説明

ガレート型カテキン含有起泡性クリーム様組成物

【課題】ガレート型カテキンを含有しながらその苦渋味が低減され、コラーゲンを含有しながらその不快味がなく、健康増進効果及び美容効果に優れ、且つ泡立てることによりホイップクリーム様の官能特性を有する起泡性クリーム様組成物及びその製造方法、脂肪分が全く含有していないまたは顕著に脂肪分が低減されたホイップクリーム状組成物、並びに食感や風味を維持しながら、脂肪含有量を抑えた低脂肪ホイップクリームの製造方法及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】(a)ガレート型カテキン、(b)コラーゲン、(c)アラビアガムの3種を必須成分として含有する、水分値25〜70重量%の起泡性クリーム様組成物、該起泡性クリーム様組成物を含気させて得られるホイップクリーム状組成物、並びに前記起泡性クリーム様組成物を含有する低脂肪ホイップクリーム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガレート型カテキンを含有する起泡性クリーム様組成物であって、泡立てた場合、ホイップクリームに類似した質感及び口当たりを有する、起泡性クリーム様組成物に関する。また、本発明は、前記起泡性クリーム様組成物の製造方法、ホイップクリーム状組成物、低脂肪ホイップクリームの製造方法及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の偏りやストレス、喫煙、飲酒、運動不足などにより、ガン、心疾患、脳卒中、糖尿病、高血圧、メタボリック症候群などの生活習慣病が問題となっており、日本人の死因の6割以上とも言われている。生活習慣病は完全な治療が困難なものも多く、また、厚生労働省の調べによると、2010年度の国民医療費は36兆6000億円に上ることからも、病気を「治療する」よりも、病気を「予防する」ことが必要な時代に差し掛かっている。その観点から、消費者の間でも健康志向が高まっており、特定保健用食品や栄養機能食品などの健康食品やサプリメントの市場は大きな成長を遂げている。
【0003】
その中で、日本の誇る健康機能性材料として、緑茶に多く含まれるカテキン類が知られている。その効能は、抗酸化作用、抗菌作用、ガン抑制作用、コレステロール吸収抑制作用、インフルエンザウイルスの不活化などとして期待されており、脂肪消費を助ける飲料や、コレステロールの吸収を抑える茶など、カテキン類の生理活性に着目した健康食品が既に種々販売されている。
【0004】
しかし、カテキン類は特有の苦渋味を有することが知られている。カテキン類の中でも特にエピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキンガレート(EGCg)のような分子内にガロイル基を有するガレート型カテキンは、収斂味とも表現される特有の渋味を有し、苦味に関してもエピカテキン(EC)、カテキン(C)の2〜3倍の強さをもつ。しかしガレート型カテキンは生理活性が非常に高く、例えばヒトインフルエンザウイルスの不活化や、LDLの酸化に対する抑制効果などに関して、非ガレート型カテキンよりも高い生理活性を示すことが報告されている。そのため、ガレート型カテキンの苦渋味を軽減することは非常に重要な課題であると言える。
【0005】
カテキン類の苦渋味をマスキングする技術提案はいくつかなされており、例えば、キナ酸を特定比率で併用する方法(特許文献1)、配糖化する方法(特許文献2)、平均分子量500〜4500の哺乳類由来のコラーゲンペプチドを添加する方法(特許文献3)などがある。しかし、いずれの方法もカテキン類の苦渋味の低減は図れるものの、そのマスキング効果は十分なものとは言えず、健康食品の域を超える嗜好性の高い商品は市場に存在しなかった。カテキン類をデザート感覚で食後に無理なく摂取することができれば、食事中の脂肪摂取に対して効果的である。そのため、ケーキなどの食後のデザートとして、嗜好性の高いカテキン含有食品が今後期待される。
【0006】
