説明

キシレン・クラスターの分解材

【課題】無添加で物理的に液体燃料を改質できる燃料改質材の提供。
【解決手段】マイロナイトの破砕材を袋に詰め、ガソリンタンク内に押し込んで数時間浸漬させから自動車を運転したところ、排ガス中の二酸化炭素は車両平均10%、一酸化炭素は車両平均79%、炭化水素は車両平均82%、黒煙(粒子状物質)は車両平均48.5%、それぞれ削減した。ガソリンはキシレンを多量に含有し、またキシレン・クラスターはガスクロマトグラフ質量分析計による質量分析(イオン化過程)でも分解され難い。純キシレンをマイロナイト浸漬前と浸漬後について質量分析した結果、クラスター(多量体)が分解し、単量体の割合が重量比及び個数比の上で大幅に増加していた。マイロナイトは燃料改質材として用いるに好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化石液体燃料等の改質材として好適なキシレン・クラスターの分解材に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス中の一酸化炭素濃度などを削減するための一つとして、改質燃料が用いられている。これは、酸素を含有する化合物を添加した燃料で、燃焼時には酸素が豊富になることから、燃料の燃焼効率を高めることに結びつく。含酸素化合物として、酸素を約12重量%含むメチルターシャルブチルエーテル(MTBE)が用いられ、現在一部のプレミアムガソリンに利用されている。
【0003】
また、燃料タンクにトルマリン(電気石)を投入して燃料を改質することも知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−46162
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、添加ガソリンは無添加ガソリンに比べて高価である。また、燃焼室に純酸素だけを供給するのではなく、含酸素化合物が燃焼することによりはじめて酸素分子が生成し燃料成分と結合するものであるから、含酸素化合物の如何によっては黒煙濃度が高くなり、燃焼室にカーボンデポジットが堆積するという問題点もある。また、トルマリンの改質作用は電気分極による電磁波の常時放射と説明されてはいるものの、排ガス中の有害物質濃度の削減効果は立証的に不明な点が多い。
【0006】
そこで、本発明の課題は、トルマリンとは異なり、無添加で物理的に液体燃料を改質できる燃料改質材を提供することになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、マイロナイトをキシレン[C(CH]・クラスターの分解材として用いて成ることを特徴とする。
【0008】
この「マイロナイト」とは、ミロナイトとも呼ばれ、変成岩の一種であり、硬く、無気孔質で、凝集性のある、往々にしてガラス質の組織をもった岩石である。このマイロナイトは、極端な機械的変形と粒状化を受けているが、化学的には変化していない。また、外観は一般に火打ち石に似ており、縞状或いは流状を呈する。マイロナイトの産地例としては、本州中央構造帯を挙げることができる。
【0009】
まず燃料分析において、本発明者は、液体燃料(化石燃料等)中のキシレン・クラスターがガスクロマトグラフ質量分析計による質量分析(イオン化過程)でも難分解性を呈すことを見出したが、マイロナイトはこのキシレン・クラスターさえも分解する強い作用を有している。故に、マイロナイトは燃料中に含まれるキシレン以外の成分のクラスターも分解可能であって、クラスターの分解材として用いることができる。単量体の豊富な燃料を得るための燃料改質材として用いるには、非常に好適である。
【0010】
液体燃料中にマイロナイトを浸漬し、或いはマイロナイトの表面に液体燃料が接触するように流すことにより、液体燃料中に含まれるキシレン・クラスターさえも分解し、キシレン単量体の組成比が豊富な液体燃料を得ることができる。斯かる改質燃料によれば、燃焼効率が高まり、高馬力性能と排気ガス中の有害物質濃度等の顕著な削減効果を実現できる。
【0011】
例えば、マイロナイトの破砕材等を袋やメッシュなどに詰め、これを燃料タンク等に投入して浸漬させるだけで、キシレン等のクラスターが分解できるので、安価に改質液体燃料を得ることができる。
【0012】
