説明

ガラス用保護シート

【課題】作業性、視認性、及び、透明性に優れたガラス用保護シートを提供する。
【解決手段】写像鮮明性が、70%以上であり、JIS K7136に基づく内部ヘイズが、3.0%以下であることを特徴とするガラス用保護シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス面を有する被着体の表面保護に用いる保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、保管や流通過程における傷などの損傷を防止するため、電気・電子材料や精密機械を中心に、木製製品、金属製品、ガラス製品、プラスチック製品など、様々な分野で表面保護シートが用いられている。また、輸出自動車などの保管や流通過程においても、自動車本体(金属部分、プラスチック部分など)への傷などを保護するため、ポリオレフィン系樹脂のフィルムに粘着剤層を形成した表面保護フィルムなどが用いられている。
【0003】
また、自動車ガラスの表面保護用に用いるためには、保管や流通過程において、保護用フィルムを貼り付けた状態で個々の自動車を随時動かす必要があるため、運転に支障のない視認性や透明性が求められる。
【0004】
特に、輸出用の自動車などにおいては、完成車両が需要者に渡るまでに屋外にある一定期間保管を経る場合が多く、かかる保管期間中や輸送中に、落石や、飛び石などによりガラス面に傷やひびなどの破損を生じてしまう問題があることが判明した。一般に、自動車の塗装部分の損傷の場合には、再仕上げなどにより部分的に補修することが可能であるが、自動車のガラス部分に生じた傷やひびの場合には、一部であっても全面取替えを要するため、作業的、コスト的にも大きな問題となる。このため、近年、自動車などの出荷、保管時におけるガラス面を保護するための保護材が求められつつある。
【0005】
上述の問題点を改善する試みとして、ガラス面を保護する材料が提案されている。たとえば、ポリプロピレンからなる支持体にポリエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる粘着剤を用いた表面保護フィルムが開示されている(たとえば、特許文献1参照)。しかし、かかる提案では、耐候性や耐衝撃性が不十分であり、特に屋外にて保管されることが多い自動車ガラスの保護用途への適用は不十分であることが判明した。
【0006】
また、自動車用ガラスの保護シートとして、ポリ塩化ビニル(PVC)から形成されるものも多く用いられているが、PVCシートは、保護機能や接着性が不十分であり、特に保護機能を向上させるため、PVCシートの厚みを大きくすることが行われているが、この厚みのせいで、例えば自動車のフロントガラスなどに貼付した場合、見え方にゆがみや、ぼやけが発生する等、視認性や透明性の問題を抱えている。
【0007】
一方、表面保護シートとは異なる手法として、自動車のウインドガラスの一部をカバーシートで覆うガラス保護装置が開示されている(たとえば、特許文献2参照)。しかし、かかる提案においては、コスト面や作業性に劣るとともに視認性に劣るため、保管や流通過程において個々の自動車を随時動かす必要があり、自動車ガラスの保護用途への適用は不十分である。
【0008】
また、特許文献3においては、ポリエステルを含有した層から形成されるガラス保護フィルムが開示されているが、ポリエステルは耐候性に劣るため、屋外の保管に適していない問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−150608号公報
【特許文献2】特開2004−106820号公報
【特許文献3】特開2003−205588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような事情に照らし、作業性、視認性、及び、透明性に優れたガラス用保護シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、以下に示すガラス用保護シートにより前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明のガラス用保護シートは、写像鮮明性が、70%以上であり、JIS K7136に基づく内部ヘイズが、3.0%以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明のガラス用保護シートは、JIS B0601に基づくガラスへの非貼付面の表面粗さ(Ra)が、0.35μm以下、表面粗さ(Sm)が、40nm/nm以下であることが好ましい。
【0014】
本発明のガラス用保護シートは、JIS K7127に基づく引張弾性率が、50MPa〜3500MPaであることが好ましい。
【0015】
本発明のガラス用保護シートは、少なくとも片面に粘着剤層を有することが好ましい。
【0016】
本発明のガラス用保護シートは、風剥がれ試験において、剥がれ距離が、20秒間で、0.5〜60mmであることが好ましい。
【0017】
本発明のガラス用保護シートは、定荷重剥離試験における剥がれ速度が、500mm/min以下であることが好ましい。
【0018】
本発明のガラス用保護シートは、少なくとも片面に粘着剤層を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガラス用保護シートは、写像鮮明性や内部ヘイズを調整することにより、視認性や透明性を向上させることができ、更に、作業性、接着信頼性、及び、耐衝撃性に優れたガラス用保護シートを得ることができ、有用である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
本発明のガラス用保護シートは、それ自体で支持体としても機能するものであれば特に限定されず使用できるが、前記支持体としては、例えば、ポリオレフィン、及び/又は、ポリエステルから形成されることが好ましく、ポリプロピレン層、ポリエチレン層、及び、ポリエチレンテレフタレート層からなる群より選択される少なくとも1層から形成されることがより好ましく、ポリプロピレン層/ポリエチレン層/ポリプロピレン層からなる3層構造を有する支持体であることが特に好ましい。ポリオレフィンや、ポリエステルから形成される層(ガラス用保護シート)は、視認性、貼り合わせ時の作業性等の点で、優れているため、好ましい。
【0022】
なお、本発明において、シートとは、平面状の材料を意味し、通常、テープ、フィルムに加えて、ロール等とよばれるものを含む。
【0023】
前記ポリプロピレン層/ポリエチレン層/ポリプロピレン層からなる3層構造を少なくとも含む多層構造の樹脂層からなる支持体としては、本発明の効果を損なわない範囲で、各層の層間や表面にその他の層を含んでいてもよい。
【0024】
前記ポリプロピレン層に用いられるポリプロピレンは、透明性、耐熱性に優れ、ある程度の耐衝撃性を有する材料であるが、カールなどの現象が発生してしまう場合がある。そこで、前記3層構造においては上述のようにポリエチレン層とポリプロピレン層を組み合わせて用いることにより、耐衝撃性、耐候性、接着性をバランスよく奏するガラス用保護シートとなることを見出した。また、ガラス用保護シートの最外層にポリプロピレン層を設けることにより、透明性により優れたものとすることができる。
【0025】
前記ポリエチレン層(ポリエチレン系樹脂層)としては、たとえば、エチレン系ポリマー(低密度、高密度、リニア低密度等)、エチレン・αオレフィン共重合体などのオレフィン系ポリマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・αオレフィン共重合体などのエチレンと他モノマーとのオレフィン系ポリマーなどからなる樹脂層があげられる。また、ポリエチレン層に用いられるこれらのポリマーは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。これらのポリエチレン層を用いることにより、耐候性、耐衝撃性、ならびに、最外層および他層との密着性の観点において好ましいものとなる。
【0026】
前記ポリエチレン層の厚さは、20〜150μm、特に30〜100μmが一般的であるが、これに限定されない。
【0027】
