動させる駆動力を伝達する伝達部40とを備え、複数の可動接触子13が一つの絶縁ロッド20に連結されており、絶縁ロッド20に複数のピン連結部(連結軸)24が設けられ、複数の可動接触子13は、複数のピン連結部24にそれぞれ連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消弧ガスが充填されたタンク内に開閉動作をする遮断部を収納したガス遮断器に関し、特に複数の遮断部が一つの連結ロッドを介して駆動する構成の多点切ガス遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、72kV以上の超高圧送電系統において、一般的に用いられている多点切ガス遮断器として、例えば特許文献1に開示されている2点切パッファ式ガス遮断器がある。図3は例えば特許文献1に開示されている従来の2点切パッファ式ガス遮断器の横断面図である。図3において、2点切パッファ式ガス遮断器90は、消弧性ガスが充填されている接地タンク1と、接地タンク1内に収納され開閉動作をする2つのパッファ遮断部30(図3の右側のパッファ遮断部30は省略されている)と、この2つのパッファ遮断部30と外部の駆動装置10との間に設けられて駆動装置10の駆動力をパッファ遮断部30に伝達する伝達部39とを含んで構成されている。
【0003】
接地タンク1内には六フッ化硫黄ガス等の消弧性ガスが充填されている。接地タンク1内部には、1つの絶縁支持筒2と2つの絶縁支持筒5(図3の右側の絶縁支持筒5は省略されている)とが設けられている。絶縁支持筒2には、ブラケット3、及びパッファ遮断部30の主要部が支持されている。一方、絶縁支持筒5には、ブッシング6の中心導体7、導体8、パッファ遮断部30の固定接触子9が支持されている。また、接地タンク1の外部に駆動装置10が設けられている。
【0004】
パッファ遮断部30は、固定接触子9と、固定接触子9に対して進退動可能に支持されて固定接触子9と離接する可動接触子13とを有している。可動接触子13は、パッファシリンダ11及びロッド12と一体化されて設けられている。パッファシリンダ11には、絶縁物ノズル14が取り付けられている。ブラケット3に固定されたパッファピストン15とパッファシリンダ11によってパッファ室16が形成されている。
【0005】
パッファ遮断部30の遮断動作は、駆動装置10からの駆動力が伝達部39により2つのパッファ遮断部30に伝達されて行われる。すなわち、駆動装置10により操作ロッド17に加えられる図3の矢印F方向の駆動力が、伝達部39の構成要素である、リンク18、レバー19、絶縁ロッド20、リンク21、V形リンク22、及びリンク23を介して2つのパッファ遮断部30に伝達され、可動接触子13やパッファシリンダ11を図1の矢印G方向に移動させることによりなされる。省略されている図3の右側のパッファ遮断部30の可動接触子13やパッファシリンダ11は、矢印Gと反対方向に移動する。固定接触子9及び可動接触子13間の開離とともに発生するアークに対しては、パッファ室16で圧縮された消弧性ガスが、絶縁物ノズル14を介して吹き付けられて消弧する。
【0006】
【特許文献1】実開昭60−115428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような構造の2点切パッファ式ガス遮断器90においては、左右のパッファ遮断部30の可動接触子13に連結された2つのリンク21は、絶縁ロッド20に設けられた1ヶ所のピン連結部24に連結されている。
【0008】
図4は図3の伝達部39の様子を詳しく示す伝達部39を図3の矢印E方向から見た矢印E視上面図である。図4において、左右のV形リンク22、リンク23、およびパッファ遮断部30を概略同一平面上に配置するためには、ピン連結部24の連結方法において、例えば本例のように、絶縁ロッド20を夾んで片側に一方のパッファ遮断部30に連結されたリンク21、反対側に他方のパッファ遮断部30に連結されたリンク21を連結する方法がある。
【0009】
しかしながら、このような連結の方法では、伝達部39の構造がピン連結部24の中心軸を含む面に対して面対称でないので、開閉動作時に、リンク21を介して駆動力が絶縁ロッド20に伝達される際、絶縁ロッド20に図4中矢印H1,H2で示すようなねじり方向の力(回転モーメント)が働く、そのため、従来絶縁ロッド20は、このねじり方向の力に耐えるために所定の太さにする必要があった。また、同様の理由から、リンク21とV形リンク22を連結するピン25は、開閉動作時に、図4の上側と下側とがそれぞれ反対方向の力を受けるため、これに抗するべくピンの直径を大きくとる必要があった。
【0010】
