説明

ガス除去用濾材、複合フィルタ及びフィルタエレメント

【課題】空調機器に装着されるフィルタに関し、アルデヒド類を低コストで効率良く除去することが可能なガス除去用濾材および複合フィルタ、また、ガス除去用濾材または複合フィルタがプリーツ折り加工されたフィルタエレメントを提供する。
【解決手段】平均粒径を0.147〜1.65mmとするガス除去粒子が熱可塑性樹脂によって連結してなるガス除去粒子層を有し、且つ厚さが0.2〜4mmのシート状物であるガス除去用濾材であって、前記ガス除去粒子は次の一般式(1)で表わされる化合物を0.01〜20質量%含んでいるガス除去用濾材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用や家庭用空気清浄機などの生活環境における空調機器に装着して使用されるフィルタに関し、特にホルムアルデヒドを除去するガス除去用濾材および複合フィルタに関する。また、ガス除去用濾材または複合フィルタがプリーツ折り加工されてなるフィルタエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の居室やビルのオフィスなどの生活空間において、そこで使用されている内装材や家具には接着剤などの化学物質が多く含まれており、これらの接着剤などの化学物質からトルエンやホルムアルデヒドなどの揮発性物質が発生することが知られている。そして、これらの揮発性物質によって、シックハウス症候群や化学物質過敏症に代表されるアレルギーの発生が増大しており、アレルギー対策が緊急の課題となっている。そこで、例えば、住居やビルについては、建築基準法が改正され、化学物質を多く揮発する合板などの建材の使用制限、換気システムの義務化、ホルムアルデヒドの許容基準を80ppbとするなど、総合的な法整備が進められている。
【0003】
また、人が時間を長く過ごす自動車の室内でも、住居と同様に内装材などから揮発性物質が発生することが知られており、自動車のフレームと窓ガラスを接着する接着剤や内装材において揮発性物質の発生が少ない材料を選ぶなどの対応が求められている。しかし、自動車を組み立てる上で多かれ少なかれ揮発性物質が発生する接着剤の使用は不可避であり、また住居にくらべ居住空間が狭い自動車の室内では揮発性物質の濃度を減少させることは困難であった。
【0004】
さらに、自動車を夏場などに炎天化に放置すると、自動車の室内は、ダッシュボード上で80℃、室内は60℃を越える温度まで上昇することが知られている。この高い温度では、内装材や接着剤などから非常に多くの揮発性物質が発生してしまい、乗車する人は高い濃度の揮発性物質に曝されるという大きな問題が生じる。
【0005】
一方、揮発性物質などに対して、住宅や自動車には、活性炭などの粒子状の吸着材を保持した脱臭機能を有するフィルタが用いられており、例えば特許文献1のような積層型脱臭濾材が知られている。また、特許文献1には、活性炭やゼオライトなどの物理的吸着作用を持つ粉粒体の表面に、化学脱臭剤を付着させてなる、添着炭を用いることが記載されている。例えば、酸性臭気用粉粒体を構成する化学脱臭剤としては、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩や、エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジンなどのアミン化合物が好適であり、さらに、アルカリ臭気用粉粒体を構成する化学脱臭剤としては、燐酸、硫酸、硝酸、リンゴ酸、クエン酸、アスコルビン酸などを用いることができることが記載されている。
【0006】
しかし、活性炭やゼオライト、あるいは上記の添着炭を用いても、運転中に目の粘膜刺激などを引き起こし、事故につながる危険のある、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドに対して、フィルタとしての除去効率が極めて少ないものであった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−57467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を解決して、自動車用や家庭用空気清浄機などの生活環境における空調機器に装着して使用されるフィルタに関し、特にホルムアルデヒドやアセトアルデヒドを、低コストで効率良く除去することが可能なガス除去用濾材および複合フィルタを提供することを課題とする。また、ガス除去用濾材または複合フィルタがプリーツ折り加工されてなるフィルタエレメントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のガス除去用濾材に係る解決手段は、平均粒径を0.147〜1.65mmとするガス除去粒子が熱可塑性樹脂によって連結してなるガス除去粒子層を有し、且つ厚さが0.2〜4mmのシート状物であるガス除去用濾材であって、前記ガス除去粒子は次の一般式(1)で表わされる化合物(以下、一般式(1)の化合物と称することがある)を0.01〜20質量%含んでいることを特徴とするガス除去用濾材である。

