説明

キサントフモールからナリンゲニン誘導体を製造する方法

本発明は、キサントフモール又はその誘導体からナリンゲニン誘導体を製造する有効な方法に関する。特に、本発明による方法は、キサントフモールからの、例えばエナンチオマー濃縮された形態のイソキサントフモールの生成と、特異的な手法による続くイソキサントフモールの脱メチル化とを行って、特に8−プレニルナリンゲニン等の対応するナリンゲニン誘導体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キサントフモール又はその誘導体からナリンゲニン誘導体を製造する有効な方法に関する。特に、本発明による方法は、キサントフモールからの、例えばエナンチオマー濃縮された形態のイソキサントフモールの生成と、特異的な手法による続くイソキサントフモールの脱メチル化とを行って、特に8−プレニルナリンゲニン等の対応するナリンゲニン誘導体を得ることを提供する。
【背景技術】
【0002】
8−プレニルナリンゲニンは、有力な植物エストロゲンであり(Zierau, O; Gester, S.; Schwab, P.; Metz, P.; Kolba, S.; Wulf, M.; Vollmer, G. Planta Med. 2002, 68, 449-451)、目下、さらなる生物学的特性及び薬理学的特性について重点的に研究されている。
【0003】
それゆえ、特に8−プレニルナリンゲニン等の対応するナリンゲニン誘導体を製造する簡潔且つ有効な方法が望まれている。
【0004】
キサントフモールは黄色固体であり、この構造は、カルコンの基本的なフレームワークに由来し、天然ホップ(フムルス・ルプルス(Humulus lupulus))中に発生するフラボノイドの1種である。キサントフモールは、ホップから簡潔且つ経済的に、高収量且つ高純度で得ることができる(ドイツ特許第102 40 065.2号を参照のこと)。キサントフモールはアルカリ性条件下でイソキサントフモールに異性化する。しかしながら、8−プレニルナリンゲニンを形成するイソキサントフモールのエーテル開裂は、著しい問題をもたらす。
【0005】
ルイス酸、特にAlCl、AlBr及びBBrは、アリールメチルエーテルの開裂に有効な試薬である(Greene, Th. W.; Wutz, P. G. M. Protective Groups in Organic Synthesis John Wiley & Sons: New York 1999, 250-257)。特に、ルイス酸感受性基が出発物質中に存在する可能性がある場合に、問題が生じる。例えば、OH基は、酸の形成をもたらし(例えば、AlXを使用する場合、HX)、ルイス酸と結合する(不活性化)。二重結合は、転位、OH付加若しくはHX付加、フリーデル・クラフツ反応若しくはプリンスアルキル化によって反応して、カチオン性転位を起こすか、又は例えばプレニル系等の二重結合が複数ある場合には、環化生成物をもたらし得る(テルペン型環化)。ワークアップでは、二重結合への高頻度の水の付加が観察され得る。他のエーテル、例えば、フラボノイドに見られるような環状エーテルの望ましくない開裂が起こり得る。酸化条件下、時によっては空気中で、ハロゲン化が観察される。
【0006】
BBrによる8−ゲラニルフラバノンの脱メチル化を続いて行ったが(Wang, Y.; Tan, W.; Li, W. Z.; Li, Y. J. Nat. Prod. 2001, 64, 196-199)、例えばイソキサントフモール等の酸感受性誘導体にこの方法を適用すると主に、プレニル基と隣接するOH基との反応による環化生成物がもたらされ、またプレニル基の二重結合への水の付加がもたらされる。遷移金属化合物に関しては、1,4−ジメトキシ芳香族化合物における脱メチル化作用により、開示されるキノンが得られることが、硝酸セリウムアンモニウムについてのみ記載されている(Kawasaki, M.; Matsuda, F.; Terashima, S. Tetrahedron 1988, 44, 5713)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このため、本発明の状況では、イソキサントフモール及びその誘導体の場合に存在し得るような、酸触媒下で容易に環化する酸不安定性基を有する、特にビニル基又はアリル基とヒドロキシル基とをオルト位に有するアリールメチルエーテルの脱メチル化に関する新規の合成方法が、特に8−プレニルナリンゲニン等の対応するナリンゲニン誘導体を製造するために必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、キサントフモール又はその誘導体から、特に8−プレニルナリンゲニン等のナリンゲニン誘導体を製造する有効な方法であって、
