説明

ガラス用グリーンシート及びこのガラス用グリーンシートを焼成してなるガラス

【課題】紫外域から真空紫外域における透過率の優れた薄いガラスを提供可能とする。
【解決手段】ガラス用グリーンシートを、粒径0.1〜10μmとしたシリカガラス粉末50〜80重量%を、水とメチルセルロースを主成分とするバインダ20〜50重量%と混合し、粘度を500〜1000mPa・sとしたスラリーを、厚み2mm以下の薄膜状として乾燥させて形成する。このガラス用グリーンシートを、1200〜1300℃の温度で3〜24時間焼結した後、10-1Pa以下の雰囲気圧力で1400℃以上に加熱して透明化してガラスとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜状のガラスを形成可能としたガラス用グリーンシート及びこのガラス用グリーンシートを焼成してなるガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板ガラスなどの透明なガラスは、一般的には、最初に珪砂やソーダ灰などのガラス原料を溶解窯に投入して液体状のガラス素地を形成し、次いで、このガラス素地を液体金属の上面に浮かべながら成型するフロート法によって形成されることが多い。このように液体状のガラス素地を用いることにより、厚み寸法及び幅寸法などを均一としたガラスを製造することができる。
【0003】
一方、光学的に利用される特殊なレンズや透光体は、板ガラスなどのように大量生産の必要性がなく、少量多品種的な生産形態となることが多いため、フロート法などの溶融法ではなく、気相法などを利用した焼結法で製造することが多く、所望の光学的特性を有するように組成を調整するとともに、所定形状とした成形体を焼成し、焼成時に透明化しない場合には透明化処理を行って製造している。
【0004】
特に、本発明者は、先に、F2エキシマレーザのレーザ光(波長:157nm)の透過率の優れたガラスを製造すべく研究開発を行って、紫外域から真空紫外域における透過率の優れたガラスを開発した(たとえば、特許文献1参照。)。
【0005】
このガラスは、1370〜1570Kの温度で、3〜24時間加熱して焼結させた後、10-1Pa以下の雰囲気下で1700K以上に加熱して緻密化処理することにより透明化しているものであった。
【特許文献1】特開2004−018317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、紫外域から真空紫外域における透過率の優れたガラスを薄く形成することが極めて困難であった。
【0007】
本発明者は、紫外域から真空紫外域における透過率の優れたガラスの薄型化すべく研究開発を行う中で、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のガラス用グリーンシートは、粒径0.1〜10μmとしたシリカガラス粉末50〜80重量%を、水とメチルセルロースを主成分とするバインダ20〜50重量%と混合し、粘度を500〜1000mPa・sとしたスラリーを、厚み2mm以下の薄膜状として乾燥させて形成した。さらに、バインダには、可塑剤、分散剤、消泡剤の少なくとも一種を添加していることにも特徴を有するものである。
【0009】
また、本発明のガラスは、上記のガラス用グリーンシートを、1200〜1300℃の温度で3〜24時間焼結した後、10-1Pa以下の雰囲気圧力で1400℃以上に加熱して透明化しているものである。
【0010】
さらに、本発明のガラスは、以下の点にも特徴を有するものである。すなわち、
(1)ガラス用グリーンシートの焼成前に、表面に所定の凹凸形状を形成した版をガラス用グリーンシートの所定位置に押圧したことにより、凹凸形状が転写されていること。
(2)ガラス用グリーンシートの焼成前に、ガラス用グリーンシートを裁断または型抜きして所定形状としたこと。
(3)ガラス用グリーンシートの焼成前に、ガラス用グリーンシートを撓ませてから焼成することにより、湾曲面または屈曲面を備えていること。
(4)ガラス用グリーンシートの焼成前に、ガラス用グリーンシートにクエン酸溶液を含浸させた含浸領域を形成し、焼結によって含浸領域以外を透明化する一方で、含浸領域を黒色化させたこと。
【発明の効果】
【0011】
本発明のガラス用グリーンシートは、粒径0.1〜10μmとしたシリカガラス粉末50〜80重量%を、水とメチルセルロースを主成分とするバインダ20〜50重量%と混合し、粘度を500〜1000mPa・sとしたスラリーを、厚み2mm以下の薄膜状として乾燥させて形成したことによって、紫外域から真空紫外域における透過率の優れたガラスであって、かつ極めて薄型としたガラスを提供可能とすることができる。
