説明

キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ発現の調節

【課題】 ニコチン濃度が遺伝的に変更されたトランスジェニック植物を生産する。
【解決手段】 植物のキノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRTase)酵素をコードするDNA、およびこの様なDNAを含む構築物が提供されている。キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ発現を変化させる方法が提供されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全国科学基金補助金No.MCB-9206506による政府後援により行われた。政府は本発明に特定の権利を有する。
【0002】
本発明は、植物のキノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRTase)およびこの酵素をコードするDNAに関する。特に、本発明は、ニコチン濃度が遺伝的に変更されたトランスジェニック植物を生産するためのキノレートホスホリボシルトランスフェラーゼをコードするDNAの利用と、その様に生産された植物に関する。
【背景技術】
【0003】
低ニコチン濃度タバコの生産は、ニコチンの耽溺性に対する懸念から関心の的となっている。更に、ニコチン産生濃度が極めて低いタバコ植物、あるいはニコチンを全く生成しないタバコ植物は、医薬品、化粧品成分または食品添加物などの商業的に有用な製品を発現する導入遺伝子のレシピエントとして魅力的である。タバコからニコチンを除去する種々の方法が考案されている。しかし、これらの方法の多くがニコチン以外の他の成分をタバコから除去してしまうため、タバコに悪い影響を及ぼす。従来の農作物品種改良技術により、野生型タバコ植物よりもニコチン濃度が低い(約8%)タバコ植物が生産されている。ニコチン含有量が更に低いタバコ植物とタバコが望ましい。
【0004】
生物学的産物の濃度を減少させる1つの方法は、その産物を生成する生合成経路に必要な酵素量を減少させることである。影響を受ける酵素が(その経路において必要とされるその他の酵素と比較し)律速的量で天然に存在する場合、その酵素の存在量が減少すれば最終産物の生産量は減少する。その酵素の量が通常は律速的でない場合には、その経路の生産量を減少させるために、細胞内存在量を律速濃度まで減少させなくてはならない。逆に、自然に存在する酵素量が律速的である場合には、酵素活性の増加は生合成経路の最終産物は増加する。
【0005】
ニコチンは、最初タバコ植物の根で形成され、それから葉に送られ、そこで貯蔵される(Tso, Physiology and BIochemistry of Tobacco Plants, pp. 233-34, Dowden, Hutchinson & Ross, Stroudsburg, Pa. (1972))。ニコチン生合成の必須段階は、キノリン酸からのニコチン形成で、この段階は酵素キノリンホスホリボシルトランスフェラーゼ(「QPRTase (quinoline phosphoribosyl transferase)」)により触媒される。QPRTaseは、タバコにおいてニコチン合成のためにニコチン酸を供給する経路において、律速酵素でと思われる。例えば、Feth et al.,“The Regulation in Tobacco Callus of Enzyme Activities of the Nicotine Pathway”, Planta, 168, pp. 402-07 (1986); Wagner et al., “The Regulation of Enzyme Activities of The Nicotine Pathway in Tobacco”, Physiol. Plant., 68, pp. 667-72 (1986)を参照。プトレシンメチルトランスフェラーゼ(PMTase; putrescine methyl transferase)発現のアンチセンス調節によるタバコ植物におけるニコチン濃度の変更が、NakataniおよびMalikのNo.5,369,023および5,260,205において提唱されている。WahadおよびMalikのPCT出願WO 94/28142には、PMTをコードするDNAとセンスPMT構築物およびアンチセンスPMT構築物の利用が記載されている。
【特許文献1】米国特許第5,369,023号
【特許文献2】米国特許第5,260,205号
【特許文献3】国際公開WO 94/28142
【非特許文献1】Tso, Physiology and BIochemistry of Tobacco Plants, pp. 233-34, Dowden, Hutchinson & Ross, Stroudsburg, Pa. (1972)
