説明

ガングリオシドおよびガングリオシド模倣物の生合成のためのCampylobacterグリコシルトランスフェラーゼ

【課題】大規模生産に利用可能なガングリオシド合成に関する新規酵素およびガングリオシド合成のためのより効率的な方法を提供する。
【解決手段】単離された核酸分子または組換え核酸分子であって、該核酸分子は、β−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有するグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含み、該核酸の配列は、特定のヌクレオチド配列のうちの少なくとも50ヌクレオチドにわたって少なくとも70%の同一性を有する、核酸分子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許仮出願第60/118,213号(1999年2月1日出願)の利益を主張し、そして米国特許出願第09/495,406(200年1月31日出願)の一部継続出願であり、これら両方が、本明細書中で全ての目的に対して参考として援用される。
【0002】
(本発明の分野)
本発明は、ガングリオシドおよびガングリオシド模倣物を含むオリゴサッカリドの酵素的合成の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
(本発明の背景)
ガングリオシドは、3つのエレメントからなる糖脂質の1クラスであり、しばしば細胞膜中に見出される。1つ以上のシアル酸残基が、オリゴサッカリドまたは炭水化物のコア部分に結合されて、これは、次いで一般的に細胞膜中に存在する疎水性脂質(セラミド)構造体に結合される。このセラミド部分は、長鎖塩基性(LCB)部分および脂肪酸(FA)部分を含む。ガングリオシドならびに他の糖脂質およびそれらの構造体は、一般的に、例えば、Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,1981)287〜295頁およびDevlin,Textbook of Biochemistry(Wiley−Liss,1992)に論じられている。ガングリオシドは、炭水化物部分におけるモノサッカリドの数、ならびにその炭水化物部分中に存在するシアル酸基の数および位置に従って、分類される。モノシアロガングリオシドは、「GM」の略号が付けられ、ジシアロガングリオシドは「GD」と称され、トリシアロガングリオシドは「GT」、そしてテトラシアロガングリオシドは「GQ」と称される。ガングリオシドは、さらにシアル酸残基の位置またはその残基が結合した位置に依存して、分類される。さらなる分類は、オリゴサッカリドのコアに存在するサッカリドの数に基づき、ここで、添え字の「1」が4つのサッカリドを有するガングリオシド(Gal−GalNAc−Gal−Glc−セラミド)を表し、下付き「2」「3」および「4」がそれぞれ、トリサッカリドを有するガングリオシド(GalNAc−Gal−Glc−セラミド)、ジサッカリドを有するガングリオシド(Gal−Glc−セラミド)およびモノサッカリドを有するガングリオシド(Glc−セラミド)を表す。
【0004】
ガングリオシドは脳で、特に神経末端に最も多量に存在する。これらは、神経伝達物質(アセチルコリンを含む)に対するレセプター部位に存在すると考えられ、そしてまた、他の生物学的な高分子(インターフェロン、ホルモン、ウイルス、細菌毒素などを含む)に対して特異的なレセプターとして作用し得る。ガングリオシドは、神経系障害の処置のために使用されている。Mahadnikら(1988)Drug Development Res.15:337−360;米国特許第4,710,490号および同第4,347,244号;Horowitz(1988)Adv.Exp.Med.and Biol.174:593−600;Karpiatzら(1984))Adv.Exp.Med.and Biol.174:489−497を参照のこと。特定のガングリオシドは、ヒト血球細胞の表面上に見出され(Hildebrandら(1972)Biochem.Biophys.Acta 260:272−278;Macherら(1981)J.Biol.Chem.256:1968−1974;Dacremontら、Biochim.Biophys.Acta 424:315−322;Klockら(1
981)Blood Cells 7:247)、これらガングリオシドは、これらの細胞の末端顆粒球の分化において役割を有し得る。Nojiriら(1988)J.Biol.Chem.263:7443−7446。これらのガングリオシドは、「新生ラクト(neolacto)」系列といわれ、式[Galβ−(1,4)GlcNAcβ(1,3)]Galβ(1,4)Glc(ここで、n=1〜4)を有する中性のコアオリゴサッカリドを有する。3’−nLM(NeuAcα(2,3)Galβ(1,4)GlcNAcβ(1,3)Galβ(1,4)−Glcβ(1,1)−セラミド、および6’−nLM(NeuAcα(2,6)Galβ(1,4)GlcNAcβ(1,3)Galβ(1,4)−Glcβ(1,1)−セラミドは、これらの新生ラクト系列のガングリオシドの中に含まれる。
【0005】
ガングリオシド「模倣物」は、いくつかの病原性生物と関連する。例えば、Campylobacter jejuni O:19株の低分子量LPSのコアオリゴサッカリドは、ガングリオシドの分子的擬態を提示することが示された。1970年代後半より、Campylobacter jejuniは、ヒトにおける急性胃腸炎の重要な原因として認識されている(Skirrow(1977)Brit.Med.J.2:9−11)。上皮学的な研究により、Campylobacter感染がSalmonella感染よりも発展途上国においてより普通であり、そしてこれらはまた、発展途上国における下痢疾患の重要な原因であることが示された(Nachamkinら(1992)Campylobacter jejuni:Current Status and Future Trends.American Society for Microbiology,Washington,D.C.)。急性胃腸炎の原因であることに加えて、C.jejuni感染は、全身性麻痺の最も通常の原因である神経障害の1形態である、Guillain−Barre症候群の発症に先立つ頻発するものとして関係している(Ropper(1992)N.Engl.J.Med.326:1130−1136)。Guillain−Barre症候群に関連する最も通常のC.jejuniの血清型は、O:19であり(Kuroki(1993)Ann.Neurol.33;243−247)、そしてこのことは、この血清型に属する株のリポポリサッカリド(LPS)構造体の詳細な研究を興した(Aspinallら(1994a)Infect.Immun.62:2122−2125;Aspinallら(1994b)Biochemistry 33:241−249;およびAspinallら(1994c)Biochemistry 33:250−255)。
【0006】
GD1a、GD3、GM1およびGT1aの末端オリゴサッカリド部分に同一な末端オリゴサッカリド部分は、種々のC.jejuni O:19株において見出されている。C.jejuni OH4384は、血清型O:19に属し、そして一時期の下痢の期間の後にGuillain−Barre症候群の発症した患者から単離された(Aspinallら(1994a)、前記)。これは、トリシアル化ガングリオシドGT1aを模倣する外部コアLPSを有することが示された。LPSのサッカリド部分によって宿主構造体の分子的擬態は、免疫応答をくぐり抜けるこの方法を使用する種々の粘膜性病因の有毒因子であるとみなされる(Moranら(1996a)FEMS Immunol.Med.Microbiol.16:105−115;Moranら(1996b)J.Endotoxin Res.3.521−531)。
【0007】
結論として、LPS合成に関係する遺伝子の同定およびそれらの制御の研究は、これらの細菌によって使用される病原性の機構のよりよい理解のために考慮に値して有益である。さらに、治療剤としてのガングリオシドの利用、およびガングリオシド機能の研究は、所望のガングリオシドおよびガングリオシド模倣物の便利で且つ効果的な合成方法によって促進される。3’−nLMおよび6’−nLMの合成への酵素的アプローチおよび化学的アプローチの組み合わせが、記載されている(GaudinoおよびPaulson(1994)J.Am.Chem.Soc.116:1149−1150)。しかし、従来で利用可能な酵素的方法は、十分な量で十分に低コストで、実践的な大規模ガングリオシド合成のために、効率的に酵素を生成することの困難を被っている。従って、大規模生産に利用可能なガングリオシド合成に関する新規酵素についての必要性が存在する。また、ガングリオシド合成のためのより効率的な方法についての必要性が存在する。本発明は、これらの必要性および他の必要性を充足する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(本発明の要旨)
本発明は、原核生物のグリコシルトランスフェラーゼ酵素およびこの酵素をコードする核酸を提供する。1つの実施形態において、本発明は、単離された核酸分子および/または組換え核酸分子を提供し、この核酸分子は、ポリヌクレオチド配列をコードし、このポリヌクレオチド配列は、以下からなる群より選択されるポリペプチドを、コードする:
a)脂質A生合成アシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、ここでこのポリペプチドは、配列番号1に示されるような、C.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド350〜1234(ORF2a)によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド;
b)グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、ここでこのポリペプチドは、配列番号1に示されるような、C.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド1234〜2487(ORF3a)によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド;
c)グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、ここでこのポリペプチドは、配列番号1に示されるような、C.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド2786〜3952(ORF4a)によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも約100アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約50%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド;
d)β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、ここでこのGalNAcトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号17に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約77%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド;
e)β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、ここでこのガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号27または配列番号29に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を有する、ポリペプチド;
f)α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性、またはα2,3シアリルトランスフェラーゼ活性およびα2,8シアリルトランスフェラーゼ活性の両方のいずれかを有するポリペプチドであって、ここでこのポリペプチドは、配列番号3、配列番号5、配列番号7または配列番号10の1つ以上に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも約60アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約66%同一であるアミノ酸配列を有する、ポリペプチド;
g)シアル酸合成活性を有するポリペプチドであって、ここでこのポリペプチドは、配列番号1に示されるような、C.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド6924〜7961によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド;
h)シアル酸生合成活性を有するポリペプチドであって、ここでこのポリペプチドは、配列番号1に示されるような、C.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド8021〜9076によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド;
i)CMP−シアル酸合成酵素活性を有するポリペプチドであって、ここでこのポリペプチドは、配列番号1に示されるような、C.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド9076〜9738によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも約65%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド;
j)アセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、ここでこのポリペプチドは、配列番号1に示されるような、C.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド9729〜10559によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも約65%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド;および
k)グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、ここでこのポリペプチドは、配列番号1に示されるような、C.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド10557〜11366の逆相補配列によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも約65%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド。
【0009】
本発明において好ましい実施形態において、本発明は、単離された核酸分子または組換え核酸分子を提供し、この核酸は、ポリヌクレオチド配列を含み、このポリヌクレオチド配列は、以下からなる群より選択される1つ以上のポリペプチドをコードする:a)α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性およびα2,8シアリルトランスフェラーゼ活性の両方を有するシアリルトランスフェラーゼポリペプチドであって、ここでこのシアリルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号3に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも約60アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約76%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド;b)β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ活性を有するGalNAcトランスフェラーゼポリペプチドであって、ここでこのGalNAcトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号17に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド;c)β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有するガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドであって、ここでこのガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号27に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド。
【0010】
また、本発明によって、本発明のグリコシルトランスフェラーゼ核酸が、所望される宿主細胞中でグリコシルトランスフェラーゼの発現を促進するプロモーターおよび他の制御配列と作動可能に連結される、発現カセットおよび発現ベクターが提供される。本発明のグリコシルトランスフェラーゼを発現する組換え宿主細胞もまた、提供される。
【0011】
本発明はまた、以下からなる群から選択される、単離されたポリペプチドまたは組換え生産されたポリペプチドを、提供する:
a)脂質A生合成アシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、ここでこのポリペプチドは、配列番号1に示されるような、C.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド350〜1234(ORF2a)によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド;
b)グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、ここでこのポリペプチドは、配列番号1に示されるような、C.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド1234〜2487(ORF3a)によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド;
c)グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、ここでこのポリペプチドは、配列番号1に示されるような、C.jejuni株OH4384のLOS
生合成遺伝子座のヌクレオチド2786〜3952(ORF4a)によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも約100アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約50%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド;
d)β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、ここでこのGalNAcトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号17に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約77%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド;
e)β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、ここでこのガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号27または配列番号29に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を包含する、ポリペプチド;
f)α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性、またはα2,3シアリルトランスフェラーゼ活性およびα2,8シアリルトランスフェラーゼ活性の両方のいずれかを有するポリペプチドであって、ここでこのポリペプチドは、配列番号3、配列番号5、配列番号7または配列番号10に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも約60アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約66%同一であるアミノ酸配列を有する、ポリペプチド;
g)シアル酸合成活性を有するポリペプチドであって、ここでこのポリペプチドは、配列番号1に示されるような、C.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド6924〜7961によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド;
h)シアル酸生合成活性を有するポリペプチドであって、ここでこのポリペプチドは、配列番号1に示されるような、C.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド8021〜9076によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド;
i)CMP−シアル酸合成酵素活性を有するポリペプチドであって、ここでこのポリペプチドは、配列番号1に示されるような、C.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド9076〜9738によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも約65%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド;
j)アセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、ここでこのポリペプチドは、配列番号1に示されるような、C.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド9729〜10559によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも約65%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド;および
k)グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、ここでこのポリペプチドは、配列番号1に示されるような、C.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド10557〜11366の逆相補配列によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも約65%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド。
【0012】
本発明において好ましい実施形態において、本発明は、グリコシルトランスフェラーゼポリペプチドを提供し、これは、以下を含む:a)α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性およびα2,8シアリルトランスフェラーゼ活性の両方を有するシアリルトランスフェラーゼポリペプチドであり、ここで、このシアリルトランスフェラーゼポリペプチドが、配列番号3に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも60アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも76%同一であるアミノ酸配列を含有する、ポリペプチド;b)β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ活性を有するGalNAcトランスフェラーゼポリペプチドであって、ここで、このGalNAcトランスフェラーゼポリペプチドが、配列番号17に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも50アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する、ポリペプチド;およびc)β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有するガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドであって、ここで、このガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドが、配列
番号27または配列番号29に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも50アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する、ポリペプチド。
【0013】
本発明はまた、シアリル化オリゴサッカリドの合成のための反応混合物を提供する。この反応混合物は、α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性およびα2,8シアリルトランスフェラーゼ活性の両方を有するシアリルトランスフェラーゼポリペプチドを含む。またこの反応混合物中には、ガラクトシル化アクセプター部分、およびシアリル−ヌクレオチド糖も存在する。このシアリルトランスフェラーゼは、シアリル−ヌクレオチド糖からの第1のシアル酸残基(例えば、CMP−シアル酸)を、α2,3結合でガラクトシル化アクセプター部分に転移し、そしてさらに、第2のシアル酸残基を、α2,8結合で第1のシアル酸残基に付加する。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、シアリル化オリゴサッカライドの合成のための方法を提供する。これらの方法は、α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性およびα2,8シアリルトランスフェラーゼ活性の両方を有するシアリルトランスフェラーゼポリペプチド、ガラクトシル化アクセプター部分、ならびにシアリル−ヌクレオチド糖を含む反応混合物を、シアリルトランスフェラーゼポリペプチドが、α2,3結合でシアリル−ヌクレオチド糖からの第1のシアル酸残基を、ガラクトシル化アクセプター部分に転移し、そしてさらに、第2のシアル酸残基を、α2,8結合で第1のシアル酸残基に転移する適切な条件下でインキュベートする工程を、包含する。
・本発明はまた、以下も提供し得る:
・項目1. ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子または組換え核酸分子であって、当該ポリペプチドは、
a)脂質A生合成アシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号1に示されるようなC.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド350〜1234(ORF2a)によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
b)グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号1に示されるようなC.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド1234〜2487(ORF3a)によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
c)グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号1に示されるようなC.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド2786〜3952(ORF4a)によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも約100アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約50%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
d)β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、当該GalNAcトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号17に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約77%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
e)β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、当該ガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号27または配列番号29に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を有する、ポリペプチド;
