説明

キッチンカウンター構造およびキッチンカウンター構造の形成方法

【課題】目地部とシンクのフランジ部との間に水等が浸入した場合にも、シンクの腐食、錆びの発生を抑制することができ、見栄えを良好に維持することができるキッチンカウンター構造を提供すること。
【解決手段】カウンター2の開口部21の内周縁22と、シンク3のフランジ部31とが対向配置され、相互の間には、常温硬化型樹脂41が充填された目地部4が形成されているとともに、目地部4とフランジ部31との当接部7には、水膨張性樹脂5が埋設されているキッチンカウンター構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンカウンター構造およびキッチンカウンター構造の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、これまでに、様々なキッチンカウンターを提案している。例えば、特許文献1では、カウンターと、カウンターに形成した開口部に収納されたシンクのフランジ部とを接合固着させてなるキッチンカウンターを提案している。このキッチンカウンターでは、カウンターとシンクの表面側を、隙間を介して面一に整合させ、裏面側より硬質接着材を注入することで、隙間に目地部を形成して固着させている。カウンターとシンクの表面側が目地部を挟んで略面一に形成されているため、目地部の表面の周辺の掃除がしやすく、美観にも優れたキッチンカウンターとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-154821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただ、特許文献1のキッチンカウンターでは、目地部とシンクのフランジ部との間の当接部の表面側から油や水等が浸入し、これによって、シンクの腐食、錆びが生じかねない場合があることが懸念された。特に、醤油等の塩分を含んだ調味料が隙間に侵入した場合には、シンクの腐食、錆びが進行しやすいため、キッチンカウンターの表面の外観をさらに良好に維持するための工夫が望まれていた。
【0005】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、シンクの腐食、錆びの発生を抑制することができ、見栄えを良好に維持することができるキッチンカウンター構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のキッチンカウンター構造は、開口部が設けられたカウンターと、上端外周にフランジ部を備え、前記カウンターの開口部に装着されている金属製のシンクとを有するキッチンカウンター構造であって、前記カウンターの開口部の内周縁と前記シンクのフランジ部とが対向配置され、相互の間には、常温硬化型樹脂が充填された目地部が形成されているとともに、目地部とフランジ部との当接部には、水膨張性樹脂が埋設されていることを特徴としている。
【0007】
このキッチンカウンター構造においては、前記フランジ部は、水平部と、この水平部の端部から下向きに延びる折り返し片とを有し、この折り返し片の外周面の上端部より下方に水膨張性樹脂が固着されて埋設されていることが好ましい。
【0008】
本発明のキッチンカウンター構造の形成方法は、開口部が設けられたカウンターと、上端外周にフランジ部を備え、前記カウンターの開口部に装着されている金属製のシンクとを有するキッチンカウンター構造の形成方法であって、(1)前記シンクのフランジ部の外周面に水膨張性樹脂を固着する工程と、(2)前記カウンターの開口部の内周縁と前記フランジ部とが隙間を介して対向するように前記カウンターの開口部に前記シンクを収納し、前記隙間に常温硬化型樹脂を充填して、前記水膨張性樹脂を内包する目地部を形成する工程とを含むことを特徴としている。
【0009】
このキッチンカウンター構造の形成方法においては、前記フランジ部は、水平部と、この水平部の端部から下向きに延びる折り返し片とを有し、前記工程(1)において、前記折り返し片の外周面の上端部より下方に水膨張性樹脂を固着することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のキッチンカウンター構造によれば、目地部とシンクのフランジ部との間の隙間に水等が浸入した場合にも、シンクの腐食、錆びの発生を抑制することができ、見栄えを良好に維持することができる。また、本発明のキッチンカウンター構造の形成方法によれば、目地部とフランジ部の折り返し片の当接部に水膨張性樹脂を確実に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(A)は、本発明のキッチンカウンター構造の一実施形態を例示した斜視図であり、(B)は、(A)の矢視断面図である。
【図2】(A)(B)は、本発明のキッチンカウンター構造の形成方法の一実施形態を例示した概要図である。
【図3】本発明のキッチンカウンター構造の別の実施形態を例示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1(A)は、本発明のキッチンカウンター構造の一実施形態を例示した斜視図であり、図1(B)は、図1(A)の矢視断面図である。
【0013】
キッチンカウンター構造1は、カウンター2と、カウンター2の開口部21に収納されたシンク3とを備え、カウンター2とシンク3の間には目地部4が形成されている。
