説明

ガラス溶解装置

【課題】エネルギ効率が良く、所望通りの良好なガラス溶解物を短時間で生成させることができ、しかも小型の、言い替えれば設置スペースの少ないガラス溶解炉を用いることができるガラス溶解装置を提供する。
【解決手段】溶解ゾーン12と清澄ゾーン13とを備えるガラス溶解炉11を用い、ガラス原料及び副原料からガラス溶解物を生成させるガラス溶解装置において、ガラス溶解炉11の溶解ゾーン12の天井壁に酸素バーナ21を下向きで取付け、該酸素バーナ21には酸素濃度90容量%以上の支燃ガスが供給され、またガラス原料及び副原料を混合した粉体状のガラス混合原料が気体搬送により供給されるようにし、該ガラス溶解炉11の清澄ゾーン13の天井壁又は側壁上部に排気口31を開設して、酸素バーナ21を下向きで燃焼させると共にガラス混合原料をその火炎中に下向きで供給して溶解し、この際に炉内に発生する排ガスを排気口31から排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス溶解装置に関し、更に詳しくは加熱源としてバーナを取付けたガラス溶解炉を用いてガラス原料や副原料からガラス溶解物を生成させる装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス溶解炉を用いてガラス原料や副原料からガラス溶解物を生成させるガラス溶解装置として、ガラス溶解炉の最上流部から炉内に投入したガラス原料や副原料を、該ガラス溶解炉の側壁に取付けたバーナで溶解するようにしたものが知られている(例えば特許文献1〜3参照)。しかし、これら従来のガラス溶解装置には、ガラス溶解炉の炉内に投入したガラス原料や副原料をバーナの燃焼による炉内輻射を利用して溶解するようになっているため、1)バーナとして酸素バーナを燃焼させる場合であっても、エネルギ効率が悪い、2)炉内に投入するガラス原料や副原料には融点の異なる様々なものが含まれており、これらのなかで融点の低いものは溶解が早いが、融点の高いものは溶解が遅いので、全体としての均質溶解が難しく、均質溶解にかかる時間が長い、3)ガラス溶解炉の炉内に生成するガラス溶解物の上部に未溶解のガラス原料等の低温物が存在するため、ガラス溶解物中に発生するガスが抜け難く、ガス抜きにかかる時間が長い、という問題がある。従来のガラス溶解装置には、エネルギ効率が悪く、所望通りの良好なガラス溶解物を生成させるのに長い時間がかかり、結果として大型のガラス溶解炉が必要になるという問題があるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−11953号公報
【特許文献2】特開平11−11954号公報
【特許文献3】特開2005−15299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、エネルギ効率が良く、所望通りの良好なガラス溶解物を短時間で生成させることができ、しかも小型の、言い替えれば設置スペースの少ないガラス溶解炉を用いることができるガラス溶解装置を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決する本発明は、溶解ゾーンと清澄ゾーンとを備えるガラス溶解炉を用い、ガラス原料及び副原料からガラス溶解物を生成させるガラス溶解装置において、ガラス溶解炉の溶解ゾーンの天井壁に酸素バーナが下向きで取付けられており、該酸素バーナには酸素濃度90容量%以上の支燃ガスが供給され、またガラス原料及び副原料を混合した粉体状のガラス混合原料が気体搬送により供給されるようになっていて、該ガラス溶解炉の清澄ゾーンの天井壁又は側壁上部に排気口が開設され、酸素バーナを下向きで燃焼させると共にガラス混合原料をその火炎中に下向きで供給して溶解し、この際に炉内に発生する排ガスを排気口から排出するようにして成り、更に該ガラス溶解炉の溶解ゾーン及び/又は清澄ゾーンの天井壁に補助酸素バーナが下向きで取付けられており、該補助酸素バーナをこれにガラス混合原料を供給することなく下向きで燃焼させるようにして成ることを特徴とするガラス溶解装置に係る。