【0012】
また、本発明のガラスは、上記のガラス用グリーンシートを、1200〜1300℃の温度で3〜24時間焼結した後、10-1Pa以下の雰囲気圧力で1400℃以上に加熱して透明化していることにより、紫外域から真空紫外域における透過率の優れたガラスとすることができる。
【0013】
特に、ガラス用グリーンシートの焼成前に、表面に所定の凹凸形状を形成した版をガラス用グリーンシートの所定位置に押圧したことにより凹凸形状を転写した場合には、凹凸形状によって形成したパターンによってデザイン性を有するガラスとすることができる。
【0014】
また、ガラス用グリーンシートの焼成前に、ガラス用グリーンシートを裁断または型抜きして所定形状としたことによって、任意の形状のガラスを極めて容易に形成でき、デザイン性を有するガラスとすることができる。
【0015】
また、ガラス用グリーンシートの焼成前に、ガラス用グリーンシートを撓ませてから焼成することにより、湾曲面または屈曲面を形成した場合には、通常のガラス製品では形成できない複雑に湾曲または屈曲した湾曲面または屈曲面を備えたガラスを製造することができ、デザイン性を有するガラスとすることができる。
【0016】
また、ガラス用グリーンシートの焼成前に、ガラス用グリーンシートにクエン酸溶液を含浸させた含浸領域を形成し、焼結によって含浸領域以外を透明化する一方で、含浸領域を黒色化させた場合には、黒色化された領域を遮光領域とすることができ、遮光手段を備えたガラスを提供できる。あるいは、透明領域と黒色領域とを所定位置に配置してデザイン性を有するガラスとすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のガラス用グリーンシート及びこのガラス用グリーンシートを焼成してなるガラスは、ガラス用グリーンシートを、粒径0.1〜10μmとしたシリカガラス粉末50〜80重量%を、水とメチルセルロースを主成分とするバインダ20〜50重量%と混合し、粘度を500〜1000mPa・sとしたスラリーを、厚み2mm以下の薄膜状として乾燥させて形成しているものである。
【0018】
特に、この製造条件によってガラス用グリーンシートを形成することにより、膜厚を均一としながら薄膜状のガラス用グリーンシートを極めて容易に形成することができる。ガラス用グリーンシートの厚みは、0.1mm以下にまで薄くすることができるが、0.1mmよりも薄くすると、ガラス用グリーンシートの自重などにより破れが生じやすくなるため、この点を考慮した厚みとすることが望ましい。
【0019】
バインダには、可塑剤、分散剤、消泡剤の少なくとも一種を適宜添加し、粘度の調整を行いやすくするとともに、空気の噛み込みを防止してガラスとなった際にいわゆる「巣(鬆)」が発生することを防止している。
【0020】
シリカガラス粉末の配合量は50重量%より少なくなると、焼成時の収縮が大きく、想定外の変形を生じやすいため、50重量%以上であることが望ましい。一方、80重量%よりも多くなると、スラリーの粘度調整が困難となるために、80重量%以下であることが望ましい。
【0021】
本発明では、薄膜状のガラスを形成するために、薄膜状のガラス用グリーンシートを形成しているが、2mmよりも厚い厚膜状のガラスを生成する場合には、シリカガラス粉末の配合量を80重量%前後として、ガラス用グリーンシートを厚膜状に形成することにより、容易に形成できる。
【0022】
ガラス用グリーンシートは、1200〜1300℃の温度で3〜24時間焼結した後、10-1Pa以下の雰囲気圧力で1400℃以上に加熱することにより透明化でき、紫外域から真空紫外域における透過率の優れたガラスとすることができる。
【0023】
このように透明化の処理が施されることにより透明なガラスとすることができ、紫外域から真空紫外域において高い透過率が必要なF2エキシマレーザのレーザ光源の光学部品材料として用いることができ、光学部品の薄型化が可能となることによりレーザ光源の軽量化を図ることもできる。
【実施例1】
【0024】
実施例1として、シリカガラス粉末78重量%と、バインダ22重量%を混合して生成したスラリーを用いてガラス用グリーンシートを形成した場合について説明する。
【0025】
ここで、シリカガラス粉末としては、粒径0.1〜10μmの市販のシリカガラス粉末を用いた。
【0026】
