キトサンのような親水性ポリマー構造から形成された抗微生物バリア、系及び方法
キトサン生物材料を含む構造からなる抗微生物バリア。この抗微生物バリアは、例えば(i)組織傷害、組織外傷又は組織接触の部位の止血、密封又は安定化;又は(ii)抗微生物バリアの形成;又は(iii)抗ウイルスパッチの形成;又は(iv)出血障害における介入;又は(v)治療薬の放出;又は(vi)粘膜表面の治療;又は(vii)これらの組み合わせのような使用が可能である。抗微生物バリアの構造は圧縮により稠密化される場合がある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、米国第11/020,365号(2004年12月23日出願、発明の名称“Tissue Dressing Assemblies,Systems and Methods formed from Hydrophilic Polymer Sponge Structures such as Chitosan”)の一部継続出願であり、この米国出願は、米国第10/743,052号(2003年12月23日出願、発明の名称“Wound Dressing and Method of Controlling Severe Life−Threatening Bleeding”)の一部継続出願であり、この米国出願は、米国特許法施行規則第371条の下で国内段階移行された国際出願番号PCT/US02/18757(2002年6月14日出願)の米国第10/480,827号(2004年10月6日提出、発明の名称“Wound Dressing and Method of Controlling Severe Life−Threatening Bleeding”)の一部継続出願であり、このPCT出願は、米国仮特許出願第60/298,773号(2001年6月14日出願)の優先権を主張する。これらの出願は、本明細書中で参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ガーゼ包帯による連続した圧力印加は、依然として出血、特に重度の出血のある創傷からの出血を止めるために使用される一次的な介入技法となっている。しかし、この手技は重度の出血の止血には効果的でも安全でもなく、依然として創傷からの重度の致命的出血における大きな生存上の問題となっている。
【0003】
現在、コラーゲン創傷包帯又は乾燥フィブリントロンビン創傷包帯又はキトサン及びキトサン包帯のような止血包帯が使用可能であるが、そのような包帯は高血流への溶解に対して十分な耐性を備えていない。これらは又、重度の出血の止血における実用的な目的を果たすのに十分な接着特性も備えていない。これらの現在使用可能な外科的止血包帯は損傷しやすいため、屈曲や圧力の負荷により損傷を受けると機能しなくなる。又、これらは出血性の血液に溶解しやすい性質を有する。これらの包帯のこのような溶解及び損壊は、創傷への接着力を喪失し、出血が止まらずに続くことがあるため、悲惨な結果をもたらす場合がある。
【0004】
出血を十分に防止及び制限すると同時に、創傷又は患部並びにその周囲における細菌感染を防止する際には注意が必要である。現在の包帯はこのような感染の蔓延を十分防止せず、又このような感染を治療していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
使用時の溶解に耐える頑健性及び持続性を有する、細菌感染の治療に有用な止血包帯の改良が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明はキトサン生物材料を含む構造から形成した抗微生物バリア、系及び方法を提供する。抗微生物バリアは、例えば、(i)組織傷害、組織外傷又は組織接触の部位の止血、密封又は安定化;又は(ii)抗微生物バリアの形成;又は(iii)抗ウイルスパッチの形成;又は(iv)出血障害における介入;又は(v)治療薬の放出;又は(vi)粘膜表面の治療;又は(vii)これらの組み合わせのような使用が可能である。
【0007】
一実施形態において、抗微生物バリア構造は、望ましくは圧縮により稠密化される。
【0008】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の説明、図面及び請求項に基づいて明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(好ましい実施形態の説明)
本開示内容の理解を容易にするため、網羅される主題分野を以下の一覧に概説する。
【0010】
(説明する主題分野の一覧)
(I.抗微生物バリアパッドアセンブリ)
A.概要
1.組織包帯母材
2.裏打材
3.パウチ
B.抗微生物バリアパッドアセンブリの使用(実施例1)
C.組織包帯パッドアセンブリの製造
1.キトサン溶液の調製
2.キトサン水溶液の脱気
3.キトサン水溶液の凍結
4.キトサン/氷母材の凍結乾燥
5.キトサン母材の稠密化
6.裏打材の固定
7.パウチ内への封入
8.最終滅菌
D.親水性ポリマー構造の適合性特性の改変
1.制御された微小破壊
2.制御された微小構造(実施例2)
3.制御された垂直チャンネル形成
(II.組織包帯シートアセンブリ)
A.概要
B.組織包帯シートアセンブリの使用
C.組織包帯シートアセンブリ(実施例3及び4)の製造
(III.親水性ポリマー構造の更なる適応及び構成)
A.抗微生物バリア(実施例5及び6)
(IV.結論)
本明細書の開示内容は、当業者が本発明を実践できるように詳述されており、正確であるが、本明細書に開示する物理的な実施形態は、単に他の特定の構造において具現化される本発明を例示するにすぎない。好ましい実施形態を記載しているものの、詳細は、請求項に定義される本発明を逸脱しない範囲で、変更される場合がある。
【実施例】
【0011】
(I.組織包帯パッドアセンブリ)
(A.概要)
図1には、抗微生物バリアパッドアセンブリ10を示す。抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、使用時において血液若しくは体液又は水分の存在下において組織に接着することができる。抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、出血、体液浸出若しくは漏出、又はその他の形態の体液の喪失に対して、組織傷害、組織外傷又は組織接触(例えばカテーテル又は栄養管)の部位の止血、密封及び/又は安定化のために使用できる。処置する組織の部位には、例えば動脈及び/又は静脈の出血、又は裂傷、又は流入/刺入創、又は組織穿孔、又はカテーテル挿入部位、又は熱傷、又は縫合が含まれてもよい。抗微生物バリアパッドアセンブリ10は又、望ましくは抗細菌及び/又は抗微生物及び/又は抗ウイルスの保護バリアを、組織処置部位及びその周囲に形成してもよい。
【0012】
図1は、抗微生物バリアパッドアセンブリ10の使用前の状態を示す。図2に最もよく示されている通り、抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、組織包帯母材12及び組織包帯母材12の一方の面に積層する裏打材14を含む。望ましくは、組織包帯母材12及び裏打材14は、異なる色、構造を有するか、又はその他の点において視覚的及び/又は触覚的に区別されることにより、介護者による識別を容易にする。
【0013】
抗微生物バリアパッドアセンブリ10の大きさ、形状及び構成は、所期の用途により異なってもよい。パッドアセンブリ10は、直線的、伸長化、円形、丸型、楕円、又はそれらの複合物又は組み合わせであってもよい。望ましくは、後述する通り、パッドアセンブリ10の形状、大きさ及び構成は、使用時又は使用前に切断、屈曲又は成型することにより形成してもよい。図1には、外出血又は体液の喪失の応急的制御のために極めて有用な抗微生物バリアパッドアセンブリ10の代表的な構成を示す。例として、その大きさは10cm×10cm×0.55cmである。
【0014】
(1.組織包帯母材)
組織包帯母材12は、好ましくは低弾性の親水性ポリマー母材、即ち、後述する通り、後の稠密化プロセスにより稠密化されている、本来は「圧縮されていない」組織包帯母材12から形成される。組織包帯母材12は、好ましくは血液、体液又は水分の存在下で反応して強力な接着剤又は糊材となるような生体適合性物質を含む。望ましくは、組織包帯母材は又、その他の利益となる属性、例えば抗細菌及び/又は抗微生物抗ウイルス特性、及び/又は傷害に対する身体の防御反応を加速するかその他の態様で増強する特性を有する。
【0015】
組織包帯母材12は、親水性ポリマーの形態、例えばポリアクリレート、アルギネート、キトサン、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラギーナン、第4アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、変性セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナン、又はこれらの組み合わせを含む場合がある。澱粉は、アミラーゼ、アミロペクチン、及びアミロペクチンとアミラーゼの組み合わせのものとなる場合がある。
【0016】
好ましい実施形態において、母材12の生体適合性ポリマーは、非哺乳類材料を含み、これは最も好ましくはポリ[β−(1→4)−2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコピラノースであり、より一般的にはキトサンと呼ばれる。母材12のために選択されるキトサンは、好ましくは少なくとも約100kDa、より好ましくは少なくとも約150kDaの重量平均分子量を有する。最も好ましくは、キトサンは少なくとも約300kDaの重量平均分子量を有する。
【0017】
母材12を形成するに当たり、キトサンは、望ましくは酸、例えばグルタミン酸、乳酸、ギ酸、塩酸及び/又は酢酸と共に溶液中に入れられる。これらの中でも塩酸及び酢酸が最も好ましいが、その理由は、キトサン酢酸塩及びキトサン塩化物が血液への溶解に対して耐性を備えているのに対して、キトサン乳酸塩及びキトサングルタミン酸塩は備えてないためである。より大きな分子量(Mw)のアニオンは、キトサン塩の擬似結晶構造を破壊して、構造に可塑化作用(柔軟性の向上)をもたらす。又残念なことに、これらのアニオンは、これらのより大きな分子量のアニオンの塩の急速な血液への溶解ももたらす。
【0018】
母材12の好ましい一形態は、キトサン酢酸溶液を凍結及び凍結乾燥することにより形成されている0.035g/cm3未満の密度の「非圧縮性」キトサン酢酸母材12を含み、次にこれは0.6〜0.25g/cm3の密度、最も好ましくは約0.20g/cm3の密度まで圧縮することにより稠密化される。このキトサン母材12は又、圧縮された親水性構造として特徴付けられる。稠密化キトサン母材12は、望ましいと思われる上記の特性の全てを示す。これは又、以下に詳述する通り、使用時の母材に頑健性及び持続性をもたらす特定の構造的及び機械的な利点を有している。
【0019】
キトサン母材12は、頑健性、透過性、高比表面積を備えた正帯電の表面を有する。正帯電表面は、赤血球及び血小板の相互作用に対して高い反応性を有する表面をもたらす。赤血球膜は負に帯電しており、キトサン母材12に誘引される。この細胞膜はキトサン母材12と接触すると、この母材と融合する。これにより血塊が極めて急速に形成されるため、止血に通常必要とされている凝血タンパク質がすぐに必要とならなくなる。このため、キトサン母材12は、正常な個体及び抗凝固処置された個体の両者に対してだけでなく、更には血友病のような凝固障害を有する者に対しても有効である。キトサン母材12は又、細菌、内毒素及び微生物とも結合し、細菌、微生物及び/又はウイルス体を接触時に殺傷することできる。
【0020】
キトサン母材12の構造、組成、製造及びその他の技術的特徴の詳細については後述する。
【0021】
(2.裏打材)
組織包帯パッドアセンブリは、介護者の指及び手により操作できる大きさ及び構成を有している。裏打材14は、流体反応性キトサン母材12から介護者の指及び手を隔離する(例えば図8を参照)。裏打材14は、介護者の指又は手に接着又は粘着することなく、組織部位におけるキトサン母材12の取扱い、操作及び適用を可能とする。裏打材14は、合成及び天然のポリマーの低弾性のメッシュ及び/又はフィルム及び/又は織布を含んでもよい。応急的に外傷に適用する好ましい実施形態において、裏打材14は、流体非透過性のポリマー材料、例えばポリエチレン(3M 1774Tポリエチレンフォーム医療用テープ、厚さ0.056cm)を含むが、その他の相当する材料を使用してもよい。
【0022】
応急的に創傷に適用する裏打材に好適なその他のポリマーには、セルロースポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセンポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルポリマー、ポリエステル、ポリアミド又はこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
内部創傷への適用の場合は、再吸収性の裏打材を親水性スポンジ包帯形態で使用される場合がある。好ましくは、このような包帯形態は、生体分解性を有する生体適合性の裏打材を使用する。生体分解性の合成材料には、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(β−ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリホスファゼン、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンコポリマー、及び上述のポリマーの合成に使用される単量体のコポリマー、又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。天然の生体分解性ポリマーには、キチン、アルギン、澱粉、デキストラン、コラーゲン及び卵白が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
(3.パウチ)
図3に示す通り、キトサン母材12は、望ましくは気密性のヒートシールされたホイル内張のパウチ16内に低水分含有量、好ましくは5%以下において、使用前に真空パッケージ化される。抗微生物バリアパッドアセンブリ10はその後、ガンマ線照射を使用することによりパウチ内で最終滅菌される。
【0025】
パウチ16は、使用時に介護者によって剥離開封されるように構成されている(図4及び5を参照)。パウチ16は、一端に抗微生物バリアパッドアセンブリ10を取り出す剥がし口がある。パウチ16の反対側の端部をつかんで引き離すと、抗微生物バリアパッドアセンブリ10が露出して使用できるようになる。
【0026】
(B.抗微生物バリアパッドアセンブリの使用)
パウチ16から取り出したら(図6を参照)、抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、すぐに標的組織部位へ接着できる状態となる。接着を促進する予備適用操作を行う必要はない。例えば、使用のために保護材を剥がして接着面を露出する必要はない。接着面はin situで形成されるが、その理由は、キトサン母材12自体が血液、流体又は水分と接触すると、強力な接着特性を発揮するためである。
【0027】
望ましくは、抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、パウチ16の開封から1時間以内に傷害部位に適用する。図7に示す通り、抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、部位の形状及び形態に合わせてその場で予め成形し適合させてもよい。図11及び12に示す通り、抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、他の構成、例えばカップ形状に意図的に成型することにより、処置部位の特定の形状及び形態に最適に合致させることができる。処置部位への適用前に抗微生物バリアパッドアセンブリ10を成形する又は他の態様により操作する間、介護者は手又は指の水分がキトサン母材12に接触しないようにしなければならない。これによりキトサン母材12が粘着性になり、取り扱いづらくなる。これが裏打材14の主要な目的であるが、裏打材14は又、母材に追加の機械的支持及び強度を与える。
【0028】
望ましくは、図8に示す通り、一定の圧力を少なくとも2分間加えることにより、キトサン母材12の本来の接着活性を生じさせることができる。キトサン母材12の接着強度は、印加する圧力の持続時間と共に増大し、これは最大約5分間とする。この時間にわたり抗微生物バリアパッドアセンブリ10に均等な圧力を加えることで、より均一な接着及び創傷治癒がもたらされる。Kerlixロール18(図9Aを参照)を使用して圧力を加えることが非常に効果的であることがわかっている。
【0029】
特有の機械的及び接着特性を有するため、複数の包帯パッドアセンブリを必要に応じて重ねて、創傷又は組織の部位を埋めることができる。その場合、1つのパッドアセンブリ10のキトサン母材12が、隣接する包帯パッドアセンブリ10の裏打材14に接着することになる。
【0030】
包帯パッドアセンブリ10は又、創傷組織部位の大きさに合わせてその場で引き裂くか切り取ってもよい(図10を参照)。良好な組織接着及び密封を行うには、創傷又は組織の部位よりも包帯パッドアセンブリ10の周囲を少なくとも半インチ大きくすることが望ましい。そして、より小さなパッチ片の包帯アセンブリをその場で切り取り(図11を参照)、先に適用したパッドアセンブリの周囲に埋め込み、接着させることにより、処置部位の形状及び形態に最適に適合させることができる。
【0031】
組織パッド包帯アセンブリが傷害部位に付着しない場合は、これを外して廃棄し、別の新しい包帯パッドアセンブリ10を適用する。深い組織面を有する、重度の組織破壊が見られる創傷、又は貫通している創傷においては、裏打材14を剥がしてキトサン母材12を創傷に埋め込み、第2の包帯で創傷を被うことが、極めて効果的であることがわかっている。
【0032】
2〜5分間圧力をかけた後、及び/又は創傷又は組織部位が良好に包帯で接着され、被覆されたことで出血を制御できたら、包帯を固定するため、及び創傷に対して清浄なバリアをもたらすために、第2の従来の包帯(例えばガーゼ)を適用することが望ましい。創傷が後に水中に浸水する場合は、防水被覆を適用することで包帯が過剰に水和しないようにすることが必要である。
【0033】
