説明

キッチン水栓装置

【課題】 キッチン水栓装置を利用する人が、差出す被洗浄物によっては水が出ない状態になる。
【解決手段】 本発明では、カウンターの配置された側のシンクに電波センサを配置し、シンク内部の電波センサ近傍と、キッチン水栓装置の吐水口近傍とに検知エリアを配置し、その間に給水を禁止する禁止エリアを設け、キッチン水栓を利用する際の手を差出す行為と、手を洗う行為を分割し、二つの検知エリアが、それぞれの行為に対応する被検知体を検知してキッチン水栓装置から給水を行う。また禁止エリアが検知エリア間にあるため、水を必要としない行為に対して速やかに給水を停止することができるキッチン水栓装置を提供することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば公衆トイレの手洗い場や、家庭の洗面化粧台や、キッチンに備えている水栓装置に関し、利用者の手又は利用者が保持する被洗浄物あるいはコップを検知して、水栓装置からの吐止水を制御する手洗い装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手洗い後の濡れた手で水栓装置を触りたくなかったり、調理器具や食材等を持ち、手のふさがった状態だったりした時に、水栓装置の蛇口を操作することなく自動的に吐水を開始できる自動水栓装置があり、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、台所流し台に二種類の検知センサを配置し、手洗いだけでなく食器洗い時に洗浄中以外の食器を検知し続けて、洗浄終了後にも流しっぱなしになることを防ぐシステムを開示している。
【0004】
【特許文献1】特開平4−83027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載された従来技術は、台所流し台において、人体や食器等の物体を検知すると弁が開き、吐水口から水道水が供給されるシステムになっている。また、物体検知の為に、吐水口近傍領域と広範囲領域の2個のセンサを配設しているため、広範囲検知用センサで食器や調理器具を検知しても、一定期間吐水口近傍の人体を検知しない場合は、水道水の供給を停止できる、使い勝手の良いシステムになっている。
【0006】
しかしながら、検知手段に発光・受光素子を用い、投光素子から放射された赤外線が被検知体からの反射した一部の量を受光素子が検知する構成になっている為、被検知体である食器や調理器具の材質や色によっては検知できない物が発生する。例えば、フライパンのような黒色の物や、透明性のコップでは、発光素子から投光される赤外線が吸収又は透過するため、受光素子に反射光が届かない為、結果的にこのような材質の被検知体は、吐水口近傍に差し出しただけでは、水道水の供給が行われないことになる。
【0007】
また、近年では、洗面ボール(または流し台のシンク)や水栓金具は、インテリアとの調和を考慮され、いろんな形が提案されており、従来の上方から真下に向かって水道水を供給していた水流の軌跡だけではなく、斜め上方や前方に向かって吐水するなど様々な放物線を有している。一方で、利用者は、水栓装置の形状に関係なく吐水口下方に向かって手を差し出すため、検知手段が被検知体を検知するエリアと利用者が洗浄物や手を差し出すエリアが一致せず、水道水の供給が行われなかったり、一旦吐水を開始し水を利用している状態にもかかわらず、利用中に止水してしまうことがある。そのため、検知ポイントを探すために、被検知体を上下左右に謡動させる動作や吐水口の極近傍に近づける動作を行うことになり、使い勝手が悪く更には、所定の洗浄位置以外の場所で手洗いを行う為に、洗面ボール以外に洗浄水が飛散し、周辺を濡らして見苦しくなるという課題があった。
【0008】
従って、本発明の目的は、水栓装置を利用する人が、被洗浄物によらず、差し出した時に速やかに吐水が開始する使い勝手の良い手洗い装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の一態様によれば