〔式(1)中、Rはメチル基またはヒドロキシメチル基、Rはメチル基、エチル基またはヒドロキシメチル基である。〕
また、本発明の複合フィルタに係る解決手段は、前記ガス除去用濾材と塵埃を除去する塵埃除去用濾材とが積層してなることを特徴とする複合フィルタである。また、フィルタエレメントに係る解決手段は、前記ガス除去用濾材または前記複合フィルタがプリーツ折り加工されてなることを特徴とするフィルタエレメントである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、自動車用や家庭用空気清浄機などの生活環境における空調機器に装着して使用されるフィルタに関し、特にホルムアルデヒドやアセトアルデヒド(以下、単にアルデヒドガスと称することがある)を、低コストで効率良く除去することが可能なガス除去用濾材および複合フィルタを提供することが可能となった。また、ガス除去用濾材または複合フィルタがプリーツ折り加工されてなるフィルタエレメントを提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るガス除去用濾材、複合フィルタ並びにフィルタエレメントの好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明のガス除去用濾材は、ガス除去粒子が熱可塑性樹脂によって連結してなるガス除去粒子層を有し、且つ厚さが0.2〜4mmのシート状物である。前記ガス除去用濾材は、ガス除去粒子層の片面または両面に通気性のカバー材を有することが好ましい。また前記ガス除去用濾材は、ガス除去粒子層の片面または両面に塵埃を除去する塵埃除去濾材を有した複合フィルタとすることが可能である。
【0013】
前記ガス除去用濾材の形態としては、例えば図1に示すように、ガス除去粒子(3)と、ガス除去粒子(3)を連結する樹脂体(10)、(10’)とからなるガス除去粒子層(8)の両面に、通気性のカバー材(5)が積層一体化されているガス除去用濾材(13)がある。この例では、ガス除去粒子(3)が熱接着性の繊維からなる樹脂体(10’)によって連結してシート状になったガス除去粒子層(8)の片面または両面に樹脂体(10)によって通気性のカバー材(5)が貼り合されている。
【0014】
このような構造のガス除去粒子層(8)を得るには、例えば、通気性を有し且つ熱接着性を有する樹脂成分からなるマット状物の空隙に、ガス除去粒子(3)を保持しておき、その後、加熱処理によって、ガス除去粒子(3)をマット状物に接着させて得ることができる。また例えば、通気性を有し且つ熱溶融性を有する樹脂成分からなるマット状物の空隙に、ガス除去粒子(3)を保持しておき、その後、加熱処理によって、マット状物を溶融させ、ガス除去粒子(3)を連結させて得ることができる。このような通気性を有するマット状物としては、不織布、織物、膜、ろ紙、スポンジなどの多孔質体などが挙げられ、なかでも不織布は通気性が高いので好ましい。不織布の場合は、例えば160℃以下の融点を有する一成分からなる接着性繊維、或いは160℃以下の低融点成分を含む二成分以上からなる接着性複合繊維などを含む不織布を適用することができる。なお、本発明では上記マット状物をガス除去粒子を連結する樹脂体としている。
【0015】
前記構造のガス除去粒子層(8)を得る別の方法としては、例えば、短い繊維長の熱接着性または熱溶融性を有する繊維とガス除去粒子(3)とを混合させた混合物を通気性のカバー材(5)の上に堆積させてシート状物を形成し、次いでこのシート状物を加熱処理によって、前記繊維に接着性を発現させるかまたは前記繊維を溶融させて樹脂体となし、この樹脂体によって、ガス除去粒子(3)を連結させて得ることができる。なお、この方法による場合は、前記繊維長は1〜15mmであることが好ましく、2〜10mmであることがより好ましい。
【0016】
ガス除去用濾材の別の形態としては、例えば図2に例示するように、ガス除去粒子(3)と、前記ガス除去粒子(3)を連結する樹脂体(以下、連結部と称する)(1)、(1’)、(10)、及び(10’)と凝集した樹脂体(以下、樹脂凝集部と称する)(2)及び(2’)とからなるガス除去粒子層(8)の両面に、通気性のカバー材(5)及び(5’)が積層一体化されているガス除去用濾材(13)がある。この例では、ガス除去粒子(3)が樹脂体(1)、(1’)、(10)、又は(10’)によって連結してシート状になったガス除去粒子層(8)に、通気性のカバー材(5)及び(5’)が積層一体化されている。より具体的には、ホットメルト樹脂からなる連結部(1)と樹脂凝集部(2)とで構成されたウエブの一方の表面に、樹脂凝集部(2)を介してガス除去粒子(3)が固着されている。
【0017】
ガス除去用濾材のさらに別の形態としては、例えば図3に例示するように、ガス除去粒子(3)及び(3’)と、前記ガス除去粒子(3)及び(3’)を連結する樹脂体(1)、(1’)、(1” )、(10)、(10’)及び(10” )と凝集した樹脂体(2)、(2’)及び(2” )とからなるガス除去粒子層8の両面に、通気性のカバー材(5)及び5’が積層一体化されているガス除去用濾材(13)がある。この例では、ガス除去粒子(3)及び(3’)が樹脂体(1)、(1’)、(1” )、(10)及び(10’)によって連結してシート状になったガス除去粒子層の積層単位(4)と(4’)とが積層されており、さらにこの積層物に、通気性のカバー材(5)及び(5’)が樹脂体(1)、(1’)、(10)、及び(10’)と凝集した樹脂体(2)、(2’)及び(2” )によって積層一体化されている。より具体的には、複数の積層単位(4)で構成され、積層単位(4)がホットメルト樹脂から成る連結部(1)と樹脂凝集部(2)とで構成されたウエブの一方の表面に、樹脂凝集部(2)を介してガス除去粒子(3)を固着してなり、該ウエブの他方の表面と、他の積層単位(4’)を構成するガス除去粒子(3’)とが樹脂凝集部(2” )を介して固着している。
【0018】
また、このような構造のガス除去用濾材を得る方法としては、例えば、図3に示すように積層単位(4)が2層以上である場合は、ホットメルト不織布(10)の表面にガス除去粒子(3)を配した後、加熱処理によって該ホットメルト不織布と該ガス除去粒子とが接する部分に樹脂凝集部(2)を形成し、かつ樹脂凝集部(2)とホットメルト樹脂からなる連結部(1)とからなるウエブを形成する第一の工程と、該ガス除去粒子のうち、該ウエブに固着されたガス除去粒子のみを残存せしめて積層単位(4)を形成する第二の工程と、積層単位(4)のガス除去粒子(3)に接してホットメルト不織布(10” )を積層し、続いて、ホットメルト不織布(10” )の表面にガス除去粒子(3’)を配した後、前記第一の工程と前記第二の工程とを順次行う方法がある。なお、ガス除去粒子層8の両表面となるホットメルト不織布(10)及び(10’)のかわりに、カバー材(5)及び(5’)にホットメルト不織布を付着させたシートを用いることにより、通気性のカバー材(5)及び(5’)を積層一体化したガス除去用濾材(13)とすることができる。
【0019】
ガス除去用濾材のさらに別の形態としては、例えばガス除去粒子が熱融着性の樹脂体で互いに接合されてシート状となったガス除去粒子層の両面に、通気性のカバー材が積層一体化されているガス除去用濾材がある。このような構造のガス除去粒子層を得るには、例えば、ガス除去粒子と熱融着性の樹脂粉末とを混合した後、カバー材に挟持して、加熱処理によってガス除去用濾材とする方法がある。
【0020】
上述の、図2または図3の形態であれば、特に低圧力損失でしかもガス除去粒子の表面が有効に利用されるのでホルムアルデヒドや低分子量のアルデヒドに対して優れたガス除去効率を呈することができる。また、このような構造を有するガス除去用濾材は、ガス除去粒子が高密度で存在しながら、柔軟性に優れるので、プリーツ加工がし易いという利点がある。
【0021】
本発明に適用されるガス除去粒子は、生活環境での不快な臭気物質の除去などに用いる、或いは半導体や液晶の生産施設やクリーンルームなどにおいて空気や雰囲気中に含まれるガス状汚染物質を除去するために用いる、ガス状物質を吸着したり、ガス状物質を吸着しやすい物質に変化させたりすることのできる固体粒子に、次の一般式(1)で表わされる化合物を0.01〜20質量%含んでいることを必要とする。

