説明

ガラス清掃布巾及びその清掃方法

【課題】ガラス清掃布巾に関して、清掃布巾の単位面積あたりの清掃可能な対象面積を増加させ、拭き上げ性能が向上した清掃用布巾を提供する。
【解決手段】ガラス清掃布巾の布地において、パイル織りの区域と非パイル織りの区域を設け、それぞれの区域の特性を生かし、パイル織りの区域の持つ捕集性の良さと、非パイル織りの区域の持つ汚れの粒子の掻き取り能力の良さが交替して機能することにより、相乗効果を発揮させて、清掃布巾の単位面積あたり清掃可能面積が増加して拭き上げ性能の向上を可能にしたガラス清掃布巾。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス清掃に関する、清掃布巾と清掃方法である。
【背景技術】
【0002】
ガラス清掃に関して、古くは綿のタオルを用いていた。近年では、ナイロンやポリエステル等の合成樹脂の極細繊維からなる糸を織製してつくられたワイピングクロスと呼ばれる布巾を使用するのが主流である。そして、ワイピングクロスを使用するときは、水に濡らし固く絞ってからガラスを拭くというスタイルが主流になっている。この点は、特許文献1に挙げた、特許第3696651号の発明に、繊維の間に水が含浸されている、という表現で示されている。
【0003】
ワイピンクロスの極細繊維は、繊維の表面に特殊な形状が形成されており、その形状によってガラス表面の汚れをよく掻き取ることができ、掻き取った汚れをガラス表面から布巾に移動させることによってガラスを清掃する。汚れには様々なものがあるが、屋外に面したガラスで最も多いのは、雨滴に含まれる微少な粉塵が、雨滴の乾燥後にガラス表面に残ったものである。その微少な粉塵は、ほとんどが、直径が0.1mmから千分の1mmの間に含まれる。千分の1mm以下は肉眼で目視できないので、清掃の範囲外である。
【0004】
さて、ワイピンクロスの織製の方法は大別して2通りがある。1つはパイル織りであり、もう1つは非パイル織りである。ここで、パイル織りと、非パイル織りの定義を説明する。パイル織りは、タオルや、じゅうたんに代表される織り方で、基布から垂直方向にパイルを突出させる織製の方法である。そして、非パイル織りは、古来から存在する平織りに代表される織り方で、糸を縦横に組み合わせる織製の方法である。市場に流通しているワイピングクロスを見ると、パイル織りは厚手と呼ばれたり、非パイル織りは薄手と呼ばれたりしている。また、縦糸と横糸を組み合わせる平織りでも、糸自体に垂直方向に突起物を形成しているものを使用している場合があるが、これはパイル織りの範疇に含まれることとする。
【0005】
この非パイル織りとパイル織りのワイピングクロスには、それぞれ一長一短がある。非パイル織りのワイピングクロスの長所は、汚れの粒子の掻き取り能力が高いところにある。非パイル織りは縦糸と横糸の組み合わせでできているため、清掃する際、縦糸と横糸がガラス表面に接触する時、ガラス面と糸が水平方向に接地しているので、これが原因で粒子の掻き取り能力が高い。この点が長所であるが、短所としては、縦糸と横糸を緊密に組み合わせて織っているので、糸と糸の間に存在する空間の体積が少なく、つまるところ、汚れの粒子を収容する空間が少ない。論理的には、糸と糸の間の空間の体積と同量の汚れの粒子の量を捕集することができる。しかし実際は、捕集容量オーバーになる以前の段階で、清掃能力の低下が始まるので、ガラス清掃の仕上りの悪さという結果が起こり、使用に適さなくなってくる。つまり、目詰まり現象が起こって、総合的な清掃能力が低下するのである。
【0006】
それに対して、パイル織りのワイピングクロスの長所は、捕集性の良いところである。基布から垂直方向にパイルが突出しているので、パイルとパイルとの間に空間が生じ、その空間に汚れの粒子を保持できるので捕集性が良い。しかし、汚れの掻き取り能力は低い。その理由は、パイルとパイルの間の空間を、汚れの粒子がすり抜けてしまってガラス表面上に残留するからである。このように、パイル織りのワイピングクロスの長所と短所は裏腹の関係にある。
【0007】