【0006】
本発明に係るガラス溶解装置も、ガラス溶解炉を用い、ガラス原料及び副原料からガラス溶解物を生成させるようになっている。かかるガラス溶解炉は、炉内上流側に溶解ゾーンを備え、また炉内下流側に清澄ゾーンを備えており、また必要に応じて双方のゾーンの間にスロートを備え、さらに炉内最下流側に作業ゾーンを備えている。
【0007】
本発明に係るガラス溶解装置に用いるガラス溶解炉は、その溶解ゾーンの天井壁に酸素バーナが下向きに取付けられている。この酸素バーナには酸素濃度90容量%以上の支燃ガスが供給されるようになっており、またガラス原料及び副原料を混合した粉体状のガラス混合原料が気体搬送により供給されるようになっていて、この酸素バーナを下向きで燃焼させるときにガラス混合原料をその火炎中に下向きで供給して溶解するようになっている。かかる酸素バーナそれ自体としては、公知のものを転用でき、例えば特開平8−312938号公報、特開2000−55340号公報及び特開2000−103656号公報等に記載されているような酸素バーナを転用できる。これらの酸素バーナは、先端部におけるノズル構造が、中心部から外周部に向かい、例えば燃料供給ノズル、一次支燃ガス供給ノズル、被処理物(ガラス混合原料)供給ノズル及び二次支燃ガス供給ノズルのように、複数の供給ノズルが同心円状に配列されたものからなっている。
【0008】
前記のような酸素バーナをガラス溶解炉の溶解ゾーンの天井壁に下向きで取付け、これに酸素濃度90容量%以上の支燃ガスを供給して下向きで燃焼させると、火炎それ自体の温度が高くなるだけでなく、その火炎は炉内に生成するガラス溶解物の湯面をも加熱し、しかも発生する排ガス量は少なく、該排ガス中における所謂NOx濃度も低い。かかる火炎中に粉体状のガラス混合原料を下向きで供給すると、該ガラス混合原料は極めて短時間で溶解する。しかもこのとき、下向きで燃焼する高温の火炎中に下向きで供給したガラス混合原料の水分は一気に蒸発し、炭酸化合物の形態をとる原料は分解してガスを放出するので、炉内のガラス溶解物中におけるガス発生量は著しく低くなる。ガラス混合原料の溶解及び生成したガラス溶解物の清澄を短時間で行なうことができるのであり、結果として、エネルギ効率が良く、所望通りの良好なガラス溶解物を短時間で生成させることができ、しかも炉長の短い、言い替えれば設置スペースの少ないガラス溶解炉を用いることができるのである。
【0009】
また本発明に係るガラス溶解装置に用いるガラス溶解炉は、その清澄ゾーンの天井壁又は側壁上部に排気口が開放されている。前記のように酸素バーナの下向きで燃焼する高温火炎中に粉体状のガラス混合原料を下向きで供給して溶解すると、相応に高温の排ガスが発生するが、かかる排ガスを炉内溶解ゾーンを経由して炉内清澄ゾーンの排気口から、好ましくは炉内清澄ゾーン下流部の排気口から排出し、その保有熱を炉や炉内に生成するガラス溶解物の湯面の加熱乃至保温に利用して、これによってもガラス溶解物の清澄をより効率良く行なうことができるようにするのである。
【0010】
更に本発明に係るガラス溶解装置に用いるガラス溶解炉は、その溶解ゾーン及び/又は清澄ゾーンの天井壁に補助酸素バーナが下向きで取付けられ、該補助酸素バーナをこれにガラス混合原料を供給することなく下向きで燃焼させるように成っている。何らかの原因で、前記した酸素バーナへのガラス混合原料の供給量が少なくなると、これに合わせて該酸素バーナの燃焼量を絞ることになるが、その結果、炉内のガラス溶解物に対する加熱が不足することとなるときは、補助酸素バーナを下向きで燃焼させて不足分を補うことができるようにするのである。