〔式(1)中、Rはメチル基またはヒドロキシメチル基、Rはメチル基、エチル基またはヒドロキシメチル基である。〕
【0022】
前述の一般式(1)で表わされる化合物の具体例としては、例えばR及びRがメチル基である、次の式(2)に示す2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールがある。

【0023】
また、具体例として、Rがヒドロキシメチル基でRがメチル基である、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールがある。また、Rがヒドロキシメチル基でRがエチル基である、次の式(3)に示す2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールがある。

【0024】
また、具体例として、R及びRがヒドロキシメチル基である、次の式(4)に示す2−アミノ−2−ビロキシメチル−1,3−プロパンジオール、別名で表すとトリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタンなどを挙げることができる。

【0025】
本発明では、これらの中でも原料の入手のし易さやコスト面を考慮して、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールおよびトリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタンが好ましく、更にアルデヒド類との反応性に富む2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールおよびトリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタンがより好ましい。また、この両者を比較すると、水との溶解性の点でより優れる2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールを採用することも可能である。また水分の付着などにより再溶解して固体粒子から離脱する問題のないトリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタンを採用することも好ましい。
【0026】
本発明では、このような前述の一般式(1)の化合物を前記固体粒子に0.01〜20質量%含んでいるが、このような固体粒子としては、例えば活性炭や、ゼオライト、種々の化学吸着剤、イオン交換樹脂、光触媒などの触媒などがあり、これらの中から一種又は二種以上を適宜選択することができる。本発明では、多様なガス状物質を吸着する能力に優れる活性炭を選択することが好ましい。また、例えば活性炭を選択した場合は比表面積が200m/g以上の多孔質のものが好ましく、500m/g以上のものがより好ましい。
【0027】
本発明では、前記ガス除去粒子の粒径は、高効率と低圧損とを共に実現するために平均粒径を0.147mm(100メッシュ)〜1.65mm(10メッシュ)とする必要がある。また、平均粒径を0.212mm(70メッシュ)〜0.85mm(20メッシュ)とすることがより好ましい。平均粒径が0.147mm(100メッシュ)未満の細かい平均粒径のガス除去粒子を用いると、アルデヒドガスに対して初期のガス除去効率を高く採れる反面、圧力損失が大きくなってしまうという問題が生じる。また、平均粒径が1.65mm(10メッシュ)を超える粗い平均粒径のガス除去粒子を用いると、アルデヒドガスに対して初期のガス除去効率が不十分になるという問題がある。
【0028】
本発明に適用されるガス除去粒子は、前述の一般式(1)の化合物を付着などにより0.01〜20質量%含んでいることを必要とし、0.5〜15質量%含んでいることが好ましく、1〜10質量%含んでいることがより好ましい。0.01質量%未満ではアルデヒドガスの除去効率が不十分であり、20質量%を超えるとアルデヒドガスの除去効率は優れるものの、トルエンなどの有機性のガス(アルデヒドガスを除く)除去効率が低下するという問題がある。一般式(1)の化合物を前記固体粒子に付着するには、例えば一般式(1)の化合物を好ましくは0.5〜30%の水溶液としておき、より好ましくは1〜20%の水溶液としておき、更に好ましくは1〜10%の水溶液としておき、この水溶液を前記固体粒子に散布して、その後乾燥させることによって得ることができる。
【0029】
前記ガス除去粒子は、前述の一般式(1)の化合物を付着などにより0.01〜20質量%含んでいる限り、付着の形態には特に限定されず、例えば、一般式(1)の化合物が、前記固体粒子の一種又は二種以上に付着していることが可能である。また、例えばガス除去粒子が二種以上の固体粒子からなっており、一種の固体粒子のみに一般式(1)の化合物が付着していることも可能である。また、例えば図3のように、積層単位が2以上ある場合は、前記ガス除去粒子全体に対して、一般式(1)の化合物が0.01〜20質量%含んでいる限り、各積層単位において一般式(1)の化合物の付着割合を変えることも可能である。また、前記ガス除去粒子は、一般式(1)の化合物以外にも、本発明による効果を損なわない限り、他の薬剤を含むことも可能である。
【0030】
本発明のガス除去用濾材の厚さは、プリーツ加工を施すことを考慮すると、0.2〜4mmである必要があり、0.4〜3mmであることが好ましく、0.6〜2mmであることがより好ましく、0.7〜2mmであることが更に好ましい。0.2mm未満であると、アルデヒドガスの除去効率が不十分となる。また、4mmをこえると、プリーツ加工を施したときに、気体の濾過に寄与しないか又は寄与が極めて少ない部分(以下、デッドスペースと称する)が多くなり、かえってアルデヒドガスの除去効率が不十分となる。また、ガス除去粒子の平均粒径とガス除去用濾材の厚さの関係としては、前記ガス除去粒子の平均粒径が前記ガス除去用濾材の厚さの0.1〜1.0倍であることが好ましい。また、前記ガス除去粒子の平均粒径が前記ガス除去用濾材の厚さの0.2〜0.8倍であることがより好ましい。なお、厚さはJIS L1913−1998 6.1.2A法 に規定される試験方法により得られる値とする。
【0031】
また、本発明のガス除去用濾材中に、ガス除去粒子と熱可塑性樹脂が占める割合は、ガス除去粒子が60〜95質量%と、熱可塑性樹脂が40〜5質量%とからなることが好ましく、ガス除去粒子が70〜92質量%と、熱可塑性樹脂が30〜8質量%とからなることがより好ましく、ガス除去粒子が80〜90質量%と、熱可塑性樹脂が20〜10質量%とからなることが更に好ましい。ガス除去粒子が60質量%未満の場合、アルデヒドガス除去効率が低下する場合がある。また、熱可塑性樹脂が5質量%未満の場合、ガス除去粒子を充分に連結することができずに、ガス除去粒子が脱落するという問題がある。