前記ポリプロピレン層(ポリプロピレン系樹脂層)として、たとえば、プロピレン系ポリマー(ホモポリマー、分子鎖中にプロピレン以外のエチレンまたは他のコモノマーをランダムに挿入したランダム共重合ポリマー(以下、ランダムポリプロピレンという))、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・αオレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・αオレフィン共重合体などのオレフィン系ポリマーなどのプロピレンと他モノマーとのオレフィン系ポリマーなどからなる樹脂層があげられる。また、ポリプロピレン層に用いられるこれらのポリマーは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。これらのポリプロピレン層を用いることにより、耐候性や耐衝撃性の観点において好ましいものとなる。
【0028】
前記ポリプロピレン層の厚さは、それぞれ5〜40μm、特に5〜30μmが一般的であるが、これに限定されない。
【0029】
また、前記ポリエチレン層と前記ポリプロピレン層の層間の密着性を向上させるために、前記ポリプロピレン層に改質剤を含有させる手法、またはポリエチレンユニットを含有するポリプロピレン層(ポリプロピレン系樹脂層)に用いる手法などを用いることができる。
【0030】
上述の接着性を向上させるためにポリプロピレン層に用いる樹脂としては、たとえば、非晶性軟質ポリプロピレン系材料やポリプロピレンのブロックコポリマー(ブロックポリプロピレン)などをあげることができる。また、より具体的な例としては、たとえば、タフセレン(住友化学製)などがあげられる。
【0031】
また、前記ポリプロピレン層におけるポリエチレンユニットの含有量は0〜20重量%であることが好ましく、透明性の観点からはより少ないことがより好ましい。ポリエチレンユニットの含有量が20重量%以上であると、ポリプロピレンユニットとポリエチレンユニットが相分離しやすくなり、透明性が得られなくなる場合がある。
【0032】
前記3層構造を含む樹脂層や、その他支持体として使用されるガラス用保護シートの厚さは、45〜250μmであることが好ましく、48〜200μmがより好ましく、50〜150μmが特に好ましく、60〜120μmであることが更に好ましい。厚さが250μmを超えると、反発性が大きくなり、45μm未満であると、耐衝撃性が低下するため、好ましくない。
【0033】
また、他の樹脂層、粘着剤層、下塗り剤等との密着性を向上させるため、支持体(または各樹脂層)の表面には、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの表面処理をおこなってもよい。また、支持体(樹脂層)には適宜背面処理を行ってもよい。
【0034】
また、耐候性の観点より、本発明の視認性等を損なわない範囲内で、前記支持体(または各樹脂層)に耐候安定剤を用いた処理を適宜行うことができる。
【0035】
前記耐候安定剤(紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤)を用いた処理は、前記樹脂層表面に塗布処理、または転写処理、前記樹脂層への練りこみ等によっておこなうことができる。
【0036】
前記紫外線吸収剤としては、たとえば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤など公知の紫外線吸収剤を適宜使用することができる。これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0037】
前記紫外線吸収剤の配合(添加)量は、各樹脂層のベースポリマー100重量部に対して、5重量部以下が好ましく、より好ましくは3重量部以下、さらに好ましくは0.1〜1重量部程度である。
【0038】
前記光安定剤としては、たとえば、ヒンダードアミン系光安定剤やベンゾエート系光安定剤など公知の光安定剤を適宜使用することができる。これらの光安定剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0039】
前記光安定剤の配合量は、各樹脂層のベースポリマー100重量部に対して、5重量部以下が好ましく、より好ましくは3重量部以下、さらに好ましくは0.1〜1重量部程度である。
【0040】
前記酸化防止剤としては、たとえば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、ラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤など公知の酸化防止剤を適宜使用することができる。これらの酸化防止剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0041】
前記酸化防止剤の配合量は、各樹脂層のベースポリマー100重量部に対して、3重量部以下が好ましく、より好ましくは1重量部以下、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部程度である。
【0042】
また、本発明の効果を損なわない範囲内で、前記支持体(または各樹脂層)に難燃剤、不活性無機粒子、有機粒子、滑剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤など任意の添加剤も配合することができる。
【0043】
また、本発明は、ガラス用の保護シートとして用いられるため、支持体として耐熱性および耐溶剤性を有すると共に可とう性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。支持体(支持フィルム)が可とう性を有することにより、ロールコーターなどによって、粘着剤溶液(粘着剤組成物)を塗布することができ、ロール状に巻き取ることができる。
【0044】
また、前記支持体(樹脂層)には、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、塗布型、練り込み型、蒸着型などの静電防止処理をすることもできる。
【0045】
さらに、本発明のガラス用保護シートにおいて、内部ヘイズの値が3.0%以下であり、2.5%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましい。自動車等のガラスの表面保護用に用いるためには、保管や流通過程において、保護シートを貼り付けた状態で、個々の自動車を随時動かす必要があるため、前記ヘイズ値を有するガラス用保護シートは、このように屋外等での長期保管、流通過程を経る自動車ガラス等の保護用途向けとして特に適したものとなる。
【0046】
本発明のガラス用保護シートにおいて、写像鮮明性が、70%以上であり、75%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。前記写像鮮明性を有するガラス用保護シートは、屋外等での長期保管、流通過程を経るガラス保護用途向けとして、特に視認性向上を図るという点で、適したものとなる。なお、写像鮮明性を評価する理由としては、例えば、自動車のフロントガラスなどに前記ガラス用保護シートを貼付して運転する際に、前方が、ゆがみや、ぼやけの発生が起こることなく、視認性が良好であるか、否かの判断基準として測定するものである。また、前記写像鮮明性は、表面粗さ(RaやSm)、更に、これらの表面粗さは、ガラス用保護シート表面のうねりにも相関性を有するものと推測され、これらの値を所望の範囲に調整することにより、うねりを調整することになり、最終的に写像鮮明性そのものを向上させることができる。なお、Raとは、算術平均粗さを示し、Smとは、凹凸の平均間隔を示す。
【0047】
なお、前記写像鮮明性を調整する方法としては、特に限定されないが、本発明のガラス用保護シート(支持体)として用いることができ、内部ヘイズ値の比較的小さなものを使用することが好ましい。具体的には、内部ヘイズ値の小さいポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等のポリエステルを使用し、前記ポリエステルの表面粗さを調整し、更に、前記ポリエステルの流動性を、例えば、メルトフローレート(MFR;試験温度230℃、荷重2.16kg)で、20g/10min(JIS K7210に準拠して測定)のものを使用することにより、写像鮮明性の調整を行う事ができる。また、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを使用する場合には、触媒として、メタロセン等を使用することにより、分子量分布を小さくすること(Mw/Mn≦3.0)や、低分子量の成分を少なくすること(Mw≦5000の成分を1.0重量%以下に抑制)が可能となり、所望の写像鮮明性を得ることができる。