ところで、ケーキなどの生菓子に必要不可欠な素材として、ホイップクリームが知られている。ホイップクリームは、気泡を内部に保持したクリームであり、口どけの軽さと脂肪の濃厚さを兼ね備えた嗜好性の高い食品であり、製菓・製パンなどのフィリングやトッピング材料として広く利用されている。しかし、ホイップクリームは脂質を40%程度含み、高カロリー食品であることから、近年の健康志向・ダイエット志向において敬遠される傾向にある。
【0007】
ホイップクリームは脂肪球が気泡を取り囲んだ構造を有しており、脂質含量を減らすと保形性の低下や離水が生じるなどの不都合が生じるため、脂質を減らすことや、水系原料を添加することは困難であった。その中で、乳化剤や食物繊維、澱粉類、寒天などの添加によって保形性を向上させ、ホイップクリームの脂質を低減させる技術提案がなされている(例えば特許文献4、5)。また、アラビアガムによって安定性を向上させた起泡性クリームの提案もなされている(特許文献6)。
【0008】
一方、起泡性材料としてゼラチンや卵白なども知られており、マシュマロやメレンゲなどとして利用されている。それらを利用して、ゼラチンとカラギナンを使用したホイップクリーム状食品(特許文献7)、卵白と糖類をホイップ後加熱して得られるホイップクリーム様食品(特許文献8)の提案もなされているが、やはり、滑らかな軽い口どけ感や、脂肪球によって知覚される濃厚感に乏しいものであった。
【0009】
以上のように、ホイップクリームの嗜好性と健康は相反するものであり、ましてや、生理活性の高いガレート型カテキンを高含有し、かつ低脂肪と高い嗜好性を兼ね備えたホイップクリームなど存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−169603号公報
【特許文献2】特開平8−298930号公報
【特許文献3】特開2011−15632号公報
【特許文献4】特開平8−154612号公報
【特許文献5】特開2011−193814号公報
【特許文献6】特開平9−37715号公報
【特許文献7】特開平5−63号公報
【特許文献8】特開2006−129745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ガレート型カテキンを含有しながらその苦渋味が低減され、コラーゲンを含有しながらその不快味がなく、健康増進効果及び美容効果に優れ、且つ泡立てることによりホイップクリーム様の官能特性を有する起泡性クリーム様組成物及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、脂肪分を全く含有していない又は顕著に脂肪分が低減されたホイップクリーム状組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、食感や風味を維持しながら、脂肪含有量を抑えた低脂肪ホイップクリームの製造方法及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ガレート型カテキン、コラーゲン、アラビアガムの3成分を水に含有させることにより、驚くべきことに起泡性に優れたクリーム様組成物が得られ、含気によって保形性の高いホイップクリーム様の微細な気泡を形成し、さらにはガレート型カテキンの苦渋味やコラーゲンの不快味が低減されることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕(a)ガレート型カテキン、
(b)コラーゲン、
(c)アラビアガム、
の3種を必須成分として含有する、水分値25〜70重量%の起泡性クリーム様組成物、
〔2〕前記(a)、(b)、(c)の含有量[A]、[B]、[C](単位:重量%)が以下の式の範囲内にある前記〔1〕に記載の起泡性クリーム様組成物、
i)5.0≦[B]≦25.0
ii)3.0≦([B]/[A])≦20.0
iii)0.5≦([B]/[C])≦5.0
〔3〕下記A1とB2、又はA2とB1、又はA2とB2を混合する工程を含むことを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の起泡性クリーム様組成物の製造方法、