送信波を発生する送信部と、
前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波及び透過波の少なくともいずれかを受信波として受信するアンテナと、
前記送信波と前記受信波との周波数成分の差を抽出し、差分信号を出力する差分回路と、
前記差分信号を増幅し、物体の有無を識別する検知部と、を有する高周波センサと、
水道水を供給する吐水部と、
前記吐水部からの吐止水を切り替えるバルブと、
前記検知部から出力される検知信号に基づいて前記バルブの開閉を制御する制御部と、
前記吐水部から吐水される水道水を受けるシンクと、
前記シンクに隣接したカウンターを有するキッチン水栓装置であって、
前記制御部は独立した2つの検知エリアからえられた検知情報に基づいて、前記検知部から出力される検知信号に基づき前記バルブの開閉制御を行うものであり、
前記アンテナは、前記吐水部に向かって電波を放射するように前記カウンターが配置された側のシンク側面に設置され、
前記2つの検知エリアの間には被検知体を検知しても前記バルブの開閉制御を行うことを禁止する禁止エリアがあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、利用者が水栓装置を利用する際に手を差し出す位置に迷うことの無い使い勝手の良い手洗い装置を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明にかかる手洗い装置の実施の形態を図面により詳細に説明する。
(第1の実施例)
【0012】
図1(a)に手洗い装置の第1の実施例の概観図を示し、図1(b)に図1(a)の上視図を示し、図1(c)に図1(b)のA視断面図を示す。また、図2に制御ブロック図を示す。
【0013】
図1に示す手洗い装置10は、水道水を供給するための水栓装置1と、水栓装置1から吐水される水を受ける陶器性の洗面ボウル2と、洗面ボウル2の内部に利用者の手やコップや雑巾等の被洗浄物である被検知体が侵入してきたことを検知する電波センサ3と、水栓装置1からの吐止水を切替えるバルブ部4と、電波センサ3からの信号に基づき、バルブ部4のon,offを制御する制御部5とで構成されている。ここで、電波センサ3は、利用者が洗面ボウル2に接近する際に対面する側である前側に配設されている。
【0014】
手洗い装置10は、二つの検知エリアを有しており、第一検知エリアaは、洗面ボウル2の内面の前側であり、電波センサ3の近傍に設定されており、第ニ検知エリアbは、水栓装置1から吐水される水の軌跡と洗面ボウルのあふれ面との交差する点近傍に設定されている。
電波センサは、水あるいは金属に対して反射するため、被検知体の素材によらず検知することができ、第一検知エリアaでは、利用者の手などの被洗浄物が侵入されると、電波センサ3が被検知体を検知して、その結果が制御部5に転送され、制御部5がバルブ部4を開動し、水栓装置1から水道水を吐水する。したがって、第一検知エリアaは、スイッチ機能を有しているエリアであり、利用者が手を差し出しやすいように洗面ボウル2の手前の端部2aにマーカー6を釉薬を用いて設けた方が使いやすく、他の方法としては、樹脂製やガラス製の可視光を透過する素材で洗面ボウル2を形成し、内部にLED等の発光部材を点灯させて利用者の洗浄行為を誘導してもよい。また、第ニ検知エリアbは、水栓装置1からの給水を継続するか、止水に切替えるかを識別するための自動止水機能を有しているエリアであるが、第一検知エリアaにて利用者の存在を検知し、水栓装置1から吐水を開始した時はじめて第二検知エリアbの検知情報に基づいてバルブの開閉を制御するように設定されているため、利用者が給水開始前に直接このエリアに手を差出したり、物を洗面ボウルに置くための行為や洗面ボウルに置かれたものを取り上げる行為に対しては、水栓装置1から水道水を供給することはない。また、この第ニ検知エリアbから水道水の供給を継続する検知信号が得られた場合でも第一検知エリアaから給水を禁止する検知信号が得られた場合には、給水を禁止するようになっている。また、給水中に第一検知エリアaにおかれた物を検知しつづけて水を出しっぱなしにすることがないように電波センサ3はプログラミングされている。詳細の制御フローについては、後述する。