(1)下記式(I)に記載のキサントフモール又はその誘導体を反応させる工程であって、それにより、下記式(II)に記載のイソキサントフモール又はその誘導体を生成する、工程:
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Rは、アリル基、クロチル基、プレニル基、ゲラニル基又はネリル基であり、
は、水素、直鎖若しくは分岐鎖(C〜C)−アルキル基、(C〜C)−シクロアルキル基、非置換、一置換若しくは二置換フェニル若しくはベンジル基(ここで、置換基は、直鎖若しくは分岐鎖(C〜C)−アルキル基及び(C〜C)−アルコキシ基から選択され得る)、(−C(O)−R)基(式中、Rは水素又は直鎖若しくは分岐鎖(C〜C)−アルキル基から選択される)、及びシリル保護基から成る群より選択される)と、その後
(2)上記式(II)に記載の化合物を脱メチル化する工程であって、下記式(III)に記載のナリンゲニン誘導体を得る、工程
【0011】
【化2】

【0012】
とを含み、脱メチル化が、
(A)上記式(II)に記載の化合物を、アルカリ金属アルコキシド又は第三級アミンから選択される塩基の添加を伴い、一般式MX(式中、Mはルイス酸金属イオンであり、Xはハロゲンである)の化合物と反応させる、塩基で緩衝化させる、ルイス酸による脱メチル化として、又は
(B)基Rがそれぞれ独立して(−C(O)−R)基(式中、Rは、水素、又は直鎖若しくは分岐鎖(C〜C)−アルキル基から選択される)又はシリル保護基である上記式(II)に記載の化合物を、一般式MX(式中、Mはルイス酸金属イオンであり、Xはハロゲンである)の化合物と反応させる、保護基で補助される、ルイス酸による脱メチル化として、又は
(C)上記式(II)に記載の化合物を、一般式LY(式中、Lは、ランタノイド、スカンジウム又はイットリウムであり、Yは、Hal、OTs、OTf、OTfa、OMs、ClO、BF又はPHalであり、zは、元素Lの原子価に応じて、1〜4の整数である)の化合物と反応させるような、脱メチル化として
実施される、方法を提供する。
【0013】
通常、工程(A)、(B)及び(C)の状況の脱メチル化では、当業者にとって周知であるように、反応を促進させる添加物として、求核試薬(例えば、ハロゲン化物、特にヨウ化物、例えば、硫化アルキル、硫化アリール若しくはチオアセテート等の硫化物、セレニド、又は二硫化物等)を添加する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の状況において、シリル保護基は、例えば、Greene, Th. W.; Wutz, P. G. M. Protective Groups in Organic Synthesis John Wiley & Sons: New York 1999に明示されるような従来のシリル化OH保護基を意味するものである。例として本明細書に挙げられ得るものは、SiHal、Siアルキル、Si(Oアルキル)(式中、HalはCl又はBrであり、アルキルはそれぞれ独立して、直鎖若しくは分岐鎖(C〜C)−アルキル基である)に基づく保護基、又は混合置換シリル保護基(例えば、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)若しくはtert−ブチルジフェニルシリル、特にTMS、TES、TIPS及びTBS)である。
【0015】
ハロゲンは、F、Cl、Br及びIを意味するものである。Tsはトシレートであり、Tfはトリフレートであり、Tfaはトリフルオロアセテートであり、Msはメシレートである。