【0032】
本発明の複合フィルタは、前記ガス除去用濾材と塵埃を除去する塵埃除去用濾材とが積層してなる複合フィルタである。前記ガス除去用濾材の上流側に塵埃除去用濾材を積層または積層一体化して、複合フィルタとすることにより、ガス除去用濾材に直接塵埃が堆積することを防ぎ、ガス除去用濾材に関するアルデヒドガスの除去効率の低下を顕著に防止する効果がある。
【0033】
前記塵埃除去用濾材の態様は通気性のある素材である限り特に限定されず、例えば、織物、編物、ネットまたは不織布などの繊維基材を適用することができる。この中でも、不織布であれば、繊維表面の総面積を広く効率良く利用でき、且つ繊維同士によって形成される小さな空隙を多数有しているので、特に好ましい。
【0034】
前記繊維基材としての不織布(以下、不織布基材と称する)も特に限定されず、不織布基材の構造としては、例えば繊維長15〜100mmの、捲縮数5〜30個/インチを有する通常ステープル繊維と呼ばれる繊維をカード機やエアレイ装置などを使用して、繊維ウエブに形成した後、接着性繊維または接着剤を用いて構成繊維を接着によって結合する方法による、一般的に乾式法と呼ばれる製法によって得られる不織布がある。乾式法による不織布は、厚さ方向に多数の繊維が配向しているので、厚さが大きく、且つ厚さがつぶれ難い利点がある。また、ステープル繊維には、カード機などで開繊可能なように捲縮加工が施されているので、嵩高な不織布基材となり、且つ圧縮に対しても厚さ方向の反発力に優れる利点がある。
【0035】
また、乾式法に限らずに任意の不織布の製法により、例えば湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法、静電紡糸法又はフラッシュ紡糸法などによって形成される不織布を適用することができる。湿式法による場合は、例えば、水平長網方式、傾斜ワイヤー型短網方式、円網方式、又は長網・円網コンビネーション方式の抄紙機などを用いて、熱可塑性樹脂からなる繊維を含むスラリーから繊維シートを漉き上げる方法を採用することができる。詳細には、抄紙後の繊維シートに接着剤を用いて構成繊維を接着によって結合する方法がある。或いは、熱可塑性樹脂からなる接着性繊維をスラリーに混入させておき、抄紙後、接着性繊維を用いて構成繊維同士を接着によって結合する方法がある。
【0036】
また、スパンボンド法による場合は、例えば熱可塑性樹脂からなる繊維をノズルより紡出させて長繊維からなる繊維フリースとした後、凹凸を有する加熱ロールと平滑ロールとの間で繊維フリースを加圧しながら通過させることにより、部分的に熱可塑性樹脂からなる繊維が融着した不織布基材とする方法がある。また、例えば熱可塑性樹脂からなる繊維をノズルより紡出させて長繊維からなる繊維フリースとした後、熱可塑性樹脂からなる接着剤を用いて構成繊維を接着によって結合する方法がある。或いは、互いに融点が異なる2種類の樹脂成分からなる芯鞘型の長繊維をノズルより紡出させた後、低融点の鞘成分を接着成分として、構成繊維を接着によって結合する方法がある。また、熱可塑性樹脂からなる繊維をノズルより紡出させて長繊維からなる繊維フリースとする際に、熱可塑性樹脂からなる接着性のステープル繊維を吹き込み長繊維と短繊維とが一体化した繊維フリースとした後、構成繊維を接着によって結合する方法がある。ステープル繊維を用いた不織布基材であれば、厚さ方向に多数の繊維が配向しているので、厚さが大きく、且つ厚さがつぶれ難い利点がある。また、圧縮に対しても厚さ方向の反発力に優れる利点がある。
【0037】
また、静電紡糸法又はフラッシュ紡糸法などによる場合は、例えば熱可塑性樹脂からなる繊維をノズルより紡出させて繊維フリースとした後、熱可塑性樹脂からなる接着剤を用いて構成繊維を接着によって結合する方法がある。
【0038】
また、これらの不織布製法において、形成される繊維ウェブ、繊維シート、または繊維フリースにニードルや水流の作用によって繊維同士を絡合させて繊維同士を結合する方法を併用することも可能である。また、加熱ロールを用いて、全面的にまたは部分的に繊維同士を熱融着により結合する方法を併用することも可能である。
【0039】
前記不織布基材を構成する繊維は、特に限定されず、熱可塑性樹脂からなる合成繊維、レーヨンなどの半合成繊維、綿およびパルプ繊維などの天然繊維、あるいは金属などの無機繊維を適用することが可能であるが、耐久性や加工性などの点を考慮すると、熱可塑性樹脂からなる繊維を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂からなる繊維としては、不織布の製造で一般的に用いられる合成繊維があり、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維およびポリビニルアルコール系繊維などを挙げることができる。また、フィルタの濾過性能をさらに向上させる場合は、これらの繊維の中でも帯電性に優れるポリオレフィン系繊維を適用することが好ましい。
【0040】
また、熱可塑性樹脂からなる繊維が、熱接着性の繊維であることも可能である。熱接着性の繊維としては、例えば他の繊維よりも融点が低く他の繊維を熱接着することのできる単一樹脂成分からなる繊維や、他の繊維よりも融点が低く他の繊維を熱接着することのできる低融点成分を繊維表面に有する複合繊維がある。このような複合繊維には、その横断面形状が例えば、低融点成分を繊維表面に有する芯鞘型やサイドバイサイド型等の複合繊維があり、またその材質は例えば、共重合ポリエステル/ポリエステル、共重合ポリプロピレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリアミド、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエステル、ポリエチレン/ポリエステルなどの繊維形成性重合体の組み合わせからなる複合繊維がある。なお、前記熱接着性繊維の不織布基材全体に占める割合は好ましくは100〜5重量%であり、より好ましくは100〜50重量%であり、更に好ましくは100〜75重量%である。
【0041】
また、前記不織布基材における繊維の平均繊度は、0.1〜30デシテックスが好ましく、0.5〜20デシテックスがより好ましく、1〜10デシテックスが更に好ましい。
【0042】
