説明

ガラスフィルム用リール及びガラスフィルム梱包体

【課題】ガラスフィルムをロール状に巻回して梱包するガラスフィルム用リールにおいて、多様な幅や厚みのガラスフィルムを梱包効率の低下を招くことなく梱包しつつ、その梱包したガラスフィルムの破損を可及的に低減する。
【解決手段】ガラスフィルムGをロール状に巻回して収納するガラスフィルム用リール1であって、間隔を置いて対向する一対のフランジ2,3と、一対のフランジ2,3を軸方向に位置決めして連結する軸部4と、一対のフランジ2,3の間で軸部4に外挿されると共にガラスフィルムGよりも幅広とされ且つ外周面にガラスフィルムGがロール状に巻回されるリング部材5とから構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスフィルムを巻回して収納するガラスフィルム用リールの改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、電子部品用のガラス基板を始めとする各種ガラス板において、軽量化や利用分野の拡大を図る観点から、更なる薄板化が推進されているのが現状である。特に、フィルム状まで薄板化されたガラス板(以下、ガラスフィルムという。)は高い可撓性を有するため、当該特性を利用して種々の分野に適用されつつある。
【0003】
この種のガラスフィルムの梱包形態としては、対向する一対のフランジと、この一対のフランジを連結する軸部とを備えたリールを用い、リールの軸部の外周面にガラスフィルムをロール状に巻回して収容する形態が提案されており、使用時にリールからガラスフィルムを引き出して必要長さに切断するようになっている。なお、リールのフランジは、軸部の外周面に巻回されたガラスフィルムの幅方向のズレを防止する役割と、当該ガラスフィルムの載置面への直接接触を防止する役割とを兼ねている。
【0004】
ところで、ガラスフィルムは種々の分野で利用されていることから、ガラスフィルムの幅は製品毎に大小様々である。そのため、ガラスフィルムの幅毎に専用のリールを製作した場合には、リールの種類が多くなりすぎ、リールの製作コストの高騰や保管スペースの確保が困難になるという問題が生じ得る。したがって、ガラスフィルムの幅毎に専用のリールを製作するのは実用的ではなく、共通のリールで様々な幅のガラスフィルムを梱包することが好ましいと言える。このようなリールとしては、ガラスフィルムを梱包対象としたものではないが、例えば、特許文献1,2に開示のリールが挙げられる。
【0005】
詳述すると、特許文献1に開示のリールは、分離可能に構成された一対のフランジ(側板)のそれぞれの中心に相対的に大径となる同径の大径軸部が固定されており、更に、一方の大径軸部の先端には相対的に小径となる小径軸部が突設され、他方の大径軸部の先端には小径軸部が嵌入される孔が設けられている。そのため、このリールでは、小径軸部の嵌入量を調整することにより、一対のフランジの対向間隔をガラスフィルムの幅に応じて変更することができる。
【0006】
また、特許文献2に開示のリールは、一対のフランジのそれぞれの中心に貫通孔を設けるとともに、各々の貫通孔に軸部を挿通した後、貫通孔と軸部の外周面の間の隙間に弾性部材を圧入して軸部に対するフランジの移動を規制するようになっている。そして、このリールでは、弾性部材によって、各々のフランジを軸部の任意位置で固定できるので、一対のフランジの対向間隔をガラスフィルムの幅に応じて変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−43139号公報
【特許文献2】特開2009−73619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ガラスフィルムは、特許文献1や特許文献2で梱包対象となっているテープ状の紙、樹脂フィルム、金属薄板などの物品とは異なり、破損を来たし易い物品である。そのため、ガラスフィルム用のリールでは、ガラスフィルムの破損を防止する対策が講じられていることが必要となる。
【0009】
具体的には、例えば、リールにガラスフィルムを巻回する際に、ガラスフィルムとフランジとが接触すると、ガラスフィルムが破損するおそれがある。そのため、ガラスフィルム用のリールは、ガラスフィルムを巻回する際に、一対のフランジの対向間隔をガラスフィルムの幅よりも大きく設定できる構成を備えていることが必要となる。
【0010】