また、バインダは、22重量%中、水12重量%と、メチルセルロース6重量%と、可塑剤としてのグリセリン3重量%と、分散材としてのポリアクリル酸を1重量%とを混合して形成した。なお、バインダには、必要に応じて適宜の添加物を加えてもよい。
【0027】
シリカガラス粉末と、バインダを攪拌混合機に投入して、60℃以下に冷却しながら約20分間撹拌してスラリーを生成し、このスラリーを真空万能混合機に投入して約5分間撹拌した後、3本ロールミルによって十分に混練することにより粘度を500〜1000mPa・sとした。
【0028】
混練後、スラリーを押出成形機に送給し、この押出成形機を用いてシート成形体を作製した。ここで、シート成形体は幅50mmで、厚み0.1mmの膜状とした。その後、シート成形体をヒータで100℃に加温しながら乾燥させて水分を除去することにより、薄膜状のガラス用グリーンシートを形成した。
【0029】
乾燥されたガラス用グリーンシートは、紙のような状態となっており、手で比較的乱暴に扱っても破れが生じることはなかった。本実施例では、ガラス用グリーンシートは、長さ200mmごとに切断して短冊状とした。
【0030】
このガラス用グリーンシートをバッチ式の焼成炉内に収納し、焼成炉内を1200〜1300℃に加熱して、ガラス用グリーンシートを約18時間焼成した。この焼成は大気中で行った。焼成にともなって、ガラス用グリーンシートは白濁した薄板状のガラスとなった。この白濁は、クリストバライト結晶が析出したためである。
【0031】
その後、ガラスを減圧焼成炉内に収納し、焼成炉内を10-1Pa以下の雰囲気圧力とし、1400℃以上に加熱してさらに約3時間焼成することにより、クリストバライト結晶を消失させてガラスを透明化した。これにより、薄膜状の透明なガラス板を形成できた。
【実施例2】
【0032】
実施例2として、シリカガラス粉末71重量%と、バインダ29重量%を混合して生成したスラリーを用いてガラス用グリーンシートを形成した場合について説明する。
【0033】
ここで、シリカガラス粉末としては、粒径0.1〜10μmの市販のシリカガラス粉末を用いた。
【0034】
また、バインダは、29重量%中、水20.3重量%と、メチルセルロース6.7重量%と、分散剤としてのポリカルボン酸1.4重量%と、添加剤としてのポリエチレングリコール0.6重量%とを混合して形成した。なお、バインダには、必要に応じて適宜の添加物を加えてもよい。
【0035】
シリカガラス粉末と、バインダを攪拌混合機に投入して、60℃以下に冷却しながら約20分間撹拌してスラリーを生成し、このスラリーをボールミリング混練機に投入して約30分間撹拌した後、攪拌脱泡機にスラリーを投入するとともに消泡剤を添加して、攪拌脱泡を行った。攪拌脱泡後の粘度を約630mPa・sとした。
【0036】
このスラリーをドクターブレード装置に送給し、このドクターブレード装置を用いてシート成形体を作製した。ここで、シート成形体は幅50mmで、厚み0.05mmの膜状とした。その後、シート成形体をヒータで100℃に加温しながら乾燥させて水分を除去することにより、薄膜状のガラス用グリーンシートを形成した。
【0037】
乾燥されたガラス用グリーンシートは、本実施例でも紙のような状態となっており、手で比較的乱暴に扱っても破れが生じることはなかった。本実施例でも、ガラス用グリーンシートは、長さ200mmごとに切断して短冊状とした。
【0038】
このガラス用グリーンシートを、実施例1と同じ焼成条件で焼成し、かつ10-1Pa以下の雰囲気圧力での焼成による透明化を行った。これにより、薄板状の透明のガラス板を形成できた。
【0039】
このように、本発明のガラス用グリーンシートを用いることにより、薄膜状のガラス板を形成できる。しかもガラス板は透明であって、紫外域から真空紫外域における透過率に優れており、紫外光の高透過率が要求される製品、たとえば、紫外域から真空紫外域用のレーザ装置の光学部品や、生物における紫外線照射実験用の実験器具などに好適に用いることができる。あるいは、これらの用途以外にも適宜用いることができる。
【0040】
また、本発明のガラス用グリーンシートは、シリカガラス粉末を用いて形成しているので、たとえば、図1に示すように、表面に所定の凹凸形状を形成した押圧体11を備えた版10をガラス用グリーンシートSの所定位置に押圧することにより、ガラス用グリーンシートSに凹凸形状を転写することができる。
【0041】