【0011】
前記した酸素バーナ及び/又は補助酸素バーナには昇降手段を設け、該昇降手段の作動によりそれらの先端部と炉内のガラス溶解物の湯面との間の距離を可変となるようにするのが好ましい。酸素バーナや補助酸素バーナの燃焼量を調節するだけでなく、これらのバーナの先端部と炉内のガラス溶解物の湯面との間の距離をも変えることによって、炉内のガラス溶解物、なかでもその湯面の加熱をより自在に制御できるようにするのである。酸素バーナや補助酸素バーナの燃焼量を調節すると、それらの火炎長さが変わり、火炎の先端部と湯面との距離が変わることが多いが、この距離が適正でない場合は、かかる距離を前記の昇降手段により適正に制御できる。
【0012】
また本発明に係るガラス溶解装置では、ガラス溶解炉の炉床壁内及び/又は側壁内に排ガス通路を形成し、前記の排気口から排出した排ガスの全部又は一部を該排ガス通路を介して排出するようにするのが好ましい。排気口に接続された排気系に前記の排ガス通路を分岐して接続し、該排気口から排出した排ガスの全部又は一部を該排ガス通路を介して該排気系へと戻すことにより、ガラス溶解炉からの放熱量を低減するのである。
【0013】
更に本発明に係るガラス溶解装置では、ガラス溶解炉の炉床壁内にヒータを設け、該ヒータへ通電することにより炉床壁部を加熱するようにするのが好ましい。かかるヒータへ通電することにより炉床壁部を加熱して、炉内の溶解ガラス、なかでも炉床部の溶解ガラスを加熱し、これによってかかる溶解ガラスからのガス抜きをより短時間で行なうことができるようにするのである。
【0014】
更にまた本発明に係るガラス溶解装置では、前記したようにガラス原料及び副原料を混合した粉体状のガラス混合原料を気体搬送により酸素バーナへ供給する。ガラス混合原料としては、予め別の装置で混合しておいたものを用いることができるが、それぞれ別々のものを混合しながら用いることもできる。この場合、各原料の粉体を貯留しておくための二つ以上の粉体貯留用ホッパ、各粉体貯留用ホッパに接続した定量切出装置、これらの定量切出装置に接続した混合機及びこの混合機に接続した定量供給装置を備えるガラス混合原料供給系を酸素バーナへのガラス混合原料の気体搬送系に接続し、かかるガラス混合原料供給系から気体搬送系に粉体状のガラス混合原料を定量供給しつつ、更に酸素バーナへと供給するようにするのが好ましい。
【0015】
更にまた本発明に係るガラス溶解装置では、ガラス溶解炉の排気口に接続した排気系に熱交換器を接続し、該熱交換器で排ガスの保有熱と熱交換することにより、気体搬送中の粉体状のガラス混合原料及び/又は酸素バーナの支燃ガスの全部又は一部を加熱するようにするのが好ましい。またガラス溶解炉の排気口に接続した排気系にボイラを接続し、該ボイラに発電機を接続して、排気口から排出した排ガスの保有熱によりボイラで水蒸気を発生させ、該水蒸気で発電機のタービンを動かして発電し、発電した電気を前記した酸素バーナに供給する支燃ガスの発生装置の運転及び/又は炉床壁内の前記したヒータへの通電に用いるようにするのが好ましい。共に、ガラス溶解炉の排気口から排出した排ガス、更には前記したような排ガス通路を介して排出した排ガスの保有熱を有効活用するのである。
【0016】
そして本発明に係るガラス溶解装置では、ガラス溶解炉の排気口に接続した排気系に、好ましくは前記した熱交換器又はボイラの下流側にて集塵装置を接続し、該集塵装置の下流側に石灰充填塔を接続して、該集塵装置で集塵処理した排ガスの全部又は一部を該石灰充填塔に通し、ガラス混合原料の一部となる炭酸カルシウムを生成させるようにするのが好ましい。これにより地球温暖化ガスであるCO放出量の低減及び資源の有効活用を図るのである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るガラス溶解装置によると、ガラス原料や副原料からガラス溶解物を生成させるに際してエネルギ効率が良く、所望通りの良好なガラス溶解物を短時間で生成させることができ、しかも小型の、言い替えれば設置スペースの少ないガラス溶解炉を用いることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るガラス溶解装置を一部縦断面で略示する全体図。