【0048】
本発明のガラス用保護シートは、JIS B0601に基づくガラスへの非貼付面の表面粗さ(Ra:算術平均粗さ)が、0.35μm以下であることが好ましく、0.30μm以下がより好ましく、0.25μm以下が特に好ましい。前記表面粗さ(Ra)が、0.35μmを超えると、写像鮮明性の低下を招き、好ましくない。なお、前記表面粗さを調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、製膜(シート作成)時のシート原料である樹脂の粘度を下げることや、押出ダイスと樹脂界面の面粗れを防止する目的で、せん断速度を下げること等により、可能となる。より具体的には、樹脂粘度を下げる手法としては、押出ダイスの樹脂温度を180〜300℃の範囲に調整する方法等が挙げられ、その際の粘度が、MFRが20g/10min以下になるように調整したり、また、せん断速度を下げる手法としては、製膜時のライン速度を150m/min以下に調整したり、押出ダイスのリップ幅を0.5〜4.0mmとすること等により、表面粗さ(Ra)を調整することができる。
【0049】
本発明のガラス用保護シートは、JIS B0601に基づくガラスへの非貼付面の表面粗さ(Sm:凹凸の平均間隔)が、40nm/nm以下であることが好ましく、38nm/nm以下であることがより好ましく、36nm/nm以下であることが特に好ましい。Smが、40nm/nmを超えると、写像鮮明性の低下を招き、好ましくない。なお、前記凹凸の平均間隔を調整する方法としては、特に限定されないが、前記表面粗さ(Ra:算術平均粗さ)を調整する方法と同様に、例えば、製膜(シート作成)時のシート原料である樹脂の粘度を下げることや、押出ダイスと樹脂界面の面粗れを防止する目的で、せん断速度を下げること等により、可能となる。より具体的には、樹脂粘度を下げる手法としては、押出ダイスの樹脂温度を180〜300℃の範囲に調整する方法等が挙げられ、その際の粘度が、MFRが20g/10min以下になるように調整したり、また、せん断速度を下げる手法としては、製膜時のライン速度を150m/min以下に調整したり、押出ダイスのリップ幅を0.5〜4.0mmとすること等により、凹凸の平均間隔(Sm)を調整することができる。
【0050】
また、前記表面粗さ(Ra)や凹凸の平均間隔(Sm)は、ガラス用保護シート表面のうねりにも相関性を有するものと推測され、これらの値を前記範囲に調整することにより、うねりを調整することになり、最終的に写像鮮明性そのものを向上させることができる。
【0051】
また、本発明のガラス用保護シートにおいて、JIS K7124に基づく引張弾性率が、50MPa〜3500MPaであり、100MPa〜3450MPaであることが好ましく、200MPa〜3400MPaであることがより好ましい。前記引張弾性率を有するガラス用保護シートは、屋外等での長期保管、流通過程を経るガラス保護用途向けとして、特に前記範囲の高弾性率のガラス用保護シートは、硬く、保護機能を十分に備える点で、シート自体を薄くすることができるため、視認性の向上にもつながる点で、適したものとなる。なお、本発明における引張弾性率は粘着剤層を含む場合においても、支持体として機能するガラス用保護シートのみ値を示している。
【0052】
また、本発明のガラス用保護シートにおいて、曲げ強度が、2.0×10〜5.5×1010μm・MPaであることが好ましく、5.0×10〜4.0×1010μm・MPaであることがより好ましく、6.0×10〜3.0×1010μm・MPaであることが特に好ましい。前記曲げ強度を有するガラス用保護シートは、屋外等での長期保管、流通過程を経るガラス保護用途向けとして、特に前記範囲の曲げ強度を有するガラス用保護シートは、被着体(ガラス)に対して、優れた追従性を有し、この特性が、作業性や接着信頼性にもつながる点で、適したものとなる。なお、本発明における曲げ強度は、下記の式により算出した。
曲げ強度(μm・MPa)=(サンプルの厚さ)×(引張弾性率)
【0053】
また、本発明のガラス用保護シートにおいて、定荷重剥離試験における剥がれ速度(m/min)が、500mm/min以下であることが好ましく、300mm/min以下がより好ましく、200mm/min以下が特に好ましい。前記剥がれ速度を有するガラス用保護シートは、屋外等での長期保管、流通過程を経るガラス保護用途向けとして、特に接着信頼性の向上を図るという点で、適したものとなる。
【0054】
なお、前記剥がれ速度を調整する方法としては、特に限定されないが、本発明のガラス用保護シートが、粘着剤層を有さない場合には、上述した表面粗さ等を所望の範囲に調整することにより、前記剥がれ速度を調整することができ、本発明にガラス用保護シートが、粘着剤層を有する場合には、前記粘着剤層に使用される架橋剤の配合量や、ポリマーの種類により、調整することができる。
【0055】
本発明のガラス用保護シートにおいて、風剥がれ性(mm/20s:20秒間における剥離距離(剥がれ距離)(mm))が、0.5〜60mm/20sが好ましく、1〜55mm/20sがより好ましく、1〜50mm/20sが特に好ましい。前記風剥がれ性を有するガラス用保護シートは、屋外等での長期保管、流通過程を経るガラス保護用途向けとして、特に接着信頼性の向上を図るという点で、適したものとなる。
【0056】
なお、前記風剥がれ性を調整する方法としては、特に限定されないが、本発明のガラス用保護シートが、粘着剤層を有さない場合には、上述した表面粗さ等を所望の範囲に調整することにより、前記風剥がれ性を調整することができ、本発明にガラス用保護シートが、粘着剤層を有する場合には、前記粘着剤層に使用される架橋剤の配合量や、ポリマーの種類により、調整することができる。
【0057】
本発明のガラス用保護シートにおいて、ガラスに貼付した際の接着力が、0.1〜10N/25mmが好ましく、0.2〜5N/25mmがより好ましい。0.1N/25mm未満であると、接着信頼性が劣ることになり、一方で、10N/25mmを超えると、ガラス表面からガラス用保護シートを剥離することが困難となり、作業性が著しく低下するため、好ましくない。
【0058】
なお、前記接着力を調整する方法としては、特に限定されないが、本発明のガラス用保護シートが、粘着剤層を有さない場合には、上述した表面粗さ等を所望の範囲に調整することにより、前記接着力を調整することができ、本発明にガラス用保護シートが、粘着剤層を有する場合には、前記粘着剤層に使用される架橋剤の配合量や、ポリマーの種類により、調整することができる。
【0059】
また、本発明のガラス用保護シートは、少なくとも片面に粘着剤層を有することが好ましく、それ自体で粘着剤層として機能するものであれば、特に限定されず使用できるが、例えば、前記粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、アクリル系、天然ゴム系、合成ゴム系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、エチレン−アクリル酸エステル系、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体系、ポリウレタン系、ポリエステル系などの各種粘着剤があげられる。これらの粘着剤の中でも透明性が高く、視認性という点でも優れ、被着体への良好な密着特性を発現しやすいという理由から、アクリル系粘着剤が好適に用いられる。
【0060】
前記アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル系ポリマーを含有するものであり、前記 (メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー単位として、炭素数2〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。なお、本発明における(メタ)アクリル系ポリマーとは、アクリル系ポリマーおよび/またはメタクリル系ポリマーをいう。また(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタアクリルをいう。
【0061】