f)α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、当該シアリルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号3、配列番号5、配列番号7または配列番号10のうちの1つ以上に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも約60アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約66%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
g)シアル酸合成酵素活性を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号1に示されるようなC.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド6924〜7961によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
h)シアル酸生合成活性を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号1に示されるようなC.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド8021〜9076によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
i)CMP−シアル酸合成酵素活性を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号1に示されるようなC.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド9076〜9738によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約65%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
j)アセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号1に示されるようなC.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド9729〜10559によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約65%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;および
k)グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号1に示されるようなC.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド10557〜11366の逆相補体によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約65%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
からなる群より選択される、単離された核酸分子または組換え核酸分子。
・項目2. 項目1に記載の単離された核酸分子または組換え核酸分子であって、当該核酸は、
a)α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性およびα2,8シアリルトランスフェラーゼ活性の両方を有するシアリルトランスフェラーゼポリペプチドであって、当該シアリルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号3に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
b)β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ活性を有するGalNAcトランスフェラーゼポリペプチドであって、当該GalNAcトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号17に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
c)β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有するガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドであって、当該ガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号27に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
からなる群より選択される1つ以上のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子または組換え核酸分子。
・項目3. 項目1に記載の核酸分子であって、上記配列比較は、語長(wordlength)(W)3、G=11、E=1およびBLOSUM62置換マトリックスにてBLASTP Version 2.0アルゴリズムを使用して実施される、核酸分子。
・項目4. 項目1に記載の核酸分子であって、上記領域は、上記ポリペプチドのアミノ酸配列の全長にわたって延びる、核酸分子。
・項目5. 項目1に記載の核酸分子であって、
a)上記シアリルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号3、配列番号5、配列番号7、もしくは配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み;
b)上記GalNacトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み;
c)上記ガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号27もしくは配列番号29に示されるアミノ酸配列を含む;
核酸分子。
・項目6. 項目5に記載の核酸分子であって、
a)上記シアリルトランスフェラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号2、配列番号4、もしくは配列番号6に示される核酸配列と、少なくとも約50ヌクレオチド長の領域にわたって、少なくとも約75%同一であり;
b)上記β1,4−GalNacトランスフェラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号16に示される核酸配列と、少なくとも約50ヌクレオチド長の領域にわたって、少なくとも約75%同一であり;
c)上記β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号26もしくは配列番号28に示される核酸配列と、少なくとも約50ヌクレオチド長の領域にわたって、少なくとも約75%同一である;
核酸分子。
・項目7. 項目6に記載の核酸分子であって、上記配列比較は、語長(wordlength)(W)11、G=5、E=2、q=−2、およびr=1にてBLASTN Version 2.0アルゴリズムを使用して実施される、核酸分子。
・項目8. 項目6に記載の核酸分子であって、
a)上記シアリルトランスフェラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号2、配列番号4、もしくは配列番号6に示される核酸配列を有し;
b)上記GalNacトランスフェラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号16に示される核酸配列を有し;
c)上記ガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号26もしくは配列番号28に示される核酸配列を有する;
核酸分子。
・項目9. 項目5に記載の核酸分子であって、上記シアリルトランスフェラーゼは、α2,3−シアリルトランスフェラーゼ活性とα2,8−シアリルトランスフェラーゼ活性との両方を有する二機能性シアリルトランスフェラーゼであり、当該シアリルトランスフェラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号2、配列番号4に示される核酸配列と少なくとも約75%同一である、核酸分子。
・項目10. 項目1に記載の核酸分子を含む、発現カセット。
・項目11. 項目10に記載の発現カセットを含む、発現ベクター。
・項目12. 項目11に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
・項目13. 単離されたポリペプチドまたは組換え生産されたポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、
a)脂質A生合成アシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号1に示されるようなC.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド350〜1234(ORF2a)によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
b)グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号1に示されるようなC.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド1234〜2487(ORF3a)によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
c)グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号1に示されるようなC.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド2786〜3952(ORF4a)によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも約100アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約50%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
d)β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、当該GalNAcトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号17に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約77%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
e)β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、当該ガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号27または配列番号29に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
f)α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、当該シアリルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号3、配列番号5、配列番号7または配列番号10に示されるようなアミノ酸配列と、少なくとも約60アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約66%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
g)シアル酸合成酵素活性を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号1に示されるようなC.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド6924〜7961によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
h)シアル酸生合成活性を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号1に示されるようなC.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド8021〜9076によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
i)CMP−シアル酸合成酵素活性を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号1に示されるようなC.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド9076〜9738によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約65%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
j)アセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号1に示されるようなC.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド9729〜10559によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約65%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;および
k)グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号1に示されるようなC.jejuni株OH4384のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド10557〜11366の逆相補体によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約65%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
からなる群より選択される、単離されたポリペプチドまたは組換え生産されたポリペプチド。
・項目14. 項目13に記載の単離されたポリペプチドまたは組換え生産されたポリペプチドであって、該ポリペプチドは、組換え生産されており、かつ少なくとも部分的に精製されている、ポリペプチド。
・項目15. 項目13に記載の単離されたポリペプチドまたは組換え生産されたポリペプチドであって、該ポリペプチドは、異種宿主細胞により発現された、ポリペプチド。
・項目16. 項目15に記載の単離されたポリペプチドまたは組換え生産されたポリペプチドであって、上記宿主細胞はE.coliである、ポリペプチド。
・項目17. 項目13に記載の単離されたポリペプチドまたは組換え生産されたポリペプチドであって、該ポリペプチドは、C.jejuni血清型O:2ポリペプチドである、ポリペプチド。
・項目18. 項目13に記載の単離されたポリペプチドまたは組換え生産されたポリペプチドであって、該ポリペプチドは、gに記載のシアリルトランスフェラーゼポリペプチドであり、当該ポリペプチドは、
α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性およびα2,8シアリルトランスフェラーゼ活性の両方を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号3に示されるようなC.jejuni株OH4384由来のLOS生合成遺伝子座のORF 7aによりコードされるcstIIシアリルトランスフェラーゼのアミノ酸配列と少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号5に示されるようなC.jejuni血清型O:10由来のcstIIシアリルトランスフェラーゼのアミノ酸配列と少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号7に示されるようなC.jejuni血清型O:41由来のcstIIシアリルトランスフェラーゼのアミノ酸配列と少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号10に示されるようなC.jejuni血清型O:2由来のcstIIシアリルトランスフェラーゼのアミノ酸配列と少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
からなる群より選択される、ポリペプチド。
・項目19. 項目18に記載の単離されたシアリルトランスフェラーゼポリペプチドまたは組換え生産されたシアリルトランスフェラーゼポリペプチドであって、該シアリルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号3、配列番号5.配列番号7、および配列番号10からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、ポリペプチド。
・項目20. 項目13に記載のポリペプチドであって、
a)fのシアリルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号3、配列番号5、配列番号7、もしくは配列番号10に示されるアミノ酸配列を有し;
b)dの1,4−GalNAcトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号17に示されるアミノ酸配列を有し;
c)eのβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼは、配列番号27もしくは配列番号29に示されるアミノ酸配列を有する;
ポリペプチド。
・項目21. シアリル化オリゴサッカライドの合成のための反応混合物であって、当該反応混合物は、
α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性およびα2,8シアリルトランスフェラーゼ活性の両方を有する、シアリルトランスフェラーゼポリペプチド;
ガラクトシル化アクセプター部分;ならびに
シアリル−ヌクレオチド糖;
を含み、
該シアリルトランスフェラーゼは、α2,3結合において当該シアリル−ヌクレオチド糖から当該ガラクトシル化アクセプター部分へと第1のシアル酸残基を転移し、そしてさらに、α2,8結合において第2のシアル酸残基を当該第1のシアル酸残基へと転移する、
反応混合物。
・項目22. 項目21に記載の反応混合物であって、上記シアリル−ヌクレオチド糖は、CMP−シアル酸である、反応混合物。
・項目23. 項目21に記載の反応混合物であって、上記シアリルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号3に示されるアミノ酸配列と、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を有する、反応混合物。
・項目24. 項目23に記載の反応混合物であって、上記シアリルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する、反応混合物。
・項目25. 項目21に記載の反応混合物であって、上記ガラクトシル化アクセプターは、式Galβ1,4−RまたはGalβ1,3−Rを有する化合物を含み、当該式において、Rは、H、サッカライド、オリゴサッカライド、または少なくとも1つの炭水化物原子を有するアグリコン基からなる群より選択される、反応混合物。
・項目26. 項目21に記載の反応混合物であって、上記ガラクトシル化アクセプターは、タンパク質、脂質、またはプロテオグリカンに結合している、反応混合物。
・項目27. 項目21に記載の反応混合物であって、上記シアリル化オリゴサッカライドは、ガングリオシド、ガングリオシド模倣物、またはガングリオシド炭水化物部分である、反応混合物。
・項目28. 項目21に記載の反応混合物であって、上記シアリル化オリゴサッカライドは、リゾガングリオシド、リゾガングリオシド模倣物、またはリゾガングリオシド炭水化物部分である、反応混合物。
・項目29. 項目27に記載の反応混合物であって、上記ガラクトシル化アクセプター部分は、Gal4Glc−RおよびGal3GalNAc−Rからなる群より選択される式を有する化合物を含み、当該式において、Rは、セラミドまたは他の糖脂質からなる群より選択され、Rは、Gal4GlcCer、(Neu5Ac3)Gal4GlcCer、および(Neu5Ac8Neu5c3)Gal4GlcCerからなる群より選択される、反応混合物。
・項目30. 項目29に記載の反応混合物であって、上記ガラクトシル化アクセプターは、Gal4GlcCer、Gal3GalNAc4(Neu5Ac3)Gal4GlcCer、Gal3GalNAc4(Neu5Ac8Neu5c3)Gal4GlcCerからなる群より選択される、反応混合物。
・項目31. 項目21に記載の反応混合物であって、上記ガラクトシル化アクセプターは、アクセプターサッカライドと、UDP−Galおよびガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドとを接触させることによって形成され、当該ガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドは、当該UDP−Galから当該アクセプターへとGal残基を転移させる、反応混合物。
・項目32. 項目31に記載の反応混合物であって、上記ガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドは、β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有し、当該ガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号27もしくは配列番号29に示されるアミノ酸配列と、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を有する、反応混合物。
・項目33. 項目32に記載の反応混合物であって、上記ガラクトシルトランスフェラーゼは、配列番号27もしくは配列番号29に示されるアミノ酸配列を有する、反応混合物。
・項目34. 項目31に記載の反応混合物であって、上記アクセプターサッカライドは、末端GalNAc残基を含む、反応混合物。
・項目35. 項目34に記載の反応混合物であって、上記ガラクトシルトランスフェラーゼのアクセプターサッカライドは、GalNAcトランスフェラーゼのアクセプターと、UDP−GalNAcおよびGalNAcトランスフェラーゼポリペプチドと接触させることによって形成され、当該GalNAcトランスフェラーゼポリペプチドは、当該UDP−GalNAcから、当該GalNAcトランスフェラーゼのアクセプターへと、GalNAc残基を転移させる、反応混合物。
・項目36. 項目35に記載の反応混合物であって、上記GalNAcトランスフェラーゼポリペプチドは、β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ活性を有し、当該GalNAcトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号17に示されるアミノ酸配列と、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を有する、反応混合物。
・項目37. 項目29に記載の反応混合物であって、上記GalNAcトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号17に示されるアミノ酸配列を有する、反応混合物。
・項目38. シアリル化オリゴサッカライドを合成するための方法であって、当該方法は、
反応混合物(α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性およびα2,8シアリルトランスフェラーゼ活性の両方を有する、シアリルトランスフェラーゼポリペプチド;ガラクトシル化アクセプター部分;ならびにシアリル−ヌクレオチド糖;を含む)を、当該シアリルトランスフェラーゼが、α2,3結合において当該シアリル−ヌクレオチド糖から当該ガラクトシル化アクセプター部分へと第1のシアル酸残基を転移し、そしてさらに、α2,8結合において第2のシアル酸残基を当該第1のシアル酸残基へと転移する条件下でインキュベートする工程;
を包含する、方法。
・項目39. 項目38に記載の方法であって、前記シアリル化オリゴサッカライドはガングリオシドである、方法。
・項目40. 項目38に記載の方法であって、前記シアリルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号3に示されるアミノ酸配列と、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を有する、方法。
・項目41. 項目40に記載の方法であって、前記シアリルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する、方法。
・項目42. 項目38に記載の方法であって、前記シアリル化オリゴサッカライドは、ガングリオシド、リゾガングリオシド、ガングリオシド模倣物、またはリゾガングリオシド模倣物である、方法。
【0015】
(詳細な説明)
(定義)
本発明のグリコシルトランスフェラーゼ、反応混合物および方法は、モノサッカリドをドナー基質からアクセプター分子に転移させるために有用である。この付加は一般的に、生体分子上のオリゴサッカリドの非還元性末端、または炭水化物部分で起こる。本明細書で定義される生体分子としては、炭水化物、タンパク質(例えば、糖タンパク質)および脂質(例えば、糖脂質、リン脂質、スフィンゴ脂質およびガングリオシド)のような、生物学的に重要な分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
以下の略号を本明細書中で使用する:
Ara=アラビノシル;
Fru=フルクトシル;
Fuc=フコシル;
Gal=ガラクトシル;
GalNAc=N−アセチルガラクトサミニル;
Glc=グルコシル;
GlcNAc=N−アセチルグルコトサミニル;
Man=マンノシル;および
NeuAc=シアリル(N−アセチルノイラミニル)。
【0017】
用語「シアル酸」とは、9つの炭素を含むカルボン酸化された糖のファミリーの任意のメンバーのことをいう。シアル酸ファミリーの最も一般的なメンバーは、N−アセチルノイラミン酸(2−ケト−5−アセトアミド(acetamindo)−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノヌロピラノース−1−オン酸(galactononulopyranos−l−onic acid)(しばしば、Neu5Ac、NeuAcまたはNANAと略される))である。このファミリーの第2のメンバーは、N−グリコリル−ノイラミン酸(Neu5GcまたはNeuGc)であり、このNeuAcのN−アセチル基は、ヒドロキシル化されている。シアル酸ファミリーの第3のメンバーは、2−ケト−3−デオキシ−ノヌロソン酸(KDN)である(Nadanoら(1986)J.Biol.Chem.261:11550−11557;Kanamoriら(1990)J.Biol.Chem.265:21811−21819)。9−O−C−Cアシル−Neu5Ac様の9−O−ラクチル−Neu5Acまたは9−O−アセチル−Neu5Ac、9−デオキシ−9−フルオロ−Neu5Acおよび9−アジド−9−デオキシ−Neu5Acのような9−置換シアル酸もまた、含まれる。シアル酸ファミリーの概説としては、例えば、Varki(1992)Glycobiology 2:25−40;Sialic Acids:Chemistry,Metabolism and Function,R.Schauer,Ed.(Springer−Verlag,New York(1992);Schauer,Methods in Enzymology,50:64−89(1987)、およびSchaur、Advances in Carbohydrate Chemistry and Biochemistry,40:131−234を参照のこと。シアル酸付加手順におけるシアル酸化合物の合成および使用は、1992年10月1日に公開された国際出願WO92/16640に開示されている。
【0018】
グリコシルトランスフェラーゼに対するドナー基質は、活性化された糖ヌクレオチドである。このような活性化された糖は、概して、ウリジン二リン酸およびグアノシン二リン酸、ならびにヌクレオシド二リン酸またはヌクレオシド一リン酸が脱離基として働く糖のシチジン一リン酸誘導体からなる。細菌系、植物系および真菌系は、時々、他の活性化された糖ヌクレオチドを使用し得る。
【0019】
オリゴ糖は、還元末端の糖が実際に還元糖であるか否か関わらず、還元末端および非還元末端を有すると考えられている。受容された命名法に従って、オリゴ糖は、非還元末端を左にそして還元末端を右にして、本明細書中に記述される。
【0020】
本明細書中に記載される全てのオリゴ糖は、非還元糖(例えば、Gal)についての名前および略称と共に記載され、グリコシド結合(αまたはβ)の配置、環の結合、結合に関与する還元糖の環の位置が続き、次いで還元糖の名前または略称(例えば、GlcNAc)がくる。2つの糖の間の結合は、例えば、2,3、2→3または(2,3)として表現され得る。糖の各々は、ピラノースまたはフラノースである。
【0021】
用語「核酸」とは、一本鎖形態または二本鎖形態のいずれかのデオキシリボヌクレオチドポリマーまたはリボヌクレオチドポリマーのことをいい、他に制限がなければ、天然に存在するヌクレオチドと類似の様式で核酸とハイブリダイズする天然のヌクレオチドの既知のアナログを含有する。他に指示がなければ、特定の核酸配列は、その相補的配列を含む。
