説明

ガラス溶融方法およびガラス溶融装置

【課題】ヘリウムを効率良く溶融ガラスに含有させることによりガラス中の泡欠陥を減じ、高い泡品位を有するガラス製品を得ることが可能なガラス溶融方法およびガラスの溶融装置を提供する。
【解決手段】ヘリウム含有ガスを溶融ガラスの上部雰囲気に供給する工程を含むガラス溶融方法であって、溶融ガラス液面から上部雰囲気の天井部までの高さが0.3m以下である低天井領域を設け、かつヘリウム含有ガスを当該低天井領域に供給することを特徴とするガラス溶融方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス原料を加熱して溶融ガラスを得るためのガラス溶融方法およびガラス溶融装置に関する。より詳細には、本発明は、溶融ガラスに清澄ガスを含有させることにより泡欠陥を減じ、高い泡品位を有するガラス製品を得るためガラス溶融方法およびガラス溶融装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無機原料粉末を加熱して融液状態に保持した後、得られた溶融ガラスを所定形状に成形して冷却することで過冷却液体状態とし、ガラス物品を得るという手法は、古くから利用されてきた基本的なガラス製造方法である。ガラス製造業にとって、溶融時における異物や泡等の発生を抑制し、市場の要求に見合う均質なガラス製品を高い効率で製造することは、種々のガラス製品について長年取り組まれてきた重要な課題である。しかしながら、ガラス溶融工程において、ガラス中のブツ、脈理、異質結晶の析出といった問題を克服できたとしても、溶融ガラスから泡を完全に除去することは、依然として困難な課題として残っている。
【0003】
溶融ガラスから泡を除去する手段は化学的手法と物理的手法とに大別される。前者の代表的な方法として、ガラス原料中に清澄剤と呼ばれる微量添加物を含有させる方法がある。一方、後者の代表的な方法として、減圧または真空脱気を行いながらガラスを溶融する方法がある。
【0004】
具体的に言うと、化学的手法については、多種多様なガラス製品の製造工程で高い清澄効果を発揮するAsが頻繁に使用されてきた。しかしながら、Asは環境負荷の点で問題視されており、他の清澄剤への転換が急務となっている。そこで、これまで提案されてきた他の清澄剤の見直しや新たな清澄剤の開発が行われてきた。例として、Sb、SnO等の金属酸化物、NaCl等のハロゲン化物、NaSO等の硫酸塩などが検討されてきた。また、これらの固体清澄剤とは別に、ヘリウム等の希ガスを溶融ガラス中に含有させることで泡品位を向上させる方法についても検討が行われてきた。
【0005】
特許文献1はガラスの清澄方法として初めてヘリウムに着目したものである。特許文献1には、ホウケイ酸ガラスに対してヘリウムを塩化ナトリウムとともに作用させることによって、溶融ガラスに対して清澄効果をもたらすことが示されている。特許文献2〜6には、ヘリウムが種々の組成のガラスに対して清澄効果を発揮することが示されている。
【0006】
ヘリウムを溶融ガラス中に含有させる方法としては、ヘリウムを高濃度で含有する物質、あるいはヘリウムを含有するガラスカレットを原料として利用する方法や、溶融ガラスにヘリウムガスを接触させる方法などが挙げられる。
【0007】
溶融ガラスにヘリウムガスを接触させる方法としては、ガラス溶融槽の上部雰囲気にヘリウムガスを導入する方法、ガス透過性を有する溶融槽でガラスを溶融し、溶融槽周囲をヘリウム雰囲気にする方法、あるいは耐火性ノズルを用いてヘリウムガスを溶融ガラス中にバブリングする方法などが挙げられる。溶融ガラスの上部雰囲気にヘリウムガスを導入する方法については、特許文献7に具体的な方法が記載されている。
【特許文献1】米国特許第3622296号
【特許文献2】特開2003−300750号公報
【特許文献3】特開2004−269347号公報
【特許文献4】特開2005−53708号公報
【特許文献5】特開2005−53711号公報
【特許文献6】特開2005−53712号公報
【特許文献7】特開2004−91307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の溶融ガラスにヘリウムを接触させる方法のうち、溶融ガラスの上部雰囲気にヘリウムガスを導入する方法は、当該上部雰囲気におけるガラス溶融槽の壁面にヘリウムガス導入管を設置するという比較的簡便な方法で実施することができる。しかしながら、ヘリウムガスは通常、溶融ガラスの上部雰囲気中に存在するN、CO、HO、O等の気体と比べて密度が小さいため、浮力により浮上してしまう。このため、ヘリウムガスは溶融ガラス表面に到達しにくいという問題がある。