A1:ガレート型カテキン又はそれを含有する水溶液
A2:ガレート型カテキン及びアラビアガムを含有する水溶液
B1:コラーゲン又はそれを含有する水溶液
B2:コラーゲン及びアラビアガムを含有する水溶液
〔4〕前記〔1〕又は〔2〕に記載の起泡性クリーム様組成物を含気させて得られるホイップクリーム状組成物、
〔5〕前記〔1〕又は〔2〕に記載の起泡性クリーム様組成物を含有する低脂肪ホイップクリーム、
〔6〕前記〔1〕又は〔2〕に記載の起泡性クリーム様組成物を含気させ、その後ホイップクリームと混合することを特徴とする前記〔5〕に記載の低脂肪ホイップクリームの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の起泡性クリーム様組成物は、健康増進に関する高い生理活性を持つガレート型カテキンを含有しながらその苦渋味が低減され、美容効果のあるコラーゲンを含有しながらその不快味もない、健康増進効果及び美容効果に優れた起泡性クリーム状組成物である。さらに本発明の起泡性クリーム様組成物は、泡立てることによりホイップクリーム様の官能特性を示すため、この泡立てた組成物をホイップクリームと混合することで、食感や風味を維持しながら、脂肪含有量を抑えた、低脂肪ホイップクリームを作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0016】
(用語の説明)
「クリーム」とは、日本国の乳及び乳製品の成分規格に関する省令では、「生乳、牛乳又は特別牛乳から脂肪以外の成分を除去したもの」と定義されているが、本発明においてはその限りではなく、生クリームの他に、それに乳化剤や安定剤などを加えたもの、乳脂肪の一部もしくは全てをパーム油等の植物油脂に置換したものも包含する。
【0017】
本発明において「クリーム様」とは、上記クリームに類似した性質をいい、「クリーム様組成物」とは、フォームやゾルなどの固体・液体・気体を分散質とした粘性液体全般をいう。
【0018】
「ホイップクリーム」とは、ホイップドクリームともいい、泡立て器を用いた高速攪拌などによって上記クリームを含気させて得られる、内部に気泡が略均一的に分散している状態のものであり、保形性のある半固形状の食品である。
本発明でいう「ホイップクリーム状組成物」とは、上記ホイップクリームのような物理的性質をもつ組成物、つまり内部に気泡が略均一的に分散しており、保形性はあるが剪断応力を受けた場合に粘度が低下する(剪断速度が上がるほど粘度が低下する)半固体状の組成物全般をいう。尚、比重は一般的なホイップクリームと同じく0.3〜0.8の範囲とする。0.3を下回ることは、起泡力、気泡安定性の点で困難であり、0.8を越えると、保形性が悪く、ホイップクリームとしての軽い口どけも得られなくなってしまう。また、本発明中において、比重は、100mLの容器に試料を満杯充填し、その重量を測定することにより算出しており、単位は「g/mL」である。
【0019】
(起泡性クリーム様組成物)
本発明の起泡性クリーム様組成物(以下、本発明の組成物ともいう)は、
(a)ガレート型カテキン、
(b)コラーゲン、
(c)アラビアガム、
の3種を必須成分として含有し、水分値25〜70重量%であることを特徴とする。
【0020】
本発明における「起泡性クリーム様組成物」は、攪拌などによって泡が立ち、その気泡を保持する性質をもった、不溶性粒子を分散質とした粘性液体である。尚、不溶性粒子が分散していることは、1,000倍の倍率の光学顕微鏡によって本組成物中に略球状粒子の存在が確認でき、上記(a)、(b)、(c)の3成分を水中で混合したときに白濁を生じることから、前記3成分からなる粒子が分散していることが確認できる。
【0021】
本発明の組成物が、乳脂肪様の官能特性を有するメカニズムは、本組成物に分散している不溶性粒子が略球状の形状であり、該粒子の粒子径が概ね0.1〜100μmの範囲内にあるため、脂肪球様の知覚を与えると推定される。尚、前記粒子の粒度分布は、レーザー回析式粒度分布測定装置(例えば島津製作所(株)製、「SALD」シリーズ)を使用して測定・算出される。
