説明

キシロースをエタノールに発酵するための安定な組換え酵母

【課題】キシロースとグルコースを同時にエタノールに発酵する、より安定な酵母、およびコピー数の多い組込み体の製造方法を提供する。
【解決手段】10以上のコピーの外来DNAを酵母細胞の反復染色体DNAに組込むための方法であって、(a)自律複製配列、外来DNA及び第1の選択マーカーを含む外来DNAを有する複製及び組込みプラスミドで細胞を形質転換し、そして(b)工程(a)で得られた細胞を繰り返し複製し、選択マーカー含む細胞を選択しながら子孫細胞世代を生じさせ、その結果、子孫細胞の次の世代における複製/組込プラスミドの保持を促進し、組込まれた外来DNAのコピーを10以上有する子孫細胞を生じさせることを含み、外来DNAがキシロースリダクターゼ、キシリトールデヒドロゲナーゼ及びキシルロキナーゼをコードし、そして酵母がSaccharomycesである方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
背景
本発明は一般的には遺伝子操作された微生物に関し、そして特に宿主内の反復DNA配列で外来DNAの多種のコピーを取り込む等、細胞中に外来DNAを安定に取り込むユニークな方法に関するものである。一つの好ましい面において、本発明はエタノールまでキシロースを発酵(好ましくは該キシロースをグルコースと共に同時発酵)することができる酵母に関するものである。さらに詳しくは、本発明の好ましい面は、キシロースレダクターゼ(XR)、キシリトールデヒドロゲナーゼ(XD)およびキシルロキナーゼ(XK)をコードするクローン化遺伝子を含有する酵母(イースト,yeast)に関し、該酵母は非常に多くの世代の間、非還択的培地中で培養した後でさえもキシロースをエタノールに発酵するための能力を実質的に保持する。
【0002】
他の背景として、最近の研究はエタノールが自動車用の理想的な液体燃料であることを証明している。それは生燃料(100%エタノール)として直接か、または種々の濃度でガソリンとの混合物として使用され得る。ガソリンの補足または代替のためのエタノールの使用により、輸入される外国の石油への多くの国の依存を減らすことができ、そしてまた輸送のための再生可能燃料を提供する。さらに、エタノールは通常のガソリンに比べ環境への汚染物質の放出がかなり少ないよりクリーンな燃料を提供することが証明されている。例えば、ガソリン中への酸素含有物質の使用が有害な汚染物質である一酸化炭素の空気中への放出を減少し得ることが示されている。ガソリンの酌素含有量を高めるために現在使用されているいくつかの酸素含有物の中で、エタノールが量高の酸素含有量を有する。米国環境保護局(EPA)は、10%エタノールを混合したガソリンが一酸化炭素の放出を約25%〜30%減らすことを証明している。
【0003】
今まで発酵による工業用アルコール製造に使用された供給原料はサトウキビやビートからの糖およびトウモロコシや他の食料作物からのデンプンであった。しかしながら、これら農作物は余りにも高価で、燃料エタノールの大規模製造のための供給原料としては使用できないと現在ではみなされている。植物バイオマスは、それが再生可能で、そして低コストかつ大量に利用可能であるので、発酵によるエタノール燃料製造のための注目に値する供給原料である。農業バイオマスから糖の微生物発酵により製造されるアルコールを利用する概念は少なくとも20年前に生まれていた。セルロース性物質からの主な発酵可能な糖はグルコースとキシロースであり、グルコース:キシロースの比率は約2または3:1である。セルロース性物質の最も望ましい発酵は、もちろん、グルコースおよびキシロースの両方をエタノールに完全に変換する。残念ながら、現在でさえも、グルコースとキシロースの両方を有効に発酵できる単一の公知天然微生物は存在しない。
【0004】
酵母、特にサッカロミセス(Saccharomyces)酵母はグルコースをべースとする供給原料をエタノールに発酵するために伝統的に使用されてきており、そしてそれらは上記目的のための最良の微生物であると依然みなされている。しかしながら、サッカロミセス酵母等のこれらのグルコース発酵性酵母はキシロースを発酵することができず、そしてまた増殖のためにペントース糖を使用することができないことが見出されている。
【0005】
最近、N.Ho等は組換え酵母、特にキシロースをエタノールに有効に発酵できる組換えサッカロミセス酵母を開発した(HoおよびTsao,1995)。より詳細には、好ましい組換え酵母はセルロース性バイオマスの2つの主な糖成分、グルコースおよびキシロースをエタノールに同時発酵することができた(HoおよびTsao,1995)。これらの組換え酵母は、キシロース代謝の3つの鍵酵素をコードする3つのクローン化遺伝子、XR,XDおよびXKを含有するハイコピー数プラスミド(コピー数の多いプラスミド)での酵母の形質転換により開発された(図1)。図2および図3は1400(pLNH32)および1400(pLNH33)と表記される従来作製された組換えサッカロミセス酵母のうちの2種を示し、同一培地中に存在する8%グルコースおよび4%キシロースを2日間でほぼ完全にエタノールに同時に発酵することができる。他方、図4は親酵母融合体1400(D’Amore等,1989およびD’Amore等,1990)がグルコースをエタノールに発酵し得るだけで、キシロースをエタノールに発酵できないことを示す。1400(pLNH32)(略してLNH32)および1400(pLNH33)(略してLNH33)は、図1に示される、ハイコピー数プラスミドのうちの2つ、pLNH32およびpLNH33でサッカロミセス融合体1400(D’Amore等,1989およびD’Amore等,1990)の形質転換により開発された。今日まで、4種の上記ハイ・コピー数プラスミド、pLNH31,pLNH32,pLNH33およびpLNH34が報告されている(HoおよびTsao,1995)。これらのプラスミドの各々が融合体1400を組換え酵母に形質転換して、同様の効率でグルコースおよびキシロースの両方を同時発酵することができる。
【0006】
2μ−べース安定ハイ・コピー数プラスミドにクローン化されたキシロース代謝性遺伝子を有する、酵母1400(pLNH32)、1400(pLNH33)および関連組換えキシロース発酵性サッカロミセスはバッチプロセスの発酵には実際に適当である。しかしながら、連続プロセスの発酵において・グルコースに富む培地中での延長された培養(20世代以上)では、1400(pLNH32)、1400(pLNH33)および類似のプラスミド伸介組換え酵母は、図5および図6に示されるようにキシロースを発酵する能力を失う。
【0007】
一般に、外来DNAまたは遺伝子は2つの別々の方法により酵母中にクローン化され得る。一方の方法は、選択性遺伝子マーカーとプラスミドが新しい宿主において自律的に複製することを可能にする機能的な酵母DNA複製起点またはARS(自律的複製配列)(Struh1等,1979;Stinchcomb等,1980;ChanおよびTye,1980)とを含有するプラスミドベクターに外来DNAまたは遺伝子をクローン化し、次いでクローン化されたDNA断片または遺伝子を含むプラスミドでの所望の酵母宿主の形質転換を行うことである。得られる酵母形質転換体は選択圧の存在下でクローン化された遺伝子を安定に維持することができる。しかしながら、そのようなクローン化された遺伝子は非選択的培地中で(選択圧の不在下で)延長された培養後には不安定である。
【0008】
酵母宿主中に外来DNAまたは遺伝子をクローン化する他方の方法はDNAまたは遺伝子を酵母染色体に組込むことである。酵母において、組込み形質転換はほとんどいつも相同的組換えを介する(Orr−Weaver等,1981)。組込みにより酵母染色体に所望の遺伝子をクローン化する最も単純な方法は、起点の複製またはARS(自律的複製配列)を含まず、特定部位への組込みをターゲッティングするための一片の宿主DNAを含むプラスミド中に所望の遺伝子を最初にクローン化することである(Orr−Weaver等,1981)。そのような無傷の組込みベクターでの新たな酵母宿主の形質転換は、選択されたターゲッティング酵母DNA配列に隣接する部位にクローン化された所望の遺伝子を含む組込み形質転換体を生じるであろう。しかしながら、そのような組込み形質転換の頻度は極端に低い(DNAμgあたり1ないし10形質転換体)。また、宿主染色体DNAに相同なDNA断片内に線状化された組込みベクターはさらにより高い頻度(100ないし1000倍高い)で酵母を形質転換できることが示されている(Orr−Weaver等,1981;Orr−WeaverおよびSzostak,1983)。制限酵素消化により誘導された二本鎖切断は組換え生成性であり、そして相同染色体DNAと高度に相互作用することが示唆された。これは、1より多い酵母遺伝子を含有する複合型プラスミドにとって特に役立ち、その結果、制限酵素でプラスミド上の対応する領域内で切断することにより、特定の部位への組込みを導くことができる。