【0015】
次に、図2を用い検知手段である電波センサ3の説明をする。
電波センサ3は、電波を生成する発振回路11と、発振回路11で生成された電波を被検知体に送信し、被検知体からの反射電波を受信する送受信一体のアンテナ12と、アンテナ12からの受信信号により被検知体の有無を判断する検知部13と、で構成されている。尚アンテナ12は、送受信別体でも構わないが、本発明においては、洗面ボウル2の内部に設置するために、小型化を優先し一体にしている。このように、電波センサ3から放射される電波は、洗面ボウル2の材料が金属以外であれば透過することができ、また、水滴や水垢等の汚れに対しても電波の透過量が依存することもないために、赤外線センサや超音波センサや静電容量センサ等他のセンシング方式では、設置できない汚れる可能性のある洗面ボウル2の手前側に配設することができる。
この検知部13は、発振回路11からのローカル信号と、アンテナ12からのRF信号をミキシングするミキサ部14と、ミキサ部14で抽出したドップラー信号を低倍率で増幅する低増幅部15と、高倍率で増幅する高増幅部16との双方を通過させ、それぞれの通過後の信号を周波数解析または所定の周波数のみを通過させる周波数変換部17とで、構成されている。周波数変換部17は、ソフト処理しても、電気回路で構成しても良いが、本発明では、ソフト処理を用いている。また、周波数変換部17で行われる周波数解析は、FFT解析を用いても良いが、本発明においては、複数の帯域に分けたフィルターを有し、それぞれのフィルターを通過後の波形の有無により実施している。以下このフィルターを用いた信号処理について説明をする。
【0016】
次に図3に示すフローチャートと、図4,図5に示すドップラー信号の波形と、を用い、検知部13で行う水栓装置1からの吐止水の制御フローについて説明する。
【0017】
最初にS01にて検知部13は、低増幅部15からの信号を抽出し、その後S02にて周波数変換部17で10Hz以下のローパスフィルタを通過させた時の信号Vsの極大値と極小値がVs>V1または、Vs<V2になるかを判定している。この時に図4(b)のようなドップラー信号が発生すると、第一検知エリアaに利用者の手が入ってきたと検知部13が判断でき、S03にて検知部13から制御部5にバルブ部4を“on”する命令が行われ、バルブ部4が開動し、水栓装置1から洗面ボウル2に向かって水道水を供給する。このとき、低増幅率は、電波センサ3の送信強度と、アンテナ12のアンテナゲインと、洗面ボウル2における電波の減衰量にも関係するが、放射する電波量を10mW以下にした場合、10倍以下に設定している。従って、第一検知エリアaにて止まるか、あるいはかざす手の動きを閾値V1または、V2との対比で識別し検出することができ、一方、洗面ボウル2に物をおく動きや、物を取り上げる動きは、検知信号Vsが小さくV1を超えたり、V2を下回ることがないため、電波センサ3は、利用者が水栓装置1を利用するための動作ではないと判断し、水栓装置1から水道水を供給することはない。また、洗面ボウル2の上方を通過して水栓装置1の奥側のコップを取る動作だったり、水栓装置1を清掃する動作更には、コップの水を排水する水流の速度は、10Hz以上の速い動きであることから、10Hz以下のローパスフィルタでは検知信号Vsがほとんど振幅がないため、検知部13は手が侵入された動きではないと判断し、止水を確保することができ、誤吐水のない手洗い装置を提供することができる。このように水栓装置を利用するために水栓装置に向かって、減速する速度変化や止まる寸前のゆっくりした動きをドップラー信号から識別することで、適時に水道水の供給を開始することができる。手洗い装置に向かって手が減速する速度変化をより確実に取る為に、例えば、周波数変換部に15〜50Hzの帯域のバンドパスフィルターを設けておき、最初にこのバンドパスフィルターに所定の閾値を設け、得られるドップラー信号がそれ以上となったことでで被検知体である手を検知した後に、上記のように周波数変換部にて10Hz以下のローパスフィルターの信号を抽出すると、減速する動きとして確実に検知できて良い。