【0016】
驚くべきことに、既知の方法を用いて比較的長期間失敗に終わった試みの末、3つの代替方法(A、B及びC)が、本明細書で用いられるイソキサントフモール誘導体等の感受性であるアリールメチルエーテルの脱メチル化について見出された。
【0017】
脱メチル化の方法(A)は、塩基で緩衝化させる、ルイス酸による脱メチル化である。通常、式(II)に記載の出発化合物を、1〜5当量の一般式MX(式中、Mは好ましくはホウ素又は主族3の金属であり、Xはハロゲンである)の化合物と反応させる。特に好ましくは、化合物はBX及びAlXであり、最も好ましくはBBr及びAlBrである。また、アルカリ金属アルコキシド又は第三級アミン、好ましくは、特にコリジン等の第三級アミンから選択される0.5〜10当量の塩基を反応バッチに添加する。好ましくは、塩基の割合は1〜6当量である。ルイス酸及び塩基は両方とも、イオン交換体又は固相に結合し、またそれらの組み合わせでもよい。適切な場合は、上記で既に挙げた対応する求核試薬等の補助剤、及び/又は塩化トリメチルシリルを反応バッチに添加することができる。本発明によれば、方法Aにおいて、手法は好適な有機溶媒中、通常100℃未満で行う。好ましくは、0〜50℃、乾燥不活性溶媒中で反応を行う。特に好ましくは、室温、乾燥ジクロロメタン中で反応を行う。
【0018】
脱メチル化の方法(B)は、保護基で補助される、ルイス酸による脱メチル化である。式(II)に記載の化合物のフェノール性OH基の保護について、出発化合物は、(OH基1つ当たり)1〜5当量の好適なアシル化合物又はシリル化合物と反応する(Greene, Th. W.; Wutz, P. G. M. Protective Groups in Organic Synthesis John Wiley & Sons: New York 1999も参照のこと)。好ましくは、OH基1つ当たり、1〜2当量のTMSCl、TESCl、TIPSCl、TBSCl又は無水酢酸を使用する。特に好ましくは、2.5モル当量のクロロトリイソプロピルシランと反応させることである。適切な場合には、反応を促進させるために、上記で既に挙げた求核試薬(例えば、ヨウ化物)、又は例えばイミダゾール等の添加物を添加することができる。通常、その後、式(II)に記載の保護された出発化合物を1〜2当量の一般式MX(式中、Mは好ましくはホウ素又は主族3の金属であり、Xはハロゲンである)の化合物と反応させる。特に好ましくは、化合物はBX及びAlXであり、最も好ましくはBBr及びAlBrである。本発明によれば、方法(B)において、手法は好適な有機溶媒中、通常100℃未満で行う。好ましくは、0〜50℃、乾燥不活性溶媒中で反応を行う。特に好ましくは、室温、乾燥ジクロロメタン中で反応を行う。方法(B)において保護基を除去するのに好適な反応は、Greene, Th. W.; Wutz, P. G. M. Protective Groups in Organic Synthesis John Wiley & Sons: New York 1999に開示される。特に好ましくは、好適な有機溶媒中でHF又はテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドを用いたシリル保護基の除去である。
【0019】
脱メチル化の方法(C)において(ランタニドイオン、スカンジウムイオン又はイットリウムイオンで補助される脱メチル化)、式(II)に記載の出発化合物は、乾燥有機溶媒中で、一般式LY(式中、Lは、ランタノイド、スカンジウム又はイットリウムであり、Yは、Hal、OTs、OTf、OTfa、OMs、ClO、BF又はPHalであり、zは、元素Lの原子価に応じて、1〜4の整数である)の化合物と反応する。好ましくは、該手法はさらなる補助剤としてヨウ化物と、スカンジウム塩とを用いて行う。特に好ましくは、テトラヒドロフラン中、約70℃でヨウ化カリウムとスカンジウムトリフルオロメタンスルホネートとを用いる実施形態である。
【0020】