液体燃料としては、レギュラーガソリン,ハイオクガソリン,軽油,灯油等の化石燃料をはじめとして、非化石燃料でも構わない。また、マイロナイトは、液体燃料以外の油性液体又は水性液体中のクラスターに対する分解材として用いることができ、液体改質材として有益である。
【発明の効果】
【0013】
マイロナイトは難分解性のキシレン・クラスターの分解作用をも発揮するため、無添加燃料を用いる場合でも、燃焼効率の向上により、高馬力性能と有害物質濃度等の顕著な削減効果を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず、本発明者は、液体燃料の各成分の分子は単量体でのみ存在するのではなく、クラスター(多量体,単量体の会合体又は分子団)で存在している割合が高いものとみて、この1個のクラスターと1個の酸素分子との衝突断面積ではそのクラスターのうちの単量体と高々結合(燃焼)する程度であって、残る単量体又は多量体との結合頻度が低下し、過剰な酸素雰囲気下でも、燃焼効率が単量体だけの場合に比して劣り、排ガス中の有害物質濃度が高くなるものと予測した。そして、液体燃料中のクラスター自体を事前に物理的に分解し単量体の組成比を豊富化できる物質が存在すれば、無添加でも燃焼効率が高まるものと予測した。
【0015】
燃料液体中のクラスターを分解するには、クラスター中から単量体又は低次の多量体を奪い取る必要があるとみて、燃料液体とクラスター分解体とを物理的に近接又は接触させる必要がある。本発明者はクラスターの分解作用としては吸脱着界面を持つ岩石により得られるとの仮説に基づき、種々の岩石を検討したところ、クラスター分解材としては、礫間ろ過材として使用されるマイロナイトに着目した。そして、このマイロナイトの破砕材を細長い布袋に詰め、この袋をガソリンタンク内に徐々に押し込んで液体燃料に数分間浸漬させから、自動車を運転したところ、以前にはない高馬力性能を実感できたと共に、排ガス中の有害物質濃度の顕著な削減効果を確認した。
【0016】
排ガス中の二酸化炭素は車両平均10%、一酸化炭素は車両平均79%、炭化水素は車両平均82%、黒煙(粒子状物質)は車両平均48.5%と、それぞれ大幅削減した。
【0017】
ところが、液体燃料中には各種成分が含まれているため、マイロナイトがどの成分のクラスターに対して選択的な分解作用があるかを検討することになった。マイロナイト(比重6程度)を粒径2〜3mm程度に破砕したものを使用し、以下の質量分析を実施した。
【実施例1】
【0018】
市販ガソリン(レギュラーガソリン)のガスクロマトグラフ質量分析計による質量分析と、そのガソリン(約100cc)中にマイロナイト破砕材(約2g)を入れて約15時間浸漬させ、取り出したガソリンのガスクロマトグラフ質量分析計による質量分析とを実施した。
【0019】
ガスクロマトグラフ質量分析計(島津製作所製、GCMS−QP5050A/DI−50)には、オプションの直接試料導入装置(DI−50)を取り付けたものを使用した。この分析計はガスクロマトグラフのカラム部と質量分析計とから成る。ガスクロマトグラフにより試料の各分子成分を分離し、その後質量分析計へ導入され、電子線照射によってイオン化される。イオン化した分子は四極子内を通過し、異なる質量ごとにイオン流として計数される。質量分析計によって計測されるイオン電流強度はそれぞれの分子の個数に比例したものとなる。
【0020】
通常の使用法では試料液体はカラム部内を通過し、カラム充填材への吸脱着を繰り返すので多量体は単量体に分離される。それによって各分子種同定の精度を高めているが、しかし、本分析では、試料液体の多量体、即ち、クラスターの存在を測定すること自体が目的であるため、試料液体はカラム部内を通過させず、直接試料導入装置(DI−50)を用いて試料液体を質量分析計に直接導入した。直接試料導入装置(DI−50)のサンプルポットに試料液体を適量封入し、質量分析計にセットした。試料液体は大気圧から真空中に導入された。このとき、気化熱による冷却固化を防ぐためにサンプルポットを加熱させて試料液体を気化導入した。
【0021】
図1は市販ガソリンを試料液体とする質量分析グラフである。横軸は質量を示し、縦軸はイオン電流強度を示すが、サンプルポットに採取する試料液体の量は分子個数レベルでは大幅に狂うため、イオン電流強度の絶対値は意味を持たず、その相対値(ピークの相対比,分布)のみが意味を持つ。なお、試料室温度は110〜200℃で、検出器温度は150℃である。
【0022】