【0018】
次に、検知部13は、S04にて利用者が第一給水エリアaから水道水に対して水を差し出すまでの移動時間の間、水の利用の有無にかかわらず必ず水道水を出し続けるように、1秒間タイマー1(T)にてカウントする。この時間は、手洗い装置10が取付けられる場所例えば、福祉施設や多目的トイレでは、利用者の比較的ゆっくりした動きに合わせて長めに設定したり、駅,サービスエリア,空港など利用者の往来が激しく,移動速度が速い場合には、短めにするなど任意に変更できるように外部スイッチ(図示せず)を用いて調整できるようにしても良い。次に、S05にて検知部13は、第ニ検知エリアbにおける利用者の洗浄状態を識別するために、高増幅部16からの信号を抽出し、その後S06にて周波数変換部17で1Hz以上のハイパスフィルタを通過させた時のドップラー信号Vsが、Vs>V5あるいはVs<V6になるかを判定している。この時に図5(a)のような大きな振幅を有する波形を得た場合には、利用者の手または指先で飛散した水道水の水流に基づくドップラー信号を示しており、検知部13は、バルブ部4を“on”状態で継続する。しかし、図5(b)に示すVsの極大値と極小値が、V3<Vs<V5または、V4<Vs<V6となった場合は、利用者が手洗い動作を終了し、水栓装置1水から供給される水だけの水流状態にあることを示しており、S07にて検知部13から制御部5にバルブ部4を“off”する命令が行われ、バルブ部4が閉動する。ただし、図5(c)に示す、V4<Vs<V3の場合は、水栓装置1から供給された水をコップ等の器に水を汲んでいる状態の水面の揺らぎを検知していることを示しており、検知部13は、バルブ部4を“on”状態で継続する。その後、コップから水があふれると、コップの周辺にて飛散する水からの反射電波に伴うドップラー信号を得る為、図5(b)のような振幅強度となり、検知部13は、S07にてバルブ部4を“off”にする。
【0019】
検知部13のS06におけるバルブ部4の止水制御の別の方式を図1と図6,図7のドップラー信号を用いて説明する。図6(a)は、図5(b)と同じ波形であり、利用者が手を第ニ検知エリアにて水に対して差し出し、手を洗浄している時の手の表面で飛散する水からの電波の反射信号を、検知部13内の高増幅部16を通過し、周波数変換部17で1Hz以上のハイパスフィルターを通過した後のドップラー信号波形である。一方、図6(b)は、手洗い終了後に、利用者が図1に示す給水を禁止する禁止エリアcにて水きり行為を行っている状態の時の高増幅部16を通過後、周波数変換部17で1Hz以上のハイパスフィルターを通過したドップラー信号波形である。従って、新たに閾値V7,V8を設け、図6(b)のドップラー信号の波形を得た時に、ドップラー信号Vsの極大,極小値がVs>V7,またはVs<V8になると検知部13は、制御部5にバルブ部4が閉動するよう命令するとよい。このように水道水を供給中に洗浄動作以外の動作を識別する為に、極大の信号波形を識別する閾値V7,V8を設けることで、第ニ検知エリアbを電波センサ3の給水を継続する検知エリアに設定し、第一検知エリアaを含むそれ以外の手前側のエリアを給水を禁止する禁止エリアに設定できるため、水栓装置利用後に速やかに手洗い装置の止水制御が可能になる。手洗い動作に関して説明してきたが、手のほかに調理器具や歯ブラシや雑巾等洗浄中も同じことが言え、被検知物上で発生する水流変化に伴うドップラー信号と、水流のみのドップラー信号とを比較することにより、使用中か仕様終了かを判断でき、水道水の供給を適時に行える。
【0020】
