説明

ガラス繊維ストランドの巻き取り装置および巻き取り方法

【課題】複数本のストランドを巻き取りパッケージとする際、巻き取る前に互いにストランドが接触し合体することを抑制するより簡便なストランドの巻き取り装置および巻き取り方法を提供する。
【解決手段】ガラス繊維フィラメント1にアプリケーターロール3で集束剤を塗布したのち、集束シュー4により分割集束して複数本のストランド5とし、回転するバタフライ6のワイヤー部位7に接触させつつ進行方向を所定の周期で変えコレット8に巻取る際、集束シュー4を2段とし、上段集束シュー4Aは定位置に固定し、回転するバタフライ6のワイヤー部位7にストランド5が接触する際、回転軸方向に往復運動するバタフライ6のストローク動作と同期して、下段集束シュー4Bを連動可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維ストランドを巻き取ってパッケージを製造する際のガラス繊維ストランドの巻き取り装置および巻き取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パッケージは、ガラス溶融窯下のブッシングノズルから突出した多数のガラス繊維フィラメントにアプリケーターで集束剤を塗布したのち、集束シューにより所定本数ずつ分割集束して複数本のガラス繊維ストランド(以下、単にストランドと記載する。)に分糸し、この複数本のストランドを、当該集束シューの下方に設けられたトラバース治具としての回転するバタフライのワイヤー部位に接触させつつ進行方向を所定の周期で変え、回転するコレットに巻き取った後、コレットより抜き取って製造する。
【0003】
複数本のストランドをコレットに巻き取る際、コレットに対し均一となるよう巻き取るために、集束シューの下方に設けられたトラバース治具としての回転するバタフライのワイヤー部位に接触させつつ、ストランドの進行方向を所定の周期で変えることが行われる。トラバース治具とは、ストランドをコレットに巻き取る際、所定の周期でストランドの巻き位置がコレット上を横断するように往復トラバースさせるための治具である。通常、回転軸にワイヤーを固定した真鍮製のバタフライと呼ばれる治具が用いられ、バタフライの回転軸がコレットの回転軸と平行になるバタフライを往復運動させるストローク動作により、ストランドをコレットに綾掛け状態に巻き取り、パッケージとなす。
【0004】
通常、これらパッケージは一旦解かれ、解かれたストランドを巻き取り機で巻き取り、円筒状のロービングとする。ロービングには、200kg以上の重量があるジャンボロービング、または20kg程度の小巻ロービングがあり、ロービングの状態で出荷搬送され、ガラス繊維強化プラスチック(以下、GFRPと略する)成型メーカーでバスタブや浄化層等のGFRP製品の原料とされる。一般的に、GFRPはガラス繊維を不飽和ポリエステル樹脂で固めて成型したもので強度に優れる。特に、ジャンボロービングは、ロービングとする際に巻き取り作業が効率よく、ロービング同士の繋ぎ目が少なく、得られるGFRP製品の品質が良い。
【0005】
複数本のストランドをコレットに巻き取る際の巻取り速度が高速化され、また、ストランドの分糸本数が多くなると、定位置に固定された集束シューから、ワイヤー部位に至るまでの間で分糸されたストランド同士が接触して合体し、太さむらや巻きむらが発生する不具合がある。
【0006】
特許文献1には、ブッシングのノズルから紡出され、アプリケーターローラでサイジング剤が塗布されたガラスフィラメントを定位置に固定された集束シューにより所定本数ずつ分割集束して複数本のストランドに分糸し、この複数本のストランドを該集束シューの下方に設置されたワイヤートラバース装置を介して巻取り機のコレット上にそれぞれ綾掛けしながら巻き取ってパッケージを製造する装置において、集束シューとワイヤートラバース装置との間に昇降装置を固設し、この昇降装置にプレトラバース装置を、正規位置(下端)と退避位置(上端)との間で昇降可能に装着すると共に、このプレトラバース装置の一部とワイヤートラバース装置の一部とに、プレトラバース装置の正規位置への復帰によりワイヤートラバース装置の一部と係合して同期トラバース運動を可能とし、正規位置から退避位置への移動により、ワイヤートラバース装置の一部から離脱する係合手段を設置したことを特徴とするガラス繊維紡糸トラバース装置が開示される。
