説明

ガルシニアエキス組成物及びその含有飲料

【課題】
ガルシニアエキス原料由来臭をマスキングした、組成物を提供すること。
【解決手段】
サイクロデキストリンおよび糖アルコールを配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクロデキストリン及び糖アルコールを含有するガルシニアエキス組成物又は食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガルシニア(学名:Garcinia cambogia )は、別名「ゴラカ(Goraka)」、「タマリンドマラバー(Tamarind Malabar)」などとも呼ばれるインドや東南アジアを原産地とするオトギリソウ科の植物である。果実は果物として生食されるほか、カレーなどの酸味料、魚など食品の保存料、スパイス原料などとして利用されるなど食経験豊かな食材であり、南アジアでは消化薬(胆汁の働きをたすける)としても用いられた。1965年ガルシニアから主要成分が単離され、HCA((−)-ヒドロキシクエン酸)であることが明らかとなった(Y.S.Lewis,S.Neelakantan,Phytochemistry,4,619(1965))。
1960年代後半にはHCAのクエン酸回路のATP-クエン酸リアーゼの抑制による脂質合成阻害作用が発見され、1970年代からはその化学的作用機構が研究されてきた(M.Lowenstein,J.Biol.Chem.,246,629(1971))。このようにガルシニアが持つ脂質代謝改善効果が注目され、食品として摂取することにより脂質代謝異常を防止、改善し健康に寄与するものとして期待されている。近年は、ガルシニアの果皮を乾燥させたのち、主として熱水抽出した後、濃縮乾燥させHCA含量を高めたガルシニアエキスの形で食品素材として使用されている。
【0003】
ガルシニアエキスは一日に何度かに分けて摂取すると効果的という報告から(A.C.Sullivan,J.Triscari,J.G.Hamilton,O.N.Miller,V.R.Wheatley,Lipids,
9,121(1973))、携帯性に優れ、簡易に効率良く摂取可能である錠剤型食品に加工することが好ましいとされ、多くの製品が開発されている。しかしながら、錠剤型食品とした場合、水への崩壊性が悪いことが指摘され、さらには、胃液、腸内での崩壊性も悪いことから、食品として摂取した場合、有効成分の効率良い体内への吸収が問題とされている。
このような問題に対して、ガルシニアエキスを可溶化した飲料形態での供給が試みられているが、ガルシニアエキス由来の酸味や原料臭が錠剤形態摂取に比べ非常に強く感じられ、恒常的に摂取しなければ効果を期待できない当該組成物として、致命的な欠陥となっている。
【0004】
この解決策としてガルシニアエキス由来の原料臭改善のため、各種マスキング剤が試みられている。例えばサイクロデキストリン(以下CDという)は、マスキング機能があることが知られているが(例えば特許文献1)、実際にガルシニアエキスに対してマスキング効果を期待するためには、ガルシニアエキス粉末1重量部に対して、0.5以上必要で、飲料形態に用いた場合、可溶化せず、沈殿や濁りを生じ、飲料として適さない。
また、ガルシニア由来の酸味を主体としたマスキングについては、糖類、特に低カロリーである糖アルコールの使用が最も相応しいが、これもマスキング相当量を飲料に添加すると、緩下作用を引き起こす最大無作用量を超えてしまい、結果として下痢や腹痛を起こし、食品として適切ではなくなる。さらに各種人工甘味料の使用は、その独特の後味がガルシニアの風味を助長し、マスキング効果を期待できない。
【0005】
特許文献2には、ガルシニアエキスに炭酸ガスを加えた飲料が提案されている。さらに、飲料を摂取しやすくするために、糖質(糖類、糖アルコール)、甘味料、香料、酸味料、着色料等を官能的に良好な範囲で単独あるいは、組み合わせで加えることもできることが記載されている。そこに記載されている糖質や甘味料等の使用量等具体的な言及はなく、一般的な飲料の調整にすぎず、実質的にガルシニアエキス特有の問題を解決し、実用的解決法は開示されていない。
【0006】
【特許文献1】特開平5−331205号公報
【特許文献2】特開平10−4939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ガルシニアエキス組成物に対し、その特有の風味を改善し、長期間服用しても無理なく安全で尚且つ充分満足できるような食品、飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上述した問題点を解決するために鋭意研究を行った結果、ガルシニアエキスに対しCDと糖アルコールを特定の比率で併用することで、ガルシニアエキス特有の風味を改善することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、
1.サイクロデキストリンおよび糖アルコールを含有するガルシニアエキス組成物、
2.ガルシニアエキス1重量部に対し、サイクロデキストリン0.0025〜0.25重量部、糖アルコール1.0〜2.0重量部である1記載のガルシニアエキス含有飲料、
3.糖アルコールがマルチトールであることを特徴とする1又は2記載のガルシニアエキス含有組成物、
4.1〜3記載のガルシニアエキス組成物を含む飲料、
に関する。
【発明の効果】
【0010】
サイクロデキストリンと糖アルコールを併用することによりガルシニアエキスの原料臭をマスキングすることができた。
ガルシニアの脂質代謝改善効果を損なうことなく、実用的な飲料を提供できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で使用するガルシニアエキス粉末は、ガルシニア果皮から抽出製造されたものであれば、いずれも使用可能である。すなわち、抽出工程、エキス粉末用賦形剤の種類に関係なく全て使用可能である。
CDは、6〜12個のグルコースがグルコシド結合で環状に結合した非還元性のマルトオリゴ糖である。 本発明で使用できるCDの種類は、分岐鎖のない通常のCD及び分岐鎖のある分岐CDのいずれでも良い。溶解度の高い分岐CDがより好ましい。また、CDの環状鎖部分の構造については、通常のCD、分岐CDともに、環状鎖を構成するグルコースの数がそれぞれ6,7,8,9個に相当するα−、β−、γ−、δ−CDが用いられる。水溶性の高さからはδ−、γ−、α−、β−CDの順に好ましいが、特に制限が無く、これらを単独あるいは、複数用いることが出来る。
【0012】
糖アルコールは概ね低エネルギー性、非う蝕性で、摂取により血糖値を上昇させず、代謝上インシュリン非依存性を示すものであるが、摂取量によっては一過性の緩下作用を示すものである。そのため、食品として使用する場合、最大無作用量を考慮して安全な量を設定する必要がある。
糖アルコールとしては、例えば、グリセロール、リビトール、ソルビトール、イジトール、マルチトール、アラビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラクチトール、キシロビイトール、パラチニット、エリスリトール、キシリトールグリセロール、その他の直鎖オリゴ糖アルコール、分岐オリゴ糖アルコール、還元澱粉分解物(還元澱粉糖化物)等が挙げられ、本発明はこれらを単独又は複数用いることができ、特にマルチトールが好ましい。
【0013】
<実施例>
以下に実施例を挙げて、具体的に説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。
表1に示す処方で、ガルシニアエキス含有飲料を作製し、実施例、比較例、対照例の官能試験を行った。
評価基準は下記の2項目で、
「臭い」に関しては、
臭いなし 3点
やや臭い 2点
臭い 1点
非常に臭い 0点
「飲みやすい味」に関しては、
飲みやすい 3点
やや飲みやすい 2点
飲みにくい 1点
非常に飲みにくい 0点
とした。
【0014】
10名の専門官能評価員により、上記評価基準にて評価し、その平均値に基づく下記判定
をマスキングの総合評価として示した。
評価結果の平均値に基づく判定は次のとおり。
◎ 臭い/味ともに良好 平均値が2.2以上
○ 臭い/味ともに問題ない 平均値が1.8以上2.2未満
△ 臭い/味にやや好ましくない点がある 平均値が1.4以上1.8未満
× 飲料として適当でない 平均値が1.4未満
【0015】
【表1】