また、図7(a)は、図4(a)と同じ波形であり、利用者が図1に示す第一検知エリアに手を差し出し、電波センサ3の上方空間に手が止まる状態を検知部13内の低増幅部15を通過後、周波数変換部17で10Hz以下のローパスフィルターを通過したドップラー信号波形である。一方、図7(b)は、利用者が禁止エリアcに手を差出した状態の時の低増幅部15を通過後、周波数変換部17で10Hz以下のローパスフィルターを通過したドップラー信号波形である。
図1(c)に示すように、電波センサ3は、洗面ボウル2の端部2aから水栓装置1に向かって電波ビームを放射しているため、第一,第ニ検知エリアとその間に存在するエリア内に被検知体を検知してもバルブの制御を禁止する禁止エリアのどれかに被検知体が存在すれば、それを検知することができるが、前記のような検知部13の制御を行うことにより、水栓装置1が止水中は、第一検知エリアaにおける被検知体を検知した時のみバルブ4をonして給水状態にし、水栓装置1が給水中は、第ニ検知可能エリアbにおける被検知体を検知した時のみ給水状態を継続することになり、電波ビーム内に複数の検知エリアとその間に給水を禁止する禁止エリアが実現でき、上述のように利用者にとっては、洗面ボウル2に落としたものを取り上げるような水を出したくない時や、前記のような洗面ボウル2の手前側で電波センサ3と第ニ検知エリアbとの間にて水きり行為やあるいは、コップ内の水を廃棄する行為などがあった場合にも速やかに止水することができる。
【0021】
尚、本発明では、電波センサ3で得られる位相干渉波に伴うベース電位の変動の影響を受けないように高増幅回路16の後段には、出力信号に直列に容量素子を挿入し、バイアス電位をカットする目的と、飛散する水と、コップに汲まれる水面と、水流のみとの水流変化を確実に識別する為に、1Hz以上のハイパスフィルターを構成したが、送信する電波強度を大きくしたり、アンテナゲインを上げるなどし、手洗い中とコップ水汲み中と洗浄終了との水流変化がドップラー信号の振幅強度として得られる時には、信号変換部17を用いず、高増幅部16の通過後の信号に対して、閾値を設定し、S06で行ったように閾値との比較によって吐水の継続か止水かを判断しても良い。その場合は、容量素子による時間遅れが生じないため、利用者の動作に対して即座にバルブ部4のon,offを切替えることができ、高速応答性を有する手洗い装置を提供することが可能になる。また、高増幅部16の倍率は、水流の軌跡により、電波センサ3に近い場合には低く、遠い場合には高くする必要があり、500〜2000倍の倍率から任意に選択すると、図5に示すように容易に利用者の状態を水流の変化を用いて判断することができる。このようにハイパスフィルタを用いることで、利用者の手の動きとは異なる比較的速度の速い水流の変化を容易に認識することができる。また、電波を受信する面積による電波の反射量が異なる二つの検知対象物である手の動きと水流の変化とを検知するのに最適な増幅率を用いて検知部が検知あるいは非検知を判断するため、利用者の二つのアクションを見逃すことなく検知できたり、止水中に洗面ボウルに入る手の動きを見るための増幅率に低減しているため、洗面ボウル内の水流では反射面積が小さく、受信信号を得ることができず、廃棄された水を検知しない。また、吐水中は、水流検知用に増幅率を上げているため、電波センサと被検知体までの距離が小さいために発生する特大の反射信号に対しては、電波センサ近傍に物が置かれたか、人が寄りかかっていることか等、洗浄中の行為とは違いことを識別できるため、水をだしっぱなしにすることなのない手洗い装置を提供することができる
【0022】
以上のように、洗面ボウル2の手前側近傍に第一検知エリアaを設け、操作スイッチとして利用すると、“水栓装置1から水をだす”という行為に専念できる。その結果、水栓装置1から水道水が供給され、次の行為である第ニ検知エリアbにおいて、水栓装置からの水に対して手を差出すことが可能になり、この時も“手を差出す”ことだけに集中することができる。従って、利用者は、前記二つのアクションを分別して行うことができるため、差出す位置を迷うことなく確実に手を洗うことができる。一方、手洗い装置10としてもそれぞれの行為を検知部13にて確実に検知することができ、使用開始や使用中に水が出なかったり、給水を停止することが無い。