【0022】
以下、(a)、(b)、(c)の3成分に関して説明する。
〔(a)ガレート型カテキン〕
カテキンとは、緑茶、紅茶あるいはウーロン茶などのカメリア属に分類される植物の茶に多く含まれているポリフェノールの一種であり、主にエピカテキン(EC)、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキン(EGC)、エピガロカテキンガレート(EGCg)、カテキン(C)、カテキンガレート(Cg)などのフラバン−3−オール類の総称であるが、本発明において「(a)ガレート型カテキン」とは、分子内にガロイル基を有するカテキンであり、具体的には、ECg、EGCg、Cgなどを指す。これらは、精製品の他、粗製品でも良く、これらを含有する天然物もしくはその加工品でも良い。夾雑物の少ないことが風味などの嗜好性の点で好ましいため、茶葉から熱水や水溶性有機溶媒により抽出・濃縮された茶抽出物や、それをカラムなどで精製したものを使用することが好ましい。市販品としては、例えば、太陽化学(株)「サンフェノン」、三井農林(株)「ポリフェノン」などが挙げられる。
【0023】
本発明の組成物中の(a)ガレート型カテキンの含有量は0.3〜6重量%であることが好ましく、0.6〜3重量%であることがより好ましい。含有量が小さすぎると、生理的効果が弱く、嗜好性の面でもクリーム様の口当たりに乏しいものとなってしまう。一方、含有量が大きすぎると、苦渋味を強く感じてしまう。
【0024】
〔(b)コラーゲン〕
コラーゲンは、動物組織における主要な構成タンパク質であり、皮膚、血管、内臓、骨などの至るところに存在していることが知られている。コラーゲンを加熱・変性させて得られるゼラチンの他、それをさらに酵素などで加水分解したコラーゲンペプチドも包含してコラーゲンという。
【0025】
本発明においてコラーゲンは、由来生物や製法に関して特に限定されずに使用することができる。ゼリー強度に関しては特に限定はないが、200ブルーム以下であることが口どけの良い滑らかな食感を得られる点で好ましい。分子量に関しても特に限定はないが、平均分子量5,000以上であることがガレート型カテキンの苦渋味を効果的にマスキングできる点で好ましい。尚、コラーゲンの分子量に関する情報は、粘度測定やHPLC及びゲルろ過法等の定量方法によって得られ、すでに公知の手法を使用することが可能である。ここで平均分子量とは重量平均分子量をいう。
【0026】
本発明の組成物中の(b)コラーゲンの含有量は5〜25重量%であることが好ましく、5〜20重量%であることがより好ましい。含有量が小さすぎると、苦渋味のマスキング効果が弱く、濃厚さや起泡性も乏しいものとなってしまう。一方、含有量が大きすぎると、ゲル化などの不都合な現象が生じてしまう。
【0027】
〔(c)アラビアガム〕
アラビアガムは、アカシアガム、アラビアゴム又はアカシア食物繊維とも呼ばれ、熱帯地方に生育するマメ科のアラビアゴムノキ(学名Acacia senegal)から採取される多糖類である。
【0028】
本発明の組成物中の(c)アラビアガムの含有量は1〜20重量%であることが好ましく、3〜12重量%であることがより好ましい。含有量が小さすぎると、(a)と(b)が凝集を起こしてざらついた食感になりやすい。一方、含有量が大きすぎると、アラビアガム自身の味や粘性により、嗜好性が低下する。
【0029】
特に、本発明の組成物においては、(a)ガレート型カテキンの含有量[A](重量%)と(b)コラーゲンの含有量[B](重量%)及び(c)アラビアガムの含有量[C](重量%)とを、以下の式の範囲内に調整することが好ましい。
i)5.0≦[B]≦25.0
ii)3.0≦([B]/[A])≦20.0
iii)0.5≦([B]/[C])≦5.0
【0030】
前記i)については前述した通りである。