望ましくは、FDA通過の応急処置包帯形態の場合、完全な外科的修復を得るには、適用から48時間以内に抗微生物バリアパッドアセンブリ10を除去する。抗微生物バリアパッドアセンブリ10は創傷から剥がし取ることができ、一般的には単一の完全な包帯として創傷から分離する。場合によっては、残留するキトサンゲルが残存する場合があり、その場合は食塩水又は水を使用して、軽くこすり、ガーゼ包帯で除去することができる。キトサンは体内で生体分解性を有するため、分解されると無害のグルコサミンとなる。更に、応急処置包帯の場合は、完全な修復時に創傷からキトサンを全て除去することが望ましい。前述の通り、生体分解性の包帯は体内での使用のために形成されてもよい。
【0034】
(実施例1)
(使用活動報告)
アフガニスタン及びイラクにおける自由化作戦においてその期間中の衛生兵により作成された活動報告では、包帯パッドアセンブリが有害作用を伴うことなく良好な臨床的有用性を有することが明らかにされている。テキサス州フォートサムヒューストンの米国陸軍外科研究所は、重度の致命的出血を有する外傷モデルで包帯パッドアセンブリ10の評価を行い、この包帯を標準的な4×4インチの木綿ガーゼ包帯と比較した。その結果、抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、血液の喪失を有意に低減し、蘇生に使用する体液の必要性を低減した。1時間における生存率は、綿花ガーゼ適用の生存群よりも抗微生物バリアパッドアセンブリ10の適用群において増大した。衛生兵は、銃弾創傷、榴散弾、地雷及びその他の傷害を良好に治療できたが、従来の創傷包帯では不可能であった。
【0035】
(C.組織包帯パッドアセンブリの製造)
抗微生物バリアパッドアセンブリ10の作成のための望ましい方法を以下に記載する。この方法は図16に模式的に示す。当然ながら他の方法も使用できる。
【0036】
(1.キトサン溶液の調製)
キトサン溶液を製造するために使用するキトサンは、好ましくは0.78超0.97未満の脱アセチル化分数度を有する。最も好ましくは、キトサンは0.85超0.95未満の脱アセチル化分数度を有する。好ましくは、母材に加工するために選択するキトサンは、30rpmでスピンドルLVIを使用した場合に、1%(w/w)酢酸(AA)の1%(w/w)溶液中25℃において約100センチポイズ〜約2000センチポイズの粘度を有する。より好ましくは、キトサンは、30rpmでスピンドルLVIを使用した場合に、1%(w/w)酢酸(AA)の1%(w/w)溶液中25℃において約125センチポイズ〜約1000センチポイズの粘度を有する。最も好ましくは、キトサンは、30rpmでスピンドルLVIを使用した場合に、1%(w/w)酢酸(AA)の1%(w/w)溶液中25℃において約400センチポイズ〜約800センチポイズの粘度を有する。
【0037】
キトサン溶液は、好ましくは固体のキトサンのフレーク又は粉末に水を添加することにより25℃で製造し、固体は混合、攪拌又は振とうにより液体中で分散させる。キトサンを液体中で分散させる際には、酸成分を添加して分散体全体に渡って混合することによりキトサン固体の溶解を誘発する。溶解速度は、溶液の温度、キトサンの分子量及び混合の程度により異なる。好ましくは、溶解手順は、混合ブレード付の閉鎖タンク反応器又は閉鎖回転容器内で行う。これによりキトサンの均質な溶解が確保され、高粘度の残留物が容器側面に捕獲される機会がなくなる。好ましくは、キトサン溶液のパーセント(w/w)は0.5%キトサン超2.7%キトサン未満である。より好ましくは、キトサン溶液のパーセント(w/w)は1%キトサン超2.3%キトサン未満である。最も好ましくは、キトサン溶液のパーセントは1.5%キトサン超2.1%キトサン未満である。好ましくは、使用する酸は酢酸である。好ましくは、酢酸は0.8%超4%未満の酢酸溶液パーセント(w/w)となるように溶液に添加する。より好ましくは、酢酸は1.5%超2.5%未満の酢酸溶液パーセント(w/w)となるように溶液に添加する。
【0038】
キトサン母材12の構造又は形態を製造する手順は、一般的に溶液から行い、そして、(相分離を生じるための)凍結、(フィラメントを製造するための)非溶媒ダイス押し出し、(フィラメントを製造するための)電気紡績、(透析及びフィルター膜を製造するために一般的に使用される)非溶媒の相反転及び沈殿、又は予備成型されたスポンジ様又は織布製品への溶液コーティングのような技法を使用して達成できる。凍結の場合は複数の異なる相が凍結により形成され(一般的に水は凍結して氷となり、キトサン生物材料は異なる固相に分化する)、凍結した溶媒(一般的に氷)を除去するために別の手順が必要となり、従って、凍結構造を撹乱することなくキトサン母材12を製造できる。これは凍結乾燥及び/又は凍結置換手順により達成される場合がある。フィラメントは非織布紡績プロセスにより非織布のスポンジ様メッシュに形成することができる。或いは、フィラメントは、従来の紡績及び織布過程によりフェルト織布に製造される場合がある。生物材料スポンジ様製品の製造に使用される場合があるその他のプロセスには、固体キトサン母材12から追加の細孔原料を溶解させる手順、又は前記母材から材料を掘り抜く手順が含まれる。
【0039】
(2.水性キトサン溶液の脱気)
好ましくは(図14手順Bを参照)キトサン生物材料は一般的な大気ガスを脱気する。一般的に、脱気はキトサン生物材料から十分な残留ガスを除去することであり、これにより、後の凍結操作を行う際にガスが散逸して、望ましくない大型の空隙又は大型の捕獲気泡が主題の創傷包帯製品中に形成されないようにする。脱気手順は、一般的に溶液の形態でキトサン生物材料を加熱した後、これに真空を印加することにより行われる場合がある。例えば、脱気は、溶液を攪拌しながら、キトサン溶液を約45℃に加熱し、その直後に約500mTorrの真空を約5分間印加することにより行ってもよい。
【0040】
一実施形態において、特定のガスを溶液に戻すことにより初期脱気後の分圧を制御することができる。このようなガスには、アルゴン、窒素及びヘリウムが含まれるが、これらに限定されないと思われる。この手順の利点は、これらのガスの分圧を含有する溶液が凍結により微小空隙を形成する点である。その後、微小空隙は、氷前線の前進に従い、スポンジを通過して移動する。これにより、良好な境界線を有する制御されたチャンネルが残り、これがスポンジ細孔の相互接続性を良好にする。
【0041】
(3.水性キトサン溶液の凍結)
次に(図14手順Cを参照)、一般的にこの時点では上記の通り酸性溶液中にあり脱気されているキトサン生物材料を凍結手順に付す。凍結は、好ましくは金型内に支持されたキトサン生物材料溶液を冷却し、室温から凍結点未満の最終温度まで溶液の温度を低下させることにより行われる。より好ましくは、この凍結手順は、プレート凍結器上で実施することにより、プレートの冷却面を介した熱の損失により金型内のキトサン溶液を通過して熱勾配を導入する。好ましくは、このプレート冷却面は、金型と良好な熱的接触状態にある。好ましくは、キトサン溶液及び金型の温度は、プレート凍結器表面に接触する前にほぼ室温であるのがよい。好ましくは、プレート凍結器表面の温度は、金型+溶液の導入前に−10℃以下であるがよい。好ましくは、金型+溶液の熱質量は、プレート凍結器シェルフ+伝熱流体の熱質量より小さい。好ましくは、金型は、例えば金属部材、例えば鉄、ニッケル、銀、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、バナジウム、モリブデン、金、ロジウム、パラジウム、白金及び/又はこれらの組み合わせから形成されるが、これらに限定されない。金型は又、キトサン溶液の酸成分とキトサン塩母材の反応が起こらないようにするために、薄膜の不活性の金属コーティング、例えばチタン、クロム、タングステン、バナジウム、ニッケル、モリブデン、金及び白金によりコーティングされる場合もある。断熱性のコーティング又は部材を金属金型と共に使用することで、金型内の熱伝達を制御する場合がある。好ましくは、金型表面は、凍結したキトサン溶液と結合しない。金型の内面は、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、フッ素化エチレンポリマー(FEP)又はその他のフッ素化ポリマー材料から形成した薄膜永久結合フッ素化離型コーティングによりコーティングされる。コーティングされた金属金型が好ましいが、薄壁プラスチック金型が溶液を支持するための好都合な代替品となりえる。このようなプラスチック金型には、例えばポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン及びポリオレフィンから射出成型、マシニング又は熱成形により形成された金型が含まれるが、これらに限定されないと思われる。断熱性部材の局所的設置と組み合わせた金属金型の利点は、これらにより凍結スポンジ内部の熱流及び構造の制御が向上するという点である。熱流制御におけるこの進歩は、金型内の熱伝導性及び断熱性部材の設置時に生じる熱伝導性の大きな差に起因する。
【0042】
キトサン溶液をこのような方法で凍結することにより、創傷包帯製品の好ましい構造が製造可能となる。
【0043】
以下に示す通り、プレート凍結温度は最終キトサン母材12の構造及び機械的特性に影響する。プレート凍結温度は、好ましくは約−10℃以下、より好ましくは約−20℃以下、最も好ましくは約−30℃以下であるのがよい。−10℃で凍結する場合、非圧縮性キトサン母材12の構造は極めて開放的であり、開放スポンジ構造全体に渡り垂直となる。−25℃で凍結すると、非圧縮性キトサン母材12の構造はより閉鎖的になるが、なお垂直のままである。−40℃で凍結すると、非圧縮性キトサン母材12の構造は閉鎖され、垂直ではなくなる。代わりに、キトサン母材12は、より多くの強化された相互メッシュ状態の構造を有する。キトサン母材12の接着/粘着密封特性は、より低温の凍結温度を使用するほど向上することが判明している。約−40℃の凍結温度であれば、優れた接着/粘着特性を有するキトサン母材12の構造を形成することができる。
【0044】
凍結手順では、所定時間にわたり温度を低下させる場合がある。例えば、キトサン生物材料溶液の凍結温度は、約90分〜約160分にわたり約−0.4℃/mm〜約−0.8℃/mmの一定の温度低下勾配でプレートを冷却することにより、室温から−45℃まで低下させる場合がある。
【0045】
(4.キトサン/氷母材の凍結乾燥)
凍結キトサン/氷母材は、凍結物質の間隙内から水分を除去することが望ましい(図14手順Dを参照)。この水分除去手順は、凍結キトサン生物材料の構造的完全性を損なうことなく達成される。これは最終的なキトサン母材12の構造的配置を破壊する可能性がある液相の生成を伴うことなく達成される。即ち、凍結キトサン生物材料中の氷は、中間的な液相を形成することなく、固体凍結相から気相に至る(昇華する)。昇華した気体は、凍結キトサン生物材料よりも大幅に低い温度で真空濃縮チャンバー内にて氷として捕獲される。
【0046】
この水分除去手順を実施する好ましい態様は、凍結乾燥によるものである。凍結キトサン生物材料の凍結乾燥は、凍結キトサン生物材料を更に冷却することにより行うことができる。一般的には、その後に真空が印加される。次に、この真空を印加した凍結キトサン生物材料を徐々に加熱する場合がある。
【0047】
より詳細には、凍結キトサン生物材料は、好ましくは少なくとも約1時間、より好ましくは少なくとも約2時間、最も好ましくは少なくとも約3時間にわたり、好ましくは約−15℃、より好ましくは約−25℃、最も好ましくは約−45℃にて、その後の凍結に付す場合がある。この手順の後、約−45℃、より好ましくは約−60℃、最も好ましくは約−85℃未満の温度でコンデンサーの冷却を行う。次に、好ましくは最大約100mTorr、より好ましくは最大約150mTorr、最も好ましくは最大約200mTorrの量の真空を印加する。この真空を印加した凍結キトサン材料は、好ましくは少なくとも約1時間、より好ましくは少なくとも約5時間、最も好ましくは少なくとも約10時間にわたり、好ましくは約−25℃、より好ましくは約−15℃、最も好ましくは約−10℃にて加熱することができる。
【0048】
更に凍結乾燥は、真空圧を約200mTorrに維持しながら、好ましくは少なくとも約36時間、より好ましくは少なくとも約42時間、最も好ましくは少なくとも約48時間にわたり、好ましくは約20℃、より好ましくは約15℃、最も好ましくは約10℃のシェルフ温度にて行われる。
【0049】
(5.キトサン母材の稠密化)
稠密化前のキトサン母材(密度約0.03g/cm3)は、「非圧縮性キトサン母材」と呼ばれる。この非圧縮性母材は血液中に急速に溶解し、不良な機械的特性を有していることから、止血には有効でない。キトサン生物材料は必ず圧縮される(図16手順Eを参照)。加熱プラテンによる親水性母材ポリマー表面に対する通常の圧縮負荷を使用することで、乾燥「非圧縮性」キトサン母材12を圧縮して母材の厚さを低減し、母体の密度を増大させることができる。場合により「稠密化」と略称される圧縮手順は、キトサン母材12の接着強度、粘着強度及び溶解耐性を顕著に増大させる。閾値密度(約0.1g/cm3)を超えて圧縮され、且つ適切に凍結されたキトサン母材12は、37℃の流動血液中には容易に溶解しない。
【0050】
圧縮温度は、好ましくは約60℃以上であるのがよく、より好ましくは約75℃以上、約85℃以下であるのがよい。
【0051】
稠密化の後、母材12の基部(「活性」)表面(即ち組織に曝露されている表面)において、母材12の密度は、母材12の上部表面(裏打材14が適用されている面)と異なっていてもよい。例えば、活性表面で測定した平均密度が0.2g/cm3の最も好ましい密度値又はほぼ最も好ましい密度値である一般的な母材12において、上部表面で測定した平均密度は、顕著に低値、例えば0.05g/cm3となる。稠密化母材12に関する本明細書に記載した所望の密度範囲は、血液、流体又は水分への曝露が最初に起こる母材12の活性側近傍に存在することを意図している。
【0052】
稠密化されたキトサン生物材料は次に、好ましくは約75℃の温度まで、より好ましくは約80℃の温度まで、最も好ましくは約85℃の温度まで、キトサン母材12をオーブンで加熱することにより予備コンディショニングする。予備コンディショニングは、一般的に約0.25時間まで、好ましくは約0.35時間まで、より好ましくは約0.45時間まで、最も好ましくは約0.50時間まで行われる。この予備コンディショニング手順は、接着特性の20〜30%の損失における僅少な犠牲で溶解耐性の更に顕著な向上をもたらす。
【0053】
(6.稠密化されたキトサン母材への裏打材の固定)
裏打材14は抗微生物バリアパッドアセンブリ10を形成するためにキトサン母材12に固定する(図14手順Gを参照)。裏打材14は、キトサン母材12の上層と直接接着することにより、連結又は結着することができる。或いは、3M9942アクリレート皮膚接着剤又はフィブリン糊又はシアノアクリレート糊のような接着剤を使用することもできる。
【0054】
(7.パウチ内への封入)
抗微生物バリアパッドアセンブリ10はその後、望ましくはアルゴン又は窒素ガスの何れかのような不活性ガスでパージされ、真空印加され、ヒートシールされたパウチ16にパッケージ化することができる(図14手順Hを参照)。パウチ16は、長期間(少なくとも24ヶ月)にわたり内部の内容物の滅菌性を維持し、同じ期間にわたり水分及び大気ガスの浸潤に対して極めて高度なバリアをもたらす。
【0055】
(8.滅菌)
パウチ封入後、処理した抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、望ましくは滅菌手順に付す(図14手順Iを参照)。抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、多くの方法で滅菌することができる。例えば、好ましい方法には放射線照射、例えばガンマ線照射によるものがあり、これにより創傷包帯の血液溶解耐性、引っ張り特性及び接着特性が更に増強される。放射線照射は、少なくとも約5kGy、より好ましくは少なくとも約10kGy、最も好ましくは少なくとも約15kGyのレベルで行うことができる。
【0056】
(D.親水性ポリマー構造の適合性特性の改変)
使用直前に抗微生物バリアパッドアセンブリ10をそのパウチ16から取り出す(図4〜6を参照)。その低い水分含有量のため、抗微生物バリアパッドアセンブリ10はパウチ16から取り出すと比較的柔軟性がないように感じられる可能性があり、標的傷害部位の湾曲した不規則な表面にはすぐになじまない場合がある。標的傷害部位上への留置の前にパッドアセンブリ10を屈曲及び/又は成型する手順は、既に記載した通りであり、推奨される手順である。パッドアセンブリ10を成形する能力は、傷害血管にパッドアセンブリ10をじかに付着させることが重度の出血の制御には必要であることから、過度の出血を制御する場合には特に重要である。一般的には、このような出血血管は、不規則な形状の創傷内の深部に見られる。
【0057】
パッドアセンブリ10が1例である親水性ポリマースポンジ構造では、構造が創傷の形状に合わせて成形され、傷害の伏在する不規則な表面とスポンジ構造の付着が達成されることから、構造が柔軟性及び適合性を有しているほど、引裂や破砕に対する耐性がより強くなる。引裂や破砕に対する耐性は、創傷の密封及び止血効果を維持することから、有利である。適合性及び柔軟性は、罅割れや多大なパッドアセンブリ10の溶解を伴うことなく、深いまたは断裂形状の創傷に対して親水性のポリマースポンジ構造(例えばパッドアセンブリ10)を負荷させる能力をもたらす。
【0058】
キトサンを有する溶液中の特定の可塑剤の使用により向上した柔軟性及び適合性は、特定の可塑剤はパッドアセンブリ10の別の構造的属性を変化させる可能性があることから、問題となる場合がある。例えば、キトサングルタミン酸及びキトサン乳酸はキトサン酢酸よりも柔軟である。しかし、グルタメート及びラクテートのキトサン酸塩は血液の存在下で急速に溶解するのに対し、キトサンのアセテート塩はそうではない。即ち、適合性及び柔軟性の向上は、頑健性及び溶解耐性の持続性の低下により相殺される。
【0059】
適合性及び柔軟性の向上は、頑健性及び溶解耐性の持続性という利益となる特徴を損失することなく、製造後の何れかの親水性ポリマースポンジ構造の機械的操作により達成できる。そのような機械的操作を製造後に達成できる幾つかの方法を以下に記載する。方法はキトサン母材12に関するものとして記載するが、方法は、キトサン母材12が一例にすぎない親水性ポリマースポンジ構造の如何なる形態とともに使用する場合にも広範に適用される。
【0060】
(1.親水性ポリマースポンジ構造の制御された微小破壊)
キトサン母材12のような親水性ポリマースポンジ構造のサブ構造の制御された微小破壊は、乾燥パッドアセンブリ10の系統的機械的予備コンディショニングにより達成することができる。パッドアセンブリ10のこの形態の制御された機械的予備コンディショニングは、使用時のパッドアセンブリ10の著しい不良を招くことなく、柔軟性及び適合性の向上を達成することができる。
【0061】