【図2】本発明に係る他のガラス溶解装置を一部縦断面で略示する全体図。
【図3】本発明に係る更に他のガラス溶解装置を一部縦断面で略示する全体図。
【実施例】
【0019】
図1は本発明に係るガラス溶解装置を一部縦断面で略示する全体図である。図示したガラス溶解装置で用いているガラス溶解炉11は炉内上流側に溶解ゾーン12を備えており、また炉内下流側に清澄ゾーン13を備えていて、更に炉内最下流側に作業ゾーン14を備えている。但しここでは、溶解ゾーン12と清澄ゾーン13との境界は、原料組成、粒度、運転条件等により変わるため、図示していない。溶解ゾーン12の上流側の天井壁に酸素バーナ21が下向きで取付けられており、また溶解ゾーン12の下流側の天井壁に補助酸素バーナ22が下向きに取付けられていて、清澄ゾーン13の下流側の天井壁に排気口31が設けられている。酸素バーナ21及び補助酸素バーナ22はシリンダ機構23,24を介して天井壁に取付けられており、昇降可能となっていて、それらの先端部と炉内のガラス溶解物Aの湯面との間の距離が可変となっている。
【0020】
酸素バーナ21は前記したような複数の供給ノズルが同心円状に配列されたものからなっている。かかる酸素バーナ21には吸着式酸素発生装置41から燃焼制御ユニット42を介し酸素濃度90容量%以上の支燃ガスが供給されるようになっており、また燃料タンク43から燃焼制御ユニット42を介し燃料ガスが供給されるようになっている。更に酸素バーナ21にはガラス原料及び副原料を混合した粉体状のガラス混合原料が気体搬送で供給されるように気体搬送系51が接続されている。気体搬送系51の上流側にはドライヤ付きコンプレッサ52が接続されており、その途中にガラス混合原料供給系61が接続されている。ガラス混合原料供給系61は、ガラス混合原料貯留用のホッパ62、ホッパ62に接続された振動篩63、振動篩63に接続された定量供給装置64を備え、また振動篩63で篩分けられた粗大物を破砕して振動篩63の上流側に戻す破砕機65を備えている。ホッパ62、振動篩63及び定量供給装置64を経由し、また必要に応じ破砕機65をも経由してガラス混合原料供給系61から気体搬送系51へ粉体状のガラス混合原料を定量供給しつつ、更に酸素バーナ21へと供給するようになっている。図1に例示したガラス溶解装置では、ガラス溶解炉11における溶解ゾーン12の上流部の天井壁に下向きで取付けた酸素バーナ21へ燃料ガス及び酸素濃度90容量%以上の支燃ガスを供給して下向きで燃焼させ、その火炎中に粉体状のガラス混合原料を下向きで供給して溶解し、この際に発生する排ガスを排気口31から排出するようになっている。
【0021】
排気口31には排気系32が接続されている。ガラス溶解炉11の炉床壁には排ガス通路34が形成されており、排ガス通路34は排気系32から分岐された分岐排気系33に接続されていて、その下流側は吸引ファン35を介し再び排気系32に合流されている。図1に例示したガラス溶解装置では、排ガス通路34は炉床壁内に形成されているが、同様の排ガス通路は側壁内にも形成することができる。排気口31から排出される高温の排ガスの全部又は一部をかかる排ガス通路へ流すことにより、ガラス溶解炉11からの放熱量を低減するようになっている。またガラス溶解炉11の炉床壁にはヒータ36が埋設されており、ヒータ36は図示しない電源設備へと接続されている。ヒータ36へ通電することにより、炉内の溶解ガラスAを底面から加熱するようになっている。