【0007】
特許文献1のトラバース装置によって、プレトラバース装置のトラバース方向への可動部分を軽量小型化し、既設設備への設置を容易化すると共に、パッケージの生産を安定して実施し得るガラス繊維紡糸トラバース装置を提供されたとされる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、正規位置(下端)と退避位置(上端)の間を昇降するプレトラバ−ス装置およびワイヤートラバース装置の一部から離脱する係合手段が必要であり、構造が複雑である。
【特許文献1】特開平8−301519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
複数本のストランドを巻き取りパッケージとする際、巻き取る前にストランドが接触し合体すると、解いた際のストランドに所定の径より太いものが発生し、ストランドの太さにばらつきを生じる。太さにばらつきを生じたストランドを用いたGFRP製品の強度が低下するという問題があった。
【0010】
GFRP製品の製造において、太さにバラツキの生じたストランドを用いると、母材樹脂とストランドの接触面積が小さくなり、GFRP製品の強度が低下する。
【0011】
ストランドの太さのばらつきは、ガラス溶融窯下のブッシングノズルから突出した多数のガラス繊維フィラメントにアプリケーターで集束剤を塗布したのち、集束シューにより所定本数ずつ分割集束して複数本のストランドに分糸し、この複数本のストランドを当該集束シューの下方に設けられたトラバース治具である回転するバタフライのワイヤー部位に接触させつつ進行方向を所定の周期で変え、回転するコレットに巻取り、パッケージを製造する際、ストランド同士が接触し合体することによって起こる。
【0012】
本発明は、複数本のストランドを巻き取りパッケージとする際、巻き取る前に互いにストランドが接触し合体することを抑制するより簡便なストランドの巻き取り装置および巻き取り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
パッケージの製造において、集束シューで4本のストランドに分割し、トラバース治具である回転するバタフライのワイヤー部位に接触させつつ進行方向を所定の周期で変え、ストランドを綾掛け状態に回転するコレットに巻き取る際、4本のストランドが接触することなく巻き取られることが理想である。しかしながら、分割後のストランドが接触し合体して、3本になったり、2本になったりすることで、ストランドの太さにバラツキが生じる。このことをスプリット率として定義すると、4本に分かれている場合は100%であり、合体し3本になった場合は75%、合体し2本になった場合は50%である。
【0014】
パッケージの製造において、バタフライの回転速度を変えることで、スプリット率が変化し、回転数を速めるほどにスプリット率は低下する。バタフライのワイヤー部位にストランドが接触する際、バタフライの中央部に常にストランド同士が離れた状態で接触することが理想であるが、バタフライの回転が速く、ストランドの動きも速いとストランドはバタフライの中央位置から外れ、互いに接触し合体する。
【0015】
ストランドが互いに接触し合体することを抑制するには、集束シューを動かして、ストランドが離れた状態で、バタフライの中央位置に常に接触するようにすればよい。しかしながら、集束シューを動かすと、多数のガラス繊維フィラメントにアプリケーターで集束剤を塗布したのち、集束シューにより所定本数ずつ分割集束して複数本のストランドに分糸する際、アプリケーター上をガラス繊維フィラメントが動き集束させにくく、ガラス繊維フィラメントの破断が発生する。
【0016】
よって、本発明において、集束シューを2段とし、上段集束シューの下方に下段集束シューを設け、上段集束シューは定位置に固定し、下段集束シューは、ストランドが互いに離れた状態で、回転するバタフライの中央のワイヤー部位に常に接触するように、下段集束シューをバタフライのストローク動作と同期して連動可能とした。