望ましくは、図15に示す通り、パッドアセンブリ10(即ちキトサン母材12)の活性前面を垂直に維持し、深さ1〜1.5mmの手作業により繰り返す手指の押し付け動作48を表面全体に適用することができる。局所的な圧力印加の後、図16Aに示す通り、方形のパッドアセンブリ10の一端を、活性前面を垂直に保持しながら、直径7.5cm×長さ12cmのシリンダー50の側面に接着することができる。次にシリンダー50をパッドアセンブリ10に巻きつけ、パッドアセンブリ10に直径7.5cmの凹部を作成する。シリンダー50を取り外し、パッドアセンブリ10を90度回転(図16Bを参照)させて更に別の直径7.5cmの凹部をパッドアセンブリ10に作成する。この処理の後、パッドアセンブリ10を裏返す(即ち、裏打材14はここで直立する)(図17A及び18Bを参照)ことにより、90度オフセットの直径7.5cmの凹部をパッドアセンブリ10の裏打材14に形成できるようにする。本明細書に記載するパッドアセンブリ10の操作は、最終出荷パッケージ内への投入及び密封直前の加工時に機械的に実施されることが想定される。
【0062】
上述の機械的予備コンディショニングは、シリンダー上の手指による探索及び/又は牽引による予備コンディショニングに限定されない。予備コンディショニングには又、スポンジの止血効果の多大な損失を伴うことなく増強されたスポンジの屈曲率をもたらす何れかの親水性ポリマースポンジ構造内部における機械的変化を与える何れかの技法が含まれる場合もある。このような予備コンディショニングには、何れかの親水性ポリマースポンジ構造の機械的操作が含まれ、例えば屈曲、捻転、回転、振動、探索、圧縮、伸長、振とう又は混練が含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
(2.親水性ポリマースポンジ構造の制御された微小構造)
所定の親水性ポリマースポンジ構造内の制御された微小構造(深型レリーフパターンの形成による)は、使用時のパッドアセンブリ10の著しい不良を招くことなく、柔軟性及び適合性の向上を達成することができる。キトサン母材12に関しては、キトサン母材12の活性表面上又は裏打材14上の何れか、又は両面において深型レリーフパターンを形成することができる。
【0064】
図18A及び18Bに示す通り、深型の(0.25〜0.50cm)レリーフ表面パターン52(微小構造の表面)は、80℃におけるスポンジ熱圧縮によりパッドアセンブリ10において形成できる。スポンジ熱圧縮は制御されたヒーターアセンブリ56を包含するポジレリーフプレスプラテン54を使用して実施できる。使用できるレリーフパターン52の型の種々の代表例を図24A〜24Dに示す。ネガレリーフパターンは加熱プラテン54に連結したポジレリーフから形成される。
【0065】
パターン52の目的は、レリーフパターンが局部ヒンジとよく似た機能を果たすことで全長方向の屈曲性が向上するように、レリーフ52と直交する方向の屈曲抵抗を低減して乾燥パッドアセンブリの適合性を向上させることである。
【0066】
このレリーフ52はパッドアセンブリ10の裏打材14には適用するが、傷害の密封及び局所的な血塊形成の促進により止血をもたらす役割を果たすキトサン母材12には適用しないことが好ましい。基部のキトサン母材12における微小構造の深型レリーフパターン52は、キトサン母材12を介して血液が退避するためのチャンネルを与えることにより、密封性の損失に備えることができる。
【0067】
この可能性を低減するために、図24E及び24Fに示す型の別のレリーフパターン52を基部レリーフにおいて使用してよく、これは密封性の損失をもたらす可能性がより低い。従って、レリーフ52は母材の基部において使用してよいが、裏打材14又は母材の上部表面におけるその使用と比べて好適度はなお低いままである。スポンジ圧縮時に上部及び底部のプラテンに連結した2つのポジレリーフ表面を使用することで、パッドアセンブリ10の上部表面及び底面にレリーフパターンを同時に適用することも可能である。しかし、キトサン母材12の上部表面に1つのポジレリーフを使用することで単一の深型レリーフを作成するのがより好ましい。
【0068】
(実施例2)
機械的屈曲試験を被験パッドアセンブリ(各々10cm×10cm×0.55cm、使用した接着性裏打材14は3M1774Tポリエチレンフォーム医療用テープ、厚さ0.056cm)に対して実施した。1つのパッドアセンブリ10(パッド1)は、主に垂直のラメラ構造を有するキトサン母材12を備えていた(即ち、上述の通り、より高い相対凍結温度で製造)。その他のパッドアセンブリ10(パッド2)は、主に水平の相互メッシュのラメラ構造を有するキトサン母材12を備えていた(即ち、上述の通り、より低い相対凍結温度で製造)。
【0069】
パッド1及び2の各々を半分に切断した。各圧縮キトサンパッド1及び2の2枚の半型(5cm×10cm×0.55cm)を80℃で局所圧縮し、図19Aの形態で裏打材14上にレリーフパターンを作成した。パッド1及び2のもう一方の半型は未処理のままとし、対照として使用した。
【0070】
メスを使用してパッドアセンブリ10の各半型から3つの試験片(10cm×1.27cm×0.55cm)を切り出し、これらの試験片を3点屈曲性試験に付した。試験片は上部表面に深さ0.25cm×幅0.25cmのレリーフ刻印を有していた。各刻印はその近隣刻印から1.27cm離れていた。50Nロードセル付Instron1軸メカニカルテスター5844型で3点屈曲性試験を実施することにより、スパン5.8cm、クロスヘッドスピード0.235cm/sで、厚さ0.55cmの試験片の屈曲率を測定した。屈曲負荷は2つのパッド1及び2(処理及び未処理)について中点の屈曲変位に対してプロットし、それぞれ図20A及び20Bに示した。パッド1及び2(処理及び未処理)の処理及び未処理の試験片の屈曲率をそれぞれ図9A及び9Bに示す。
【0071】
屈曲試験により、乾燥パッドアセンブリ10の何れかの型の制御された微小構造による柔軟性の有意な向上が示されている。
【0072】
【表1】
(3.親水性ポリマースポンジ構造における制御された垂直チャンネル形成)
キトサン母材12が一例である所定の親水性ポリマースポンジ構造の塊に進入及び通過する血流の制御された導入は、向上した初期構造の適合性のため、及び、構造の溶解に対する耐性の持続性のためにも望ましいものである。所定の親水性ポリマースポンジ構造内への垂直チャンネルの制御された形成は、使用時の構造の粗放な誤作動を発生することなく、柔軟性及び適合性の向上を達成できる。
【0073】
親水性ポリマースポンジ構造の塊に進入及び通過する血流の制御された導入は、向上した構造の初期適合性のため、及び、構造の溶解に対する耐性の持続性のためにも望ましいものである。親水性ポリマースポンジ構造への血液吸収の向上は、構造内へ垂直チャンネルを導入することにより達成できる。チャンネルの横断面積、チャンネル深さ、及びチャンネル数密度は、血液吸収の適切な速度及び親水性ポリマースポンジ構造への血液吸収の分布を確保するために制御できる。キトサン母材12に関しては、一般的に5g〜15gの血液吸収を伴うキトサン母材12嵩の200%増大により、7MPaから2MPaまでほぼ72%の屈曲率の低下が起こる場合がある。更に又、キトサン母材12への血液の制御された導入により、母材の粘着性の向上がもたらされる場合がある。
【0074】
親水性ポリマー母材の強度のこのような向上は、同母材との血小板及び赤血球のような血液成分の反応によるものである。スポンジ構造内への血液の導入、並びにスポンジ構造と血液成分が反応して血液と親水性ポリマースポンジ構造の「アマルガム」が生成される時間の経過の後、それ以降のスポンジ構造は体液中の溶解に対して耐性を備えることになり、特にキトサン酸塩母材の場合には、食塩水の導入によって容易に溶解できなくなる。一般的に、特にキトサン酸塩母材の場合、血液と親水性ポリマースポンジ構造の反応の前に食塩水を導入することで、親水性ポリマースポンジ構造の急速な膨潤、ゲル化及び溶解が誘発される。
【0075】
しかし、キトサン母材12のような所定の親水性ポリマースポンジ構造内への血液の過剰な導入により、流体化の崩壊がもたらされる場合がある。従って、平均チャンネル横断面積、平均チャンネル深さ、及びチャンネル数密度は、血液吸収の速度が親水性ポリマースポンジ構造の構造を犠牲にすることがないように制御しなければならない。
【0076】
親水性ポリマースポンジ構造における垂直チャンネルの制御された分布は、スポンジ構造配合物の凍結手順の間に達成することができ、或いは圧縮(稠密化)手順の間のスポンジ構造の穿孔により機械的に達成される場合がある。
【0077】
基部核化凍結手順では、残留ガスによる凍結溶液の過飽和により、その溶液中に垂直チャンネルを導入することができる。同ガスは、凍結を開始すると、金型内の溶液の基部において気泡形成の核となる。気泡は凍結手順の間に溶液を通って上昇し、垂直チャンネルを保持する。得られたスポンジ母材内のチャンネルは、凍結乾燥中のチャンネル周囲の氷の昇華により保存される。
【0078】
或いは、チャンネルは金型の基部において垂直の棒材の配置により凍結手順の間に形成される場合がある。好ましくは、金型は、例えば金属部材、例えば鉄、ニッケル、銀、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、バナジウム、モリブデン、金、ロジウム、パラジウム、白金及び/又はこれらの組み合わせから形成されるが、これらに限定されない。金属棒材は、好ましくは、例えば金属部材、例えば鉄、ニッケル、銀、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、バナジウム、モリブデン、金、パラジウム、ロジウム又は白金及び/又はこれらの組み合わせから形成されるが、これらに限定されない。金型は又、キトサン溶液の酸成分とキトサン塩母材の反応が起こらないようにするために、薄膜の不活性の金属コーティング、例えばチタン、クロム、タングステン、バナジウム、ニッケル、モリブデン、金及び白金によりコーティングされる場合もある。断熱性のコーティング又は部材を金属金型及び垂直棒材と共に使用することで、金型内及び垂直棒材内の熱伝達を制御する場合がある。金属金型及び垂直金属棒材が好ましいが、プラスチックの金型及び垂直プラスチック金型棒材がチャンネル形成のための好都合な代替となり得る。断熱性部材の局所的設置と組み合わせた金属金型及びその金属棒材の利点は、これらにより凍結スポンジ構造内部の熱流及び構造の制御が向上するという点である。熱流制御におけるこの進歩は、金型内の熱伝導性及び断熱性部材の設置時に生じる熱伝導性の大きな差、及び棒材を通過する親水性ポリマースポンジ構造溶液の塊内に局所的熱勾配を生じさせる能力に起因する。
【0079】
スポンジ構造を凍結乾燥した後、圧縮(稠密化)手順の間に垂直チャンネルを導入することができる。例えば図21A及び21Bに示す通り、圧縮固定具58は、スポンジ構造の基部において短い(深さ2.5mm)等しい間隔をおいた穿孔62を設けるためのピンクッションの幾何学模様のデバイス60を担持している。
【0080】
穿孔62は、親水性ポリマースポンジ構造の基部に侵入して通過する緩徐な制御された速度における血液の局所的浸潤を可能にするためのものである。この浸潤は、第1に血液による乾燥スポンジの可塑化による母材のより急速な柔軟性の変化を可能にすることを目的としている。第2に、母材を安定化させて体腔内に存在する後続溶解物質に抵抗するために母材を通過する血液のより均一な分散及び混合をもたらすことである。穿孔を有する基部表面が存在しない場合、1、6、16及び31分後には、血液は単に表面的にスポンジ構造に浸透するのみである(深さ<1.5mm)に対し、穿孔が存在すればその血液は31分後に1.8〜2.3mmの深さまで浸透することが観察される。穿孔のない母材と比べて穿孔の有る母材においては屈曲率のより急速な低下が結果として起こる。
【0081】
(II.組織包帯シートアセンブリ)
(A.概要)
図22には、組織包帯シートアセンブリ64を示す。前述の図1に示した抗微生物バリアパッドアセンブリ10と同様に、組織包帯シートアセンブリ64は、使用時において血液若しくは体液又は水分の存在下において組織に接着することができる。即ち、組織包帯シートアセンブリ64は又、出血又はその他の形態の体液の喪失に対して、組織の傷害又は外傷又は接触の部位の止血、密封及び/又は安定化のためにも使用できる。抗微生物バリアパッドアセンブリ10の場合と同様に、組織包帯シートアセンブリ64で処置される組織部位には、例えば動脈及び/又は静脈の出血、又は裂傷、又は流入/刺入創、又は組織穿孔、又はカテーテル挿入部位、又は熱傷、又は縫合が含まれても良い。組織包帯シートアセンブリ64は又、抗細菌及び/又は抗微生物及び/又は抗ウイルスの保護バリアを、組織処置部位及びその周囲に形成してもよい。
【0082】
図22は、組織包帯シートアセンブリ64の使用前の状態を示す。図23に最もよく示されている通り、組織包帯シートアセンブリ64は、組織包帯母材68の層の間に封入される織布又は非織布のメッシュ素材のシート66を含む。組織包帯母材68はシート66を含浸している。組織包帯母材68は、望ましくは抗微生物バリアパッドアセンブリ10に関して記載した通り、キトサン母材12を含む。しかし、他の親水性ポリマースポンジ構造も使用できる。
【0083】
組織包帯シートアセンブリ64の大きさ、形状及び構成は、所期の用途により異なってもよい。シートアセンブリ64は、直線、伸長、方形、円形、楕円、又はそれらの複合物又は組み合わせであってもよい。
【0084】
組織包帯シートアセンブリ64は出血領域において親水性ポリマースポンジ構造の急速な適合性を達成する。組織包帯シートアセンブリ64は、好ましくは薄膜(パッドアセンブリ10と比べて)であり、厚さは0.5mm〜1.5mmの範囲である。シートアセンブリ64の薄膜強化構造の好ましい形態はキトサン母材12又はスポンジを含み、一般的なキトサン母材密度は0.01〜0.20g/cm3であり、木綿ガーゼのような吸収性の包帯ネットにより強化されており、その結果、包帯厚さは1.5mm以下となる。
【0085】
シートアセンブリ64は、多重シートフラット型70(図24Aに示す通り)中にパッケージ化するためのコンパクトシート型(例えば10cm×10cm×0.1cm)として、又は、コンパクトロール型シートフォーム72(図24Bに示す通り)中にパッケージ化するための伸長シート型(例えば10cm×150cm×0.1cm)として製造することができる。シート66はアセンブリ64の全体に渡って強化作用を示し、更に血液吸収のための親水性ポリマースポンジ構造の多大な比表面積を与える。織布又は非織布のシート66も又、全体的な親水性ポリマースポンジ構造を強化する作用を有する。
【0086】
シート66は例えばガーゼ木綿メッシュのようなセルロース誘導物質から形成された織布及び非織布のメッシュ材を含むことができる。好ましい強化材には、合成及び天然のポリマーの吸収性低引張応力メッシュ及び/又は多孔性フィルム及び/又は多孔性スポンジ及び/又は編物が含まれるが、これらに限定されない。合成の生体分解性の材料には、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(β−ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシブチレート及び上記したポリマーの合成に使用される単量体コポリマーが含まれるが、これらに限定されない。天然のポリマーには、セルロース、キチン、アルギン、澱粉、デキストラン、コラーゲン及び卵白が含まれるが、これらに限定されない。非分解性の合成強化材には、ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレン、ポリプロピレンコポリマー、メタロセンポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルポリマー、ポリエステル及びポリアミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
(B.組織包帯シートアセンブリの使用)
薄膜シートアセンブリ64は極めて良好な適合性を有しており、傷害部位への親水性ポリマースポンジ構造(例えばキトサン母材12)の優れた密着を可能にする。シートの強化によりアセンブリ全体が強力に出血している領域において溶解耐性を備えることなる。シートアセンブリ64は圧力を使用することにより創傷部位内における親水性ポリマースポンジ構造(例えばキトサン母材12)の積層、圧縮及び/又はローリング、即ち「スタッフィング」(図25に示す通り)に適合しており、これにより強力な動脈及び静脈の出血に対して全体的構造を更に強化する。シート構造を自身上にスタッフィングすることにより、図32に示す通り、網目構造内で注入されている親水性ポリマー(例えばキトサン)との血液の相互作用は、創傷が特に深いかその他の理由により明らかに接触不可能である場合に、適用のために好都合となる。出血創傷内へのシートアセンブリ64のスタッフィング及びそれ自身上の圧縮化により、高度に接着性の不溶性で高度に順応した包帯形態が得られる。
【0088】
(C.組織包帯シートアセンブリの製造)
キトサン母材12密度約0.15gm/cm3を有する組織包帯シートアセンブリ64(10cm×10cm×0.1cm)は、0.38cmの深さまで2パーセント(2%)キトサン酢酸溶液で11cm×11cm×2cmの深型アルミニウム金型を充填することにより製造することができる(図26手順Aを参照)。
【0089】
図26(手順B)に示す通り、例えば10cm×10cmの吸収性ガーゼネットの層を含むシート66を金型中の溶液の上面の上に被覆し、キトサンに浸積させる。キトサンはシート66に含浸する。
【0090】
図26(手順C)に示す通り、更に深さ0.38cmのキトサンを含浸ガーゼシート66の上面の上に注ぎ込むことができる。
【0091】
図26(手順D)に示す通り、金型を例えば−30℃のシェルフ上のVirtis Genesis 25XL凍結乾燥機中に入れる。溶液を凍結させ、その後、凍結乾燥により氷を昇華させる。
【0092】
図26(手順E)に示す通り、得られたガーゼ強化シートアセンブリ64を0.155cmの厚さとなるまで80℃のプラテン間で圧縮する。圧縮されたシートアセンブリ64を次に30分間80℃で焼成する(図26手順F)。得られたシートアセンブリは前述の通り滅菌することができる。シートアセンブリ1つ以上を、シート型又はロール型の何れかにおいてヒートシールホイルライニングのパウチ74等(図27を参照)の内部にパッケージ化し、最終滅菌及び保存に付す。
【0093】
(実施例3)
(組織包帯シートアセンブリの屈曲特性)
組織包帯シートアセンブリ64の3点屈曲性試験を実施した。3点屈曲性試験は50Nロードセル付Instron1軸メカニカルテスター、5844型モデル上で実施し、スパン5.8cm及びクロスヘッドスピード0.235cm/sで試験片屈曲率を測定した。結果を図28に示す。図28では、試験した厚さ1.5mmの組織包帯シートアセンブリが、厚さ5.5mmの組織包帯パッドアセンブリよりも有意に適合性が高いことが明らかにされている。