以上述べたように、使用目的に応じて様々な不織布基材を用いて複合フィルタとすることができるが、複合フィルタにプリーツ加工を施すことを考慮すると、本発明の複合フィルタの厚さは、0.2〜4mmであることが好ましく、0.4〜3mmであることがより好ましく、0.6〜2mmであることが更に好ましい。0.2mm未満であると、アルデヒドガスの除去効率が不十分となる場合があり、また、4mmをこえると、プリーツ加工を施したときに、気体の濾過に寄与しないか又は寄与が極めて少ない部分(以下、デッドスペースと称する)が多くなり、かえってアルデヒドガスの除去効率が不十分となる場合がある。
【0043】
また、前記繊維基材の面密度は5〜100g/mであることが好ましく、10〜500g/mであることがより好ましい。
【0044】
前記塵埃除去用濾材の濾過性能は、粗塵除去用のフィルタとして機能することが好ましく、具体的には、ASHRAE 52.1−1992に規定される試験方法において、SAE FINE ダストを用いて、質量法により評価すると、試験条件が風速0.25m/secの時に、粒子捕集平均効率が50〜99%であることが好ましく、粒子捕集平均効率が60〜99%であることが好ましく、粒子捕集平均効率が70〜99%であることが更に好ましい。粒子捕集平均効率が50%未満である場合は粗塵除去が不十分であり、粒子捕集平均効率が99%を超える場合は、塵埃除去用濾材の開孔径が細かくなり過ぎるため、すぐに塵埃除去用濾材前後の圧力損失が限界に達して寿命が短くなり粗塵除去用のフィルタとして使用できない場合がある。なお、SAE FINE ダストとは、ISO12103−1(1997)のA2(fine)に規定される試験用ダストに適合するダストである。また、JIS B9908形式1に規定される試験方法において、0.3μmの大気塵を用いて、計数法により評価すると、試験条件が風速0.1m/secの時に、粒子捕集平均効率が5〜50%であることが好ましく、粒子捕集平均効率が10〜50%であることが好ましく、粒子捕集平均効率が20〜50%であることが更に好ましい。
【0045】
前記塵埃除去用濾材の圧力損失は、前述の濾過性能を確保しつつ、できる限り少ないものが好ましく、初期の圧力損失(Pa)は風速0.1m/secにて測定すると、0.05〜10Paが好ましく、0.1〜7Paがより好ましく、0.5〜5Paが更に好ましい。
【0046】
以上の要件を考慮すると、前記複合フィルタに用いる塵埃除去用濾材の不織布基材としては、厚さが少なくても、除塵効率が優れる効果を有している不織布基材を用いることが好ましい。このような不織布基材として好ましい形態にメルトブロー不織布がある。具体的には、このメルトブロー法不織布の平均繊維径は0.1〜50μmが好ましく、0.5〜40μmがより好ましく、1〜30μmが更に好ましい。また材質は、ポリプロピレン樹脂からなることが好ましく、さらにコロナチャージなどによる帯電加工を施して、計数法効率5〜40%、好ましくは10〜30%(大気塵0.3〜0.5μm 風速10cm/s)の塵埃除去用濾材とすることが好ましい。
【0047】
本発明のフィルタエレメントは、前記ガス除去用濾材がプリーツ折り加工されてなるか、あるいは前記複合フィルタがプリーツ折り加工されてなる。具体的には、本発明のフィルタエレメントは、図4又は図5に例示するように、ガス除去用濾材または複合フィルタ(21)がプリーツ加工されており、保形部材(22a)によってプリーツ形状が保持されてなるフィルタエレメント(20)である。なお、図4では、プリーツ加工されたフィルタ(21)の、プリーツの峰線方向と交叉する端面に、保形部材(22b)が矢印Aの方向に装着する態様も例示している。ガス除去用濾材または複合フィルタのプリーツ加工は、ジグザグ形状に折られている限り限定されず、この折り加工方法としてはレシプロ式やロータリー式などのプリーツ加工機による方法や、ジグザグ形状に成形された押型でプレスする方法などがある。
【0048】
また、保形部材としては、プリーツ形状を保持することができる限り、特に限定されず、例えば織編物、不織布、合成樹脂シート、発泡シート、紙、金属材料またはこれらの複合物などのシート状物を適用することができる。このうち特に不織布であれば、強度に優れると共に、フィルタエレメントを剛性枠に装着する際にクッション性に優れ、剛性枠との間のシール性に優れるので好ましい。具体的には、これらのシート状物を、熱融着させたり、接着剤や接着性シートを介して接着することにより、プリーツの峰線方向と交叉する端面に、装着することができる。なお、保形部材としては、シート状物に限らず、発泡性樹脂等を付着させて発泡して形成することなども可能である。また、保形部材は、プリーツの峰線方向と交叉する端面以外にも、峰線方向と平行な端面にも装着することが可能である。
【0049】
前記プリーツ加工前に、或いはプリーツ加工後に、図4又は図5に例示するように、ガス除去用濾材または複合フィルタ(21)に、プリーツの峰線方向と交叉する方向に、間隔をおいて平行に、線状の樹脂を付着させたセパレータ(24)を設けて、プリーツの山の斜面が接触してデッドスペースとなることを防ぐことも好ましい。線状の樹脂の付着は、これらの図のように、断続的としてプリーツの山の峰に設けて、プリーツの谷部には設けないようにすることも好ましく、またガス除去用濾材または複合フィルタの両面に設けることも好ましい態様である。
【0050】
また、前記フィルタエレメントは、図4に例示するように、ひだ(23)が多数形成されていることが好ましく、具体的には、図6に示すように、ひだ(23)の高さHは5〜150mmが好ましく、8〜100mmがより好ましく、15〜50mmが更に好ましい。また、ひだ(23)のピッチPは1〜20mmが好ましく、2〜15mmがより好ましく、3〜10mmが更に好ましい。また、ピッチP(mm)と高さH(mm)との比P/Hが0.05〜0.7であることが好ましく、0.05〜0.5であることが好ましく、0.05〜0.3であることが更に好ましい。P/Hが0.05未満であると、ひだの角度が小さくなり過ぎるので、風圧でひだの角度が広がり隣接するひだと付着してしまいデッドスペースとなり、アルデヒドガス除去効果が低下してしまう場合がある。また、P/Hが0.5を超えると、ひだの数が少なくなり濾材全体の面積が少なくなり、アルデヒドガス除去効果が低下してしまう場合がある。また、ひだの高さが5mm未満であるとひだの数が多くなり過ぎてイニシャルコストが非常に大きくなる場合がある。ひだの高さが150mmを超えると、ひだの角度が小さくなり過ぎるので、風圧でひだの角度が広がり隣接するひだと付着してしまいデッドスペースとなり、かえってアルデヒドガス除去効果が低下してしまう場合がある。
【0051】