前記ii)について、([B]/[A])が3.0未満では、ガレート型カテキン由来の苦渋味のマスキングが不十分かつコク味を付与する効果が十分得られない。また、([B]/[A])が20.0を超えるとゲル化や粘度上昇などにより、泡立ててもホイップクリーム状とならない。([B]/[A])は、より好ましくは5.0≦([B]/[A])≦10.0である。
前記iii)について、([B]/[C])が0.5未満では、多量のアラビアガムによって本発明の組成物の味や粘度に悪影響が出る。また、([B]/[C])が5.0を超えるとガレート型カテキンとコラーゲンが凝集を起こしてしまう。([B]/[C])は、より好ましくは1.0≦([B]/[C])≦3.0である。
【0031】
本発明の組成物における水分値は前記(A)、(B)、(C)成分の残部であればよいが、後述の任意成分が含有された場合でも本発明の組成物の泡立ち、気泡安定性、保形性が良好となる観点から、好ましくは25〜70重量%であり、より好ましくは40〜60重量%である。
【0032】
本発明の組成物には、所望により、糖質、果汁、野菜汁、豆乳、乳製品、茶類、コーヒー、チョコレート類、アルコール類、グリセリン、酸味料、香料、着色料、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、タンパク質、油脂類、乳化剤、安定剤、増粘多糖類、高甘味度甘味料などの任意成分を含有してもよい。これらの任意成分を適宜選択することで、嗜好性の幅を広げることができる。尚、前記任意成分は、嗜好性や物理的安定性に悪影響を与えない範囲で使用すればよい。前記任意成分において、とくに糖質を含有することは、甘味を与え、含気させた際の保形性を向上させる点で好ましい。また、乳化剤、タンパク質、安定剤、増粘多糖類などを含有させることによって、本組成物の起泡性を向上させ、気泡を安定化させることができる。
【0033】
また、本発明の組成物のpHは特に限定されず、生クリームと異なり、酸性下でも離水することなく安定した泡を形成することができる。
【0034】
以上のような構成を有する本発明の組成物は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を混合する際、(c)成分を予め(a)成分及び/又は(b)成分と混合溶解して溶液状態としておくことで、効率よく作製することができる。
【0035】
即ち、本発明の組成物は、下記A1とB2、もしくはA2とB1、もしくはA2とB2を混合する工程により製造することができる。
A1:ガレート型カテキン又はそれを含有する水溶液
A2:ガレート型カテキン及びアラビアガムを含有する水溶液
B1:コラーゲン又はそれを含有する水溶液
B2:コラーゲン及びアラビアガムを含有する水溶液
【0036】
また、糖質及びその他の任意成分は、前記の任意の工程で添加すればよい。
【0037】
尚、前記各成分を混合する際の温度などの条件については、特に限定はないが、反応界面での急激な凝集を防ぐため、60℃程度まで加温した状態で混合するか、攪拌しながら添加して混合することが好ましい。
【0038】
(ホイップクリーム状組成物)
前記の本発明の組成物は、攪拌によって含気させることで容易に泡立ち、ホイップクリームのようなキメ細かく保形性の高い泡を形成する。泡立てる際の温度条件は、生クリーム同様、低温であるほど保形性が向上して好ましいが、生クリームのホイップに比べ容易に泡立ち、例えば室温下で攪拌しても容易に安定な泡を形成する。
このようにして得られるホイップクリーム状組成物は、通常のホイップクリームと比べると、食感が類似していながら、脂肪含量を実質的にゼロにできる(無脂肪)低カロリー食品である。
【0039】
(低脂肪ホイップクリーム)
また、前記のように泡立てた本発明の組成物をホイップクリームに含有させることにより、乳風味は維持しながら、従来は難しいとされていた低脂肪ホイップクリームを簡単に製造することができる。
【0040】
本発明の「低脂肪ホイップクリーム」は、上記ホイップクリームの一部が本発明の組成物に置換されたものである。尚、ここでいう「低脂肪」とは、厚生労働省の定める栄養表示基準に基づくものではなく、通常のホイップクリームに比較して脂肪分が低減した旨を示している。