【0094】
(実施例4)
(組織包帯シートアセンブリの接着特性)
組織包帯シートアセンブリ64の試験片(5cm×5cm×0.15cm)を製造後96時間以内に切り出した。シートアセンブリ64は試験前にガンマ線滅菌に付さなかった。試験片をクエン酸添加ウシ全血中に10秒間浸積し、その直後にSAWS試験に付した。試験中、3つの試験片を相互に積層し、複合キトサン密度を約0.15g/cm3とした。この試験の結果を図29に示す。
【0095】
図29Aに示す通り、組織包帯シートアセンブリ64の3層は長時間(即ち約400秒)約80mmHgの実質的に生理学的な血圧を保持した。これは密封と凝固があったことを示している。
【0096】
パッドアセンブリを使用した実験に基づけば、組織包帯シートアセンブリ64をガンマ線照射に付した後にも良好な接着/粘着特性が得られると期待された。図29Bがこれを照明しており、ガンマ線照射後、組織包帯シートアセンブリ64の3層は厚さ0.55cmのキトサン組織パッド10と非常に近似している性能を示した。
【0097】
(III.親水性ポリマースポンジ構造の更なる適応及び構成)
上述の開示内容は、主に創傷部位において血液及び/又は体液の喪失を停止するという状況における抗微生物バリアパッドアセンブリ10及び組織包帯シートアセンブリ64の使用に着目していた。その他の適応についても言及されており、ここではこれらの及びその他の追加の適応の一部を詳述する。
【0098】
当然ながら、ここで、一例がキトサン母材である圧縮された親水性ポリマースポンジ構造が保有している注目すべき技術的特徴を多様な形状、大きさ及び構成の包帯構造に組み込むことにより種々の異なる適応に対応できるに留意されたい。これから示す通り、所定の圧縮親水性ポリマースポンジ構造(例えばキトサン母材12)がとることのできる形状、大きさ及び構成は記載したパッドアセンブリ10及びシートアセンブリ64に限定されるものではなく、特定の適応の要求に従って変形してもよい。幾つかの代表的な例を以下に示すが、これらの例が限定された全ての例であるとは意図されない。
【0099】
(B.抗微生物バリア)
特定の適応において、治療の標的は、傷害によるか、又は、内部組織領域への接触口を樹立するという必要性によるかの何れかにより、妥協を余儀なくされている組織領域を通過する細菌及び/又は微生物の進入の防止となる。後者の状況の例には、例えば腹腔透析又は外部の尿又は結腸瘻バッグの連結に適合するため、非経口的栄養法を達成するため、又はサンプリング又はモニタリング装置に連結するための留置カテーテルの設置;又は切開部の形成後、例えば気管切開術、腹腔鏡下又は内視鏡下の処置又は血管へのカテーテル機器の導入の間に身体の内部領域に接触するため、等が含まれる。
【0100】
図40及び41には、抗微生物ガスケットアセンブリ82の代表的な一実施形態を示す。ガスケットアセンブリ82は接触部位、そして特に留置カテーテル82が留置される挿入部位に渡って留置されるような大きさ及び構成とする。抗微生物ガスケットアセンブリ82は、抗微生物要素を固定する組織接着担体要素84を包含する。望ましくは、抗微生物要素は稠密化を行っている前述した型のキトサン母材12を含む。しかしなお、キトサン構造の他の型、又は、他の親水性ポリマースポンジ構造又は組織包帯母材も一般的に使用できる。
【0101】
担体要素84は、望ましくは挿入部位に渡り抗微生物要素(望ましくはキトサン母材12)に連結するために接着表面86を含む。図30及び31において、抗微生物要素12及び担体84は通過穴90を含み、これは自身を通る留置カテーテル88の通過を可能にする。この配置において、通過穴90の内径は留置カテーテル88の外径と近似させることにより堅固な密着が得られる。但し、滞留するカテーテルのない切開部又は挿入部位のみがあるような状況においては、抗微生物要素は通過穴を包含しないことに留意すべきである。
【0102】
別の配置(図32を参照)においては、抗微生物バリアパッドアセンブリ10は前述の通り、抗微生物ガスケットアセンブリ82を含むように挿入部位の領域に相応する大きさ及び構成とする。この構成においては、パッドアセンブリ10には、留置カテーテルが存在する場合はその通過に適合するために通過穴90を設けることができる。
【0103】
別の代替となる配置(図33を参照)においては、組織包帯シートアセンブリ64は前述の通り、抗微生物ガスケットアセンブリ82を含むように挿入部位の領域に相応する大きさ及び構成とする。この構成においては、シートアセンブリ64には、留置カテーテルが存在する場合はその通過に適合するために通過穴90を設けることができる。
【0104】
(実施例5)
(抗微生物の特徴)
稠密化されたキトサン酢酸母材及び稠密化されたキトサン酢酸母材を取り込むことができる包帯の多様な形態は、表11に概説するin vitro試験により明らかにされる通り、抗微生物効果を有する。
【0105】
【表2】
稠密化キトサン母材12はその優れた接着及び機械的特性により四肢(表皮での使用)及び体内に対する抗微生物用途における使用のために顕著に適している。このような適用はカテーテルの進入/退出点における、サンプリング及び送達の用途のための医用デバイスの進入/退出点における、そして、患者がショック状態にあり決定的な外科的処置を受けられない場合の重度の傷害部位における感染及び出血の短期〜中期(0〜120時間)の制御を包含する。
【0106】
(実施例6)
(局所抗微生物効果のin vivo試験)
更に稠密化キトサン酢酸母材12のin vivo試験を実施し、同様の包帯及び治療法、特にアルギネート包帯及びAgスルファジアジンと比較した。試験は雄性マウス系統BALB/cの約6週齢の体重約20〜25グラムにおいて実施した。マウスの下半身を脱毛し、塩酸ケタミン対キシラジン9:1比(100mg/kg)を注射することにより麻酔した。所望の大きさの全厚さの切除創傷を肉様層まで、ただしこれを通過することなく切り出した。
【0107】
in vivoのバイオルミネセンス画像化を可能にするように全細菌luxオペロンを安定に形質導入してあるグラム陰性種のシュードモナス・アエルギノーサ[19660株]及びプロテウス・ミラビリス[51393株]にマウスを感染させた。菌株は細菌培養に使用し、培地1mlを滅菌脳心臓注入(BHI)培地30〜40ml中で使用した。細菌は振とうしながら37℃のインキュベーター中で2時間指数増殖期まで生育させた。細菌懸濁液のODをBHI培地に対して測定し、相応に所望の細菌懸濁液を調製した。
【0108】
バイオルミネセンス画像化はマウスの創傷感染から生じる光を検出するためにHamatsuCCDカメラを使用して行った。
【0109】
切除創傷(5×5mm)に50×106個の細胞を接種した。包帯パッドアセンブリ10を通過するルミネセンス透過光を測定できるように、制御された厚さ(1.6〜2.4mm)の稠密化キトサン母材12構造を試験に使用するために包帯の基部表面から切り出した(厚さ名目5.5mm)。試験に使用したキトサン母材12試験片の大きさは10mm×10mm×2.1mmとした。試験には3種の対照、即ち銀スルファジアジンの陽性対照;アルギネートスポンジの陰性対照(10mm×10mm×2.0mm);及び未投与の別の陰性対照を使用した。全処置とも細菌の創傷への接種15〜30分以内に適用した。
【0110】
稠密化キトサン母材12スポンジ試験片を先ず酢酸ナトリウム緩衝液(pH4)で湿潤させた後に適用した。これらは接着性であり傷害に極めて良好に合致した。アルギネート対照は、PBS溶液で湿潤させた後に適用した。これは傷害に対する接着性が過剰であった。銀スルファジアジンクリーム(50mg)は、手袋を装着した手指で感染創傷に擦り込んだ。動物の生存は定期的な間隔(8〜16時間)におけるバイオルミネセンス発光及び動物の運動性の観察と共に15日間にわたり追跡した。稠密化キトサン母材12群(N=5)の場合は、全動物が生存し、有意な生存の優越性をアルギネート群に対して(p<0.01)、未投与群に対して(p<0.005)、そして銀スルファジアジン群に対して(p<0.005)示した(図58を参照)。稠密化キトサン母材12は又、試験期間中にわたってバイオルミネセンスの有意な損失を示した唯一の物質であり、この包帯の顕著な殺菌活性を示していた(図34及び35を参照)。アルギネート群(N−6)の何れの動物も5日を超えて生存せず、バイオルミネセンスの結果もこの群における細菌の増殖を示していた(図35及び36を参照)。
【0111】
データによれば、稠密化キトサン母材12は全身性の侵襲が起こる前に創傷内の細菌を迅速に殺傷し、共に短時間で細菌生育を誘発したアルギネート包帯及び銀スルファジアジンよりも優れていることが示唆されている。図37に示す通り、稠密化キトサン母材12と接触した場合の細菌の生存区分は急速に低下している。処置2時間以内に、ほぼ全ての細菌がキトサン母材12により破壊されている。
【0112】
キトサン母材12は創傷領域に良好に接着し、急速な抗微生物作用を有している。抗微生物及び止血の特性の組み合わせは、従来技術を超えた優れた創傷包帯をもたらし、これは戦闘、戦場又は傷痍兵対処の状況等において、早期の応急処置に好都合である。
【0113】
(IV.結論)
キトサン母材12のような親水性ポリマースポンジ構造は、パッド型、シート型、複合型、積層型、適合型等の種々の大きさ及び構成の包帯又はプラットホームとの組み合わせに容易に適合させることができ、これにより医療及び/又は外科分野の当業者は、キトサン母材12のような何れかの親水性ポリマースポンジ構造を、身体上、身体内又は全身に渡る多様な適応に採用することができる。
【0114】
従って、上に記載する本発明の実施形態は、本発明の原理を単に説明するためのものであり、適用範囲を制限するものではない。代わりに、本発明の適用範囲は、以下の請求項並びにそれらに相当する記述の範囲により決定されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】血液、流体又は水分の存在下において身体組織に接着することができる抗微生物バリアパッドアセンブリの組立透視図である。
【図2】図1に示す抗微生物バリアパッドアセンブリの分解透視図である。
【図3】最終照射及び保存のために密封パウチ中にパッケージ化された、図1に示す抗微生物バリアパッドアセンブリの透視図である。
【図4】図3に示す密封パウチを剥がして、抗微生物バリアパッドアセンブリを使用のために取り出す状態の透視図である。
【図5】図3に示す密封パウチを剥がして、抗微生物バリアパッドアセンブリを使用のために取り出す状態の透視図である。
【図6】抗微生物バリアパッドアセンブリを手に持ち、標的組織部位の形状に合わせて適用前に折り畳むか屈曲させることにより操作した状態の透視図である。
【図7】抗微生物バリアパッドアセンブリを手に持ち、標的組織部位の形状に合わせて適用前に折り畳むか屈曲させることにより操作した状態の透視図である。
【図8】出血を止血するために抗微生物バリアパッドアセンブリを標的組織部位に適用した状態の透視図である。
【図9】出血を止血するために抗微生物バリアパッドアセンブリを標的組織部位に適用した状態の透視図である。
【図10】出血を止血するために抗微生物バリアパッドアセンブリの一部を切り取って、標的組織部位に適合するようにした状態の透視図である。
【図11】出血を止血するために抗微生物バリアパッドアセンブリの一部を切り取って、標的組織部位に適合するようにした状態の透視図である。
【図12】抗微生物バリアパッドアセンブリを手に持ち、標的組織部位に合わせて凹状又はカップ状の形に成型することにより操作した状態の透視図である。
【図13】抗微生物バリアパッドアセンブリを手に持ち、標的組織部位に合わせて凹状又はカップ状の形に成型することにより操作した状態の透視図である。
【図14】図1に示す抗微生物バリアパッドアセンブリを作成するプロセスの手順の概略図である。
【図15】柔軟性及び適合性を向上させる微小破壊を生成するために親水性ポリマー構造をコンディショニングする手順の実施形態の透視図である。
【図16】柔軟性及び適合性を向上させる微小破壊を生成するために親水性ポリマー構造をコンディショニングする手順の実施形態の透視図である。
【図17】柔軟性及び適合性を向上させる微小破壊を生成するために親水性ポリマー構造をコンディショニングする手順の実施形態の透視図である。
【図18】柔軟性及び適合性を向上させる深型レリーフパターンを形成することにより親水性ポリマー構造をコンディショニングする手順の実施形態の図である。
【図19】図18A及び18Bに示す手順の後に親水性ポリマー構造をコンディショニングするために適用できるレリーフパターンの平面図である。
【図20】図18A及び18Bに示す処理手順を可能にする柔軟性及び適合性の向上を示すグラフである。
【図21】柔軟性及び適合性を向上させる垂直チャンネル(穿孔)を形成することにより親水性ポリマー構造をコンディショニングする手順の実施形態の図である。
【図22】血液、流体又は水分の存在下において身体組織に接着することができる組織包帯シートアセンブリの組立透視図である。
【図23】図22に示す組織包帯シートアセンブリの展開透視図である。
【図24】(図24A)シート形態に配置した組織包帯シートアセンブリの組立透視図である。(図24B)ロール形態に配置した組織包帯シートアセンブリの組立透視図である。
【図25】出血を止血するために標的組織領域内にロール形態の組織包帯シートアセンブリを詰め込んだ透視図である。
【図26】図22に示す組織包帯シートアセンブリを作成するプロセスの手順の概略図である。
【図27】最終照射及び保存のために密封パウチ中にパッケージ化された、図16に示す抗微生物バリアパッドアセンブリの透視図である。
【図28】図1に示す未処理の抗微生物バリアパッドアセンブリと比べた、図22に示す組織包帯シートアセンブリの柔軟性及び適合性を示すグラフである。
【図29】(図29A)図21に示す組織包帯シートアセンブリの、ガンマ線照射前におけるシミュレーションした創傷密封特性を示すグラフである。(図29B)図21に示す組織包帯シートアセンブリの、ガンマ線照射の前後におけるシミュレーションした創傷密封特性を示すグラフである。
【図30】留置カテーテルの挿入部位に接着して密封するためのガスケットアセンブリを形成するように成形及び構成された、組織包帯アセンブリ一式の透視図である。
【図31】図30に示すガスケットアセンブリの横断面図である。
【図32】留置カテーテルの挿入部位に接着して密封するためのガスケットアセンブリを形成するように成形及び構成された、図1に示す型の抗微生物バリアパッドアセンブリの透視図である。
【図33】留置カテーテルの挿入部位に接着して密封するためのガスケットアセンブリを形成するように成形及び構成された、図22に示す型の組織包帯シートアセンブリの透視図である。
【図34】他の入手可能な抗微生物製品と比べた、本発明の包帯アセンブリのルミネセンス検出を示すグラフである。
【図35】他の入手可能な抗微生物製品と比べた、本発明の包帯アセンブリのルミネセンス検出を示すグラフである。
【図36】他の抗微生物製品と比べた、本発明の包帯アセンブリの細菌生存率を示すグラフである。
【図37】他の抗微生物製品と比べた、本発明の包帯アセンブリの細菌生存率を示すグラフである。
【図38】他の抗微生物製品と比べた、本発明の包帯アセンブリの細菌生存率を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、米国第11/020,365号(2004年12月23日出願、発明の名称“Tissue Dressing Assemblies,Systems and Methods formed from Hydrophilic Polymer Sponge Structures such as Chitosan”)の一部継続出願であり、この米国出願は、米国第10/743,052号(2003年12月23日出願、発明の名称“Wound Dressing and Method of Controlling Severe Life−Threatening Bleeding”)の一部継続出願であり、この米国出願は、米国特許法施行規則第371条の下で国内段階移行された国際出願番号PCT/US02/18757(2002年6月14日出願)の米国第10/480,827号(2004年10月6日提出、発明の名称“Wound Dressing and Method of Controlling Severe Life−Threatening Bleeding”)の一部継続出願であり、このPCT出願は、米国仮特許出願第60/298,773号(2001年6月14日出願)の優先権を主張する。これらの出願は、本明細書中で参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ガーゼ包帯による連続した圧力印加は、依然として出血、特に重度の出血のある創傷からの出血を止めるために使用される一次的な介入技法となっている。しかし、この手技は重度の出血の止血には効果的でも安全でもなく、依然として創傷からの重度の致命的出血における大きな生存上の問題となっている。
【0003】
現在、コラーゲン創傷包帯又は乾燥フィブリントロンビン創傷包帯又はキトサン及びキトサン包帯のような止血包帯が使用可能であるが、そのような包帯は高血流への溶解に対して十分な耐性を備えていない。これらは又、重度の出血の止血における実用的な目的を果たすのに十分な接着特性も備えていない。これらの現在使用可能な外科的止血包帯は損傷しやすいため、屈曲や圧力の負荷により損傷を受けると機能しなくなる。又、これらは出血性の血液に溶解しやすい性質を有する。これらの包帯のこのような溶解及び損壊は、創傷への接着力を喪失し、出血が止まらずに続くことがあるため、悲惨な結果をもたらす場合がある。
【0004】
出血を十分に防止及び制限すると同時に、創傷又は患部並びにその周囲における細菌感染を防止する際には注意が必要である。現在の包帯はこのような感染の蔓延を十分防止せず、又このような感染を治療していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
使用時の溶解に耐える頑健性及び持続性を有する、細菌感染の治療に有用な止血包帯の改良が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明はキトサン生物材料を含む構造から形成した抗微生物バリア、系及び方法を提供する。抗微生物バリアは、例えば、(i)組織傷害、組織外傷又は組織接触の部位の止血、密封又は安定化;又は(ii)抗微生物バリアの形成;又は(iii)抗ウイルスパッチの形成;又は(iv)出血障害における介入;又は(v)治療薬の放出;又は(vi)粘膜表面の治療;又は(vii)これらの組み合わせのような使用が可能である。
【0007】