【非特許文献2】Feth et al.,“The Regulation in Tobacco Callus of Enzyme Activities of the Nicotine Pathway”
【非特許文献3】Planta, 168, pp. 402-07 (1986)
【非特許文献4】Wagner et al., “The Regulation of Enzyme Activities of The Nicotine Pathway in Tobacco”
【非特許文献5】Physiol. Plant., 68, pp. 667-72 (1986)
【発明の概要】
【0006】
本発明の第一の側面は、配列番号1、配列番号2を有する酵素をコードするDNA配列、この様なDNAとハイブリッド形成し、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ酵素をコードするDNA配列、遺伝コードの縮重により上記DNAと異なるDNA配列を含んでなる単離されたDNA分子である。この様なDNAによりコードされたペプチドも本発明の更なる点である。
【0007】
本発明の更なる点は、植物細胞において、作用可能なプロモーターと、プロモーターの下流に位置し、機能的にそれと関連しているキノレートホスホリボシルトランスフェラーゼをコードするDNA断片とを含むDNA構築物である。酵素をコードするDNAはアンチセンスでもセンス方向でもよい。
【0008】
本発明の更なる点は、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼを発現することが知られている種類の植物細胞を提供し、植物細胞を、プロモーターとキノレートホスホリボシルトランスフェラーゼmRNAを含むDNAから成る外因性DNA構築物により植物細胞を形質転換することにより、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRTase)の発現を減少させたトランスジェニック植物細胞の作製方法である。
【0009】
本発明の更なる点は、形質転換されていない対照植物と比較してキノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRTase)の発現を減少させたNicotiana属の植物種のトランスジェニック植物である。この様な植物の細胞は、植物のキノレートホスホリボシルトランスフェラーゼmRNAをコードするDNA配列の断片を含むDNA構築物を含んでなる。
【0010】
本発明の更なる点は、外因性DNAを含むように形質転換された植物細胞を成長させることにより、植物細胞におけるキノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子の発現を減少させる方法である。ここで、外因性DNAの転写される鎖は、細胞に内在するキノレートホスホリボシルトランスフェラーゼmRNAに相補的である。相補的鎖の転写により、内因性キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子の発現は抑制される。
【0011】
本発明の更なる点は、外因性DNA配列を含む細胞を有するタバコ植物を成長させることにより、タバコ植物の葉のニコチン濃度を減少させたタバコ植物の生産方法である。ここで、外因性DNAの転写される鎖は、細胞内のキノレートホスホリボシルトランスフェラーゼmRNAに相補的である。
【0012】
本発明の更なる点は、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼをコードするDNA配列を含む外因性DNA構築物により、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼを発現することが知られている植物細胞を形質転換することにより、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRTase)発現を増加させたトランスジェニック植物細胞の作製方法である。
【0013】
本発明の更なる点は、トランスジェニック植物の細胞は植物キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする外因性DNA配列を含む、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRTase)発現を増加させたトランスジェニックNicotina植物である。
【0014】
本発明の更なる点は、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする外因性DNAを含む様に形質転換された植物細胞を成長させることにより、植物細胞におけるキノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子の発現を増加させる方法である。