【0022】
用語「作動可能に連結される」とは、核酸発現制御配列(例えば、プロモーター、単一の配列または転写因子結合部位のアレイ)と第2の核酸配列との間の機能的な連結のことをいい、ここで、発現制御配列は、第2の配列に対応する核酸の転写および/または翻訳に影響する。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「異種ポリヌクレオチド」または「異種核酸」とは、特定の宿主細胞に対し外来の供給源に由来するポリヌクレオチドまたは核酸、あるいは、同一の供給源由来の場合、その元の形態から改変されるポリヌクレオチドまたは核酸である。従って、宿主細胞中の異種グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子は、特定の宿主細胞に対し内因性であるが改変されている、グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子を含む。異種配列の改変が、例えば、プロモーターに作動可能に連結され得るDNAフラグメントを生成するために、DNAを制限酵素によって処理することにより生じ得る。部位特異的変異
誘発のような技術もまた、異種配列を改変するために有用である。
【0024】
細胞に関して使用される場合、用語「組換え」は、細胞が異種核酸を複製するか、あるいは異種核酸によってコードされるペプチドまたはタンパク質を発現することを示す。組換え細胞は、ネイティブ(非組換え型)形態の細胞の中に見出されない遺伝子を含み得る。組換え細胞はまた、ネイティブ形態の細胞に見出されるが、人工的な手段によって改変されかつ細胞に再導入される遺伝子を含む細胞をいう。この用語はまた、細胞から核酸を除去することなしに改変された、細胞に対して内因性の核酸を含む細胞を含有する;このような改変は、遺伝子の置換、部位特異的突然変異および当業者に公知の関連する技術によって獲得されるものを含む。
【0025】
「組換え核酸」は、天然の状態から変えられた形態の核酸である。例えば、用語「組換え核酸」は、核酸が天然に生じる形態では連結されない、プロモーターおよび/または他の発現制御領域、プロセシングシグナル、別のコード領域などに、作動可能に連結されるコード領域を含む。「組換え核酸」はまた、例えば、対応する天然に存在する核酸と比較して、その中において、1つ以上のヌクレオチドが、置換され、欠失され、挿入されているコード領域または他の核酸を含む。改変は、インビトロでの操作、インビボでの改変、合成法などによって導入され得る。
【0026】
「組換え産生されるポリペプチド」は、組換え核酸および/または異種核酸によってコードされるポリペプチドである。例えば、E.coliの中に導入されるC.jejuniのグリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸から発現されるポリペプチドは、「組換え産生されるポリペプチド」である。非ネイティブプロモーターに作動可能に連結される核酸により発現されるタンパク質は、「組換え産生されるポリペプチド」の一例である。本発明の組換え産生されるポリペプチドは、精製されていない形態(例えば、細胞溶解物またはインタクトな細胞として)でか、または完全にかもしくは部分的に精製された後の形態で、ガングリオシドおよび他のオリゴ糖を合成するために使用され得る。
【0027】
「組換え発現カセット」または単純に「発現カセット」は核酸エレメントを用いて組換え的にまたは合成的に生成される核酸構築物であり、ここで核酸エレメントは、このような配列と適合し得る宿主中の構造遺伝子の発現に影響し得る。発現カセットは、少なくともプロモーターおよび必要に応じて、転写終結シグナルを含む。代表的には、この組換え発現カセットは、転写されるべき核酸(例えば、所望のポリペプチドをコードする核酸)、およびプロモーターを含む。発現への影響において必要なまたは役立つさらなる因子はまた、本明細書中に記載されるように使用され得る。例えば、発現カセットはまた、宿主細胞からの発現タンパク質の分泌を方向付ける、シグナル配列をコードするヌクレオチド配列を含み得る。遺伝子発現に影響する転写終結シグナル、エンハンサーおよび他の核酸配列はまた、発現カセット中に含まれ得る。
【0028】
「部分配列」とは、核酸またはアミノ酸のより長い配列(例えば、ポリペプチド)の一部をそれぞれ含む核酸またはアミノ酸の配列のことをいう。
【0029】
用語「単離された」とは、実質的にかまたは本質的に、通常そのネイティブ状態において見出される材料に付随する構成要素を含まない材料をいうことを意味する。代表的には、単離された本発明のタンパク質または核酸は、少なくとも約80%純粋、通常少なくとも約90%そして好ましくは少なくとも約95%純粋である。純度または同質性は、タンパク質サンプルまたは核酸サンプルのアガロースゲル電気泳動またはポリアクリルアミドゲル電気泳動のような当該分野で周知の多数の手段によって同定され得、染色による可視化が続く。特定の目的のために、高分解能が必要とされ、そして精製のためにHPLCまたは同様の手段が使用される。「単離された」酵素は、例えば、実質的にまたは本質的に
、酵素の活性を妨げる構成要素を含まない酵素である。「単離された核酸」とは、例えば、核酸が天然に生じる細胞の染色体には存在しない核酸を含む。
【0030】
2つ以上の核酸配列またはポリペプチド配列の文脈において、用語「同一の」または「同一性」%とは、同一であるかまたは特定の割合のアミノ酸残基もしくはヌクレオチドを有する二つ以上の配列または部分配列のことをいい、以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用するか、または視覚による検査によって測定されるように、最大の対応について比較されそして整列される場合、同一である。
【0031】
2つの核酸またはポリペプチドの文脈において、句「実質的に同一」とは、以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用するか、または視覚による検査によって測定されるように、最大の対応について比較されそして整列される場合、少なくとも60%、好ましくは80%、最も好ましくは90〜95%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の同一性を有する2つ以上の配列または部分配列をいう。好ましくは、実質的な同一性は、配列の領域にわたって存在し、これは、少なくとも約50残基長、より好ましくは少なくとも100残基長の領域にわたり、そして最も好ましくは、配列は、少なくとも約150残基にわたり実質的に同一である。最も好ましい実施形態において、この配列は、コード領域の全長にわたり実質的に同一である。
【0032】
配列の比較のために、代表的には、1つの配列が参照配列として働き、これに対して、試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列は、コンピューターにインプットされ、部分配列の座標が示され、そして必要な場合、配列アルゴリズムプログラムのパラメーターが、指定される。これらの配列比較アルゴリズムは、次いで、指定されたプログラムのパラメーターに基づき、参照配列に対する試験配列について、配列同一性%を計算する。
【0033】
比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith&Watermanの局所的相同性アルゴリズム(Adv.Appl.Math.2:482(1981))によってか、Needleman&Wunschの相同性アラインメントアルゴリズム(J.Mol.Biol.48:443(1970))によってか、Pearson&Lipmanの類似性の検索方法(Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988))によってか、これらのアルゴリズムのコンピューター化された実行(GAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI)によってか、または視覚検査(一般には、Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubelら、編、Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley&Sons,Inc.,(1995補遺)(Ausubel)を参照のこと)によって実施される。
【0034】
配列同一性%および配列類似性%を決定するのに適切なアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、Altschulら、(1990)J.Mol.Biol.215:403−410およびAltschuelら(1977)Nucleic Acids Res.25:3389−3402に、それぞれ記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National
Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通して公的に利用可能である。例えば、比較は、語長(W)11、G=5、E=2、q=−2およびr=1を有する
BLASTN Version 2.0アルゴリズム、ならびに両方の鎖の比較を使用して、実施され得る。アミノ酸配列については、語長(W)3、G=11、E=1のデフォルト値およびBLOSUM62置換マトリックスを有するBLASTP Version2.0アルゴリズムが、使用され得る(Henikoff&Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照のこと)。
【0035】
配列同一性%の計算に加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計学的な分析を実施する(例えば、Karlin&Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873−5787(1993)を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの測定値は、最小合計確率(P(N))であり、これは、可能性の指標を提供し、これによって2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の一致が、偶然に生じる。例えば、参照核酸と試験核酸を比較して、最小合計確率が、約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、そして最も好ましくは約0.001未満である場合、核酸が、参照配列に対して類似であると見なされる。
【0036】
句「〜に特異的にハイブリダイズする」とは、配列が、複合体混合物(例えば、全細胞)DNAまたはRNA中に存在する場合、ストリンジェントな条件の下における、特定のヌクレオチド配列のみへの分子の結合、2重化またはハイブリダイズをいう。この用語「ストリンジェントな条件」とは、プローブがその標的部分配列にハイブリダイズするが、他の配列にはハイブリダイズしない条件をいう。ストリンジェントな条件は、配列依存的であり、そして異なる環境においても異なる。より長い配列は、より高い温度にて特異的にハイブリダイズする。一般的に、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度およびpHにて特定の配列についての熱的融点(Tm)より約5℃低い温度として選択される。このTmは、標的配列に対し相補的なプローブの50%が、標的配列に対し平衡状態にてハイブリダイズする温度(規定されたイオン強度、pHおよび核酸濃度の下)である。(標的配列が、一般に、Tmにて過度に存在する場合、プローブの50%は、平衡状態である)。代表的には、ストリンジェントな条件は、塩濃度が約1.0M Naイオン未満であり、代表的には、pH7.0〜8.3にて約0.01〜1.0M Naイオン濃度(または他の塩)であり、温度は、短いプローブ(約10〜50ヌクレオチド)について少なくとも約30℃であり、そして、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドより長い)について少なくとも約60℃の条件である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によって達成され得る。
【0037】
2つの核酸配列またはポリペプチドが、実質的に同一であるというさらなる指標は、以下に記載されるように、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが、第2の核酸によってコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性である、というものである。従って、ポリペプチドは、代表的に、第2のポリペプチド(例えば、2つのポリペプチドが、単に保存的置換によってのみ異なる)に対し実質的に同一である。2つの核酸配列が、実質的に同一である別の指標は、以下に記載されるように、2つの分子がストリンジェントな条件の下で互いにハイブリダイズする、というものである。
【0038】
抗体に対して言及される場合、句「タンパク質に特異的に結合する」または「〜と特異的に免疫反応性である」は、タンパク質または他の生物製剤の外来性の集団の存在下において、タンパク質の存在について決定力のある結合反応のことをいう。従って、指定された免疫学的アッセイ条件の下では、特定の抗体は、特定のタンパク質に優先的に結合し、そしてサンプル中に存在する他のタンパク質に、有意な量では結合しない。このような条件の下でのタンパク質への特異的な結合は、抗体を必要とし、この抗体は、特定のタンパク質に対するその特異性について選択される。種々の免疫アッセイ形式が、特定のタンパ
ク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択するために使用される。例えば、固相ELISA免疫アッセイは、タンパク質と特異的に免疫反応性であるモノクローナル抗体を選択するために日常的に使用される。特定の免疫反応性を決定するために使用され得る免疫アッセイ形式および条件の記述については、HarlowおよびLane(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New Yorkを参照のこと。
【0039】
特定のポリヌクレオチド配列の「保存的に変更された改変体」とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドをいうか、あるいはポリヌクレオチドが、アミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の配列をいう。遺伝的コードの縮重のため、機能的に同一の多数の核酸が、任意の所定のポリペプチドをコードする。例えば、コドンCGU、CGC、CGA、CGG,AGAおよびAGGの全ては、アミノ酸アルギニンをコードする。従って、アルギニンがコドンによって特定される全ての位置において、これらのコドンは、コードされるポリペプチドを変えることなく、所望の対応する任意のコドンに変えられ得る。このような核酸の改変は、「保存的に変更された改変体」の一種である「サイレント改変体」である。ポリペプチドをコードする本明細書中に記載される全てのポリヌクレオチド配列はまた、他に記載がなければ、全ての可能性のあるサイレント改変体を示す。当業者は、核酸中の各コドン(AUGを除く:これは通常、メチオニンに対する唯一のコドンである)が、標準的な技術によって機能的に同一の分子を得るために変更され得ることを、認識する。従って、ポリペプチドをコードする核酸の「サイレント改変体」の各々は、記載された配列の各々を暗に示す。
【0040】
さらに、当業者は、コードされた配列中の単一のアミノ酸またはわずかな割合(代表的には、5%未満、より代表的には1%未満)のアミノ酸を変化するか、加えるか、または欠失する個々の置換物、欠失物または付加物は、その変更が、化学的に類似のアミノ酸によるアミノ酸の置換を生じる「保存的に変更された改変体」であることを認識する。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換テーブルが、当該分野で周知である。当業者は、融合タンパク質および融合タンパク質をコードする核酸の多数の保存的改変が、本質的に同一の産物を与えることを理解している。例えば、遺伝的コードの縮重に起因する「サイレント置換」(すなわち、コードされたポリペプチドにおいて変更を生じない核酸配列の置換)は、アミノ酸をコードする全ての核酸配列についての暗示される特徴である。本明細書中に記載される場合、配列は、好ましくは、酵素を生成するために使用される特定の宿主細胞(例えば、酵母、ヒトなど)中での発現のために最適化される。同様に、アミノ酸配列中の1つまたは少しのアミノ酸についての「保存的アミノ酸置換」は、特に類似する性質(上記の、定義の項を参照のこと)を有する、異なるアミノ酸で置換されるか、特定のアミノ酸配列もしくはアミノ酸をコードする特定の核酸配列に対して特に類似するものとしてもまた、容易に同定される。このような保存的に置換された任意の特定の配列の改変体は、本発明の特徴である。Creighton(1984)Proteins,W.H.FreemanおよびCompanyもまた参照のこと。さらに、コードされた配列中の単一のアミノ酸または低い割合のアミノ酸を変化するか、加えるかまたは欠失する個々の置換物、欠失物または付加物もまた、「保存的に変更された改変体」である。
【0041】
(好ましい実施形態の記載)
本発明は、新規のグリコシルトランスフェラーゼ酵素、および酵素触媒されるオリゴ糖の合成に関与する他の酵素を提供する。本発明のグリコシルトランスフェラーゼは、シアリルトランスフェラーゼを含み、このシアリルトランスフェラーゼは、α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性およびα2,8シアリルトランスフェラーゼ活性の両方を有する、二官能性のシアリルトランスフェラーゼを含む。β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ、β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ、シアル酸シンターゼ、CMP−シアル酸シンテターゼ、アセチルトランスフェラーゼ、および他の酵素もまた、提供される。本発明の酵素は、原核生物の酵素であり、Campylobacter jejuniの種々の株のリポオリゴサッカリド(LOS)の生合成に関与する酵素を含む。本発明はまた、グリコシルトランスフェラーゼの発現における使用のための、これらの酵素をコードする核酸、ならびに発現カセットおよび発現ベクターを提供する。さらなる実施形態において、本発明は、オリゴ糖を合成するために1つ以上の酵素が使用される、反応混合物および方法を提供する。
【0042】
本発明のグリコシルトランスフェラーゼは、いくつかの目的のために有用である。例えば、グリコシルトランスフェラーゼは、オリゴ糖(ガングリオシドおよび生物学的活性を有する他のオリゴ糖を含む)の化学酵素学的合成のためのツールとして有用である。本発明のグリコシルトランスフェラーゼおよびグリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸はまた、C.jejuniのようなガングリオシド模倣物を合成する生物体の病因メカニズムの研究のために有用である。この核酸は、例えば、ガングリオシド模倣物の合成に関与する遺伝子の発現の研究のための、プローブとして使用され得る。グリコシルトランスフェラーゼに対して惹起される抗体はまた、病因に関与するこれらの遺伝子の発現パターンを分析するために有用である。この核酸はまた、ガングリオシド模倣物(これは、病原体を宿主の免疫系から遮断し得る)の生合成に関与するCampylobacter酵素の発現を阻害するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの設計のために有用である。
【0043】
本発明のグリコシルトランスフェラーゼは、以前から利用可能なグリコシルトランスフェラーゼを越えるいくつかの利点を提供する。本発明のような細菌のグリコシルトランスフェラーゼは、対応する哺乳動物の構造と同一である、オリゴ糖の形成を触媒し得る。さらに、細菌の酵素は、哺乳動物のグリコシルトランスフェラーゼと比較して、多量に生成するのが容易で、そして高価ではない。従って、本発明のような細菌のグリコシルトランスフェラーゼは、多量に得ることが難しくあり得る哺乳動物のグリコシルトランスフェラーゼに対する魅力的な代替品である。細菌由来の本発明のグリコシルトランスフェラーゼは、比較的高価ではない原核生物の発現系を使用して、多量の酵素の発現を容易にする。代表的には、ポリペプチド産物の発現のための原核生物系は、哺乳動物細胞培養系でのポリペプチドの発現よりコストが低い。
【0044】
さらに、本発明の新規の二官能性のシアリルトランスフェラーゼは、ガングリオシド(これは、シアル酸を有し、これは、第二のシアル酸にα2,8結合によって結合され、次いで、第二のシアル酸は、ガラクトシル化されたアクセプターにα2,3結合される)のような生物学的に重要な分子の酵素的合成を単純化する。これらの構造体を合成するための以前の方法は、2つの別個のシアリルトランスフェラーゼを必要としたが、本発明の二官能性のシアリルトランスフェラーゼが使用される場合、ただ1つのシアリルトランスフェラーゼのみが必要とされる。このことは、第2の酵素を得ることに関連するコストをなくし、そしてまた、これらの化合物の合成に関与する工程の数を減らし得る。
【0045】
(A.グリコシルトランスフェラーゼおよび関連する酵素)
本発明は、原核生物のグリコシルトランスフェラーゼポリペプチド、ならびにグリコシルトランスフェラーゼに触媒されるオリゴ糖(ガングリオシドおよびガングリオシド模倣物を含む)の合成に関与する他の酵素を提供する。現在の好ましい実施形態において、これらのポリペプチドは、Campylobacter種(図1)のリポオリゴサッカリド(LOS)遺伝子座内のオープンリーディングフレームによってコードされるポリペプチドを含む。シアリルトランスフェラーゼ(二官能性シアリルトランスフェラーゼを含む)のようなグリコシルトランスフェラーゼ、β1,4−GalNAcトランスフェラーゼおよびβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ、本明細書中に記載の他の酵素が、本発明の酵素に含まれる。例えば、CMP−シアル酸シンテターゼ、シアル酸シンターゼ、アセチルトランスフェラーゼ、アシルトランスフェラーゼ(これは、リピドAの生合成に関与する)のような補助酵素(accessory enzyme)ならびにシアル酸生合成に関与する酵素もまた提供される。
【0046】
本発明のグリコシルトランスフェラーゼおよび補助ポリペプチドは、天然の供給源(例えば、Campylobacter種のような原核生物)から精製され得る。現在好ましい実施形態において、このグリコシルトランスフェラーゼは、C.jejuniから、特にC.jejuni血清型O:19(OH4384株およびOH4382株を含む)から獲得される。C.jejuni血清型O:10、O:41およびO:2から得られるグリコシルトランスフェラーゼおよび補助酵素もまた、提供される。グリコシルトランスフェラーゼポリペプチドが精製され得る方法としては、標準的なタンパク質精製法が挙げられ、この方法としては、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などが挙げられる(一般的には、R.Scopes,Protein Purification,Springer−Verlag,N.Y.(1982)Deutscher,Methods in Enzymology Vol.182:Guide to Protein Purification.,Academic Press,Inc.N.Y.(1990)を参照のこと)。
【0047】
現在好ましい実施形態において、本発明のグリコシルトランスフェラーゼおよび補助酵素ポリペプチドは、本明細書中に記載されるグリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸、および補助酵素をコードする核酸を使用する組換え発現によって得られる。グリコシルトランスフェラーゼを生成するための発現ベクターおよび方法が、以下に記載される。
【0048】
いくつかの実施形態において、グリコシルトランスフェラーゼポリペプチドは、組換え的に生産されようと、または天然の細胞から精製されようと、それらの天然の環境から単離される。少なくとも90〜95%の同質性の実質的に純粋な組成物は、いくつかの用途に好ましく、そして98〜99%またはそれ以上の同質性が、最も好ましい。記載されるように、部分的にかまたは同質性にまで一旦精製されると、次いで、ポリペプチドは、使用され得る(例えば、抗体生産のための免疫原として、またはオリゴサッカリドの合成のために、あるいは本明細書中に記載されるか、または当業者に明白な他の用途)。しかし、グリコシルトランスフェラーゼは、所望のサッカリド構造を合成するための使用のためになお部分的に精製されなくてもよい。例えば、本発明は、異種の宿主細胞中で発現し、そして/または組換え核酸から発現する組換え生産された酵素を提供する。細胞溶解物またはインタクトな細胞、ならびに精製された形態で存在する場合、本発明のこのような酵素が、使用され得る。
【0049】
(1.シアリルトランスフェラーゼ)
いくつかの実施形態において、本発明は、シアリルトランスフェラーゼポリペプチドを提供する。シアリルトランスフェラーゼは、α2,3−シアリルトランスフェラーゼ活性を有し、そしてまた、いくつかの場合において、α2,8シアリルトランスフェラーゼ活性も有する。適切なサッカリドアクセプター(例えば、末端ガラクトースを有するサッカリド)およびシアル酸ドナー(例えば、CMPシアル酸)との反応混合物中に配置した場合、これらの二機能性のシアリルトランスフェラーゼは、α2,3結合においてドナーからアクセプターへの第1のシアル酸の転移を触媒し得る。次いで、シアリルトランスフェラーゼは、α2,8結合においてシアル酸ドナーから第1のシアル酸残基への第2のシアル酸の転移を触媒する。Siaα2,8−Siaα2,3Gal構造のこの型は、しばしば図4に示されるようなGD3およびGT1aを含むガングリオシド中で見出される。
【0050】
本発明の二機能性シアリルトランスフェラーゼの例は、Campylobacter種(例えば、C.jejuni)中で見出される二機能性シアリルトランスフェラーゼである。本発明の好ましい二機能性シアリルトランスフェラーゼは、C.jejuni血清型O:19の二機能性シアリルトランスフェラーゼである。二機能性シアリルトランスフェラーゼの1つの例は、C.jejuni OH 4384株の二機能性シアリルトランスフェラーゼである;このシアリルトランスフェラーゼは、配列番号3に示されるようなアミノ酸配列を有する。本発明の他の二機能性シアリルトランスフェラーゼは、一般的に、少なくとも約60アミノ酸長の領域にわたって、C.jejuni OH 4384二機能性シアリルトランスフェラーゼのアミノ酸配列に少なくとも約76%同一であるアミノ酸配列を有する。より好ましくは、本発明のシアリルトランスフェラーゼは、少なくとも約60アミノ酸長の領域にわたって、OH 4384シアリルトランスフェラーゼのアミノ酸配列に少なくとも約85%同一、なおより好ましくは、配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも約95%同一である。本発明の好ましい実施形態において、同一性パーセントの領域は、60アミノ酸よりも長い領域にわたる。例えば、より好ましい実施形態において、類似性の領域は、少なくとも約100アミノ酸長の領域、より好ましくは、少なくとも約150アミノ酸長の領域、そして最も好ましくはシアリルトランスフェラーゼの全長の領域にわたる。従って、本発明の二機能性シアリルトランスフェラーゼは、α2,3−シアリルトランスフェラーゼ活性およびα2,8−シアリルトランスフェラーゼ活性のいずれかまたは両方を有し、そしてC.jejuni OH 4384 CstIIシアリルトランスフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号3)に対して、それぞれのシアリルトランスフェラーゼ活性を保持するために必要とされるポリペプチドの領域にわたって、少なくとも約65%同一、より好ましくは少なくとも約70%同一、より好ましくは少なくとも約80%同一、そして最も好ましくは約90%同一であるポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、本発明の二機能性シアリルトランスフェラーゼは、シアリルトランスフェラーゼの全長にわたって、C.jejuni OH 4384 CstIIシアリルトランスフェラーゼに同一である。
【0051】
本発明はまた、α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性を有するが、α2,8シアリルトランスフェラーゼ活性をわずかに有するかまたは全く有さないシアリルトランスフェラーゼを提供する。例えば、C.jejuni O:19血清株(serostrain)のCstIIシアリルトランスフェラーゼ(配列番号9)は、8つのアミノ酸だけOH
4384株のシアリルトランスフェラーゼと異なるが、それにもかかわらず、α2,8シアリルトランスフェラーゼ活性を実質的に欠損する(図3)。O:2血清型株NCTC 11168由来の対応するシアリルトランスフェラーゼ(配列番号10)は、OH 4383のシアリルトランスフェラーゼと52%同一であり、そしてまたα2,8−シアリルトランスフェラーゼ活性をわずかに有するかまたは全く有さない。C.jejuni株 O:10(配列番号5)およびO:41(配列番号7)のCstIIシアリルトランスフェラーゼと実質的に同一であるシアリルトランスフェラーゼもまた提供する。本発明のシアリルトランスフェラーゼは、C.jejuni O:10(配列番号5)、O:14(配列番号7)、O:19血清株(配列番号9)またはO:2血清型株NCTC 11168(配列番号10)のアミノ酸内列と、少なくとも約65%同一、より好ましくは少なくとも約70%同一、より好ましくは少なくとも約80%同一、そして最も好ましくは約90%同一であるシアリルトランスフェラーゼを含む。いくつかの実施形態において、本発明のシアリルトランスフェラーゼは、O:10、O:41、O:19血清株またはNCTC 11168 C.jejuni株のシアリルトランスフェラーゼに同一であるアミノ酸配列を有する。