ここで、押圧体11は円柱体状としており、図2に示すように、先端に頂部を円形状の平板部12とした円錐状の突出部13を設けており、ガラス用グリーンシートSにすり鉢状の凹凸形状を形成している。ここでは、ガラス用グリーンシートSは、図1に示すように、基台20の水平状となった載置面21上に載置して、版10をガラス用グリーンシートSに1〜6MPa/cm2程度で押しつけている。
【0042】
押出成形機やドクターブレード装置によって形成されたシート成形体の乾燥体であるガラス用グリーンシートSは、単位体積当たりのシリカガラス粉末の密度がそれほど大きくはなく、版10による押圧によって変形しやすくなっている。したがって、ガラス用グリーンシートSでは、図2に示すように、押圧体11の突出部13で押圧された第1成形領域s1において、突出部13の周囲の基底面14で押圧された第2成形領域s2よりもシリカガラス粉末の高密度化を生じさせながら、比較的明瞭な凹凸形状が転写可能となっている。
【0043】
このように、凹凸形状が転写されたガラス用グリーンシートSは、焼成後にも凹凸形状を維持することが確認された。特に、図1に示すように押圧体11の平板部12で押圧された最薄肉部では、シリカガラス粉末の高密度化が生じているため、他の領域よりも焼成にともなう収縮及び変形が小さく、平坦性の高くすることができる。したがって、この最薄肉部をレーザ装置のレーザの光路上に位置させた場合には、ガラスによるレーザ光の散乱を生じにくくすることができる。
【0044】
なお、ガラス用グリーンシートSに形成する凹凸形状は、上記したような単純形状の凹凸だけでなく、より微細で複雑な形状、たとえばライン:スペース=50μm:100μmとしたパターンでも確実に形成できた。なお、ガラス用グリーンシートSに凹凸形状を形成する場合には、ガラス用グリーンシートSへの凹凸形状の転写性を向上させるためにガラス用グリーンシートSの厚みができるだけ厚い方が望ましい。
【0045】
ガラス用グリーンシートSは、外見的には紙のようになっており、紙と同様にハサミなどの裁断手段によって適宜の形状に容易に裁断することができる。あるいは裁断手段によってガラス用グリーンシートSを適宜の形状とするのではなく、パンチなどの穴あけ機で適宜の穴を形成でき、任意の外形形状のガラス部品を形成可能とすることができる。
【0046】
また、版10の押圧体11で押圧されて第1成形領域s1及び第2成形領域s2が形成されたガラス用グリーンシートSに対して、図3に示すように、抜き型30により第2成形領域s2を取り囲むように型抜きすることもできる。
【0047】
ここで、抜き型30は円筒形状とした複数の枠体31を備え、各枠体31で第2成形領域s2を取り囲みながら型抜きを行うようにしている。枠体31で型抜きされることにより円盤状となった円盤状グリーンシートS'は、焼成することによって円盤状ガラスとなる。
【0048】
図3中、s3は円盤状グリーンシートS'とガラス用グリーンシートSとを連結する連結片であって、この連結片s3で円盤状グリーンシートS'とガラス用グリーンシートSとを連結した状態として抜き型30で型抜きを行うことにより、抜き型30の各枠体31の内側に円盤状グリーンシートS'が嵌り込むことを防止している。
【0049】
連結片s3は、各枠体31の切断端縁の所定位置に切欠部32を設けておくことにより、容易に形成できる。連結片s3は別途の切断手段によって適宜切断することにより、円盤状グリーンシートS'をガラス用グリーンシートSから完全に切り離している。
【0050】
また、ガラス用グリーンシートSは、クエン酸溶液を含浸させることにより、焼成にともなう透明化の際に、黒色化させることができる。したがって、たとえば、クエン酸溶液を貯留した容器にガラス用グリーンシートSを浸漬させ、その後、乾燥させてから上記した焼成条件の焼成を行うことにより、黒色のガラスとすることができる。
【0051】
あるいは、図4に示すように、図1に示した版10で凹凸形状の第1成形領域s1と第2成形領域s2が形成されたガラス用グリーンシートSの第1成形領域s1におけるすり鉢状のテーパ面s4に、筆40や刷毛などでクエン酸溶液を塗布して含浸させて含浸領域を形成してもよい。含浸領域の形成後、図3に示すように抜き型30よる型抜きを行って円盤状グリーンシートS'を形成し、この円盤状グリーンシートS'を焼成することにより、含浸領域以外を透明化する一方で、含浸領域を黒色化させた円盤状ガラスを形成できる。
【0052】
この円盤状ガラスは、平坦性の高い最薄肉部は透明化されている一方で、テーパ面s4が黒色化されていることにより、最薄肉部をレーザ装置のレーザの光路上に位置させた場合に、テーパ面s4部分で遮光性が得られる。
