説明

ガラス製品成形機

【課題】 テーブルの熱変形による成形型のレベル変動の問題を解消し、製品品質の向上を図ると共に、装置の適切な作動を確保する。
【解決手段】 ターンテーブル(1)の各成形型(9)が固定された台座部(2)を、それぞれテーブル本体(3)とは別体とし、かつ、上下動可能な状態でテーブル本体(3)に装着する。プレスステーションに(S3 )おいて、プランジャ(21)による押圧成形を行なう前に、当該ステーション(S3 )に位置する台座部(2)を下方から押し上げることにより、当該台座部(2)に固定された成形型(9)のレベルを矯正して一定に保持する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガラス製品を成形するための成形機に関する。
【0002】
【従来の技術】ガラス製品、例えばブラウン管用のパネルやファンネルを成形するための成形機として、間欠回転するターンテーブルの外周部に複数個の成形型を等間隔に配置し、各成形型をターンテーブルの間欠回転により、溶融ガラスの成形型への供給、プランジャによる押圧成形、成形品の取出しといった諸工程を含む複数のステーションに順送りする成形機が従来から用いられている。
【0003】図5は、そのような成形機におけるプレスステーションを概念的に示している。ターンテーブル(31)の外周部には、複数個、例えば11個の成形型(雌型)(32)が等間隔に配列され、受台(38)を介してターンテーブル(31)に固定されている。ターンテーブル(31)は、図示されていない適宜のインデックス機構により所定ピッチ毎に間欠回転駆動され、これにより、各成形型(32)が一連の成形工程を行なう複数のステーションに順送りされる。供給ステーションにて溶融ガラスを供給された成形型が、同図に示すプレスステーションに送られてくると、先ず、ターンテーブル(31)の下方に配置されたアンビル装置(35)が作動して、ターンテーブル(31)を下方から支持し、次いで、例えばラムシリンダ(33)により昇降駆動されるプランジャ(雄型)(34)が降下して、成形型(32)とプランジャ(34)とにより溶融ガラスが所定形状に押圧成形される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一般に、このようなガラス製品成形機では、溶融ガラスと接触する成形型が高温化する。そのため、成形型からの伝熱によってターンテーブルもかなり高温となり、しかもこの高温化は、成形型が固定されているテーブルの上面側でより顕著となる。そして、この温度差によってテーブルの上面側と下面側とで熱変位量に差が生じ、図5に破線で示すように、テーブル(31)の外周部が僅かではあるが下方にダレて、テーブルの上面レベルが変動する現象が生じる(変形量は誇張して描いている)。
【0005】このような上面レベルの変動は、成形型とプランジャとの関係位置が正規の位置からずれ、ガラス製品の肉厚が変化したり寸法がばらつく等の不具合を招く。また、テーブルの変形が大きい場合には、アンビル装置(35)が作動不能になることもある。
【0006】そこで、本発明は、このようなテーブルの熱変形による成形型のレベル変動の問題を解消し、製品品質の向上を図ると共に、装置の適切な作動を確保しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく、本発明では、間欠回転するターンテーブルの外周部に複数個の成形型を等間隔に配置し、各成形型をターンテーブルの間欠回転により、プレスステーションにおけるプランジャによる押圧成形を含む複数のステーションに順送りして、ガラス製品を成形するガラス製品成形機において、上記ターンテーブルの各成形型が固定された台座部を、それぞれテーブル本体とは別体とし、かつ、上下動可能な状態でテーブル本体に装着すると共に、プレスステーションにおいて、プランジャによる押圧成形を行なう前に、当該ステーションに位置する台座部を下方から押し上げることにより、当該台座部に固定された成形型のレベルを矯正して一定に保持するようにした。
【0008】この場合、台座部を、テーブル本体の外周部に設けた収容部に収容すると共に、台座部の内周側部分をテーブル本体に枢着して、枢軸を中心として上下方向に揺動可能とすることができる。
【0009】また、台座部を、テーブル本体の外周部に設けた収容部に、上方にスライド可能となるよう収容することもできる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、ブラウン管用パネルの成形機に適用した場合の実施形態について説明する。
【0011】図1及び図2に示すように、ターンテーブル(1)は、矩形状をなす複数の台座部(2)と、この台座部(2)を収容するための収容部(4)を外周部の円周等配位置に有するテーブル本体(3)とで構成される。台座部(2)及び収容部(4)は、円周等配位置の11箇所にそれぞれ配設されるが、図1では、各収容部(4)に収容される複数の台座部のうち、1つの台座部(2)のみを図示している。