【0009】
転移(transplacement)または遺伝子崩壊とも記載される組込みのもう一つのタイプは、酵母染色体DNAを置換する二重の相同組換えを利用する(Rothstein,1981)。二重の相同組換えベクターはクローン化されるべき外来DNAまたは遺伝子および選択マーカーを置換されるべき染色体DNA断片の5’および3’領域に相同な酵母DNA配列により両側が挟まれて含有する。形質転換に先立ち、染色体DNA配列に相同な5’および3’末端を含む転移断片を所望の組込み部位で遊離する制限酵素によりベクターは消化される。後者の戦略は、安定な単一コピー形質転換体が望ましいならば、酵母の組込み形質転換のための選択方法になる。
【0010】
反復染色体DNAへの組込みに基づいた多くの戦略が安定な多種(多重)コピー組込み体を創製するために使用されてきた。例えば、酵母レトロトランスポゾンTyのデルタ配列(Sakai等,1990;Sakai等,1991)、高度に保存された反復シグマ要素(KudlaおよびNicolas,1992)およびリボソームDNAの非転写配列(Lopes等,1989;Lopes等,1991;Rosso1ini等,1992)が全て、酵母への外来遺伝子の多種組込みのための標的部位として使用されてきた(Rothstein,1991;Romanos等,1992)。
【0011】
酵母染色体への外来遺伝子の多種組込みに関する文献に報告された最近の研究はほとんどが、クローン化されるべき所望の遺伝子と選択のための遺伝子マーカーを酵母染色体DNAの領域に相同なDNA配列で両側が挟まれて含有する適当に線状化された非複製性ヘクターまたはDNA断片のいずれかの使用を包含している。稀に、線状化された複製性ベクターおよびほとんどないが無傷の複製性ベクター、例えば無傷のARSベクターがそのような組換え形質転換を達成するために使用された。従って、酵母の組換え形質転換の開発の端緒での初期の研究(SzoatakおよびWu(1979))以来、そしてARSベクターにクローン化されたDNAが宿主染色体に組み込まれ得るという観察(Cregg等,1985:Kurtz等,1986)にもかかわらず、組込みのための無傷のARSベクターの使用(Struhl等,1979;Stincomb等,1980;ChanおよびTye.1980)は長い間一般に放棄されてきた。このことは、制限酵素消化により誘導された二本鎖切断が組換えを生じやすいという発見(Orr-Weaver等,1981:0rr-WeaverおよびSzostak,1983)以来、特に真実であった。
【0012】
この背景を考慮すると、キシロースをエタノールに、好ましくはキシロースとグルコースを同時にエタノールに発酵する、より安定な酵母、およびコピー数の多い組込み体を製造する容易かつ有効な方法に対する要望がある。本発明はこれらの要望に応えるものである。
発明の要旨
従って、本発明は、複数の世代(例えば20より多い)非選択的培地で培養する場合でもキシロ−スからエタノールへ発酵する能力を完全に保持する安定にクローン化されたXR、XD及びXK遺伝子の複数のコピーを含む酵母を提供する。より好ましくは、XR、XD及びXK遺伝子は全て、グルコースの存在によって抑制されず、その発現にキシロースの存在を必要としないプロモーターに融合している。さらに好ましくは、本発明の酵母は、セルロース系のバイオマスの二つの主要成分であるグルコースとキシロースをエタノールに同時発酵できる。
【0013】
本発明の別の態様は、XR、XD及びXKを含有するDNA断片の酵母ゲノムへの相同組換えを介した高コピー数組込を目的とする相同配列としての、反復配列、例えば5S DNAに近接する非転写r−DNA配列(Valenzuela他.,1977)の使用に関する。例えば、相同配列にフランキングするDNA断片を含む複製プラスミドベクターを、DNA断片の組み込みをターゲッティングするために使用することができる。本発明の好ましい方法は、(a)選択マーカーを含む外来DNAを有する複製/組込みプラスミドで細胞を形質転換し、そして(b)工程(a)で得られた細胞を繰り返し複製し、選択マーカーを含む細胞を選択しながら(例えば、選択性のプレート上で複製することにより)複数の世代の子孫細胞を生じさせ、その結果、子孫細胞の次の世代における複製/組込プラスミドの保持及び外来DNAの複数の挿入コピーを有する子孫細胞の形成を促進する工程を含む。さらなる工程において、工程(b)で得られた細胞を、選択マーカーを含む細胞の選択をせずに複製して、複数の世代の子孫細胞を製造し、その結果次の世代の子孫細胞におけるプラスミドの喪失を促進することができる(従って、安定な組込体に富んだ集団を残すことができる)。
【0014】
また、本発明は、所望の形質転換体を選択し、維持するための有利な方法を提供する。最小培地内で、全ての微生物が生長のためにグルコースまたはキシロースのような炭素源の存在を要求することは良く知られている。しかしながら、リッチ培地では、殆どの微生物は成長のために炭素源の存在を要求しない。それにもかかわらず、本発明は、YEP(1%の酵母抽出物及び2%のペプトン)のようなリッチ培地における形質転換体の選択のための選択圧(selection pressure)としての炭素源の使用を提供する。1400(LNH-ST)(図7)のような、非選択培地で本質的に無制限の世代の間培養した後に、キシロースの有効な発酵を行い得る安定な形質転換体の開発は、図8に示すように、多くの酵母、特にSaccharomyces酵母が、通常、リッチ培地においても生長のためにキシロースまたはグルコースのような炭素源の存在を要求するという発見により、非常に促進された。
【0015】
広い観点においては、本発明は外来DNAの複数のコピーを細胞の反復染色体DNAに組み込むための方法をも提供する。この方法は、(a)細胞を選択マーカーを含む外来遺伝子を有する複製及び組込プラスミドにより形質転換することを含む。この方法は、また、(b)工程(a)で得られた細胞を複製し、選択マーカー含む細胞を選択しながら複数の世代の子孫細胞(progeny cell)を生じさせ、その結果、子孫細胞の次の世代における複製及び組込みプラスミドの保持(retention)を促進し、そして外来DNAの複数の挿入コピーを有する子孫細胞を形成することを含む。特定の適用において、そのような方法は、(i)酵母細胞を選択マーカーを含む外来DNAを有する複製プラスミドで形質転換し、該外来遺伝子が、宿主のDNAの反復配列に相同なDNA配列により各末端にフランキングしており、そして(ii)工程(i)で得られた形質転換された酵母細胞を繰り返し複製し、選択マーカーを含む細胞を選択しながら複数の世代の子孫細胞を生じさせ、その結果、子孫細胞の次の世代における複製プラスミドの保持を促進して外来DNAの複数の挿入コピーを有する子孫細胞を形成し、そして(iii)工程(ii)からの子孫細胞を、選択マーカーを含む細胞の選択をせずに複製して、複数の世代の子孫細胞を製造し、その結果、次の世代の子孫細胞におけるプラスミドの喪失を促進し、各々染色体DNAに組込まれた外来DNAの複数のコピーを含有する酵母細胞を回収することを含む。
【0016】
さらに別の実施態様において、本発明は、キシロースをエタノールに発酵する酵母を提供する。この酵母は、外来DNAの複数のコピーがその染色体DNAに組み込まれている。キシロースリダクターゼ、キシリトールデヒドロゲナーゼ及びキシルロキナーゼをコードする遺伝子を含む外来DNAは非グルコース抑制プロモーターに融合しており、これにより酵母はグルコース及びキシロースを同時に発酵させてエタノールとし、酵母がキシロースをエタノールに発酵する能力を、非選択性条件で培養した場合でも少なくとも20世代の間実質的に保持する。