図1(A)のマイロナイト浸漬前では、ガソリン中には10〜20%程度のキシレンが含有されているところから、316のピークはキシレン[C(CH、分子量(単量体)106]の3量体であり、電流強度6000で、単量体換算で18000である。531のピークはキシレンの5量体であり、電流強度は1000で、単量体換算で5000である。648のピークはキシレンの6量体に1分子の水が付いたもので、電流強度4000で、単量体換算で24000である。重量比分布は、3量体:5量体:6量体=6000:5000:24000≒1:1:4である。個数比分布は、3量体:5量体:6量体=6000:1000:4000=6:1:4である。
【0023】
その他の成分(トルエン等)についてのクラスターは認められない。質量分析計におけるイオン化の過程で単量体又はクラスターが破壊されてしまうものと考えられる。逆に、キシレンのクラスター(3量体,5量体,6量体)はイオン照射でも比較的破壊されずに残っているところからみると、キシレンのクラスターは難分解性があり、イオン照射前のガソリン中のキシレンではなおさら相当の比率で、これらのクラスターが存在しているものと見積ることができる。それ故、ガソリン中のキシレンのクラスター(3量体,5量体,6量体)が不完全燃焼を惹き起こしているものと判断した。
【0024】
図1(B)のマイロナイト浸漬後では、316のピークや531のピークは認められず、キシレンの6量体に相当する647のピークが認められる。647のピークは20000である。マイロナイトの浸漬によっても変化がないとすれば、浸漬前の個数比分布から、316のピークは約30000で、531のピークは約5000であるべきだが、実際のマイロナイト浸漬後では電流強度が認められないことから、6量体を基準とすれば、ガソリン中のキシレンの少なくとも3量体と5量体のクラスターが大幅に減少したものと判断した。単量体と2量体は浸漬前の分析でも計測できないことから、3量体は、3個の単量体或いは2量体と単量体とに分解し、5量体は、2量体と3量体,2個の2量体と単量体,或いは5個の単量体とに分解したものと推測する。
【0025】
なお、マイロナイトはキシレン以外の成分についてもクラスターを分解するものと推測できるが、ガスクロマトグラフ質量分析計ではイオン化の過程で解れてしまうので、他の分析方法を検討する必要がある。
【実施例2】
【0026】
図2は市販ハイオクガソリンを試料液体とする質量分析グラフである。
【0027】
図2(A)のマイロナイト浸漬前では、キシレンの3量体強度(316のピーク)は1800であり、単量体換算で5400である。442のピークは4量体に1分子の水が付いたもので、この強度は300であり、単量体換算で1200である。5量体強度(531のピーク)は500で、単量体換算で2500である。648のピークは6量体に1分子の水が付き、また、663のピークは6量体に2分子の水が付いたもので、6量体強度(648のピークと663のピーク)は1500+2400=3900で、単量体換算で23400である。重量比分布は、3量体:4量体:5量体:6量体=5400:1200:25000:23400≒4:1:20:20で、個数比分布は、3量体:4量体:5量体:6量体=1800:300:500:3900≒6:1:2:13である。分布は6量体に偏っている。
【0028】
図2(B)のマイロナイト浸漬後では、キシレンの3量体強度(316のピーク)は1000であり、単量体換算で、1000×3=3000である。4量体強度(442のピーク)は300であり、単量体換算で、300×4=1200である。5量体強度(531のピーク)は300であり、単量体換算で、300×5=1500である。6量体強度(648のピークと663のピーク)は800+1400=2200であり、単量体換算で、2200×6=13200である。
【0029】
重量比分布は、3量体:4量体:5量体:6量体=3000:1200:1500:13200≒2:1:1:10である。また、個数比分布は、3量体:4量体:5量体:6量体=1000:300:300:2200≒7:1:1:7である。これらの分布からみて、浸漬前に比して6量体が減少した分、3量体が増えているから、マイロナイトはハイオクガソリン中のキシレンの6量体を分解するものと判明した。
【実施例3】
【0030】
図3は市販軽油を試料液体とする質量分析グラフである。
【0031】