以上のように、同じ糸から織られたワイピングクロスであっても、その織り方によってガラス清掃に関する性能の特徴に差が出る。ワイピングクロスには、汚れの掻き取り能力の高いものは捕集性能が低く、捕集性能の高いものは汚れの掻き取り能力が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3696651号公報
【特許文献2】特開平5−192284号公報
【特許文献3】実登第3061564号公報
【特許文献4】特開2007−117480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、一枚の布地に、高い捕集性能と高い汚れの掻き取り能力を同居させ、ワイピングクロスの単位面積あたりの清掃可能な量を増加させようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一枚の布地の表面に、パイル織りの区域と非パイル織りの区域を設け、それぞれの区域が交替して清掃対象に作用する構成になっている。清掃作業の際には、汚れの粒子が存在している清掃対象に対して、まずパイル織り区域を使用して、次に非パイル織り区域が使用される。まず、高い捕集能力をもったパイル織りの区域が、汚れ粒子をパイルとパイルとの空間に取り込む。しかし、パイルとパイルとの空間を通過してガラス表面上に残った汚れ粒子が存在する。そこで次に、非パイル織りの区域が、その残留した粒子を掻き取って仕上げをしてゆく。しかも、非パイル織りの区域が目詰まりを起こすことは相対的に低下している。なぜならば、事前にパイル織りの区域が大部分の汚れの粒子を捕集しているからだ。
【発明の効果】
【0011】
このように、パイル織りの区域の補習性が良いという特徴と、非パイル織りの区域の掻き取り能力が高いという特徴を交替して機能させることで、総合的な清掃能力を高めることできる。従来のパイル織りのワイピングクロスと比較しては、汚れの掻き取り能力が高く仕上がりがいいという効果が得られ。また、従来の非パイル織りのワイピングクロスと比較しては、目詰まりを起こさず、一枚の布地で清掃可能なガラス面積が増加するという効果が得られる。それによって、洗い換えの手間が省け作業時間が短縮される。なお、特許文献3に挙げた、実登第3061564号には、パイルと非パイルを組み合わせた発明があるが、これは、パイルと非パイルを混在させて織ったもので、本発明のそれぞれの区域を設けるという発明とは思想が異なる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を実施するための第1の形態の斜視図である。
【図2】本発明を実施するための第2の形態の斜視図である。
【図3】本発明を実施するための第3の形態の斜視図である。
【図4】本発明を実施するための第4の形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0014】
図1を参照しながら、第1の実施形態を説明する。パイル織りの布地と非パイル織りの布地を縫製によってつないだものである。清掃する際には、縫製の部分で二つ折りにして使用する。まず1度、パイル織りの布地で拭いて、次に、非パイル織りの布地で拭くという2度拭きの作業が必要である。裏面も表面と同様に形成すれば、清掃作業が進行するうちに布地が汚れてきてガラス面の仕上がりが悪くなってきたら、折り返して未使用の面を使用できる。つまり表と裏と使うことができる。
【0015】
図2を参照しながら、第2の実施形態を説明する。図2は、図1の布巾を、さらにもう一ヶ所縫製して筒状にしたものである。手袋やミトンのように、手を中に差し込んで使用すると、第1の実施形態のように、パイル織りの布地と非パイル織りの布地をヒックリかえす手間が若干ではあるが改善される。特許文献4に挙げた、特開2007−117480号、の発明に筒状のワイピングクロスが出ているが、これを改良した発明である。まず、パイル織りの布地で拭いて、次に、非パイル織りの布地で仕上げ拭きをする。そして、次のガラスには、またパイル織りの布地で拭くという具合である。
【0016】