前記(メタ)アクリル系ポリマーとしては、モノマー単位として、アルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー((メタ)アクリル酸アルキルエステル)などを適宜用いることができる。これらのモノマー化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0062】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、たとえば、炭素数2〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートであれば特に制限はないが、炭素数3〜13が好ましく、4〜12のものがより好ましい。また、前記アルキル基は、直鎖または分岐鎖のいずれも使用できるが、ガラス転移点が低いことから分岐鎖のものが好ましい。
【0063】
また、その他のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー((メタ)アクリル酸アルキルエステル)などを適宜用いることができ、たとえば、ケイ素原子を含有するシラン系モノマーなどがあげられる。
【0064】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、より具体的には、たとえば、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどがあげられる。なかでも、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが好適に用いられる。
【0065】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマー全体に占める含有量としては、40〜99.9重量%が用いることが好ましく、50〜99重量%であることがより好ましく、60〜98重量%であることが特に好ましい。なお、40重量%未満では、ガラス面に対する接着力の低下を招く場合がある。
【0066】
さらに、前記(メタ)アクリル系ポリマーにおけるモノマー単位として、官能基含有モノマーが用いることができる。かかる官能基含有モノマーは、主として、基材への密着性を向上させ、また被着体への初期接着性を良くするために用いられる。
【0067】
本発明における官能基含有モノマーとは、分子内に1つ以上のカルボキシル基、酸無水物基、水酸基などの官能基を有すモノマーをいい、たとえば、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマーなどがあげられる。なかでも、本発明においては、カルボキシル基含有モノマーやヒドロキシル基含有モノマーが接着信頼性を向上させやすいこともありより好適に用いられる。
【0068】
前記カルボキシル基含有モノマーとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などがあげられる。なかでも、特にアクリル酸、およびメタクリル酸が好ましく用いられる。
【0069】
前記酸無水物基含有モノマーとしては、たとえば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などがあげられる。
【0070】
前記ヒドロキシル基含有モノマーとしては、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどがあげられる。
【0071】
本発明において、上述の官能基含有モノマーは、単独で使用しても良く、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー全体において、0.1〜15重量%であり、3〜10重量%であることが好ましく、5〜10重量%であることがより好ましい。0.1重量%未満では、基材との密着性が低下する場合があり、一方、15重量%を越えると、接着力の経時上昇を招く場合がある。
【0072】
本発明の粘着剤層に用いられるモノマー単位として、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび/または前記官能基含有モノマーと共重合可能なビニル系モノマーが用いることも可能である。前記共重合可能なビニル系モノマーとは、主として、初期接着力や経時接着力の調整、さらには凝集力の調整などの目的で必要に応じて用いられる。
【0073】
前記共重合可能なビニル系モノマーとして、たとえば、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマーなどの凝集力・耐熱性向上成分や、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、ビニルエーテルモノマーなどの接着力向上や架橋化基点としてはたらく官能基を有す成分などを適宜用いることができる。これらのモノマー化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0074】
前記スルホン酸基含有モノマーとしては、たとえば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などがあげられる。
【0075】
前記リン酸基含有モノマーとしては、たとえば、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートがあげられる。
【0076】
前記シアノ基含有モノマーとしては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどがあげられる。
【0077】
前記ビニルエステルモノマーとしては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ビニルピロリドンなどがあげられる。
【0078】
前記芳香族ビニルモノマーとしては、たとえば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0079】
前記アミド基含有モノマーとしては、たとえば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−(メタ)アクリロイルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどがあげられる。
【0080】
前記アミノ基含有モノマーとしては、たとえば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルなどがあげられる。
【0081】
前記イミド基含有モノマーとしては、たとえば、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、イタコンイミドなどがあげられる。
【0082】
前記エポキシ基含有モノマーとしては、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどがあげられる。
【0083】
前記ビニルエーテルモノマーとしては、たとえば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどがあげられる。
【0084】
本発明において、前記共重合可能なビニル系モノマーは、単独で使用しても良く、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー全体において、0〜45重量%であることが好ましい。45重量%を超えると、初期接着力の低下を招く場合があり、好ましくない。
【0085】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量としては、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、特に好ましくは50万以上である。重量平均分子量が10万より小さい場合は、耐久性に乏しくなり、粘着剤層の凝集力が小さくなることにより糊残りを生じる傾向がある。一方、作業性の観点より、前記重量平均分子量は200万以下が好ましく、150万以下がより好ましい。なお、重量平均分子量はGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定して得られたポリスチレン換算値である。
【0086】