【0012】収容部(4)は、テーブル本体(3)の外周部を、台座部(2)の平面形状に合致した形状(矩形状)に切り欠いて形成される。収容部(4)の両側面、すなわち円周方向の対向2面の下部には、その半径方向の全長にわたって、台座部(2)を支持するための支持部(7)がそれぞれ突設される。収容部(4)に台座部(2)を嵌め込むと、この支持部(7)により、各台座部(2)がその底面を開放した状態で、テーブル本体(3)に対し上面レベルを均一にして水平に支持される。なお、収容部(4)の形状は、図示のような切欠き状に限らず、外径端部を閉塞した穴状としてもよい。
【0013】各台座部(2)の上面には受台(6)が装着され、この受台(6)上には所定形状の成形型(9)が着脱自在に嵌め込まれている。成形型(9)の台座部(2)への取付けは、成形型(9)が容易に着脱できる限り任意の手段を採ることができ、上述のように受台(6)を使用して、この受台(6)に嵌め込み可能とした構造には限定されない。
【0014】各台座部(2)は、その内周側部分をテーブル本体(3)に枢着することにより、枢軸(O)を中心として上下方向に揺動可能に取付けられる。具体的には、台座部(2)の上面内周部に、二股部分(11a)を有する台座側支持部材(11)を装着し、この台座側支持部材(11)の二股部分(11a)の間の空間に、テーブル本体(3)の上面に装着したテーブル側支持部材(12)を嵌入させ、両支持部材(11)(12)に枢軸(O)となるピン(13)を貫通させる。これにより、台座部(2)がピン(13)を枢軸として揺動可能となる。台座部(2)とテーブル本体(3)との間の隙間は、台座部(2)やテーブル本体(3)の熱膨張量を考慮し、熱膨張後も台座部(2)がスムーズに揺動できるような幅に設定される。
【0015】このターンテーブル(1)は、図示しないインデックス機構により、所定ピッチずつ割出し駆動される。一方、図4に示すように、ターンテーブル(1)の周辺には、ゴブ(溶融ガラス)の供給、プランジャによる押圧成形、成形品の取出しまでを含む一連の成形工程を行なう複数、例えば11のステーションが配設される。同図では、左回りに11のステーション(S1 〜S11)が順次配設された場合を例示している。
【0016】ターンテーブル(1)は、例えば同図における左回転方向に所定ピッチずつ割出し駆動され、ステーションS1 にてゴブを供給された成形型(9)は、ターンテーブル(1)の間欠回転によって搬送され、プレスステーションS3 にて成形型(9)内のゴブがプランジャにより押圧成形された後、ステーションS8 にて、成形品が成形型(9)から取り出される。
【0017】プレスステーション(S3)には、台座部(2)及び成形型(9)の上面レベルを一定に保ち、また、プランジャによる加圧力を支持するための手段、例えばアンビル装置(14)が配置される。このアンビル装置(14)は、ターンテーブル(1)の台座部(2)を下方から押し上げて水平に保持するもので、当該作業ステーション(S3)に達した台座部(2)を挟んで、プランジャ(21)と対向した位置に付設される。以下、アンビル装置(14)の具体的構成・機能を説明する。
【0018】アンビル装置(14)は、鉛直方向に延設されたガイド(15)により上下方向に案内される押圧部材(16)と、この押圧部材(16)の下面と接触しつつ水平方向に移動するくさび部材(17)と、くさび部材(17)を進退駆動する駆動シリンダ(18)とを主要構成要素とする。図2において、駆動シリンダ(18)を伸張させると、くさび部材(17)が内径側に進出し、押圧部材(16)がくさび部材(17)の傾斜面(17a)に案内されて上昇するので、押圧部材(16)に押し上げられた台座部(2)が枢軸(O)を中心として上方に揺動する。その反対に駆動シリンダ(18)を縮退させると、くさび部材(17)が外径側に後退し、押圧部材(16)が降下する。押圧部材(16)の長さ(T)は、その上昇時に上部が支持部(7)の間に入り込めるような寸法とされる。
【0019】なお、くさび部材(17)の進退移動量は、調整ねじ(19)を用いて駆動シリンダ(18)のストローク量を調整することにより、所望の値に設定することができる。押圧部材(16)の昇降量は、くさび部材(17)の進退移動量に比例するので、結局のところ、調整ねじ(19)の締め込み調整によって、押圧部材(16)の昇降量を所望の値に設定することができる。
【0020】ターンテーブル(1)の熱変形による台座部(2)および成形型(9)のレベル変動は、プレスステーション(S3 )において、アンビル装置(14)の押圧部材(16)をターンテーブル(1)の変形量に対応した量だけ上昇させ、これによって台座部(2)をテーブル本体(3)に対して、所定量だけ上方に揺動させることにより所望のレベルに矯正することができる。ターンテーブル(1)の変形量は、その変形量に応じてアンビル装置(14)の調整ねじ(19)を締め込み調整して、押圧部材(16)の昇降量、つまり台座部(2)の揺動量を設定する。