【0041】
本発明の低脂肪ホイップクリームは、実質的に本発明の組成物を含有しており、(b)コラーゲンの含有量[B](単位:重量%)が1.0≦[B]≦20.0の範囲内にある低脂肪ホイップクリームである。
[B]が1.0未満では、実質的に本発明の組成物による置換度が小さく、低脂肪としての訴求性に欠ける。また、[B]が20.0を超えると実質的に本発明の組成物による置換度が大きすぎるためホイップクリームと呼ぶには適切ではない。
尚、本発明の低脂肪ホイップクリームは、実質的に本発明の起泡性クリーム様組成物を含有しているため、3.0≦([B]/[A])≦20.0、且つ、0.5≦([B]/[C])≦5.0である。
【0042】
以上のような本発明の低脂肪ホイップクリームは、本発明の組成物を含気させた後にホイップクリームと混合することにより製造することができる。
【0043】
また、原料とするホイップクリームの方には、予め、糖質、果汁、野菜汁、豆乳、乳製品、茶類、コーヒー、チョコレート類、アルコール類、グリセリン、酸味料、香料、着色料、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、タンパク質、油脂類、乳化剤、安定剤、増粘多糖類、高甘味度甘味料などの任意成分を含有させてもよい。
中でも、糖質の適度な添加は、原料であるホイップクリームの保形性を向上させるが、加えすぎると起泡力が低下する。また、その他の任意成分も、物理的安定性に悪影響を与えない範囲で使用できるが、水分や酸は非常に物性に悪影響を与えるため、それらを含む原料の使用は好ましくない。
【0044】
尚、本発明の組成物とホイップクリームを混合する際の温度条件は、室温付近であればよい。高温加熱下では、ホイップクリームの消泡が起き、低温冷却下では均一な混合が困難になる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
【0046】
(実施例1)
コラーゲンペプチド(商品名:HBC−P20、新田ゼラチン株式会社製)20gを70℃の水28gに溶かした。ここにガレート型カテキン含有製剤(商品名:サンフェノン90S、ガレート型カテキン含有率約66重量%、太陽化学株式会社製)4gとアラビアガム(商品名:インスタントガムAB、コロイドナチュレルインターナショナル社製、以下同じ)10gとを70℃の水18gに溶かして作製した水溶液を加えて混合した。その後、室温まで冷却し、クリーム様組成物80gを得た。続いて、得られた組成物をボウルに入れ、ハンドミキサーで泡立て、比重0.65のホイップクリーム状組成物を得た。
該ホイップクリーム状組成物は、保形性のあるキメ細かい泡を形成しており、室温で3時間放置しても消泡や離水をすることなく安定であった。
【0047】
<粒度分布測定>
実施例1のクリーム様組成物中の不溶性粒子について、レーザー回析式粒度分布測定装置(「SALD−2000J」、島津製作所(株)製)を用い、公知の方法によって粒度分布を測定した。具体的な操作としては、試料に40℃の水を攪拌しながら加えていき、100倍まで希釈してサンプラ攪拌槽に投入し、ポンプ速度調整ツマミを6の位置にして攪拌させながら粒度分布を測定した。分布基準は、体積基準(全粒子の体積の総和中で特定粒子径の粒子がどれだけの体積を占めるかを示す基準)を用いた。平均粒子径は、当該装置用のソフトウェア(商品名「WingSALD−2000J」、島津製作所(株)製)によって算出した。その結果、実施例1のクリーム様組成物中の不溶性粒子の平均粒子径は8.6μmであり、直径が100μmを超える粒子は2%未満であった。
【0048】
<粒子形状の観察>
実施例1のクリーム様組成物中の不溶性粒子を1,000倍の倍率の光学顕微鏡(商品名「BX41」、オリンパス株式会社製)で観察したところ、略球形状であることが確認できた。
【0049】
<官能試験>