【0052】
同一性パーセントは、検査によって決定され得るか、または、例えば、BLASTP Version 2.0アルゴリズムのようなアライメントアルゴリズムを使用して、デフォルトパラメーター(例えば、3の語長(wordlength)(W)、G=11、E=1およびBLOSUM62置換マトリックス)を使用して決定され得る。
【0053】
本発明のシアリルトランスフェラーゼは、配列比較だけでなく、C.jejuni OH 4384二機能性シアリルトランスフェラーゼまたは本明細書中に提供される他のシアリルトランスフェラーゼに対する抗体を調製し、そしてこれらの抗体が目的のシアリルトランスフェラーゼと特異的に免疫反応性であるか否かを決定することによっても、同定され得る。特に二機能性シアリルトランスフェラーゼを得るために、生物体がその細胞表面上にα2,3−シアル酸結合およびα2,8−シアル酸結合の両方を提示するか否かを測定することによって、二機能性シアリルトランスフェラーゼを生産する可能性のある生物体を同定し得る。あるいは、またはさらに、単離されたシアリルトランスフェラーゼの酵素活性を簡単に行って、両方のシアリルトランスフェラーゼ活性が存在するか否かを決定し得る。
【0054】
(2.β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ)
本発明はまた、β1,4−GalNAcトランスフェラーゼポリペプチド(例えば、CgtA)を提供する。本発明のβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼは、反応混合物中に配置した場合、ドナー(例えば、UDP−GalNAc)から適切なアクセプターサッカリド(代表的に、末端ガラクトース残基を有するサッカリド)へのGalNAc残基の転移を触媒する。得られた構造(GalNAcβ1,4−Gal−)は、しばしば、多くの他のサッカリド化合物の中で、ガングリオシドおよび他のスフィンゴイド中で見出される。例えば、CgtAトランスフェラーゼは、ガングリオシドGM3のGM2への転換を触媒し得る(図4)。
【0055】
本発明のβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼの例は、Campylobacter種(例えば、C.jejuni)によって生産されるβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼである。β1,4−GalNAcトランスフェラーゼポリペプチドの1つの例は、C.jejuni OH 4384株のβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼであり、これは配列番号17で示されるようなアミノ酸配列を有する。本発明のβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼは、一般的に、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、配列番号17に示されるようなアミノ酸配列に少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を含む。より好ましくは、本発明のβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼは、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、このアミノ酸配列に少なくとも約85%同一、なおより好ましくは、配列番号17のアミノ酸配列に少なくとも約95%同一である。本発明の好ましい実施形態において、同一性パーセントの領域は、50アミノ酸よりも長い領域にわたり、より好ましくは、少なくとも約100アミノ酸の領域、最も好ましくはGalNAcトランスフェラーゼの全長にわたる。従って、本発明のβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼは、β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ活性を有し、そしてC.jejuni OH 4384 β1,4−GalNAcトランスフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号17)に対して、β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ活性を保持するために必要とされるポリペプチドの領域にわたって、少なくとも約65%同一、より好ましくは少なくとも約70%同一、より好ましくは少なくとも約80%同一、そして最も好ましくは約90%同一であるポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、本発明のβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼは、β1,4−GalNAcトランスフェラーゼの全長にわたって、C.jejuni OH 4384 β1,4−GalNAcトランスフェラーゼに同一である。
【0056】
また一方、同一性パーセントは、検査によって決定され得るか、または、例えば、BLASTP Version 2.0アルゴリズムのようなアライメントアルゴリズムを使用して、3の語長(W)、G=11、E=1およびBLOSUM62置換マトリックス)を用いて測定され得る。
【0057】
本発明のβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼを、免疫反応性によってもまた同定し得る。例えば、配列番号17のC.jejuni OH 4384 β1,4−GalNAcトランスフェラーゼに対する抗体を調製し、そしてこれらの抗体が目的のβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼと特異的に免疫反応性であるか否かを決定し得る。
【0058】
(3.β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ)
β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(CgtB)もまた、本発明によって提供する。適切な反応媒体中に配置する場合、本発明のβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼは、ドナー(例えば、UDP−Gal)から適切なサッカリドアクセプター(例えば、末端GalNAc残基を有するサッカリド)へのガラクトース残基の転移を触媒する。β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼによって触媒された反応物の中でも、GM2のオリゴサッカリド部分へのガラクトース残基の転移は、GM1aオリゴサッカリド部分を形成する。
【0059】
本発明のβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼの例は、Campylobacter種(例えば、C.jejuni)によって生産されるβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼである。例えば、本発明の1つのβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼは、C.jejuni株 OH 4384のβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼであり、これは配列番号27に示されるアミノ酸配列を有する。
【0060】
本発明のβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼの別の例は、C.jejuniO:2血清型株NCTC 11168のβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼである。このガラクトシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列は、配列番号29に示される。このガラクトシルトランスフェラーゼは、E.coli中で十分に発現し、そして例えば、多量の可溶性活性を示す。さらに、反応混合物が過剰のドナーを含みそして十分に長期間インキュベーションされる場合、1つより多くのガラクトースを付加し得るOH 4384 CgtBとは異なり、NCTC 11168 β1,3−ガラクトースは、十分な量のポリガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有さない。いくつかの適用のために、OH 4384酵素のポリガラクトシルトランスフェラーゼ活性が、所望されるが、他の適用(例えば、GM1模倣物の合成)においては、1つの末端ガラクトースのみの付加が所望される。
【0061】
本発明のβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼは、一般的に、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、それぞれ、配列番号27および配列番号29に示されるようなOH 4384またはNCTC 11168 CgtBのアミノ酸配列に少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を含む。より好ましくは、本発明のβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼは、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、これらのいずれかのアミノ酸配列に少なくとも約85%同一であり、なおより好ましくは、配列番号27または配列番号29のアミノ酸配列に少なくとも約95%同一である。本発明の好ましい実施形態において、同一性パーセントの領域は、50アミノ酸よりも長い領域にわたり、より好ましくは、少なくとも約100アミノ酸の領域、最も好ましくはガラクトシルトランスフェラーゼの全長にわたる。従って、本発明のβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼは、β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有し、そしてC.jejuni OH 4384 β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(配列番号27)またはNCTC 11168ガラクトシルトランスフェラーゼ(配列番号29)のアミノ酸配列に対して、β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を保持するために必要とされるポリペプチドの領域にわたって、少なくとも約65%同一、より好ましくは少なくとも約70%同一、より好ましくは少なくとも約80%同一、そして最も好ましくは約90%同一であるポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、本発明のβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼは、β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼの全長にわたって、C.jejuni OH 4384 β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼまたはNCTC 11168 β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼに同一である。
【0062】
同一性パーセントは、検査によって決定され得るか、または、例えば、BLASTP Version 2.0アルゴリズムのようなアライメントアルゴリズムを使用して、3の語長(W)、G=11、E=1およびBLOSUM62置換マトリックス)を用いて測定され得る。
【0063】
本発明のβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼは、それぞれのCampylobacter種から得られ得るか、または組換え的に生産され得る。酵素活性のアッセイによって、あるいは、例えば、配列番号27に示されるようなアミノ酸配列を有するC.jejuni OH 4384 β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼまたは配列番号29に示されるようなアミノ酸配列を有するC.jejuni NCTC 11168 β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼに対して惹起された抗体との特異的免疫反応性を検出することによって、ガラクトシルトランスフェラーゼを、同定し得る。
【0064】
(4.LOS生合成経路に関与するさらなる酵素)
本発明はまた、細菌性のリポオリゴサッカリド上で見出されるようなオリゴサッカリドの生合成に関与するさらなる酵素を提供する。例えば、CMPシアル酸(シアリルトランスフェラーゼのドナー)の合成に関与する酵素を提供する。シアル酸シンターゼは、C.jejuni OH 4384株のオープンリーディングフレーム(ORF)8a(配列番号35)およびNCTC 11168株のオープンリーディングフレーム8bによってコードされる(表3を参照のこと)。シアル酸合成に関与する別の酵素は、OH 4384のORF 9a(配列番号36)およびNCTC 11168の9bによってコードされる。CMPシアル酸シンターゼは、それぞれ、OH 4384およびNCTC 11168のORF 10a(配列番号37)および10bによってコードされる。
【0065】
本発明はまた、リピドAの生合成に関与するアシルトランスフェラーゼを提供する。この酵素は、C.jejuni OH 4384株のオープンリーディングフレーム2a(配列番号32)およびNCTC 11168株のオープンリーディングフレーム2Bによってコードされる。以下のアセチルトランスフェラーゼもまた、提供される;この酵素は、OH 4384のORF 11a(配列番号38)によってコードされる;ホモログは、NCTC 11168株のLOS生合成遺伝子座においては見出されない。
【0066】
3つのさらなるグリコシルトランスフェラーゼもまた提供する。これらの酵素は、OH 4384株のORF 3a(配列番号33)、ORF 4a(配列番号34)およびORF 12a(配列番号39)、ならびにNCTC 11168株のORF 3b、ORF 4bおよびORF 12bによってコードされる。
【0067】
本発明は、これらの酵素の各々について、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、本明細書中に示されるようなアミノ酸配列に少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。より好ましくは、本発明の酵素は、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、それぞれのアミノ酸配列に少なくとも約85%同一、なおより好ましくは、このアミノ酸配列に少なくとも約95%同一である。本発明の好ましい実施形態において、同一性パーセントの領域は、50アミノ酸よりも長い領域にわたり、より好ましくは、少なくとも約100アミノ酸の領域、最も好ましくはこの酵素の全長にわたる。従って、本発明の酵素は、それぞれの活性を有し、そして本明細書中に示されるような酵素に対応するアミノ酸配列に対して、それぞれの酵素活性を保持するために必要とされるポリペプチドの領域にわたって、少なくとも約65%同一、より好ましくは少なくとも約70%同一、より好ましくは少なくとも約80%同一、そして最も好ましくは約9
0%同一であるポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、本発明の酵素は、酵素の全長にわたって、対応するC.jejuniOH 4384酵素に同一である。
【0068】
(B.グリコシルトランスフェラーゼおよび関連する酵素をコードする核酸)
本発明はまた、グリコシルトランスフェラーゼおよび本発明の他の酵素をコードする単離された核酸および/または組換え核酸を提供する。本発明のグリコシルトランスフェラーゼコード核酸は、対応するグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドの組換え発現を含むいくつかの目的に有用であり、そして他のグリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸を同定し、そして酵素の調節および発現の研究のためのプローブとして有用である。
【0069】
本発明の核酸は、上記のような全長グリコシルトランスフェラーゼ酵素をコードする核酸、ならびにグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドの部分配列をコードする核酸を含む。例えば、本発明は、全長のグリコシルトランスフェラーゼ酵素ではないが、それにもかかわらず、グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む。C.jejuni OH 4384株のLOS遺伝子座のヌクレオチド配列は、配列番号1として本明細書中で提供され、そしてそれぞれのリーディングフレームが、同定される。さらなるヌクレオチド配列もまた、以下に議論されるように提供される。本発明は、本明細書中に示されるようなヌクレオチド配列を含む核酸だけでなく、例示された実施形態と実質的に同一か、または実質的に相補的である核酸もまた含む。例えば、本発明は、本明細書中に示されるヌクレオチド配列に少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも75%、なおより好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、なおより好ましくは少なくとも90%同一であり、そして例証されたヌクレオチド配列になおより好ましくは少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸を含む。同一性の領域は、少なくとも約50ヌクレオチドにわたり、より好ましくは少なくとも約100ヌクレオチドにわたり、なおより好ましくは約500ヌクレオチドにわたる。いくつかの実施形態において、特定された同一性パーセントの領域は、それぞれの酵素活性を保持するために十分なコードされた酵素の部分のコード領域を包含する。好ましい実施形態において、特定された同一性パーセントは、酵素のコード領域の全長にわたる。
【0070】
本発明のグリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸は、当業者に公知の方法を使用して得られ得る。適切な核酸(例えば、cDNA、ゲノムまたは部分配列(プローブ))は、クローン化され得るか、またはインビトロでの方法(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ鎖反応(ligase chain reaction)(LCR)、転写に基づく増幅系(transcription−based amplification system)(TAS)、自己持続配列複製系(self−sustained sequence replication system)(SSR)によって増幅され得る。広範なクローニングおよびインビボでの増幅方法論は、当業者に周知である。多くのクローニングの実行を通じて当業者を指示するのに十分なこれらの技術および指示書の例は、以下に見出される:BergerおよびKimmel,Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology 152 Academic Press,Inc.,San Diego,CA (Berger);Sambrook ら(1989) Molecular Cloning−A Laboratory Manual(第2版)Vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Press,NY,(Sambrookら);Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubelら編、Current Protocols,Greene Publishing Associates,Inc.とJohn Wiley & Sons,Inc.,との間の共同事業(1994 Supplement)(Ausubel);Cashionら、米国特許第5,017,478号;およびCarr,欧州特許番号第0,246,864号。インビトロでの増幅方法を通じて当業者を指示するのに十分な技術の例は、以下において見出される:Berger,Sambrook.,およびAusubel,ならびにMullisら(1987)米国特許第4,683,202号;PCR Protocols A Guide to Methods and Applications(Innisら編)Academic Press Inc.San Diego,CA(1990)(Innis);Arnheim & Levinson(1990年10月1日)C & EN 36−47;The Journal Of NIH Research(1991)3:81−94;(Kwohら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173;Guatelliら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci. USA 87,1874;Lomellら(1989)J.Clin.Chem.,35:1826;Landegrenら(1988)Science 241:1077−1080;Van Brunt(1990)Biotechnology 8:291−294;WuおよびWallace(1989)Gene 4:560;ならびにBarringerら(1990)Gene 89:117。インビトロで増幅された核酸の改善されたクローニング方法は、Wallaceら、米国特許第5,426,039号に記載される。
【0071】
本発明のグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドをコードする核酸またはこれらの核酸の部分配列は、上記のような任意の適切な方法(例えば、クローニングおよび適切な配列の制限を含む)によって調製され得る。実施例のように、通常のクローニング方法によって、本発明のグリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸が得られ得る。本明細書中に記載されるような目的のグリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の公知のヌクレオチド配列を使用して、ゲノムDNAサンプル中の適切な酵素をコードする遺伝子または全RNAサンプル中のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブを提供し得る(例えば、サザンブロットまたはノーザンブロットにおいて)。好ましくは、これらのサンプルは、原核生物(例えば、Campylobacter種)から得られる。特に目的のCampylobacter種の例としては、C.jejuniが挙げられる。多くのC.jejuni O:19株は、ガングリオシド模倣物を合成し、そして本発明のグリコシルトランスフェラーゼの供給原として有用である。
【0072】
一旦、標的グリコシルトランスフェラーゼの核酸が同定されると、これは、当業者に公知の標準的な方法に従って単離され得る(例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版、Vols.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory;BergerおよびKimmel(1987)Methods in Enzymology,Vol.152;Guide to Molecular Cloning Techniques,San Diego:Academic Press,Inc.;またはAusubelら(1987)Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and
Wiley−Interscience,New Yorkを参照のこと)。
【0073】
本発明のグリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸はまた、物理的特性、化学的特性および免疫学的特性に基づくアッセイによって、その発現した産物を検出することによってクローン化され得る。例えば、ガラクトシル化アクセプターとα2,3結合におけるシアル酸とのカップリング、次いでα2,8結合における第1のシアル酸と第2のシアル酸残基のカップリングを触媒する、この核酸によってコードされるポリペプチドの能力によって、クローン化された二機能性シアリルトランスフェラーゼコード核酸を同定し得る。同様に、それぞれ、UDP−GalNAc由来のGalNAc残基またはUDP−Gal由来のガラクトース残基の、適切なアクセプターへの転移を触媒する、コードされたポリペプチドの能力によって、β1,4GalNAcトランスフェラーゼまたはβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼをコードするクローン化した核酸を同定し得る。適切なアッセイ条件は、当該分野で公知であり、そして実施例に記載される条件を含む。特定の核酸から発現したポリペプチドの他の物理的特性は、本発明の公知のガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドの特性(例えば、本明細書中に記載される特性)と比較され、本発明のガラクトシルトランスフェラーゼをコードする核酸を同定する別の方法を提供し得る。あるいは、推定のガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子は、変異され得、そしてグリコシルトランスフェラーゼとしてのその役割は、それぞれの複合糖質を生産する能力における変化を検出することによって確立され得る。
【0074】
他の実施形態において、グリコシルトランスフェラーゼコード核酸は、DNA増幅方法(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR))を使用して、クローン化され得る。従って、例えば、核酸配列または核酸部分配列は、好ましくは、1つの制限部位(例えば、XbaI)を含むセンスプライマーおよび別の制限部位(例えば、HindIII)を含むアンチセンスプライマーを用いて、PCR増幅される。これは、所望のグリコシルトランスフェラーゼアミノ酸配列またはアミノ酸部分配列をコードし、そして末端制限部位を有する核酸を生産する。次いで、この核酸は、第2の分子をコードし、そして適切な対応する制限部位を有する核酸を含むベクターへと容易に連結され得る。適切なPCRプライマーは、本明細書中に提供される配列情報を使用して、当業者によって決定され得る。適切な制限部位はまた、部位特異的変異誘発によって、本発明のグリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸またはアミノ酸部分配列に付加され得る。グリコシルトランスフェラーゼコードヌクレオチド配列またはヌクレオチド部分配列をふくむプラスミドは、適切な制限エンドヌクレアーゼで切断され、次いで、標準的な方法に従って増幅および/または発現のために、適切なベクターに連結される。
【0075】
本発明のグリコシルトランスフェラーゼコード核酸の増幅のために適切なプライマーの例は、表2に示される;いくつかのプライマー対は、増幅フラグメント上に5’NdeI制限部位および3’SalI部位を提供するように設計される。酵素コード配列または酵素コード部分配列を含むこのプラスミドは、適切な制限エンドヌクレアーゼで切断され、次いで標準的な方法に従って増幅および/または発現のために適切なベクターに連結される。
【0076】
グリコシルトランスフェラーゼコード核酸のクローニングに代わるものとして、適切な核酸が、本発明のグリコシルトランスフェラーゼをコードする公知の配列から化学的に合成され得る。直接的な化学合成法としては、例えば、Narangら(1979)Meth.Enzymol.68:90−99のリン酸トリエステル法;Brownら(1979)Meth.Enzymol.68:109−151のリン酸ジエステル法;Beaucageら(1981)Tetra.Lett.,22:1859−1862のジエチルホスホルアミダイト法;および米国特許第4,458,066号の固体支持体法が挙げられる。化学合成は、単鎖オリゴヌクレオチドを生成する。これは、相補配列とハイブリダイズすることによって、またはテンプレートとして単鎖を使用してDNAポリメラーゼで重合化することによって、2重鎖DNAに転換され得る。当業者は、DNAの化学合成は、しばしば約100塩基の配列に限定されるが、より長い配列は、より短い配列の連結によって得られ得ることを認識する。あるいは、部分配列は、クローニング化され得、そして適切な部分配列が、適切な制限酵素を使用して切断され得る。次いで、このフラグメントは、連結され、所望のDNA配列を生成する。
【0077】
いくつかの実施形態において、酵素をコードする核酸を改変することが所望され得る。当業者は、所定の核酸構築物中に変化を生じさせる多くの方法を認識する。このような周知の方法としては、部位特異的突然変異誘発、変性オリゴヌクレオチドを使用するPCR