【0021】このようにして、台座部(2)および成形型(9)のレベルを一定に保った状態で押圧成形を行なうことにより、プランジャ(21:ラムシリンダ20等により昇降駆動される)を降下させた際にも、成形型(9)とプランジャ(21)との間の関係位置を正規位置に保持することができ、また、両者の軸心のずれを防止して高精度の押圧成形を行なうことが可能となる。しかも、上昇した押圧部材(16)が、台座部(2)を下方から支持するので、プランジャ(21)の加圧力を受けることができる。なお、ターンテーブル(1)の間欠回転時には、押圧部材(16)を下降させておき、台座部(2)との干渉を防止する。
【0022】なお、台座部(2)、および成形型(9)のレベル補正量は、例えば、個々の台座部(2)のレベル変動量をセンサ等によって検出し、その検出結果に基づいて、逐次補正するようにする。この場合、アンビル装置(14)に押圧部材(16)の昇降量を自動調整可能な機構を設け、センサ等からの検出信号をこの調整機構に送出して自動補正する手段が考えられる。
【0023】ところで、台座部(2)は、テーブル本体(3)と別体で、かつテーブル本体(3)に対して上下動可能であれば足り、図1及び図2に示す形態に限定されない。例えば、図3に示すように、台座部(2)をテーブル本体(3)に設けた穴状の収容部(4)に上下方向に挿脱可能に収容し、この台座部(2)を収容部(4)内で上下方向にスライド移動させてもよい。また、台座部(2)及び成形型(9)のレベルを一定に保ち、プランジャ(21)による加圧力を支持するための装置として、例えば台座部(2)を挟んでプランジャ(21)と対向する位置に垂直配置したシリンダ(18)を用いることもできる。シリンダロッド(18a)の先端には、上面の中央部に、上方ほど幅狭にしながら突出させた整合部(22)を有する整合部材(23)が装着されており、シリンダ(18)の伸張時には、この整合部材(23)の整合部(22)を、これに対応して台座部底面に設けられた整合穴(24)に嵌入させる。これにより、台座部(2)の位置決めを行いつつその上面レベルを一定に保つことが可能となる。この実施形態では、収容部(4)を穴状としているが、図1及び図2と同様に、切欠き状の収容部(4)とすることも可能である。
【0024】
【発明の効果】本発明によれば、ターンテーブルの熱変形に伴う成形型のレベル移動を矯正して一定レベルに保つことができる。従って、プレス成形において、プランジャを降下させた際にも、成形型とプランジャとの間の関係位置を正規位置に保持することができ、高精度のプレス成形を行なうことが可能となる。また、従来機のようにアンビル装置の作動不良を招くこともなく、安定した作動を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるガラス製品成形機の斜視図である。
【図2】前記成形機のプレスステーションでの半径方向の断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示す半径方向の断面図である。
【図4】前記成形機の概略構造を示す平面図である。
【図5】従来の成形機の半径方向での断面図である。
【符号の説明】
1 ターンテーブル
2 台座部
3 テーブル本体
4 収容部
7 支持部
9 成形型
13 ピン
14 アンビル装置
16 押圧部材
21 プランジャ
O 枢軸
3 プレスステーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】 間欠回転するターンテーブルの外周部に複数個の成形型を等間隔に配置し、各成形型をターンテーブルの間欠回転により、プレスステーションにおけるプランジャによる押圧成形を含む複数のステーションに順送りして、ガラス製品を成形するガラス製品成形機において、上記ターンテーブルの各成形型が固定された台座部を、それぞれテーブル本体とは別体とし、かつ、上下動可能な状態でテーブル本体に装着すると共に、プレスステーションにおいて、プランジャによる押圧成形を行なう前に、当該ステーションに位置する台座部を下方から押し上げることにより、当該台座部に固定された成形型のレベルを矯正して一定に保持することを特徴とするガラス製品成形機。
【請求項2】 台座部を、テーブル本体の外周部に設けた収容部に収容すると共に、台座部の内周側部分をテーブル本体に枢着して、枢軸を中心として上下方向に揺動可能としたことを特徴とする請求項1記載のガラス製品成形機。
【請求項3】 台座部を、テーブル本体の外周部に設けた収容部に、上方にスライド可能となるよう収容したことを特徴とする請求項1記載のガラス製品成形機。

【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図1】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【公開番号】特開平10−139452
【公開日】平成10年(1998)5月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−296735
【出願日】平成8年(1996)11月8日
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)