一実施形態において、抗微生物バリア構造は、望ましくは圧縮により稠密化される。
【0008】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の説明、図面及び請求項に基づいて明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(好ましい実施形態の説明)
本開示内容の理解を容易にするため、網羅される主題分野を以下の一覧に概説する。
【0010】
(説明する主題分野の一覧)
(I.抗微生物バリアパッドアセンブリ)
A.概要
1.組織包帯母材
2.裏打材
3.パウチ
B.抗微生物バリアパッドアセンブリの使用(実施例1)
C.組織包帯パッドアセンブリの製造
1.キトサン溶液の調製
2.キトサン水溶液の脱気
3.キトサン水溶液の凍結
4.キトサン/氷母材の凍結乾燥
5.キトサン母材の稠密化
6.裏打材の固定
7.パウチ内への封入
8.最終滅菌
D.親水性ポリマー構造の適合性特性の改変
1.制御された微小破壊
2.制御された微小構造(実施例2)
3.制御された垂直チャンネル形成
(II.組織包帯シートアセンブリ)
A.概要
B.組織包帯シートアセンブリの使用
C.組織包帯シートアセンブリ(実施例3及び4)の製造
(III.親水性ポリマー構造の更なる適応及び構成)
A.抗微生物バリア(実施例5及び6)
(IV.結論)
本明細書の開示内容は、当業者が本発明を実践できるように詳述されており、正確であるが、本明細書に開示する物理的な実施形態は、単に他の特定の構造において具現化される本発明を例示するにすぎない。好ましい実施形態を記載しているものの、詳細は、請求項に定義される本発明を逸脱しない範囲で、変更される場合がある。
【実施例】
【0011】
(I.組織包帯パッドアセンブリ)
(A.概要)
図1には、抗微生物バリアパッドアセンブリ10を示す。抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、使用時において血液若しくは体液又は水分の存在下において組織に接着することができる。抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、出血、体液浸出若しくは漏出、又はその他の形態の体液の喪失に対して、組織傷害、組織外傷又は組織接触(例えばカテーテル又は栄養管)の部位の止血、密封及び/又は安定化のために使用できる。処置する組織の部位には、例えば動脈及び/又は静脈の出血、又は裂傷、又は流入/刺入創、又は組織穿孔、又はカテーテル挿入部位、又は熱傷、又は縫合が含まれてもよい。抗微生物バリアパッドアセンブリ10は又、望ましくは抗細菌及び/又は抗微生物及び/又は抗ウイルスの保護バリアを、組織処置部位及びその周囲に形成してもよい。
【0012】
図1は、抗微生物バリアパッドアセンブリ10の使用前の状態を示す。図2に最もよく示されている通り、抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、組織包帯母材12及び組織包帯母材12の一方の面に積層する裏打材14を含む。望ましくは、組織包帯母材12及び裏打材14は、異なる色、構造を有するか、又はその他の点において視覚的及び/又は触覚的に区別されることにより、介護者による識別を容易にする。
【0013】
抗微生物バリアパッドアセンブリ10の大きさ、形状及び構成は、所期の用途により異なってもよい。パッドアセンブリ10は、直線的、伸長化、円形、丸型、楕円、又はそれらの複合物又は組み合わせであってもよい。望ましくは、後述する通り、パッドアセンブリ10の形状、大きさ及び構成は、使用時又は使用前に切断、屈曲又は成型することにより形成してもよい。図1には、外出血又は体液の喪失の応急的制御のために極めて有用な抗微生物バリアパッドアセンブリ10の代表的な構成を示す。例として、その大きさは10cm×10cm×0.55cmである。
【0014】
(1.組織包帯母材)
組織包帯母材12は、好ましくは低弾性の親水性ポリマー母材、即ち、後述する通り、後の稠密化プロセスにより稠密化されている、本来は「圧縮されていない」組織包帯母材12から形成される。組織包帯母材12は、好ましくは血液、体液又は水分の存在下で反応して強力な接着剤又は糊材となるような生体適合性物質を含む。望ましくは、組織包帯母材は又、その他の利益となる属性、例えば抗細菌及び/又は抗微生物抗ウイルス特性、及び/又は傷害に対する身体の防御反応を加速するかその他の態様で増強する特性を有する。
【0015】
組織包帯母材12は、親水性ポリマーの形態、例えばポリアクリレート、アルギネート、キトサン、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラギーナン、第4アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、変性セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナン、又はこれらの組み合わせを含む場合がある。澱粉は、アミラーゼ、アミロペクチン、及びアミロペクチンとアミラーゼの組み合わせのものとなる場合がある。
【0016】
好ましい実施形態において、母材12の生体適合性ポリマーは、非哺乳類材料を含み、これは最も好ましくはポリ[β−(1→4)−2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコピラノースであり、より一般的にはキトサンと呼ばれる。母材12のために選択されるキトサンは、好ましくは少なくとも約100kDa、より好ましくは少なくとも約150kDaの重量平均分子量を有する。最も好ましくは、キトサンは少なくとも約300kDaの重量平均分子量を有する。
【0017】
母材12を形成するに当たり、キトサンは、望ましくは酸、例えばグルタミン酸、乳酸、ギ酸、塩酸及び/又は酢酸と共に溶液中に入れられる。これらの中でも塩酸及び酢酸が最も好ましいが、その理由は、キトサン酢酸塩及びキトサン塩化物が血液への溶解に対して耐性を備えているのに対して、キトサン乳酸塩及びキトサングルタミン酸塩は備えてないためである。より大きな分子量(Mw)のアニオンは、キトサン塩の擬似結晶構造を破壊して、構造に可塑化作用(柔軟性の向上)をもたらす。又残念なことに、これらのアニオンは、これらのより大きな分子量のアニオンの塩の急速な血液への溶解ももたらす。
【0018】
母材12の好ましい一形態は、キトサン酢酸溶液を凍結及び凍結乾燥することにより形成されている0.035g/cm3未満の密度の「非圧縮性」キトサン酢酸母材12を含み、次にこれは0.6〜0.25g/cm3の密度、最も好ましくは約0.20g/cm3の密度まで圧縮することにより稠密化される。このキトサン母材12は又、圧縮された親水性構造として特徴付けられる。稠密化キトサン母材12は、望ましいと思われる上記の特性の全てを示す。これは又、以下に詳述する通り、使用時の母材に頑健性及び持続性をもたらす特定の構造的及び機械的な利点を有している。
【0019】
キトサン母材12は、頑健性、透過性、高比表面積を備えた正帯電の表面を有する。正帯電表面は、赤血球及び血小板の相互作用に対して高い反応性を有する表面をもたらす。赤血球膜は負に帯電しており、キトサン母材12に誘引される。この細胞膜はキトサン母材12と接触すると、この母材と融合する。これにより血塊が極めて急速に形成されるため、止血に通常必要とされている凝血タンパク質がすぐに必要とならなくなる。このため、キトサン母材12は、正常な個体及び抗凝固処置された個体の両者に対してだけでなく、更には血友病のような凝固障害を有する者に対しても有効である。キトサン母材12は又、細菌、内毒素及び微生物とも結合し、細菌、微生物及び/又はウイルス体を接触時に殺傷することできる。
【0020】
キトサン母材12の構造、組成、製造及びその他の技術的特徴の詳細については後述する。
【0021】
(2.裏打材)
組織包帯パッドアセンブリは、介護者の指及び手により操作できる大きさ及び構成を有している。裏打材14は、流体反応性キトサン母材12から介護者の指及び手を隔離する(例えば図8を参照)。裏打材14は、介護者の指又は手に接着又は粘着することなく、組織部位におけるキトサン母材12の取扱い、操作及び適用を可能とする。裏打材14は、合成及び天然のポリマーの低弾性のメッシュ及び/又はフィルム及び/又は織布を含んでもよい。応急的に外傷に適用する好ましい実施形態において、裏打材14は、流体非透過性のポリマー材料、例えばポリエチレン(3M 1774Tポリエチレンフォーム医療用テープ、厚さ0.056cm)を含むが、その他の相当する材料を使用してもよい。
【0022】
応急的に創傷に適用する裏打材に好適なその他のポリマーには、セルロースポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセンポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルポリマー、ポリエステル、ポリアミド又はこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
内部創傷への適用の場合は、再吸収性の裏打材を親水性スポンジ包帯形態で使用される場合がある。好ましくは、このような包帯形態は、生体分解性を有する生体適合性の裏打材を使用する。生体分解性の合成材料には、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(β−ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリホスファゼン、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンコポリマー、及び上述のポリマーの合成に使用される単量体のコポリマー、又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。天然の生体分解性ポリマーには、キチン、アルギン、澱粉、デキストラン、コラーゲン及び卵白が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
(3.パウチ)
図3に示す通り、キトサン母材12は、望ましくは気密性のヒートシールされたホイル内張のパウチ16内に低水分含有量、好ましくは5%以下において、使用前に真空パッケージ化される。抗微生物バリアパッドアセンブリ10はその後、ガンマ線照射を使用することによりパウチ内で最終滅菌される。
【0025】
パウチ16は、使用時に介護者によって剥離開封されるように構成されている(図4及び5を参照)。パウチ16は、一端に抗微生物バリアパッドアセンブリ10を取り出す剥がし口がある。パウチ16の反対側の端部をつかんで引き離すと、抗微生物バリアパッドアセンブリ10が露出して使用できるようになる。
【0026】
(B.抗微生物バリアパッドアセンブリの使用)
パウチ16から取り出したら(図6を参照)、抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、すぐに標的組織部位へ接着できる状態となる。接着を促進する予備適用操作を行う必要はない。例えば、使用のために保護材を剥がして接着面を露出する必要はない。接着面はin situで形成されるが、その理由は、キトサン母材12自体が血液、流体又は水分と接触すると、強力な接着特性を発揮するためである。
【0027】
望ましくは、抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、パウチ16の開封から1時間以内に傷害部位に適用する。図7に示す通り、抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、部位の形状及び形態に合わせてその場で予め成形し適合させてもよい。図11及び12に示す通り、抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、他の構成、例えばカップ形状に意図的に成型することにより、処置部位の特定の形状及び形態に最適に合致させることができる。処置部位への適用前に抗微生物バリアパッドアセンブリ10を成形する又は他の態様により操作する間、介護者は手又は指の水分がキトサン母材12に接触しないようにしなければならない。これによりキトサン母材12が粘着性になり、取り扱いづらくなる。これが裏打材14の主要な目的であるが、裏打材14は又、母材に追加の機械的支持及び強度を与える。
【0028】
望ましくは、図8に示す通り、一定の圧力を少なくとも2分間加えることにより、キトサン母材12の本来の接着活性を生じさせることができる。キトサン母材12の接着強度は、印加する圧力の持続時間と共に増大し、これは最大約5分間とする。この時間にわたり抗微生物バリアパッドアセンブリ10に均等な圧力を加えることで、より均一な接着及び創傷治癒がもたらされる。Kerlixロール18(図9Aを参照)を使用して圧力を加えることが非常に効果的であることがわかっている。
【0029】
特有の機械的及び接着特性を有するため、複数の包帯パッドアセンブリを必要に応じて重ねて、創傷又は組織の部位を埋めることができる。その場合、1つのパッドアセンブリ10のキトサン母材12が、隣接する包帯パッドアセンブリ10の裏打材14に接着することになる。
【0030】
包帯パッドアセンブリ10は又、創傷組織部位の大きさに合わせてその場で引き裂くか切り取ってもよい(図10を参照)。良好な組織接着及び密封を行うには、創傷又は組織の部位よりも包帯パッドアセンブリ10の周囲を少なくとも半インチ大きくすることが望ましい。そして、より小さなパッチ片の包帯アセンブリをその場で切り取り(図11を参照)、先に適用したパッドアセンブリの周囲に埋め込み、接着させることにより、処置部位の形状及び形態に最適に適合させることができる。
【0031】
組織パッド包帯アセンブリが傷害部位に付着しない場合は、これを外して廃棄し、別の新しい包帯パッドアセンブリ10を適用する。深い組織面を有する、重度の組織破壊が見られる創傷、又は貫通している創傷においては、裏打材14を剥がしてキトサン母材12を創傷に埋め込み、第2の包帯で創傷を被うことが、極めて効果的であることがわかっている。
【0032】
2〜5分間圧力をかけた後、及び/又は創傷又は組織部位が良好に包帯で接着され、被覆されたことで出血を制御できたら、包帯を固定するため、及び創傷に対して清浄なバリアをもたらすために、第2の従来の包帯(例えばガーゼ)を適用することが望ましい。創傷が後に水中に浸水する場合は、防水被覆を適用することで包帯が過剰に水和しないようにすることが必要である。
【0033】
望ましくは、FDA通過の応急処置包帯形態の場合、完全な外科的修復を得るには、適用から48時間以内に抗微生物バリアパッドアセンブリ10を除去する。抗微生物バリアパッドアセンブリ10は創傷から剥がし取ることができ、一般的には単一の完全な包帯として創傷から分離する。場合によっては、残留するキトサンゲルが残存する場合があり、その場合は食塩水又は水を使用して、軽くこすり、ガーゼ包帯で除去することができる。キトサンは体内で生体分解性を有するため、分解されると無害のグルコサミンとなる。更に、応急処置包帯の場合は、完全な修復時に創傷からキトサンを全て除去することが望ましい。前述の通り、生体分解性の包帯は体内での使用のために形成されてもよい。
【0034】
(実施例1)
(使用活動報告)
アフガニスタン及びイラクにおける自由化作戦においてその期間中の衛生兵により作成された活動報告では、包帯パッドアセンブリが有害作用を伴うことなく良好な臨床的有用性を有することが明らかにされている。テキサス州フォートサムヒューストンの米国陸軍外科研究所は、重度の致命的出血を有する外傷モデルで包帯パッドアセンブリ10の評価を行い、この包帯を標準的な4×4インチの木綿ガーゼ包帯と比較した。その結果、抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、血液の喪失を有意に低減し、蘇生に使用する体液の必要性を低減した。1時間における生存率は、綿花ガーゼ適用の生存群よりも抗微生物バリアパッドアセンブリ10の適用群において増大した。衛生兵は、銃弾創傷、榴散弾、地雷及びその他の傷害を良好に治療できたが、従来の創傷包帯では不可能であった。
【0035】
(C.組織包帯パッドアセンブリの製造)
抗微生物バリアパッドアセンブリ10の作成のための望ましい方法を以下に記載する。この方法は図16に模式的に示す。当然ながら他の方法も使用できる。
【0036】
(1.キトサン溶液の調製)
キトサン溶液を製造するために使用するキトサンは、好ましくは0.78超0.97未満の脱アセチル化分数度を有する。最も好ましくは、キトサンは0.85超0.95未満の脱アセチル化分数度を有する。好ましくは、母材に加工するために選択するキトサンは、30rpmでスピンドルLVIを使用した場合に、1%(w/w)酢酸(AA)の1%(w/w)溶液中25℃において約100センチポイズ〜約2000センチポイズの粘度を有する。より好ましくは、キトサンは、30rpmでスピンドルLVIを使用した場合に、1%(w/w)酢酸(AA)の1%(w/w)溶液中25℃において約125センチポイズ〜約1000センチポイズの粘度を有する。最も好ましくは、キトサンは、30rpmでスピンドルLVIを使用した場合に、1%(w/w)酢酸(AA)の1%(w/w)溶液中25℃において約400センチポイズ〜約800センチポイズの粘度を有する。
【0037】
キトサン溶液は、好ましくは固体のキトサンのフレーク又は粉末に水を添加することにより25℃で製造し、固体は混合、攪拌又は振とうにより液体中で分散させる。キトサンを液体中で分散させる際には、酸成分を添加して分散体全体に渡って混合することによりキトサン固体の溶解を誘発する。溶解速度は、溶液の温度、キトサンの分子量及び混合の程度により異なる。好ましくは、溶解手順は、混合ブレード付の閉鎖タンク反応器又は閉鎖回転容器内で行う。これによりキトサンの均質な溶解が確保され、高粘度の残留物が容器側面に捕獲される機会がなくなる。好ましくは、キトサン溶液のパーセント(w/w)は0.5%キトサン超2.7%キトサン未満である。より好ましくは、キトサン溶液のパーセント(w/w)は1%キトサン超2.3%キトサン未満である。最も好ましくは、キトサン溶液のパーセントは1.5%キトサン超2.1%キトサン未満である。好ましくは、使用する酸は酢酸である。好ましくは、酢酸は0.8%超4%未満の酢酸溶液パーセント(w/w)となるように溶液に添加する。より好ましくは、酢酸は1.5%超2.5%未満の酢酸溶液パーセント(w/w)となるように溶液に添加する。
【0038】