増幅、核酸を含む細胞の突然変異誘発因子または放射線への曝露、所望のオリゴヌクレオチドの化学合成(例えば、大きい核酸を作製するための連結および/またはクローニングと組み合わせて)、および他の周知の技術が挙げられる。例えば、GilimanおよびSmith(1979)Gene 8:81−97,Robertsら(1987)Nature 328:731を参照のこと。
【0078】
現在の好ましい実施形態において、本発明の細胞中に存在する組換え核酸は、改変され、好ましいコドンを提供する。このコドンは、選択された生物体中の核酸の翻訳を増強する(例えば、E.coliの好ましいコドンは、E.coliにおける発現のためのコード核酸に置換されている)。
【0079】
本発明は、単離された(すなわちネイティブの染色体位置に存在しない)核酸および/または組換え体(すなわち、元の形態から改変され、ネイティブではない生物体中に存在するなど)を含む。
【0080】
(1.シアリルトランスフェラーゼ)
本発明は、上記のようなシアリルトランスフェラーゼをコードする核酸を提供する。いくつかの実施形態において、本発明の核酸は、α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性およびα2,8シアリルトランスフェラーゼ活性の両方を有する、二官能性シアリルトランスフェラーゼポリペプチドをコードする。これらのシラリルトランスフェラーゼ核酸は、シアリルトランスフェラーゼポリペプチドをコードする。このポリペプチドは、少なくとも約60アミノ酸長の領域にわたって、配列番号3に示されるアミノ酸配列と、少なくとも76%が同一であるアミノ酸配列を有する。より好ましくは、本発明の核酸によってコードされるシアリルトランスフェラーゼは、少なくとも60アミノ酸長の領域にわたって、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約85%同一であり、そしてなおより好ましくは、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも95%同一である。本発明の好ましい実施形態において、同一性%の領域は、60アミノ酸よりも長い領域にわたり、より好ましくは少なくとも100アミノ酸の領域にわたり、そして最も好ましくはシアリルトランスフェラーゼの全長にわたる。本発明の好ましい実施形態において、本発明のシアリルトランスフェラーゼコード核酸は、配列番号3に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。
【0081】
本発明の核酸の例は、単離されたおよび/または組換え形態である、C.jejuni OH4384の二官能性シアリルトランスフェラーゼコード核酸である。この核酸のヌクレオチド配列は、配列番号2に示される。本発明のシアリルトランスフェラーゼコードポリヌクレオチド配列は、典型的には、少なくとも約50ヌクレオチド長の領域にわたって、配列番号2の核酸配列に対して、少なくとも約75%同一である。より好ましくは、本発明のシアリルトランスフェラーゼコード核酸は、このヌクレオチド配列に対して、少なくとも約85%同一であり、そしてなおより好ましくは、少なくとも50アミノ酸長の領域にわたって、配列番号2のヌクレオチド配列に対して、少なくとも約95%同一である。本発明の好ましい実施形態において、特定化された同一性%閾値の領域は、50ヌクレオチドよりも長い領域にわたり、より好ましくは、少なくとも約100ヌクレオチドの領域にわたり、そして最も好ましくはシアリルトランスフェラーゼコード領域の全長にわたる。したがって、本発明は、二官能性シアリルトランスフェラーゼコード核酸を提供し、この核酸は、配列番号2に示されるようなC.jejuni株OH4384 cstIIまたはO:10株(配列番号4)と実質的に同一である。
【0082】
本発明の他のシアリルトランスフェラーゼコード核酸は、α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性を有しているが、実質的なα2,8シアリルトランスフェラーゼ活性を欠く、シアリルトランスフェラーゼをコードする。例えば、C.jejuni血清株O:19
(配列番号8)およびNCTC11168由来のCstIIα2,3シアリルトランスフェラーゼをコードする核酸が、本発明によって提供される;これらの酵素は、α2,8−シアリルトランスフェラーゼ活性をごくわずか有するかまたは全く有さない(表6)。
【0083】
本発明の核酸を同定するために、視覚検査が使用され得るかまたは適切な整列アルゴリズムが使用され得る。本発明の二官能性シアリルトランスフェラーゼコード核酸を同定し得る代替の方法は、ストリンジェントな条件下で目的の核酸を、本明細書中に示されるようなシアリルトランスフェラーゼのポリヌクレオチド配列を含む核酸にハイブリダイズさせることによる方法である。
【0084】
(2.β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ)
本発明によって、β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ活性を有するGalNAcトランスフェラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸がまた提供される。このポリヌクレオチド配列は、C.jejuni OH4384β1,4−GalNAcトランスフェラーゼと少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を有するGalNAcトランスフェラーゼポリペプチドをコードし、このポリペプチドは、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、配列番号17に示されるようなアミノ酸配列を有する。より好ましくは、本発明の核酸によってコードされるGalNAcトランスフェラーゼポリペプチドは、このアミノ酸配列と少なくとも約80%同一であり、そしてなおより好ましくは、少なくとも50アミノ酸長の領域にわたり、配列番号17のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である。本発明の好ましい実施形態において、同一性%の領域は、50アミノ酸より長い領域にわたって伸長し、より好ましくは少なくとも約100アミノ酸の領域にわたり、そして最も好ましくはGalNAcトランスフェラーゼポリペプチドの全長にわたる。本発明の好ましい実施形態において、本発明のGalNAcトランスフェラーゼポリペプチドコード核酸は、配列番号17に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。本発明の核酸を同定するために、視覚検査が使用され得るかまたは適切な整列アルゴリズムが使用され得る。
【0085】
本発明のGalNAcトランスフェラーゼコード核酸の1つの例は、C.jejuni OH4384のGalNAcトランスフェラーゼコード核酸の、単離されたおよび/または組換えられた形態である。この核酸は、配列番号16に示されるようなヌクレオチド配列を有する。本発明のGalNAcトランスフェラーゼコードポリヌクレオチド配列は、典型的には、少なくとも約50ヌクレオチド長の領域にわたって、配列番号16の核酸配列と、少なくとも約75%同一である。より好ましくは、本発明のGalNAcトランスフェラーゼコード核酸は、少なくとも50アミノ酸長の領域にわたって、このヌクレオチド配列に対して少なくとも約85%同一であり、なおより好ましくは、配列番号16のヌクレオチド配列に対して約95%同一である。本発明の好ましい実施形態において、同一性%の領域は、50ヌクレオチドより長い領域にわたり、より好ましくは、少なくとも約100ヌクレオチドの領域にわたり、および最も好ましくは、GalNAcトランスフェラーゼコード領域の全長にわたる。
【0086】
本発明の核酸を同定するために、視覚検査が使用され得るかまたは適切な整列アルゴリズムが使用され得る。本発明のGalNAcトランスフェラーゼコード核酸を同定し得る代替の方法は、ストリンジェントな条件下で配列番号16のポリヌクレオチド配列を含む核酸に対して目的の核酸をハイブリダイズさせることによる方法である。
【0087】
(3.β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ)
本発明はまた、β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性(CgtB)を有するポリペプチドプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。本発明のこれらの核酸によってコードされるβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドは、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、好ましくは配列番号27に示されるようなC.jejuni株OH4384 β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列に対して、または配列番号29に示されるようなNCTC11168株β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列に対して、少なくとも約75%同一であるアミノ酸配列を含む。より好ましくは、本発明のこれらの核酸によってコードされるガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドは、少なくとも50アミノ酸長の領域にわたって、このアミノ酸配列に対して少なくとも約85%同一であり、そしてなおより好ましくは、配列番号27または配列番号29のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%同一である。本発明の好ましい実施形態において、同一性%の領域は、50アミノ酸よりも長い領域にわたり、より好ましくは、少なくとも約100アミノ酸の領域にわたり、そして最も好ましくはガラクトシルオトランスフェラーゼポリペプチドコード領域の全長にわたる。
【0088】
本発明のβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼコード核酸の1つの例は、C.jejuni OH4384のβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼコード核酸の、単離されたおよび/または組換えられた形態である。この核酸は、配列番号26に示されるようなヌクレオチド配列を含む。別の適切なβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼコード核酸は、C.jejuni NCTC11168株のヌクレオチド配列を含み、そのヌクレオチド配列は、配列番号28に示される。本発明のβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼコードポリヌクレオチド配列は、典型的には、少なくとも約50ヌクレオチド長の領域にわたって、配列番号26の核酸配列または配列番号28の核酸配列に対して少なくとも約75%同一である。より好ましくは、本発明のβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼコード核酸は、これらのヌクレオチド配列番号の少なくとも1つに対して、少なくとも約85%同一であり、そしてなおより好ましくは、少なくとも50アミノ酸長の領域にわたって、配列番号26および/または配列番号28のヌクレオチド配列に対して少なくとも約95%同一である。本発明の好ましい実施形態において、同一性%の領域は、50ヌクレオチドよりも長い領域にわたって伸長し、より好ましくは、少なくとも約100ヌクレオチドの領域、そして最も好ましくは、β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼコード領域の全長にわたる。
【0089】
本発明の核酸を同定するために、視覚検査が使用され得るかまたは適切な整列アルゴリズムが使用され得る。本発明のガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドコード核酸を同定し得る代替の方法は、ストリンジェントな条件下で、配列番号26または配列番号28のポリヌクレオチド配列を含む核酸に対する目的の核酸をハイブリダイズさせることによる方法である。
【0090】
(4.LOS生合成経路に関与するさらなる酵素)
Campylobacterのような原核生物のLOS生合成経路に関与する他の酵素をコードする核酸がまた、提供される。これらの核酸は、例えば、C.jejuni OH4384株のオープンリーディングフレーム(ORF)8aおよびNCTC11168株のオープンリーディングフレーム8bによりコードされるシアル酸シンターゼOH4384のORF9aおよびNCTC11168の9bによってコードされり誌ある酸合成に関与する別の酵素、ならびにOH4384のORF10aおよびNCTC11168のORF10bによりコードされるCMP−シアル酸侵ターゼのような酵素をコードする。
【0091】
本発明はまた、リピドAの生合成に関与するアシルトランスフェラーゼをコードする核酸を提供する。この酵素は、C.jejuni OH4384株のオープンレーディングフレーム2aおよびNCTC11168株のオープンレーディングフレーム2Bによってコードされる。アシルトランスフェラーゼをコードする核酸もまた、提供される;この酵素は、OH4384株のORF11aによってコードされる;NCTC11168株のL
OS生合成座においては見出されるホモログはない。
【0092】
3つのさらなるグリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸もまた、提供される。これらの酵素は、OH4384株のORF3a、4a、および12aならびにNH11168株のORF3b、4b、および12bによってコードされる(図1)。
(C.グリコシルトランスフェラーゼの発現カセットおよび発現)
本発明はまた、本発明のグリコシルトランスフェラーゼおよび他の酵素を産生するために使用され得る発現カセット、発現ベクター、および組換え宿主細胞を提供する。典型的な発現カセットは、グリコシルトランスフェラーゼまたは目的の他の酵素をコードする核酸に作動可能に連結されるプロモーターを含む。この発現カセットは、典型的には、適切な宿主細胞中、好ましくは、原核生物宿主細胞中に導入される発現ベクター上に含まれる。1つより多いグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドは、単一の発現ベクター中に複数の転写カセットを配置することによってか、1つより多いグリコシルトランスフェラーゼからなる融合タンパク質をコードする遺伝子を構築することによってか、または各グリコシルトランスフェラーゼについての異なる発現ベクターを利用することによって、単一の宿主細胞中で発現され得る。
【0093】
好ましい実施形態において、発現カセットは、原核生物宿主細胞中のグリコシルトランスフェラーゼの発現について有用である。一般的に使用される原核生物制御配列は、転写開始のためのプロモーターを含むように本明細書中で定義され、必要に応じて、リボソーム結合部位配列に沿ってオペレーターを有し、以下のような一般的に使用されるプロモーターを含む:β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクト−ス(lac)プロモーター系(Changeら,Nature(1977)198:1056)、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddelら,Nucleic,Acids Res.(1980)8:4057)、tacプロモーター(DeBoerら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1983)80:21−25);ならびにλ−由来PプロモーターおよびN−遺伝子リボソーム結合部位(Shimatakeら,Nature(1981)292:128)。この特定のプロモーター系は、本発明に対して重要ではなく、原核生物中で機能する任意の利用可能なプロモーターが使用され得る。
【0094】
構成性プロモーターまたは調節プロモーターのいずれかが、本発明において使用され得る。調節プロモーターは、宿主細胞が、グリコシルトランスフェラーゼポリペプチドの発現が誘導される前に、高密度まで増殖され得るために、都合がよい。異種タンパク質の高レベルでの発現は、いくつかの状況において細胞増殖を遅らせる。調節プロモーターは、バクテリオファージλPプロモーター、ハイブリッドtrp−lacプロモーター(Amannら,Gene(1983)25:167;de Boerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1983)80:21、およびバクテリオファージT7プロモーター(Studierら,J Mol.Biol.(1986);Taborら,(1985)を含むE.coli中で使用するのに特に適切である。これらのプロモーターおよびそれらの使用は、Sambrookら(前出)中で議論される。本発明の好ましい調節プロモーターは、二重tac−galプロモーターであり、これは、PCT/US97/20528(国際公開番号WO 9820111)に記載される。
【0095】
E.coli以外の原核生物細胞中のグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドの発現について、特定の原核生物種中で機能するプロモーターが必要とされる。このようなプロモーターは、上記の種からクローニングされた遺伝子から得られえるか、または異種プロモーターが使用され得る。例えば、E.coliに加えて、ハイブリッドtrp−lacプロモーターが、Bacillus中で機能する。真核生物宿主細胞中での使用に適切なプロモーターは、当業者に周知である。
【0096】
リボソーム結合部位(RBS)は、原核生物宿主細胞中での使用を意図される、本発明の発現カセット中に都合よく含まれる。E.coli中のRBSは、例えば、開始コドンの3〜11ヌクレオチド上流側に配置される3〜9ヌクレオチド長のヌクレオチド配列からなる(ShineおよびDalgarno,Nature(1975)254:34;Steitz,Biological regulation and development:Gene expression(R.F.Goldberger編),第1巻,349頁,1979,Plenum Publishing,NY)。
【0097】
翻訳カップリングが、発現を促進させるために使用され得る。このストラテジーは、翻訳系に対してネイティブな、高度に発現された遺伝子に由来する短い上流のオープンリーディングフレームを使用する。この短上流オープンリーディングフレームは、プロモーターの下流に配置され、そしてリボソーム結合部位は、いくつかのアミノ酸コドンの後の終止コドンに続く。終止コドンの直前は、第二のリボソーム結合部位であり、そして続く終止コドンは、翻訳を開始するための開始コドンである。この系は、RNA中の二次構造を解き、効率の良い翻訳の開始を可能にする。Squiresら(1988)J.Biol.Chem.263:16297−16302を参照のこと。
【0098】
本発明のグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドは、細胞内で発現され得るかまたは細胞から分泌され得る。細胞内発現は、しばしば、高い収率を生じる。必要な場合、溶質である活性グリコシルトランスフェラーゼポリペプチドの量は、再折りたたみ手順を実施することによって増加され得る(例えば、Sambrookら(前出);Marstonら,Bio/Technology(1984)2:800;Schonerら,Bio/Technology(1985)3:151を参照のこと)。実施形態において、グリコシルトランスフェラーゼポリペプチドは、細胞からペリプラズム中へかまたは細胞外媒体中へのいずれかに分泌され、グリコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列は、切断可能なシグナルペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列に連結される。このシグナル配列は、細胞膜を通して、グリコシルトランスフェラーゼポリペプチドの転移を配向する。プロモーター−シグナル配列単位を含むE.coli中での使用に適切なベクターの例は、pTA1529であり、これは、E.coli phoAプロモーターおよびシグナル配列を有する(例えば、Sambrookら(前出);Okaら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1985)82:7212;Talmadgeら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1980)77:3988;Takaharaら,J.Biol,Chem.(1985)260:2670を参照のこと)。
【0099】
本発明のグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドはまた、融合タンパク質として産生され得る。このアプローチは、しばしば、高収率を生じる。なぜならば、通常の原核生物制御配列は、転写および転移を指向するからである。E.coliにおいて、lacZ融合は、しばしば異種タンパク質を発現するために使用される。適切なベクター(例えば、pURシリーズ、pEXシリーズ、およびpMR100シリーズ(例えば、Sambrookら(前出)を参照のこと)は、容易に入手可能である。特定の用途のために、精製後の融合タンパク質から非グリコシルトランスフェラーゼアミノ酸を切断することが、所望され得る。これは、当該分野で公知の任意のいくつかの方法(シアノゲンブロミド、プロテアーゼ、またはX因子による切断を含む)によって達成され得る(例えば、Sambrookら(前出);Itakuraら,Science(1977)198:1056;Goeddelら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1979)76:106;Nagaiら,Nature(1984)309:810;Sungら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1986)83:561を参照のこと)。切断部位は、所望の切断点における融合タンパク質のために、遺伝子中に操作され得る。
【0100】
N−末端の完全性を維持するE.coliから組換えタンパク質を得るための適切な系は、Millerら Biotechnology 7:698−704(1989)に記載されている。この系において、目的の遺伝子は、ペプチダーゼ切断部位を含む酵母ユビキチン遺伝子の最初の76残基に対するC−末端融合物として産生される。二つの部分の接合部における切断は、インタクトな標準のN−末端残基を有するタンパク質の産生を生じる。
【0101】
本発明のグリコシルトランスフェラーゼは、種々の宿主細胞において発現され得、その宿主細胞としては、E.coli、他の細菌宿主、酵母、および種々のより高度な真核生物細胞(例えば、COS、CHO)およびHeLa細胞株および骨髄腫細胞株が挙げられる。有用な細菌の例としては、Escherichia、Enterobacter、Azotobacter、Erwinia、Bacillus、Pseudomonas、Klebsielia、Proteus、Salmonella、Serratia、Shigella、Rhizobia、Vitreoscilla、およびParacoccusが挙げられるが、これらに限定されない。この組換えグリコシルトランスフェラーゼコード核酸は、各宿主についての適切な発現制御配列に作動可能に連結される。E.coliについては、T7、trp、またはλプロモーター、リボソーム結合部位および好ましくは転写末端シグナルのようなプロモーターを含む。真核生物細胞については、制御配列は、プロモーターを含み、好ましくは、免疫グロブリン遺伝子、SV40、サイトメガロウイルスなどに由来するエンハンサー、およびポリアデニル化配列を含み、そしてスプライスドナーおよびアクセプター配列を含み得る。
【0102】
本発明の発現ベクターは、E.coliについては塩化カルシウム形質転換および哺乳動物細胞についてはリン酸カルシウム処理またはエレクトロポレーションのような周知の方法によって、選択された宿主細胞内に移入され得る。プラスミドによって形質転換された細胞は、amp遺伝子、gpt遺伝子、neo遺伝子およびhyg遺伝子のような、プラスミド上に含まれる遺伝子によって与えられる抗生物質に対する耐性によって選択され得る。
【0103】
一旦発現されると、組換えグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドは、当該分野の標準的な手順に従って精製され得、その手順としては、硫酸アンモニウム沈降、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などが挙げられる(一般的には、R.Scopes,Protein Purification,Springer−Verlag,N.Y.(1982),Deutscher,Methods in Enzymology Vol.182:Guide to Protein Purification.,Academic Press,Inc.N.Y.(1990)を参照のこと)。少なくとも90〜95%均質である実質的に純粋な組成物が好ましく、98〜99%またはそれ以上の均質性が最も好ましい。一旦、部分的に、または所望される場合均質になるまで精製されると、そのポリペプチドが使用され得る(例えば、抗体産生のための免疫源として)。このグリコシルトランスフェラーゼはまた、未精製または半精製状態でも使用され得る。例えば、グリコシルトランスフェラーゼを発現する宿主細胞は、浸透または他の細胞破壊のような工程を伴ってかまたは伴わずに、グリコシルトランスフェラーゼ反応において、直接的に使用され得る。
【0104】
当業者は、修飾が、グリコシルトランスフェラーゼタンパク質の活性を減少することなくこのタンパク質でなされ得ることを認識する。いくつかの修飾は、クローニング、発現または融合タンパク質への標的細胞の取りこみを容易にし得る。このような修飾は、当業者に周知であり、例えば、以下が挙げられる:アミノ末端へのメチオニン付加によって開始部位を提供する、またはいずれかの末端にさらなるアミノ酸(例えば、ポリHis)を配置して、都合よく配置された制限部位または終止コドンまたは精製配列を作製する。
【0105】
(D.オリゴ糖の合成のための方法および反応混合物)
本発明は、本発明のグリコシルトランスフェラーゼが、所望のオリゴ糖(これは、2つ以上の糖からなる)を調製するために使用される、反応混合物および方法を提供する。本発明のグリコシルトランスフェラーゼ反応は、少なくとも1つのグリコシルトランスフェラーゼ、ドナー基質、アクセプター糖および典型的には可溶性の二価の金属カチオンを含む反応培地中で行われる。この方法は、グリコシルトランスフェラーゼを使用して、基質(「アクセプター」ともよばれる)糖への糖の付加を触媒する。所望のオリゴ糖構造を合成するためにグリコシルトランスフェラーゼを使用する多くの方法が知られている。例示的な方法は、WO96/32491、Itoら(1993)Pure Appl.Chem.65:753、ならびに米国特許第5,352,670号、同第5,374,541号、および同第5,545,553号に記載される。
【0106】
例えば、本発明は、活性化シアル酸(例えば、CMP−NeuAc、CMP−NeuGcなど)を含む反応混合物を、本発明の二官能性シアリルトランスフェラーゼの存在下で末端ガラクトース残基を含むアクセプター部分に接触させることによって、α2,3結合中のシアル酸をガラクトース残基に付加する方法を提供する。本発明の好ましい実施形態において、この方法はまた、α2,8結合によって第一のシアル酸に連結される第二のシアル酸残基の付加を生じる。この方法の生成物は、Siaα2,8−Siaα2,3−Gal−である。適切なアクセプターの例は、β1,4結合によってGlcNAcまたはGlcに連結される末端Gal、およびGlcNAcまたはGalNAcのいずれかにβ1,3結合される末端Galである。シアル酸自身に結合されるシアル酸に対する末端残基は、例えば、H、糖、オリゴ糖、または少なくとも1つの炭水化物原子を有するアグリコン基に結合され得る。いくつかの実施形態において、アクセプター残基は、例えば、タンパク質、脂質、またはプロテオグリカンに結合されるオリゴ糖の一部である。
【0107】
いくつかの実施形態において、本発明は、ガングリオシド、リゾガングリオシド、ガングリオシド模倣物、リゾガングリオシド模倣物、またはこれらの分子の炭水化物部分を合成するための反応混合物および方法を提供する。これらの方法および反応混合物は、代表的に、Gal4Glc−RおよびGal3GalNAc−Rからなる群から選択される式を有する化合物をガラクトシル化受容体部分として含み;ここでRは、セラミドまたは他の糖脂質からなる群から選択され、Rは、Gal4GlcCer、(Neu5Ac3)Gal4GlcCer、および(Neu5Ac8Neu5c3)Gal4GlcCerからなる群から選択される。例えば、ガングリオシド合成について、ガラクトシル化受容体は、Gal4GlcCer、Gal3GalNAc4(Neu5Ac3)Gal4GlcCer、およびGal3GalNAc4(Neu5Ac8Neu5c3)Gal4GlcCerからなる群から選択され得る。
【0108】
本発明の方法および反応混合物は、任意の多数のガングリオシド、リゾガングリオシド、および関連の構造を生成するために有用である。目的の多くのガングリオシドは、Oettgen,H.F.(編),Gangliosides and Cancer,VCH,Germany,1989,pp.10〜15、およびこれらで引用される参考文献に記載される。特定の目的のガングリオシドとしては、例えば、表1に列挙される脳および他の供給源で見出されるものが挙げられる。
【0109】
【表1−1】