本発明の状況では、工程(1)において、初めに、キサントフモールをイソキサントフモールに変換する。これは、アルカリ性条件下で異性化することによる既知の方法で進行させることができる。しかしながら、特に、工程(1)では、イソキサントフモールを、エナンチオマー濃縮された形態で製造することができる。これは、キサントフモールを塩基性条件下でスパルテインと(方法(I))、又はキラル相間移動触媒、例えばO’Donnellの相間移動触媒であるO−アリル−N−(9−アントラセニルメチル)シンコニジニウムブロミドと(方法(II))反応させることによる。その結果、最終的なHPLCワークアップの末、エナンチオマー濃縮されたイソキサントフモール又はその誘導体が得られる。この手法は、その後、さらなる脱メチル化工程において、エナンチオマー濃縮されたナリンゲニン誘導体、例えば(−)又は(+)−8−プレニルナリンゲニンも得られるという利点を有する。代替的には、ラセミ化合物の分離に関して、又はさらなるエナンチオマー濃縮に関して、キラルクロマトグラフィカラムを利用することができる。しかしながら、この場合には、化合物が容易にラセミ化することに留意する必要がある。
【0021】
本発明の状況において、Rは特にプレニルである。それゆえ、本発明は、例えばまたエナンチオマー濃縮された形態の8−プレニルナリンゲニンを製造する極めて有効な方法を含み、この方法は、ホップ抽出物から得られるキサントフモールから出発する。
【0022】
本発明を以下で実施例を用いてより詳細に説明する。
【実施例】
【0023】
反応は全て、アルゴン下及び乾燥溶媒中で実施した。H−及び13C−NMRスペクトルを、Varian Mercury 300MHz分光計を用いて記録した。化学シフトのδ値(ppm)は、テトラメチルシランを内部標準として用いて示す。ESI−MSスペクトルは、API 150EX分光計(Applied Biosystems)を用いて得た。分取用HPLCは、Merck Hitachi製の装置により210nmの波長で、アセトニトリル/水を用い、YMC−pack ODS AA12S05−1520WTカラムを用いて実施した。フラッシュクロマトグラフィについては、Silicagel 60(0.040〜0.063nm)を利用した。
ラセミ体のイソキサントフモールの合成
【0024】
キサントフモール(500mg、1.4mmol)を500mlの1%NaOHに溶解し、0℃で2時間攪拌した。50%HSOで酸性化することにより、淡黄色の沈殿物が得られる。濾過及びHOによる入念な洗浄の後、乾燥させた生成物をメタノールに溶解し、再度濾過する。HOを添加した後、メタノールを除去する。凍結乾燥により、95%を超える純度でラセミ体のイソキサントフモールが淡黄色粉末として得られる。
分光分析データ:UV:λmax 288nm、H−NMR:δ 1.60(s,3H)、1.61(s,3H)、2.62(dd,1H,J=16.3、J=2.9Hz)、2.93(dd,1H,J=16.3,J=12.6)、3.26(d,1H,J=7.1)、3.73(s,3H)、5.20(t,1H,J=7.1)、5.36(dd,1H,J=12.6,J=2.9)、6.22(s,1H)、6.89(d,2H,J=8.6)、7.39(d,1H,J=8.6);13C−NMR:δ 17.87、22.50、25.87、46.12、55.73、79.37、93.49、106.04、108.79、115.85、123.63、128.45、130.83、131.31、158.10、160.84、161.81、162.57、188.49;ESI−MS:353.3[M−H]
エナンチオマー濃縮されたイソキサントフモールの合成
方法(I)
【0025】
(−)−スパルテイン(20mg、0.084mmol)のトルエン溶液に、n−ブチルリチウム(0.052mlの1.6Mヘキサン溶液)を−78℃で滴下する。15分後、−78℃で、キサントフモール(2つのOH基はTBMSにより保護されている)(33mg、0.056mmol)の溶液を徐々に滴下する。次に、この混合物を室温に温める。24時間後、トルエンを真空中で除去し、残渣を石油エーテル/酢酸エチル=5:1に溶解し、石油エーテル/酢酸エチルを用いてシリカゲルカラムに通して溶離する。
方法(II)
【0026】