【0017】
本発明の別の観点は、キシロース含有培地を本発明の酵母で発酵させることを含むキシロースをエタノールに発酵するための方法に関する。
本発明の別の実施態様は、選択マーカーを含む外来DNA配列を標的酵母細胞の染色体DNAに組込むためのプラスミドベクターを提供する。本発明のプラスミドベクターは、機能的な酵母DNA複製起点と、標的酵母細胞の反復リボソームDNA配列に相同なDNAフランキング配列により各末端にフランキングする、選択マーカーを含む外来DNAを含む。このプラスミドは、さらに第二の選択マーカーをDNAフランキング配列の間以外の位置に有する。
【0018】
本発明のさらに別の実施態様は、外来DNA配列を酵母に組み込んで、キシロースをエタノールに発酵する安定な組込み体を形成するためのプラスミドベクターを提供する。このベクターは、機能的な酵母DNA複製起点と、標的酵母細胞の反復DNA配列に相同なDNAフランキング配列により各末端にフランキングするキシロースリダクターゼ、キシリトールデヒドロゲナーゼ及びキシルロキナーゼをコードする遺伝子を含む外来遺伝子を含む。
【0019】
本発明のさらに別の観点は、外来DNA断片のコピーが複数組み込まれた細胞を形成するための方法を提供する。本発明の方法は、反復ゲノムDNAを有し、外来DNAを有する複製及び組込プラスミドを含む細胞を複製することを含み、選択マーカーを含む細胞を選択しながら複数の世代の子孫細胞を生じさせ、その結果、子孫細胞の次の世代における複製及び組込みプラスミドの保持を促進し、外来DNAの複数の挿入コピーを有する子孫細胞を形成する工程を含む。
【0020】
本発明は、キシロースを発酵する能力を失うことなく、キシロース及びグルコースをエタノールに同時発酵するための非選択性条件下(例えば、連続発酵)での使用を可能にする、安定にクローン化された遺伝子を含む酵母を提供する。さらに、本発明は、実施が容易で、且つ組み込まれる外来DNAのコピー数を変化させるように調節され得る酵母または他の細胞の安定な複数コピー組込み体を形成するための方法及び材料を提供する。本発明のさらに別の実施態様、特徴及び効果は、下記の記載及び添付の請求の範囲により明らかとなるであろう。
発明の詳細な説明
本発明の主題の理解を助けるために、その好ましい実施態様を参照する。これを記載するために、特定の用語を使用する。しかしながら、これらは本発明の範囲の限定を意図するものではなく、ここに記載した本発明の主題の変更、さらなる改良、及び適用は、本発明の関連する技術の当業者に通常生じると考えられる。
【0021】
上記のように、本発明の好ましい観点の一つは、安定にクローン化されたXR,XD及びXK遺伝子を組み込むことのできる組換え酵母を提供することにあり、これは、従来報告されている組換え酵母に対する改良である。一般的に、同じ培地に存在するグルコースとキシロースを有効に同時発酵できる組換え酵母が報告されている(Ho及びTsao,1995)。この出版物において製造されている酵母は、ハイコピー数プラスミド、pUCKm10に適当に修飾されたXR,XD及びXK遺伝子をクローン化し、続いて得られたプラスミド、pLNH3X(X=1〜4)(図1)を用い、適当な天然酵母を形質転換することにより製造される。例えば、プラスミドpLNH32及びpLNH33を、各々融合酵母1400の1400(pLNH32)及び1400(pLNH33)への形質転換に使用し得る。これらの組換えSaccharomyces酵母は、図2及び図3に示すように、同じ培地に存在するグルコースとキシロースの両方をエタノールに有効に同時発酵することができるが、親の遺伝子操作されていない1400酵母は、グルコースしか発酵できず、グルコースとキシロースの両方を同時発酵することはできない(図4)。
【0022】
プラスミド介在組換え酵母は、選択された圧力の存在下でクローン化された遺伝子を維持することができるが、選択された圧力がないと、できない。図5及び図6に示したように、1400(pLNH32)及び1400(pLNH33)は、選択圧力なしに長期間培養すると、それらのプラスミド及びそれらのキシロース発酵能力を失うに至る。
【0023】
工業用組換え酵母、特に大容量の産業用製品、例えばエタノールの生産に使用される菌株は、選択の存在を必要とすることなく安定であることが非常に望ましい。本発明において、XR,XD及びXK遺伝子が組み込まれた組換え酵母の開発により、そのような安定性が得られた。さらに、得られた組換え酵素が、1400(pLNH32)及び1400(pLNH33)と同様であるかまたはより優れた効率でグルコースとキシロースを同時発酵する能力を有するために、組換え酵母は、キシロース代謝遺伝子が組み込まれているだけでなく、そのような組込遺伝子を高いコピー数で含むはずである。本発明の好ましい観点において、酵母のハイコピー数(hcn)組込体(即ち、少なくとも約10の外来DNAの組込コピーを有する酵母)は、非コード領域、例えば5SリボソームDNA(rDNA)の非コード領域を複数組込(multiple integration)のための部位としてターゲッティングすることにより開発された。
【0024】
rDNAは、高度に保存され、酵母は通常rDNA繰り返し配列を100コピーより多く含んでいるので、組込に有利な位置を提供する。しかしながら、本発明の酵母を得るには、繰り返しまたは反復配列が生じる毎に所望の遺伝子を組み込む必要はないものと理解される。そのような組込は、本発明の広い解釈に従い、反復配列の複数の位置、即ち2またはそれ以上の位置の各々で行われれば充分である。
【0025】
hcnXR,XD及びXKを、5S rDNAの部位で酵母染色体に組み込むために、図9に示すように、組込プラスミド、pLNH-STを構築した。PLNH-STは、酵母−E.coliシャトルベクターであり、pUCKm6プラスミド(Ho. et al., 1984)の誘導体である。5S rDNA配列を、pUCKm6のXho I制限部位に挿入した。この5S rDNA配列は、酵母の染色体DNAからPCR技術によりコピーし、部位特異的突然変異誘発技術を用いて、図9に示すようにその(ほぼ)中央配列にXho I制限部位を付加するように修飾した。PKS(-)-KK-AR-KDからのXho I断片(図10)(Ho及びTsao,1995)を、pLNH-STにクローン化された5S rDNAのXho I位置に挿入した。
【0026】
PLNH-STは、他の伝統的な5S rDNAベースのhcn酵母組込ベクターとは異なり、図9に示すように、機能性の酵母ARS配列をも含む(Struhl et al., 1979; Stinchcomb et al., 1980; Chan and Tye, 1980)。従って、pLNH-STは、複製ベクターでも組込ベクターでもある。ユニークであるのは、pLNH-STは、高コピー数のXR,XD及びXKが組み込まれた組換え酵母の開発において、まず、複製ベクターとして機能し、続いて組込ベクターとして機能することである。ARS断片を、pUCKm6のEcoR1部位に挿入した。さらに、pLNH-STは、カナマイシン耐性遺伝子(Km)及びアンピシリン耐性遺伝子(Ap)をも含む。Kmは、酵母においてゲネチシン(geneticin)耐性遺伝子としても機能し、その酵母形質転換体に、ゲネチシン耐性を付与するであろう。KmのXho I部位は、PCR技術により、活性に影響を与えることなく除去した。Km及びApはいずれも、オリジナルのpUCKm6プラスミドの一部である。
【0027】
上記のように、上記のベクターは、ARS配列を含有することにより、最新技術で使用されているものとは異なる。さらに、既に報告されているhcn酵母組込体の製造方法において、クローン化された遺伝子の組込は、酵母細胞が外因性遺伝子で形質転換された瞬間に、すぐに起こる。反対に、本発明の好ましい方法によると、クローン化された遺伝子の組込は、形質転換が完了したずっと後に、徐々に起こり続ける。特に、まずpLNH-STのような複製プラスミドの存在により形質転換が起こり、形質転換された酵母細胞において、組込は、選択培地を含むプレート上で繰り返される形質転換体の複製により徐々にしか起こらない。