【0110】
【表1−2】

本発明の二機能性のシアリルトランスフェラーゼは、例えば、ガングリオシドGD1a、GD1b、GT1a、GT1b、GT1c、およびGQ1b、またはこれらのガングリオシドの炭水化物部分を合成するために特に有用である。表1に示されるこれらのガングリオシドについての構造は、α2,3−シアリルトランスフェラーゼ活性およびα2,8−シアリルトランスフェラーゼ活性の両方を必要とする。本発明の方法および反応混合物によって提供される利点は、両方の活性が単一のポリペプチド中に存在することである。
【0111】
本発明のグリコシルトランスフェラーゼは、さらなるグリコシルトランスフェラーゼと他の酵素との組み合わせで使用され得る。例えば、シアリルトランスフェラーゼとガラクトシルトランスフェラーゼとの組み合わせが使用され得る。本発明のいくつかの実施形態において、二機能性のシアリルトランスフェラーゼによって利用されるガラクトシル化受容体は、適切な受容体をUDP−Galおよびガラクトシルトランスフェラーゼと接触させることによって形成される。本明細書中に記載されるものの1つであり得るガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチドは、Gal残基をUDP−Galから受容体に転移させる。
【0112】
同様に、ガラクトシルトランスフェラーゼについての受容体を合成するために本発明のβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼが使用され得る。例えば、ガラクトシルトランスフェラーゼのための受容体サッカリドは、GalNAcトランスフェラーゼについての受容体をUDP−GalNAcおよびGalNAcトランスフェラーゼポリペプチドと接触させることによって形成され得、ここでこのGalNAcトランスフェラーゼポリペプチドは、GalNAc残基をUDP−GalNAcからGalNAcトランスフェラーゼのための受容体に転移させる。
【0113】
この群の実施形態において、酵素および基質は、最初の反応混合物と組み合わされ得るか、または第2のグリコシルトランスフェラーゼ周期のための酵素および試薬が、一旦第1のグリコシルトランスフェラーゼ周期が終結に近づくと反応媒体に添加され得る。単独容器中で2つのグリコシルトランスフェラーゼ周期を連続して処理することによって、全収率は、中間種が単離される手順よりも改善される。さらに、余分の溶媒および副産物の除去および処分が低減される。
【0114】
上記のプロセスによって生成された生成物は、精製せずに使用され得る。しかし、生成物を回収することが通常好ましい。グリコシル化サッカリドを回収するための標準的な周知の技術としては、薄層クロマトグラフィーもしくは厚層クロマトグラフィー、またはイオン交換クロマトグラフィーのようなものがある。膜ろ過を使用することが好ましく、逆浸透膜を利用することがより好ましく、回収のために1つ以上のカラムクロマトグラフィー技術を使用することが好ましい。
【0115】
(E.グリコシルトランスフェラーゼおよび本発明の方法を用いて生成された糖結合体の使用)
グリコシルトランスフェラーゼおよび本発明の方法を用いて作製されるオリゴサッカリド化合物は、種々の適用(例えば、抗原、診断試薬、または治療剤)において使用され得る。従って、本発明はまた、種々の状態の処置において使用され得る薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は、上記の方法に従って生成されるオリゴサッカリドから構成される。
【0116】
本発明の薬学的組成は、種々の薬物送達系における使用に適切である。本発明における使用に適切した処方は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Company,Philadelphia,PA,第17版(1985)に見出される。薬物送達のための方法の手短な論評について、Langer,Science 249:1527〜1533(1990)を参照のこと。
【0117】
薬学的組成物は、予防処置および/または治療処置のために、エアロゾルまたは経皮によって、非経口投与、鼻腔内投与、局所投与、経口投与または局部投与されることが意図される。一般に、薬学的組成物は、非経口的(例えば、静脈内)に投与される。従って、本発明は、非経口投与のための組成物を提供し、これらの組成物は、受容可能なキャリア、好ましくは水性キャリア(例えば、水、緩衝水、生理食塩水、PBSなど)に溶解または懸濁した化合物を含む。この組成物は、生理学的状態に近づけるために必要とされるような薬学的に受容可能な補助物質(例えば、pH調整剤および緩衝剤、張度調整剤、湿潤剤、界面活性剤など)を含み得る。
【0118】
これらの組成物は、従来の滅菌技術によって滅菌され得るか、またはろ過滅菌され得る。得られた水溶液は、そのままで使用のためにパックされるか、または凍結乾燥され、この凍結乾燥調製物は、投与の前に滅菌水性キャリアと一緒にされる。この調製物のpHは、代表的に3と11との間であり、より好ましくは5〜9であり、そして最も好ましくは7〜8である。
【0119】
いくつかの実施形態において、本発明のオリゴサッカリドは、標準的な小胞形成脂質から形成されるリポソームに組み込まれ得る。種々の方法が、例えば、Szokaら、Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467(1980),米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、および同第4,837,028号に記載されるように、リポソームの調製について利用可能である。種々の標的化因子(例えば、
本発明のシアリルガラクトシド)を用いたリポソームの標的化が、当該分野において周知である(例えば、米国特許第4,957,773号、および同第4,603,044号を参照のこと)。
【0120】
オリゴサッカリドを含む組成物が、予防処置および/または治療処置のために投与され得る。治療の適用において、組成物は、疾患およびその合併症の症状を回復させるか、または少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で、上記のような疾患にすでに罹患している患者に投与される。これを達成するために適切な量は、「治療的に有効な量」として規定される。この使用のために有効な量は、疾患の重篤度、ならびに患者の体重および全体的な状態に依存するが、一般に70kgの患者について1日あたり約0.5mg〜約40gのオリゴサッカリドの範囲であり、1日あたり約5mg〜約20gの化合物の用量がより一般的に使用される。
【0121】
組成物の単回投与または複数回投与は、処置する医師によって選択される投薬レベルおよびパターンで実行され得る。少なくとも、薬学的処方物は、効果的に患者を処置するために十分な本発明のオリゴサッカリドの量を提供するべきである。
【0122】
このオリゴサッカリドはまた、診断試薬としての用途を提供し得る。例えば、標識した化合物が、炎症を有すると予測される患者における炎症または腫瘍転移の範囲を位置づけるために使用され得る。この使用のために、化合物は、適切な放射性同位体(例えば、125I、14C、またはトリチウム)で標識され得る。
【0123】
本発明のオリゴサッカリドは、本発明の化合物と特異的に反応するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の生成のための免疫原として使用され得る。種々の免疫グロブリン分子の生成および操作について当業者に利用可能な多数の技術が、本発明において使用され得る。抗体は、当業者に周知の種々の手段によって生成され得る。
【0124】
非ヒトモノクローナル抗体(例えば、マウス、ウサギ、ウマなど)の生成は周知であり、例えば、本発明のオリゴサッカリドを含む調製物を用いて動物を免疫化させることによって、達成され得る。この免疫化動物から得られる抗体産生細胞は、不死化され、そしてスクリーニングされるか、または所望の抗体の産生についてまずスクリーニングされてから不死化される。モノクローナル抗体産生の一般的手順の考察について、HarlowおよびLane,Antibodies,A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Publications,N.Y.(1988)を参照のこと。
【実施例】
【0125】
以下の実施例は、本発明を限定するためではなく例示するために提供される。
【0126】
この実施例は、細菌性病原Campylobacter jejuni OH4384のLOSにおけるGT1aガングリオシド模倣物の生合成の原因である4つの遺伝子のクローニングのための2つのストラテジーの使用を記載し、この細菌は、ギヤン−バレー症候群に関連する(Aspinallら、(1994)Infect.Immun.62:2122〜2125)。Aspinalら((1994)Biochemistry 33:241〜249)は、この株がトリシアリル化ガングリオシドGT1aを模倣する外部コアLPSを有することを示した。本発明者らは、まず活性スクリーニングストラテジーを用いて、α−2,3−シアリルトランスフェラーゼ(cst−I)をコードする遺伝子をクローン化した。次いで、本発明者らは、C.jejuni NCTC11168の近年完全に決定された配列からの生のヌクレオチド配列情報を使用して、C.jejuni OH4384からのLOS生合成に関する領域を増幅した。ヘプトシルトランスフェ
ラーゼIおよびIIに位置するプライマーを用いて、C.jejuni OH4384由来の11.47kbのLOS生合成遺伝子座を増幅した。配列決定は、この遺伝子座が、13個の部分的なオープンリーディングフレーム、または完全なオープンリーディングフレーム(ORF)をコードし、その一方でC.jejuni NCTC11168における対応する遺伝子座が13.49kbに及び、そして15個のORFを含むことを明らかにし、これらの2つの株の間の異なる組成を示した。
【0127】
潜在的なグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子を、それぞれクローン化し、Escherichia coliで発現させ、そして受容体として合成蛍光オリゴサッカリドを用いてアッセイした。本発明者らは、β−1,4−N−アセチルガラクトサミニル−トランスフェラーゼ(cgtA)、β−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(cgtB)、ならびにシアル酸をガラクトースのO−3およびガラクトースにα−2,3−結合しているシアル酸のO−8に転移させる二機能性シアリルトランスフェラーゼ(cst−II)をコードする遺伝子を同定した。それぞれの同定されたグリコシルトランスフェラーゼの結合特異性を、インビトロで合成されたモデル化合物のナノモル量にて600MHzでNMR分析することによって確認した。グラジエントインバース広帯ナノ−NMR(gradient inverse broadband nano−NMR)プローブを用いて、配列情報を、グリコシド結合を横切るJ(C,H)相関の検出によって入手し得た。C.jejuni OH4384におけるGT1a模倣物の合成におけるcgtAおよびcst−IIの役割を、そのLOSにおいてより短いガングリオシド模倣物を発現する2つの関連するC.jejuni株における対応するホモログとその配列および活性とを比較することによって、確認した。従って、これらの3つの酵素は、ラクトースから開始されるGT1a模倣物合成のために使用され得る。
【0128】
使用される略語は以下である:CE、キャピラリー電気泳動;CMP−Neu5Ac、シチジンモノホスフェート−N−アセチルノイラミン酸;COSY、相関分光法;FCHASE、6−(5−フルオレセイン−カルボキサミド)−ヘキサン酸スクシミジルエステル;GBS、ギヤン−バレー症候群;HMBC、異種核多重結合コヒーレンス;HSQC、異種核1量子コヒーレンス;LIF、レーザー誘導蛍光;LOS、リポオリゴサッカリド;LPS、リポポリサッカリド;NOE、核オーバーハウザー効果;NOESY、NOE分光法;TOCSY、全相関分光法(total correlation spectroscopy)。
【0129】
(実験手順)
(細菌株)
以下のC.jejuni株を、本研究で使用した:血清株(serostain)O:19(ATCC#43446);血清型O:19(株OH4382およびOH4384を疾患制御のための研究センター(Health Canada,Winnipeg,Manitoba)から入手した);および血清型O:2(NCTC#11168)。Escherichia coli DH5αを、HindIIIライブラリーについて使用した一方で、E.coli AD202(CGSG#7297)を異なるクローン化グリコシルトランスフェラーゼを発現するために使用した。
【0130】
(基本的な組換えDNA方法)
C.jejuni株からのゲノムDNA単離を、以前に記載された(Gilbertら、(1996)J.Biol.Chem.271:28271〜28276)ようにQiagen Genomic−tip 500/G(Qiagen Inc.,Valencia,CA)を用いて実行した。プラスミドDNA単離、制限酵素消化、クローニングのためのDNAフラグメントの精製、ライゲーションおよび形質転換を、酵素供給者、または特定の手順のために使用されるキットの製造者によって推奨されるとおりに実行した
。長PCR反応(>3kb)を、製造者(Boehringer Mannheim,Montreal)によって記載されるとおりにExpandTM long template PCRシステムを用いて実行した。特定のORFを増幅するためのPCR反応を、製造者(Boehringer Mannheim,Montreal)によって記載されるとおりPwo DNAポリメラーゼを用いて実行した。制限酵素およびDNA改変酵素を、New England Biolabs Ltd(Mississauga,ON)から購入した。DNA配列決定を、Applied Biosystems(Montreal)モデル370A自動化DNAシーケンサーおよび製造者のサイクルシーケンシングキットを用いて実行した。
【0131】
(C.jejuni由来のシアリルトランスフェラーゼについての活性スクリーニング)
ゲノムライブラリーを、C.jejuni OH4384の染色体DNAの部分的HindIII消化を用いて調製した。部分消化物を、QIAquickカラム(QIAGEN Inc.)で精製し、そしてHindIII消化pBluescript SK−を用いてライゲーションした。E.coli DH5αを、ライゲーション混合物を用いてエレクトロポレーションし、そして細胞を、150μg/mLアンピシリン、0.05mM IPTGおよび100μg/mL X−Gal(5−ブロモ−4−クロロ−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド)を有するLB培地上に蒔いた。白色コロニーを、100のプールに釣菌し、そして15%グリセロールを有する1mLの培地に再懸濁した。20μLの各プールを、150μg/mLのアンピシリンを補充した1.5mLのLB培地に接種するために使用した。37℃で2時間の増殖後、IPTGを1mMまで添加し、そして培養物をさらに4.5時間増殖させた。細胞を、遠心分離によって回収し、0.5mLの50mM Mop(pH7、10mM MgCl)に再懸濁し、そして1分間超音波処理した。インキュベーション時間および温度が、それぞれ18時間および32℃であることを除いて、以下に記載されるとおりに、この抽出物をシアリルトランスフェラーゼ活性についてアッセイした。陽性プールを単一コロニーのために蒔き、そして200個のコロニーを釣菌し、そして10のプールで活性について試験した。最終的に、陽性プールのコロニーを個々に試験し、これらは2つの陽性クローン、pCJH9(5.3kb挿入物)およびpCJH101(3.9kb挿入物)の単離を導いた。いくつかのサブクローン化フラグメントおよび注文設計した(custom−made)プライマーを用いて、2つのクローンの挿入物を、両方の鎖について完全に配列決定した。個々のHindIIIフラグメントを有するクローンをまた、シアリルトランスフェラーゼ活性について試験し、そして陽性の1つのみの挿入物(pBluescriptSK−中にクローン化された1.1kbのHindIIIフラグメント)を、placプロモーターに対して反対方向の挿入物を得るためにKpnI部位およびPstI部位を用いてpUC118に転移させた。
【0132】
(LPS生合成遺伝子座のクローニングおよび配列決定)
C.jejuni OH4384のLPS生合成遺伝子座を増幅するために使用されるプライマーは、株NCTC11168の完全なゲノム配列を決定したC.jejuni配列決定群(Sanger Centre,UK)のウェブサイト(URL;http://www.sanger.ac.uk/Projects/C_jejuni/)から入手可能な予備配列に基づいていた。プライマーCJ−42およびCJ−43(全てのプライマー配列は、表2に記載される)を、ExpandTMlong template PCRシステムを用いて11.47kbの遺伝子座を増幅するために使用した。このPCR産物を、S−300スピンカラム(Pharmacia Biotech)上で精製し、そしてプライマーウォーキングおよびHindIIIフラグメントのサブクローニングの組み合わせを用いて両方の鎖について完全に配列決定した。特定のORFを、表2に記載されるプライマーおよびPwo DNAポリメラーゼを用いて増幅した。このPCR産
物を、適切な制限酵素(表2を参照のこと)を用いて消化し、そしてpCWori+にクローン化した。
【0133】
【表2−1】

【0134】
【表2−2】

(E.coliでの発現およびグリコシルトランスフェラーゼアッセイ)
種々の構築物をE.coli AD202に移入させ、そして1mM IPTGでの4時間の誘導後、グリコシルトランスフェラーゼ活性の発現について試験した。抽出を、超音波処理によって行い、そして酵素反応を、32℃で一晩実行した。FCHASE標識化オリゴサッカリドを、以前に記載された(Wakarchukら、(1996)J.Biol.Chem.271:19166〜19173)とおりに調製した。タンパク質濃度
を、ビシンコニン酸(bicinchoninic acid)タンパク質アッセイキット(Pierce,Rockford,IL)を用いて決定した。全ての酵素アッセイについて、活性の1単位を、1分あたり1μmolの産物を生成する酵素の量と規定した。
【0135】
クローンのプールにおけるα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ活性についてのスクリーニングアッセイは、最終容量10μLで1mM Lac−FCHASE、0.2mM CMP−Neu5Ac、50mM Mops(pH7)、10mM MnClおよび10mM MgClを含んでいた。種々のサブクローン化ORFを、1mM IPTGでの培養の4時間誘導後にグリコシルトランスフェラーゼ活性の発現について試験した。抽出を超音波処理によって行い、そして酵素反応を32℃で一晩実行した。
【0136】
β−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼを、0.2mM GM2−FCHASE、1mM UDP−Gal、50mM Mes(pH6)、10mM MnClおよび1mM DTTを用いてアッセイした。β−1,4−GalNAcトランスフェラーゼを、0.5mM GM3−FCHASE、1mM UDP−GalNAc、50mM Hepes(pH7)および10mM MnClを用いてアッセイした。α−2,3−シアリルトランスフェラーゼを、0.5mM Lac−FCHASE,0.2mM CMP−Neu5Ac、50mM Hepes(pH7)および10mM MgClを用いてアッセイした。α−2,8−シアリルトランスフェラーゼを、0.5mM GM3−FCHASE、0.2mM CMP−Neu5Ac、50mM Hepes(pH7)および10mM MnClを用いてアッセイした。
【0137】
反応混合物を、10mM NaOHで適切に希釈し、そして以前に記載された(Gillbertら(1996)J.Biol.Chem.271、28271〜28276)の分離条件および検出条件を用いて実行したキャピラリー電気泳動によって分析した。電気泳動図のピークを、P/ACEステーションソフトウェアを用いる手動のピークインテグレーションを用いて分析した。酵素活性の迅速な検出のために、トランスフェラーゼ反応混合物由来のサンプルを、以前に記載された(同上)ようにシリカ−60 TLCプレート(E.Merck)上で薄層クロマトグラフィーによって試験した。
【0138】
(NMR分光法)
NMR実験を、Varian INOVA 600 NMR分光計で実行した。5mm
Zグラジエント三重共鳴プローブを用いて、ほとんどの実験を実行した。NMRサンプルを、0.3〜0.5mg(200〜500ナノモル)のFCHASE−グリコシドから調製した。化合物を、HOに溶解し、そしてpHを希NaOHを用いて7.0に調整した。凍結乾燥後、サンプルを600μLのDOに溶解した。全てのNMR実験を、COSY、TOCSY,NOESY,1D−NOESY,1D−TOCSYおよびHSQCのような標準技術を用いて以前に記載された(Pavliakら(1993)J.Biol.Chem.268:14146〜14152;Brissonら(1997)Biochemistry 36:3278〜3292)とおり実行した。プロトン化学シフト基準について、内部アセトンのメチル共鳴を、2.225ppm(H)にセットした。13C化学シフト基準については、内部アセトンのメチル共鳴を、67.40ppmでの外部ジオキサンと比較して31.07ppmにセットした。同種核実験は、それぞれ5〜8時間のオーダーであった。8000スキャンおよび800msの混合時間を用いるGD3−FCHASE[0.3mM]についての1D NOESY実験を、それぞれ8.5時間の持続時間で実行し、そして2〜5Hzのラインブロードニングファクター(line broadening factor)で処理した。4.16ppmでの共鳴の1D NOESYについて、3000スキャンを実行した。以下のパラメーターを、HSQCスペクトルを得るために使用した:1.0秒の緩和遅延(relaxation delay)、各々6000Hzおよび24147HzのFおよびFでのスペクトル幅、171
msのtにおける取り込み時間。t次元について、128焦点ポイント(complex point)を、1増分あたり256スキャンを用いて得た。Fにおける符合識別(sign discrimination)を、States法によって達成した。合計の取り込み時間は、20時間であった。GM2−FCHASEについて、幅広の線に起因して、HSQCが64時間実行されるように1増分あたりのスキャンの数を増加した。位相感受性スペクトルを、2048×2048ポイントにゼロフィリングした後に得た。非シフトガウスウインドウ関数を、両方の次元に適用した。HSQCスペクトルを、13C次元で23Hz/ポイント、およびプロトン次元で8Hz/ポイントの分解能でプロットした。多重線分裂の観察のために、H次元を、前進線形予測(forward linear prediction)およびπ/4−シフト化平方サインベル(sinebell)関数を用いて2Hz/ポイントの分解能で再処理した。全てのNMRデータを、VNMR5.1またはVNMR6.1ソフトウェアを備えたVarian標準シーケンス(standard sequences)を用いて得た。同じプログラムを、処理のために使用した。
【0139】
勾配逆性広帯域ナノ(gradient inverse broadband nano)−NMRプローブ(Varian)を使用して、GD3−FCHASEサンプルについて、勾配HMBC(BaxおよびSummers(1986)J.Am.Chem.Soc.108,2093−2094;Parellaら(1995)J.Mag.Reson.A 112,241−245)実験を実施した。高分解能マジック角回転プローブ(high−resolution magic angle spinning probe)であるナノ−NMRプローブは、たった40μL中にしか溶解していない液体サンプルの高分解能スペクトルを産生する(Manziら、(1995)J Biol.Chem.270,9154−9163)。GD3−FCHASEサンプル(質量=1486.33Da)を、オリジナルの0.6mLのサンプル(200ナノモル)を凍結乾燥して、そして最終濃度が5mMとなるように、40μLのDO中に溶解することによって、調製した。このサンプルの最終pHを、測定し得なかった。
【0140】
勾配HMBC実験を、2990Hzの回転速度、1024の複合ポイントの400増分、1増分あたり128スキャン、0.21秒の収集時間、18.5hの間、J(C,H)=140HzおよびJ(C,H)=8Hzにて、行った。
【0141】
(質量分析)
全ての質量測定物を、Perkin−Elmer Biosystems(Fragmingham,MA)Elite−STR MALDI−TOF器を使用して、得た。約2μgの各オリゴ糖を、ジヒドロキシ安息香酸の飽和溶液を含むマトリクスと混合した。正の質量スペクトルおよび負の質量スペクトルを、リフレクター様式を使用して得た。
【0142】
(結果)
(C.jejuni株におけるグリコシルトランスフェラーゼ活性の検出)
グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子のクローニングの前に、本発明者らは、いくつかの酵素活性について、C.jejuni OH4384細胞およびC.jejuni NCTC 11168細胞を試験した。酵素活性を検出したときに、このアッセイ条件を最適化して(実験手順中に記載される)、最大活性を保証した。本発明者らが使用したキャピラリー電気泳動アッセイは、非常に高感度であり、μU/ml範囲での酵素活性の検出を可能にした(Gilbertら、(1996)J.Biol.Chem.271:28271−28276)。本発明者らは、GT1aガングリオシド模倣合成に必要とされる酵素について、配列決定された株NCTC 11168およびGBS関連株OH4384の両方を試験した。予想されたように、株OH4384は、以下の構造の合成のために必要とされる酵素活性を有した:β−1,4−N−アセチルガラクトサミニルトランスフェ
ラーゼ,β−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ,α−2,3−シアリルトランスフェラーゼおよびα−2,8−シアリルトランスフェラーゼ。株NCTC 11168のゲノムは、β−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性およびα−2,8−シアリルトランスフェラーゼ活性を欠いていた。
【0143】
(活性スクリーニングストラテジーを使用するα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ(cst−I)のクローニング)
C.jeiuni OH4384由来の染色体DNAの非画分性の部分的HindIII消化から作製されたプラスミドライブラリーは、2,600の白色コロニー(100のプールを形成するために選択された)を生じた。本発明者らは、「分断攻略(divide and conquer)」スクリーニングプロトコルを使用して、これにより、2つのポジティブクローンを得て、そして、pCJH9(5.3kbインサート、3つのHindIII部位)およびpCJH101(3.9kbインサート、4つのHindIII部位)と命名した。C.jejuni OH4384の染色体DNAを用いたオープンリーディングフレーム(ORF)分析およびPCR反応は、pCJH9が染色体DNA中で隣接していないインサートを含むことを示した。pCJH9中の1440番目のヌクレオチドの下流の配列をさらに研究しなかったが、最初の1439のヌクレオチドは、pCJH101の配列内に完全に含まれることが見出された。染色体DNAを用いたこのORF分析およびPCR反応は、pCJH101のHindIIIフラグメントの全てが、C.jejuni OH4384の染色体DNA中で連続していることを示した。
【0144】
4つのOFR(2つは部分的で、そして、2つは完全である)は、pCJH101の配列中に見出された(図2)。最初の812ヌクレオチドは、Helicobacter pylori由来のペプチド鎖放出因子RF−2(prfB遺伝子、GenBank #AE000537)の最後の265アミノ酸残基と69%同一であるポリペプチドをコードする。この鎖放出因子のTAA終止コドンの最後の塩基はまた、pCJH101中の812番目〜2104番目のヌクレオチドにわたるオープンリーディングフレームのATG開始コドンの最初の塩基である。このORFを、cst−I(CampylobacterシアリルトランスフェラーゼI)と命名して、そして、このORFは、Haemophilus influenzae(GenBank #U32720)由来の推定ORFと相同である430アミノ酸のポリペプチドをコードする。この推定H.influenzaeのORFは、CstIポリペプチドの中間領域(80番目〜330番目のアミノ酸残基)と39%同一である231アミノ酸のポリペプチドをコードする。cst−Iの下流の配列は、E.coliの硫酸アデニルトランスフェラーゼの2つのサブユニット(CysDおよびCysN)(GenBank #AE000358)と相同(>60%の同一性)であるポリペプチドをコードするORFおよび部分的ORFを含む。
【0145】
cst−I ORFがシアリルトランスフェラーゼ活性をコードすることを確認するために、本発明者らは、このORFをサブクローニングして、そして、E.coli内でこのORFを過剰発現させた。この発現した酵素を使用して、シアル酸をGal−β−1,4−Glc−β−FCHASE(Lac−FCHASE)に添加した。この生成物(GM3−FCHASE)を、NMRによって分析して、Cst−IのNeu5Ac−α−2,3−Gal結合特異性を確認した。
【0146】
(C.jejuni OH4384のLOS生合成遺伝子座の配列決定)
C.jejuni NCTC 11168の配列決定グループのウェブサイト(Sanger Centre,UK(http://www.sanger.ac.uk/Projects/C_jejuni/)にて利用可能な先行する配列データの分析は、LPSの内部コアの合成に関連する2つのへプトシルトランスフェラーゼが、他の細菌ヘプトシルトランスフェラーゼとの配列相同性によって容易に同定可能であることを示した。2
つのヘプトシルトランスフェラーゼの間の領域は、NCTC 11168において13.49kbにわたり、そして、GenBankにおけるBLAST検索に基づいて、少なくとも7つの可能性のあるグリコシルトランスフェラーゼを含む。NCTC 11168のLOS外部コアに関して利用可能な構造はないので、この株において、推定グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子に関する機能を示唆することは不可能であった。
【0147】
ヘプトシルトランスフェラーゼ配列中の保存領域に基づいて、本発明者らは、プライマー(CJ−42およびCJ−43)を設計して、それらの間の領域を増幅した。本発明者らは、C.jejuni NCTC 11168からの染色体DNAを使用して、13.49kbのPCR産物およびC.jejuni OH4384からの染色体DNAを使用して、11.47kbのPCR産物を得た。NCTC 11168株からのPCR産物の大きさは、Sanger Centreのデータと一致した。OH4384株からのPCR産物のより小さい大きさは、2つのヘプトシルトランスフェラーゼ遺伝子の間の領域において、これらの株間で異質性を示して、そして、OH4384株に特異的なグリコシルトランスフェラーゼのうちのいくつかについての遺伝子が、その位置に存在し得ることを示唆した。本発明者らは、プライマーウォーキングとHindIIIフラグメント(GenBank #AF130984)とのサブクローニングの組合せを使用して、11.47kbのPCR産物を配列決定した。このDNAのG/C含量は、27%であった(これは、Campylobacter由来のDNAに典型的である)。配列の分析は、2つのヘプトシルトランスフェラーゼをコードする2つの部分的ORFに加えて、11の完全なORFを示した(図2、表3)。推定アミノ酸配列を比較した場合、本発明者らは、2つの株が、80%の同一性を上回る6つの遺伝子、および52〜68%の間が同一である4つの遺伝子を共有することを見出した(表3)。4つの遺伝子は、C.jejuni NCTC 11168に特徴的であるが、1つの遺伝子は、C.jejuni OH4384に特徴的である(図2)。C.jejuni OH4384において別個のORF(ORF#5aおよびORF#10a)として存在する2つの遺伝子が、C.jejuni NCTC 11168において、インフレームの融合ORF(#5b/10b)で見出される。
【0148】
(表3)
(C.jejuni OH4384由来のLOS生合成遺伝子座のORFの位置および記述)
【0149】
【表3−1】