【0009】
特に、ガラス原料を連続的に投入して溶融を行う装置においては、溶融初期のガラス化反応によってCO等の分解ガスが大量に発生する。さらに、上方から溶融ガラスを燃焼火炎により加熱する場合は、当該燃焼火炎により発生する燃焼ガスも供給されることとなる。これらの分解ガスや燃焼ガスは、溶融ガラスの上部雰囲気中に設置された排気口より排出される。したがって、このような大量のガスが発生する溶融ガラス上部雰囲気にヘリウムガスを導入しても、当該上部雰囲気の上方に浮上するとともに希釈され、溶融ガラスとほとんど接触することなく排出口より排出されてしまう。
【0010】
なお、大量のヘリウムを長時間連続的に供給し続けることができれば、溶融ガラスの上部雰囲気をヘリウムで完全に置換することも可能であるが、コストが非常に高くなってしまう。
【0011】
以上のような従来技術の有する問題点に鑑み、本発明は、ヘリウムを効率良く溶融ガラスに含有させ、かつガラス化反応時に発生する分解ガスやバーナーなどの加熱手段から発生する燃焼ガスの流入を低減させることによりガラス中の泡欠陥を減じ、高い泡品位を有するガラス製品を得ることが可能なガラス溶融方法およびガラスの溶融装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、鋭意検討した結果、ガラス原料を溶融槽に投入し、加熱により溶融を行うガラス溶融方法において、溶融ガラスの上部雰囲気に低天井領域を設け、当該低天井領域にヘリウムを含有するガスを供給することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明として提案するものである。
【0013】
すなわち、本発明は、溶融槽において、ヘリウム含有ガスを溶融ガラスの上部雰囲気に供給する工程を含むガラス溶融方法であって、溶融ガラス液面から上部雰囲気の天井部までの高さが0.3m以下である低天井領域を溶融槽の出口側に設けるとともに、低天井領域の天井部よりも高い天井部を有する高天井領域を溶融槽のガラス原料投入口側に設け、かつヘリウム含有ガスを当該低天井領域に供給することを特徴とするガラス溶融方法に関する。
【0014】
このように、溶融ガラスの上部雰囲気に低天井領域を設け、当該低天井領域にヘリウム含有ガスを供給することにより、ヘリウム含有ガスの浮上を抑制し、かつガラス化反応時に発生する分解ガスやバーナーなどの加熱手段から発生する燃焼ガスの流入を低減することができる。したがって、低天井領域におけるヘリウム含有ガスの濃度を高く保つことができ、ヘリウム含有ガスが効率良く溶融ガラス表面に接触させることができる。その結果、溶融ガラスに対する清澄効果を高めることができ、高い泡品位を有するガラス製品を得ることが可能となる。
【0015】
第二に、本発明のガラス溶融方法において、天井部を、略水平に設置された仕切り板により形成することが好ましい。
【0016】
溶融ガラスの上部雰囲気に低天井領域を設ける方法としては、溶融装置の天井(上部壁面)そのものを低くするほか、溶融ガラス液面と溶融装置の天井との間に略水平な仕切り板を設置する方法が挙げられる。この場合、低天井領域は溶融ガラス液面と仕切り板との間に形成された領域を指す。このように、仕切り板を用いれば上部雰囲気に簡便に低天井領域を形成することが可能となる。また、必要に応じて仕切り板の設置場所を変化させることにより、低天井領域の高さも容易に調節することが可能となる。
【0017】
第三に、本発明のガラス溶融方法において、溶融ガラス液面に対する面積比率で、上部雰囲気の20%以上が低天井領域であることが好ましい。
【0018】
このように、溶融ガラスの上部雰囲気における低天井領域を20%以上と大きくすることにより、ヘリウム含有ガスを溶融ガラス表面に接触させやすくなるため、清澄効果を一層高めることが可能となる。
【0019】
第四に、本発明のガラス溶融方法において、ヘリウム含有ガスにおけるヘリウム含有量が10体積%以上であることが好ましい。
【0020】
溶融ガラスを効果的に清澄するためには、より多くのヘリウムを溶融ガラス表面に接触させることが好ましい。よって、ヘリウム含有ガスにおけるヘリウム含有量を10体積%以上と大きくすることにより、清澄効果を高めることが可能となる。
【0021】