また、リールにガラスフィルムを巻回して収納した後も、ガラスフィルムとフランジとの間に大きな隙間が空いていると、ガラスフィルムが幅方向にズレを来たしてフランジと衝突を繰り返して破損するおそれがある。そのため、ガラスフィルム用のリールは、ガラスフィルムを巻回して収納した状態では、一対のフランジをそれぞれガラスフィルムの幅方向端面に接近させて、ガラスフィルムの幅方向のズレを防止し得る構成を備えていることが必要である。
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示のリールをガラスフィルムの梱包に適用した場合には、ガラスフィルムを軸部の外周に巻回する際に、一対のフランジの対向間隔をガラスフィルムの幅よりも大きく設定しておくことは可能であるが、ガラスフィルムを巻回した後に、一対のフランジの対向間隔を縮めることはできない。これは、同文献に開示のリールでは、一対のフランジの対向間隔を縮めるために大径軸部を相互に接近動させると、大径軸部間に跨った状態で巻回されるガラスフィルムに擦れや撓みが生じ、ガラスフィルムが容易に破損し得るからである。
【0012】
一方、特許文献2に開示のリールをガラスフィルムの梱包に適用した場合には、ガラスフィルムが巻回される軸部に対して、双方のフランジが独立して移動可能となっているので、ガラスフィルムの巻回時に一対のフランジの対向間隔をガラスフィルムの幅よりも大きく設定しておき、ガラスフィルムの巻回完了後に一対のフランジの対向間隔をガラスフィルムの幅に応じて縮めることが可能である。
【0013】
しかしながら、特許文献2に開示のリールであっても、次のような問題が生じ得る。すなわち、ガラスフィルムは、上述のように破損を来たし易い物品であり、その厚みなどによって巻回可能な最小巻取り半径が予め決まっている。付言すれば、当該最小巻取り半径よりも小さい巻き取り半径でガラスフィルムを巻回すると、ガラスフィルムに過度な曲げ応力が作用して、ガラスフィルムが疲労破損を来たし得る。そのため、軸部の外周面にガラスフィルムを巻回する場合には、当該軸部の半径は、ガラスフィルムの最小巻取り半径を考慮して決定する必要がある。しかしながら、ガラスフィルムの最小巻取り半径を考慮して軸部の外径を変更させると、これに伴って軸部を挿入するフランジの貫通孔の大きさや、フランジの貫通孔と軸部の外周面との間の隙間に圧入する弾性部材の大きさも変更する必要が生じ、結果的にリールの全部品の変更が余儀なくされ、共通のリールを使用することができなくなる。一方、各種ガラスフィルムに対してもリールの軸部の外径を変更せずに済むように軸部の外径を予め大きく設定しておくことも考えられるが、この場合には、ガラスフィルムを巻回して収容できる量が常に少量に制限されるので、梱包効率が極端に悪くなるという問題がある。なお、このような問題は、上述の特許文献1に開示のリールにおいても、同様に生じ得る。
【0014】
また、特許文献2に開示のリールでは、弾性部材による規制力が弱ければ、フランジがガラスフィルム側に簡単に移動し得る。その結果、フランジによってガラスフィルムの幅方向端面が不当に押圧され、ガラスフィルムが破損するおそれがある。
【0015】
したがって、特許文献1,2に開示のリールをガラスフィルムの梱包にそのまま適用すると、上述のような理由によりガラスフィルムが破損するおそれがあるため、これらのリールもガラスフィルムに適用するに当たっては、依然として改良の余地が残されている。
【0016】
以上の実情に鑑み、本発明は、ガラスフィルムをロール状に巻回して梱包するガラスフィルム用リールにおいて、多様な幅や厚みのガラスフィルムを梱包効率の低下を招くことなく梱包しつつ、その梱包したガラスフィルムの破損を可及的に低減することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために創案された本発明は、ガラスフィルムをロール状に巻回して収納するガラスフィルム用リールであって、間隔を置いて対向する一対のフランジと、該一対のフランジを軸方向に位置決めして連結する軸部と、前記一対のフランジの間で前記軸部に外挿されると共に前記ガラスフィルムよりも幅広とされ且つ外周面に前記ガラスフィルムがロール状に巻回されるリング部材とを備えていることに特徴づけられる。
【0018】