【0017】
このように、ストランドが離れた状態でバタフライの中央のワイヤー部位に常に接触するように、バタフライの回転軸の往復運動と同期して下段集束シューを連動させることが好ましい。
【0018】
即ち、本発明は、ガラス溶融窯下のブッシングノズルから突出した多数のガラス繊維フィラメントにアプリケーターで集束剤を塗布したのち、集束シューにより所定本数ずつ分割集束して複数本のストランドとし、この複数本のストランドを当該集束シューの下方に設けられたトラバース治具である回転するバタフライのワイヤー部位に接触させつつ進行方向を所定の周期で変え、回転するコレットに巻取り、パッケージを製造するストランドの巻き取り装置において、集束シューを2段とし、上段集束シューの下方に下段集束シューを設け、上段集束シューは定位置に固定し、回転するバタフライのワイヤー部位にストランドが接触する際、バタフライの回転軸方向に往復運動させるバタフライのストローク動作と同期して、下段集束シューを連動可能としたことを特徴とするストランドの巻き取り装置である。
【0019】
また、この際、ストランドが離れた状態でバタフライの中央のワイヤー部位に常に接触するように、バタフライの中央位置と下段シューの中央位置が常に一致するように連動させることが好ましい。
【0020】
さらに、本発明は、バタフライの中央位置と下段シューの中央位置が常に一致するように連動可能としたことを特徴とする上記のストランドの巻き取り装置である。
【0021】
また、本発明は、ガラス溶融窯下のブッシングノズルから突出した多数のガラス繊維フィラメントにアプリケーターで集束剤を塗布したのち、集束シューにより所定本数ずつ分割集束して複数本のガラス繊維ストランドとし、この複数本のストランドを当該集束シューの下方に設けられたトラバース治具である回転するバタフライのワイヤー部位に接触させつつ進行方向を所定の周期で変え、回転するコレットに巻取り、パッケージを製造するストランドの巻き取り方法において、集束シューを2段とし、上段集束シューの下方に下段集束シューを設け、上段集束シューは定位置に固定し、回転するバタフライのワイヤー部位にストランドが接触する際、バタフライを回転軸方向に往復運動させるバタフライのストローク動作と同期して、下段集束シューを連動させ、回転するバタフライのワイヤー部位にガラス繊維ストランドを互いに離れた状態で接触させつつコレットに巻き取ることを特徴とするガラス繊維ストランドの巻き取り方法である。
【0022】
また、本発明は、バタフライの中央のワイヤー部位に常にストランドが離れた状態接触するように、バタフライの中央位置と下段シューの中央位置が常に一致するように連動させることを特徴とする上記のガラス繊維ストランドの巻き取り方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、複数本のストランドを巻き取りパッケージとする際、巻き取る前にストランドが接触し合体することを抑制し高いスプリット率が得られるストランドの巻き取り装置および巻き取り方法が提供された。
【0024】
また、本発明のガラス繊維ストランドの巻き取り装置および巻き取り方法は、集束シューを2段とし、下段集束シューをトラバース治具であるバタフライのストローク動作に連動させるのみなので構造が簡単である。また、従来の集束シューが1個のガラス繊維ストランドの巻き取り装置を改造することで実施が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のストランドの巻き取り装置および巻き取り方法について、図を用いて説明する。
【0026】
図1は、パッケージの製造工程の概略側面図である。
【0027】
図1に示すように、多数本のガラス繊維フィラメント1を、図示しないガラス溶融窯下部のブッシング2下部の多数のノズルから吐出させ、アプリケーターとしてのアプリケーターロール3により集束剤を塗布した後、集束シュー4にて集束させ、複数本のストランド5にした後、トラバース治具としての回転するバタフライ6のワイヤー部位7に接触させつつ、バタフライ6をストローク動作させ、ストランド5の進行方向を所定の周期で変え、ストランド5をコレット8に対し往復トラバースするようにして、コレット8に綾掛け状態で巻きとった後、コレット8から抜き取ってパッケージ9とする。