第五に、本発明は、溶融槽において、ヘリウム含有ガスを溶融ガラスの上部雰囲気に供給するためのヘリウム含有ガス供給手段を具備してなるガラス溶融装置であって、上部雰囲気に溶融ガラス液面から天井部までの高さが0.3m以下である低天井領域を溶融槽の出口側に有するとともに、低天井領域の天井部よりも高い天井部を有する高天井領域を溶融槽のガラス原料投入口側に有し、かつヘリウム含有ガス供給手段が当該低天井領域に設置されていることを特徴とするガラス溶融装置に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明のガラス溶融方法およびガラス溶融装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
本発明を大型の連続溶融装置に適用した実施形態を図1に示す。図1のガラス溶融装置は、ガラス原料をガラス化する溶融槽1と清澄を行う第一清澄槽2および第二清澄槽3を含んでなるものである。ガラス溶融装置の炉壁や天井部は耐火物Rで構成されている。なお、耐火物Rの材料は特に限定されず、公知の材料を使用することができる。また、耐火物成分の溶融ガラス中への汚染(溶出)が原因となって生じる脈理、異物などの発生を抑制するために、炉内の耐火物表面を白金で覆うことも可能である。
【0024】
このガラス溶融装置では、まず予め均質に混合調製されたガラス原料(またはガラスカレット)Bが溶融槽1のガラス原料投入口4に据え付けられた原料投入機から投入される。投入されたガラス原料Bは、溶融槽1の上部に設置されたバーナー5と下部に設置された板状電極6の両加熱手段によって加熱され、溶融ガラスGが生成する。
【0025】
ここで、溶融槽1の出口側において、溶融ガラスの上部雰囲気に略水平な仕切り板7が設置され、低天井領域Lが形成されている。また、ヘリウム含有ガス供給手段として、溶解槽ガス導入管8が低天井領域Lに設置されており、溶解槽ガス導入管8からヘリウム含有ガスAが供給される。これにより、溶融槽1出口付近においてヘリウム含有ガスAが溶融ガラスG表面に接触し、ヘリウムが溶融ガラスG中に導入され、溶解、拡散する。なお、ヘリウム含有ガス供給手段は特に限定されず、ガス導入管のほかに多孔性耐火物などを用いることができる。
【0026】
本実施形態では、溶融ガラスGは溶融槽1に連結したスロート9を通過し第一清澄槽2に流入し、第一清澄槽2にてさらに清澄が行われる。このように、溶融槽1での清澄を経た後、別途設けられた第一清澄槽2にて清澄を行うことにより、より清澄効果を高めることが可能となる。なお、第一清澄槽2は、溶融槽1よりも天井が低くなっており、溶融ガラスGの上部雰囲気の全領域が低天井領域Lにより構成されている。
【0027】
第一清澄槽2において、溶融ガラスGは棒状電極10により加熱される。第一清澄槽2には第一清澄槽ガス導入管11が設置されており、第一清澄槽ガス導入管11よりヘリウム含有ガスAが供給され、さらに清澄が促進される。また、必要に応じて、既述の他の清澄剤を併用することにより、清澄をさらに促進させることも可能である。これによって、液晶用板ガラスのように、極めて厳しい泡品位が要求されるガラス製品にも対応することができる。ただし、AsおよびSbは環境負荷物質であるため、実質的に含有しない(例えば、ガラス組成中に0.1質量%以下)ことが好ましい。
【0028】
第一清澄槽2における溶融ガラスGの上部雰囲気にはガラス化反応による分解ガスやバーナー等の加熱手段から発生する燃焼ガスはほとんど存在しない。しかしながら、もともと雰囲気中に存在する空気や外部から混入する空気、あるいは溶融ガラスG表面において発生する揮発成分等の影響を受けることとなる。よって、本発明の手法は、第一清澄層2においてもその効果は大きい。
【0029】
第一清澄槽2を経た溶融ガラスGは、さらに第二清澄槽3で清澄が行われる。しかし、第一清澄槽2で十分な清澄が行われれば、第二清澄槽3を省くことも可能である。
【0030】
次に、溶融ガラスGは第二清澄槽3に連結したフィーダー13において、スターラー14にて撹拌することにより脈理等の不均質部分が除去される。その後、成形部(図示せず)でガラスの成形が連続的に行われる。
【0031】
本発明において、溶融ガラスの上部雰囲気における低天井領域の高さは0.3m以下、好ましくは0.2m以下、より好ましくは0.15m以下である。低天井領域の高さが0.3mを超えると、低天井領域におけるヘリウム含有ガスの濃度を高く保つことが困難となり、溶融ガラスに対する清澄効果が十分に得られない傾向がある。
【0032】