1mlのトルエンに溶解したO’Donnellの相間移動触媒であるO−アリル−N−(9−アントラセニルメチル)シンコニジニウムブロミド(34mg、0.056mmol)の懸濁液に、1mlのトルエンに溶解したキサントフモール(2つのOH基は保護されている)(部分的に、TIPSにより保護:37mg、0.056mmol)を添加する。次に、0.5mlの25%NaOHを添加し、この混合物を24時間、室温で攪拌する。ワークアップに関しては、20mlのHO及び20mlの酢酸エチルを添加する。水相をHSOで酸性化し、酢酸エチルで2回抽出する。有機相をNHCl溶液及びHOで洗浄し、乾燥させ、CHCl/メタノールを用いてシリカゲルカラムに通して溶離する。文献により既知の方法で、保護の除去を進める。
エナンチオマーのHPLCデータ
【0027】
Chiralpak AD−H 4.6×250mmによるエナンチオマーの分離、移動相=n−ヘキサン:2−プロパノール、2つのエナンチオマーについてR(分)
イソキサントフモール:
移動相 95:5 R=107.03及びR=115.64
TIPSにより保護されたイソキサントフモール:
移動相 98:2 R=5.34及びR=6.00
8−プレニルナリンゲニン:
移動相 90:10 R=26.31及びR=41.06
方法Aによる脱メチル化
1.コリジンの存在下における、イソキサントフモール(式(II)(式中、R=プレニル、R=H))とAlBrとの反応
【0028】
4mlのCHClに攪拌させたイソキサントフモール(50mg、0.14mmol)の懸濁液に、黄色溶液が形成されるまでsym−コリジン(約100mg、0.83mmol)を徐々に滴下する。室温で、CHBrにAlBrを溶解した0.28ml(0.28mmol)の1M溶液を滴下し、この混合物を一晩攪拌する。橙赤色の沈殿物を濾過し、CHClで洗浄し、真空中で乾燥させる。次に、沈殿物を10mlの0.5M NaOHに溶解し、0℃で1.5時間攪拌する。50%HSOで酸性化した後、この混合物を濾過し、黄色の沈殿物を注意深く水で洗浄する。HPLCを用いた混合物の分画(40%〜70%アセトニトリルで20分)、及び続く凍結乾燥の後、0.5mg(1%)のキサントフモール(R=21.1分)及び27mg(54%)の出発物質(R=9.6分)に加えて、12mg(25%)の8−プレニルナリンゲニン(式(III)(式中、R=プレニル、R=H))(R=14.4分)が生成される。後者は反応に再循環させることができる。
8−プレニルナリンゲニン(式(III)(式中、R=プレニル、R=H)):UV:λmax 293、335nm;H−NMR(アセトン−d):δ 1.60(s,3H)、1.61(s,3H)、2.76(dd,1H,J=17.2Hz,J=3.1Hz)、3.14(dd,1H,J=17.2Hz,J=12.8Hz)、3.22(d,2H,J=7.3Hz)、5.19(t,1H,J=7.3)、5.45(dd,1H,J=12.8Hz,J=3.1Hz)、6.03(s,1H)、6.90(d,2H,J=8.6)、7.41(d,2H,J=8.6)、12.14(s,1H);13C−NMR(CDCl):δ 17.93、21.88、25.91、43.17、78.69、96.80、103.11、106.01、115.46、121.42、127.62、130.78、134.96、155.72、159.51、162.03、163.50、196.19;ESI−MS:339.3[M−H]
2.MeSiCl及びコリジンの存在下における、イソキサントフモール(式(II)(式中、R=プレニル、R=H))とAlBrとの反応
【0029】
5mlのCHClに攪拌させたイソキサントフモール(52mg、0.15mmol)の懸濁液に、黄色溶液が形成されるまでsym−コリジン(約100mg、0.83mmol)を徐々に滴下する。室温で、35mg(0.322mmol)のMeSiClを添加する。この混合物を1時間攪拌し、続いて、CHBrにAlBrを溶解した0.2ml(0.2mmol)の1M溶液を滴下し、混合物を一晩攪拌する。溶媒を真空中で除去し、残渣を10mlの氷冷0.5M NaOHに溶解する。0℃で1.5時間攪拌した後、混合物を50%HSOで酸性化し、黄色の沈殿物を濾過して、注意深く水で洗浄する。HPLCによる混合物の分画(40%〜70%アセトニトリルで20分)、及び続く凍結乾燥の後、2.5mg(5%)のキサントフモール(R=21.1分)及び18mg(35%)の出発物質(R=9.6分)に加えて、15mg(30%)の8−プレニルナリンゲニン(式(III)(式中、R=プレニル、R=H))(R=14.4分)が得られる。キサントフモール及び出発物質はまた、反応に再循環させることができる。