【0015】
本発明の更なる点は、細胞において機能するキノレートホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする外因性DNA配列を含む細胞を有するタバコ植物を成長させることにより、葉のニコチン濃度を増加させたタバコ植物の生産方法である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、ニコチンを生成する生合成経路を示す。Nic1およびNic2により調節されることが知られている酵素活性は、QPRTase(キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼとPMTase(腐敗性メチルトランスフェラーゼ、putrescence methyl transferase)である。
【図2A】図2Aは、NtPT1 cDNA(配列番号1)の核酸配列を示し、コーディング配列(配列番号3)は大文字で示されている。
【図2B】図2Bは、NtQPT1 cDNAによりコードされるタバコQPRTaseの推定アミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【図3A】図3Aは、推定NtQPT1アミノ酸配列およびRhodospirillum rubrum、Mycobacterium lepre(らい菌)、Salmonella Typhimurium(ネズミチフス菌)、大腸菌、ヒトおよび麦酒酵母菌の関連配列を示す。
【図3B】図3Bは、推定NtQPT1アミノ酸配列およびRhodospirillum rubrum、Mycobacterium lepre(らい菌)、Salmonella Typhimurium(ネズミチフス菌)、大腸菌、ヒトおよび麦酒酵母菌の関連配列を示す。
【図4】図4は、NtQPT1 cDNAによるキノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ欠失大腸菌突然変異体(TH265)の補完性を示す。細胞はNtQPT1を持つ発現ベクターにより形質転換された;ニコチン酸を含まない最小培地でNtOPT1を発現する形質転換TH265細胞が成長したことから、NtQPT1がQPRTaseをコードすることが証明された。
【図5】図5は、Nic1およびNic2タバコ突然変異体:野生型Burley 21(Nic1/Nic1 Nic2/Nic2);Nic1-Burley 21(nic1/nic1 Nic2/Nic2);Nic2-Burley 21(Nic1/Nic1 nic2/nic2)およびNic1-Nic2- Burley 21(nic1/nic1 nic2/nic2);におけるニコチン濃度と相対的定常期のNtOTP1のmRNA濃度を比較したものである。無地の棒はmRNA転写物濃度を示し、斜線の棒はニコチン濃度を示す。
【図6】図6は、先端を切断しない対照植物と比較した先端を切断したタバコ植物における経時的なNtQPT1 mRNAの相対的濃度を示す。無地の棒はmRNA転写物濃度を示し、斜線の棒はニコチン濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ニコチンは、タバコ植物においてニコチン酸と4-メチルアミノブタナールの縮合により生成される。ニコチン生成に至る生合成経路を図1に示す。2つの調節遺伝子座(Nic1およびNic2)は、ニコチン生成の相互優性調節因子として作用する。シングルおよびダブルNic突然変異体の根の酵素分析により、2つの酵素、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRTase)と腐敗性メチルトランスフェラーゼ(PMTase)の活性は、ニコチン生合成のレベルと直接比例することが示されている。種々のニコチン合成能を有するタバコ組織(根とカルス)における酵素活性の比較により、QPRTase活性がニコチン含有量と厳密に相関することが明らかにされている(Wagner and Wagner, Planta 165:532(1985))。Saunders and Bush(Plant Physiol 64:236(1979)は、低ニコチン突然変異体の根の中のQPRTase濃度が、葉の中のニコチン濃度と比例することを明らかにした。
【0018】