図3(A)のマイロナイト浸漬前では、531のピークはキシレンの5量体であり、電流強度は145で、単量体換算で725である。648のピークは6量体に1分子の水が付き、また、663のピークは6量体に2分子の水が付いたもので、6量体強度(648のピークと663のピーク)は180+175=355で、単量体換算で2130である。4量体以下は計測できていない。
【0032】
図3(B)のマイロナイト浸漬後では、キシレンの6量体強度(648のピークと663のピーク)は10+10=20で、単量体換算で120であるが、5量体(531のピーク)も計測できていない。液体試料の量が少ないため、ピークが顕在化しなかったものである。
【実施例4】
【0033】
図4は市販灯油を試料液体とする質量分析グラフである。
【0034】
図4(A)のマイロナイト浸漬前では、211のピークはキシレンの2量体で、強度は18であり、単量体換算で36である。317のピークは3量体で、強度は20であり、単量体換算で60である。442のピークは4量体に水が付いたもので、強度は43であり、単量体換算で172である。531のピークは5量体で、強度は9であり、単量体換算で45である。648のピークは6量体に1分子の水が付き、また、663のピークは6量体に2分子の水が付いたもので、6量体強度(648のピークと663のピーク)は11+6=17で、単量体換算で289である。
【0035】
重量比分布は、2量体:3量体:4量体:5量体:6量体=36:60:172:45:289≒1:1:4:1:3である。また、個数比分布は、2量体:3量体:4量体:5量体:6量体=18:20:43:9:17≒2:2:4:1:2である。分布は4量体以上に偏っている。
【0036】
図3(B)のマイロナイト浸漬後では、210のピークはキシレンの2量体で、強度は20であり、単量体換算で40である。442のピークは4量体に水が付いたもので、強度は40であり、単量体換算で160である。531のピークは5量体で、強度は5であり、単量体換算で25である。648のピークは6量体に1分子の水が付き、また、663のピークは6量体に2分子の水が付いたもので、6量体強度(648のピークと663のピーク)は8+4=12で、単量体換算で72である。3量体は認められない。
【0037】
重量比分布は、2量体:4量体:5量体:6量体=40:160:25:72≒2:8:1:3である。また、個数比分布は、2量体:4量体:5量体:6量体=20:40:5:12≒4:8:1:2である。分布は4量体以下に偏っている。
【0038】
マイロナイトは灯油中のキシレン多量体の分布を4量体以下に偏らせているところから、高次の多量体を分解して低次の多量体を豊富化することが判明した。
【実施例5】
【0039】
次に、実施例1〜4におけるピークがキシレンの多量体であるか否かを実際に検討するため、純キシレン液体のガスクロマトグラフ質量分析計による質量分析と、純キシレン液体(約100cc)中にマイロナイト破砕材(約2g)を入れて約15時間浸漬させ、そのキシレン液体のガスクロマトグラフ質量分析計による質量分析とを実施した。分析条件は上記実施例と同じである。
【0040】
図5は純キシレン(和光純薬工業株式会社製純度80%、一級試薬)を試料液体とする質量分析グラフである。なお、試料室温度は110〜200℃で、検出器温度は150℃である。
【0041】
図5(A)のマイロナイト浸漬前では、キシレンの単量体強度(105のピーク)は470である。3量体強度(317のピーク)は150であり、単量体換算で、150×3=450である。441のピークは4量体に1分子の水が付いたもので、4量体強度(441のピーク)は600であり、単量体換算で、600×4=2400である。5量体強度(531のピーク)は180であり、単量体換算で、180×5=900である。647のピークは6量体に1分子の水が付き、また、663のピークは6量体に2分子の水が付いたもので、6量体強度(647のピークと663のピーク)は180+130=310であり、単量体換算で、310×6=1860である。
【0042】
2量体のピークは206の近辺に現われるものと思われたが、206のピークや219のピークは分解能の点からかけ離れている。キシレンのイオン化の過程では分子が分解されたり、結合したりする頻度があるので、低質量領域でのピークの成分は同定し難い。また、147のピークや191のピークは不純物によるものと推測する。
【0043】