【0150】
【表3−2】

【0151】
【表3−3】

C.jejuni NCTC 11168のORFの配列は、Sanger Centre(URL:http//www.sanger.ac.uk/Projects/C_jejuni/)から得ることができる。
実験的に決定された機能は、太字である。他の機能は、GenBankからのより高いスコア相同性に基づく。
【0152】
(外部コアグリコシルトランスフェラーゼの同定)
いくつかの構築物を、C.jejuni OH4384由来の2つのヘプトシルトランスフェラーゼ間に局在化する潜在的なグリコシルトランスフェラーゼの各々を発現させるために作製した。プラスミドpCJL−09はORF#5aを含み、そして、この構築物の培養は、GM3−FCHASEをアクセプターとして使用してアッセイした場合に、GalNAcトランスフェラーゼ活性を示した。GalNAcトランスフェラーゼは、Lac−FCHASEが貧困な基質である(GM3−FCHASEで観察された活性の2%未満)ので、シアリル化アクセプターに特異的であった。GM3−FCHASEから得られた反応産物は、MALDI−TOF質量分析によって決定した際、正確な質量を、そして、CEアッセイにおいて、GM2−FCHASE標準と同一の溶出時間を有した。C.jejuni OH4384の外部コアLPSの構造を考慮すると、このGalNAcトランスフェラーゼ(Camplyobacter グリコシルトランスフェラーゼAについてcgtA)はGM3−FCHASEの末端Gal残基に対して、β−1、4−特異性を有する。CgtAの結合特異性を、GM2−FCHASEのNMR分析によって確認した(以下のテキストを参照のこと、表4)。GM2模倣物の合成におけるcgtAのインビボでの役割は、C.jejuni OH4382により提供される天然のノックアウト変異体により確認される(図1)。C.jejuni OH4382からのcgtAホモログの配列決定の際に、本発明者らは、短縮化cgtAバージョン(347アミノ酸の代わりの29アミノ酸)の発現を生じるフレームシフト変異体(71番目の塩基の後の、8つのAの代わりの7つのAの伸長)を見出した。C.jejuni OH4382のLOS外部コア構造は、内部ガラクトース残基がシアル酸だけで置換されるときのβ−1,4−GlaNAcトランスフェラーゼの非存在と一致する(Aspinallら、(1994
)Biochemistry 33,241−249)。
【0153】
プラスミドpCJL−04はORF#6aを含み、そして、この構築物のIPTG誘導化した培養は、GM2−FCHASEをアクセプターとして使用してガラクトシルトランスフェラーゼ活性を示し、これによって、GM1a−FCHASEを生成した。この産物は、β−1,3−ガラクトシダーゼに感受性であり、そして、MALDI−TOF質量分析によって適当な質量を有することが見出された。C.jejuni OH4384のLOS外部コアの構造を考慮すると、本発明者らは、このガラクトシルトランスフェラーゼ活性(CampylobacterグリコシルトランスフェラーゼBについてcgtB)は、GM2−FCHASEの末端GalNAc残基に対して、β−1,3−特異性を有することを示唆する。CgtAの連結特異性を、Cst−I、CgtAおよびCgtBを連続的に使用することで合成したGM1a−FCHASEのNMR分析によって確認した(以下のテキストを参照のこと、表4)。
【0154】
プラスミドpCJL−03はOFR#7aを含み、そして、IPTG−誘導した培養物は、Lac−FCHASEおよびGM3−FCHASEの両方をアクセプターとして使用して、シアリルトランスフェラーゼ活性を示した。OH4384由来のこの第2のシアリルトランスフェラーゼを、cst−IIと命名した。Cst−IIは、シアル酸α−2,3をLac−FCHASEの末端Galに移して、そしてまた、α−2,8−をGM3−FCHASEの末端シアル酸に移すので、二機能性であることが示されている。Lac−FCHASEを用いて形成させた反応産物のNMR分析は、Gal上の第1のシアル酸のα−2,3−結合および第2のシアル酸のα−2,8−結合を確認した(以下のテキストを参照のこと、表4)。
【0155】
(表4)
(クローニングされたグリコシルトランスフェラーゼを使用して合成したガングリオシド模倣物の蛍光誘導体についての、プロトンNMR化学シフト)
【0156】
【表4−1】

【0157】
【表4−2】

600 MHz,DO(pH7)、Lac−FCHASEについて28℃、GM3−FCHASEについて25℃、GM2−FCHASEについて16℃、GM1a−FCHASEについて24℃およびGD3−FCHASEについて24℃にて得られたHSQCスペクトルからのppmにおいて。内部アセトンのメチル共鳴は、2.225ppm(H)である。誤差は、H化学シフトについて±0.02ppm、おおび、サンプル温度について±5℃である。誤差は、重複に起因して、a、b、dおよびeの残基のH−6共鳴について、±0.1ppmである。
【0158】
(シアリルトランスフェラーゼの比較)
トリシアル化GT1aガングリオシド模倣物の合成におけるC.jejuni OH4384由来のcst−IIのインビボでの役割を、ジシアル化GD1aガングリオシド模倣物を発現するC.jejuni O:19(血清型株(serostrain))由来のcst−IIホモログと比較することで支持する。これらの2つのcst−IIホモログの間で8アミノ酸の差異に翻訳する24ヌクレオチドの差異が存在する(図3)。E.coli中で発現される場合、C.jejuni O:19(血清型株)由来のcst−IIホモログは、α−2,3−シアリルトランスフェラーゼ活性を有するが、α−2,8−シアリルトランスフェラーゼ活性は低く(表5)、このことは、C.jejuni O:19(血清型株)LOS外部コア中の末端α−2,8−結合シアル酸の非存在と一致する(Aspinallら、(1994)Biochemistry 33,241−24
9)。C.jejuni NCTC11168由来のcst−IIホモログは、O:19(血清型株)またはOH4348由来のホモログよりも、極度に低いα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ活性を発現して、検出可能なα−2,8−シアルトランスフェラーゼ活性は発現しなかった。本発明者らは、NCTC 11168由来のcst−IIをE.coli中で発現した場合に、IPTG誘導性のバンドをSDS−PAGEゲル上で検出し得た(データは示さず)。NCTC 11168由来のCst−IIタンパク質は、O:19(血清型株)またはOH4384由来のホモログと、たった52%の同一性しか共有しない。本発明者らは、これらの配列の差異がE.coli中で発現されたより低い活性の原因であり得るか否かを決定できなかった。
【0159】
cst−Iは、LOS生合成遺伝子座の外に位置したが、これは、cst−IIに対して明らかに相同である。なぜならば、その最初の300残基が、C.jenuni OH4384またはC.jejuni NCTC 11168のいずれかに由来するCst−IIと44%の同一性を共有するからである(図3)。これらの2つのCts−IIホモログは、それらの間で52%同一な残基を共有しており、そして、Cst−IのC末端側の130アミノ酸を欠いている。C末端にて102アミノ酸を欠いているCst−Iの短縮バージョンは、活性であることが見出されて(データは示さず)、これは、Cst−IのC末端ドメインがシアリルトランスフェラーゼ活性に必要でないことを示す。C末端の102残基はインビトロでの酵素活性に不可欠であるが、これらは、調節的な目的か、または、適切な細胞局在化のいずれかのために、インビボで他の細胞構成成分と相互作用し得る。C.jejuniシアリルトランスフェラーゼの間での低レベルの保存は、N.meningitidisおよびN.gonorrhoeae由来のα−2,3−シアリルトランスフェラーゼについて以前に観察されたものとは非常に異なり、N.meningitidisおよびN.gonorrhoeaeで、lstトランスフェラーゼは、これらの2つの種の間、およびこれらの同じ種の異なる単離物の間のタンパク質レベルにて、90%より高く同一である(Gillbertら、前述)。
【0160】
(表5)
C.jejuni由来シアリルトランスフェラーゼの活性の比較。種々のシアリルトランスフェラーゼを、ベクターpCWori+中のマルトース結合タンパク質で融合タンパク質としてE.coli中で発現させた(Wakarchukら、(1994)Protein.Sci.3,467〜475)。超音波処理した抽出物を、500μMのLac−FCHASEまたはGM3−FCHASEのいずれかを用いてアッセイした。
【0161】
【表5】

活性は、抽出物中の総タンパク質1mgあたりのμU(1分間あたりの産物のpmol)で表現される。
Lac−FCHASEに対する活性で割ったGM3−FCHASEに対する活性の比率(%)。
【0162】
(合成モデル化合物のナノモル量のNMR分析)
同定されたグリコシルトランスフェラーゼの連結特異性を適切に評価するために、その産物を、NMR分光法によって分析した。酵素産物の精製のために必要とされる時間を減少させるために、NMR分析を、ナノモル量で実施した。全ての化合物は、可溶性であり、そして数Hzの線幅を有する鋭い共鳴を与える。なぜなら、H−1アノマー二重線(J1,2=8Hz)は、十分に分離されるからである。唯一の例外は、おそらく凝集に起因するブロードな線(約10Hz)を有するGM2−FCHASEについてである。ナノ−NMRプローブにおける5mM GD3−FCHASE溶液のプロトンスペクトルについて、アノマーシグナルの線幅は、増加した濃度に起因して、4Hzのオーダーであった。また、おそらく経時的なサンプルの分解に起因して、さらなるピークが観測された。0.3mMから5mMへとサンプルを濃縮する際のpH変化におそらく起因して、いくつかのわずかな化学シフトの変化もまた存在した。プロトンスペクトルを、アノマー共鳴とのHDO共鳴の重複を避けるために、種々の温度で取得した。プロトンスペクトルから評価され得るように、全ての化合物は純粋であり、そして存在した不純物または分解産物は、既に記載されるように実施されたNMR分析を妨げなかった(Pavliakら、(1993)J.Biol.Chem.268,14146〜14152;Brissonら、(1997)Biochemistry 36,3278〜3292)。
【0163】
全てのFCHASEグリコシドについて、同様なグリコシドの13Cの帰属(SabesanおよびPaulson(1986)J.Am.Chem.Soc.108,2068〜2080;Michonら(1987)Biochemistry 26,8399〜8405;Sabesanら(1984)Can.J.Chem.62,1034〜1045)が、利用可能であった。FCHASEグリコシドについて、13Cの帰属は、標準的な同種核2D実験、COSY、TOCSYおよびNOESYから、まずプロトンスペクトルを帰属し、次いでC−H相関を検出するHSQC実験から13Cの帰属を確認することによって検証した。このHSQC実験は、シアル酸のC−1およびC−2のような四級炭素を検出しないが、HMBC実験は検出する。主にGlcの共鳴について、HSQCスペクトルから得られたプロトン化学シフトは、13Cデカップリングの間のサンプルの加熱に起因して、同種核実験で得られたプロトン化学シフトと異なった。異なる温度で取得された一連のプロトンスペクトルから、Glc残基の化学シフトは、温度に最も感受性であることが見出された。全ての化合物において、GlcのH−1共鳴およびH−2共鳴は、0.004ppm/℃だけ、Gal(1−4)H−1は、0.002ppm/℃だけ、そしてNeu5Ac H−3および他のアノマー共鳴について0.001ppm/℃未満変化した。LAC−FCHASEについて、Glc H−6共鳴は、0.008ppm/℃だけ変化した。
【0164】
Glc共鳴についての大きな温度係数は、FCHASEのアミノフェニル基への連結によって誘起される環電流シフトに起因される。HSQC実験の間のサンプルの温度は、GlcのH−1共鳴およびH−2共鳴の化学シフトから測定された。GM1a−FCHASEについて、温度は、溶液中のNa+濃度の存在に起因して、12℃から24℃まで変化し、そしてNaOHを用いてpHを調整した。他のサンプルは、ほとんど厳しい加熱を有さなかった(<5℃)。全ての場合において、温度に伴うプロトン化学シフトの変化は、HSQCスペクトルにおける共鳴の帰属においていずれの問題も生じなかった。表4および表6において、全ての化学シフトは、HSQCスペクトルから取得される。
【0165】
アグリコンに対する連結部位は、主に、10のシアリルオリゴサッカリドについて既に
なされたように(Sallowayら(1996)Infect.Immun.64,2945〜2949)、グリコシル化のシフトを決定するために、この酵素産物の13C化学シフトの、前駆体のものとの比較から決定した。ここで、13Cスペクトルを比較する代わりに、HSQCスペクトルが比較される。なぜなら、100倍以上の物質が、13Cスペクトルを得るために必要とされるからである。前駆体化合物のHSQCスペクトルからの13C化学シフトが、酵素産物のものと比較される場合、主な低磁場シフトが、連結部位にて常に生じるが、前駆体の他の化学シフトは、実質的に変化しなかった。プロトン化学シフトの差は、長距離コンフォーメーションの効果、サンプル調製、および温度に大きく影響されやすい。付加された新たな糖の同定は、その13Cを化学シフトと、モノサッカリドまたは任意の末端残基の化学シフトとの比較から迅速に同定され得る。なぜなら、グリコン(glycon)のアノマー化学シフトのみが、グリコシド化の際に実質的に変化するからである(SabesanおよびPaulson、前出)。
【0166】
1D TOCSY実験または1D NOESY実験から得られる近位プロトンスピン−スピンカップリング(JHH)はまた、糖の同定を決定するために使用される。NOE実験は、アノマーグリコンプロトンの共鳴(シアル酸についてH−3)とアグリコンプロトンの共鳴との間のNOEの観測によって、糖を配列決定するためになされる。最大のNOEは、通常、連結プロトンに対してであるが、連結部位に隣接するアグリコンプロトン共鳴に対して、他のNOEもまた生じ得る。600MHzにて、多くのテトラサッカリドおよびペンタサッカリドのNOEは、ポジティブまたは非常に小さいが、全てのこれらの化合物は、おそらく大きなFCHASE部位の存在に起因して、800msの混合時間で良好なネガティブなNOEを与えた。
【0167】
合成Lac−FCHASEについて、Lac−FCHASEのラクトース部分についての13Cの帰属を、上記で概説した2D法によって確認した。全てのGlc単位のプロトン共鳴を、180msの混合時間でGlcのH−1共鳴に対する1D−TOCSY実験から帰属した。Gal H−1についての1D−TOCSY実験を、Gal単位のH−1〜H−4の共鳴を帰属するために使用した。次いで、Gal単位の残りのH−5およびH−6を、HSQC実験から帰属した。糖単位についての近位スピン−スピンカップリング値(JHH)は、これまでのデータと一致した(Michonら、前出)。FCHASE部分についての化学シフトは、既に与えられている(Gilbertら(1996)J.Biol.Chem.271,28271〜28276)。
【0168】
Lac−FCHASEからのCst−Iの酵素産物の正確な質量決定は、Lac−FCHASEアクセプターへのシアル酸の付加と一致した(図4)。この産物を、GM3−FCHASEとして同定した。なぜなら、この産物の糖部分のプロトンスペクトルおよび13Cの化学シフト(表6)が、GM3オリゴサッカリドまたはシアリルラクトースについてのもの(αNeu5Ac(2−3)βGal(1−4)βGlc;SabesanおよびPaulson、前出)と非常に類似したからである。GM3−FCHASEのプロトン共鳴を、COSYスペクトル、HSQCスペクトル、ならびにαNeu5Ac(2−3)βGal(1−4)βGlcNAc−FCHASEのもの(Gilbertら、前出)とのプロトンおよび13Cの化学シフトの比較から帰属した。これらの2つの化合物について、Neu5Ac残基およびGal残基に対するプロトンおよび13Cの化学シフトは、お互いを結び付ける誤差内であった(Id.)。Lac−FCHASEとGM3−FCHASEとのHSQCスペクトルの比較から、連結部位は、(2−3)シアリルオリゴサッカリドについて代表的なシアリル化の際に、Gal H−3およびGal C−3についての大きな低磁場シフトに起因して(SabesanおよびPaulson、前出)、Gal C−3であることが明らかである。また、αNeu5Ac(2−3)βGal(1−4)βGlcNAc−FCHASEについて既に見られるように(Gilbertら、前出)、シアル酸のH−3axからGalのH−3へのNOEを、代表的なαNeu5
Ac(2−3)Gal連結で観測した。
【0169】
(表6)
ラクトース(SabesanおよびPaulson、前出)、ガングリオシドオリゴサッカリド(Id.Sabesanら(1984)Can.J.Chem.62,1034〜1045)および(−8NeuAc2−)(Michonら(1987)Biochemistry 26,8399〜8405)について観測された13C化学シフトとのFCHASEグリコシドについての13C化学シフトの比較。グリコシド化部位の化学シフトに下線を付す。
【0170】
【表6−1】