また、粘着性能のバランスが取りやすい理由から、前記(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)としては、好ましくは0℃以下(通常−100℃以上)、より好ましくは−10℃以下であり、特に好ましくは−30℃以下である。ガラス転移温度が0℃より高い場合、ポリマーが流動しにくく被着体への濡れが不十分となり、被着体とガラス用保護シートの粘着剤層との間に発生するフクレの原因となる傾向がある。また、本発明のガラス用保護シートは屋外使用、特に低温環境下で使用される場合があるが、低温での接着性の観点からは前記ガラス転移温度(Tg)がより低温のほうが好ましい。なお、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、用いるモノマー成分や組成比を適宜変えることにより前記範囲内に調整することができる。なお、ガラス転移温度(Tg)(℃)は、一般的な値を採用してよく、たとえば、Polymer Handbook Fourth Edition(J.Brandupら編、1999 John Wiley & Sons,Inc)VI章198から253項に記載されている数値等を用いることができる。また、新規ポリマーの場合には、粘弾性測定法(剪断法、測定周波数:1Hz)における損失正接(tanδ)のピーク温度をガラス転移温度(Tg)として採用すればよい。
【0087】
このような前記(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合などの公知のラジカル重合法を適宜選択できるが、特に溶液重合が、一定の分子量を得るための温度調整や、原料の添加が容易である等の点で、好ましい。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
【0088】
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、たとえば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロへキサノン、n−へキサン、トルエン、キシレン、メシチレン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、水、各種水溶液などが用いられる。反応は窒素などの不活性ガス気流下で、通常、60〜80℃程度で、4〜10時間程度行われる。
【0089】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。
【0090】
本発明に用いられる重合開始剤としては、たとえば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬製、VA−057)などのアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせなどの過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
前記重合開始剤は、単独で使用しても良く、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、モノマー100重量部に対して、0.005〜1重量部程度であることが好ましく、0.02〜0.6重量部程度であることがより好ましい。
【0092】
また、本発明においては、重合において連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤を用いることにより、アクリル系ポリマーの分子量を適宜調整することができる。
【0093】
連鎖移動剤としては、たとえば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどがあげられる。
【0094】
これらの連鎖移動剤は、単独で使用しても良く、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100重量部に対して、0.01〜0.1重量部程度である。
【0095】
本発明のガラス用保護シートに用いられる粘着剤層は、前記(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤組成物からなるものであり、前記粘着剤層は、前記粘着剤組成物を架橋してなるものから形成することもできる。その際、前記粘着剤組成物の架橋は、前記粘着剤組成物の塗布後に行うのが一般的であるが、架橋後の粘着剤組成物からなる粘着剤層を支持体などに転写することも可能である。
【0096】
前記架橋剤としては、前記使用するモノマーの官能基と反応(結合形成)可能な官能基を少なくとも2つ以上分子内に有する化合物が用いられ、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、メラミン系樹脂、アジリジン誘導体、および金属キレート化合物などが用いられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0097】
このうち、ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、乳化型イソシアネートなどがあげられる。
【0098】
より具体的には、ポリイソシアネート化合物としては、たとえば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業製、商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業製、商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業製、商品名コロネートHX)などのイソシアネート付加物、自己乳化型ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業製、商品名アクアネート200)などがあげられる。これらのポリイソシアネート化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0099】
前記オキサゾリン化合物としては、たとえば、2−オキサゾリン、3−オキサゾリン、4−オキサゾリン、5−ケト−3−オキサゾリン、エポクロス(日本触媒製)などがあげられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0100】
前記エポキシ化合物としては、たとえば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名TETRAD−X、三菱瓦斯化学製)や1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロへキサン(商品名TETRAD−C、三菱瓦斯化学製)、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジル−o−トルイジンなどのポリグリシジルアミン化合物などがあげられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0101】
前記メラミン系樹脂としてはヘキサメチロールメラミン、水溶性メラミン系樹脂などがあげられる。
【0102】
前記アジリジン誘導体としては、たとえば、市販品としての商品名HDU(相互薬工製)、商品名TAZM(相互薬工製)、商品名TAZO(相互薬工製)などがあげられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0103】
前記金属キレート化合物としては、金属成分としてアルミニウム、鉄、スズ、チタン、ニッケルなど、キレート成分としてアセチレン、アセト酢酸メチル、乳酸エチルなどがあげられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0104】
前記架橋剤の配合(含有)量は、架橋すべき(メタ)アクリル系ポリマーとのバランスにより、さらには、ガラス用保護シートとしての使用用途によって適宜選択される。(メタ)アクリル系ポリマーの凝集力により、充分な耐候性、耐熱性を得るには一般的には、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、1〜10重量部含有されていることが好ましく、2〜8重量部含有されていることがより好ましい。含有量が1重量部よりも少ない場合、架橋剤による架橋形成が不十分となり、溶剤不溶分率が低下する傾向があり、また、粘着剤層の凝集力が小さくなり、糊残りの原因となる傾向がある。一方、含有量が10重量部を超える場合、粘着剤層の初期接着力が不足し、また、ポリマーの凝集力が大きく、流動性が低下し、被着体への濡れが不十分となって、はがれの原因となる傾向がある。
【0105】