実施例1のクリーム様組成物80gに対して、砂糖10gを水10gに溶かしたものを加え、再びハンドミキサーで泡立て、比重0.45のホイップクリーム状組成物を得た。得られたホイップクリーム状組成物に対して、5名のパネラーが試食し、下記に示す官能評価基準に従って官能試験を行なったところ、食感評価は「3」、苦渋味強度は「1」であった。
【0050】
(1)食感に関する評価
5名のパネラーが、下記に示す内容に従って食感を3段階評価し、その平均値を四捨五入して整数で表したものを評点とする。
点数:内容
3:ホイップクリームのような食感であり、口どけが軽く、濃厚な食感。
2:軽い口どけ・濃厚さのいずれかはやや不十分だが、ホイップクリームに近い食感である。
1:ホイップクリームとは程遠く、水っぽい・重い食感・高い粘性や弾力、のいずれかの好ましくない官能特性を有する。
【0051】
(2)苦渋味に関する評価
5名のパネラーが、下記に示す内容に従って苦渋味強度を3段階評価し、その平均値を四捨五入して整数で表したものを評点とする。
強度:内容
1:苦渋味をあまり感じない。
2:苦渋味を感じる。
3:苦渋味を強く感じる。
【0052】
また、ホイップクリーム状組成物には、原料であるコラーゲンペプチドに由来する不快臭は感じられなかった。
【0053】
なお、前記ホイップクリーム状組成物の苦渋味及び不快臭の評価は泡立てる前のクリーム状組成物を直接食べた場合も同様であった(なお、以下の実施例でも同様の傾向となった)。
【0054】
(実施例2〜8)
表1に示す配合で、コラーゲン、アラビアガム、砂糖などの他の成分を70℃の水に溶かした。ここに、表1に示す配合で、ガレート型カテキン含有製剤を70℃の水に溶かした水溶液を加えて混合した。得られたクリーム様組成物を、ボウルに入れ、氷浴で冷やしながらハンドミキサーで表1に示す比重になるまで泡立て、ホイップクリーム状組成物を得た。
得られたホイップクリーム状組成物の評価を、実施例1と同様にして行ったところ、表1に示すように、いずれの組成物も、ホイップクリームのような軽い口どけと乳脂肪のような濃厚さを兼ね備えた、滑らかな食感のホイップクリーム状組成物であった。これらを室温にて2時間、4℃の冷蔵庫にて12時間放置したが、いずれの組成物も消泡することなく安定なホイップクリーム状を維持していた。
【0055】
【表1】

【0056】
(比較例1〜2)
表1に示す配合で、コラーゲン、アラビアガム、砂糖などの他の成分を70℃の水に溶かした。ここに、表1に示す配合で、ガレート型カテキン含有製剤を70℃の水に溶かした水溶液を加えて混合した。得られたクリーム様組成物を、ボウルに入れ、氷浴で冷やしながらハンドミキサーで表1に示す比重になるまで泡立て、ホイップクリーム状組成物を得た。比較例1では、水分値の低さから、泡立てても比重が下がらず、粘性の高い、重い食感となってしまった。比較例2では、水分値の高さから、4℃の冷蔵庫にて12時間放置したところ、消泡が起きてしまった。
【0057】
(比較例3)
コラーゲンペプチド(商品名:HBC−P20、新田ゼラチン株式会社製)20gと砂糖10gを70℃の水38gに溶かし、ここにガレート型カテキン含有製剤(商品名:サンフェノン90S、ガレート型カテキン含有率66重量%、太陽化学株式会社製)4gを70℃の水8gに溶かして作製した水溶液を加えて混合した。すると凝集物が発生し、沈殿が生じた。
【0058】
(比較例4)
アラビアガム10gと砂糖10gを70℃の水38gに溶かし、ここにガレート型カテキン含有製剤(商品名:サンフェノン90S、ガレート型カテキン含有率66重量%、太陽化学株式会社製)4gを70℃の水8gに溶かして作製した水溶液を加えて混合した。濁りは生じず、クリーム様組成物は得られなかった。また、非常に強い苦渋味を感じ、上記官能評価基準に従った官能試験では苦渋味強度は「3」であった。
【0059】
(実施例9、比較例5〜6)
実施例4のサンフェノンEGCgを、ECg(実施例9)、EGC(比較例5)、(+)−カテキン(比較例6)(いずれも和光純薬工業株式会社より試薬として入手)に変えて、実施例4と同様の混合、含気操作を行なった。ECgではEGCgと同様、ホイップクリーム状組成物が得られたが、EGC、(+)−カテキンでは固化し、マシュマロに近い物性となってしまい、軽い口どけや乳脂肪様の濃厚感が得られなかった。