このように利用者の行為を二つの検知エリアに分けて利用いただくと、第ニ検知エリアbにて水をご利用いただく際の、洗浄位置が人の姿勢・身長に係わらず、第一検知エリアaと同じ高さに差出される為、その洗浄位置にあわせて、水跳ねしないような泡沫状の水流を水栓装置1から供給するよう泡沫キャップをつけたり、洗面ボウル2のその位置に対応する面積を広くして、飛散水が洗面ボウル2から飛び出さないことをすることにより、使い勝手が更に向上すると共に、清潔性を維持することができる。尚、これまで手洗い行為を想定した説明を行ってきたが、歯ブラシを洗浄したり、コップに水を汲む行為も同様に、それぞれ水を利用したい物を持つ手が第一給水エリアaに入ったかどうかを識別し、第ニ検知エリアbでは、コップ内の水流変化または歯ブラシ上に飛散する水流変化を検知部で識別する為、吐水の継続か止水かを利用者の行為に合わせて見極めることができる。更に、検知エリアを分けただけではなく、第一検知エリアで検知した後に、第ニ検知エリアだけを検知領域としている為、水を出す行為以外である、例えば洗面ボウルに物を置く行為や、洗面ボウルに置いてある物を取り出す行為に関しては第一検知エリアで検知せずに、第ニ検知エリアに利用者の手が進入することになるため、止水状態から給水状態に移行することなく使い勝手の良い水栓装置を提供することができる。
【0023】
(第2の実施例)
図7(a)にキッチン水栓装置に手洗い装置を組み込んだ第2の実施例の概観図を示し、図7(b)に図6(a)のB視断面図を示す。
【0024】
キッチン水栓装置50は、手洗い装置30と、料理作業台31と、コンロ(図示せず)と、前面パネル32で構成されている。また、手洗い装置30は、水道水を供給するための水栓装置21と、水栓装置21から吐水される水を受けるシンク22と、シンク22の内部に利用者の手や包丁やまな板等の調理器具や、食材等の被洗浄物である被検知体が侵入してきたことを検知する電波センサ23と、水栓装置21からの吐止水を切替えるバルブ部24と、電波センサ23からの信号に基づき、バルブ部24のon,offを制御する制御部25とで構成されている。ここで、電波センサ23は、カウンターの配置された側のシンク22の側面であり、シンクの外側(料理作業台31の下方側)に隠蔽された状態で設置されている。
【0025】
手洗い装置30は、二つの検知エリアを有しており、第一検知エリアdは、シンク22の内面の料理作業台31側の電波センサ23の近傍に設定されており、第ニ検知エリアeは、水栓装置21から吐水される水の軌跡と洗面ボウルのあふれ面との交差する点近傍に設定されている。
第1の実施例同様、第一検知エリアdでは、利用者の手などの被洗浄物が侵入されると、電波センサ23の検知部(図示せず)は、制御部25にバルブ部24を開動するための命令を行い、水栓装置21から水道水を吐水するため、スイッチ機能を有したエリアとなっている。尚、この第一検知エリアdは、シンク22の壁面にあるため、作業台の前からシンク22を横切って水栓装置21を利用する場合に便利であり、また利用者がシンクの前に立った際にもシンク22の奥まで手を差出すことなく水道水の供給を開始することができるため使いやすい。更に使い勝手を向上させるには、利用者が手を差し出しやすいように調理作業台31の上面とシンク22の側面22aにマーカー26を設けた方がよりよい。このマーカー26は、利用者が慣れるまでの間、取外し可能なシールタイプの物であれば、キッチン水栓装置50がシンプルに構成できて良いし、調理作業台31が、樹脂製やガラス製の可視光を透過する素材で形成している場合は、内部にLED等の発光部材を点灯させて利用者の洗浄行為を誘導してもよい。また、第ニ検知エリアeでは、水栓装置21からの給水を継続するか、止水に切替えるかを識別するための自動止水機能を有しているエリアである。
【0026】