キシレンの単量体換算の合計は6080である。また、単量体と多量体の合計個数(総分子数)は1710である。キシレン単量体の全キシレン分子に占める重量比は7.7%、個数(分子数)比は27.4%である。キシレン3単量の全キシレン分子に占める重量比は7.4%、個数(分子数)比は8.7%である。キシレン4単量の全キシレン分子に占める重量比は39.4%、個数(分子数)比は35.0%である。キシレン5単量の全キシレン分子に占める重量比は14.8%、個数(分子数)比は10.5%である。キシレン6単量の全キシレン分子に占める重量比は30.5%、個数(分子数)比は18.1%である。重量比分布は、単量体:3量体:4量体:5量体:6量体=7.7:7.4:39.4:14.8:30.5≒1:1:5:2:4で、個数比分布は、単量体:3量体:4量体:5量体:6量体=27.4:8.7:35.0:10.5:18.1≒3:1:4:1:2である。重量比及個数比が共に4量体以上に偏っている。
【0044】
一方、図5(B)のマイロナイト浸漬後では、キシレンの単量体強度(105のピーク)は2240である。3量体強度(317のピーク)は100であり、単量体換算で、100×3=300である。4量体強度(441のピーク)は500であり、単量体換算で、500×4=2000である。5量体強度(531のピーク)は180であり、単量体換算で、180×5=900である。6量体強度(647のピークと663のピーク)は200+100=300であり、単量体換算で、300×6=1800である。
【0045】
キシレンの単量体換算の合計は7240である。また、単量体と多量体の合計個数(総分子数)は3320である。キシレン単量体の全キシレン分子に占める重量比は30.9%、個数(分子数)比は67.4%である。キシレン3単量体の全キシレン分子に占める重量比は4.1%、個数(分子数)比は3.0%である。キシレン4単量体の全キシレン分子に占める重量比は27.6%、個数(分子数)比は15.0%である。キシレン5単量体の全キシレン分子に占める重量比は12.4%、個数(分子数)比は5.4%である。キシレン6単量体の全キシレン分子に占める重量比は24.8%、個数(分子数)比は9.0%である。重量比分布は、単量体:3量体:4量体:5量体:6量体=30.9:4.1:27.6:12.4:24.8%≒7:1:6:3:6で、個数比分布は、単量体:3量体:4量体:5量体:6量体=67.4:3.0:15.0:5.4:9.0≒22:1:5:2:3である。重量比は4量以下に偏っているが、個数比は単量に偏っている。
【0046】
浸漬後は浸漬前に比べて、キシレン単量体の重量比が4.1倍、キシレン単量体の個数(分子数)比が2.45倍となり、キシレン3量体の重量比が0.55倍、キシレン単3体の個数(分子数)比が0.34倍となり、キシレン4量体の重量比が0.70倍、キシレン単4体の個数(分子数)比が0.42倍となり、キシレン5量体の重量比が0.83倍、キシレン単5体の個数(分子数)比が0.51倍となり、キシレン6量体の重量比が0.81倍、キシレン単6体の個数(分子数)比が0.49倍となっている。
【0047】
マイロナイトには、キシレン・多量体(クラスター)を解し単量体を豊富化する分解作用(単量化作用)のあることが判明した。各多量体に分解比率(個数比率)を加味して一次連立方程式を大雑把に解くと、6量体の約14%が5量体と単量体に分解し、5量体の約28%が4量体と単量体に分解し、4量体の約14%が3量体と単量体に分解し、3量体の約24%が3量体と単量体とに分解したことにより、単量体が個数比で67.4/27.4=2.6倍も豊富化したものである。マイロナイトは難分解性のキシレン・クラスターに対する強い作用があるが故に、燃料液体中の他の成分クラスターも容易に分解するので、排ガス中の有害物質を大幅削減するものと推定できる。
【比較例】
【0048】
このマイロナイトのキシレン・クラスター単量化作用の顕著性を確認するため、比較例として、ペグマタイト(麦飯石)を浸漬した後のキシレンを試料液体とする質量分析を行った。このペグマタイトは火成岩の一種で、通常、結晶の大きさが数cmから数十cmの粗粒組織で、ほとんどが花崗岩質である。なお、質量分析の条件は実施例と同じである。
【0049】