【0060】
[低脂肪ホイップクリームの作製]
(実施例10)
コラーゲンペプチド(商品名:HBC−P20、新田ゼラチン株式会社製)20gとアラビアガム10gを60℃の水40gに溶かし、砂糖30g、スクラロース(商品名:サンスイートSU−100、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.2gを加え、水溶液を調製した。ここにEGCg(商品名:サンフェノンEGCg、ガレート型カテキン含有率95重量%以上、太陽化学株式会社製)1.8gと砂糖10gを90℃の水12gに溶かして作製した水溶液を加えて混合した。その後、脱脂粉乳(森永乳業株式会社製)6gを水12gに溶かしたものを加え、さらにミルク香料(長岡香料株式会社製)0.03gを加え、ハンドミキサーで比重0.6になるまで泡立てて、ホイップクリーム状組成物を得た。これを、氷浴で冷やしながら比重0.5まで泡立てた生クリーム(タカナシ乳業株式会社製)80gに加えて混合し、比重0.5の低脂肪ホイップクリームを得た。得られたホイップクリームは、低脂肪でありながら濃厚感もあり、ガレート型カテキンを含有しながら苦渋味が少なく、コラーゲンを含有しながら不快臭のない、健康機能性・嗜好性に優れたホイップクリームであった。
【0061】
(実施例11)
実施例7のホイップクリーム状組成物20gを35℃に保温し、氷浴で冷やしながら比重0.6まで泡立てた植物性脂肪ホイップ(雪印メグミルク株式会社製)80gと混合し、比重0.6の低脂肪ホイップクリームを得た。得られたホイップクリームは、低脂肪でありながら濃厚感もあり、ガレート型カテキンを含有しながら苦渋味が少なく、コラーゲンを含有しながら不快臭のない、健康機能性・嗜好性に優れたホイップクリームであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ガレート型カテキン、
(b)コラーゲン、
(c)アラビアガム、
の3種を必須成分として含有する、水分値25〜70重量%の起泡性クリーム様組成物。
【請求項2】
前記(a)、(b)、(c)の含有量[A]、[B]、[C](単位:重量%)が以下の式の範囲内にある請求項1に記載の起泡性クリーム様組成物。
i)5.0≦[B]≦25.0
ii)3.0≦([B]/[A])≦20.0
iii)0.5≦([B]/[C])≦5.0
【請求項3】
下記A1とB2、又はA2とB1、又はA2とB2を混合する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の起泡性クリーム様組成物の製造方法。
A1:ガレート型カテキン又はそれを含有する水溶液
A2:ガレート型カテキン及びアラビアガムを含有する水溶液
B1:コラーゲン又はそれを含有する水溶液
B2:コラーゲン及びアラビアガムを含有する水溶液
【請求項4】
請求項1又は2に記載の起泡性クリーム様組成物を含気させて得られるホイップクリーム状組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の起泡性クリーム様組成物を含有する低脂肪ホイップクリーム。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の起泡性クリーム様組成物を含気させ、その後ホイップクリームと混合することを特徴とする請求項5に記載の低脂肪ホイップクリームの製造方法。

【公開番号】特開2013−111025(P2013−111025A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260865(P2011−260865)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(390020189)ユーハ味覚糖株式会社 (242)
【Fターム(参考)】