【0022】
排気系32の下流側には冷却塔71、集塵装置72、吸引ファン74及び煙突75がこの順で接続されており、排気口31から排出された高温の排ガスを冷却塔71で冷却し、更に集塵装置72で集塵処理して、これらで捕捉されたダスト類を受器73に回収する一方、集塵処理した排ガスを吸引ファン74を介して煙突75から大気中へ放出するようになっている。
【0023】
図2は本発明に係る他のガラス溶解装置を一部縦断面で略示する全体図である。図2に例示したガラス溶解装置において、ガラス溶解炉11a、溶解ゾーン12a、清澄ゾーン13a、作業ゾーン14a、酸素バーナ21a、補助酸素バーナ22a、シリンダ機構23a,24a、排気口31a及びガラス溶解物Bについての構成は図1のガラス溶解装置と同様になっているので、ここではそれらの説明を省略する。
【0024】
酸素バーナ21aは前記したような複数の供給ノズルが同心円状に配列されたものからなっている。かかる酸素バーナ21aには吸着式酸素発生装置41aから燃焼制御ユニット42aを介し酸素濃度90容量%以上の支燃ガスが供給されるようになっており、また燃料タンク43aから燃焼制御ユニット42aを介し燃料ガスが供給されるようになっている。更に酸素バーナ21aにはガラス原料及び副原料を混合した粉体状のガラス混合原料が気体搬送で供給されるように気体搬送系51aが接続されている。気体搬送系51aの上流側にはドライヤ付きコンプレッサ52aが接続されており、その途中にガラス混合原料供給系61aが接続されている。ガラス混合原料供給系61aは、粉体状のガラス原料貯留用のホッパ62a、粉体状の副原料貯留用のホッパ62b、これらのホッパ62a,62bに接続された定量切出装置65a,65b、これらの定量切出装置65a,65bに接続された混合機63a、混合機63aに接続された定量供給装置64aを備えている。ホッパ62a,62b、定量切出装置65a,65b、混合機63a及び定量供給装置64aを経由してガラス混合原料供給系61aから気体搬送系51aへ粉体状のガラス混合原料を定量供給しつつ、詳しくは後述するように更に熱交換器71aを経由してから酸素バーナ21aへと供給するようになっている。図2に例示したガラス溶解装置では、ガラス溶解炉11aにおける溶解ゾーン12aの上流部の天井壁に下向きで取付けた酸素バーナ21aへ燃料ガス及び酸素濃度90容量%以上の支燃ガスを供給して下向きで燃焼させ、その火炎中に粉体状のガラス混合原料を下向きで供給して溶解し、この際に発生する排ガスを排気口31aから排出するようになっている。またガラス溶解炉11aの炉床壁にはヒータ36aが埋設されており、ヒータ36aは図示しない電源設備へと接続されていて、ヒータ36aへ通電することにより、炉内の溶解ガラスBを底面から加熱するようになっている。
【0025】
排気口31aには排気系32aが接続されており、排気系32aには熱交換器71a、集塵装置72a、石灰充填塔76a、吸引ファン74a及び煙突75aがこの順で接続されている。排気口31aから排出された高温の排ガスの保有熱を気体搬送中の粉体状のガラス混合原料と熱交換して気体搬送中の粉体状のガラス混合原料を加熱し(図2中のX→Y)、更に集塵装置72aで集塵処理して、これらで捕捉されたダスト類を受器73aに回収する一方、集塵処理した排ガスの一部を石灰充填塔76aへと通し、残部を吸引ファン77aを介して熱交換器71aの上流側における排気系32aに戻して、この石灰充填塔76aでガラス混合原料の一部となる炭酸カルシウムを生成させた後、吸引ファン74aを介して煙突75aから大気中へ放出するようになっている。石灰充填塔76aには、集塵処理前にどのような処理をしたかにかかわらず、集塵処理後の排ガスを通す。集塵処理後の排ガスを吸引ファン77aを介して循環するのは、排ガス中のCO濃度を高めて、石灰充填塔76aにおける反応効率を上げるためである。
