説明

ガラス製品の製造装置

【課題】小ロット多品種のガラス製品をエネルギ効率良く且つ短時間で製造することができる装置を提供する。
【解決手段】ガラス溶解炉の分割された上部炉体を一つ又は二つ以上備える上部機構と、該上部炉体と当接してガラス溶解炉を形成することとなる分割された下部炉体、該下部炉体に接続された温度調整槽及び該温度調整槽の排出口に接続された成形装置を含む組を一組又は二組以上備える下部機構とで構成し、該上部機構及び該下部機構の一方又は双方を移動可能に装備して、上部機構の少なくとも一つの上部炉体を下部機構の少なくとも一つの組の下部炉体に当接させてガラス溶解炉を形成した状態にて、該上部炉体の天井壁の酸素バーナを下向きで燃焼させると共にガラス原料及び副原料を気体搬送によりその火炎中に下向きで供給して溶解し、溶解したガラス溶解物を直下の該下部炉体の炉底部に一時的に貯留して、そのまま温度調整槽へと流出させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス瓶、ガラスコップ、板ガラス等のガラス製品の製造装置に関し、更に詳しくは所謂小ロット多品種のガラス製品をエネルギ効率良く且つ短時間で製造することができるガラス製品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス製品の製造装置として、ガラス溶解炉と、このガラス溶解炉に接続された温度調整槽と、この温度調整槽の排出口に必要な場合には切断機等を介して接続された成形装置とを備えるものが使用されている。そしてかかるガラス製品の製造装置におけるガラス溶解炉としては、炉内上流部に溶解ゾーンが形成され、また炉内中流部から下流部にかけて清澄ゾーン(ガス抜きゾーン)が形成された相当に長大なものが使用されており、かかるガラス溶解炉はその最上流部から炉内に投入したガラス原料や副原料(以下これらをガラス原料等という)を、該ガラス溶解炉の側壁に取付けたバーナで溶解するようになっている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0003】
しかし、前記のようなガラス溶解炉を備える従来のガラス製品の製造装置には、ガラス溶解炉の炉内に投入したガラス原料等をバーナの燃焼による炉内輻射を利用して溶解するようになっているため、1)バーナとして酸素バーナを燃焼させる場合であっても、エネルギ効率が悪い、2)炉内に投入するガラス原料等には融点の異なる様々なものが含まれており、これらのなかで融点の低いものは溶解が早いが、融点の高いものは溶解が遅いので、全体としての均質溶解が難しく、均質溶解にかかる時間が長い、3)ガラス溶解炉の炉内に生成するガラス溶解物の上部に未溶解のガラス原料等の低温物が存在するため、ガラス溶解物中に発生するガスが抜け難く、ガス抜きにかかる時間が長い、という問題があり、またかかる問題に起因し、結果としてガラス溶解炉が長大なものとなって、炉内のガラス溶解物の入れ替えが誠に厄介であるため、4)小ロット多品種のガラス製品の製造に著しく不向きという問題がある。
【特許文献1】特開平11−11953号公報
【特許文献2】特開平11−11954号公報
【特許文献3】特開2005−15299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、小ロット多品種のガラス製品をエネルギ効率良く且つ短時間で製造することができる装置を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決する本発明は、ガラス溶解炉の分割された上部炉体を一つ又は二つ以上備える上部機構と、該上部炉体と当接してガラス溶解炉を形成することとなる分割された下部炉体、該下部炉体に接続された温度調整槽及び該温度調整槽の排出口に接続された成形装置を含む組を一組又は二組以上備える下部機構とから成り、該上部機構及び該下部機構の一方又は双方が移動可能に装備されていて、該上部炉体には天井壁に酸素バーナが下向きで取付けられており、該酸素バーナには酸素濃度90容量%以上の支燃ガスが供給され、またガラス原料等が気体搬送により供給されるようになっていて、上部機構の少なくとも一つの上部炉体を下部機構の少なくとも一つの組の下部炉体に当接させてガラス溶解炉を形成した状態にて、酸素バーナを下向きで燃焼させると共にガラス原料等をその火炎中に下向きで供給して溶解し、溶解したガラス溶解物を直下の下部炉体に一時的に貯留して、そのまま温度調整槽へと流出させるようにして成ることを特徴とするガラス製品の製造装置に係る。