このような構成によれば、ガラスフィルムは、一対のフランジ間に配置されたリング部材の外周面に巻回される。また、この一対のフランジは、軸部によって位置決めされた状態で連結されるため、軸部による位置決め位置を変更することで対向間隔を調整することができる。そのため、リング部材の外周面にガラスフィルムをロール状に巻回する際には、一対のフランジの対向間隔をガラスフィルムの幅よりも広く設定した状態で巻回作業を行うことできる。加えて、ガラスフィルムの巻回作業終了後には、一対のフランジの対向間隔を縮めて、ガラスフィルムの幅方向のズレを防止することができる。そして、このようにフランジの対向間隔を縮める際に、仮に特許文献1に開示のリールのように軸部の変形を伴う場合であっても、ガラスフィルムの内周側はリング部材によって保護されているため、ガラスフィルムに破損の原因となる擦れや撓みが生じることがない。
【0019】
また、リング部材の外周面の半径をガラスフィルムの最小巻取り半径に対応した値に予め設定しておけば、リング部材の外周面に巻回されたガラスフィルムが曲げ応力によって疲労破壊を来たすことを防止できる。しかも、ガラスフィルムの最小巻取り半径が変化した場合であっても、リング部材のみを交換すれば、ガラスフィルムの実際の巻取り半径を、最小巻取り半径を考慮して小さく抑えることができるため、梱包効率の低下を確実に低減することができる。また、このような作用効果は、リング部材をガラスフィルムに応じて交換するだけで実現することができることから、リールを構成する他の部品はそのまま共通して使用することができ、リールの共通化にも寄与し得る。
【0020】
更に、一対のフランジの間にはリング部材が配置されているので、一対のフランジの対向間隔はリング部材の幅よりも小さくなることがない。そして、このリング部材は、ガラスフィルムよりも幅広とされているので、一対のフランジの対向間隔は、少なくともガラスフィルムよりも幅広に維持される。したがって、一対のフランジが、ガラスフィルムの幅方向両端面を過度に押圧することがなく、ガラスフィルムがフランジによる押圧力を受けて破損するという事態を確実に防止することができる。
【0021】
上記の構成において、前記リング部材の内周面と前記軸部の外周面とに、前記軸部に対して前記リング部材を相対回転させると、周方向に噛み合って前記リング部材の前記軸部に対する周方向動および軸方向動を規制する第1規制部を設けることが好ましい。
【0022】
このようにすれば、第1規制部によって、リング部材の軸部に対する周方向動および軸方向動が規制されるため、軸部の回りでリング部材が不当に空回りしたり、軸方向にガタツキが生じることがない。したがって、リング部材の外周面にガラスフィルムを巻回する際に、軸部とリング部材を一体として一定の回転数でガラスフィルムを巻き取ることができるので、巻回作業を円滑に行うことができる。更に、このような作用効果は、第1規制部を周方向に噛み合わせるという簡単な操作によって享受し得ることから、非常に便利である。
【0023】
上記の構成において、前記一対のフランジの少なくとも一方が、前記軸部が挿通される係合孔を有するとともに、該係合孔の形成面と前記軸部の外周面とに、前記軸部に対して前記フランジを相対回転させると、周方向に噛み合って前記フランジの前記軸部に対する周方向動および軸方向動を規制する第2規制部を設けることが好ましい。
【0024】
このようにすれば、第2規制部によって、フランジの軸部に対する周方向動および軸方向動が規制されるため、フランジが軸部の回りで不当に空回りしたり、軸方向に移動することを防止することができる。したがって、ガラスフィルムの巻回作業や取出作業時にフランジが邪魔になり難く、また、ガラスフィルムを収容梱包した状態でフランジが位置ズレを来たし難くなる。更に、このような作用効果は、第2規制部を周方向に噛み合わせるという簡単な操作によって享受し得ることから、非常に便利である。
【0025】
以上の構成を適宜備えたガラスフィルム用リールにガラスフィルムを巻回して収納すれば、ガラスフィルム梱包体を得ることができる。
【0026】
また、この場合、前記ガラスフィルムが、ダウンドロー法によって成形されたものであることが好ましい。
【0027】
ダウンドロー法としては、例えば、スロットダウンドロー法、オーバーフローダウンドロー法、又はリドロー法が挙げられるが、オーバーフローダウンドロー法及びリドロー法では、別途加工を施すことなく表面の平滑性に優れたガラスフィルムを成形できるという利点がある。従って、ダウンドロー法としては、オーバーフローダウンドロー法又はリドロー法を使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
