説明

ガラス基板搬送部材及びガラス基板の搬送方法

【課題】 立った状態に並べて載置された各ガラス基板の引き剥がしを容易にしようとするガラス基板搬送部材及びガラス基板の搬送方法を提供する。
【解決手段】 ガラス基板2を立った状態に並べて載置する載置面3を上面に有するベース部材8と、該ベース部材8上に立設され前記載置面3に並べて載置されたガラス基板2を立てかける傾斜面5を有する支持部材9とを備えたガラス基板搬送部材であって、前記傾斜面5に立てかけて前記載置面3に並べて載置された各ガラス基板2の上端部2dが前記傾斜面5から遠ざかるにつれ上方に突出して階段状となるように、前記載置面3を形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持部材の傾斜面に立てかけてガラス基板を立った状態に並べてベース部材の載置面に載置して搬送するガラス基板搬送部材及びガラス基板の搬送方法に関し、詳しくは、傾斜面に立てかけて並べて載置された各ガラス基板の上端部が傾斜面から遠ざかるにつれて上方に突出して階段状となるものとして、各ガラス基板の引き剥がしを容易にするガラス基板搬送部材及びガラス基板の搬送方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のガラス基板搬送部材は、図6(A),(B)に示すように保護紙1を介してガラス基板2を立った状態に並べて載置する水平の載置面3を設けたベース部材4と、該ベース部材4上に立設され、一方の面にガラス基板2の表面2aを立てかけて支持する傾斜面5を設けた支持部材6と、上記ベース部材4の載置面3上に並べて載置されるガラス基板2を上記傾斜面5側に押し付ける押圧手段7とを備えるものとなっている(例えば、特許文献1参照)。この場合、保護紙1を表面2aに対して略垂直方向(図6(B)において、左方向)に引くことにより各ガラス基板2を分離することができる。
【特許文献1】特開2000−353739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような従来のガラス基板搬送部材においては、ベース部材4の載置面3が支持部材6の傾斜面5と直角又は鈍角に交わるものであり、図6(B)に示すように載置面3に並べて載置された各ガラス基板2の上端部が同一面をなすように並んでいたため、例えば保護紙1を使用しないで並べて載置したガラス基板2の場合には、隣接する各ガラス基板2を引き剥がす手掛かりがなくて分離することが困難であった。また、各ガラス基板2の上端部に例えばロボットや、治具の爪を引っ掛けることができず、ロボットや、治具を使用して各ガラス基板2を引き剥がすことも困難であった。特に、載置枚数が多い場合や大判の厚いガラス基板2の場合には、その重みで各ガラス基板2の接触面間が真空状態となり、より強固に密着して、より引き剥がし難いものとなっていた。
【0004】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、傾斜面に立てかけて並べて載置された各ガラス基板の引き剥がしを容易にするガラス基板搬送部材及びガラス基板の搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明によるガラス基板搬送部材は、ガラス基板を立った状態に並べて載置する載置面を上面に有するベース部材と、該ベース部材上に立設され前記載置面に並べて載置されたガラス基板を立てかける傾斜面を有する支持部材とを備えたガラス基板搬送部材であって、前記傾斜面に立てかけて前記載置面に並べて載置された各ガラス基板の上端部が前記傾斜面から遠ざかるにつれ上方に突出して階段状となるように、前記載置面を形成したものである。
【0006】
このような構成により、前記のように形成された載置面で、ガラス基板を傾斜面に立てかけて立った状態に並べて載置された各ガラス基板の上端部を傾斜面から遠ざかるにつれ上方に突出させて階段状にする。
【0007】
また、前記載置面は、前記傾斜面と鋭角に交わるものである。これにより、傾斜面に鋭角に交差した載置面で載置された各ガラス基板の上端部を傾斜面から遠ざかるにつれ上方に突出させて階段状にする。
【0008】
さらに、前記載置面は、前記傾斜面から遠ざかるにつれ階段状に上昇する形状を有するものである。これにより、傾斜面から遠ざかるにつれ階段状に上昇する載置面で上記傾斜面から遠いガラス基板ほど上方に突出させて各ガラス基板の上端部を階段状にする。
【0009】
そして、前記載置面にクッション材を設けたものである。これにより、載置面に設けたクッション材で載置面に載置されたガラス基板の下端部が直接載置面に当接するのを防止する。
【0010】
また、本発明によるガラス基板の搬送方法は、ガラス基板を立った状態に並べて載置する載置面を上面に有するベース部材と、該ベース部材上に立設され前記載置面に並べて載置されたガラス基板を立てかける傾斜面を有する支持部材とを備えたガラス基板搬送部材を用いて前記ガラス基板を搬送するガラス基板の搬送方法であって、前記傾斜面に立てかけられた各ガラス基板の上端部が前記傾斜面から遠ざかるにつれて上方に突出して階段状となるように、前記載置面にガラス基板を並べて載置して搬送するものである。
【0011】