【0006】
本発明に係るガラス製品の製造装置は、上部機構と下部機構とから成っている。上部機構は、ガラス溶解炉の分割された上部炉体を一つ又は二つ以上備えている。下部機構は、前記の上部炉体と当接してガラス溶解炉を形成することとなる分割された下部炉体、該下部炉体に接続された温度調整槽及び該温度調整槽の排出口に接続された成形装置を含む組を一組又は二組以上備えている。かかる上部機構及び下部機構は、一方が他方に対して、又は双方が互いに移動可能に装備されている。この場合の移動手段としては、上部機構及び/又は下部機構を、レール上を自走する台車上に支持する手段、レール上を牽引走行するクレーンで吊下げ支持する手段等、それ自体は公知の手段を採用できる。
【0007】
本発明に係るガラス製品の製造装置において、下部機構の温度調整槽及び成形装置の構成それ自体は、これらが組として移動可能に装備されているか否かを除き、従来のガラス製品の製造装置と同様になっているので、以下は主に、上部炉体と下部炉体とに分割されたガラス溶解炉について説明する。上部機構におけるガラス溶解炉の分割された上部炉体には天井壁に酸素バーナが下向きで取付けられている。
【0008】
上部炉体の酸素バーナには酸素濃度90容量%以上の支燃ガスが供給され、またガラス原料等が気体搬送により供給されるようになっていて、該酸素バーナを下向きで燃焼させるときにガラス原料等をその火炎中に下向きで供給して溶解するようになっている。かかる酸素バーナそれ自体としては、公知のものを転用でき、例えば特開平8−312938号公報、特開2000−55340号公報及び特開2000−103656号公報等に記載されているような酸素バーナを転用できる。これらの酸素バーナは、先端部におけるノズル構造が、中心部から外周部に向かい、例えば燃料供給ノズル、一次支燃ガス供給ノズル、被処理物(ガラス原料等)供給ノズル及び二次支燃ガス供給ノズルのように、複数の供給ノズルが同心円状に配列されたものからなっている。
【0009】
上部機構及び/又は下部機構を移動し、上部機構の少なくとも一つの上部炉体を下部機構の少なくとも一つの組の下部炉体に当接させて、双方でガラス溶解炉を形成した状態にて、該上部炉体の酸素バーナを下向きで燃焼させると共にガラス原料等をその火炎中に下向きで供給して溶解し、溶解したガラス溶解物を該下部炉体の炉底部に一時的に貯留して、そのまま例えばスロートを介して該下部炉体と同じ組の温度調整槽へと流出させる。
【0010】
前記のように酸素バーナをガラス溶解炉の分割された炉体上部の天井壁に下向きで取付け、これに酸素濃度90容量%以上の支燃ガスを供給して下向きで燃焼させると、火炎それ自体の温度が高くなるだけでなく、その火炎は直下に位置する下部炉体の炉底部に一時的に貯留されるガラス溶解物の湯面をも加熱する。かかる火炎中にガラス原料等を下向きで供給すると、該ガラス原料等は極めて短時間で溶解する。しかもこのとき、下向きで燃焼する高温の火炎中に下向きで供給したガラス原料等の水分は一気に蒸発し、炭酸化合物の形態をとるものは分解してガスを放出するので、炉底部におけるガラス溶解物中でのガス発生量は著しく低くなる。その上、かかるガラス溶解物は一時的ではあっても炉底部に貯留され、ここで均質化とガス抜きが促されるので、従来のガラス溶解炉のように清澄ゾーン(ガス抜きゾーン)を経由するまでもなく、そのまま温度調整槽へ流出させても、ガラス製品の原料に相当するものとして何ら支障はない。求められるガラス製品の物性や形状に応じて、最も適切な上部炉体を選び、また下部炉体、温度調整槽及び成形装置が含まれる組を選んで、該上部炉体を該下部炉体に当接させて前記のようなガラス溶解炉を形成することにより、小ロット多品種のガラス製品をエネルギ効率良く且つ短時間で製造することができるのである。
【0011】