3.コリジンの存在下における、イソキサントフモール(式(II)(式中、R=プレニル、R=H))とBBrとの反応
【0030】
4mlのCHClに攪拌させたイソキサントフモール(51mg、0.14mmol)の懸濁液に、黄色溶液が形成されるまでsym−コリジン(約100mg、0.83mmol)を徐々に滴下する。−80℃で、CHClにBBrを溶解した0.5ml(0.5mmol)の1M溶液を滴下し、この混合物を−80℃で3時間攪拌する。溶媒を真空中で除去し、残渣を10mlの氷冷0.5M NaOHに溶解し、0℃で1.5時間攪拌する。50%HSOで酸性化した後、混合物を濾過して、黄色の沈殿物を注意深く水で洗浄する。HPLCによる混合物の分画(40%〜70%アセトニトリルで20分)、及び続く凍結乾燥の後、5mg(10%)の環化8−プレニルナリンゲニン(R=20.8分)及び9mg(18%)の出発物質(R=9.6分)に加えて、9mg(18%)の8−プレニルナリンゲニン(式(III)(式中、R=プレニル、R=H))(R=14.4分)が得られる。環化8−プレニルナリンゲニン及び出発物質はまた、反応に再循環させることができる。
方法Bによる脱メチル化
7,4’’−ジ−トリイソプロピルシロキシイソキサントフモール(式(II)(式中、R=プレニル、R=((CHCHSi)))の合成
【0031】
CHCl(10ml)に攪拌させたイソキサントフモール(302mg、0.85mmol)の懸濁液にイミダゾール(290mg、4.26mmol)を添加し、続いて、0℃で、クロロトリイソプロピルシラン(394mg、2.04mmol)を滴下する。この反応混合物を徐々に室温に温め、一晩攪拌する。溶媒を真空中で除去した後、ペンタン(10ml)を添加して濾過し、白色の沈殿物をペンタンで洗浄する。有機溶液を(2×10ml)5%HCl及び(3×10ml)HOで洗浄し、NaSOで乾燥する。溶媒を真空中で除去し、残渣を少量の酢酸エチルに溶解し、ペンタン/酢酸エチル=5:1を用いてシリカゲルカラムに通してフラッシュクロマトグラフィにより溶離する。7,4’’−ジ−トリイソプロピルシロキシイソキサントフモールは、第2画分(R=0.16)中に淡黄色固体として得られる。
H−NMR(CDCl):δ 1.12(m,36H)、1.29(m,6H)、1.49(s,3H)、1.62(s,3H)、2.75(dd,1H,J=16.5,J=2.9)、2.99(dd,2H,J=16.5,J=13.2)、3.26(d,2H,J=6.8)、3.84(s,3H)、5.12(t,1H,J=6.8)、5.28(dd,1H,J=13.2,J=2.9)、6.05(s,1H)、6.89(d,2H,J=8.6)、7.28(d,2H,J=8.4);13C−NMR(CDCl):δ 12.74、13.23、17.91、17.99、18.09、22.55、25.86、45.50、55.95、78.62、95.75、106.23、112.53、119.78、122.58、127.43、130.97、131.49、156.02、159.67、160.28、162.04、190.18;ESI−MS:m/z 667.3[M
7,4’’−ジ−トリイソプロピルシロキシイソキサントフモールとAlBrとの反応
【0032】
7,4’’−ジ−トリイソプロピルシロキシイソキサントフモール(100mg、0.15mmol)のCHCl溶液に、CHBrにAlBrを溶解した1M溶液(0.15ml、0.15mmol)を0℃で徐々に滴下する。この反応混合物を0℃で30分間攪拌した後、室温に徐々に温め、一晩攪拌する。次に、10mlの0.1M NaOHを添加し、混合物を15分間激しく攪拌する。酸性化した後(50%HSO)、有機相を、飽和NHCl溶液(2×30ml)及びHO(1×30ml)を用いて分離し、NaSOで乾燥させる。溶媒を除去した後、対応するシリル化8−プレニルナリンゲニン誘導体(式(III)(式中、R=プレニル、R=((CHCH)Si))が高純度の粗生成物として生成される(H−NMRにおいて副生成物のシグナルはない)。