また、本発明のガラス用保護シートに用いられる粘着剤層は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、さらに耐候安定剤0.1〜5.0重量部含有することにより、より耐候性および再剥離性に優れたものとなる。また、前記耐候安定剤は0.1〜3.0重量部用いることが好ましく、0.1〜2.0重量部用いることがより好ましい。
【0106】
本発明における耐候安定剤とは、紫外線吸収剤、光安定剤、または酸化防止剤をいい、これらの化合物は耐候安定剤として、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0107】
前記紫外線吸収剤としては、たとえば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤など公知の紫外線吸収剤を適宜使用することができる。これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0108】
前記光安定剤としては、たとえば、ヒンダードアミン系光安定剤やベンゾエート系光安定剤など公知の光安定剤を適宜使用することができる。これらの光安定剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0109】
前記酸化防止剤としては、たとえば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、ラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤など公知の酸化防止剤を適宜使用することができる。これらの酸化防止剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0110】
さらに、本発明のガラス用保護シートに用いられる粘着剤層には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、帯電防止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。また、これらの任意成分の配合量は、表面保護材の分野で通常用いられている使用量を用いることができる。
【0111】
本発明のガラス用保護シートを支持体として、前記シート上に粘着剤層を形成する方法は特に問わないが、たとえば、前記粘着剤組成物を剥離処理したセパレーターなどに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を支持体に形成する方法、または支持体上に前記粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を支持体に形成する方法などにより作製される。その後、粘着剤層の成分移行の調整や架橋反応の調整などを目的として養生(エージング処理)を行なってもよい。また、粘着剤組成物を支持体上に塗布してガラス用保護シート(粘着剤層付きガラス用保護シート:粘着シート)を作製する際には、支持体上に均一に塗布できるよう、該組成物中に重合溶剤以外の一種以上の溶媒(溶剤)を新たに加えてもよい。
【0112】
また、本発明に用いられる粘着剤層の形成方法としては、ガラス用保護シート(粘着剤層付きガラス用保護シート:粘着シート)の製造に用いられる公知の方法が用いられる。具体的には、たとえば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0113】
また、前記粘着剤層の表面にはコロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの表面処理をおこなってもよい。
【0114】
本発明においては、架橋された粘着剤層のゲル分率が、70〜98重量%となるように架橋剤(特に、イソシアネート系架橋剤)の配合量を調整することが好ましく、80〜97重量%となるように配合量を調整することがより好ましく、85〜97重量%となるように配合量を調整することがさらに好ましい。ゲル分率が70重量%より小さくなると、凝集力が低下するため耐久性や曲面接着性に劣る場合があり、98重量%を超えると、接着性に劣る場合がある。
【0115】
前記粘着剤層のゲル分率とは、粘着剤層の乾燥重量W(g)を酢酸エチルに浸漬した後、前記粘着剤層の不溶分を酢酸エチル中から取り出し、乾燥後の重量W(g)を測定し、(W/W)×100として計算される値をゲル分率(重量%)とした。
【0116】
より具体的には、たとえば、4フッ化エチレン樹脂膜(日東電工製、ニトフロン、NTF1122、孔径:0.2μm)に架橋後の粘着剤層をW(g)(約100mg)採取した。次いで、前記サンプルを酢酸エチル中に約23℃下で7日間浸漬し、その後、前記サンプルを取り出し、130℃で2時間乾燥し、得られた粘着剤層のW(g)を測定した。このWおよびWを前記の式に当てはめることにより、ゲル分率(重量%)を求めた。
【0117】
所定のゲル分率に調整するためには、架橋剤(特に、イソシアネート系架橋剤)の配合量を調整することとともに、架橋処理条件(加熱処理温度、加熱時間など)の影響を十分考慮する必要がある。
【0118】
また、かかる架橋処理は、粘着剤層の乾燥工程時の温度で行ってもよいし、乾燥工程後に別途架橋処理工程を設けて行ってもよい。
【0119】
なお、本発明においては、前記粘着剤層の乾燥後の厚みが5〜50μm、好ましくは10〜30μm程度となるように作製する。
【0120】
このような表面に、粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで、剥離処理したセパレーター(剥離シート、剥離ライナー等を含む)で粘着剤層を保護してもよい。
【0121】
前記セパレーターの構成材料としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0122】
前記プラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0123】
前記セパレーターの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。
【0124】
前記セパレーターには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレーターの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0125】
なお、前記の製造方法において、セパレーターは、そのままガラス用保護シートに用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0126】
なお、本発明において、ガラス用保護シートとは、屋内・屋外にて自動車等のガラス面を保護するフィルムを意味し、たとえば、小型自動車、普通乗用車、大型自動車、特殊車両、重機、またはオートバイなどのガラス面の保護向け用途に用いられるものをいう。
【0127】
本発明は、上述の構成を有することにより、ガラスの表面保護用であって、作業性、接着信頼性、視認性、透明性、耐衝撃性、及び、耐候性に優れたガラス用保護シート、又は、粘着剤層付きガラス用保護シートとなる。
【実施例】
【0128】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0129】
<分子量の測定>
重量平均分子量は、GPC装置(東ソー製、HLC−8120GPC)を用いて測定を行った。測定条件は下記の通りである。
・溶離液:THF
・流速:0.5ml/min
・測定温度:40℃
・カラム:TSKgel GMH−H(S)(2本)
・検出器:示差屈折計(RI)
なお重量平均分子量はポリスチレン換算値にて求めた。
【0130】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ガラス転移温度(Tg)(℃)は、各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度Tgn(℃)として下記の文献値を用い、下記の式により求めた。
式: 1/(Tg+273)=Σ〔Wn/(Tgn+273)〕
〔式中、Tg(℃)は共重合体のガラス転移温度、Wn(−)は各モノマーの重量分率、Tgn(℃)は各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度、nは各モノマーの種類を表す。〕
文献値:
・2−エチルヘキシルアクリレート:−70℃
・ヒドロキシエチルアクリレート:−15℃