本発明に係るガラス製品の製造装置では、装置全体の構成上、上部機構が上部炉体を一つ備え、移動可能に装備されていて、下部機構が下部炉体、温度調整槽及び成形装置を含む組を二組以上備え、固定的に設置されたものが好ましく、また上部機構が上部炉体を一つ備え、固定的に設置されていて、下部機構が下部炉体、温度調整槽及び成形装置を含む組を二組以上備え、移動可能に装備されたものが好ましい。いずれの場合も、上部機構や下部機構の移動は、直線状であってもよいし、リング状であってもよい。
【0012】
更に上部炉体の天井壁に下向きで取付けた酸素バーナには昇降手段を設け、該昇降手段の作動によりそれらの先端部と下部炉体の炉底部に一時的に貯留されたガラス溶解物の湯面との間の距離を可変となるようにするのが好ましい。酸素バーナの燃焼量を調節するだけでなく、これらのバーナの先端部とガラス溶解物の湯面との間の距離をも変えることによって、ガラス溶解物、なかでもその湯面の加熱をより自在に制御できるようにするのである。酸素バーナの燃焼量を調節すると、それらの火炎長さが変わり、火炎の先端部とガラス溶解物の湯面との間の距離が変わることが多いが、この距離が適正でない場合は、かかる距離を前記の昇降手段により適正に制御できる。
【0013】
更にまた下部炉体の炉底部には小プールを形成し、生成したガラス溶解物を該小プールに一時的に貯留して、該小プールからこれを形成する堰をオーバーフローすることにより温度調整槽へと流出させるようにするのが好ましい。生成したガラス溶解物をかかる小プールに一時的に貯留することにより、ガラス溶解物の均質化とガス抜きを更に促すことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るガラス製品の製造装置によると、小ロット多品種のガラス製品を、エネルギ効率良く且つ短時間で製造することができるという効果がある。
【実施例】
【0015】
図1は本発明に係るガラス製品の製造装置のうちでガラス瓶の製造装置を略示する全体平面図である。図1に略示したガラス瓶の製造装置は、上部機構11と下部機構51とから成っており、上部機構11はガラス溶解炉の分割された上部炉体21を一つ備えていて、下部機構51は上部炉体21と当接してガラス溶解炉を形成することとなる分割された下部炉体61〜64、下部炉体61〜64にスロートを介して接続された温度調整槽71〜74、温度調整槽71〜74の排出口に接続された切断機81〜84(但し図1では図示を省略、以下同じ)及び切断機81〜84に投入シュートを介して接続された成形装置91〜94を含む組を合計で四組備えている。
【0016】
上部機構11を構成する上部炉体21は、2本の平行するレール31,32上を自走する台車33にシリンダ機構34,35を介して支持されるようになっており、シリンダ機構34,35により持ち上げた状態で2本のレール31,32に沿い直線状に移動するようになっている。一方、下部機構51を構成する前記の各組は等間隔で横並びに設置されており、各組の下部炉体61〜64は2本のレール31,32に沿い直線状に移動する上部炉体21が直下に臨むこととなる位置に設置されている。図1の場合には、上部炉体21が下部炉体63を直下に臨む位置にて、シリンダ機構34,35を作動し、上部炉体21を下降させて、下部炉体63と当接させることにより、双方でガラス溶解炉を形成した状態を示している。図1の場合、上部炉体21を一つ備える上部機構11が移動可能に装備されており、下部炉体61〜64、温度調整槽71〜74、切断機81〜84及び成形装置91〜94を含む組を合計で四組備える下部機構51が固定的に設置されているのである。
【0017】
図2は図1のガラス瓶の製造装置を一部縦断面で拡大して略示する部分側面図である。前記したように上部炉体21を下降させて下部炉体63と当接させることによりガラス溶解炉が形成されており、かかるガラス溶解炉を形成する下部炉体63の下流側にスロート65を介して温度調整槽73が、また温度調整槽73の排出口に切断機83が、更に切断機83の下流側に投入シュートを介して成形装置93が接続されている。ガラス溶解炉を除く他の構成は従来のガラス瓶の製造装置とほぼ同様になっているが、図1や2に略示したガラス溶解炉は、横断面がほぼ正方形で、全体としてはやや縦長の、外観が直方体様を呈しており、それを構成する上部炉体21の天井壁に酸素バーナ22が下向きで取付けられていて、酸素バーナ22が直下に臨む下部炉体63の炉底部にガラス溶解物Aが一時的に貯留されるようになっている。酸素バーナ22はシリンダ機構23を介して上部炉体21の天井壁に取付けられており、昇降可能となっていて、その先端部とガラス溶解物Aの湯面との間の距離が可変となっている。