以上のように本発明によれば、ガラスフィルムが巻回されるリング部材を変更するだけで、多様な幅や厚みのガラスフィルムを梱包効率の低下を招くことなく梱包しつつ、その梱包したガラスフィルムの破損を可及的に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係るガラスフィルム用リールの部品分解配列斜視図である。
【図2】(a)は、第1フランジの側面図、(b)は、第2フランジの側面図、(c)は、リング部材の側面図である。
【図3】第1フランジの軸部の外周面に、リング部材を外挿した状態(第2フランジを取り外した状態)を示す側面図である。
【図4】第1フランジの軸部の外周面に、第2フランジを外挿した状態を示す側面図である。
【図5】(a)は、第1フランジと第2フランジの対向間隔を広げた状態を示す正面図、(b)は、第1フランジと第2フランジの対向間隔を狭めた状態を示す正面図である。
【図6】本実施形態に係るリールに、ガラスフィルムを巻回して収納する工程を示す状況図である。
【図7】本実施形態に係るリールにガラスフィルムを梱包したガラスフィルム梱包体を示す斜視図である。
【図8】(a)は、ガラスフィルムの端部保護部材を示す側面図であって、(b)は、この端部保護部材にガラスフィルムをセットする状態を示す側面図である。
【図9】(a)は、本実施形態に係るガラスフィルム梱包体の軸方向断面図、(b)は、その軸直角断面図である。
【図10】本発明のガラスフィルム用リールの変形例を示す軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0031】
図1は、本実施形態に係るガラスフィルム用リールを示す斜視図である。同図に示すように、このガラスフィルム用リール1は、間隔を置いて対向する第1フランジ2及び第2フランジ3と、これら第1フランジ2及び第2フランジ3を軸方向に位置決めして連結する軸部4と、この軸部4に外挿されるリング部材5とから構成される。
【0032】
第1フランジ2の内側面の中心には、軸部4が一体的に設けられており、第2フランジ3の中心には、第1フランジの軸部4が挿通され且つ内外側面に亘って貫通する貫通孔(係合孔)6が設けられている。
【0033】
リング部材5は、外周面にガラスフィルムがロール状に巻回される部材であって、第1フランジ2と第2フランジ3の間で軸部4に外挿される。このリング部材5は、梱包対象となるガラスフィルムに応じて適宜選択される。詳細には、選択されるリング部材5の幅方向寸法は、梱包対象となるガラスフィルムの幅方向寸法よりも僅かに大きく(例えば、ガラスフィルムの幅方向寸法の1.1〜1.3倍)、その外径は、梱包対象となるガラスフィルムの最小巻取り半径を考慮した値となっている。なお、ガラスフィルの最小巻取り半径R(mm)は、ガラスフィルムの外表面に作用する最大引張応力の値をσ0(Pa)、ガラスフィルムの厚み(mm)をT、ガラスフィルムのヤング率(Pa)をEとした場合には、次式で表される。
【数1】

【0034】
図2(a)〜(c)に示すように、軸部4の外周面、第2フランジ3の貫通孔6の形成面、及びリング部材5の内周面の断面輪郭線は、非真円形を呈している。詳述すると、同図(a)に示すように、第1フランジ2に設けられた軸部4の外周面の断面輪郭線は、真円の円周の一部をなす円弧部4aと、当該真円の円弧の一部を直線に置き換えた直線部4bとから構成されている。一方、同図(b)に示すように、第2フランジ3に設けられた貫通孔6の形成面の断面輪郭線は、軸部4の外周面の断面輪郭線と略一致し、円弧部6aと直線部6bとから構成されている。また、同図(c)に示すように、リング部材5の内周面の断面輪郭線も、軸部4の外周面の断面輪郭線と略一致し、円弧部6aと直線部6bとから構成されている。なお、ガラスフィルムが巻回されるリング部材5の外周面の断面輪郭線は、真円形状を呈している。
【0035】
図3に示すように、第1フランジ2に設けられた軸部4に、リング部材5を外挿すれば、リング部材5の内周面の円弧部5aが軸部4の円弧部4aに嵌め合わされ、リング部材5の内周面の直線部5bが軸部4の外周面の直線部4bに嵌め合わされる。なお、この嵌合状態では、リング部材5は、依然として軸部4の軸方向に移動可能とされている。一方、リング部材5を軸部4上で固定する際には、リング部材5を軸部4の回りに回転させて、リング部材5の内周面の直線部5bの一部を、軸部4の外周面の円弧部4aに周方向に噛み込ませ、軸部4に対するリング部材5の周方向動及び軸方向動を規制する。すなわち、リング部材5の内周面の直線部5bと、軸部4の外周面の円弧部4aとが、リング部材5の軸部4に対する周方向動及び軸方向動を規制する規制部(第1規制部)として機能する。なお、軸部4の外周面の断面輪郭線と、リング部材5の内周面の断面輪郭線とは、非真円形であれば特に限定されるものではなく、例えば、楕円形などであってもよい。