【0028】
従って、本発明は、酵母または他の細胞のhcn組込クローン化遺伝子を含む形質転換体を開発するための下記の方法の使用に関する。酵母細胞や真核細胞のような反復DNA配列を含む宿主細胞は、pLNH-STのような複製/組込プラスミドにより形質転換され、ハイコピー数の複製/組込プラスミドを含有する形質転換体が選択される。得られた選択された形質転換体は、所望のコピー数の外来DNAを組み込むのに充分な回数、新しい選択プレートで繰り返し複製され、高い細胞密度まで生長し、続いてこの形質転換体を充分な世代数、非選択培地で培養し、形質転換体から複製/組込プラスミドを除去する。その後、得られた形質転換体を選択培地で培養すると、選択培地で有効に生長する能力を保持している形質転換体が、酵母又は他の宿主細胞の染色体に組み込まれた所望の外来遺伝子のhcnを含む形質転換体である。例えば融合1400酵母は、上記の方法によりpLNH-STで形質転換され、得られた安定な組換え酵母1400(LNH-ST)は、図11に示すようにグルコースとキシロースの両方を、1400(LNH32)及び1400(LNH33)よりも良好に発酵させることができる。重要なのは、新しく開発された安定な組換え酵母、1400(LNH-ST)が、図7に示すように、非選択培地で、4,20及び40世代培養した後でもグルコースとキシロースを等しい効率で発酵させることができるのに対し、1400(LNH32)及び1400(LNH33)は、非選択培地で20世代培養した後に、キシロースを発酵させる能力の殆どを失うことである(図5及び6)。さらに、1400(LNH-ST)を続いて非選択培地で数百世代にわたって培養しても、なおグルコース及びキシロースの同時発酵能力を完全に保持している。
【0029】
安定なhcn組込体を開発するための好ましい方法において、共通の選択マーカーを、同じ選択培地で、プラスミド介在活性と組み込まれた遺伝子により得られる活性との両方の選択及び維持に使用する。好ましい作業においては、共通の選択マーカーは、三つのクローン化されたキシロース代謝遺伝子、XR,XD及びXKであり、共通の選択培地は、キシロースを含有する(酵母用の)リッチまたは最小培地の何れかである。さらに、これらのクローン化された遺伝子は、殆どのSaccharomyces酵母のリッチ培地における選択マーカーとして使用される。本出願の出願人は、殆どのSaccharomyces酵母は、リッチ培地における成長でさえ、キシロースのような炭素源の存在を要求することを見出したからである(図8)。宿主として選択された酵母にとって、生長のためにリッチ培地で炭素源の存在を要求することは絶対に必要という訳ではないが、それにもかかわらず、最小培地及びキシロースを含むプレート上でよりは、リッチ培地及びキシロースを含むプレート上で所望の組込物を選択できることははるかに便利である。本発明において形質転換のために好ましい宿主は、Saccharomyces種に属するものである。これらは、通常、グルコースの発酵に非常に有効だからである。ハイコピー数のキシロース代謝遺伝子を組み込むための宿主として使用するために望ましい酵母の種が、リッチ培地における生長のために炭素源の存在を要求しないことがわかった場合には、リッチ培地で炭素源を要求しない種の適当な突然変異体を慣用方法を用いて単離することができる。
【0030】
PLNH-STのようなhcn組込を行うための複製/組込プラスミドは、望ましくは複製プラスミド介在形質転換体の選択のための第二の選択手段を含む。pLNH-STについては、第二の選択機構は、選択マーカーとしてKm及びApの両方を利用する。複製/組込ベクターが第二の選択機構を含むことは、絶対に必要という訳ではないが、より好ましいベクターを提供することになるであろう。特に、ARSベクターが選択圧の存在下でさえも充分に安定ではない場合は、形質転換体は、所望の遺伝子を充分なコピー数で組み込む前に、プラスミドの殆どを失う傾向がある。第二の選択機構を含むベクターを用いる場合、第二の選択試薬の存在下で形質転換体を培養して、プラスミドのコピー数を高めうるか、または同じベクターで第二の選択機構を用いて形質転換体を再形質転換し、形質転換体を再選択し、その結果組込プロセスを続けうるかまたは再開始できることになるであろう。
【0031】
第二の選択機構としてKm及びApの両方を使用することは、出願人の好ましい酵母については望ましいことである。Kmはゲネチシンに耐性の酵母の形質転換の主要な選択マーカーであり得るが、いくつかの酵母はKmを含むプラスミドを得なくてもゲネチシンに対して本来的に耐性である。その結果、Km単独では、酵母形質転換体の選択のための好ましい選択マーカーにはならない。一方、Apは殆どの酵母で有効に発現するが、殆どの酵母は本来的にアンピシリンに対して耐性であるので、酵母の形質転換体の主要な選択マーカーとして使用することはできない。しかしながら、Km及びApの両方を一緒に用いれば、殆どの酵母、特にSaccharomyces酵母については、優れた主要な選択システムを提供しうる。そのような選択システムを使用するためには、まず、形質転換体を、YEPD(酵母抽出物1%、ペプトン2%、グルコース2%)及び適正な濃度のゲネチシン(種により異なるが、20〜80μg/mlを含むプレート上で選択する。得られた形質転換体を、ペニシリナーゼ試験(Chevallier and Aigle, 1979)によりApの発現についてスクリーニングして、真の形質転換体を確認する。
【0032】
pLNH-ST中のApの存在(図9)及び関連する複製/組込プラスミドは、別の機能をも提供する。Apは、複製プラスミドにのみ存在し、酵母の染色体に組込まれた断片には存在しないので、アンピシリン試験は、hcn組込クローン遺伝子を含むが、プラスミドベクターは含まない形質転換体を確認するための便利な方法をも提供する。
【0033】
hcn組込遺伝子を含む安定な組換え酵母を提供するための本発明のアプローチの特徴は、組み込まれるべき遺伝子のコピー数を容易に制御できることにある。例えば、Kmのような別の選択マーカーを5S rDNA断片(または標的配列)に挿入すれば、XR−XD−XK遺伝子のより多くのコピーを融合酵母1400染色体に挿入することができる。さらに、hcn酵母組込体の開発のための発明性のある方法は、実験条件を調整して制御しなければならず、安定な菌株が得られるまで形質転換を繰り返さなければならない、報告されている他のアプローチに比べて、より容易に行い得る。
【0034】
従って、出願人は、1400(pLNH32)及び1400(pLNH33)のような従来の組換えキシロース発酵酵母の安定性を改良して、クローン化された遺伝子の維持に選択圧力の存在を必要とせず、グルコース及びキシロースの同時発酵を1400(pLNH32)及び1400(pLNH33)と同等またはそれ以上に有効に行い得る、有利に安定な組換え酵母、例えば1400(LNH-ST)を開発した。さらに、出願人は、組み込むべき遺伝子のコピー数を容易に調節し得る外来遺伝子の細胞染色体への容易なhcn組込を提供する便利な方法を開発した。
【0035】
1400(pLNH32)及び1400(pLNH33)と同様に、本発明の好ましい安定な遺伝子操作されたキシロース発酵酵母は、グルコース及びキシロースの両方を同時発酵することもできる。これは、新しい酵母宿主の染色体に挿入されたXR、XD、及びXK遺伝子が全て、酵母において有効に発現することができ、高レベルの酵素の製造をコードし、且つ培地中のグルコースの存在により抑制されない遺伝子からの無傷の5’非コード配列に融合するからである。例えば、糖分解性遺伝子の有効な発現のため且つ高レベルの糖分解酵素の生産のための全ての遺伝的要素を含む無傷の5’非コードDNA配列が、これらの目的のためのXR、XD及びXKの無傷の5’非コード領域に置き換えるのに適する。
【0036】