H−NMR(CDCl):δ 1.12(m,36H)、1.29(m,6H)、1.50(s,3H)、1.62(s,3H)、2.76(dd,1H,J=17.1,J=3.0)、3.06(dd,1H,J=17.1,J=13.1)、3.22(d,2H,J=7.0)、5.11(t,1H,J=7.0)、5.31(dd,1H,J=13.1,J=3.0)、6.00(s,1H)、6.91(d,2H,J=8.6)、7.28(d,2H,J=8.4)、11.97(s,1H)
保護基の除去
1.テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドを使用
【0033】
対応するシリル化8−プレニルナリンゲニン誘導体(式(III)(式中、R=プレニル、R=((CHCH)Si))(98mg、0.15mmol)のTHF(3ml)溶液に、テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドの1M THF溶液(0.36ml、0.36mmol)を0℃で徐々に滴下する。この反応混合物を室温に温め、さらに1時間攪拌する。トルエン(5ml)を添加した後、溶媒を真空中で除去し、残渣を少量のCHClに溶解し、CHCl/メタノール=100:1を用いてシリカゲルカラムに通して溶離し、n−Bu及び高分子ケイ素化合物を除去する。8−プレニルナリンゲニン(式(III)(式中、R=プレニル、R=H))(43mg、84%)が黄色固体として得られる。
2.ピリジン・HFを使用
【0034】
対応するシリル化8−プレニルナリンゲニン誘導体(式(III)(式中、R=プレニル、R=((CHCH)Si))(95mg、0.15mmol)のTHF(5ml)溶液に、ピリジン・HF(0.3ml)を添加し、この混合物を室温で3日間攪拌する。この反応混合物を、pHがおよそ3になるまで、5mlの飽和MgCl溶液及び1M NaOHと混合する。その後、混合物をCHCl(2×30ml)と共に振とうすることにより抽出し、合わせた有機相を飽和NHCl溶液(2×30ml)及びHO(1×30ml)で洗浄する。有機相を濃縮し、CHCl/メタノール=100:1を用いてシリカゲルカラムに通して溶離する。8−プレニルナリンゲニン(式(III)(式中、R=プレニル、R=H))が黄色固体として得られる(25mg、50%)。
方法Cによる脱メチル化
イソキサントフモール(式(II)(式中、R=プレニル、R=H))とトリフルオロメタンスルホン酸スカンジウムとの反応
【0035】
イソキサントフモール(50mg、0.14mmol)、KI(34mg、0.21mmol)及びSc(OTf)(105mg、0.21mmol)の混合物に10ml THFを添加し、この溶液を還流下で2.5時間加熱する。この混合物を室温で一晩攪拌し、真空中で濃縮する。スカンジウム塩を短いシリカゲルカラムに通して分離する(CHCl/メタノール=100:1で溶離)。得られた溶液を真空中で濃縮乾燥し、残渣をCHClに溶解し、CHCl/メタノール=100:1を用いてシリカゲルカラムに通して溶離する。8−プレニルナリンゲニン(式(III)(式中、R=プレニル、R=H))(44mg、92%)が淡黄色固体として得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサントフモール又はその誘導体から、特に8−プレニルナリンゲニン等のナリンゲニン誘導体を製造する方法であって、
(1)下記式(I)に記載のキサントフモール又はその誘導体を反応させる工程であって、それにより、下記式(II)に記載のイソキサントフモール又はその誘導体を生成する、工程:
【化1】

(式中、Rは、アリル基、クロチル基、プレニル基、ゲラニル基又はネリル基であり、
は、水素、直鎖若しくは分岐鎖(C〜C)−アルキル基、(C〜C)−シクロアルキル基、非置換、一置換若しくは二置換フェニル若しくはベンジル基(ここで、置換基は、直鎖若しくは分岐鎖(C〜C)−アルキル基及び(C〜C)−アルコキシ基から選択され得る)、(−C(O)−R)基(式中、Rは水素又は直鎖若しくは分岐鎖(C〜C)−アルキル基から選択される)、及びシリル保護基から成る群より選択される)と、その後