キトサン母材12の構造又は形態を製造する手順は、一般的に溶液から行い、そして、(相分離を生じるための)凍結、(フィラメントを製造するための)非溶媒ダイス押し出し、(フィラメントを製造するための)電気紡績、(透析及びフィルター膜を製造するために一般的に使用される)非溶媒の相反転及び沈殿、又は予備成型されたスポンジ様又は織布製品への溶液コーティングのような技法を使用して達成できる。凍結の場合は複数の異なる相が凍結により形成され(一般的に水は凍結して氷となり、キトサン生物材料は異なる固相に分化する)、凍結した溶媒(一般的に氷)を除去するために別の手順が必要となり、従って、凍結構造を撹乱することなくキトサン母材12を製造できる。これは凍結乾燥及び/又は凍結置換手順により達成される場合がある。フィラメントは非織布紡績プロセスにより非織布のスポンジ様メッシュに形成することができる。或いは、フィラメントは、従来の紡績及び織布過程によりフェルト織布に製造される場合がある。生物材料スポンジ様製品の製造に使用される場合があるその他のプロセスには、固体キトサン母材12から追加の細孔原料を溶解させる手順、又は前記母材から材料を掘り抜く手順が含まれる。
【0039】
(2.水性キトサン溶液の脱気)
好ましくは(図14手順Bを参照)キトサン生物材料は一般的な大気ガスを脱気する。一般的に、脱気はキトサン生物材料から十分な残留ガスを除去することであり、これにより、後の凍結操作を行う際にガスが散逸して、望ましくない大型の空隙又は大型の捕獲気泡が主題の創傷包帯製品中に形成されないようにする。脱気手順は、一般的に溶液の形態でキトサン生物材料を加熱した後、これに真空を印加することにより行われる場合がある。例えば、脱気は、溶液を攪拌しながら、キトサン溶液を約45℃に加熱し、その直後に約500mTorrの真空を約5分間印加することにより行ってもよい。
【0040】
一実施形態において、特定のガスを溶液に戻すことにより初期脱気後の分圧を制御することができる。このようなガスには、アルゴン、窒素及びヘリウムが含まれるが、これらに限定されないと思われる。この手順の利点は、これらのガスの分圧を含有する溶液が凍結により微小空隙を形成する点である。その後、微小空隙は、氷前線の前進に従い、スポンジを通過して移動する。これにより、良好な境界線を有する制御されたチャンネルが残り、これがスポンジ細孔の相互接続性を良好にする。
【0041】
(3.水性キトサン溶液の凍結)
次に(図14手順Cを参照)、一般的にこの時点では上記の通り酸性溶液中にあり脱気されているキトサン生物材料を凍結手順に付す。凍結は、好ましくは金型内に支持されたキトサン生物材料溶液を冷却し、室温から凍結点未満の最終温度まで溶液の温度を低下させることにより行われる。より好ましくは、この凍結手順は、プレート凍結器上で実施することにより、プレートの冷却面を介した熱の損失により金型内のキトサン溶液を通過して熱勾配を導入する。好ましくは、このプレート冷却面は、金型と良好な熱的接触状態にある。好ましくは、キトサン溶液及び金型の温度は、プレート凍結器表面に接触する前にほぼ室温であるのがよい。好ましくは、プレート凍結器表面の温度は、金型+溶液の導入前に−10℃以下であるがよい。好ましくは、金型+溶液の熱質量は、プレート凍結器シェルフ+伝熱流体の熱質量より小さい。好ましくは、金型は、例えば金属部材、例えば鉄、ニッケル、銀、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、バナジウム、モリブデン、金、ロジウム、パラジウム、白金及び/又はこれらの組み合わせから形成されるが、これらに限定されない。金型は又、キトサン溶液の酸成分とキトサン塩母材の反応が起こらないようにするために、薄膜の不活性の金属コーティング、例えばチタン、クロム、タングステン、バナジウム、ニッケル、モリブデン、金及び白金によりコーティングされる場合もある。断熱性のコーティング又は部材を金属金型と共に使用することで、金型内の熱伝達を制御する場合がある。好ましくは、金型表面は、凍結したキトサン溶液と結合しない。金型の内面は、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、フッ素化エチレンポリマー(FEP)又はその他のフッ素化ポリマー材料から形成した薄膜永久結合フッ素化離型コーティングによりコーティングされる。コーティングされた金属金型が好ましいが、薄壁プラスチック金型が溶液を支持するための好都合な代替品となりえる。このようなプラスチック金型には、例えばポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン及びポリオレフィンから射出成型、マシニング又は熱成形により形成された金型が含まれるが、これらに限定されないと思われる。断熱性部材の局所的設置と組み合わせた金属金型の利点は、これらにより凍結スポンジ内部の熱流及び構造の制御が向上するという点である。熱流制御におけるこの進歩は、金型内の熱伝導性及び断熱性部材の設置時に生じる熱伝導性の大きな差に起因する。
【0042】
キトサン溶液をこのような方法で凍結することにより、創傷包帯製品の好ましい構造が製造可能となる。
【0043】
以下に示す通り、プレート凍結温度は最終キトサン母材12の構造及び機械的特性に影響する。プレート凍結温度は、好ましくは約−10℃以下、より好ましくは約−20℃以下、最も好ましくは約−30℃以下であるのがよい。−10℃で凍結する場合、非圧縮性キトサン母材12の構造は極めて開放的であり、開放スポンジ構造全体に渡り垂直となる。−25℃で凍結すると、非圧縮性キトサン母材12の構造はより閉鎖的になるが、なお垂直のままである。−40℃で凍結すると、非圧縮性キトサン母材12の構造は閉鎖され、垂直ではなくなる。代わりに、キトサン母材12は、より多くの強化された相互メッシュ状態の構造を有する。キトサン母材12の接着/粘着密封特性は、より低温の凍結温度を使用するほど向上することが判明している。約−40℃の凍結温度であれば、優れた接着/粘着特性を有するキトサン母材12の構造を形成することができる。
【0044】
凍結手順では、所定時間にわたり温度を低下させる場合がある。例えば、キトサン生物材料溶液の凍結温度は、約90分〜約160分にわたり約−0.4℃/mm〜約−0.8℃/mmの一定の温度低下勾配でプレートを冷却することにより、室温から−45℃まで低下させる場合がある。
【0045】
(4.キトサン/氷母材の凍結乾燥)
凍結キトサン/氷母材は、凍結物質の間隙内から水分を除去することが望ましい(図14手順Dを参照)。この水分除去手順は、凍結キトサン生物材料の構造的完全性を損なうことなく達成される。これは最終的なキトサン母材12の構造的配置を破壊する可能性がある液相の生成を伴うことなく達成される。即ち、凍結キトサン生物材料中の氷は、中間的な液相を形成することなく、固体凍結相から気相に至る(昇華する)。昇華した気体は、凍結キトサン生物材料よりも大幅に低い温度で真空濃縮チャンバー内にて氷として捕獲される。
【0046】
この水分除去手順を実施する好ましい態様は、凍結乾燥によるものである。凍結キトサン生物材料の凍結乾燥は、凍結キトサン生物材料を更に冷却することにより行うことができる。一般的には、その後に真空が印加される。次に、この真空を印加した凍結キトサン生物材料を徐々に加熱する場合がある。
【0047】
より詳細には、凍結キトサン生物材料は、好ましくは少なくとも約1時間、より好ましくは少なくとも約2時間、最も好ましくは少なくとも約3時間にわたり、好ましくは約−15℃、より好ましくは約−25℃、最も好ましくは約−45℃にて、その後の凍結に付す場合がある。この手順の後、約−45℃、より好ましくは約−60℃、最も好ましくは約−85℃未満の温度でコンデンサーの冷却を行う。次に、好ましくは最大約100mTorr、より好ましくは最大約150mTorr、最も好ましくは最大約200mTorrの量の真空を印加する。この真空を印加した凍結キトサン材料は、好ましくは少なくとも約1時間、より好ましくは少なくとも約5時間、最も好ましくは少なくとも約10時間にわたり、好ましくは約−25℃、より好ましくは約−15℃、最も好ましくは約−10℃にて加熱することができる。
【0048】
更に凍結乾燥は、真空圧を約200mTorrに維持しながら、好ましくは少なくとも約36時間、より好ましくは少なくとも約42時間、最も好ましくは少なくとも約48時間にわたり、好ましくは約20℃、より好ましくは約15℃、最も好ましくは約10℃のシェルフ温度にて行われる。
【0049】
(5.キトサン母材の稠密化)
稠密化前のキトサン母材(密度約0.03g/cm3)は、「非圧縮性キトサン母材」と呼ばれる。この非圧縮性母材は血液中に急速に溶解し、不良な機械的特性を有していることから、止血には有効でない。キトサン生物材料は必ず圧縮される(図16手順Eを参照)。加熱プラテンによる親水性母材ポリマー表面に対する通常の圧縮負荷を使用することで、乾燥「非圧縮性」キトサン母材12を圧縮して母材の厚さを低減し、母体の密度を増大させることができる。場合により「稠密化」と略称される圧縮手順は、キトサン母材12の接着強度、粘着強度及び溶解耐性を顕著に増大させる。閾値密度(約0.1g/cm3)を超えて圧縮され、且つ適切に凍結されたキトサン母材12は、37℃の流動血液中には容易に溶解しない。
【0050】
圧縮温度は、好ましくは約60℃以上であるのがよく、より好ましくは約75℃以上、約85℃以下であるのがよい。
【0051】
稠密化の後、母材12の基部(「活性」)表面(即ち組織に曝露されている表面)において、母材12の密度は、母材12の上部表面(裏打材14が適用されている面)と異なっていてもよい。例えば、活性表面で測定した平均密度が0.2g/cm3の最も好ましい密度値又はほぼ最も好ましい密度値である一般的な母材12において、上部表面で測定した平均密度は、顕著に低値、例えば0.05g/cm3となる。稠密化母材12に関する本明細書に記載した所望の密度範囲は、血液、流体又は水分への曝露が最初に起こる母材12の活性側近傍に存在することを意図している。
【0052】
稠密化されたキトサン生物材料は次に、好ましくは約75℃の温度まで、より好ましくは約80℃の温度まで、最も好ましくは約85℃の温度まで、キトサン母材12をオーブンで加熱することにより予備コンディショニングする。予備コンディショニングは、一般的に約0.25時間まで、好ましくは約0.35時間まで、より好ましくは約0.45時間まで、最も好ましくは約0.50時間まで行われる。この予備コンディショニング手順は、接着特性の20〜30%の損失における僅少な犠牲で溶解耐性の更に顕著な向上をもたらす。
【0053】
(6.稠密化されたキトサン母材への裏打材の固定)
裏打材14は抗微生物バリアパッドアセンブリ10を形成するためにキトサン母材12に固定する(図14手順Gを参照)。裏打材14は、キトサン母材12の上層と直接接着することにより、連結又は結着することができる。或いは、3M9942アクリレート皮膚接着剤又はフィブリン糊又はシアノアクリレート糊のような接着剤を使用することもできる。
【0054】
(7.パウチ内への封入)
抗微生物バリアパッドアセンブリ10はその後、望ましくはアルゴン又は窒素ガスの何れかのような不活性ガスでパージされ、真空印加され、ヒートシールされたパウチ16にパッケージ化することができる(図14手順Hを参照)。パウチ16は、長期間(少なくとも24ヶ月)にわたり内部の内容物の滅菌性を維持し、同じ期間にわたり水分及び大気ガスの浸潤に対して極めて高度なバリアをもたらす。
【0055】
(8.滅菌)
パウチ封入後、処理した抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、望ましくは滅菌手順に付す(図14手順Iを参照)。抗微生物バリアパッドアセンブリ10は、多くの方法で滅菌することができる。例えば、好ましい方法には放射線照射、例えばガンマ線照射によるものがあり、これにより創傷包帯の血液溶解耐性、引っ張り特性及び接着特性が更に増強される。放射線照射は、少なくとも約5kGy、より好ましくは少なくとも約10kGy、最も好ましくは少なくとも約15kGyのレベルで行うことができる。
【0056】
(D.親水性ポリマー構造の適合性特性の改変)
使用直前に抗微生物バリアパッドアセンブリ10をそのパウチ16から取り出す(図4〜6を参照)。その低い水分含有量のため、抗微生物バリアパッドアセンブリ10はパウチ16から取り出すと比較的柔軟性がないように感じられる可能性があり、標的傷害部位の湾曲した不規則な表面にはすぐになじまない場合がある。標的傷害部位上への留置の前にパッドアセンブリ10を屈曲及び/又は成型する手順は、既に記載した通りであり、推奨される手順である。パッドアセンブリ10を成形する能力は、傷害血管にパッドアセンブリ10をじかに付着させることが重度の出血の制御には必要であることから、過度の出血を制御する場合には特に重要である。一般的には、このような出血血管は、不規則な形状の創傷内の深部に見られる。
【0057】
パッドアセンブリ10が1例である親水性ポリマースポンジ構造では、構造が創傷の形状に合わせて成形され、傷害の伏在する不規則な表面とスポンジ構造の付着が達成されることから、構造が柔軟性及び適合性を有しているほど、引裂や破砕に対する耐性がより強くなる。引裂や破砕に対する耐性は、創傷の密封及び止血効果を維持することから、有利である。適合性及び柔軟性は、罅割れや多大なパッドアセンブリ10の溶解を伴うことなく、深いまたは断裂形状の創傷に対して親水性のポリマースポンジ構造(例えばパッドアセンブリ10)を負荷させる能力をもたらす。
【0058】
キトサンを有する溶液中の特定の可塑剤の使用により向上した柔軟性及び適合性は、特定の可塑剤はパッドアセンブリ10の別の構造的属性を変化させる可能性があることから、問題となる場合がある。例えば、キトサングルタミン酸及びキトサン乳酸はキトサン酢酸よりも柔軟である。しかし、グルタメート及びラクテートのキトサン酸塩は血液の存在下で急速に溶解するのに対し、キトサンのアセテート塩はそうではない。即ち、適合性及び柔軟性の向上は、頑健性及び溶解耐性の持続性の低下により相殺される。
【0059】
適合性及び柔軟性の向上は、頑健性及び溶解耐性の持続性という利益となる特徴を損失することなく、製造後の何れかの親水性ポリマースポンジ構造の機械的操作により達成できる。そのような機械的操作を製造後に達成できる幾つかの方法を以下に記載する。方法はキトサン母材12に関するものとして記載するが、方法は、キトサン母材12が一例にすぎない親水性ポリマースポンジ構造の如何なる形態とともに使用する場合にも広範に適用される。
【0060】
(1.親水性ポリマースポンジ構造の制御された微小破壊)
キトサン母材12のような親水性ポリマースポンジ構造のサブ構造の制御された微小破壊は、乾燥パッドアセンブリ10の系統的機械的予備コンディショニングにより達成することができる。パッドアセンブリ10のこの形態の制御された機械的予備コンディショニングは、使用時のパッドアセンブリ10の著しい不良を招くことなく、柔軟性及び適合性の向上を達成することができる。
【0061】
望ましくは、図15に示す通り、パッドアセンブリ10(即ちキトサン母材12)の活性前面を垂直に維持し、深さ1〜1.5mmの手作業により繰り返す手指の押し付け動作48を表面全体に適用することができる。局所的な圧力印加の後、図16Aに示す通り、方形のパッドアセンブリ10の一端を、活性前面を垂直に保持しながら、直径7.5cm×長さ12cmのシリンダー50の側面に接着することができる。次にシリンダー50をパッドアセンブリ10に巻きつけ、パッドアセンブリ10に直径7.5cmの凹部を作成する。シリンダー50を取り外し、パッドアセンブリ10を90度回転(図16Bを参照)させて更に別の直径7.5cmの凹部をパッドアセンブリ10に作成する。この処理の後、パッドアセンブリ10を裏返す(即ち、裏打材14はここで直立する)(図17A及び18Bを参照)ことにより、90度オフセットの直径7.5cmの凹部をパッドアセンブリ10の裏打材14に形成できるようにする。本明細書に記載するパッドアセンブリ10の操作は、最終出荷パッケージ内への投入及び密封直前の加工時に機械的に実施されることが想定される。
【0062】
上述の機械的予備コンディショニングは、シリンダー上の手指による探索及び/又は牽引による予備コンディショニングに限定されない。予備コンディショニングには又、スポンジの止血効果の多大な損失を伴うことなく増強されたスポンジの屈曲率をもたらす何れかの親水性ポリマースポンジ構造内部における機械的変化を与える何れかの技法が含まれる場合もある。このような予備コンディショニングには、何れかの親水性ポリマースポンジ構造の機械的操作が含まれ、例えば屈曲、捻転、回転、振動、探索、圧縮、伸長、振とう又は混練が含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
(2.親水性ポリマースポンジ構造の制御された微小構造)
所定の親水性ポリマースポンジ構造内の制御された微小構造(深型レリーフパターンの形成による)は、使用時のパッドアセンブリ10の著しい不良を招くことなく、柔軟性及び適合性の向上を達成することができる。キトサン母材12に関しては、キトサン母材12の活性表面上又は裏打材14上の何れか、又は両面において深型レリーフパターンを形成することができる。
【0064】
図18A及び18Bに示す通り、深型の(0.25〜0.50cm)レリーフ表面パターン52(微小構造の表面)は、80℃におけるスポンジ熱圧縮によりパッドアセンブリ10において形成できる。スポンジ熱圧縮は制御されたヒーターアセンブリ56を包含するポジレリーフプレスプラテン54を使用して実施できる。使用できるレリーフパターン52の型の種々の代表例を図24A〜24Dに示す。ネガレリーフパターンは加熱プラテン54に連結したポジレリーフから形成される。
【0065】
パターン52の目的は、レリーフパターンが局部ヒンジとよく似た機能を果たすことで全長方向の屈曲性が向上するように、レリーフ52と直交する方向の屈曲抵抗を低減して乾燥パッドアセンブリの適合性を向上させることである。
【0066】
このレリーフ52はパッドアセンブリ10の裏打材14には適用するが、傷害の密封及び局所的な血塊形成の促進により止血をもたらす役割を果たすキトサン母材12には適用しないことが好ましい。基部のキトサン母材12における微小構造の深型レリーフパターン52は、キトサン母材12を介して血液が退避するためのチャンネルを与えることにより、密封性の損失に備えることができる。
【0067】
この可能性を低減するために、図24E及び24Fに示す型の別のレリーフパターン52を基部レリーフにおいて使用してよく、これは密封性の損失をもたらす可能性がより低い。従って、レリーフ52は母材の基部において使用してよいが、裏打材14又は母材の上部表面におけるその使用と比べて好適度はなお低いままである。スポンジ圧縮時に上部及び底部のプラテンに連結した2つのポジレリーフ表面を使用することで、パッドアセンブリ10の上部表面及び底面にレリーフパターンを同時に適用することも可能である。しかし、キトサン母材12の上部表面に1つのポジレリーフを使用することで単一の深型レリーフを作成するのがより好ましい。
【0068】
(実施例2)