また、上部雰囲気において低天井領域が占める割合は、溶融ガラス液面に対する面積比率で、好ましくは20%以上、より好ましく30%以上、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上である。低天井領域が上部雰囲気において占める割合が20%未満であると、ヘリウム含有ガスを溶融ガラス表面に接触させにくくなり、清澄効果が十分に得られない傾向がある。
【0033】
ヘリウム含有ガス中のヘリウムの含有量は、好ましくは10体積%以上、より好ましくは30体積%以上、さらに好ましくは50体積%以上である。特に、ヘリウム含有量100体積%の純ヘリウムを使用すると、溶融ガラス表面におけるヘリウム濃度を高くすることができるため好ましい。ヘリウムの含有量が10体積%未満であると、十分な清澄効果が得られにくく、ガラス製品の泡品位に劣る傾向がある。
【0034】
一方、ヘリウム含有ガスの分子量を大きくして、溶融ガラス上部雰囲気にもともと存在するCO等のガスと同程度とすることにより、ヘリウム含有ガスの浮上および低天井領域外から低天井領域へのガスの侵入を抑制するという効果も期待できる。この方法により、例えば純ヘリウムなどのヘリウム含有量が多いヘリウム含有ガスを用いる場合よりも、ヘリウムを溶融ガラス表面に接触させやすくなり、さらに高い清澄効果が得られる場合がある。特に、低天井領域の高さを十分に低くできない場合に有効である。このような観点から、ヘリウム含有ガスの分子量を21以上、または30以上、さらに35以上、特に40以上とすることができる。ヘリウム含有ガスの分子量の上限は特に限定されないが、大きすぎると相対的にヘリウムの含有量が少なくなり清澄効果に劣る傾向があるため、110以下、または80以下、さらに60以下に限定される。
【0035】
ヘリウムと混合するガスとしては、溶融ガラスの上部雰囲気にもともと存在するガスと同程度またはそれ以上の分子量を持ち、かつ高温で安定であることが好ましい。これらの条件に該当するガスの例としては、Ar、Kr、Xe等の希ガスのほかに、CO、CF、SF等のガスが挙げられる。なかでも、分子量が十分に大きく、高温での安定性にも優れることから、KrまたはXeを用いることが好ましい。
【0036】
ヘリウム含有ガス供給手段の位置は、溶融ガラスの表面に近いほどヘリウムを溶融ガラスに接触させやすいため好ましい。具体的には、ヘリウム含有ガス供給手段の位置は、好ましくは溶融ガラス表面から高さ0.3m以下、より好ましくは0.2m以下、さらに好ましくは0.1m以下である。清澄効果を向上させるため、ヘリウム含有ガス供給手段は複数設置してもよい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の効果を数値流体解析を用いて検証した例を説明する。この解析では、ガスの密度差によってもたらされる対流と、各ガス成分間の相互拡散が考慮されており、実炉におけるガスの移動現象を十分理解できる程度に再現できるものである。
【0038】
(実施例1)
図2は、図1のガラス溶融装置における溶融槽1の溶融ガラス表面より上部の構造を示した模式図である。溶融槽上部構造20の寸法は、長さ2m、幅1m、高さ1mとした。
【0039】
溶融槽上部構造20には、ガラス原料投入口21からガラス原料Bが投入され、長さ1mの領域に渡って未溶解のガラス原料Bが溶融ガラスを覆っている。ここで、ガラス原料Bは、72SiO−2Al−4MgO−8CaO−14NaOの組成を含有する溶融ガラスが得られるように原料が調合されており、ガラス原料投入口21から投入され、150kg/hの流量で溶融ガラスが生成する。このとき、29.4kg/hの速度でCOガスCが未溶解のガラス原料Bから放出されるものとした。
【0040】
加熱方法は、溶融ガラス中の直接通電および上部に設置したヒーター(いずれも図示せず)による間接加熱方式であり、上部雰囲気は1500℃に保たれている。上部雰囲気に存在する主要なガスはCOである。ここで、ガラス原料投入口21の反対側の側壁付近に、長さ0.8m、幅1mの仕切り板25を溶融ガラス表面24より高さ0.1mの位置に設け、低天井領域Lを形成した。低天井領域Lにて、溶融ガラス表面24より高さ0.05mの位置に設置されたガス導入管22より、純ヘリウム(平均分子量4)を3Nm/hの流量で導入した。上部雰囲気における過剰なガスは、ガラス原料投入口21の上方に取り付けられたガス排出管23より排出される。溶融ガラス表面24におけるヘリウムの濃度分布を図3に示す。
【0041】
(比較例1)
仕切り板25を設置しなかった以外は、実施例1と同様に解析を行った。溶融ガラス表面24におけるヘリウムの濃度分布を図3に示す。
【0042】
(実施例2)