(2)前記式(II)に記載の化合物を脱メチル化する工程であって、下記式(III)に記載のナリンゲニン誘導体を得る、工程
【化2】

とを含み、該脱メチル化が、
(A)前記式(II)に記載の化合物を、アルカリ金属アルコキシド又は第三級アミンから選択される塩基の添加を伴い、一般式MX(式中、Mはルイス酸金属イオンであり、Xはハロゲンである)の化合物と反応させる、塩基で緩衝化させる、ルイス酸による脱メチル化として、又は
(B)基Rがそれぞれ独立して(−C(O)−R)基(式中、Rは、水素、又は直鎖若しくは分岐鎖(C〜C)−アルキル基から選択される)又はシリル保護基である式(II)に記載の化合物を、一般式MX(式中、Mはルイス酸金属イオンであり、Xはハロゲンである)の化合物と反応させる、保護基で補助される、ルイス酸による脱メチル化として、又は
(C)前記式(II)に記載の化合物を、一般式LY(式中、Lは、ランタノイド、スカンジウム又はイットリウムであり、Yは、Hal、OTs、OTf、OTfa、OMs、ClO、BF又はPHalであり、zは、元素Lの原子価に応じて、1〜4の整数である)の化合物と反応させるような、脱メチル化として
実施される、方法。
【請求項2】
工程(1)において、初めに、キサントフモールが、アルカリ性条件下で異性化することによってイソキサントフモールに変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(1)において、キサントフモール又はその誘導体が、塩基性条件下でスパルテインと、又はキラル相間移動触媒と反応し、その結果、最終的なHPLC検査の末、鏡像異性的に純粋なイソキサントフモール又はその誘導体が得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記キラル相間移動触媒として、O−アリル−N−(9−アントラセニルメチル)シンコニジニウムブロミドが選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記脱メチル化の方法(A)において、前記一般式MXの化合物がBBr又はAlBrであり、コリジンが塩基として用いられる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記脱メチル化の方法(B)において、前記式(II)に記載の出発化合物が、OH基1つ当たり、1〜2当量のTMSCl、TESCl、TIPSCl、TBSCl又は無水酢酸と反応し、その後、保護された該出発化合物が、1〜2当量のBBr又はAlBrと反応する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記脱メチル化の方法(C)において、前記式(II)に記載の出発化合物が、スカンジウム塩と反応する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記スカンジウム塩が、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウムである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
がプレニルである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−538208(P2008−538208A)
【公表日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502261(P2008−502261)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001061
【国際公開番号】WO2006/099914
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507314567)ホプシュタイナー−ハルータウアー ホップフェンフェレドルングゴゼルシャフト エムベーハー (1)
【Fターム(参考)】