【0036】
また、図4に示すように、第2フランジ3の貫通孔6に第1フランジ2の軸部4を挿入すれば、貫通孔6の形成面の円弧部6aが軸部4の外周面の円弧部4aに嵌め合わされ、貫通孔6の形成面の直線部6bが軸部4の外周面の直線部4bに嵌め合わされる。そして、第2フランジ3を軸部4上で固定する際には、第2フランジ3を軸部4の回りに回転させて、貫通孔6の形成面の直線部6bの一部を、軸部4の外周面の円弧部4aに周方向に噛み込ませ、軸部4に対する第2フランジ3の周方向動及び軸方向動を規制する。すなわち、貫通孔6の形成面の直線部6bと、軸部4の外周面の円弧部4aとが、第2フランジ3の軸部4に対する周方向動及び軸方向動を規制する規制部(第2規制部)として機能する。なお、第2フランジ3の貫通孔6の断面輪郭線は、非真円形であれば特に限定されるものではなく、例えば、楕円形などであってもよい。
【0037】
次に、以上のように構成されたガラスフィルム用リール1を用いて、ガラスフィルムを梱包する手順を説明する。
【0038】
まず、図5(a)に示すように、第1フランジ2の軸部4にリング部材5を外挿する。その後、第1フランジの軸部4を第2フランジ3の貫通孔6に挿入する。この際、第1フランジ2と第2フランジ3との対向間隔D1は、リング部材5の幅方向寸法D2(ガラスフィルムの幅方向寸法)よりも大きく設定する。
【0039】
次に、この状態で、図3に示すように、リング部材5を第1フランジ2の軸部4の回りに回転させることにより、リング部材5の内周面の直線部5bの一部を軸部4の外周面の円弧部4aに噛み込ませ、軸部4に対するリング部材5の周方向動及び軸方向動を規制する。更に、図4に示すように、第2フランジ3を第1フランジ2の軸部4の回りに回転させることにより、貫通孔6の形成面の直線部6bの一部を軸部4の外周面の円弧部4aに噛み込ませ、第2フランジ3の軸部4に対する周方向動及び軸方向動を規制する。
【0040】
そして、この実施形態では、リング部材5及び第2フランジ3の移動を上記のように規制した状態で、図6に示すように、リドロー法によって連続成形されるガラスフィルムGをリング部材5の外周面にロール状に巻回してリール1に収納する。
【0041】
詳述すると、把持部7でガラスフィルム母材Gpの上端部を把持して吊り下げ支持するとともに、この吊り下げ支持したガラスフィルム母材Gpを加熱炉8の上端開口部から加熱炉8内に導入し、加熱炉8の内部に配置されたヒータで加熱して軟化させる。そして、加熱炉8の下端開口部から引き出された軟化したガラスフィルム母材Gpを加熱炉8の下方に配置された延伸ローラ9によって下方に延伸して、フィルム状のガラスフィルムGを製作する。そして、製作されたガラスフィルムGは、延伸ローラ9の外周面に沿って滑らかに湾曲しながら横方向に搬送され、ガラスフィルムGの搬送方向の下流端で、ガラスフィルムGの搬送速度に応じて回転するリール1のリング部材5の外周面に順次ロール状に巻回される。この際、ガラスフィルムGに過度な撓みが生じないように、テンションローラ10によってガラスフィルムGに張力が付与される。また、この実施形態では、保護フィルムPが巻回された保護フィルム巻回体11から順次引き出された保護フィルムPがガラスフィルムGに重ねられ、ガラスフィルムGと保護フィルムPとが同時にリング部材5の外周面に巻回されるようになっている。なお、保護フィルム巻回体11から引き出される保護フィルムPにもテンションローラ12によって張力が付与される。また、ガラスフィルムGに保護フィルムPを重ねて巻回する場合には、保護フィルムPを容易に剥離できる程度の粘着力でガラスフィルムGに貼着するようにしてもよい。
【0042】
次に、以上のような手順によってガラスフィルムGの巻回作業が完了した後、軸部4に対するリング部材5の噛み合いと、軸部4に対する第2フランジ3の噛み合いをそれぞれ一旦解除する。その後、図5(b)に示す通り、リング部材5及び第2フランジ3を軸部4に沿わせながら第1フランジ2側へと移動させ、リング部材5の幅方向両端面に第1フランジ2と第2フランジ3を当接させる。そして、この状態で、第2フランジ3を軸部4に対して再び回転させ、第2フランジ3を軸部4に対して噛み合わせて固定する。