【0018】
酸素バーナ22は前記したような複数の供給ノズルが同心円状に配列されたものからなっている。かかる酸素バーナ22には吸着式酸素発生装置24から燃焼制御ユニット25を介し酸素濃度90容量%以上の支燃ガスが供給されるようになっており、また燃料タンク26から燃焼制御ユニット25を介し燃料ガスが供給されるようになっている。更に酸素バーナ22には粉粒状のガラス原料等が気体搬送で供給されるように気体搬送系41が接続されている。気体搬送系41の上流側にはドライヤ付きコンプレッサ42が接続されており、その途中にガラス原料等供給系43が接続されている。ガラス原料等供給系43は、ガラス原料等貯留用のホッパ44、ホッパ44に接続された定量切出装置45、定量切出装置45に接続された振動篩46、振動篩46に接続された定量供給装置47を備え、また振動篩46で篩分けられた粗大物を破砕して振動篩46の上流側に戻す破砕機48を備えている。ホッパ44、定量切出装置45、振動篩46及び定量供給装置47を経由し、また必要に応じ破砕機48をも経由してガラス原料等供給系43から気体搬送系41へ粉粒状のガラス原料等を定量供給しつつ、更に酸素バーナ22へと供給するようになっている。図2の場合には、ガラス溶解炉を形成する上部炉体21の天井壁に下向きで取付けた酸素バーナ22へ燃料ガス及び酸素濃度90容量%以上の支燃ガスを供給して下向きで燃焼させ、その火炎中に粉粒状のガラス原料等を下向きで供給して溶解するようになっている。
【0019】
図2の場合、前記のようにガラス原料等をガラス溶解炉を形成する上部炉体21の酸素バーナ22で溶解し、生成したガラス溶解物Aを該ガラス溶解炉を形成する下部炉体63の炉底部に一時的に貯留し、ここで均質化とガス抜きとを促した後、スロート65を介して温度調整槽73へと流出させるようになっている。そして温度調整槽73で温度調整したガラス溶解物を排出口を介して切断機83で1本分のガラス瓶量に切断した後、切断したものを投入シュートを介して成形装置93へと供して、ブロー成形することによりガラス瓶Bを製造するようになっている。
【0020】
求められるガラス瓶の物性に応じてホッパ44に貯留する粉粒状のガラス原料等の組成を変え、また求められるガラス瓶の大きさや形状に応じて下部機構51のなかから適切な成形装置等を含む組を選び、例えば図1で最も左側の組を選んだ場合にはこの組の下部炉体61上に上部炉体21を移動して双方を当接させることによりガラス溶解炉を形成し、以下は前記したことと同様にしてガラス瓶を製造する。
【0021】
図3は本発明に係るガラス製品の製造装置のうちで他のガラス瓶の製造装置を一部省略して略示する全体平面図である。ここでは説明の便宜上、図1と同様の構成部分については、図1と同じ符号にaを付記して示した。図3に略示したガラス瓶の製造装置も、上部機構11aと下部機構51aとから成っており、上部機構11aはガラス溶解炉の分割された上部炉体21aを一つ備えていて、下部機構51aは上部炉体21aと当接してガラス溶解炉を形成することとなる分割された下部炉体61a〜64a、下部炉体61a〜64aにスロートを介して接続された温度調整槽71a〜74a、温度調整槽71a〜74aの排出口に接続された切断機81a〜84a(但し図3では図示を省略、以下同じ)及び切断機81a〜84aに投入シュートを介して接続された成形装置91a〜94aを含む組を合計で四組備えている。
【0022】