【0028】
ストランド5をコレット8に巻き取る際に、バタフライ6がないと同じ場所に巻くこととなる。また、ストランド5をコレット8に対し往復トラバースさせてコレット8に綾掛け状態で巻きとり、パッケージとするためには、バタフライ6のストローク動作が必要である。バタフライ6を回転軸方向にストローク動作させることで、ストランド5をコレット8に綾掛け状態に巻き取りやすく、所望の形状のパッケージが得られる。
【0029】
図2は従来のストランドの巻き取り装置の斜視図である。
【0030】
図2に示すように、従来のストランドの巻き取り装置においては、、ブッシング2の下部のノズルから吐出したガラス繊維フィラメント1は、アプリケーターロール3で集束剤を塗布した後、所定の位置に固定された集束シュー4により、複数本のストランド5に分割集束させ、トラバース治具としての回転およびストローク動作するバタフライ6のワイヤー部位7に接触させつつ、進行方向を所定の周期で変え、ストランド5をコレット8に対し往復トラバースさせてコレット8に綾掛け状態で巻き取っていた。
【0031】
この際、バタフライ6の回転が遅く回転数が少ないほどスプリット率は上がる。バタフライ6の回転が遅い場合、ストランド5の動きも遅いので、ストランド5同士がバタフライ6のワイヤー部位7上で分かれ接触しない。バタフライ6の回転が速い場合、ストランド5の動きも速いので、ストランド5同士がワイヤー部位7上で接触し合体する。また、バタフライ6をコレット8から離すとスプリット率は上がる。
【0032】
高速度撮影カメラでストランド5の動きを観察すると、コレット8にストランド5を巻き取る際、常にストランド5には、ワイヤー部位7上でバタフライ6の中央部に向かって戻ろうとし、中央部に戻ろうとする際は、ストランド5は離れているが、中央部から離れる際に接触し合体することがわかった。このことは、集束シュー4の中央位置とバタフライ6の中央位置がずれているタイミングで起こる。
【0033】
図3は、本発明のストランドの巻き取り装置の斜視図である。
【0034】
図3に示すように、本発明のストランドの巻き取り装置において、集束シューを2段とし、上段集束シュー4Aの下方に下段集束シュー4Bを設け、上段集束シュー4Aは定位置に固定し、下段集束シュー4Bは可動可能とした。回転するバタフライ6の中央のワイヤー部位7に、ストランド5が常に離れた状態で接触するように、下段集束シュー4Bとのワイヤー7の位置関係を、下段集束シュー4Bより繰り出されるストランド5の角度が大きくぶれることなきよう、バタフライ6のストローク動作と同期して下段シュー4Bを連動させる。即ち、バタフライ6のストローク動作と同期するように、下段シュー4Bを移動させる。
【0035】
尚、図2および図3に示すように、コレット8は、巻取り機10に180度づつ切換え旋回可能に支持されたタレットヘッド11に2個取り付けられ、それらはタレットヘッド11の旋回中心から対称な位置に回転可能に支持され、切換え位置の一方が巻取り位置とされ、他方が待機位置とされる。
【0036】
即ち、本発明は、ガラス溶融窯下のブッシングノズル2から突出した多数のガラス繊維フィラメント1にアプリケーターロール3で集束剤を塗布したのち、集束シュー4により所定本数ずつ分割集束して複数本のストランド5とし、この複数本のストランド5を当該集束シュー4の下方に設けられたトラバース治具である回転するバタフライ6のワイヤー部位7に接触させつつ進行方向を所定の周期で変え、回転するコレット8に巻取り、パッケージ9を製造するストランド5の巻き取り装置において、集束シュー4を2段とし、上段集束シュー4Aの下方に下段集束シュー4Bを設け、上段集束シュー4Aは定位置に固定し、回転するバタフライ6のワイヤー部位7にストランド5が接触する際、バタフライ6をその回転軸方向に往復運動させるバタフライ6のストローク動作と同期して、下段集束シュー4Bを連動可能としたことを特徴とするガラス繊維ストランドの巻き取り装置である。
【0037】