・エチルアクリレート:−22℃
・メチルメタクリレート:105℃
【0131】
<融点(Tm)の測定>
ガラス用保護シート(支持体)として用いた各樹脂層のポリマーの融点(Tm)(℃)については、示差熱量計(SII・ナノテクノロジー社製、DSC6220)を用い、2nd runのTm(昇温速度:10℃/分)の値を測定することにより算出した。なお、前記2nd runとは、一旦融点以上に昇温することにより材料の成形による熱履歴を除去した後、試料を冷却し、再度室温から昇温させながら吸熱ピークを読み取る方法のことをいう。
【0132】
<写像鮮明性>
写像鮮明性の評価は、タッチパネル式写像鮮明性測定機(スガ試験機製、ICM−IT)を用いて、サンプルを透過する光を測定し、この光透過率(%)を写像鮮明性として、評価した。サンプルとしては、縦70mm×横70mmの正方形にカットしたガラス用保護シートを使用した。測定方法としては、光学クシの方向と、サンプルのMD方向が同じであるとき、これをMD方向の測定結果とし、MD方向及びTD方向のそれぞれについて、2回ずつ測定し、平均値を測定結果とした。なお、MD方向及びTD方向の測定結果を比較したところ、MD方向間での測定結果に顕著な違いが確認できたため、表面粗さとの相関関係を示す際には、MD方向の測定結果を使用した。また、光源からの光の入射面については、サンプルの両面(表裏)における測定を行った。その際の入射面の違いによる写像鮮明性の違いは認められなかったので、各々の面における測定結果の平均値を各サンプルの測定結果とした。なお、光学クシに入射する光が多い(高い)ということは、光がまっすぐに透過することになり、つまりはサンプル表面のゆがみ(表面粗さ等)がないことを示し、視認性が良好という判断となる。
【0133】
<内部ヘイズ>
JIS K7136に準拠し、ヘイズ(ヘーズ)メータ(村上色彩技術研究所製、HM−150型)を用いて測定した。表面粗さの影響を小さく抑えるため、流動パラフィン(キシダ化学製、赤外スペクトル用流動パラフィン)を用いて、マイクロカバーガラス(松浪硝子工業製)をサンプル両面に貼り合わせ、2回ずつ測定し、その平均値を測定結果とした。
【0134】
<表面粗さ(Ra:算術平均粗さ、Sm:凹凸の平均間隔)>
JIS B0601に準拠し、光学式表面粗さ計(Veeco Metrogy Group製、Wyko NT9100)を用いて、ガラス用保護シートの表面粗さ(Ra:算術平均粗さ、Sm:凹凸の平均間隔)を測定した。測定は、スライドガラス(松浪硝子製、MICRO SLIDE GLASS S1214)の上に、ガラス用保護シートを載せ、MD方向及びTD方向それぞれ5点を、ガラス用保護シートの両面について行った。測定結果から、TD方向でのサンプル間での違いが顕著であったため、両面のTD方向の測定結果の平均値を、最終的な測定結果とした。
・サンプル寸法:幅70mm×長さ60mm
・測定範囲:5.0mm×5.0mm
【0135】
<引張弾性率>
JIS K7127に準拠し、精密万能試験機(島津製作所製、オートグラフAG−IS)を用い、ガラス用保護シートを用いて、引張試験を行い、最大傾きを2回測定し、その平均値を評価した。
・サンプル寸法:幅25mm×長さ50mm
・試験環境:23℃×50%RH
【0136】
<曲げ強度>
曲げ強度の評価は、前記引張弾性率で使用したサンプル厚みと、引張弾性率の値から、下記に式の基づき、算出して、評価した。
曲げ強度(μm・MPa)=(サンプルの厚さ)×(引張弾性率)
【0137】
<定荷重試験>
マイクロスライドガラス(松浪硝子工業製、MICRO SLIDE GLASS、サイズ65mm×165mm、厚さ1.2〜1.5mm)の錫(Sn)の未付着面(錫上に、溶かしたガラスを流して、板硝子を作成するため、片面に錫が付着した状態となっている。)に、幅20mm×長さ110mmのガラス用保護シート(支持体)、長さ方向:MD方向)を、2kgのローラーを一往復させる方法で圧着し、23℃×50%RHの環境下で30分間放置し、評価用サンプルを得た。前記評価用サンプルの端10mmを剥離して、30gの重りをクリップで固定し、前記評価用サンプルが完全に剥離し、落下するまでの時間を測定し、剥がれ速度(mm/min.)を算出した。
【0138】
<風剥がれ性試験>
風剥がれ性の評価は、サンプル片寸法のガラス(強化ガラス、藤原工業製、厚さ:5mm)に、作製したガラス用保護シートを貼り付け、これをサンプルとし、下記試験条件にて飛石試験機(スガ試験機製、JA−400)により試験を行い、試験後の剥離距離を5点測定し、その平均値を評価した。
なお、試験条件は以下の条件でおこなった。
・空気圧力:0.5MPa(5kgf/cm
・吹き付け距離:200mm
・吹き付け時間:20sec
・サンプル寸法:縦50mm×横50mm(接着面は縦40mm×横50mmとし、残りの縦10mm×横50mmについては、マスキングテープ貼り付け、初めから剥離部分を形成)
・試験環境:23℃×50%RH
【0139】
<接着力>
JIS K6854−2に準拠し、精密万能試験機(島津製作所製、オートグラフAG−IS)を用い、ガラス用保護シートを、2kgローラーを用いて、スライドガラス(松浪硝子工業製、MICRO SLIDE GLASS S200423、サイズ寸法:65mm×165mm、厚さ:1.2〜1.5mm)に貼り合わせ、23℃×50%RHに30分間保存後、剥離角度180°で剥離強さを、2回測定し、その平均値を評価した。なお、25mm/N換算したものを最終的な測定結果とした。
・サンプル寸法:幅10mm×長さ50mm(長さ方向:MD方向)
・試験環境:23℃×50%RH
【0140】
<粘着剤A溶液の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレート100重量部、ヒドロキシエチルアクリレート4重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(キシダ化学製)0.2重量部、および酢酸エチルを仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って10時間重合(溶液重合)反応を行い、アクリル系ポリマーA溶液(固形分50重量%)を調製した。このアクリル系ポリマーAは、重量平均分子量55万、Tg=−60℃であった。
【0141】
前記アクリル系ポリマーA溶液の固形分100重量部に対し、架橋剤として芳香族ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業製、コロネートL)4重量部を加えて均一に混合撹拌し、粘着剤A溶液を調製した。
【0142】
<粘着剤B溶液の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレート90重量部、アクリル酸10重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(キシダ化学製)0.6重量部、および酢酸エチルを仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って10時間重合反応(溶液重合)を行い、アクリル系ポリマーB溶液(固形分45重量%)を調製した。このアクリル系ポリマーBは、重量平均分子量120万、Tg=−61℃であった。
【0143】
前記アクリル系ポリマーB溶液の固形分100重量部に対し、架橋剤としてエポキシ化合物(三菱化学製、TETRAD−C)5重量部を加えて均一に混合撹拌し、粘着剤B溶液を調製した。
【0144】
<粘着剤C溶液の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレート90重量部、アクリル酸10重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(キシダ化学製)0.6重量部、および酢酸エチルを仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って10時間重合(溶液重合)反応を行い、アクリル系ポリマーC溶液(固形分45重量%)を調製した。このアクリル系ポリマーCは、重量平均分子量120万、Tg=−61℃であった。
【0145】
前記アクリル系ポリマーC溶液の固形分100重量部に対し、架橋剤としてエポキシ化合物(三菱化学製、TETRAD−C)7重量部を加えて均一に混合撹拌し、粘着剤C溶液を調製した。
【0146】
[実施例1]