【0043】
更に、この実施形態では、図7に示すように、リング部材5の外周面にガラスフィルムGを巻き終えた後、ガラスフィルムGの終端縁を含む終端部を端部保護部材13で保護するようにしている。
【0044】
詳述すると、図8(a)に示すように、この端部保護部材13は、全体として略直方体を呈する弾性部材で形成されており、先端部から略中央部までを横断するように形成されたスリット部13aを境界として上下に区分された一対の把持片13bを有する。この端部保護部材13は、図8(b)に示すように、手指等で端部保護部材13の基端部を上下両側から押圧すると、弾性変形によって一対の把持片13bが上下に離間してスリット部13aが拡開し、スリット部13a内にガラスフィルムGの終端部が挿入可能となる。一方、スリット部13a内にガラスフィルムGを挿入した状態で、端部保護部材13の基端部に付与していた押圧力を解除すれば、弾性復元力によって一対の把持片13bが再び接近してスリット部13aが閉鎖され、ガラスフィルムGの終端部が把持片13bに挟持された状態でスリット部13aに保持される。この際、ガラスフィルムGの終端縁は、外部に露出することなく、スリット部13aに完全に内包される。
【0045】
図9(a),(b)に示すように、ガラスフィルムGを保持した端部保護部材13は、リール1のフランジ2,3間に圧入される。このように圧入すると、弾性体で形成された端部保護部材13は、フランジ2,3に押圧されて一時的に圧縮変形した後、弾性復元力によって膨張変形するので、その膨張変形の過程でフランジ2,3間に保持される。このようにすれば、端部保護部材13がフランジ2,3間に圧入保持されるので、端部保護部材13がフランジ2,3の外方側へ突出するのを防止できる。そのため、ガラスフィルムGを収容した複数のリール1(ガラスフィルム梱包体)を相互に重ねて収納する場合に、端部保護部材13が邪魔にならないので、ガラスフィルムGを収容したリール1の収納効率を良好に維持できる。なお、この場合、ガラスフィルムGの終端部を保持する際に利用される端部保護部材13の弾性を、端部保護部材13のフランジ2,3に対する位置決め保持にもそのまま利用することが可能となるので便利である。
【0046】
この際、図9(b)に示すように、端部保護部材13の底部は、リング部材5の外周面に巻回されたガラスフィルムGから離間していることが好ましい。このようにすれば、端部保護部材13が、巻回されているガラスフィルムGを不当に押圧することがなくなるので、端部保護部材13を要因としてガラスフィルムGに破損が生じる割合を可及的に低減することができる。付言すれば、リング部材5の外周面に巻回されているガラスフィルムGに緩みが生じてガラスフィルムGの相互間に隙間が形成されている場合に、巻回されているガラスフィルムGを端部保護部材13などの他部材によって押圧したときには、ガラスフィルムGに容易に破損が生じ得る。そのため、端部保護部材13の底部は、上述のように、ガラスフィルムGから離間することで、ガラスフィルムGに不当な押圧力が作用しないようにすることが好ましい。
【0047】
なお、端部保護部材13を形成する弾性部材としては、ゴムやスポンジ素材であることが好ましく、中でもシリコンゴムやウレタンスポンジなどの高弾性高反発な特性を有する素材であることが好ましい。具体的には、当該弾性部材は、圧縮残留歪が4%以下、伸びが80%以上、引張強度が70kPa以上、硬さが60〜120Nであることが好ましい。
【0048】
以上のような本実施形態に係るガラスフィルム用リール1によれば、第1フランジ2と第2フランジ3の対向間隔をガラスフィルムGの幅方向寸法よりも大きく設定することができる。そのため、ガラスフィルムGをリング部材5の外周面に巻回する際に、ガラスフィルムGが、第1フランジ2と第2フランジ3に接触して破損するという事態を防止することができる。また、ガラスフィルムGの巻回作業終了後には、第1フランジ2と第2フランジ3の対向間隔を縮めて、ガラスフィルムGの幅方向のズレを防止することができる。
【0049】