このような方法により、ベース部材上に立設された支持部材の傾斜面に立てかけられた各ガラス基板の上端部が傾斜面から遠ざかるにつれて上方に突出して階段状となるようにベース部材の載置面にガラス基板を立った状態に並べて載置して搬送する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び5に係る発明によれば、載置面に立った状態に並べて載置される各ガラス基板の上端部を傾斜面から遠ざかるにつれ上方に突出させて階段状となるようにしたことにより、ガラス基板の階段状に突出した上端部の側面に例えばロボットや、治具の爪を引っ掛け、ガラス面に対して略垂直方向に引張れば、ガラス基板が密着した場合にも各ガラス基板を容易に引き剥がして分離すことができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明によれば、載置面が傾斜面に鋭角に交わるものとしたことにより、載置面に積層載置される各ガラス基板の上端面を傾斜面から遠ざかるに連れ上方に突出させて階段状にすることができ、ガラス基板が密着した場合にも各ガラス基板を容易に引き剥がして分離すことができる。
【0014】
さらに、請求項3に係る発明によれば、載置面が傾斜面から遠ざかるにつれ階段状に上昇する形状を有するものとしたことにより、上記傾斜面から遠いガラス基板ほどその上端部を上方に突出させて各ガラス基板の上端部を階段状にすることができ、ガラス基板が密着した場合にも各ガラス基板を容易に引き剥がして分離すことができる。
【0015】
さらに、請求項4に係る発明によれば、載置面にクッション材を設けたことにより、載置面に載置されたガラス基板の下端部が硬い載置面に直接当接するのを防止し、ガラス基板の下端部が破損するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明によるガラス基板搬送部材の実施形態を示す斜視図である。このガラス基板搬送部材は、ガラス基板を傾斜面に立てかけて積層載置して搬送するものであり、ベース部材8と、支持部材9とを有している。
【0017】
上記ベース部材8の上面には、載置面3が設けられている。この載置面3は、ガラス基板を立った状態に並べて載置するものであり、後述する傾斜面5に対して鋭角θで交わるように形成された平面である。図2に示すように、載置面3に並べて載置されるガラス基板2は、表面2aに保護膜10が形成されたものであり、隣接する各ガラス基板2の保護膜10を直接接して並べられる。そして、図1に示すように、載置面3上には、クッション材11が設けられており、図3に示すように載置面3とガラス基板2の下端部2bの角部2cとが直接当接した場合に、該角部2cにガラス基板2の重量及び搬送時の衝撃が集中して破損するのを防止している。なお、ガラス基板2の上記角部2cが面取り加工されている場合には、このクッション材11はなくてもよい。
【0018】
上記ベース部材8の上面には、支持部材9が立設されている。この支持部材9は、図1に示すように、載置面3側の一面に傾斜面5を設け、該傾斜面5で載置面3に立った状態に並べて載置されたガラス基板2の表面2aを立てかけて支持するものである。この場合、従来技術におけるように、並べて載置されたガラス基板2を押圧手段7で上記傾斜面5側に押し付けて固定してもよい。または、並べて載置されたガラス基板2をベルトで支持部材9に縛り付けて固定してもよい。これにより、ガラス基板2を安定させて搬送することができる。
【0019】
第1の実施形態は、このように構成されたので、ガラス基板2の表面2aを傾斜面5に立てかけて、ガラス基板2を載置面3上に立った状態に並べて載置すれば、図2に示すように並べて載置された各ガラス基板2の上端部2dが上記傾斜面5から遠いガラス基板2ほど上方に突出して階段状となる。
【0020】
この場合、各ガラス基板2を分離するときには、図4に示すようにガラス基板2の突出した上端部2dに例えばロボットや、治具の爪12を引っ掛け、表面2aに対して略垂直方向(同図において、矢印A方向)に引張って引き剥がす。これにより、密着した各ガラス基板2を容易に引き剥がすことができる。
【0021】
次に、本発明のガラス基板搬送部材を用いてガラス基板を搬送するガラス基板の搬送方法について説明する。
先ず、図2において、表面2aに保護膜10を形成したガラス基板2を支持部材9の傾斜面5に立てかけて、ベース部材8の載置面3上に立った状態に並べて載置する。この場合、載置面3が傾斜面5と鋭角θで交わるように形成されているので、載置面3上に並べて載置された各ガラス基板2は、傾斜面5から遠いものほどその上端部2dが上方に突出して階段状となる。
【0022】
次に、載置面3に並べて載置されたガラス基板2を、例えば図6に示すと同様の押圧手段7やベルトを使用して支持部材9に固定し、安定させた状態で搬送する。
【0023】
搬送後、各ガラス基板2を引き剥がすときには、図4に示すように、ガラス基板2の突出した上端部2dの側面に例えばロボットや、治具の爪12を引っ掛け、ガラス基板2の表面2aに対して略垂直方向(図4において、矢印A方向)に引張る。これにより、密着した各ガラス基板2を容易に引き剥がすことができる。
【0024】