機械的屈曲試験を被験パッドアセンブリ(各々10cm×10cm×0.55cm、使用した接着性裏打材14は3M1774Tポリエチレンフォーム医療用テープ、厚さ0.056cm)に対して実施した。1つのパッドアセンブリ10(パッド1)は、主に垂直のラメラ構造を有するキトサン母材12を備えていた(即ち、上述の通り、より高い相対凍結温度で製造)。その他のパッドアセンブリ10(パッド2)は、主に水平の相互メッシュのラメラ構造を有するキトサン母材12を備えていた(即ち、上述の通り、より低い相対凍結温度で製造)。
【0069】
パッド1及び2の各々を半分に切断した。各圧縮キトサンパッド1及び2の2枚の半型(5cm×10cm×0.55cm)を80℃で局所圧縮し、図19Aの形態で裏打材14上にレリーフパターンを作成した。パッド1及び2のもう一方の半型は未処理のままとし、対照として使用した。
【0070】
メスを使用してパッドアセンブリ10の各半型から3つの試験片(10cm×1.27cm×0.55cm)を切り出し、これらの試験片を3点屈曲性試験に付した。試験片は上部表面に深さ0.25cm×幅0.25cmのレリーフ刻印を有していた。各刻印はその近隣刻印から1.27cm離れていた。50Nロードセル付Instron1軸メカニカルテスター5844型で3点屈曲性試験を実施することにより、スパン5.8cm、クロスヘッドスピード0.235cm/sで、厚さ0.55cmの試験片の屈曲率を測定した。屈曲負荷は2つのパッド1及び2(処理及び未処理)について中点の屈曲変位に対してプロットし、それぞれ図20A及び20Bに示した。パッド1及び2(処理及び未処理)の処理及び未処理の試験片の屈曲率をそれぞれ図9A及び9Bに示す。
【0071】
屈曲試験により、乾燥パッドアセンブリ10の何れかの型の制御された微小構造による柔軟性の有意な向上が示されている。
【0072】
【表1】
(3.親水性ポリマースポンジ構造における制御された垂直チャンネル形成)
キトサン母材12が一例である所定の親水性ポリマースポンジ構造の塊に進入及び通過する血流の制御された導入は、向上した初期構造の適合性のため、及び、構造の溶解に対する耐性の持続性のためにも望ましいものである。所定の親水性ポリマースポンジ構造内への垂直チャンネルの制御された形成は、使用時の構造の粗放な誤作動を発生することなく、柔軟性及び適合性の向上を達成できる。
【0073】
親水性ポリマースポンジ構造の塊に進入及び通過する血流の制御された導入は、向上した構造の初期適合性のため、及び、構造の溶解に対する耐性の持続性のためにも望ましいものである。親水性ポリマースポンジ構造への血液吸収の向上は、構造内へ垂直チャンネルを導入することにより達成できる。チャンネルの横断面積、チャンネル深さ、及びチャンネル数密度は、血液吸収の適切な速度及び親水性ポリマースポンジ構造への血液吸収の分布を確保するために制御できる。キトサン母材12に関しては、一般的に5g〜15gの血液吸収を伴うキトサン母材12嵩の200%増大により、7MPaから2MPaまでほぼ72%の屈曲率の低下が起こる場合がある。更に又、キトサン母材12への血液の制御された導入により、母材の粘着性の向上がもたらされる場合がある。
【0074】
親水性ポリマー母材の強度のこのような向上は、同母材との血小板及び赤血球のような血液成分の反応によるものである。スポンジ構造内への血液の導入、並びにスポンジ構造と血液成分が反応して血液と親水性ポリマースポンジ構造の「アマルガム」が生成される時間の経過の後、それ以降のスポンジ構造は体液中の溶解に対して耐性を備えることになり、特にキトサン酸塩母材の場合には、食塩水の導入によって容易に溶解できなくなる。一般的に、特にキトサン酸塩母材の場合、血液と親水性ポリマースポンジ構造の反応の前に食塩水を導入することで、親水性ポリマースポンジ構造の急速な膨潤、ゲル化及び溶解が誘発される。
【0075】
しかし、キトサン母材12のような所定の親水性ポリマースポンジ構造内への血液の過剰な導入により、流体化の崩壊がもたらされる場合がある。従って、平均チャンネル横断面積、平均チャンネル深さ、及びチャンネル数密度は、血液吸収の速度が親水性ポリマースポンジ構造の構造を犠牲にすることがないように制御しなければならない。
【0076】
親水性ポリマースポンジ構造における垂直チャンネルの制御された分布は、スポンジ構造配合物の凍結手順の間に達成することができ、或いは圧縮(稠密化)手順の間のスポンジ構造の穿孔により機械的に達成される場合がある。
【0077】
基部核化凍結手順では、残留ガスによる凍結溶液の過飽和により、その溶液中に垂直チャンネルを導入することができる。同ガスは、凍結を開始すると、金型内の溶液の基部において気泡形成の核となる。気泡は凍結手順の間に溶液を通って上昇し、垂直チャンネルを保持する。得られたスポンジ母材内のチャンネルは、凍結乾燥中のチャンネル周囲の氷の昇華により保存される。
【0078】
或いは、チャンネルは金型の基部において垂直の棒材の配置により凍結手順の間に形成される場合がある。好ましくは、金型は、例えば金属部材、例えば鉄、ニッケル、銀、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、バナジウム、モリブデン、金、ロジウム、パラジウム、白金及び/又はこれらの組み合わせから形成されるが、これらに限定されない。金属棒材は、好ましくは、例えば金属部材、例えば鉄、ニッケル、銀、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、バナジウム、モリブデン、金、パラジウム、ロジウム又は白金及び/又はこれらの組み合わせから形成されるが、これらに限定されない。金型は又、キトサン溶液の酸成分とキトサン塩母材の反応が起こらないようにするために、薄膜の不活性の金属コーティング、例えばチタン、クロム、タングステン、バナジウム、ニッケル、モリブデン、金及び白金によりコーティングされる場合もある。断熱性のコーティング又は部材を金属金型及び垂直棒材と共に使用することで、金型内及び垂直棒材内の熱伝達を制御する場合がある。金属金型及び垂直金属棒材が好ましいが、プラスチックの金型及び垂直プラスチック金型棒材がチャンネル形成のための好都合な代替となり得る。断熱性部材の局所的設置と組み合わせた金属金型及びその金属棒材の利点は、これらにより凍結スポンジ構造内部の熱流及び構造の制御が向上するという点である。熱流制御におけるこの進歩は、金型内の熱伝導性及び断熱性部材の設置時に生じる熱伝導性の大きな差、及び棒材を通過する親水性ポリマースポンジ構造溶液の塊内に局所的熱勾配を生じさせる能力に起因する。
【0079】
スポンジ構造を凍結乾燥した後、圧縮(稠密化)手順の間に垂直チャンネルを導入することができる。例えば図21A及び21Bに示す通り、圧縮固定具58は、スポンジ構造の基部において短い(深さ2.5mm)等しい間隔をおいた穿孔62を設けるためのピンクッションの幾何学模様のデバイス60を担持している。
【0080】
穿孔62は、親水性ポリマースポンジ構造の基部に侵入して通過する緩徐な制御された速度における血液の局所的浸潤を可能にするためのものである。この浸潤は、第1に血液による乾燥スポンジの可塑化による母材のより急速な柔軟性の変化を可能にすることを目的としている。第2に、母材を安定化させて体腔内に存在する後続溶解物質に抵抗するために母材を通過する血液のより均一な分散及び混合をもたらすことである。穿孔を有する基部表面が存在しない場合、1、6、16及び31分後には、血液は単に表面的にスポンジ構造に浸透するのみである(深さ<1.5mm)に対し、穿孔が存在すればその血液は31分後に1.8〜2.3mmの深さまで浸透することが観察される。穿孔のない母材と比べて穿孔の有る母材においては屈曲率のより急速な低下が結果として起こる。
【0081】
(II.組織包帯シートアセンブリ)
(A.概要)
図22には、組織包帯シートアセンブリ64を示す。前述の図1に示した抗微生物バリアパッドアセンブリ10と同様に、組織包帯シートアセンブリ64は、使用時において血液若しくは体液又は水分の存在下において組織に接着することができる。即ち、組織包帯シートアセンブリ64は又、出血又はその他の形態の体液の喪失に対して、組織の傷害又は外傷又は接触の部位の止血、密封及び/又は安定化のためにも使用できる。抗微生物バリアパッドアセンブリ10の場合と同様に、組織包帯シートアセンブリ64で処置される組織部位には、例えば動脈及び/又は静脈の出血、又は裂傷、又は流入/刺入創、又は組織穿孔、又はカテーテル挿入部位、又は熱傷、又は縫合が含まれても良い。組織包帯シートアセンブリ64は又、抗細菌及び/又は抗微生物及び/又は抗ウイルスの保護バリアを、組織処置部位及びその周囲に形成してもよい。
【0082】
図22は、組織包帯シートアセンブリ64の使用前の状態を示す。図23に最もよく示されている通り、組織包帯シートアセンブリ64は、組織包帯母材68の層の間に封入される織布又は非織布のメッシュ素材のシート66を含む。組織包帯母材68はシート66を含浸している。組織包帯母材68は、望ましくは抗微生物バリアパッドアセンブリ10に関して記載した通り、キトサン母材12を含む。しかし、他の親水性ポリマースポンジ構造も使用できる。
【0083】
組織包帯シートアセンブリ64の大きさ、形状及び構成は、所期の用途により異なってもよい。シートアセンブリ64は、直線、伸長、方形、円形、楕円、又はそれらの複合物又は組み合わせであってもよい。
【0084】
組織包帯シートアセンブリ64は出血領域において親水性ポリマースポンジ構造の急速な適合性を達成する。組織包帯シートアセンブリ64は、好ましくは薄膜(パッドアセンブリ10と比べて)であり、厚さは0.5mm〜1.5mmの範囲である。シートアセンブリ64の薄膜強化構造の好ましい形態はキトサン母材12又はスポンジを含み、一般的なキトサン母材密度は0.01〜0.20g/cm3であり、木綿ガーゼのような吸収性の包帯ネットにより強化されており、その結果、包帯厚さは1.5mm以下となる。
【0085】
シートアセンブリ64は、多重シートフラット型70(図24Aに示す通り)中にパッケージ化するためのコンパクトシート型(例えば10cm×10cm×0.1cm)として、又は、コンパクトロール型シートフォーム72(図24Bに示す通り)中にパッケージ化するための伸長シート型(例えば10cm×150cm×0.1cm)として製造することができる。シート66はアセンブリ64の全体に渡って強化作用を示し、更に血液吸収のための親水性ポリマースポンジ構造の多大な比表面積を与える。織布又は非織布のシート66も又、全体的な親水性ポリマースポンジ構造を強化する作用を有する。
【0086】
シート66は例えばガーゼ木綿メッシュのようなセルロース誘導物質から形成された織布及び非織布のメッシュ材を含むことができる。好ましい強化材には、合成及び天然のポリマーの吸収性低引張応力メッシュ及び/又は多孔性フィルム及び/又は多孔性スポンジ及び/又は編物が含まれるが、これらに限定されない。合成の生体分解性の材料には、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(β−ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシブチレート及び上記したポリマーの合成に使用される単量体コポリマーが含まれるが、これらに限定されない。天然のポリマーには、セルロース、キチン、アルギン、澱粉、デキストラン、コラーゲン及び卵白が含まれるが、これらに限定されない。非分解性の合成強化材には、ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレン、ポリプロピレンコポリマー、メタロセンポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルポリマー、ポリエステル及びポリアミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
(B.組織包帯シートアセンブリの使用)
薄膜シートアセンブリ64は極めて良好な適合性を有しており、傷害部位への親水性ポリマースポンジ構造(例えばキトサン母材12)の優れた密着を可能にする。シートの強化によりアセンブリ全体が強力に出血している領域において溶解耐性を備えることなる。シートアセンブリ64は圧力を使用することにより創傷部位内における親水性ポリマースポンジ構造(例えばキトサン母材12)の積層、圧縮及び/又はローリング、即ち「スタッフィング」(図25に示す通り)に適合しており、これにより強力な動脈及び静脈の出血に対して全体的構造を更に強化する。シート構造を自身上にスタッフィングすることにより、図32に示す通り、網目構造内で注入されている親水性ポリマー(例えばキトサン)との血液の相互作用は、創傷が特に深いかその他の理由により明らかに接触不可能である場合に、適用のために好都合となる。出血創傷内へのシートアセンブリ64のスタッフィング及びそれ自身上の圧縮化により、高度に接着性の不溶性で高度に順応した包帯形態が得られる。
【0088】
(C.組織包帯シートアセンブリの製造)
キトサン母材12密度約0.15gm/cm3を有する組織包帯シートアセンブリ64(10cm×10cm×0.1cm)は、0.38cmの深さまで2パーセント(2%)キトサン酢酸溶液で11cm×11cm×2cmの深型アルミニウム金型を充填することにより製造することができる(図26手順Aを参照)。
【0089】
図26(手順B)に示す通り、例えば10cm×10cmの吸収性ガーゼネットの層を含むシート66を金型中の溶液の上面の上に被覆し、キトサンに浸積させる。キトサンはシート66に含浸する。
【0090】
図26(手順C)に示す通り、更に深さ0.38cmのキトサンを含浸ガーゼシート66の上面の上に注ぎ込むことができる。
【0091】
図26(手順D)に示す通り、金型を例えば−30℃のシェルフ上のVirtis Genesis 25XL凍結乾燥機中に入れる。溶液を凍結させ、その後、凍結乾燥により氷を昇華させる。
【0092】
図26(手順E)に示す通り、得られたガーゼ強化シートアセンブリ64を0.155cmの厚さとなるまで80℃のプラテン間で圧縮する。圧縮されたシートアセンブリ64を次に30分間80℃で焼成する(図26手順F)。得られたシートアセンブリは前述の通り滅菌することができる。シートアセンブリ1つ以上を、シート型又はロール型の何れかにおいてヒートシールホイルライニングのパウチ74等(図27を参照)の内部にパッケージ化し、最終滅菌及び保存に付す。
【0093】
(実施例3)
(組織包帯シートアセンブリの屈曲特性)
組織包帯シートアセンブリ64の3点屈曲性試験を実施した。3点屈曲性試験は50Nロードセル付Instron1軸メカニカルテスター、5844型モデル上で実施し、スパン5.8cm及びクロスヘッドスピード0.235cm/sで試験片屈曲率を測定した。結果を図28に示す。図28では、試験した厚さ1.5mmの組織包帯シートアセンブリが、厚さ5.5mmの組織包帯パッドアセンブリよりも有意に適合性が高いことが明らかにされている。
【0094】
(実施例4)
(組織包帯シートアセンブリの接着特性)
組織包帯シートアセンブリ64の試験片(5cm×5cm×0.15cm)を製造後96時間以内に切り出した。シートアセンブリ64は試験前にガンマ線滅菌に付さなかった。試験片をクエン酸添加ウシ全血中に10秒間浸積し、その直後にSAWS試験に付した。試験中、3つの試験片を相互に積層し、複合キトサン密度を約0.15g/cm3とした。この試験の結果を図29に示す。
【0095】
図29Aに示す通り、組織包帯シートアセンブリ64の3層は長時間(即ち約400秒)約80mmHgの実質的に生理学的な血圧を保持した。これは密封と凝固があったことを示している。
【0096】
パッドアセンブリを使用した実験に基づけば、組織包帯シートアセンブリ64をガンマ線照射に付した後にも良好な接着/粘着特性が得られると期待された。図29Bがこれを照明しており、ガンマ線照射後、組織包帯シートアセンブリ64の3層は厚さ0.55cmのキトサン組織パッド10と非常に近似している性能を示した。
【0097】
(III.親水性ポリマースポンジ構造の更なる適応及び構成)
上述の開示内容は、主に創傷部位において血液及び/又は体液の喪失を停止するという状況における抗微生物バリアパッドアセンブリ10及び組織包帯シートアセンブリ64の使用に着目していた。その他の適応についても言及されており、ここではこれらの及びその他の追加の適応の一部を詳述する。
【0098】
当然ながら、ここで、一例がキトサン母材である圧縮された親水性ポリマースポンジ構造が保有している注目すべき技術的特徴を多様な形状、大きさ及び構成の包帯構造に組み込むことにより種々の異なる適応に対応できるに留意されたい。これから示す通り、所定の圧縮親水性ポリマースポンジ構造(例えばキトサン母材12)がとることのできる形状、大きさ及び構成は記載したパッドアセンブリ10及びシートアセンブリ64に限定されるものではなく、特定の適応の要求に従って変形してもよい。幾つかの代表的な例を以下に示すが、これらの例が限定された全ての例であるとは意図されない。
【0099】
(B.抗微生物バリア)
特定の適応において、治療の標的は、傷害によるか、又は、内部組織領域への接触口を樹立するという必要性によるかの何れかにより、妥協を余儀なくされている組織領域を通過する細菌及び/又は微生物の進入の防止となる。後者の状況の例には、例えば腹腔透析又は外部の尿又は結腸瘻バッグの連結に適合するため、非経口的栄養法を達成するため、又はサンプリング又はモニタリング装置に連結するための留置カテーテルの設置;又は切開部の形成後、例えば気管切開術、腹腔鏡下又は内視鏡下の処置又は血管へのカテーテル機器の導入の間に身体の内部領域に接触するため、等が含まれる。
【0100】
図40及び41には、抗微生物ガスケットアセンブリ82の代表的な一実施形態を示す。ガスケットアセンブリ82は接触部位、そして特に留置カテーテル82が留置される挿入部位に渡って留置されるような大きさ及び構成とする。抗微生物ガスケットアセンブリ82は、抗微生物要素を固定する組織接着担体要素84を包含する。望ましくは、抗微生物要素は稠密化を行っている前述した型のキトサン母材12を含む。しかしなお、キトサン構造の他の型、又は、他の親水性ポリマースポンジ構造又は組織包帯母材も一般的に使用できる。
【0101】
担体要素84は、望ましくは挿入部位に渡り抗微生物要素(望ましくはキトサン母材12)に連結するために接着表面86を含む。図30及び31において、抗微生物要素12及び担体84は通過穴90を含み、これは自身を通る留置カテーテル88の通過を可能にする。この配置において、通過穴90の内径は留置カテーテル88の外径と近似させることにより堅固な密着が得られる。但し、滞留するカテーテルのない切開部又は挿入部位のみがあるような状況においては、抗微生物要素は通過穴を包含しないことに留意すべきである。
【0102】