また、ガラスフィルムGは、リング部材5の外周面にロール状に巻回されるため、リング部材5の外周面の半径を、ガラスフィルムGの最小巻取り半径に対応した値に設定しておけば、巻回状態のガラスフィルムGが疲労破壊するという事態を防止することができる。しかも、ガラスフィルムGの厚みなどが変更されて最小巻取り半径が変化した場合であっても、リング部材5のみを交換すれば、ガラスフィルムGの実際の巻取り半径を、最小巻取り半径を考慮して小さく抑えることができる。また、リング部材5を交換すれば、リール1のその他の部品はそのまま使用することが可能となることから、リール1の製作コストの低廉化や、保管場所の省スペース化にも寄与し得る。
【0050】
更に、第1フランジ2と第2フランジ3との対向間隔は、リング部材5の幅方向寸法よりも小さくなることがないので、リング部材5の幅方向寸法をガラスフィルムGの幅方向寸法よりも僅かに大きく設定しておけば、ガラスフィルムGの幅方向両端面がフランジ2,3によって過度に押圧されることがなくなる。そのため、ガラスフィルムGが、フランジ2,3による不当な押圧力を受けて破損するという事態を確実に防止することができる。
【0051】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の形態で実施することができる。例えば、上記の実施形態では、第1フランジ2に軸部4を一体的に設け、この軸部4を第2フランジ3の貫通孔6に挿入する場合を説明したが、図10に示すように、第1フランジ2の中心と、第2フランジ3の中心とにそれぞれ貫通孔2a,3aを設け、各々の貫通孔2a,3aに別体として構成された軸部4を挿通するようにしてもよい。この場合、第1フランジ2の貫通孔2aの形成面の断面輪郭線、第2フランジ3の貫通孔3aの形成面の断面輪郭線、および軸部4の外周面の断面輪郭線をそれぞれ対応する非真円形とし、軸部4に対するフランジ2,3の相対回転による回転方向への噛み合いによって、軸部4に対して、第1フランジ2及び第2フランジ3を固定するようにしてもよい。なお、リング部材5は、軸部4に外挿されるが、リング部材5の軸部4に対する固定方法も同様の手法を用いてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 ガラスフィルム用リール
2 第1フランジ
3 第2フランジ
2a 貫通孔
4 軸部
5 リング部材
6 貫通孔
7 把持部
8 加熱炉
9 延伸ローラ
11 保護フィルム巻回体
13 端部保護部材
13a スリット部
13b 把持片
G ガラスフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスフィルムをロール状に巻回して収納するガラスフィルム用リールであって、
間隔を置いて対向する一対のフランジと、該一対のフランジを軸方向に位置決めして連結する軸部と、前記一対のフランジの間で前記軸部に外挿されると共に前記ガラスフィルムよりも幅広とされ且つ外周面に前記ガラスフィルムがロール状に巻回されるリング部材とを備えていることを特徴とするガラスフィルム用リール。
【請求項2】
前記リング部材の内周面と前記軸部の外周面とに、前記軸部に対して前記リング部材を相対回転させると、周方向に噛み合って前記リング部材の前記軸部に対する周方向動および軸方向動を規制する第1規制部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のガラスフィルム用リール。
【請求項3】
前記一対のフランジの少なくとも一方が、前記軸部が挿通される係合孔を有するとともに、該係合孔の形成面と前記軸部の外周面とに、前記軸部に対して前記フランジを相対回転させると、周方向に噛み合って前記フランジの前記軸部に対する周方向動および軸方向動を規制する第2規制部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスフィルム用リール。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラスフィルム用リールに、ガラスフィルムを巻回して収納したことを特徴とするガラスフィルム梱包体。
【請求項5】
前記ガラスフィルムが、ダウンドロー法によって成形されたものであることを特徴とする請求項4に記載のガラスフィルム梱包体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−201618(P2011−201618A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68128(P2010−68128)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】