以上の様に、従来の多点切ガス遮断器においては、伝達部39の構造がピン連結部24の中心軸を含む面に対して面対称でないので、開閉動作時に作用する回転モーメントに抗するべく、所定の大きさの径とする必要があり、絶縁ロッドやピン連結部を小形化することができなかった。これは遮断器の小形化および低コスト化を阻害するものであり、改善が求められていた。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、絶縁ロッド(連結ロッド)やピン連結部にかかる力を低減することができ、絶縁ロッドやピン連結部の小形化を図ることができるとともに、ガス遮断器の小形化および低コスト化を実現することができるガス遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のガス遮断器は、消弧ガスが充填されたタンクと、タンク内に固定された固定接触子、及びタンク内で固定接触子に対して離接可能に設けられた可動接触子を含む遮断部と、可動接触子に連結された連結ロッドを含みこの連結ロッドを介して可動接触子を進退動させる駆動力を伝達する伝達部とを備えたガス遮断器において、複数の可動接触子が一つの連結ロッドに連結されており、連結ロッドに複数の連結軸が設けられ、複数の可動接触子は、複数の連結軸にそれぞれ連結されていることを特徴とする。
【0013】
なお、ここで「連結する」とは、直接連結するものも、所定の連結部材を介在させて間接的に連結するものも含むものとする。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、複数の可動接触子が一つの連結ロッドに連結されており、連結ロッドに複数の連結軸が設けられ、複数の可動接触子は、複数の連結軸にそれぞれ連結されているので、例えば、連結ロッドを夾む2枚のリンクを介して連結軸と可動接触子を連結する等の構造として、連結ロッドを夾む伝達部の構造を対称なものとすることができ、これにより、連結ロッドや連結部にかかる力を低減することができ、連結ロッドやピン連結部の小形化を図ることができるとともに、ガス遮断器の小形化および低コスト化を実現することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明にかかるガス遮断器の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
実施の形態
図1は本発明の実施の形態の2点切パッファ式ガス遮断器の横断面図である。図2は図1の伝達部の様子を詳しく示す図1の伝達部の矢印A視上面図である。図1において、2点切パッファ式ガス遮断器100は、消弧性ガスが充填されている接地タンク(容器)1と、接地タンク1内に収納され開閉動作をする2つのパッファ遮断部30(図1の右側のパッファ遮断部30は省略されている)と、この2つのパッファ遮断部30と外部の駆動装置10との間に設けられて駆動装置10の駆動力をパッファ遮断部30に伝達する伝達部40とを含んで構成されている。
【0017】
さらに詳細に説明する、接地タンク1内には六フッ化硫黄ガス等の消弧性ガスが充填されている。接地タンク1内部には、1つの絶縁支持筒2と2つの絶縁支持筒5(図1の右側の絶縁支持筒5は省略されている)とが設けられている。絶縁支持筒2には、ブラケット3、及びパッファ遮断部30の主要部が支持されている(図1の右側のパッファ遮断部30は省略されている)。一方、絶縁支持筒5には、ブッシング6の中心導体7、導体8、パッファ遮断部30の固定接触子9が支持されている。2つのパッファ遮断部30は、伝達部40の絶縁ロッド20を中心として面対称な位置に配置されている。また、接地タンク1の外部に駆動装置10が設けられている。
【0018】
パッファ遮断部30は、固定接触子9と、固定接触子9に対して進退動可能に支持されて固定接触子9と離接する可動接触子13とを有している。可動接触子13は、パッファシリンダ11及びロッド12と一体化されて設けられている。パッファシリンダ11には、絶縁物ノズル14が取り付けられている。ブラケット3に固定されたパッファピストン15とパッファシリンダ11によってパッファ室16が形成されている。
【0019】
パッファ遮断部30の遮断動作は、駆動装置10からの駆動力が伝達部40により2つのパッファ遮断部30に伝達されて行われる。すなわち、駆動装置10により操作ロッド17に加えられる図1の矢印B方向の駆動力が、伝達部40の構成要素である、リンク18、レバー19、絶縁ロッド20、リンク21、V形リンク22、及びリンク23を介して2つのパッファ遮断部30に伝達され、可動接触子13やパッファシリンダ11を図1の矢印C方向に移動させることによりなされる。省略されている図1の右側のパッファ遮断部30の可動接触子13やパッファシリンダ11は、矢印Cと反対方向に移動する。固定接触子9及び可動接触子13間の開離とともに発生するアークに対しては、パッファ室16で圧縮された消弧性ガスが、絶縁物ノズル14を介して吹き付けられて消弧する。絶縁ロッド20は、絶縁支持筒2内を貫通するように配置され、駆動装置10側のリンク群とパッファ遮断部30側のリンク群とを連結している。絶縁ロッド20は、絶縁材料で作製され、駆動装置10からの駆動力をパッファ遮断部30側に伝達するとともに、駆動装置10とパッファ遮断部30との間を電気的に絶縁する。
【0020】