このように、本発明のガラス基板搬送部材及びガラス基板の搬送方法によれば、傾斜面5に立てかけられた各ガラス基板2の上端部2dが傾斜面5から遠ざかるにつれて上方に突出して階段状となるように載置面3にガラス基板を立った状態に並べて載置して搬送することにより、ガラス基板2の突出した上端部2dの側面に例えばロボットや、治具の爪12を引っ掛けて引張れば、密着した各ガラス基板2も容易に引き剥がすことができる。
【0025】
また、載置面3にクッション材11を設ければ、載置面3に載置されたガラス基板2の下端部2bの角部2cが硬い載置面3に直接当接するのを防止し、ガラス基板2の上記角部2cが破損するのを防止することができる。
【0026】
図5は、上記ベース部材8の載置面3の変形例を示す側面図である。この載置面3は、傾斜面5に対して鋭角に交わる面を、傾斜面5から遠ざかるにつれ階段状に上昇するように形成したものである。この場合、該階段状の各面は上記傾斜面5に直交するように形成される。また、階段のピッチPは、各ガラス基板2の積層ピッチpに略一致するように形成される。
【0027】
これにより、図1に示す上記実施形態と同様に載置面3上に立った状態に並べて載置された各ガラス基板2は、傾斜面5から遠いものほどその上端部2dが上方に突出して、ガラス基板2の上端部2bが階段状となる。
【0028】
また、各階段の上面が傾斜面5に直交するように形成すれば、ガラス基板2の下端部2bが上記階段の上面に面接触することになり、ガラス基板2の下端部2bの角部2cにガラス基板2の重量及び搬送時の衝撃が集中せず、該角部2cにおいてガラス基板2が破損するのを防止することができる。
【0029】
なお、上記実施形態においては、支持部材9の一側面に傾斜面5を設け、該傾斜面5と同じ側に載置面5を有する場合について説明したが、これに限られず、支持部材9の両側面に傾斜面5を設け、該支持部材9の両側方に載置面5を有するようにしてもよい。
【0030】
また、本発明のガラス基板搬送部材は、別部材からなるベース部材8と支持部材9とを組み合わせて形成したものであっても、ベース部材8と支持部材9とを同一部材で一体的に形成したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明によるガラス基板搬送部材の実施形態を示す斜視図である。
【図2】上記ガラス基板搬送部材の載置面にガラス基板を立った状態に並べて載置した状態を示す側面図である。
【図3】上記ガラス基板搬送部材の載置面にガラス基板を立った状態に並べて載置したときのガラス基板の下端部と載置面のクッション材との接触状態を説明する要部拡大側面図である。
【図4】立った状態に密着して並べて載置された各ガラス基板を分離する方法を説明する要部拡大側面図である。
【図5】上記ガラス基板搬送部材のベース部材の載置面の変形例を示す側面図である。
【図6】従来技術のガラス基板搬送部材の構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0032】
2…ガラス基板
2d…上端部
3…載置面
5…傾斜面
8…ベース部材
9…支持部材
11…クッション材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板を立った状態に並べて載置する載置面を上面に有するベース部材と、該ベース部材上に立設され前記載置面に並べて載置されたガラス基板を立てかける傾斜面を有する支持部材とを備えたガラス基板搬送部材であって、
前記傾斜面に立てかけて前記載置面に並べて載置された各ガラス基板の上端部が前記傾斜面から遠ざかるにつれ上方に突出して階段状となるように、前記載置面を形成したことを特徴とするガラス基板搬送部材。
【請求項2】
前記載置面は、前記傾斜面と鋭角に交わるものとしたことを特徴とする請求項1記載のガラス基板搬送部材。
【請求項3】
前記載置面は、前記傾斜面から遠ざかるにつれ階段状に上昇する形状としたことを特徴とする請求項2記載のガラス基板搬送部材。
【請求項4】
前記載置面にクッション材を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス基板搬送部材。
【請求項5】
ガラス基板を立った状態に並べて載置する載置面を上面に有するベース部材と、該ベース部材上に立設され前記載置面に並べて載置されたガラス基板を立てかける傾斜面を有する支持部材とを備えたガラス基板搬送部材を用いて前記ガラス基板を搬送するガラス基板の搬送方法であって、
前記傾斜面に立てかけられた各ガラス基板の上端部が前記傾斜面から遠ざかるにつれて上方に突出して階段状となるように、前記載置面にガラス基板を並べて載置して搬送することを特徴とするガラス基板の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−123959(P2006−123959A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313603(P2004−313603)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(391061510)株式会社藤森技術研究所 (20)
【Fターム(参考)】