【0171】
【表6−2】

Lac−FCHASEについて28℃で、GM3−FCHASEについて25℃で、GM2−FCHASEについて16℃で、GM1a−FCHASEについて24℃で、そしてGD3−FCHASEについて24℃で、600MHz、D2O、pH7で得られたHSQCスペクトルに由来する(ppm)。外部のジオキサン(67.40ppm)に対する内部のアセトンのメチルの共鳴は、31.07ppmである。誤差は、13C化学シフトについて±0.2ppmであり、そしてサンプル温度について±5℃である。誤差は、重複に起因して、6a、6b、6d、6eについて±0.8ppmである。+0.52ppmの補正を、参照化合物(25、27)の化学シフトに加えて、ジオキサンに対する化学シフトを67.40ppmに設定した。FCHASE化合物の化学シフトと対応する参照化合物の化学シフトとの間の1ppmを越える差を太字で示す。C−3およびC−4の帰属が、逆転されている。C−4およびC−6の帰属が、逆転されている。
【0172】
Lac−FCHASEからのCst−IIの酵素産物の正確な質量決定は、2つのシアル酸がLac−FCHASEアクセプターに付加されたことを示した(図4)。プロトンの共鳴を、COSY、1D TOCSYおよび1D NOESYならびに公知の構造と化学シフトの比較から帰属した。Glc H1〜H−6およびGlc H−1〜H−4の共鳴を、H−1共鳴に対する1D TOCSYから帰属した。Neu5Acの共鳴を、COSYから帰属し、そして1D NOESYによって確認した。4.16ppmでのH−8、H−9 Neu5Acの共鳴の1D NOESYを、H−9およびH−7の共鳴を位置付けるために使用した(Michonら、前出)。わずかに近位のカップリング定数に起因するNeu5Ac(2−3)のH−7共鳴の一重線の出現は、2〜8の連結を象徴する(Id.)。他の共鳴を、HSQCスペクトルおよび末端シアル酸についての13Cの帰属から帰属した(Id.)。Gal単位のプロトンおよび13C炭素の化学シフトは、GM3−FCHASEにおけるものと同様であり、このことは、αNeu5Ac(2−3)Gal連結の存在を示した。2つのシアル酸のJHH値、プロトンおよび13Cの化学シフトは、α(2−8)に連結したNeu5AトリサッカリドにおけるαNeu5Ac(2−8)Neu5Acのもの(Sallowayら(1996)Infect.Immun.64,2945〜2949)と同様であり、このことは、この連結の存在を示した。従って、産物をGD3−FCHASEとして同定した。Neu5AcのC−8でのシアリル化は、そのC−8の共鳴を72.6ppmから79.1ppmへと−6.5ppmの低磁場シフトを引き起こした。
【0173】
GD3−FCHASEについての内部残基NOEもまた、αNeu5Ac(2−8)αNeu5Ac(2−3)βGal配列のものを象徴した。Neu5Ac(2−3)およびNeu5Ac(2−8)の1.7〜1.8ppmでの2つのH−3ax共鳴に由来する最大の内部残基NOEは、Gal H−3および−8)Neu5Ac H−8の共鳴に対する。Gal H−4および−8)Neu5Ac H−7に対するより小さい内部残基NOEもまた観測される。FCHASEの共鳴に対するNOEもまた、H−3axの共鳴とのFCHASEの共鳴の重複に起因して、観測される(Gilbertら、前出)。Neu5Ac(2−3)のH−3eqからGal H−3への内部残基NOEもまた観測される。また、残基内は、プロトンの帰属を確認した。2〜8の連結についてのNOEは、−8Neu5Acα2−ポリサッカリドについて観測されるものと同様である(Michonら、前出)。
【0174】
シアル酸グリコシドの連結はまた、グリコシド結合を横切るJ(C,H)相関を検出するHMBC実験の使用によって確認され得た。α−2,3連結およびα−2,8連結の両方についての結果は、2つのNeu5AcアノマーC−2の共鳴とGal H−3および−8)Neu5Ac H−8の共鳴との間のJ(C,H)相関を示す。2つのNeu5Ac残基のH−3axとH−3eqとの共鳴に対する残基内相関もまた観測された。このGlc(C−1,H−2)相関もまた観測される。なぜなら、HMBCスペクトルにおいて、101ppmでの交差ピークと100.6ppmでの交差ピークとの部分的な重複が存在したからである。
【0175】
GM3−FCHASEからのCgtAの酵素産物の正確な質量決定は、N−アセチル化ヘキソース単位がGM3−FCHASEアクセプターに付加されたことを示した(図4)。この産物は、GM2−FCHASEとして同定された。なぜなら、このグリコシドのプロトンおよび13Cの化学シフトが、GM2オリゴサッカリド(GM2OS)についてのもの(Sabesanら(1984)Can.J.Chem.62,1034〜1045)と同様であったからである。GM2−FCHASEについてのHSQCスペクトルおよびそのプロトンスペクトルの積分から、今度は、新たなアノマーの「d1」に沿って4.17ppmおよび4.18ppmでの2つの共鳴ならびに2.04ppmでの2つのNAc基が存在する。TOCSY実験およびNOESY実験から、4.18ppmでの共鳴は、H−1とH−3との間の強力なNOEのために、明らかにGal H−3に帰属された。βガラクトピラノースについて、H−1とH−3との間およびH−1とH−5との間の強力な残基内NOEが、アキシアル位のプロトンおよびこれらの短いプロトン間距離に起因して観測される(Pavliakら(1993)J.Biol.Chem.268,14146〜14152;Brissonら(1997)Biochemistry 36,3278〜3292;Sabesanら(1984)Can.J.Chem.62,1034〜1045)。TOCSYスペクトルおよびGM2−FCHASEおよびGM2OSのH1化学シフトの比較(Sabesanら、前出)から、4.17ppmでの共鳴は、Gal H4として帰属される。同様に、TOCSYスペクトルおよびNOESYスペクトルから、GalNAcおよびGlcのH−1〜H−5、ならびにNeu5AcのH−3〜H−6を帰属した。ブロードな線に起因して、共鳴の多重線のパターンは、観測され得なかった。他の共鳴を、前駆体のHSQCスペクトルとの比較およびGM2OSについての13Cの帰属から帰属した(Sabesanら、前出)。GM3−FCHASEグリコシドとGM2−FCHASEグリコシドとのHSQCスペクトルの比較によって、前駆体と産物との間に−9.9ppmの低磁場シフトが、Gal C−4の共鳴に対して生じた。βGalNAcのH−3およびH−5への残基内NOEとともに、4.17ppmでのGalNAc H−1からGal H−4への残基内NOEもまた観測され、βGalNAc(1−4)Gal配列を確認した。観測されたNOEは、GM2ガングリオシドのコンフォメーションの特性から予想されるものであった(Sabesanら、前出)。
【0176】
GM2−FCHASEからのCgtBの酵素産物の正確な質量決定は、ヘキソース単位がGM2−FCHASEアクセプターに付加されていることを示した(図4)。この産物を、GM1a−FCHASEとして同定された。なぜなら、このグリコシドの13C化学シフトが、GM1aオリゴサッカリドについてのものと同様であったからである(Id.)。プロトンの共鳴を、COSY、1D TOCSYおよび1D NOESYから帰属した。この産物のさらなる「e1」共鳴に対する1D TOCSYから、β−ガラクトピラノースに代表的な多重線パターンを有する4つの共鳴を観測した。βGalNAcのH−1共鳴に対する1D TOCSYおよび1D NOESYから、H−1〜H−5の共鳴を帰属した。βGalNAc H−1〜H−4の多重線パターンは、β−ガラクトピラノシル構造に代表的であり、GM2−FCHASEについての糖の同定を確実にした。グリコシド化の際に、大きな摂動が、βGalNAcの共鳴に対して生じることが明らかであり、そしてGalNAc C−3の共鳴に対するアクセプターと産物との間に−9.1ppmの低磁場シフトが存在した。また、GalのH−3、H−5に対する残基内NOEとともに、Gal H−1からGalNAc H−3への残基間NOEおよびGalNAc H−4へのより小さいNOEが観測され、βGal(1−3)GalNAc配列を確実にした。観測されたNOEは、GM1aガングリオシドのコンホメーション特性から予想されるものであった(Sabesanら、前出)。
【0177】
GM2OSとGM1OSとにおいて、C−3およびC−4のβGal(1−4)の共鳴の帰属でいくつかの矛盾が存在し、これは、公開されているデータと反対である(Sabesanら、前出)。これまでに、この帰属は、公知の化合物との13Cの化学シフトの比較に基づいていた。GM1a−FCHASEについて、Gal(1−4)のH−3に対する帰属を、プロトンの次元で2Hz/点で処理されたHSQCスペクトルで直接的に、その大きな近位カップリングJ2,3=10Hzを観測することによって確認した。H−4多重線は、ガラクトースのH−4のエクアトリアル位に起因して、はるかにより小さい(5Hz未満)(Sabesanら、前出)。表6において、(−8Neu5Ac2−)中の1つのシアル酸のC−4およびC−6の帰属もまた、H−4およびH−6の帰属から確認されるように逆転されている(Michonら、前出)。
【0178】
HSQCスペクトルから得られたFCHASEグリコシドの13Cの化学シフトは、表6に示される参照オリゴサッカリドのものと非常に一致した。1ppmを越える差異が、いくつかの共鳴について観測され、そしてこれらは、還元末端での異なるアグリコンに起因する。これらの共鳴を排除すると、FCHASEグリコシドとこれらの参照化合物との間の化学シフトにおける差の平均は、±0.2ppm未満であった。従って、公知の構造を用いるプロトンの化学シフト、JHH値および13Cの化学シフトの比較、ならびにNOEまたはHMBCの使用は、種々のグリコシルトランスフェラーゼについての連結特異性を決定するために全て使用された。HSQCスペクトルを使用する利点は、プロトンの帰属が独立して確認されて、連結部位での原子の13C共鳴の帰属を確認し得ることである。感度の面から、プロトンNOEが、最も感受性で、続いてHSQC、次いでHMBCである。同量の物質に対して、5mmNMRプローブの代わりにナノ−NMRプローブを使用すると、総取得時間がかなり減少され、一晩でのHMBC実験の取得を可能した。
【0179】
(考察)
C.jejuni由来のLOSグリコシルトランスフェラーゼをクローン化するために、本発明者らは、本発明者らが以前に、Neisseria meningitidis由来のα−2,3−シアリルトランスフェラーゼのクローン化に使用したもの(Gilbertら、前出)と同様に活性スクリーニングストラテジーを利用した。この活性スクリーニングストラテジーは、同じα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ遺伝子(cst−l)の2つのバージョンをコードする2つのクローンを与えた。ORF分析は、430残基ポリペプチドがα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ活性の原因であることを示唆した。LOS生合成に関わる他の遺伝子を同定するために、本発明者らは、C.jejuni NCTC11168の完全なゲノム配列におけるLOS生合成遺伝子座を、C.jejuni OH4384由来の対応する遺伝子座と比較した。完全なオープンリーディングフレームが同定され、そして分析された。β−1,4−N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(cgtA)、β−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(cgtB)および二官能性シアリルトランスフェラーゼ(cst−II)を含むいくつかのオープンリーディングフレームを、E.coli中で個々に発現させた。
【0180】
ナノモル量のガングリオシド模倣物の蛍光誘導体のインビトロでの合成およびそれらのNMR分析は、4つのクローン化したグリコシルトランスフェラーゼの連結特異性を明らかに確実にする。これらのデータに基づき、本発明者らは、図4に記載される経路が、C.jejuni OH4384によってGT1a模倣物を合成するために使用されることを示唆する。cgtAについてのこの役割は、この遺伝子の不活性なバージョンを保有するC.jejuni OH4342が、そのLOS外部コアにおいてβ−1,4−GalNAcを有さないという事実によってさらに支持される(図1)。C.jejuni OH4384からのcst−II遺伝子は、インビトロアッセイにおいて、α−2,3−シアリルトランスフェラーゼおよびα−2,8−シアリルトランスフェラーゼの両方を示したが、C.jejuni O:19(血清系統(serostrain))からのcst−IIは、α−2,3−シアリルトランスフェラーゼ活性のみを示した(表5)。このことは、C.jejuniのOH4382およびOH4384(これらの両方は、同一のcst−II遺伝子を有するが、C.jejuni O:19(血清系統、図1を参照のこと)では有さない)において、末端α−2,8−連結シアル酸の付加におけるcst−IIについての役割と一致する。C.jejuni O:19(血清系統)からのCst−II相同体とOH4382/84からのCst−II相同体との間で8アミノ酸の違いが存在する。
【0181】
cst−IIの二官能性は、C.jejuni感染の結果に対して影響を有し得る。なぜなら、末端ジシアリル化エピトープの発見は、神経障害性合併症(例えば、ギヤン−バ
レー症候群)の発生に関与し得ることが示されているからである(Sallowayら(1996)Infect.Immun.64,2945〜2949)。その二官能性活性が、これまでに記載されたシアリルトランスフェラーゼの中で新規であることもまた注目すべきである。しかし、二官能性グリコシルトランスフェラーゼ活性は、E.coli由来の3−デオキシ−D−マンノ−オクツロソン酸トランスフェラーゼについて記載されている(Belunis,C.J.およびRaetz,C.R.(1992)J.Biol.Chem.267,9988〜9997)。
【0182】
cst−IIの一/二官能性活性およびcgtAの活性化/不活性化は、C.jejuniに、宿主に提示される異なる表面糖質を作らせる相変異機構の2つの形態であると考えられる。3つのO:19系統(血清系統、OH4382およびOH4384)の中で見出されるこれらの小さな遺伝子改変に加えて、この遺伝子座が、C.jejuni OH4384とNCTC 11168(O:2系統)との間で比較される場合、大きな遺伝的再配列が存在する。prfB遺伝子を除いて、cst−I遺伝子座(cysNおよびcysDを含む)は、C.jejuni OH4384においてのみ見出される。OH4384系統とNCTC 11168系統との間のLOS生合成遺伝子座の組織化において有意な差が存在する。いくつかの遺伝子は、十分に保存され、いくつかの遺伝子は、不十分に保存されているが、他の遺伝子は、系統のどれか一方に固有である。OH4384において別個のORF(#5a:cgtAおよび#10a:NeuA)として存在する2つの遺伝子は、NCTC 11168ではインフレーム融合ORF(ORF#5b/#10b)として見出される。β−N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ活性は、この系統で検出され、これは、融合物の少なくともcgtA部分が活性であり得ることを示唆する。
【0183】
要約すると、この実施例は、カンピロバクター属におけるリポオリゴサッカリドの合成に関わる酵素をコードするいくつかのオープンリーディングフレームの同定を記載する。
【0184】
本明細書中で記載される実施例および実施形態は、例示の目的のみであること、ならびにそれらを考慮して、種々の改変または変更が、当業者に示唆され、そしてこの適用および添付された特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれるべきであることが理解される。本明細書中に引用される全ての刊行物、特許、および特許出願は、本明細書によって全ての目的について参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】図1A〜1Cは、C.jejuni O:19株由来のリポオリゴサッカリド(LOS)外側コア構造を示す。これらの構造は、Aspinallら(1994)Biochemistry 33,241−249に記載され、そしてガングリオシドのオリゴサッカリド部分と類似性を示す部分を、枠で囲まれたを定める。図1A:C.jejuni O:19血清型(ATCC#43446)のLOSは、ガングリオシドGD1aのオリゴサッカリド部分と構造的類似性を有する。図1B:C.jejuni O:19株OH4384のLOSは、ガングリオシドGT1aのオリゴサッカリド部分と構造的類似性を有する。図1C:C.jejuni OH4382のLOSは、ガングリオシドGD3のオリゴサッカリド部分と構造的類似性を有する。
【図2】図2A〜2Bは、OH4384由来のcst−I遺伝子座の遺伝子編成およびOH4384およびNCTC11168のLOS生合成遺伝子座の比較を示す。目盛記号の間の距離は1kbである。図2Aは、GenBank(#AF130466)から利用可能であるヌクレオチド配列を基にした、OH4384のcst−I遺伝子座の模式図を示す。部分的なprfB遺伝子は、Helicobacter pylori由来のペプチド鎖放出因子(GenBank#AE000537)にある程度類似であり、一方、cysD遺伝子および部分的cysN遺伝子は、E.coli遺伝子がコードする硫酸アデニリルトランスフェラーゼのサブユニット(GenBank#AE000358)に類似である。図2Bは、OH4384のLOS生合成遺伝子座の模式図を示し、この遺伝子座はGenBank(#AF130984)に由来するヌクレオチド配列に基づく。OH4382のLOS生合成遺伝子座のヌクレオチド配列は、cgtA遺伝子を除いてOH4384の遺伝子座と同一であり、このcgtA遺伝子は、「A」を欠失している(本文およびGenBank#AF167345を参照のこと)。NCTC11168のLOS生合成遺伝子座の配列は、Sanger Centre(URL:http//www.sanger.ac.uk/Projects/C_jejuni/)より利用可能である。対応する相同な遺伝子は同じ数を有し、OH4384遺伝子についての後続の「a」、およびNCTC11168遺伝子についての後続の「b」を有する。OH4384株に特有の遺伝子を黒色で示し、そしてNCTC11168に特有の遺伝子をグレーで示す。OH4384のORFの#5aおよび#10aは、NCTC11168におけるインフレーム(in−frame)融合ORF(#5b/10b)として見出され、そしてアスタリスク()で表示される。各々のORFについての提案される機能は、表4に見出される。
【図3】図3は、シアリルトランスフェラーゼの縮退したアミノ酸配列のアラインメントを示す。OH4384cst−I遺伝子(最初の300残基)、OH4384 cst−II遺伝子(OH4382 cst−IIと同一)、O:19(血清株(serostrain))cst−II遺伝子(GenBank#AF167344)、NCTC11168 cst−II遺伝子およびH.influenzae推定ORF(GenBank#U32720)を、ClustalXアラインメントプログラム(Thompsonら、(1997)Nucleic Acids Res.25,4876−82)を使用して並置させた。プログラムGenDoc(Nicholas,K.B.およびNicholas、H.B.(1997)URL:http://www.cris.com/〜ketchup/genedoc.shtml)によって作成した。
【図4】図4は、C.jejuni OH4384のグリコシルトランスフェラーゼを使用する、ガングリオシド模倣物の酵素的な合成についての模式図を示す。合成のアクセプター分子から出発して、示される配列を使用して、組換えのα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ(Cst−I)、β−1,4−N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(CgtA)、β−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(CgtB)、および二機能性のα−2,3/α−2,8−シアリルトランスフェラーゼ(Cst−II)を用いて、一系列のガングリオシド模倣物を合成した。全ての生成物を質量分析によって分析し、そして単一同位体(monoisotopic)の観測された質量(括弧で示す)は、全て理論上の質量の0.02%以内であった。GM3模倣物、GD3模倣物、GM2模倣物およびGM1a模倣物もまた、NMR分光法によって分析した(表4を参照のこと)。
【0186】
(配列表)
【0187】
【化1】

【0188】
【化2】

【0189】
【化3】

【0190】
【化4】

【0191】
【化5】

【0192】
【化6】

【0193】
【化7】

【0194】
【化8】

【0195】
【化9】

【0196】
【化10】

【0197】
【化11】

【0198】
【化12】

【0199】
【化13】

【0200】
【化14】

【0201】
【化15】

【0202】
【化16】

【0203】
【化17】

【0204】
【化18】

【0205】
【化19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された核酸分子または組換え核酸分子であって、該核酸分子は、
β−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有するグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列
を含み、
該核酸の配列は、配列番号30のヌクレオチド配列のうちの少なくとも50ヌクレオチドにわたって少なくとも70%の同一性を有する、
核酸分子。
【請求項2】
請求項1に記載の核酸によりコードされる単離されたポリペプチドであって、該ポリペプチドは、β−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有する、ポリペプチド。
【請求項3】
請求項2に記載の単離されたポリペプチドであって、該ポリペプチドは、配列番号31のアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
【請求項4】
オリゴサッカリドを合成するための、請求項2〜3のうちのいずれか1項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項5】
請求項4に記載の使用であって、前記オリゴサッカリドはガングリオシドである、使用。
【請求項6】
請求項1に記載の核酸分子を含む、発現ベクターまたは発現カセット。
【請求項7】
請求項6に記載の発現ベクターまたは発現カセットを含む、宿主細胞。
【請求項8】
グリコシルトランスフェラーゼポリペプチドを合成するための、請求項1に記載の核酸分子あるいは請求項6に記載の発現ベクターまたは発現カセットあるいは請求項7に記載の宿主細胞の、使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−122(P2009−122A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189243(P2008−189243)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【分割の表示】特願2002−574334(P2002−574334)の分割
【原出願日】平成14年2月22日(2002.2.22)
【出願人】(500276482)ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ (5)
【Fターム(参考)】