また、フィルタエレメントの全体の大きさは、自動車用や家庭用空気清浄機などの生活環境における空調機器に装着して使用されるフィルタエレメントの場合、空気の流入面の一辺の寸法が80〜500mmが好ましく、100〜400mmがより好ましく、150〜300mmが更に好ましい。また、奥行は5〜100mmが好ましく、10〜50mmがより好ましく、15〜30mmが更に好ましい。また、ビル、工場、事務所などに設置される空気清浄装置に、パッケージフィルター、ファンコイルユニット、中央空調用フィルタユニット等のアルデヒドガス除去フィルタとして使用されるフィルタエレメントの場合、空気の流入面の一辺の寸法が200〜1500mmが好ましく、300〜1000mmがより好ましく、400〜700mmが更に好ましい。また、奥行は10〜500mmが好ましく、20〜400mmがより好ましく、30〜300mmが更に好ましい。
【0052】
前記フィルタエレメントを空調装置に適用する場合はフィルタエレメントを剛性枠に装着して用いることができる。この剛性枠は剛性のある材質である限り特に限定されず、木材、金属、プラスチック等が適用され、数回の洗浄再生の後に焼却、廃棄される場合は木材が好ましい。
【0053】
前記フィルタエレメントのガス除去性能は、DIN71460 PartII によって評価することができる。詳細には、アルデヒドガスに対しては、アセトアルデヒドの3ppmガスを用いて、ワンパスでの除去効率を測定する。このアセトアルデヒドの除去効率は、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上であり、更に好ましくは40%以上である。また、他の有機ガスに対しては、アルデヒドガスと挙動が異なる場合が多く、このためトルエンガスを代表として、トルエンの80ppmガスを用いて、ワンパスでの除去効率を測定する。このトルエンの除去効率は、好ましくは25%以上であり、より好ましくは30%以上であり、更に好ましくは50%以上である。また、塵埃を付加した後のガス除去性能は、ASHRAE 52.1−1992に規定される試験方法において、空気の流入面の少なくとも一辺の寸法が80〜500mmの場合、試験条件を風量550m/hrに設定し、SAE FINE ダストを15g付加した後のガス除去性能を測定することによって評価する。
【0054】
なお、前記フィルタエレメントを粗塵除去用のフィルタとして評価する場合は、具体的には、ASHRAE 52.1−1992に規定される試験方法において、SAE FINE ダストを用いて、質量法により評価すると、空気の流入面の少なくとも一辺の寸法が80〜500mmの場合、試験条件が風量550m/hrの時に、粒子捕集平均効率が50〜99%であることが好ましく、粒子捕集平均効率が60〜99%であることが好ましく、粒子捕集平均効率が70〜99%であることが更に好ましい。粒子捕集平均効率が50%未満である場合は粗塵除去が不十分であり、アルデヒドガス除去効果も不十分である。粒子捕集平均効率が99%を超える場合は、ガス除去用濾材または複合フィルタ開孔径が細かくなり過ぎるため、すぐに圧力損失が限界に達して寿命が短くなり粗塵除去用のフィルタとして不十分な場合がある。なお、塵埃除去用濾材を有する場合は、塵埃除去用濾材を有する面を空気の流入面として試験を行う。また、空気の流入面の全ての辺の寸法が500mmを超える場合は、試験条件として風量1100m/hrを採用することができる。
【0055】
以上説明したように、本発明によって、自動車用や家庭用空気清浄機などの生活環境における空調機器に装着して使用されるフィルタに関し、特にホルムアルデヒドやアセトアルデヒドを、低コストで効率良く除去することが可能なガス除去用濾材および複合フィルタを提供することが可能となった。また、ガス除去用濾材または複合フィルタがプリーツ折り加工されてなるフィルタエレメントを提供することが可能となった。
【0056】
以下、本発明の実施例につき説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例に過ぎず、本発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【実施例】
【0057】
(塵埃除去用濾材の濾過性能試験方法−質量法)
ASHRAE 52.1−1992に規定される試験方法において、風速0.25m/secにて、圧力損失が200PaになるまでSAE FINE ダストを供給した後、粒子捕集平均効率(%)及び濾過寿命(粉塵捕集量)(g/m)を求める。また、初期の圧力損失(Pa)は風速0.1m/secにて測定した値を用いる。
【0058】
(塵埃除去用濾材の濾過性能試験方法−計数法)
JIS B9908形式1に規定される試験方法において、風速0.1m/secにて、0.3μmの大気塵を供給して、粒子捕集平均効率(%)を求める。
【0059】
(アルデヒドガス除去性能試験)
DIN71460 PartIIに規定される試験方法において、アセトアルデヒド濃度が3ppmとなるように、試験用エアーを調整した後、風量280m/hrにて試験用エアーを供給して、アセトアルデヒドの初期除去効率を(%)を求め、アルデヒドガス除去効率とする。なお、アルデヒドガスの濃度の検出には、B&K社製のマルチガスモニター1302型を使用する。
【0060】
(有機ガス除去性能試験)
DIN71460 PartIIに規定される試験方法において、トルエン濃度が80ppmとなるように、試験用エアーを調整した後、風量280m/hrにて試験用エアーを供給して、トルエンの初期除去効率を(%)を求め、有機ガス除去効率とする。なお、トルエンの濃度の検出には、BRUKER社製のFT−IR分析装置 EQUINOX55を使用する。
【0061】
(原材料調整1a)
前述の一般式(1)の中で、R及びRがヒドロキシメチル基である、次の式(4)に示すトリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタンを水に溶解して、5%の水溶液とした。次いで、この水溶液を粒径0.3〜0.5mmに分級した(平均粒径0.4mm)市販の活性炭粒子に散布した後、活性炭粒子を乾燥させて、トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタンの付着割合が異なる3種類のガス除去粒子A、B、C及びDを得た。これらガス除去粒子A、B、C及びDには、それぞれのガス除去粒子全体の質量に対して、トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタンが2質量%、5質量%、7質量%及び25質量%が付着していた。