別の配置(図32を参照)においては、抗微生物バリアパッドアセンブリ10は前述の通り、抗微生物ガスケットアセンブリ82を含むように挿入部位の領域に相応する大きさ及び構成とする。この構成においては、パッドアセンブリ10には、留置カテーテルが存在する場合はその通過に適合するために通過穴90を設けることができる。
【0103】
別の代替となる配置(図33を参照)においては、組織包帯シートアセンブリ64は前述の通り、抗微生物ガスケットアセンブリ82を含むように挿入部位の領域に相応する大きさ及び構成とする。この構成においては、シートアセンブリ64には、留置カテーテルが存在する場合はその通過に適合するために通過穴90を設けることができる。
【0104】
(実施例5)
(抗微生物の特徴)
稠密化されたキトサン酢酸母材及び稠密化されたキトサン酢酸母材を取り込むことができる包帯の多様な形態は、表11に概説するin vitro試験により明らかにされる通り、抗微生物効果を有する。
【0105】
【表2】
稠密化キトサン母材12はその優れた接着及び機械的特性により四肢(表皮での使用)及び体内に対する抗微生物用途における使用のために顕著に適している。このような適用はカテーテルの進入/退出点における、サンプリング及び送達の用途のための医用デバイスの進入/退出点における、そして、患者がショック状態にあり決定的な外科的処置を受けられない場合の重度の傷害部位における感染及び出血の短期〜中期(0〜120時間)の制御を包含する。
【0106】
(実施例6)
(局所抗微生物効果のin vivo試験)
更に稠密化キトサン酢酸母材12のin vivo試験を実施し、同様の包帯及び治療法、特にアルギネート包帯及びAgスルファジアジンと比較した。試験は雄性マウス系統BALB/cの約6週齢の体重約20〜25グラムにおいて実施した。マウスの下半身を脱毛し、塩酸ケタミン対キシラジン9:1比(100mg/kg)を注射することにより麻酔した。所望の大きさの全厚さの切除創傷を肉様層まで、ただしこれを通過することなく切り出した。
【0107】
in vivoのバイオルミネセンス画像化を可能にするように全細菌luxオペロンを安定に形質導入してあるグラム陰性種のシュードモナス・アエルギノーサ[19660株]及びプロテウス・ミラビリス[51393株]にマウスを感染させた。菌株は細菌培養に使用し、培地1mlを滅菌脳心臓注入(BHI)培地30〜40ml中で使用した。細菌は振とうしながら37℃のインキュベーター中で2時間指数増殖期まで生育させた。細菌懸濁液のODをBHI培地に対して測定し、相応に所望の細菌懸濁液を調製した。
【0108】
バイオルミネセンス画像化はマウスの創傷感染から生じる光を検出するためにHamatsuCCDカメラを使用して行った。
【0109】
切除創傷(5×5mm)に50×106個の細胞を接種した。包帯パッドアセンブリ10を通過するルミネセンス透過光を測定できるように、制御された厚さ(1.6〜2.4mm)の稠密化キトサン母材12構造を試験に使用するために包帯の基部表面から切り出した(厚さ名目5.5mm)。試験に使用したキトサン母材12試験片の大きさは10mm×10mm×2.1mmとした。試験には3種の対照、即ち銀スルファジアジンの陽性対照;アルギネートスポンジの陰性対照(10mm×10mm×2.0mm);及び未投与の別の陰性対照を使用した。全処置とも細菌の創傷への接種15〜30分以内に適用した。
【0110】
稠密化キトサン母材12スポンジ試験片を先ず酢酸ナトリウム緩衝液(pH4)で湿潤させた後に適用した。これらは接着性であり傷害に極めて良好に合致した。アルギネート対照は、PBS溶液で湿潤させた後に適用した。これは傷害に対する接着性が過剰であった。銀スルファジアジンクリーム(50mg)は、手袋を装着した手指で感染創傷に擦り込んだ。動物の生存は定期的な間隔(8〜16時間)におけるバイオルミネセンス発光及び動物の運動性の観察と共に15日間にわたり追跡した。稠密化キトサン母材12群(N=5)の場合は、全動物が生存し、有意な生存の優越性をアルギネート群に対して(p<0.01)、未投与群に対して(p<0.005)、そして銀スルファジアジン群に対して(p<0.005)示した(図58を参照)。稠密化キトサン母材12は又、試験期間中にわたってバイオルミネセンスの有意な損失を示した唯一の物質であり、この包帯の顕著な殺菌活性を示していた(図34及び35を参照)。アルギネート群(N−6)の何れの動物も5日を超えて生存せず、バイオルミネセンスの結果もこの群における細菌の増殖を示していた(図35及び36を参照)。
【0111】
データによれば、稠密化キトサン母材12は全身性の侵襲が起こる前に創傷内の細菌を迅速に殺傷し、共に短時間で細菌生育を誘発したアルギネート包帯及び銀スルファジアジンよりも優れていることが示唆されている。図37に示す通り、稠密化キトサン母材12と接触した場合の細菌の生存区分は急速に低下している。処置2時間以内に、ほぼ全ての細菌がキトサン母材12により破壊されている。
【0112】
キトサン母材12は創傷領域に良好に接着し、急速な抗微生物作用を有している。抗微生物及び止血の特性の組み合わせは、従来技術を超えた優れた創傷包帯をもたらし、これは戦闘、戦場又は傷痍兵対処の状況等において、早期の応急処置に好都合である。
【0113】
(IV.結論)
キトサン母材12のような親水性ポリマースポンジ構造は、パッド型、シート型、複合型、積層型、適合型等の種々の大きさ及び構成の包帯又はプラットホームとの組み合わせに容易に適合させることができ、これにより医療及び/又は外科分野の当業者は、キトサン母材12のような何れかの親水性ポリマースポンジ構造を、身体上、身体内又は全身に渡る多様な適応に採用することができる。
【0114】
従って、上に記載する本発明の実施形態は、本発明の原理を単に説明するためのものであり、適用範囲を制限するものではない。代わりに、本発明の適用範囲は、以下の請求項並びにそれらに相当する記述の範囲により決定されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】血液、流体又は水分の存在下において身体組織に接着することができる抗微生物バリアパッドアセンブリの組立透視図である。
【図2】図1に示す抗微生物バリアパッドアセンブリの分解透視図である。
【図3】最終照射及び保存のために密封パウチ中にパッケージ化された、図1に示す抗微生物バリアパッドアセンブリの透視図である。
【図4】図3に示す密封パウチを剥がして、抗微生物バリアパッドアセンブリを使用のために取り出す状態の透視図である。
【図5】図3に示す密封パウチを剥がして、抗微生物バリアパッドアセンブリを使用のために取り出す状態の透視図である。
【図6】抗微生物バリアパッドアセンブリを手に持ち、標的組織部位の形状に合わせて適用前に折り畳むか屈曲させることにより操作した状態の透視図である。
【図7】抗微生物バリアパッドアセンブリを手に持ち、標的組織部位の形状に合わせて適用前に折り畳むか屈曲させることにより操作した状態の透視図である。
【図8】出血を止血するために抗微生物バリアパッドアセンブリを標的組織部位に適用した状態の透視図である。
【図9】出血を止血するために抗微生物バリアパッドアセンブリを標的組織部位に適用した状態の透視図である。
【図10】出血を止血するために抗微生物バリアパッドアセンブリの一部を切り取って、標的組織部位に適合するようにした状態の透視図である。
【図11】出血を止血するために抗微生物バリアパッドアセンブリの一部を切り取って、標的組織部位に適合するようにした状態の透視図である。
【図12】抗微生物バリアパッドアセンブリを手に持ち、標的組織部位に合わせて凹状又はカップ状の形に成型することにより操作した状態の透視図である。
【図13】抗微生物バリアパッドアセンブリを手に持ち、標的組織部位に合わせて凹状又はカップ状の形に成型することにより操作した状態の透視図である。
【図14】図1に示す抗微生物バリアパッドアセンブリを作成するプロセスの手順の概略図である。
【図15】柔軟性及び適合性を向上させる微小破壊を生成するために親水性ポリマー構造をコンディショニングする手順の実施形態の透視図である。
【図16】柔軟性及び適合性を向上させる微小破壊を生成するために親水性ポリマー構造をコンディショニングする手順の実施形態の透視図である。
【図17】柔軟性及び適合性を向上させる微小破壊を生成するために親水性ポリマー構造をコンディショニングする手順の実施形態の透視図である。
【図18】柔軟性及び適合性を向上させる深型レリーフパターンを形成することにより親水性ポリマー構造をコンディショニングする手順の実施形態の図である。
【図19】図18A及び18Bに示す手順の後に親水性ポリマー構造をコンディショニングするために適用できるレリーフパターンの平面図である。
【図20】図18A及び18Bに示す処理手順を可能にする柔軟性及び適合性の向上を示すグラフである。
【図21】柔軟性及び適合性を向上させる垂直チャンネル(穿孔)を形成することにより親水性ポリマー構造をコンディショニングする手順の実施形態の図である。
【図22】血液、流体又は水分の存在下において身体組織に接着することができる組織包帯シートアセンブリの組立透視図である。
【図23】図22に示す組織包帯シートアセンブリの展開透視図である。
【図24】(図24A)シート形態に配置した組織包帯シートアセンブリの組立透視図である。(図24B)ロール形態に配置した組織包帯シートアセンブリの組立透視図である。
【図25】出血を止血するために標的組織領域内にロール形態の組織包帯シートアセンブリを詰め込んだ透視図である。
【図26】図22に示す組織包帯シートアセンブリを作成するプロセスの手順の概略図である。
【図27】最終照射及び保存のために密封パウチ中にパッケージ化された、図16に示す抗微生物バリアパッドアセンブリの透視図である。
【図28】図1に示す未処理の抗微生物バリアパッドアセンブリと比べた、図22に示す組織包帯シートアセンブリの柔軟性及び適合性を示すグラフである。
【図29】(図29A)図21に示す組織包帯シートアセンブリの、ガンマ線照射前におけるシミュレーションした創傷密封特性を示すグラフである。(図29B)図21に示す組織包帯シートアセンブリの、ガンマ線照射の前後におけるシミュレーションした創傷密封特性を示すグラフである。
【図30】留置カテーテルの挿入部位に接着して密封するためのガスケットアセンブリを形成するように成形及び構成された、組織包帯アセンブリ一式の透視図である。
【図31】図30に示すガスケットアセンブリの横断面図である。
【図32】留置カテーテルの挿入部位に接着して密封するためのガスケットアセンブリを形成するように成形及び構成された、図1に示す型の抗微生物バリアパッドアセンブリの透視図である。
【図33】留置カテーテルの挿入部位に接着して密封するためのガスケットアセンブリを形成するように成形及び構成された、図22に示す型の組織包帯シートアセンブリの透視図である。
【図34】他の入手可能な抗微生物製品と比べた、本発明の包帯アセンブリのルミネセンス検出を示すグラフである。
【図35】他の入手可能な抗微生物製品と比べた、本発明の包帯アセンブリのルミネセンス検出を示すグラフである。
【図36】他の抗微生物製品と比べた、本発明の包帯アセンブリの細菌生存率を示すグラフである。
【図37】他の抗微生物製品と比べた、本発明の包帯アセンブリの細菌生存率を示すグラフである。
【図38】他の抗微生物製品と比べた、本発明の包帯アセンブリの細菌生存率を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キトサン生物材料を含む構造を含む抗微生物バリア。
【請求項2】
前記構造がポリマースポンジ構造を更に含む、請求項1に記載の抗微生物バリア。
【請求項3】
前記ポリマースポンジ構造が親水性物質である、請求項2に記載の抗微生物バリア。
【請求項4】
前記ポリマースポンジ構造が、(i)使用前の機械的操作による構造の大部分の微小破壊、又は(ii)使用前に構造の大部分に形成される表面レリーフパターン、又は(iii)使用前に構造の大部分に形成される液体投入チャンネルのパターン、の少なくとも1つを更に含む、請求項3に記載の抗微生物バリア。
【請求項5】
前記微小破壊が屈曲、捻転、回転、振動、探索、圧縮、伸長、振とう又は混練の少なくとも1つにより生じる、請求項4に記載の抗微生物バリア。
【請求項6】
前記表面レリーフパターンが熱圧縮により生じる、請求項4に記載の抗微生物バリア。
【請求項7】
前記構造が基部表面及び上部表面を含み、前記表面レリーフパターンは該上部表面に形成され、該基部表面には形成されない、請求項4に記載の抗微生物バリア。
【請求項8】
前記液体投入チャンネルのパターンが穿孔を含む、請求項4に記載の組織包帯。
【請求項9】
前記構造が基部表面及び上部表面を含み、裏張り表面が該上部表面に配置される、請求項1に記載の抗微生物バリア。
【請求項10】
請求項1に記載の抗微生物バリアを製造する方法。
【請求項11】
(i)組織傷害、組織外傷又は組織接触の部位の止血、密封又は安定化;又は(ii)抗微生物バリアの形成;又は(iii)抗ウイルスパッチの形成;又は(iv)出血障害における介入;又は(v)治療薬の放出;又は(vi)粘膜表面の治療;又は(vii)これらの組み合わせ、の少なくとも1つを実施するために、請求項1に記載の抗微生物バリアを使用する方法。
【請求項12】
キトサン生物材料を含む構造を含む抗微生物バリアであって、前記構造が圧縮により稠密化されているバリア。
【請求項13】
前記構造が0.6〜0.1g/cm3の密度に圧縮される、請求項12に記載の抗微生物バリア。
【請求項14】
請求項12に記載の抗微生物バリアを製造する方法。
【請求項15】
(i)組織傷害、組織外傷又は組織接触の部位の止血、密封又は安定化;又は(ii)抗微生物バリアの形成;又は(iii)抗ウイルスパッチの形成;又は(iv)出血障害における介入;又は(v)治療薬の放出;又は(vi)粘膜表面の治療;又は(vii)これらの組み合わせ、の少なくとも1つを実施するために、請求項12に記載の抗微生物バリアを使用する方法。
【請求項16】
細菌数を低減する方法であって、細菌集団をキトサン生物材料に曝露することを含む方法。
【請求項17】
非侵襲性の水準まで細菌数を低減する方法であって、細菌集団をキトサン生物材料に2時間未満曝露することを含む方法。
【請求項1】
キトサン生物材料を含む構造を含む抗微生物バリア。
【請求項2】
前記構造がポリマースポンジ構造を更に含む、請求項1に記載の抗微生物バリア。
【請求項3】
前記ポリマースポンジ構造が親水性物質である、請求項2に記載の抗微生物バリア。
【請求項4】
前記ポリマースポンジ構造が、(i)使用前の機械的操作による構造の大部分の微小破壊、又は(ii)使用前に構造の大部分に形成される表面レリーフパターン、又は(iii)使用前に構造の大部分に形成される液体投入チャンネルのパターン、の少なくとも1つを更に含む、請求項3に記載の抗微生物バリア。
【請求項5】
前記微小破壊が屈曲、捻転、回転、振動、探索、圧縮、伸長、振とう又は混練の少なくとも1つにより生じる、請求項4に記載の抗微生物バリア。
【請求項6】
前記表面レリーフパターンが熱圧縮により生じる、請求項4に記載の抗微生物バリア。
【請求項7】
前記構造が基部表面及び上部表面を含み、前記表面レリーフパターンは該上部表面に形成され、該基部表面には形成されない、請求項4に記載の抗微生物バリア。
【請求項8】
前記液体投入チャンネルのパターンが穿孔を含む、請求項4に記載の組織包帯。
【請求項9】
前記構造が基部表面及び上部表面を含み、裏張り表面が該上部表面に配置される、請求項1に記載の抗微生物バリア。
【請求項10】
請求項1に記載の抗微生物バリアを製造する方法。
【請求項11】
(i)組織傷害、組織外傷又は組織接触の部位の止血、密封又は安定化;又は(ii)抗微生物バリアの形成;又は(iii)抗ウイルスパッチの形成;又は(iv)出血障害における介入;又は(v)治療薬の放出;又は(vi)粘膜表面の治療;又は(vii)これらの組み合わせ、の少なくとも1つを実施するために、請求項1に記載の抗微生物バリアを使用する方法。
【請求項12】
キトサン生物材料を含む構造を含む抗微生物バリアであって、前記構造が圧縮により稠密化されているバリア。
【請求項13】
前記構造が0.6〜0.1g/cm3の密度に圧縮される、請求項12に記載の抗微生物バリア。
【請求項14】
請求項12に記載の抗微生物バリアを製造する方法。
【請求項15】
(i)組織傷害、組織外傷又は組織接触の部位の止血、密封又は安定化;又は(ii)抗微生物バリアの形成;又は(iii)抗ウイルスパッチの形成;又は(iv)出血障害における介入;又は(v)治療薬の放出;又は(vi)粘膜表面の治療;又は(vii)これらの組み合わせ、の少なくとも1つを実施するために、請求項12に記載の抗微生物バリアを使用する方法。
【請求項16】
細菌数を低減する方法であって、細菌集団をキトサン生物材料に曝露することを含む方法。
【請求項17】
非侵襲性の水準まで細菌数を低減する方法であって、細菌集団をキトサン生物材料に2時間未満曝露することを含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図19E】
【図19F】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図25】
【図26A】
【図26B】
【図26C】
【図26D】
【図26E】
【図26F】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図19E】
【図19F】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図25】
【図26A】
【図26B】
【図26C】
【図26D】
【図26E】
【図26F】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【公表番号】特表2008−525112(P2008−525112A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548397(P2007−548397)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/046199
【国際公開番号】WO2006/071649
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(506211517)ヘムコン, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/046199
【国際公開番号】WO2006/071649
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(506211517)ヘムコン, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
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