本発明は、植物キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRTase)である配列番号2をコードする新しいcDNA配列(配列番号1)を包含する。QPRTase活性は、ニコチン含有量と厳密に相関するため、(野生型植物の濃度と比較して)植物の根の中のQPRTase活性を低下させた形質転換タバコ植物の構築物は、葉の中のニコチン濃度が低い植物を生じる。本発明は、この様なトランスジェニック植物を産生するための方法および核酸構築物、並びにこの様なトランスジェニック植物を提供する。この様な方法には、アンチセンスNtQPT1RNAの発現が含まれ、これはタバコの根の中のQPRTase量を減少させる。ニコチンは更にタバコ以外の植物の種と科に見いだされるが、通常その量はN.tabacum よりも遥かに少ない。
【0019】
本発明は、QPRTaseまたはQPRTaseアンチセンスRNA分子をコードするセンスおよびアンチセンス組み換えDNA分子、これらの組み換えDNA分子を含むベクター、およびこれらのDNA分子とベクターにより形質転換されたトランスジェニック植物細胞および植物も提供する。本発明のトランスジェニックタバコ細胞およびタバコ植物は、非形質転換対照タバコ細胞およびタバコ植物よりもニコチン含有量が高いあるいは低い。
【0020】
ニコチン生成濃度が極めて低いか、全く生成しないタバコ植物は、医薬品、化粧品成分、または食品添加物などの商業的に有用な産物を発現する導入遺伝子のレシピエントとして魅力的である。タバコは、遺伝子工学処理が簡単で、面積あたりの非常に高い生物量を産生するため、少ない財源でニコチン生産にあてたタバコ植物は、導入遺伝子産物の生成に利用可能なより多くの財源を生み出すため、所望の産物をコードする導入遺伝子のレシピエント植物として魅力的である。所望の産物を産生する導入遺伝子によりタバコを形質転換する方法は、本技術において公知であり、本発明の低ニコチンタバコ植物を用いて、適切な技術の全てを利用することができる。
【0021】
QPRTase発現が低く、ニコチン濃度が低い本発明のタバコ植物は、ニコチン含有量が少ないタバコ製品の生産に望ましい。本発明のタバコ植物は、限定されないが、葉巻、紙巻きタバコ、噛みタバコを含むの従来のタバコ製品のいずれの使用にも適しており、また葉煙草、刻みタバコ、カットタバコなどのあらゆる形態が可能である。
【0022】
本発明の構築物は、植物中のQPRTase発現を高め、ニコチン含有量を高めた形質転換植物の提供にも有用と思われる。この様な構築物は、これらの構築物を用いる方法およびその様に産生された植物は、ニコチン含有量を変えたタバコ製品の生産または殺虫効果のためにニコチン含有量を高めた植物の生産に望ましい。
【0023】
本発明者等は、TobRD2遺伝子(Conkling et al., Plant Phys. 93, 1203(1990)を参照)がNicotiana tabacum のQPRTaseをコードすることを発見しており、NtQPT1(以前TobRD2と呼ばれていた)のcDNA配列とコードされる酵素のアミノ酸配列を本明細書において提供する。NtQPT1のアミノ酸配列をGenBankデータベースと比較すると、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRTase)をコードする細菌タンパク質と、限定された配列との類似性が明らかである(図3)。
【0024】
キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼは、原核生物および真核生物の両者において、ニコチンアデニンジヌクレオチド(NAD) de novo生合成に必要である。タバコにおいては、根の中には高濃度のQPRTaseが検出されるが、葉には検出されない。NtQPT1がQPRTaseをコードすることを確定するために、本発明者等は大腸菌株(TH265)、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ欠失突然変異体(nadC)を利用した。この突然変異体は、ニコチン酸を含まない最小培地では成長できない。しかし、この細菌株におけるNtQPT1タンパク質の発現により、NadC表現型となったことから(図4)、NtQPT1がQPRTaseをコードすることが確認された。
【0025】
本発明者等は、NtQPT1定常期のmRNA濃度とニコチン濃度に及ぼすタバコのNic1およびNic2突然変異体の影響、タバコ植物の先端切断の影響を検討した。(開花開始時の先端切断による頂芽優性の除去は、タバコのニコチン生合成および輸送レベルを高めることが知られており、タバコ生産において標準的に実施されている。)NtQPT1が実際にニコチン生合成に関与していれば、(1)Nic1/Nic2ダブル突然変異体においてNtQPT1mRNA濃度は低くなり、(2)先端切断後、NtQPT1mRNA濃度は高くなるであろうことが予測される。Nic1/Nic2ダブル突然変異体におけるNtQPT1mRNA濃度は、野生型の約25%であることが見いだされた(図5)。更に、先端切断後6時間以内に、タバコ植物のNtQPT1mRNA濃度は約6倍増加した。従って、NtQPT1は、ニコチン生合成経路において重要な調節遺伝子であることが確定された。