【0062】
(原材料調整1b)
前述の一般式(1)の中で、Rがヒドロキシメチル基、及びRがエチル基である、次の式(3)に示す2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールを水に溶解して、5%の水溶液とした。次いで、この水溶液を粒径0.3〜0.5mmに分級した(平均粒径0.4mm)市販の活性炭粒子に散布した後、活性炭粒子を乾燥させて、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールが付着したガス除去粒子Eを得た。このガス除去粒子Eには、ガス除去粒子全体の質量に対して、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールが5質量%付着していた。

【0063】
(原材料調整1c)
前述の一般式(1)の中で、R及びRがメチル基である、次の式(2)に示す2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールを水に溶解して、5%の水溶液とした。次いで、この水溶液を粒径0.3〜0.5mmに分級した(平均粒径0.4mm)市販の活性炭粒子に散布した後、活性炭粒子を乾燥させて、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールが付着したガス除去粒子Fを得た。このガス除去粒子Fには、ガス除去粒子全体の質量に対して、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールが5質量%付着していた。
式(2)

【0064】
(原材料調整2)
熱可塑性ポリアミド系樹脂(190℃におけるメルトインデックス:80)を溶融紡糸して、面密度20g/mの蜘蛛の巣状のホットメルト不織布を形成した後、直ちに繊維径10〜30μm、面密度20g/m、厚さ0.12mm、圧力損失1.0Pa(風速10cm/s)のポリエステル繊維からなるスパンボンド不織布に付着させて、ホットメルト不織布が付着した面密度40g/mのカバー材Aを得た。
【0065】
(原材料調整3)
メルトブロー法によって、繊維径3〜30μm、面密度20g/m、厚さ0.5mm、圧力損失2Pa(風速10cm/s)のポリプロピレン樹脂からなるメルトブロー不織布を得た。さらにコロナチャージによる帯電加工を施して、計数法効率20%(大気塵0.3〜0.5μm 風速10cm/s)の塵埃除去用濾材Aを得た。
【0066】
(実施例1)
図3に例示するように、原材料調整2で準備したホットメルト不織布が付着した面密度40g/mのカバー材Aのホットメルト不織布(10)の表面に、原材料調整1aで得たガス除去粒子A(3)を面密度130g/mとなるようにして散布する。続いて、約5Kg/cmの水蒸気処理をカバー材(5)側(ホットメルト不織布(10)側)から約7秒間行い、ホットメルト不織布(10)を可塑化溶融して、ホットメルト樹脂からなる連結部(1)と樹脂凝集部(2)とで構成されたウエブに、樹脂凝集部(2)を介してガス除去粒子(3)を固着させた。続いて、固着したガス除去粒子以外のガス除去粒子は殆んどなかったが、念のため固着したガス除去粒子以外のガス除去粒子を除去することにより、ガス除去粒子(3)が、各々の粒径に応じて固着され、しかもカバー材(5)と接着された1層目の積層単位(4)を得た。さらに、この状態の積層単位(4)に面密度20g/mのホットメルト不織布(10” )を積層し、面密度140g/mとなるようにしてガス除去粒子(3’)散布、水蒸気処理、並びに念のため固着されていないガス除去粒子の除去を経て2層目の積層単位(4’)を形成した。
次に原材料調整2で準備したホットメルト不織布が付着した面密度40g/mのカバー材Aである(5’)を、ホットメルト不織布(10’)側が積層単位(4’)に接するようにして積層単位(4’)の上に積層し、約5Kg/cmの水蒸気処理をシート材(5’)側(ホットメルト不織布(10’)側)から約7秒間行い、ホットメルト不織布(10’)を可塑化溶融して、ホットメルト樹脂からなる連結部(1’)と樹脂凝集部(2’)とで構成されたウエブに、樹脂凝集部(2’)を介して活性炭粒子(3’)を固着させて面密度370g/m、厚さ1.0mmのガス除去用濾材(13)を得た。
【0067】
次いで、得られたガス除去用濾材を用いて、図4に示すように、フィルタエレメント(21)の全体の大きさが保形部材側225mm×保形部材と垂直な側235mmのフィルタエレメントとなるように、またプリーツの山高さHが約29mm、プリーツの山の間隔が約6mm、山数37個となるように、プリーツを形成した後、不織布からなる枠材(24)の片面にホットメルト樹脂シートを貼りあわせた枠材(24)を準備して、図4に示す矢印Aの方向に枠材(24)を固着して、フィルタエレメントを得た。実施例1の評価結果を表1に示す。
【0068】
(実施例2及び3)
実施例1において、ガス除去粒子Aの替わりに、原材料調整1aで準備したガス除去粒子B及びCを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2及び3のフィルタエレメントを得た。実施例2及び3の評価結果を表1に示す。
【0069】
(比較例1)
実施例1において、ガス除去粒子Aの替わりに、トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタンが付着していない、粒径0.3〜0.5mmに分級した(平均粒径0.4mm)市販の活性炭粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例1のフィルタエレメントを得た。比較例1の評価結果を表1に示す。
【0070】
(比較例2)
実施例1において、ガス除去粒子Aの替わりに、原材料調整1aで準備したガス除去粒子Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例2のフィルタエレメントを得た。比較例2の評価結果を表1に示す。
【0071】
(実施例4)
実施例1において、ガス除去粒子Aの替わりに、原材料調整1bで準備したガス除去粒子Eを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例4のフィルタエレメントを得た。実施例4の評価結果を表2に示す。
【0072】
(実施例5)
実施例1において、ガス除去粒子Aの替わりに、原材料調整1cで準備したガス除去粒子Fを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例5のフィルタエレメントを得た。実施例5の評価結果を表2に示す。
【0073】
(実施例6)
実施例1で得られたガス除去用濾材(13)のカバー材(5’)側に原料調整3で得た塵埃除去用濾材Aを積層した。次いでこの積層物を凹凸のある加熱エンボスロールと表面平滑な加熱ロールとからなる一対のロールの間に通し、加熱圧着することにより、塵埃除去用濾材Aの表面に部分的な融着部分を有する複合フィルタを得た。
この複合フィルタの厚さは1.3mmであり、面密度は390g/mであった。
次いで、得られた複合フィルタを用いて、実施例1と同様にして、フィルタエレメントを得た。実施例6の評価結果を表3に示す。
【0074】
(実施例7及び8)
実施例6において、実施例1で得られたガス除去用濾材の替わりに実施例2及び3で得られたガス除去用濾材を用いたこと以外は、実施例6と同様にして実施例7及び8のフィルタエレメントを得た。実施例7及び8の評価結果を表3に示す。
【0075】
(比較例3及び4)
実施例6において、実施例1で得られたガス除去用濾材の替わりに比較例1及び2で得られたガス除去用濾材を用いたこと以外は、実施例6と同様にして比較例3及び4のフィルタエレメントを得た。比較例3及び4の評価結果を表3に示す。
【0076】
(実施例9及び10)
実施例6において、実施例1で得られたガス除去用濾材の替わりに実施例4及び5で得られたガス除去用濾材を用いたこと以外は、実施例6と同様にして実施例9及び10のフィルタエレメントを得た。実施例9及び10の評価結果を表4に示す。
【0077】
表1