【0053】
このように、本発明のガラス用グリーンシートSは、凹凸形状の転写や、裁断または型抜きができるだけでなく、紙のように容易に撓ませることができる。しかも、ガラス用グリーンシートSは、塑性変形性が高いために撓ませた状態を保持させることができる。
【0054】
したがって、たとえば、図5(a)に示すように、ガラス用グリーンシートSを扇状に切断して扇状ガラス用グリーンシートS"を形成し、図5(b)に示すように、この扇状ガラス用グリーンシートS"の両端を突合わせるように撓ませて円錐状に巻いた状態とし、この状態で焼成することにより、図5(c)に示す円錐状ガラスGを形成することができる。この円錐状ガラスGは、ランプシェードなどとして用いることができ、特に、クエン酸溶液を用いて部分的に黒色化することによって、デザイン性を向上させることができる。なお、扇状ガラス用グリーンシートS"は、焼成にともなって収縮しながら円錐状ガラスGとなっている。
【0055】
ここでは、湾曲させた扇状ガラス用グリーンシートS"に破れが生じないように比較的になだらかに湾曲させているが、ガラス用グリーンシートSを薄く形成することによって屈曲させることも可能であり、あるいは、積極的に破れを生じさせて、デザイン性を向上させることもできる。
【0056】
また、本発明のガラス用グリーンシートSを焼成して形成したガラスは、薄膜状となっているので、板ガラスや陶器の表面などに載置して、ガスバーナなどの炎で加熱することにより、板ガラスや陶器の表面に容易に貼付けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】ガラス用グリーンシートへの凹凸形状の形成の説明図である。
【図2】ガラス用グリーンシートへの凹凸形状の形成の説明図である。
【図3】ガラス用グリーンシートの型抜きの説明図である。
【図4】ガラス用グリーンシートへのクエン酸溶液塗布の説明図である。
【図5】ガラス用グリーンシートの湾曲変形の説明図である。
【符号の説明】
【0058】
S ガラス用グリーンシート
S' 円盤状グリーンシート
S" 扇状ガラス用グリーンシート
G 円錐状ガラス
s1 第1成形領域
s2 第2成形領域
s3 連結片
s4 テーパ面
10 版
11 押圧体
12 平板部
13 突出部
14 基底面
20 基台
21 載置面
30 抜き型
31 枠体
32 切欠部
40 筆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径0.1〜10μmとしたシリカガラス粉末50〜80重量%を、水とメチルセルロースを主成分とするバインダ20〜50重量%と混合し、粘度を500〜1000mPa・sとしたスラリーを、厚み2mm以下の薄膜状として乾燥させてなるガラス用グリーンシート。
【請求項2】
前記バインダには、可塑剤、分散剤、消泡剤の少なくとも一種を添加していることを特徴とする請求項1に記載のガラス用グリーンシート。
【請求項3】
請求項2記載のガラス用グリーンシートを、1200〜1300℃の温度で3〜24時間焼結した後、10-1Pa以下の雰囲気圧力で1400℃以上に加熱して透明化したガラス。
【請求項4】
前記ガラス用グリーンシートの焼成前に、表面に所定の凹凸形状を形成した版を前記ガラス用グリーンシートの所定位置に押圧したことにより、前記凹凸形状が転写されていることを特徴とする請求項3に記載のガラス。
【請求項5】
前記ガラス用グリーンシートの焼成前に、前記ガラス用グリーンシートを裁断または型抜きして所定形状としたことを特徴とする請求項4に記載のガラス。
【請求項6】
前記ガラス用グリーンシートの焼成前に、前記ガラス用グリーンシートを撓ませてから焼成することにより、湾曲面または屈曲面を備えたことを特徴とする請求項5に記載のガラス。
【請求項7】
前記ガラス用グリーンシートの焼成前に、前記ガラス用グリーンシートにクエン酸溶液を含浸させた含浸領域を形成し、焼結によって前記含浸領域以外を透明化する一方で、前記含浸領域を黒色化させたことを特徴とする請求項6に記載のガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−120444(P2009−120444A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296051(P2007−296051)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】