pLNH-STにクローン化されたXR,XD及びXKは、Pichia Stipitis(XR及びXD)及びSaccharomyces cerevisiae(XK)由来である。しかしながら、これらは、有効なプロモーター、リボソーム結合部位等を有する適正な5’非コード配列に融合された後に、各酵素を高レベルで生産することができる限り、いかなる微生物由来であっても良い。例えば、これらの三つの遺伝子は、広範囲の微生物に生じることがよく知られており、多数のXR,XD及びXK遺伝子が確認され、単離されている。従って、これらの遺伝子の特定の供給源は、本発明の広い観点においては重要ではなく、むしろキシロースリダクターゼ活性(補酵素としてのNADPH及び/またはNADHを用いてD−キシロースをキシリトールに転化する能力)、キシリトールデヒドロゲナーゼ活性(補酵素としてのNAD+及び/またはNADP+を用いてキシリトールをD−キシルロースに転化する能力)またはキシルロキナーゼ活性(D−キシルロースをD−キシルロース−5−ホスフェートに転化する能力)を有するタンパク質(酵素)をコードする任意のDNAが適しているであろう。これらの遺伝子は、天然の遺伝子として得ることができ、コードされるタンパク質がXR,XDまたはXK活性を有している限り、例えば、天然の遺伝子における塩基の付加、置換または欠失により、修飾することもできる。同様に、これらの遺伝子またはその一部は、得られるDNAが望ましいXR,XDまたはXK活性を有するタンパク質をコードしている限り、公知の技術により合成することもできる。
【0037】
例として、XR及びXD遺伝子の適当な供給源として、Candida shehatae, Pichia stipitis, Pachysolen tannnophilusのようなキシロース利用性酵母が挙げられ、XK遺伝子の適当な供給源としては、上記のキシロース利用性酵母に加えて、Saccharomyces属、例えばS. cerevisiae、Schizosaccaromyces属、例えばSchizosaccharomyces pombeから選ばれるもののようなキシロース非利用性酵母、並びにEscherichia coli, Bacillus種、Streptomyces種等のような細菌が挙げられる。目的の遺伝子は、これらの供給源から慣用の方法を利用して得ることができる。この目的には、例えば、ハイブリダイゼーション、相補性、またはPCR技術を利用することができる。
【0038】
広範囲の種類のプロモーターが本発明に使用するのに適している。広く述べれば、XR,XDまたはXK遺伝子の転写を制御することのできる酵母コンパチブル(yeast-compatible)プロモーターが使用されるであろう。そのようなプロモーターは、酵母、細菌及び他の細胞供給源を含む多くの公知の供給源から得られる。好ましくは、本発明に使用されるプロモーターは、効率の良い、誘導にキシロースを要求しない非グルコース抑制プロモーターである。この点に関して、ここで使用される“効率の良い”プロモーターとは、融合遺伝子を高いレベルで発現させる5’フランキング配列をいう。これらの特性を有するプロモーターも、広く入手可能であり、本明細書の教示があれば、それらの本発明における使用は、当業者の権限の範囲内で行われ、プロモーターのXR,XD及びXK遺伝子への融合、プロモーター/遺伝子融合生成物の適当なベクターへのクローン化並びに酵母を形質転換するための該ベクターの使用も同様である。これらの操作の全ては、当該分野で良く知られている慣用の遺伝子操作技術及び文献を用いて行うことができる。
【0039】
酵母DNAの複製起点、例えばARS含有DNA断片は、該DNA断片が有効な複製起点として機能してhcn組込のために選択された宿主におけるプラスミドの自主複製(autonomous replication)を支持することができる限り、酵母染色体DNA由来でも、他の生物の染色体DNA由来でもよい。ARSとして機能するDNA断片は、ランダムに消化されたDNA断片をE.coliプラスミドに組込み、続いて所望の宿主生物、例えばSaccharomyces酵母を文献(Stinchcomb et al., 1980: Ho et al., 1984)に報告されているように得られたプラスミドバンクで形質転換することにより、容易に単離され得る。
【0040】
本発明の安定な菌株を製造するために、新規な方法を用いてきた。それにもかかわらず、クローン化された遺伝子が複製プラスミドになく、宿主ゲノムに組み込まれていることを示す証拠はいくつかある。例えば、1400(LNH-ST)から単離された染色体DNAは、クローン化された遺伝子、例えば5S rDNA及びクローン化された遺伝子配列の両方を含む融合体のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による単離のための鋳型として使用され得る。また、E.coliの形質転換(Ward, 1990)を経て、1400(LNH-ST)から回収されたプラスミド(pLNH-ST)は少量であるのに対し、同じ条件で、1400(pLNH32)及び1400(pLNH33)から回収されたpLNH32及びpLNH33プラスミドは各々数百である。さらに、ハイコピー数の複製プラスミドpLNH-STを含む1400融合酵母形質転換体は、初期には不安定であるが(それらのキシロース発酵能力に関して)、ペニシリナーゼ(Apによりコードされる酵素)試験(Chevallier and Aigle, 1979)には陽性である。これに対し、最終的な安定な形質転換体1400(LNH-ST)は、選択の存在なしにキシロースを発酵する能力を保持しており、ペニシリナーゼ試験に陰性であることが見いだされている。Apは宿主染色体に組み込まれるDNA断片の一部ではないので、これにより、外来DNAが、5S rDNAの部位に組み込まれているか否かが予測される。安定な酵母形質転換体のいくつかは、酵母染色体のARS部位に挿入された外来遺伝子を含む可能性もある。
【0041】
本発明及びその特徴及び効果ををさらに理解する目的で、下記に実施例を示す。しかしながら、これらの実施例は説明のためのものであって、本発明を限定するものではないと理解すべきである。
実施例1
5S rDNA断片のPCRによる合成
5S rDNA断片のPCRによる合成のために(酵母染色体へのハイコピー数組込みを目的とする酵母DNA配列として用いるために)、下記のオリゴヌクレオチドを合成し、公表されている5S rDNA配列(Valenzuela et al., 1977)によるPCR反応のためのプライマーとして使用した。5S rDNA配列に加えて、Sal I制限部位を特定する追加のヌクレオチドを、プライマーの5’末端に付加し、PCR合成された5S rDNAのE.coliプラスミドへのクローン化を促進した。
オリゴヌクレオチドI:TTAGTCGACGTCCCTCCAAATGTAAAATGG
オリゴヌクレオチドII:AATGTCGACGTAGAAGAGAGGGAAATGGAG
融合酵母1400から単離された染色体DNAをPCR反応の鋳型として使用した。まず、PCRで合成された5S rDNA断片をE.coli pBluescript II KS(-)プラスミド(Stratagene Cloning Systems, La Jolla, CA)に、SalI部位でクローン化した。得られたプラスミドをpKS-rDNA(5S)と命名した。
実施例2
クローン化された5S rDNAへのXHOI部位の挿入
5S rDNA配列の−29と−56の間のヌクレオチド配列を(Valenzuela et al., 1977)、オリゴヌクレオチド仲介部位特異的突然変異誘発(Kunkel,1985; Kunkel et al., 1987)により修飾した。結果として、上記の特異的位置にXhoI制限部位が挿入された。この操作は、プラスミドpTZ18UまたはpTZ19UではなくプラスミドpKSを使用する以外は、バイオラッドラボラトリーズインコーポレーテッドにより提供されるオリゴヌクレオチド仲介部位特異的突然変異誘発のためのプロトコロルに従って行なった。突然変異5S rDNAを含む得られたプラスミドを、pKS-5S rDNA(XhoI)と命名した。下記のオリゴヌクレオチドを部位特異的突然変異を行うのに用いた:
GAGGGCAGGCTCGAGACATGTTCAGTAGG
実施例3
S.cervisiaeDNA由来のDNA断片または酵母における
ARSとして機能する他のDNAの単離