【0078】
表2

【0079】
表3

【0080】
表4

【0081】
表1および表3から明らかなように、トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタンをガス除去粒子中に2〜7%含むガス除去用濾材から得られる実施例1〜3、及び6〜8のフィルタエレメントは、トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタンをガス除去粒子中に含まないガス除去用濾材から得られる比較例1及び3のフィルタエレメントよりもアルデヒドガスの除去率が著しく優れている。また、実施例1〜3、及び6〜8のフィルタエレメントは、トルエンの除去効果も保持している。また、トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタンをガス除去粒子中に20%を超えた25%を含む比較例2及び4のガス除去用濾材の場合、トルエン除去効率が大きく低下している。また、塵埃除去用濾材が積層した複合フィルタから得られる実施例6〜8のフィルタエレメントは、フィルタエレメントにダストを付加した後もアセトアルデヒドガスの除去率は殆んど変らないという優れた効果を有することが確認された。これに対して、塵埃除去用濾材が積層されず、単にガス除去用濾材のみからなる実施例1〜3のフィルタエレメントはアセトアルデヒドガスの除去率に低下がみられた。
【0082】
また、表2および表4から明らかなように、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールまたは2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールをガス除去粒子中に5%含むガス除去用濾材から得られる実施例4、5、9及び10のフィルタエレメントは、これらの化合物をガス除去粒子中に含まないガス除去用濾材から得られる比較例1及び3のフィルタエレメントよりもアルデヒドガスの除去率が著しく優れている。また、実施例4、5、9及び10のフィルタエレメントは、トルエンの除去効果も保持している。また、塵埃除去用濾材が積層した複合フィルタから得られる実施例9及び10のフィルタエレメントは、フィルタエレメントにダストを付加した後もアセトアルデヒドガスの除去率は殆んど変らないという優れた効果を有することが確認された。これに対して、塵埃除去用濾材が積層されず、単にガス除去用濾材のみからなる実施例4及び5のフィルタエレメントはアセトアルデヒドガスの除去率に低下がみられた。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明のガス除去用濾材の一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明のガス除去用濾材の別の一例を示す断面模式図である。
【図3】本発明のガス除去用濾材の別の一例を示す断面模式図である。
【図4】本発明のフィルタエレメントの一例を示す斜視図である。また、保形部材を矢印Aの方向に装着する態様を例示する図である。
【図5】本発明のフィルタエレメントの要部拡大図である。
【図6】本発明のフィルタエレメントの模式断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1,1’,1” 連結部(樹脂体)
2,2’,2” 樹脂凝集部(樹脂体)
3,3’ ガス除去粒子
4,4’ 積層単位
5,5’ カバー材
8 ガス除去粒子層
10,10’,10” ホットメルト樹脂(ホットメルト不織布)(樹脂体)
13 ガス除去用濾材
20 フィルタエレメント
21 ガス除去用濾材または複合フィルタ
22a 保形部材
22b 保形部材
23 ひだ
24 セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径を0.147〜1.65mmとするガス除去粒子が熱可塑性樹脂によって連結してなるガス除去粒子層を有し、且つ厚さが0.2〜4mmのシート状物であるガス除去用濾材であって、前記ガス除去粒子は次の一般式(1)で表わされる化合物を0.01〜20質量%含んでいることを特徴とするガス除去用濾材。

〔式(1)中、Rはメチル基またはヒドロキシメチル基、Rはメチル基、エチル基またはヒドロキシメチル基である。〕
【請求項2】
一般式(1)の化合物がトリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタンである請求項1に記載のガス除去用濾材。
【請求項3】
前記ガス除去粒子の平均粒径が前記ガス除去用濾材の厚さの0.1〜1.0倍であることを特徴とする請求項1または2に記載のガス除去用濾材。
【請求項4】
請求項項項1〜3の何れかに記載のガス除去用濾材がプリーツ折り加工されてなることを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載のガス除去用濾材と塵埃を除去する塵埃除去用濾材とが積層してなることを特徴とする複合フィルタ。
【請求項6】
請求項5に記載の複合フィルタがプリーツ折り加工されてなることを特徴とするフィルタエレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−69198(P2007−69198A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47700(P2006−47700)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】