図6のペグマタイト浸漬後では、キシレンの単量体強度(105のピーク)は25である。3量体強度(317のピーク)は70であり、単量体換算で、70×3=210である。4量体強度(441のピーク)は245であり、単量体換算で、245×4=980である。5量体強度(531のピーク)は20であり、単量体換算で、20×5=100である。6量体強度(648のピークと663のピーク)は55+45=100であり、単量体換算で、100×6=600である。
【0050】
キシレンの単量体換算の合計は1915である。また、単量体と多量体の合計個数(総分子数)は460である。キシレン単量体の全キシレン分子に占める重量比は1.3%、個数(分子数)比は5.4%である。キシレン3量体の全キシレン分子に占める重量比は10.9%、個数(分子数)比は15.2%である。キシレン4量体の全キシレン分子に占める重量比は51.1%、個数(分子数)比は53.2%である。キシレン5量体の全キシレン分子に占める重量比は5.2%、個数(分子数)比は4.3%である。キシレン6量体の全キシレン分子に占める重量比は31.3%、個数(分子数)比は21.7%である。重量比分布は、単量体:3量体:4量体:5量体:6量体=1.3:10.9:51.1:5.2:31.3≒1:8:39:4:23で、個数比分布は、単量体:3量体:4量体:5量体:6量体=5.4:15.2:53.2:4.3:21.7≒1:3:9:1:4である。重量比及び個数比が共に4量以上に偏っている。
【0051】
浸漬後は浸漬前に比べて、キシレン単量体の重量比が0.16倍、キシレン単量体の個数(分子数)比が0.19倍となり、キシレン3量体の重量比が1.47倍、キシレン3量体の個数(分子数)比が1.74倍となり、キシレン4量体の重量比が1.47倍、キシレン4量体の個数(分子数)比が1.52倍となり、キシレン5量体の重量比が0.35倍、キシレン5量体の個数(分子数)比が0.40倍となり、キシレン6量体の重量比が1.02倍、キシレン6量体の個数(分子数)比が1.29倍となっている。
【0052】
従って、ペグマタイトではキシレン多量体を解す単量化作用は全く認められない。なお、ペグマタイトをキシレン液に浸漬させた場合、単量体と5量体が減少し、3量体,4量体,6量体が増加しているから、ペグマタイトは単量体同士を会合させ、或いは低次の多量体に単量体を会合させて高次の多量体を形成する作用のあるものと推測される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】市販ガソリンを試料としてガスクロマトグラフ質量分析計による質量分析グラフで、(A)はマイロナイト浸漬前のガソリンのグラフ、(B)はマイロナイト浸漬後のガソリンのグラフである。
【図2】市販ハイオクガソリンを試料としてガスクロマトグラフ質量分析計による質量分析グラフで、(A)はマイロナイト浸漬前のハイオクガソリンのグラフ、(B)はマイロナイト浸漬後のハイオクガソリンのグラフである。
【図3】市販軽油を試料としてガスクロマトグラフ質量分析計による質量分析グラフで、(A)はマイロナイト浸漬前の軽油のグラフ、(B)はマイロナイト浸漬後の軽油のグラフである。
【図4】市販灯油を試料としてガスクロマトグラフ質量分析計による質量分析グラフで、(A)はマイロナイト浸漬前の灯油のグラフ、(B)はマイロナイト浸漬後の灯油のグラフである。
【図5】純キシレン液体を試料としてガスクロマトグラフ質量分析計による質量分析グラフで、(A)はマイロナイト浸漬前のキシレンのグラフ、(B)はマイロナイト浸漬後のキシレンのグラフである。
【図6】純キシレン液体を試料としてガスクロマトグラフ質量分析計による質量分析グラフで、ペグマタイト浸漬後のキシレンのグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイロナイトを用いて成ることを特徴とするキシレン・クラスターの分解材。
【請求項2】
マイロナイトを用いて成ることを特徴とするクラスターの分解材。
【請求項3】
マイロナイトを用いて成ることを特徴とする液体燃料改質材。
【請求項4】
マイロナイトを用いて成ることを特徴とする液体改質材。
【請求項5】
少なくともマイロナイトの表面に液体燃料を接触させて該液体燃料を取り出して成ることを特徴とする改質液体燃料の製造法。
【請求項6】
少なくともマイロナイトの表面に液体燃料を接触させて成ることを特徴とする液体燃料改質装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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