外面層/中間層/内面層=ポリプロピレン層/ポリエチレン層/ポリプロピレン層3層シートを厚さ比=1/2/1になるようにTダイ法にて、押出成型し、総厚さが70μm、内面層及び外面層の平均表面粗さRa(内面層及び外面層表面粗さに大きな差がなかったため、平均値を採用。以下同様。)が0.22μm、内部ヘイズが0.8%になるように調製し、ガラス用保護シート(支持体)を得た。前記ポリプロピレン層(外面層及び内面層)としては、ポリプロピレンランダムコポリマー(日本ポリプロ製、WINTEK WFK4TA、Tm:125℃、100重量部)を使用し、前記ポリエチレン層としては、L−LDPE(リニア低密度ポリエチレン、プライムポリマー製、エボリューSP−0540、Tm:98℃、60重量部)と、(プライムポリマー製、エボリューSP−1540、Tm:113℃、40重量部))を使用した。また、前記内面層の内面側をコロナ処理し、その処理面に前記粘着剤A溶液を塗布し、乾燥後の粘着剤層の厚さが10μmになるように、80℃×3分間加熱し、粘着剤層付きのガラス用保護シートを得た。
【0147】
[実施例2]
外面層/中間層/内面層=ポリプロピレン層/ポリエチレン層/ポリプロピレン層3層シートを厚さ比=1/2/1になるようにTダイ法にて、押出成型し、総厚さが100μm、内面層及び外面層の平均表面粗さRaが0.25μm、内部ヘイズが1.6%になるように調製した以外は、実施例1と同様の方法にて、粘着剤層付きのガラス用保護シートを得た。
【0148】
[実施例3]
外面層/中間層/内面層=ポリプロピレン層/ポリエチレン層/ポリプロピレン層3層フィルムの代わりに、厚さ100μm、内面層及び外面層の平均表面粗さRaが0.18μm、内部ヘイズが0.9%のポリプロピレン層(ポリプロピレンランダムコポリマー(日本ポリプロ製、WINTEK WFK4TA、Tm:125℃))単層をTダイ法にて押出成型して、ガラス用保護シート(支持体)を得た。
【0149】
[実施例4]
外面層/中間層/内面層=ポリプロピレン層/ポリエチレン層/ポリプロピレン層3層フィルムの代わりに、厚さ100μm、内面層及び外面層の平均表面粗さRaが0.18μm、内部ヘイズが0.9%のポリプロピレン層(ポリプロピレンランダムコポリマー(日本ポリプロ製、WINTEK WFK4TA、Tm:125℃))単層をTダイ法にて押出成型し、前記ポリプロピレン層の内面側をコロナ処理した以外は、実施例1と同様の方法にて、粘着剤層付きのガラス用保護シートを得た。
【0150】
[実施例5]
外面層/中間層/内面層=ポリプロピレン層/ポリエチレン層/ポリプロピレン層3層フィルムの代わりに、厚さ100μm、表面粗さRaが0.18μm、内部ヘイズが0.9%のポリプロピレン層(ポリプロピレンランダムコポリマー(日本ポリプロ製、WINTEK WFK4TA、Tm:125℃))単層をTダイ法にて押出成型し、前記ポリプロピレン層の内面側をコロナ処理し、更に粘着剤A溶液の代わりに、粘着剤B溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、粘着剤層付きのガラス用保護シートを得た。
【0151】
[実施例6]
外面層/中間層/内面層=ポリプロピレン層/ポリエチレン層/ポリプロピレン層3層フィルムの代わりに、厚さ100μm、内面層及び外面層の平均表面粗さRaが0.18μm、内部ヘイズが0.9%のポリプロピレン層(ポリプロピレンランダムコポリマー(日本ポリプロ製、WINTEK WFK4TA、Tm:125℃))単層をTダイ法にて押出成型し、前記ポリプロピレン層の内面側をコロナ処理し、更に粘着剤A溶液の代わりに、粘着剤C溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、粘着剤層付きのガラス用保護シートを得た。
【0152】
[実施例7]
外面層/中間層/内面層=ポリプロピレン層/ポリエチレン層/ポリプロピレン層3層フィルムの代わりに、厚さ60μm、内面層及び外面層の平均表面粗さRaが0.16μm、内部ヘイズが2.7%のポリプロピレン層単層のガラス用保護シートを得た。なお、前記ポリプロピレン層は、ポリプロピレンランダムコポリマー(日本ポリプロ製、ノバテックEG−7F、Tm:149℃)95量部、ポリプロピレンランダムコポリマー(日本ポリプロ製、タフマーXM、Tm:75℃)5重量部、アンチブロッキング剤として二酸化ケイ素(SiO、富士デビソン製)2重量部を、Tダイ法にて押出成型し、更に2軸延伸にて、前記ポリプロピレン層単層のガラス用保護シート(支持体)とした。
【0153】
[実施例8]
厚さ100μm、表面粗さRaが0.10μm、内部ヘイズが0.2%のポリカーボネート(PC)フィルム(旭硝子製、レキサンフィルム8010、Tm:250℃)をガラス用保護シート(支持体)として使用した。
【0154】
[実施例9]
厚さ100μm、表面粗さRaが0.13μm、内部ヘイズが0.1%のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステル製、ダイアホイル、Tm:225℃)をガラス用保護シート(支持体)として使用した。
【0155】
[比較例1]
高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製、ノバテック HF560、Tm:134℃)をTダイ法にて押出成型し、厚さ60μm、表面粗さRaが0.27μm、内部ヘイズが3.2%のフィルムを、ガラス用保護シート(支持体)として使用した。
【0156】
[比較例2]
ポリ塩化ビニル(PVC)コンパウンド(重合度:1050)100重量部に対して、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)30重量部を、カレンダー法(160℃)にて混練して、厚さ200μmの軟質PVCフィルムをガラス用保護シート(支持体)として使用した。
【0157】
【表1】

【0158】
前記表1の結果より、実施例においては、写像鮮明性や内部ヘイズが所望の範囲に含まれるだけでなく、引張弾性率、曲げ強度、風剥がれ性、剥がれ速度、接着力が所望の範囲に含まれ、作業性、接着信頼性、視認性、透明性、及び、耐衝撃性に優れることが明らかとなった。
【0159】
これに対して、比較例1では、内部ヘイズが所望の範囲に含まれないため、写像鮮明性に劣る結果となり、また、比較例2においては、表面粗さの影響から、写像鮮明性が劣る結果となり、視認性や透明性等の点において、不十分であることが確認された。
【0160】
以上により、本発明のガラス用保護シートは、接着信頼性、視認性、透明性、及び、耐衝撃性に優れたものとなることが明らかとなった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
写像鮮明性が、70%以上であり、
JIS K7136に基づく内部ヘイズが、3.0%以下であることを特徴とするガラス用保護シート。
【請求項2】
JIS B0601に基づくガラスへの非貼付面の表面粗さ(Ra)が、0.35μm以下、表面粗さ(Sm)が、40nm/nm以下であることを特徴とする請求項1に記載のガラス用保護シート。
【請求項3】
JIS K7127に基づく引張弾性率が、50MPa〜3500MPaであることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス用保護シート。
【請求項4】
少なくとも片面に粘着剤層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラス用保護シート。
【請求項5】
風剥がれ試験において、剥がれ距離が、20秒間で、0.5〜60mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラス用保護シート。
【請求項6】
定荷重剥離試験における剥がれ速度が、500mm/min以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガラス用保護シート。
【請求項7】
少なくとも片面に粘着剤層を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガラス用保護シート。




【公開番号】特開2012−158715(P2012−158715A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20959(P2011−20959)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】