S.cerevisiaeDNA(または他の酵母もしくは他の生物からのDNA)を、Sau3A制限酵素で消化して、pCUKm6のBamH1部位(図12)にクローン化した(Ho, et al., 1984)。得られたプラスミドバンクをS.cerevisiaeの形質転換に使用した。これらの形質転換体のうち、YEPD(酵母抽出物1%、ペプトン2%、及びグルコース2%)及び50μg/mlのゲネチシンを含有するプレート上で生長することができ、ペニシリナーゼ試験(Chevallier and Algle, 1979)に陽性のものを選択した。選択された真正な形質転換体からのプラスミドをWard(1990)に記載されている方法と同様の方法で回収した。
【0042】
pUCKm6に挿入され(図12)、酵母形質転換体から回収された酵母DNA断片は、全てS.cerevesiae内で、ARS(autonomous replicating sequence)として機能し、他の酵母内でも同様に機能しうるDNA断片を含んでいるべきである。このDNA挿入物を種々の制限酵素で消化し、得られたDNA断片をpUCKm6に再び挿入した。このプラスミドを、S.cerevesiaeの再形質転換に使用した。pUCKm6を酵母プラスミドとして有効に機能させ得る全ての適切な大きさの制限断片は、有効な“ARS”を含んでいなければならず、pLNH-ST のような、S.cereviciaeの染色体への外来遺伝子の高コピー数組込を行うための複製/組込ベクターの構築に使用することができる。これらの制限断片は、他の酵母においてもARSとして機能すると考えられ、他の酵母の複製/組込プラスミドの構築にも適している。
実施例4
ゲネチシン(カナマイシン)耐性遺伝子,KmからのXhoI制限部位の除去
Tn903(A. Oka et al., 1981)からのゲネチシン(カナマイシン)耐性遺伝子、Km及び実施例1に記載した5S rDNA断片は、外来遺伝子の複数のコピーを酵母染色体に組込むために設計されたプラスミドの一部である。しかしながら、Kmはコード配列中にXhoI部位を含む。これは、XhoI部位が、XR、XD及びXKのような外来遺伝子の組込のためのプラスミドへの挿入に使用するために、クローン化された5S rDNA配列の中心に加工されている事実と矛盾する。従って、KmからXhoI部位を除去する必要がある。これは、いくつかの異なるアプローチにより行い得る。出願人は、アミノ酸コード配列を変化させることなく、その遺伝子によりコードされる酵素の触媒活性に影響を与えることなく、KmからXhoI部位を除去するために、オーバーラップエクステンションPCR技術(S.N.Ho, et al., 1989)による部位特異的突然変異誘発の使用を選択する。pUCKm6(図12)にクローン化されたKm遺伝子を、上記のようにKm(-Xho)に転化した。
【0043】
この操作を行なうために使用される4つのオリゴヌクレオチドを下記に示す。
オリゴヌクレオチド I: GGCCAGTGAATTCTCGAGCAGTTGGTG
オリゴヌクレオチド II: TGGAATTTAATCGCGGCCCCTAGCAAGACG
オリゴヌクレオチドIII: TTACGCCAAGCTTGGCTGC
オリゴヌクレオチド IV: TTCAACGGGAAACGTCTTGCTAGGGGCCGC
pUCKm6(図12)はpUC9の誘導体である。Oligo Iの一部及びOligo IIIの全部を、pUC9のポリリンカー領域の配列(Sambrook, et al.,1989)に従って合成する。
【0044】
上記のpUCKm6の遺伝子操作により、Kmのコード領域からXhoI制限部位が欠失する結果となるだけでなく、pUCKm6のKmコーディング配列とEcoRI部位の間にXhoI制限部位が挿入される結果となる。得られたプラスミドを、pUCKm(-XhoI)(+XhoI)と命名した。Kmコード配列の下流に、XhoI部位を付加することにより、新しく開発されたプラスミドであるpUCKm(-Xho)(+Xho)への実施例1に記載した5S rDNA断片の挿入が促進される。
実施例5
プラスミドpLNH-STの構築
実施例4に記載したプラスミドpUCKm(-XhoI)(+XhoI)を図9に示すpLNH-STの構築に使用した。まず、5S rDNA(XhoI)を含むSal I断片をpKS-5S rDNA(XhoI)から単離し、pUCKm(-XhoI)(+XhoI)のXhoI部位に挿入した。得られたプラスミドを、pUCKm-rDNA(5S)と命名した。
【0045】
このプラスミドに対し、S.cerevisiaeから単離された有効なARSを含有するEcoRI断片(実施例3に記載された方法による)を、pUCKm-5S rDNAのEcoRI部位に挿入した。得られたプラスミドを、pUCKm-5S rDNA-ARSと命名した。このプラスミドに、酵母アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター(XR)、及びピルベートキナーゼプロモーター(XD及びXKの両方に対して)に融合したクローン化されたXR、XD及びXKを含有するpKS(-)-KK-AR-KD-3 のXhoI断片を、クローン化された5S rDNA配列の中心に位置するXhoI部位に挿入した。得られたプラスミド、pUCKm-rDNA(5S)(KDR)-ARSを、pLNH-STと命名し、図9に示す。
実施例6
融合酵母1400のpLNH-STによる形質転換
及び安定な形質転換体1400(LNH-ST)の選択
pLNH-STを使用して、菌株1400のプラスミドpLNH32及びpLNH33による形質転換に用いる条件(国際公開No.95/13362, 1995年5月18日、公開された国際出願No.PCT/US94/12861,1994年11月8日出願)でのエレクトロポレーションにより融合株1400を形質転換した。簡潔に述べると、早期対数期(140〜190クレット単位(Klett Unit)(KU)) の酵母細胞50mlを遠心分離にかけ、培地を除去し、冷水で2回、1Mの冷ソルビトール溶液で1回洗浄し、200μlの1Mソルビトール溶液に再懸濁した。60μlの細胞を4mlの予め消毒したプラスチック管(キャップ付き)に移し、これに1μgのプラスミドDNAを添加した。得られた細胞とプラスミドの混合物50μlを、予め冷却した0.2cmの電極ギャップを有する遺伝子パルサーキュベットに、ピペットで入れ、このキュベット内の内容物にパルスコントローラーを備えた遺伝子パルサー(バイオラッド)により、2.0KV,25μF、200オームでパルスをかけた。
【0046】
ただちに、0.50mlのYEPDをこのキュベットに添加した。このキュベットの内容物を新しい4mlの滅菌プラスチック管に移し、30℃で1時間インキュベートした。この細胞100μlを、YEPD及び40μg/mlのG418(ゲネチシン)を含有する寒天プレート上に平板化した。速く生長したコロニーを選択し、同じ培地を含む別のプレート上で複製させた。選択されたコロニーに、アンピシリン試験(Chevallier and Aigle, 1979)を、陽性のものが一つ確認されるまで行なった。上記のエレクトポレーション法は、Becker及びGuarente (1971)により報告されているものに基 づく。
【0047】
形質転換体がペニシリナーゼ試験により陽性であることが確認されたら、これをYEPX(酵母抽出物1%、ペプトン2%、キシロース2%)プレート上で維持する。最初は、形質転換体は非常に不安定であった。これらはYEPD培地で20世代に渡り培養すると、キシロース発酵能力を失う。しかしながら、形質転換体をYEPXプレート上で定常期まで培養し続け、これを新しいYEPXプレートに繰り返し移し続けると、形質転換体のキシロースを発酵する能力は徐々に安定化した。一度安定になると、形質転換体は数百またはそれ以上の世代の間、非選択培地で培養することができ、その後も、実施例8に示すように、グルコース及びキシロースの両方の同時発酵が可能であった。
実施例7
1400(LNH-ST)によるグルコース及びキシロースの同時発酵
グルコースとキシロースの混合物(グルコースが約10%、キシロースが約5%)を、下記に示す条件下で菌株1400(LNH-ST)により発酵させた。1400及び1400(LNH-ST)の種培養物を、液体YEPD培地で、中間対数期(mid-log phase)(400〜450クレット単位(KU))に達するまで好気的に培養し、4℃で貯蔵した。月に一度、培養物2mlを新しいYEPD50mlに移すことにより新しい種培養物を調製し、上記のように培養した。1400(LNH-ST)の種培養物2mlを、サイドアームを備えた300mlのエーレンマイヤーフラスコ中の100mlのYEPD培地に接種した。これにより、クレット比色計により酵母培養物の生長を直接モニターすることができる。この培養物を振とう器内で、30℃、200rpmで好気的にインキュベートした。