また、本発明は、ガラス溶融窯下のブッシング2のノズルから突出した多数のガラス繊維フィラメント1にアプリケーターロール3で集束剤を塗布したのち、集束シュー4により所定本数ずつ分割集束して複数本のガラス繊維ストランド5とし、この複数本のガラス繊維ストランド5を当該集束シュー4の下方に設けられたトラバース治具である回転するバタフライ6のワイヤー部位7に接触させつつ進行方向を所定の周期で変え、回転するコレット8に巻取り、パッケージ9を製造するガラス繊維ストランド5の巻き取り方法において、集束シュー4を2段とし、上段集束シュー4Aの下方に下段集束シュー4Bを設け、上段集束シュー4Aは定位置に固定し、回転するバタフライ6のワイヤー部位7にストランド5が接触する際、バタフライ6をその回転軸方向に往復運動させるバタフライ6のストローク動作と同期して、下段集束シュー4を連動させ、回転するバタフライ6のワイヤー部位7にストランド5を互いに離れた状態で接触させつつコレット8に巻き取ることを特徴とするガラス繊維ストランドの巻き取り方法である。
【0038】
即ち、本発明において、下段集束シュー4Bをバタフライ6のストローク動作と同期して連動可能とした。
【0039】
図4の(A)は、従来のストランドの巻き取り方法を模式的に示した図であり、(B)は本発明のストランドの巻き取り方法を模式的に示した図である。
【0040】
図4の(A)に示すように、集束シュー4が固定され、バタフライがストローク動作する状態では、前述のように、ワイヤー7に接触した際に、常にストランド5には、バタフライ6の中央に向かって戻ろうとし、中央部に戻ろうとする際は、ストランド5は離れているが、中央から離れる際に接触し合体することがわかった。このことは、集束シュー4の位置とバタフライ6の位置がずれているタイミングでおこる。
【0041】
図4の(B)に示すように、バタフライ6の中央12のワイヤー部位7に常にストランド5が離れた状態で接触するには、バタフライ6のストローク動作と下段集束シュー4Bの運動を同期させることが必要である。
【0042】
この際、バタフライ6の中央位置12のワイヤー部位7に常にストランド5が離れた状態接触するためには、バタフライ6の中央位置12と下段シュー4Bの中央位置13が常に一致するように連動させる。
【0043】
図4に示すように、バタフライ6の中央位置12とはワイヤー部位7の中央位置12でありシュー4の中央位置13とはシュー4の集束部位の中央位置13である。
【実施例】
【0044】
実施例1
最初に、本発明のストランド5の巻き取り装置を用いて、パッケージを作製しスプリット率を確認した。
【0045】
図3に示す本発明のストランド5の巻き取り装置を用いて、図示しないガラス溶融窯下部のブッシング2下部のノズルから、径14μm、800本のガラス繊維フィラメント1を引き出した。次いで、図4に模式的に示したように、アプリケーターロール3で集束剤を塗布した後、上段集束シュー4Aにて集束させ、複数本のストランド5にした後、下段集束シュー4Bを通し、バタフライ6のストローク動作に同期させて、下段集束シュー4Bを、バタフライ6の中央12と下段シュー4Bの中央13が常に一致するように連動させた。バタフライ6の回転数は600rpmである。
【0046】
このようにして、トラバース治具としての回転するバタフライ6のワイヤー部位7に接触させつつ、ストランド5の進行方向を所定の周期で変え、ストランド5をコレット8に対し往復トラバースするようにして、コレット8に綾掛け状態で巻きとった後、コレット8から抜き取ってパッケージ9とした。
【0047】
当該パーケージ9を解き、ストランド5のスプリット率を検査したところ、スプリット率90%以上で、ストランド5の合体は非常に少ないレベルであった。
比較例1
次いで、従来のストランド5の巻き取り装置を用いて、パッケージ9を作製しスプリット率を測定した。
【0048】
図2に示す従来のストランド5の巻き取り装置を用いて、図示しないガラス溶融窯下部のブッシング2下部のノズルから、径14μm、800本のガラス繊維フィラメント1を引き出した。次いで、アプリケーターロール3で集束剤を塗布した後、集束シュー4にて集束させ、複数本のストランド5にし、実施例1と同様に回転およびストローク動作するバタフライ6のワイヤー部位7に接触させつつ、ストランド5の進行方向を所定の周期で変え、ストランド5をコレット8に対し往復トラバースするようにして、コレット8に綾掛け状態で巻きとった後、コレット8から抜き取ってパッケージ9とした。