【0014】
カウンター2は、表面に開口部21を有する平板状に形成されている。カウンター2は、金属製や、樹脂等の非金属製等の材料によって形成することができる。好ましくは、耐熱性の樹脂で成形された人造大理石を例示することができる。カウンター2の開口部21には、シンク3が収納されている。
【0015】
シンク3は、絞り成型された金属製とされている。なかでも、シンク3は、耐久性や防蝕性等の観点から、ステンレスであることが好ましい。シンク3の上端外周には、フランジ部31が設けられている。フランジ部31は、水平部31aと、この水平部31aから下方に延びる折り返し片31bとを有している。折り返し片31bは、フランジ部31の強度を向上させ、変形等を抑制している。
【0016】
カウンター2の開口部21を形成する内周縁22と、フランジ部31の折り返し片31bとが対向配置され、内周縁22とフランジ部31の折り返し片31bとの間には目地部4が形成されている。カウンター2の表面とフランジ部31の水平部31aは、目地部4を介して略面一に形成されている。目地部4は、常温硬化型樹脂41によって形成されている。常温硬化型樹脂41は、常温で硬化状態の樹脂であり、例えば、エポキシ系、ウレタン系等の樹脂からなる主剤に硬化剤を混合して液状に生成されたものを例示することができる。常温硬化型樹脂41には、所定時間経過後に常温で硬化するものや多少の加熱を加えて硬化させることができるものが含まれる。より具体的には、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、無黄変や難黄変タイプのウレタン樹脂等の公知の樹脂を1種または2種以上組合せて使用することができる。常温硬化型樹脂41は、美観、耐光性、接着力に優れ、適度な粘度を有する樹脂を適宜選択して使用することができる。図1に例示した形態では、常温硬化型樹脂41は、目地部4を形成するとともに、カウンター2下方の桟材6付近まで充填され、シンク3のフランジ部31の裏面側を覆い、カウンター2とシンク3を接合、固着している。
【0017】
目地部4とフランジ部31の折り返し片31bとの間の接続部には、水膨張性樹脂5が埋設されている。水膨張性樹脂5は、折り返し片31bの外周面(カウンター2の内周縁22と対向する面)に沿って上端部より下方に固着されており、周囲が常温硬化型樹脂41で覆われている。このため、水膨張性樹脂5は、目地部4の表面側には露出しておらず、見栄えが良好となっている。
【0018】
水膨張性樹脂5は、吸水によって体積が膨張し、長時間に亘って乾燥収縮し難いものが好ましく、例えば、ポリビニルアルコール系のポバールの架橋物、アクリル系のポリアクリル酸ナトリウム架橋物、ウレタン系、デンプン系、セルロース系、ヒアルロン酸系の樹脂等の公知の材料を適宜使用することができる。さらに詳しくは、水膨張性樹脂5は、例えば、アクアプレン(三洋化成工業株式会社製)等を例示することができる。
【0019】
キッチンカウンター構造1は、例えば、食器の洗浄等でシンク3を使用すると、飛び跳ねた水、油、調味料等が、目地部4とフランジ部31の折り返し片31bとの間の当接部7から内部へ進入する場合がある。この場合にも、目地部4とフランジ部31の折り返し片31bとの間の当接部7には、水膨張性樹脂5が埋設されているため、進入した水等は水膨張性樹脂5によって吸水される。これによって、水膨張性樹脂5は膨張し、水等の進入路(当接部7の一部)を閉鎖するため、水等の浸入が抑制される。したがって、シンク3の腐食、錆びの発生が確実に抑制される。また、時間の経過に伴って、膨張した水膨張性樹脂5は乾燥収縮し、再び水等と接触した場合に膨張し、水等の進入路を閉鎖し止水することができる。
【0020】
図2は、本発明のキッチンカウンター構造の形成方法の一実施形態を例示した概要図である。
【0021】
図2(A)に例示したように、シンク3のフランジ部31の折り返し片31bの外周面に水膨張性樹脂5を固着する。水膨張性樹脂5は、その自己粘着性を利用して固着することもできるし、液状のまま塗布することもできる。また、適宜な接着剤を利用して固着することもできる。水膨張性樹脂5は、フランジ部31の折り返し片31bの上端部より下方に固着し、上端部では折り返し片31bが外方に露出するようにしている。カウンター2の裏面には、開口部21を形成する内周縁22の内側に桟材6が略全周に亘って設けられている。カウンター2の開口部21を形成する内周縁22と、フランジ部31の折り返し片31bとが隙間Bを介して対向するように、カウンター2の開口部21にシンク3を収納する。
【0022】
そして、図2(B)に例示したように、この隙間Bに、カウンター2の裏面の桟材6の位置まで常温硬化型樹脂41を充填して硬化させ、水膨張性樹脂5を内包する目地部4を形成する。目地部4の形成と同時に、カウンター2とシンク3とが接合、固着される。フランジ部31の折り返し片31bの外周面に水膨張性樹脂5が固着されているため、目地部4とフランジ部31の折り返し片31bとの当接部7の内方に水膨張性樹脂5を確実に配置することができる。カウンター2の表面、目地部4およびフランジ部31の水平部31aは、略面一に形成されており、キッチンカウンター構造1の表面の見栄えが良好となっている。また、常温硬化型樹脂41は、シンク3のフランジ部31の裏面側にも充填され、シンク3、カウンター2および桟材6が固着し、一体化している。カウンター2の裏面の桟材6は、常温硬化型樹脂41を充填する際の堰としての機能も有し、充填した常温硬化型樹脂41が流れ出ることを抑制している。