上部機構11aを構成する上部炉体21aは、水平方向へは移動しないものの、図示しないシリンダ機構により昇降するようになっている。一方、下部機構51aを構成する前記の各組は等間隔の横並びで台車33a上に装備されており、台車33aは2本の平行するレール31a,32aに沿い直線状に移動するようになっている。図3の場合には、上部炉体21aが下部炉体63aを直下に臨む位置にて、図示しないシリンダ機構を作動し、上部炉体21aを下降させて、下部炉体63aと当接させることにより、双方でガラス溶解炉を形成した状態を示している。図3の場合、上部炉体21aを一つ備える上部機構11aが昇降を除き固定的に設置されており、下部炉体61a〜64a、温度調整槽71a〜74a、切断機81a〜84a及び成形装置91a〜94aを含む組を合計で四組備える下部機構51aが移動可能に装備されているのである。説明を省略するが、図3の場合もその他は図1や2の場合と同様になっている。
【0023】
図4は本発明に係るガラス製品の製造装置のうちで更に他のガラス瓶の製造装置を一部省略して略示する全体平面図である。ここでは説明の便宜上、図1と同様の構成部分については、図1と同じ符号にbを付記して示した。図4に略示したガラス瓶の製造装置は、上部機構11bと下部機構51bとから成っており、上部機構11bはガラス溶解炉の分割された上部炉体21bを一つ備えていて、下部機構51bは上部炉体21bと当接してガラス溶解炉を形成することとなる分割された下部炉体61b〜66b、下部炉体61b〜66bにスロートを介して接続された温度調整槽71b〜76b、温度調整槽71b〜76bの排出口に接続された切断機81b〜86b(但し図4では図示を省略、以下同じ)及び切断機81b〜86bに投入シュートを介して接続された成形装置91b〜96bを含む組を合計で六組備えている。
【0024】
上部機構11bを構成する上部炉体21bは、2本のリング状のレール31b,32b上を自走する共に図示しない台車上にシリンダ機構を介して支持されるようになっており、かかるシリンダ機構により持ち上げた状態で2本のレール31b,32bに沿いリング状に移動するようになっている。一方、下部機構51bを構成する前記の各組は等間隔で放射状に設置されており、各組の下部炉体61b〜66bは2本のレール31b,32bに沿いリング状に移動する上部炉体21bが直下に臨むこととなる位置に設置されている。図4の場合には、上部炉体21bが下部炉体63bを直下に臨む位置にて、図示しないシリンダ機構を作動し、上部炉体21bを下降させて、下部炉体63bと当接させることにより、双方でガラス溶解炉を形成した状態を示している。図4の場合、上部炉体21bを一つ備える上部機構11bが移動可能に装備されており、下部炉体61b〜66b、温度調整槽71b〜76b、切断機81b〜86b及び成形装置91b〜96bを含む組を合計で六組備える下部機構51bが固定的に設置されているのである。説明を省略するが、図4の場合もその他は図1や2の場合と同様になっている。
【0025】
図5は本発明に係るガラス製品のうちで更にまた他のガラス瓶の製造装置を一部縦断面で拡大して略示する部分側面図である。図5で図示及び説明を省略する他の構成は図1及び図2のガラス瓶の製造装置と同様になっており、図5は図2と対応しているが、ここでは説明の便宜上、図2と同様の構成部分については、図2と同じ符号にcを付記して示した。図5のガラス瓶の製造装置も、図2のガラス瓶の製造装置と同様、上部機構11cの上部炉体21cを下降させて下部機構51cの下部炉体63cと当接させることによりガラス溶解炉が形成されており、かかるガラス溶解炉を形成する下部炉体63cの下流側に温度調整槽73cが、また温度調整槽73cの排出口に切断機83cが接続されていて、更に切断機83cの下流側にいずれも図示しない投入シュートを介して成形装置が接続されている。上部炉体21cの天井壁には酸素バーナ22cが下向きで取付けられており、酸素バーナ22cが直下に臨む下部炉体63cの炉底部に小プール66が形成されていて、小プール66に生成するガラス溶解物Cが一時的に貯留されるようになっている。酸素バーナ22cはシリンダ機構23cを介して上部炉体21cの天井壁に取付けられており、昇降可能となっていて、その先端部と小プール66のガラス溶解物Cの湯面との間の距離が可変となっている。図5の場合、ガラス原料等をガラス溶解炉を形成する上部炉体21cの酸素バーナ22cで溶解し、生成したガラス溶解物Cを該ガラス溶解炉を形成する下部炉体63cの炉底部の小プール66に一時的に貯留し、ここで均質化とガス抜きとを更に一層促した後、小プール66を形成する堰67をオーバーフローして温度調整槽73cへと流出させるようになっている。そして温度調整槽73cで温度調整したガラス溶解物を排出口を介して切断機83cで1本分のガラス瓶量に切断した後、切断したものをいずれも図示しない投入シュートを介して成形装置へと供して、ブロー成形することによりガラス瓶を製造するようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るガラス製品の製造装置のうちでガラス瓶の製造装置を一部省略して略示する全体平面図。