電波センサ23の構成、及び電波センサ23の検知部の制御フローは第一実施例と同様につき省略する。なお、電波ビームは、利用者の手や水の他に金属製の素材に対しても反射する性質があるため、包丁やフライパンや鍋など、調理器具の色,形状,素材に関係なく検知することができ、第一検知エリアdに手をかざさなくても手にもつ被洗浄物をかざすだけで、水栓装置21から水道水を給水することができ、手がふさがっている状態や、作業台の前からシンク22を横切って水栓装置21離れた場所から操作することができ、便利である。
【0027】
また、第1の実施例同様、電波センサ23は、カウンターの配置された側のシンク22の側面22aから水栓装置21に向かって電波ビームを放射しているため、第一,第ニ検知エリアとその間に存在する給水を禁止する禁止エリアのどれかに被検知体が存在すれば、それを検知することができるが、水栓装置21が止水中は、第一検知エリアdにおける被検知体を検知した時のみバルブ部24をonして給水状態にし、水栓装置21が給水中は、第ニ検知可能エリアeにおける被検知体を検知した時のみ給水状態を継続することになり、電波ビーム内に複数の検知エリアとその間に禁止エリアfが実現でき、利用者にとっては、シンク22に落としたものを取り上げたり、シンク22に調理器具を置くだけの行為など水を出したくない時や、作業台の前から包丁などの調理器具を洗浄した後の残水を切るような行為をした際にも、第1の実施例同様周波数変換部からの信号波形または、高増幅部通過後の信号波形と閾値を比較することにより、止水を行うことができ、利用者の水を必要とする要求に応じたタイミングで吐止水制御が可能な使い勝手の良い手洗い装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施例を説明する図である。
【図2】電波センサのブロック図である。
【図3】検知部の制御フローを示す図である。
【図4】検知部で得られるドップラー信号波形を示す図である。
【図5】検知部で得られるドップラー信号波形を示す図である。
【図6】検知部で得られるドップラー信号波形を示す図である。
【図7】検知部で得られるドップラー信号波形を示す図である。
【図8】第2の実施例を説明する図である。
【符号の説明】
【0029】
1,21、 水栓装置
2、 洗面ボウル
3,23、 電波センサ
4,24、 バルブ部
5,25、 制御部
10,30、手洗い装置
発振回路
アンテナ
検知部
ミキサー部
低増幅部
高増幅部
周波数変換部
22、 シンク
キッチン水栓装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を発生する送信部と、
前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波及び透過波の少なくともいずれかを受信波として受信するアンテナと、
前記送信波と前記受信波との周波数成分の差を抽出し、差分信号を出力する差分回路と、
前記差分信号を増幅し、物体の有無を識別する検知部と、を有する高周波センサと、
水道水を供給する吐水部と、
前記吐水部からの吐止水を切り替えるバルブと、
前記検知部から出力される検知信号に基づいて前記バルブの開閉を制御する制御部と、
前記吐水部から吐水される水道水を受けるシンクと、
前記シンクに隣接したカウンターを有するキッチン水栓装置であって、
前記制御部は独立した2つの検知エリアからえられた検知情報に基づいて、前記検知部から出力される検知信号に基づき前記バルブの開閉制御を行うものであり、
前記アンテナは、前記吐水部に向かって電波を放射するように前記カウンターが配置された側のシンク側面に設置され、
前記2つの検知エリアの間には被検知体を検知しても前記バルブの開閉制御を行うことを禁止する禁止エリアがあることを特徴とするキッチン水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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