【0026】
図3は本発明に係る更に他のガラス溶解装置を一部縦断面で略示する全体図である。図3に例示したガラス溶解装置において、ガラス溶解炉11b、溶解ゾーン12b、清澄ゾーン13b、作業ゾーン14b、酸素バーナ21b、補助酸素バーナ22b、シリンダ機構23b,24b、排気口31b及びガラス溶解物Cについての構成は図1のガラス溶解装置と同様になっているので、ここではそれらの説明を省略する。
【0027】
酸素バーナ21bは前記したような複数の供給ノズルが同心円状に配列されたものからなっている。かかる酸素バーナ21bには吸着式酸素発生装置41bから燃焼制御ユニット42bを介し酸素濃度90容量%以上の支燃ガスが供給されるようになっており、また燃料タンク43bから燃焼制御ユニット42bを介し燃料ガスが供給されるようになっている。更に酸素バーナ21bにはガラス原料及び副原料を混合した粉体状のガラス混合原料が気体搬送で供給されるように気体搬送系51bが接続されている。気体搬送系51bの上流側にはドライヤ付きコンプレッサ52bが接続されており、その途中にガラス混合原料供給系61bが接続されている。ガラス混合原料供給系61bは、粉体状のガラス原料貯留用のホッパ62c、粉体状の副原料貯留用のホッパ62d、これらのホッパ62c,62dに接続された定量切出装置65c,65d、これらの定量切出装置65c,65dに接続された混合機63b、混合機63bに接続された定量供給装置64bを備えている。ホッパ62c,62d、定量切出装置65c,65d、混合機63b及び定量供給装置64bを経由してガラス混合原料供給系61bから気体搬送系51bへ粉体状のガラス混合原料を定量供給しつつ、更に酸素バーナ21bへと供給するようになっている。図3に例示したガラス溶解装置では、ガラス溶解炉11bにおける溶解ゾーン12bの上流部の天井壁に下向きで取付けた酸素バーナ21bへ燃料ガス及び酸素濃度90容量%以上の支燃ガスを供給して下向きで燃焼させ、その火炎中に粉体状のガラス混合原料を下向きで供給して溶解し、この際に発生する排ガスを排気口31bから排出するようになっている。またガラス溶解炉11bの炉床壁にはヒータ36bが埋設されており、ヒータ36bは図示しない電源設備へと接続されていて、ヒータ36bへ通電することにより、炉内の溶解ガラスCを底面から加熱するようになっている。
【0028】
排気系32bにはボイラ71b、集塵装置72b、石灰充填塔76b、吸引ファン74b及び煙突75bがこの順で接続されており、ボイラ71bには発電機77bのタービン77c及び復水器77dが接続されている。排気口31bから排出された高温の排ガスの保有熱によりボイラ71bで水蒸気を発生させ、この水蒸気で発電機77bのタービン77cを動かして発電した電気を吸着式酸素発生装置41bやヒータ36bの電源として利用し、更に集塵装置72bで集塵処理して、これらで捕捉されたダスト類を受器73bに回収する一方、集塵処理した排ガスを石灰充填塔76bへ通し、この石灰充填塔76bでガラス混合原料の一部となる炭酸カルシウムを生成させた後、吸引ファン74bを介して煙突75bから大気中へ放出するようになっている。
【符号の説明】
【0029】
11,11a,11b ガラス溶解炉
12,12a,12b 溶解ゾーン
13,13a,13b 清澄ゾーン
14,14a,14b 作業ゾーン
21,21a,21b 酸素バーナ
22,22a,22b 補助酸素バーナ
31,31a,31b 排気口
41,41a,41b 吸着式酸素発生装置
51,51a,51b 気体搬送系
62,62a〜62d ホッパ
64,64a,64b 定量供給装置
65a〜65d 定量切出装置
71 冷却塔
71a 熱交換器
71b ボイラ