【図2】図1のガラス瓶の製造装置を一部縦断面で拡大して略示する部分側面図。
【図3】本発明に係るガラス製品の製造装置のうちで他のガラス瓶の製造装置を一部省略して略示する全体平面図。
【図4】本発明に係るガラス製品の製造装置のうちで更に他のガラス瓶の製造装置を一部省略して略示する全体平面図。
【図5】本発明に係るガラス製品の製造装置のうちで更にまた他のガラス瓶の製造装置を一部縦断面で拡大して略示する部分側面図。
【符号の説明】
【0027】
11,11a,11b,11c 上部機構
21,21a,21b,21c 上部炉体
22,22c 酸素バーナ
31,32,31a,32a,31b,32b,31c,32c レール
33,33a,33c 台車
23,34,35,23c,34c,35c シリンダ機構
41 気体搬送系
43 ガラス原料等供給系
61〜64,61a〜64a,61b〜66b,63c 下部炉体
71〜74,71a〜74a,71b〜76b,73c 温度調整槽
91〜94,91a〜94a,91b〜96b 成形装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス溶解炉の分割された上部炉体を一つ又は二つ以上備える上部機構と、該上部炉体と当接してガラス溶解炉を形成することとなる分割された下部炉体、該下部炉体に接続された温度調整槽及び該温度調整槽の排出口に接続された成形装置を含む組を一組又は二組以上備える下部機構とから成り、該上部機構及び該下部機構の一方又は双方が移動可能に装備されていて、該上部炉体には天井壁に酸素バーナが下向きで取付けられており、該酸素バーナには酸素濃度90容量%以上の支燃ガスが供給され、またガラス原料及び副原料が気体搬送により供給されるようになっていて、上部機構の少なくとも一つの上部炉体を下部機構の少なくとも一つの組の下部炉体に当接させてガラス溶解炉を形成した状態にて、酸素バーナを下向きで燃焼させると共にガラス原料及び副原料をその火炎中に下向きで供給して溶解し、溶解したガラス溶解物を直下の下部炉体に一時的に貯留して、そのまま温度調整槽へと流出させるようにして成ることを特徴とするガラス製品の製造装置。
【請求項2】
上部機構が上部炉体を一つ備え、移動可能に装備されていて、下部機構が下部炉体、温度調整槽及び成形装置を含む組を二組以上備え、固定的に設置された請求項1記載のガラス製品の製造装置。
【請求項3】
上部機構が上部炉体を一つ備え、固定的に設置されていて、下部機構が下部炉体、温度調整槽及び成形装置を含む組を二組以上備え、移動可能に装備された請求項1記載のガラス製品の製造装置。
【請求項4】
上部炉体の酸素バーナに昇降手段が設けられており、該昇降手段の作動により該酸素バーナの先端部と下部炉体に一時的に貯留されたガラス溶解物の湯面との間の距離が可変となるようにした請求項1〜3のいずれか一つの項記載のガラス製品の製造装置。
【請求項5】
下部炉体の炉底部に小プールが形成されており、ガラス溶解物を該小プールに一時的に貯留して、該小プールからオーバーフローにより温度調整槽へと流出させるようにした請求項1〜4のいずれか一つの項記載のガラス製品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−290921(P2008−290921A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140131(P2007−140131)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】