絶縁ロッド20とリンク21とを連結する連結部(連結軸)を構成するピン連結部24は、本実施の形態においては、2箇所に設けられている。すなわち、2つのパッファ遮断部30に延びるリンク(絶縁ロッド20に連結する連結部材)21のそれぞれに対してピン連結部24が設けられている。そして、図2に示されるように、リンク21は、絶縁ロッド20を挟むように、それぞれ2枚が設けられている。そして、絶縁ロッド20とリンク21とが構成する構造は、ピン連結部24に平行な面(図2中一点鎖線D1)に対して面対称であり、且つピン連結部24に垂直な面(図2中一点鎖線D2)に対しても面対称な構造となる。そのため、絶縁ロッド20にかかるねじり力やピン25にかかる過大な曲げ力をなくすことができ、絶縁ロッド20およびピン25の小形化が可能になる。
【0021】
以上説明したように、本実施の形態のガス遮断器100は、2つの可動接触子13が一つの絶縁ロッド(連結ロッド)20に連結されており、絶縁ロッド20に2つのピン連結部(連結軸)24が設けられ、2つの可動接触子13は、2つのピン連結部24にそれぞれ連結されているので、絶縁ロッド20やピン連結部24にかかる力を低減することができ、絶縁ロッド20やピン連結部24の小形化が可能となる。この結果、ガス遮断器100の小形化および低コスト化を実現するという効果が得られる。
【0022】
なお、本実施の形態においては、絶縁ロッド20とリンク21とを連結する連結部(連結軸)は、ピン連結部24によって構成されているが、この構成に限らず、絶縁ロッド20とリンク21とが相互に回動可能に軸支される構造のものであればよい。
【0023】
また、本実施の形態においては、連結箇所が複数設けられる連結部材が絶縁ロッド20であるが、連結箇所が複数設けられる連結部材は、必ずしも絶縁材料にて作製されている必要はなく、本実施の形態の場合であれば、伝達部40を構成する他の部材が絶縁材料にて作製されている場合、絶縁ロッド20が絶縁材料にて作製されているものでなくてもよいこともある。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように、本発明にかかるガス遮断器は、複数の遮断部が一つの連結ロッドを介して駆動する構成の多点切ガス遮断器に好適なものであり、特に、連結ロッドに対するねじり力や連結ピンへの過大な曲げ力を低減して、小形化、低コスト化が要求されるガス遮断器に最適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態の2点切パッファ式ガス遮断器の横断面図である。
【図2】図1の伝達部の様子を詳しく示す伝達部の矢印A視上面図である。
【図3】従来の2点切パッファ式ガス遮断器の横断面図である。
【図4】図3の伝達部の様子を詳しく示す伝達部の矢印E視上面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 接地タンク(容器)
2,5 絶縁支持筒
3 ブラケット
6 ブッシング
7 中心導体
8 導体
9 固定接触子
10 駆動装置
11 パッファシリンダ
12 ロッド
13 可動接触子
14 絶縁物ノズル
15 パッファピストン
16 パッファ室
17 操作ロッド
18 リンク
19 レバー
20 絶縁ロッド(連結ロッド)
21 リンク(絶縁ロッド20に連結する連結部材)
22 V形リンク
23 リンク
24 ピン連結部(連結軸)
25 ピン
30 パッファ遮断部
40 伝達部
100 2点切パッファ式ガス遮断器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消弧ガスが充填された容器と、
前記容器内に固定された固定接触子、及び前記容器内で前記固定接触子に対して離接可能に設けられた可動接触子を含む遮断部と、
前記可動接触子に連結された連結ロッドを含み該連結ロッドを介して前記可動接触子を進退動させる駆動力を伝達する伝達部とを備えたガス遮断器において、
複数の前記可動接触子が一つの前記連結ロッドに連結されており、
前記連結ロッドに複数の連結軸が設けられ、複数の前記可動接触子は、複数の前記連結軸にそれぞれ連結されている
ことを特徴とするガス遮断器。
【請求項2】
前記伝達部は、前記連結ロッドを含む面に対して対称形な構造を成している
ことを特徴とする請求項1に記載のガス遮断器。
【請求項3】
2つの前記遮断部を備え、該2つの前記遮断部は、前記連結ロッドを夾んで対称な位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のガス遮断器。
【請求項4】
前記伝達部においては、前記連結ロッドの前記可動接触子側に連結する連結部材を、各遮断部毎に前記連結ロッドを夾んで対称な位置に2枚設ける
ことを特徴とする請求項3に記載のガス遮断器。
【請求項5】
前記連結ロッドは、絶縁材料で作製された絶縁ロッドである
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のガス遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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