【0048】
細胞濃度が中間対数期(400−450KU)に達したら、グルコース20ml(50%)及びキシロース10ml(50%)をフラスコに添加した。完全に混合した後、培養混合物1mlをフラスコから除去し、ゼロサンプル(zero sample)とした。その後、フラスコをサランラップで封じ、発酵を嫌気的に行った。発酵ブロスのサンプル1mlを適当な間隔(6時間毎)で除去し、発酵中のブロスのグルコース、キシロース、キシリトール、及びグリセロールの含有量を、実施例9で記載するようにHPLCにより測定するためのサンプルとした。結果は、図11に示すように、遺伝子操作された酵母1400(LNH-ST)が、10%のグルコース及び5%のキシロースの殆どを、30時間以内にエタノールに同時発酵することができることを示した。この発酵は、通常の条件下で、特別な培地またはpHを必要とすることなく、さらに、酵母の高い細胞密度への生長を必要とすることなく行われた。従って、遺伝子操作された1400(LNH-ST)は、グルコースとキシロースの両方を高濃度でエタノールに有効に同時発酵することができ、副生成物として生産されるキシリトールの量は非常に少ない。図2及び図3に示した組換えSaccharomyces 1400(pLNH32)及び1400(pLNH33)との比較において、1400(pLNH-ST)はグルコース及びキシロースの両方を、これら二つの既に開発されている酵母よりも、幾分良好に同時発酵した。
実施例8
4、20及び40世代、非選択培地中で培養した後の、グルコース及び
キシロースの同時発酵における、安定な菌株1400(LNH-ST)、
菌株1400(LNH32)及び菌株1400(LNH33)の比較
実施例7に記載したように、1400(LNH-ST)、1400(LNH-ST32)及び1400(LNH-ST33)の種培養物の各々2mlを、サイドアームを備えた別個の250mlのエーレンマイヤーフラスコ中の50mlのYEPD培地に接種した。細胞を400〜450KUまで培養した後、各フラスコからの新しい培地2mlを新しいフラスコに移した。この方法を、1400(LNH-ST)について10回、1400(LNH32)及び1400(LNH33)について5回繰り返した。非選択培地中での4、20及び40世代培養した(各移し換えは非選択培地中で培養した世代4回と考えられる)1400(LNH-ST)を、実施例7に記載したのと同様の条件下で、グルコース及びキシロースの同時発酵に使用した。発酵サンプルをとり、実施例7に記載したのと同様に分析した。同様に、非選択培地中での4及び20世代培養した1400(LNH32)及び1400(LNH33)の培養物を、グルコース及びキシロースの同時発酵に使用した。発酵を開始した後、再びサンプルをHPLCによる分析のために適当な間隔で取り、図4〜6に比較した。これらの結果は、明らかに1400(LNH-ST)が、40世代以上非選択培地で培養した後のキシロース発酵能力を維持することにおいて、1400(LNH32)及び1400(LNH33)に比べてはるかに安定であることを示す。
実施例9
発酵サンプルのHPLC分析
培養物から除去された発酵ブロスを含むサンプル(0.6ml〜1.0ml)を、1.5mlのエッペンドルフチューブ中に保持した。細胞及び他の残滓をマイクロフュージ(microfuge)(最高速度)中、10分間遠心分離にかけることにより除去した。上清液を10倍に希釈した。得られた希釈サンプルのエタノ−ル、グルコース、キシロース、キシリトール、及びグリセロールの含有量を、日立システムを用いた高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により、下記の条件で分析した。
カラム: BioRad HPX-87H
移動相: 0.005M HSO
流速: 0.8ml/分
検出: RI検出器
温度: 60℃
抽出容量: 20μl
実施例10
安定な形質転換体1400(LNH-ST)からの染色体DNAの遺伝的特性
制限及びPCR分析をベースとして、pLNH-ST中のクローン化された遺伝子、KK,AR,KD及び5SrDNAの遺伝子地図(順序及び方向)を、図9Bに示したように決定した。実験は、これらの遺伝子(KK,AR及びKD)が5S rDNAの位置に組み込まれたか否かを決定するように設計された。これらの遺伝子が予想通り5S rDNAの位置で酵母染色体に挿入されれば、下記の部分または無傷の遺伝子の組み合わせ、例えば5S rDNA-KK; 5S rDNA-KD; KK-AR及びAR-KD)を含むDNA断片の正確な大きさが、鋳型として1400(LNH-ST)染色体DNAを用い、プライマーとして遺伝子マップ(図9B)に示すオリゴヌクレオチドを用いて、PCRによりDNA合成を行うことにより得られたはずである。これらの遺伝子は、酵母染色体に組み込まれなかった場合は、上記の実験においては遺伝子または遺伝子断片のそのような組み合わせは得られなかったはずである。これらの遺伝子は、5S rDNAの位置ではなく、むしろ酵母染色体の別の場所に組み込まれた場合、上記の遺伝子または遺伝子断片の組み合わせのいくつかは、上記の実験により得られるであろうが、5S rDNA-KK及び5S-rDNA-KDのような5S rDNA断片を含むものは得られない。上記の実験を行うために、染色体DNAを、1400(LNH-ST)からカリフォルニア州、チャッツウォースのキアゲンにより提供されるプロトコルを用いて単離した。下記のプライマー対(図9参照)を用いることにより、PCR合成において陽性の結果が得られた:オリゴ25及びオリゴ369;オリゴ26及びオリゴ369;オリゴ370及びオリゴ96;オリゴ97及びオリゴ99;オリゴ982及びオリゴ27。従って、上記の分析によると、KK−AR−KDを含むDNA断片が、1400酵母の染色体の5S rDNA位置に実際に組み込まれているようである。
参考文献
以下の文献は当業者が有する技術水準の指標であり、各々が引用により取り込まれて十分に記載されているが如く、各々が引用により本書に取り込まれる。
【0049】
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【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、プラスミドpLNH31,-32,-33及び-34の制限地図、並びにそこにクローン化された遺伝子を示す。
【図2】図2は、酵母形質転換体1400(pLNH32)(LNH32と略す)が、グルコースとキシロースの同時発酵を有効に行い得ることを示す。酵母を培養するため及び糖を発酵するために使用される条件は、実施例7に記載されたものと同様である。
【図3】図3は、酵母形質転換体1400(pLNH33)(LNH33と略す)が、グルコースとキシロースの同時発酵を有効に行い得ることを示す。酵母を培養するため及び糖を発酵するために使用される条件は、実施例7に記載されたものと同様である。
【図4】図4は、親酵母融合株1400がグルコースを発酵させるが、キシロースは発酵させないことを示す。酵母を培養するため及び糖を発酵するために使用される条件は、実施例7に記載されたものと同様である。
【図5】図5は、複製プラスミドpLNH32にキシロース代謝遺伝子がクローン化された酵母形質転換体1400(pLNH32)(LNH32と略す)が、非選択培地では安定でないことを示す。非選択(例えば、グルコース)培地において20世代培養した後、1400(pLNH32)は、キシロースを発酵する能力を失う。
【図6】図6は、複製プラスミドpLNH33にキシロース代謝遺伝子がクローン化された酵母形質転換体1400(pLNH33)(LNH33と略す)が、非選択培地では安定でないことを示す。非選択(例えば、グルコース)培地において20世代培養した後、1400(pLNH33)は、キシロースを発酵する能力を失う。