【実施例1】
【0016】
HCAとして、1000mg含有するガルシニアエキス1重量部に対しCD 0.0025重量部、マルチトール 1.25重量部となるよう添加し、ガルシニアエキス含有飲料を作製し、上記官能評価員で官能評価した。ガルシニア由来臭は問題なくマスキングされ、また、マルチトール由来の苦味も感じる事なく、飲料として特に問題は認められなかった。官能評価結果を表2に示す。
【実施例2】
【0017】
HCAとして、1000mg含有するガルシニアエキス1重量部に対しCD 0.025重量部、マルチトール 1.25重量部となるよう添加し、ガルシニアエキス含有飲料を作製し、上記官能評価員で官能評価した。ガルシニア由来臭は良好にマスキングされ、また、マルチトール由来の苦味も感じる事なく、飲料として特に問題は認められなかった。
官能評価結果を表2に示す。
【0018】
<比較例1>
HCAとして、1000mg含有するガルシニアエキス1重量部に対しCD 0.0025重量部、マルチトール 0.025重量部となるよう添加し、ガルシニアエキス含有飲料を作製し、上記官能評価員で官能評価した。
ガルシニア由来の臭い又は味の点において、問題が認められ、飲料として不適であった。
官能評価結果を表2に示す。
【0019】
<比較例2>
HCAとして、1000mg含有するガルシニアエキス1重量部に対しCD 0.025重量部、マルチトール 0.5重量部となるよう添加し、ガルシニアエキス含有飲料を作製し、上記官能評価員で官能評価した。
ガルシニア由来の臭い又は味の点において、問題が認められ、飲料として不適であった。
官能評価結果を表2に示す。
【0020】
<比較例3>
HCAとして、1000mg含有するガルシニアエキス1重量部に対しCD 0.25重量部、マルチトール 0.025重量部となるよう添加し、ガルシニアエキス含有飲料を作製し、上記官能評価員で官能評価した。
ガルシニア由来の臭い又は味の点において、問題が認められ、飲料として不適であった。
官能評価結果を表2に示す。
【0021】
<対照例1〜5>
HCAとして、1000mg含有するガルシニアエキス1重量部に対しCD又はマルチトールを表1の処方により配合し(対照例1はCD/マルチトール未添加)、ガルシニアエキス含有飲料を作製し、上記官能評価員で官能評価した。
対照例2〜5において、ガルシニア由来臭が認められ、CDまたは、マルチトール単独添加によるマスキング効果は確認出来なかった。対照例3、対照例4および対象例5では、CDの添加による不溶化やマルチトール由来の苦味が出現し、飲料として適さなかった。さらに対照例5では糖アルコール過剰摂取による下痢発生が認められた。官能評価結果を表2に示す。
【0022】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイクロデキストリンおよび糖アルコールを含有するガルシニアエキス組成物。
【請求項2】
ガルシニアエキス1重量部に対し、サイクロデキストリン0.0025〜0.25重量部、糖アルコール1.0〜2.0重量部である請求項1記載のガルシニアエキス含有飲料。
【請求項3】
糖アルコールがマルチトールであることを特徴とする請求項1又は2記載のガルシニアエキス含有組成物。
【請求項4】
請求項1〜3記載のガルシニアエキス組成物を含む飲料。

【公開番号】特開2006−2(P2006−2A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176396(P2004−176396)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】