図3を参照しながら、第3の実施形態を説明する。図3は、図2の筒状の布巾を、さらにもう二ヶ所縫製して布地の表裏に、パイル織りと非パイル織りをそれぞれ形成したものである。縫製であってもよく、また織製で形成してもよい。特許文献2に挙げた、特開平5−192284号は、表と裏をそれぞれパイル織りと不織布で形成したものだが、不織布の特性はガラス清掃に不向きなのである。その理由としては、非パイル織りについてはガラス面にピッタリ接地するので汚れの掻き取り能力が高いのであるが、それと比較して、不織布は表面が荒くガラスとの接地面に隙間ができやすい。だから、汚れの掻き取り能力が低い。また、パイル織りと比較してみると、パイル織り同様に空隙が形成されるのだが、空間の容積がパイル織りのほうが大きいので、捕集性もパイル織りに比較して少ない。
【0017】
図4を参照しながら、第4の実施形態を説明する。図4は、布の同一面にパイル織りの区域と非パイル織りの区域を連続して交互に配置したものである。この実施形態の長所は、二度拭きしなくてもよいので、一度の拭き上げで清掃が完了する点にある。しかし、各区域を連続するよう使用しなければならないので、横方向に使えば、縦方向には使用できない欠点が生じる。この欠点を改良した配置には、パイル織りの区域と非パイル織りの区域を市松模様に配置したものがある。この場合は、横方向にも縦方向にも、さらに斜め方向にも使用可能である。なお裏面にも同様のものを、織製または縫製によって形成してもよい。
【0018】
以上の諸形態について、パイル織りの区域と非パイル織りの区域の面積比率は、望ましくは50対50であるが、実験では、10対90から90対10まで、いずれも実用可能であった。
【実施例】
【0019】
布巾の単位面積あたり清掃可能量が、本発明により向上する点を実験で確認した。縦と横がそれぞれ40cmの非パイル織りのワイピングクロスを水につけて固く絞り、4回折りたたんで一辺が10cm弱の正方形にして、それを手で持ち、十分に汚れた住宅の屋外の窓ガラスを拭いた。窓ガラスのサイズは縦120cm、横90cmである。1枚のガラスの清掃が完了したが、清掃の進行の3分の2あたりで仕上がりが悪くなって、拭き跡が残るようになった。
【0020】
次に、隣接したガラス窓で比較の実験を行った。まず、パイル織りの同サイズの布巾を、やはり、一辺が10cm弱の正方形にして、同様の条件で同程度に汚れた4枚のガラスを拭いた。次に、このパイル織りの布巾で拭いた4枚のガラスを、さらに、未使用の非パイル織りのワイピングクロスで同様の条件にして拭いた。すると、4枚を完了するまで、拭き跡が残ることなく十分な仕上がりで拭くことができた。この実験により、本発明によって単位面積あたりの清掃可能な対象面積は2倍以上になることがわかった。
【符号の説明】
【0021】
1 パイル織りの区域
2 非パイル織りの区域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイル織りの区域と非パイル織りの区域とで構成される清掃布巾。
【請求項2】
一つの面において、一つのパイル織りの区域と一つの非パイル織りの区域で構成される請求項1記載の清掃布巾。
【請求項3】
請求項2の清掃布巾において、パイル織りの区域と非パイル織りの区域を縫製によって接続して筒状に形成した清掃布巾。
【請求項4】
一つの面をパイル織りの区域とし、反対の面を非パイル織りの区域とする表裏を形成した請求項1記載の清掃布巾。
【請求項5】
一つの面において、パイル織りの区域と非パイル織りの区域が複数連続して構成される請求項1記載の清掃布巾。
【請求項6】
請求項1乃至4の清掃布巾を、まず、パイル織りの区域の布地で拭き、次に、非パイル織りの区域の布地で拭くという順序とした清掃方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−244876(P2011−244876A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118229(P2010−118229)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(399126695)
【Fターム(参考)】