【図7】図7は、酵母形質転換体1400(LNH-ST)(LNH-STと略す)が、非選択性培地で40世代以上培養した後も、キシロース発酵能力を安定に維持し得ることを示す。
【図8】図8は、S.cerevisiae及び他のSaccharomyces酵母が、培地中に酵母抽出物とペプトンのようなリッチ培地が存在する場合でも生長に炭素源を要求することを示す。例えば、これらの実験は、S.cerevisiaeが、1%の酵母抽出物及び2%のペプトンを含むYEP培地中では生長できないが、このYEP培地にグルコースまたはキシルロースを添加すると、生長することができることを示す。
【図9】図9aは、pLNH-STの制限地図及びこれにクローン化された遺伝子を示す。
【0051】
図9bは、pLNH-STにクローン化された遺伝子(5Sr DNA,KK,AR及びKD)の遺伝子地図(順番及び方向)を示す。遺伝子地図の上または下のオリゴヌクレオチド(例えば、Oligo25、Oligo26等)は、PCRによりクローン化された遺伝子の順番及び方向を特徴付けるのに使用されたプライマーである。
【図10】図10は、クローン化されたXR,XD,XK遺伝子を含むpBluescript IIKS(-)の構築の概略を示す模式図である:そのようなプラスミドが4つ構築された。pKS(−)−KK−AR−KD−3にクローン化されたKK−AR−KD断片を選択して、pLNH-STとしても示されるpUCKm-rDNA(5S)(KRD)-ARSの構築のためのpUCKm-rDNA(5S)-ARSにクローン化した。
【図11】図11は、酵母形質転換体1400(LNH-ST)(LNH-STと略す)が、1400(pLNH32)及び1400(pLNH33)より優れており、グルコースとキシロースの同時発酵を有効に行い得ることを示す。酵母を培養するため及び糖を発酵するために使用される条件は、実施例7に記載されたものと同様である。
【図12】図12は、S.cerevisiae及び他の酵母の染色体DNAからARS含有DNA断片を単離するためのブロード−ホスト(broad-host)プラスミドにクローン化された遺伝子及びその制限地図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10以上のコピーの外来DNAを酵母細胞の反復染色体DNAに組込むための方法であって、
(a)自律複製配列、外来DNA及び第1の選択マーカーを含む外来DNAを有する複製及び組込みプラスミドで細胞を形質転換し、そして
(b)工程(a)で得られた細胞を繰り返し複製し、選択マーカー含む細胞を選択しながら子孫細胞世代を生じさせ、その結果、子孫細胞の次の世代における複製/組込プラスミドの保持を促進し、組込まれた外来DNAのコピーを10以上有する子孫細胞を生じさせることを含み、ここで該プラスミドは複製プラスミドとしても組込みプラスミドとしても機能するが、上記外来DNAがキシロースリダクターゼ、キシリトールデヒドロゲナーゼ及びキシルロキナーゼをコードし、そして酵母がSaccharomycesである、前記の方法。
【請求項2】
前記プラスミドDNAが、プラスミドを含む細胞を選択するための第二の選択マーカーをも含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、工程(b)で得られた子孫細胞を、選択マーカーを含む細胞の選択をせずに繰り返し複製して、子孫細胞世代を生じさせ、その結果次の世代の子孫細胞におけるプラスミドの喪失を促進し、10以上のコピーの外来DNAが各々の細胞の染色体DNAに組込まれた酵母細胞を回収することを含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記細胞が酵母細胞であり、前記外来のDNAが、第一の選択マーカーとしても機能するキシロースリダクターゼ、キシリトールデヒドロゲナーゼ、及びキシルロキナーゼをコードする遺伝子を含む請求項3記載の方法。
【請求項5】
10以上のコピーの外来DNAを細胞の反復染色体DNAに組込むための方法であって、
(i)自律複製配列、外来DNA及び選択マーカーを含む複製/組込みプラスミドで酵母細胞を形質転換し、該外来DNAが、酵母細胞のDNAの反復配列に相同なDNA配列により各末端にフランキングしており、
(ii)工程(i)で得られた形質転換された酵母細胞を繰り返し複製し、選択マーカーを含む細胞を選択しながら子孫細胞世代を生じさせ、その結果、子孫細胞の次の世代における複製/組込みプラスミドの保持を促進し、各々の細胞が10以上のコピーの組込まれた外来DNAを有する子孫細胞を生じさせ、そして
(iii)工程(ii)からの子孫細胞を、選択マーカーを含む細胞の選択をせずに複製して子孫細胞世代を製造し、その結果、次の世代の子孫細胞におけるプラスミドの喪失を促進し、10以上のコピーの外来DNAの複数のコピーが各々の細胞の染色体DNAに組込まれた酵母細胞を回収することを含み、ここで該プラスミドは複製プラスミドとしても組込みプラスミドとしても機能し、組込まれた外来DNAが非選択培地中での培養後に少なくとも20世代の間安定であり、そして酵母がSaccharomycesである、前記の方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法により生産される酵母細胞。
【請求項7】
前記外来DNAが、キシロースリダクターゼ、キシリトールデヒドロゲナーゼ、及びキシルロキナーゼをコードする遺伝子を含み、前記酵母細胞が、キシロースをエタノールに発酵する請求項6記載の酵母細胞。
【請求項8】
前記遺伝子が、培地中のグルコースの存在によって抑制されないプロモーターであって、誘導にキシロースを要求しないプロモーターに融合しており、前記酵母細胞が、グルコースとキシロースを同時にエタノールに発酵する請求項7記載の酵母細胞。
【請求項9】
酵母の反復リボソームDNA部位の少なくとも2以上に、外来DNA又は誘導されたDNAを少なくとも2コピー有し、非選択性条件で培養した場合に、キシロースをエタノールに発酵する能力を、少なくとも20世代の間実質的に維持する請求項8記載の酵母細胞。
【請求項10】
第一の選択マーカーを含む外来DNA配列を標的酵母細胞の染色体DNAに組み込むための、複製ベクターとしても組込みベクターとしても機能する複製/組込みプラスミドベクターであって、前記プラスミドベクターが機能的な酵母自律複製配列と、第一の選択マーカーを含む外来DNAとを含み、該外来DNAが標的酵母細胞のリボソームDNAの反復DNA配列に相同なDNAフランキング配列により各末端にフランキングし、該プラスミドは、さらに第二の選択マーカーをDNAフランキング配列の間以外の位置に有する、前記プラスミドベクター。
【請求項11】
外来DNA断片の10以上のコピーが組み込まれた細胞を形成するための方法であって、
反復ゲノムDNAを有する細胞であって、自律複製反復及び前記外来DNAを含む複製/組込みプラスミドを含む酵母細胞を複製し、選択マーカーを含む細胞を選択しながら子孫細胞世代を生じさせ、その結果、子孫細胞の次の世代における複製/組込みプラスミドの保持を促進し、外来DNAの複数の組込みコピーを10以上有する子孫細胞を生じさせることを含み、ここで該プラスミドは複製プラスミドとしても組込みプラスミドとしても機能し、外来DNAがキシロースリダクターゼ、キシリトールデヒドロゲナーゼ及びキシルロキナーゼをコードし、そして酵母がSaccharomycesである、前記の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−148277(P2009−148277A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29455(P2009−29455)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【分割の表示】特願平9−540153の分割
【原出願日】平成9年5月6日(1997.5.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サランラップ
【出願人】(598063203)パーデュー・リサーチ・ファウンデーション (59)
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】