【0023】
隙間Bへの常温硬化型樹脂41の充填は、例えば、カウンター2とシンク3の上下を逆にして裏面側から行うことができる。さらに、この場合、適宜、シリコンパッキン等の部材を使用することができる。例えば、シリコンパッキン等で隙間Bを表面側から覆った後、裏面側から常温硬化型樹脂41を充填することができる。シリコンパッキン等は、目地部4の形成後に、常温硬化型樹脂41から容易に剥離させることができるため、目地部4の表面を滑らかに美しく仕上げることができる。
【0024】
水膨張性樹脂5は、折り返し片31bの外周面の上端部より下方に固着されているため、常温硬化型樹脂41の充填に伴う目地部4の形成によって、目地部4と折り返し片31bの当接部7に埋設された状態となっている。したがって、水膨張性樹脂5は目地部4の表面側には露出しておらず、見栄えが良好になっている。
【0025】
本発明の形成方法によって形成されたキッチンカウンター構造1は、上記の通り、目地部4とフランジ部31の折り返し片31bとの間の当接部7には、水膨張性樹脂5が埋設されているため、進入した水等は水膨張性樹脂5によって吸水される。これによって、水膨張性樹脂5は膨張し、水等の進入路を閉鎖するため、水等の浸入が抑制され、シンク3の腐食、錆びの発生が確実に抑制される。
【0026】
図3は、本発明のキッチンカウンター構造の別の実施形態を例示した断面図である。図1と共通する部分には、同一の符号を付し、以下では説明を省略する。
【0027】
シンク3の上端外周には、略水平なフランジ部31が設けられている。フランジ部31と、カウンター2の開口部21の内周縁22とが対向配置され、相互の間には、常温硬化型樹脂41が充填された目地部4が形成されている。フランジ部31の裏面(外周面)には、目地部4との当接部7に水膨張性樹脂5が埋設されている。このため、フランジ部31と目地部4との間の当接部7へ進入した水等は水膨張性樹脂5によって吸水される。これによって、水膨張性樹脂5は膨張し、水等の進入路を閉鎖するため、水等の浸入が抑制される。したがって、シンク3の腐食、錆びの発生が確実に抑制される。
【0028】
また、図3に例示した形態のキッチンカウンター構造を形成する場合には、図2で示した方法と同様の方法を採用することができる。具体的には、フランジ部31の裏面(外周面)に水膨張性樹脂5を固着し、カウンター2の開口部21の内周縁22との間の隙間に常温硬化型樹脂41を充填することができる。これによって、水膨張性樹脂5を内包する目地部4を形成すると同時に、カウンター2とシンク3とが接合、固着される。
【0029】
本発明のキッチンカウンター構造およびキッチンカウンター構造の形成方法は以上の形態に限定されることはない。例えば、フランジ部の形状や水膨張性樹脂の配設位置等は適宜設計することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 キッチンカウンター構造
2 カウンター
21 開口部
22 内周縁
3 シンク
31 フランジ部
31a 水平部
31b 折り返し片
4 目地部
41 常温硬化型樹脂
5 水膨張性樹脂
7 当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が設けられたカウンターと、上端外周にフランジ部を備え、前記カウンターの開口部に装着されている金属製のシンクとを有するキッチンカウンター構造であって、
前記カウンターの開口部の内周縁と前記シンクのフランジ部とが対向配置され、相互の間には、常温硬化型樹脂が充填された目地部が形成されているとともに、目地部とフランジ部との当接部には、水膨張性樹脂が埋設されていることを特徴とするキッチンカウンター構造。
【請求項2】
前記フランジ部は、水平部と、この水平部の端部から下向きに延びる折り返し片とを有し、この折り返し片の外周面の上端部より下方に水膨張性樹脂が固着されて埋設されていることを特徴とする請求項1に記載のキッチンカウンター構造。
【請求項3】
開口部が設けられたカウンターと、上端外周にフランジ部を備え、前記カウンターの開口部に装着されている金属製のシンクとを有するキッチンカウンター構造の形成方法であって、
(1)前記シンクのフランジ部の外周面に水膨張性樹脂を固着する工程と、
(2)前記カウンターの開口部の内周縁と前記フランジ部とが隙間を介して対向するように前記カウンターの開口部に前記シンクを収納し、前記隙間に常温硬化型樹脂を充填して、前記水膨張性樹脂を内包する目地部を形成する工程とを含むことを特徴とするキッチンカウンター構造の形成方法。
【請求項4】
前記フランジ部は、水平部と、この水平部の端部から下向きに延びる折り返し片とを有し、前記工程(1)において、前記折り返し片の外周面の上端部より下方に水膨張性樹脂を固着することを特徴とする請求項3に記載のキッチンカウンター構造の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−196343(P2012−196343A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63166(P2011−63166)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】