ヘリウム含有ガスとしてヘリウムとキセノンの混合ガス(平均分子量67.7、ヘリウムの含有量50体積%)を用い、実施例1と同様に解析を行った。溶融ガラス表面24におけるヘリウムの濃度分布を図4に示す。
【0043】
(比較例2)
仕切り板25を設置しなかった以外は、実施例2と同様に解析を行った。溶融ガラス表面24におけるヘリウムの濃度分布を図4に示す。
【0044】
図3および4から明らかなように、低天井領域を設け、当該低天井領域においてヘリウム含有ガスを導入した実施例1および2は、低天井領域を設けなかった比較例1および2と比較して、溶融ガラス表面におけるヘリウム濃度を広範囲において高く維持できることがわかる。これにより、清澄効果の向上が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のガラス溶融方法およびガラス溶融装置は、例えば液晶表示素子の基板用板ガラスやプラズマディスプレイ用途の板ガラス、固体撮像素子収納パッケージのカバーガラス、液晶表示ディスプレイに搭載されるバックライト用管ガラス、高強度結晶化ガラス、光部品用途の各種レンズ部品、低融点粉末ガラス等のガラス製品の製造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のガラス溶融装置の一実施形態を示す側断面図である。
【図2】図1のガラス溶融装置における溶融槽の溶融ガラス表面より上部の構造を示す模式図である。
【図3】実施例1および比較例1における溶融ガラス表面のヘリウム濃度分布を示すグラフである。
【図4】実施例2および比較例2における溶融ガラス表面のヘリウム濃度分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0047】
1 溶融槽
2 第一清澄槽
3 第二清澄槽
4 ガラス原料投入口
5 バーナー
6 板状電極
7 仕切り板
8 溶融槽ガス導入管
9 スロート
10 棒状電極
11 第一清澄槽ガス導入管
12 ガス排出管
13 フィーダー
14 スターラー
20 溶融槽上部構造
21 ガラス原料投入口
22 ガス導入管
23 ガス排出管
24 溶融ガラス表面
25 仕切り板
A ヘリウム含有ガス
B ガラス原料
C COガス
G 溶融ガラス
L 低天井領域
R 耐火物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融槽において、ヘリウム含有ガスを溶融ガラスの上部雰囲気に供給する工程を含むガラス溶融方法であって、溶融ガラス液面から上部雰囲気の天井部までの高さが0.3m以下である低天井領域を溶融槽の出口側に設けるとともに、低天井領域の天井部よりも高い天井部を有する高天井領域を溶融槽のガラス原料投入口側に設け、かつヘリウム含有ガスを当該低天井領域に供給することを特徴とするガラス溶融方法。
【請求項2】
天井部を、略水平に設置された仕切り板により形成することを特徴とする請求項1に記載のガラス溶融方法。
【請求項3】
溶融ガラス液面に対する面積比率で、上部雰囲気の20%以上が低天井領域であることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス溶融方法。
【請求項4】
ヘリウム含有ガスにおけるヘリウム含有量が10体積%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラス溶融方法。
【請求項5】
溶融槽において、ヘリウム含有ガスを溶融ガラスの上部雰囲気に供給するためのヘリウム含有ガス供給手段を具備してなるガラス溶融装置であって、上部雰囲気に溶融ガラス液面から天井部までの高さが0.3m以下である低天井領域を溶融槽の出口側に有するとともに、低天井領域の天井部よりも高い天井部を有する高天井領域を溶融槽のガラス原料投入口側に有し、かつヘリウム含有ガス供給手段が当該低天井領域に設置されていることを特徴とするガラス溶融装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−75823(P2013−75823A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−277646(P2012−277646)
【出願日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【分割の表示】特願2008−217809(P2008−217809)の分割
【原出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)