72,72a,72b 集塵装置
76a,76b 石灰充填塔
77b 発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解ゾーンと清澄ゾーンとを備えるガラス溶解炉を用い、ガラス原料及び副原料からガラス溶解物を生成させるガラス溶解装置において、ガラス溶解炉の溶解ゾーンの天井壁に酸素バーナが下向きで取付けられており、該酸素バーナには酸素濃度90容量%以上の支燃ガスが供給され、またガラス原料及び副原料を混合した粉体状のガラス混合原料が気体搬送により供給されるようになっていて、該ガラス溶解炉の清澄ゾーンの天井壁又は側壁上部に排気口が開設され、酸素バーナを下向きで燃焼させると共にガラス混合原料をその火炎中に下向きで供給して溶解し、この際に炉内に発生する排ガスを排気口から排出するようにして成り、更に該ガラス溶解炉の溶解ゾーン及び/又は清澄ゾーンの天井壁に補助酸素バーナが下向きで取付けられており、該補助酸素バーナをこれにガラス混合原料を供給することなく下向きで燃焼させるようにして成ることを特徴とするガラス溶解装置。
【請求項2】
酸素バーナ及び/又は補助酸素バーナに昇降手段が設けられており、該昇降手段の作動により該酸素バーナ及び/又は該補助酸素バーナの先端部と炉内のガラス溶解物の湯面との間の距離が可変となるようにした請求項1記載のガラス溶解装置。
【請求項3】
ガラス溶解炉の炉床壁内にヒータが設けられており、該ヒータへ通電することにより炉床壁部を加熱するようにした請求項1又は2記載のガラス溶解装置。
【請求項4】
二つ以上の粉体貯留用ホッパ、各粉体貯留用ホッパに接続された定量切出装置、これらの定量切出装置に接続された混合機及び該混合機に接続された定量供給装置を備えるガラス混合原料供給系が酸素バーナへのガラス混合原料の気体搬送系に接続されており、該ガラス混合原料供給系から該気体搬送系に粉体状のガラス混合原料を定量供給しつつ、更に酸素バーナへと供給するようにした請求項1〜3のいずれか一つの項記載のガラス溶解装置。
【請求項5】
ガラス溶解炉の排気系に熱交換器が接続されており、該熱交換器で排ガスの保有熱と熱交換することにより、気体搬送中の粉体状のガラス混合原料及び/又は酸素バーナの支燃ガスの全部又は一部を加熱するようにした請求項1〜4のいずれか一つの項記載のガラス溶解装置。
【請求項6】
ガラス溶解炉の排気系にボイラが接続されており、該ボイラに発電機が接続されていて、排気口から排出した排ガスの保有熱によりボイラで水蒸気を発生させ、該水蒸気で発電機のタービンを動かして発電し、発電した電気を酸素バーナに供給する支燃ガスの発生装置の運転及び/又は炉床壁内のヒータへの通電に用いるようにした請求項1〜4のいずれか一つの項記載のガラス溶解装置。
【請求項7】
ガラス溶解炉の排気系に集塵装置が接続されており、該集塵装置に石灰充填塔が接続されていて、該集塵装置で集塵処理した排ガスの全部又は一部を該石灰充填塔に通し、ガラス混合原料の一部となる炭酸カルシウムを回収するようにした請求項1〜6のいずれか一つの項記載のガラス溶解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−37706(P2011−37706A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208788(P2010−208788)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【分割の表示】特願2006−283586(P2006−283586)の分割
【原出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【出願人】(000222222)東洋ガラス株式会社 (102)
【Fターム(参考)】