【0049】
当該パーケージ9を解き、ストランド5のスプリット率を検査したところ、スプリット率60%程度で、ストランド5の合体が見られ、満足のいくレベルではなかった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】パッケージの製造工程の概略側面図である。
【図2】従来のストランドの巻き取り装置の斜視図である。
【図3】本発明のストランドの巻き取り装置の斜視図である。
【図4】(A)は、従来のストランドの巻き取り方法を模式的に示した図であり、(B)は本発明のストランドの巻き取り方法を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0051】
1 ガラス繊維フィラメント
2 ブッシング
3 アプリケーターロール
4 集束シュー
4A 上段集束シュー
4B 下段集束シュー
5 ストランド
6 バタフライ
7 ワイヤー部位
8 コレット
9 パッケージ
10 巻き取り機
11 タレットヘッド
12 (バタフライの)中央位置
13 (集束シューの)中央位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス溶融窯下のブッシングノズルから突出した多数のガラス繊維フィラメントにアプリケーターで集束剤を塗布したのち、集束シューにより所定本数ずつ分割集束して複数本のガラス繊維ストランドとし、この複数本のガラス繊維ストランドを当該集束シューの下方に設けられたトラバース治具である回転するバタフライのワイヤー部位に接触させつつ進行方向を所定の周期で変え、回転するコレットに巻取り、パッケージを製造するガラス繊維ストランドの巻き取り装置において、
集束シューを2段とし、上段集束シューの下方に下段集束シューを設け、上段集束シューは定位置に固定し、回転するバタフライのワイヤー部位にガラス繊維ストランドが接触する際、バタフライを回転軸方向に往復運動させるバタフライのストローク動作と同期して、下段集束シューを連動可能としたことを特徴とするガラス繊維ストランドの巻き取り装置。
【請求項2】
バタフライの中央位置と下段シューの中央位置が常に一致するように連動可能としたことを特徴とする請求項1に記載のストランドの巻き取り装置。
【請求項3】
ガラス溶融窯下のブッシングノズルから突出した多数のガラス繊維フィラメントにアプリケーターで集束剤を塗布したのち、集束シューにより所定本数ずつ分割集束して複数本のガラス繊維ストランドとし、この複数本のガラス繊維ストランドを当該集束シューの下方に設けられたトラバース治具である回転するバタフライのワイヤー部位に接触させつつ進行方向を所定の周期で変え、回転するコレットに巻取り、パッケージを製造するガラス繊維ストランドの巻き取り方法において、
集束シューを2段とし、上段集束シューの下方に下段集束シューを設け、上段集束シューは定位置に固定し、回転するバタフライのワイヤー部位にガラス繊維ストランドが接触する際、バタフライを回転軸方向に往復運動させるバタフライのストローク動作と同期して、下段集束シューを連動させ、回転するバタフライのワイヤー部位にガラス繊維ストランドを互いに離れた状態で接触させつつコレットに巻き取ることを特徴とするガラス繊維ストランドの巻き取り方法。
【請求項4】
バタフライの中央のワイヤー部位に常にストランドが離れた状態で接触するように、バタフライの中央位置と下段シューの中央位置が常に一致するように連動させることを特徴とする請求項3に記載のガラス繊維ストランドの巻き取り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−208813(P2010−208813A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57450(P2009−57450)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】