【0026】
トランスジェニック植物細胞および植物
植物細胞ゲノムにおける遺伝子発現の調節は、宿主内で機能するプロモーターの転写調節下に異種DNAの組み込みにより達成でき、宿主において異種DNAの転写される鎖は、調節される内因性遺伝子から転写されるDNAの鎖に対して相補的である。導入されるDNAは、アンチセンスDNAと呼ばれ、自然に生成される(内因性)mRNAに対して相補的なRNAを提供し、内因性mRNAの発現を阻害する。アンチセンスによる様な遺伝子発現の機序は完全に判明していない。いずれか1つの理論に固執するわけではないが、アンチセンス調節の1つの理論は、アンチセンスDNAの転写によりRNA分子が生成され、これが内因性mRNA分子に結合し、その転写を阻害すると提唱している。
【0027】
本発明の方法において、アンチセンス産物は自然に存在する標的RNAのコーディングまたは非コーディング部分(またはその両者)に対して相補的でよい。アンチセンス構築物は、適切な全ての方法により植物細胞に導入可能で、アンチセンス配列の誘導または構成転写のために、植物ゲノムに組み込むことができる。例えば、Shewmaker et al.の米国特許No.5,453,566および5,107,065を参照(引用する事により完全に本明細書の一部を成す事とする。)
【0028】
本明細書に使用されている様に、外因性または異種DNA(またはRNA)は、人為的に細胞(または細胞の祖先)に導入されたDNA(またはRNA)を意味する。この様な異種DNAは、形質転換された細胞に自然に見いだされる配列またはその断片のコピーでもよい。
【0029】
非形質転換対照タバコ植物よりもQPRTase濃度が低く、従って、ニコチン含有量が低いタバコ植物を生産するために、適切な機能的に関連された調節配列と共にアンチセンス方向のQPRT cDNA配列の一部、QPRT cDNA配列の全長、QPRT染色体配列の一部またはQPRT染色体配列の全長から成る外因性QPRTアンチセンス転写単位を用いて、タバコ細胞を形質転換することができる。適切な調節配列には、形質転換された植物において作用可能な転写開始配列(“プロモーター”)、およびポリアデニル化/終止配列が含まれる。次に、制限マッピング、サザンブロッティング、ヌクレオチド配列分析などの標準技術を用いて、調節配列に機能的に関連されたアンチセンス方向にQPRTase配列を持つクローンを同定する。次に、形質転換に成功した細胞からタバコ植物が再生される。利用されるアンチセンス配列は、内因性配列に対して相補的であることが最も好ましいが、外因性および内因性配列にわずかな差があっても構わない。アンチセンスDNA配列は、下記のストリンジェントな条件下に、調節される細胞の内因性配列に結合できる程十分に類似性を有するのが好ましい。
【0030】
アンチセンス技術は、特定の酵素の量が正常よりも低いことを特徴とする形質転換植物を作製するために、幾つかの研究所で用いられている。例えば、花の色素生合成経路の酵素であるカルコンシンターゼ濃度を減少させた植物が、タバコおよびペチュニアのゲノムにカルコンシンターゼアンチセンス遺伝子を挿入することにより産生されている。これらの形質転換タバコおよびペチュニアは、通常のい着色よりも薄い色の花を咲かせる(Van der Krol et al., “An Anti-Sense Chalcone Synthase Gene in Transgenic Plants Inhibits FlowerPigmentation”, Nature, 333, pp.866-69(1988))。アンチセンスRNA技術は、トマトの酵素ポリガラクツロナーゼの生成を阻害するために(Smith et al.,“Antisense RNA Inhibition of Polygalacturonase Gene Expression in Transgenic Tomatoes”, Nature, 334, pp.724-26 (1988); Sheehy et al.,“Reduction of Polygalacturonase Activity in Tomato Fruit by Antisense RNA”、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85,pp.8805-09 (1988))、またタバコの酵素リブロースリン酸カルボキシラーゼの小さなサブユニットの生成を阻害するためにも(Rodermel et al., “Nuclear-organelle Interactions: Nuclear Antisense Gene Inhibits Ribulose Biophosphate Carboxylase Enzyme Levels in Transformed Tobacco Plants”, Cell, 55, pp. 673-81 (1988))利用されている。あるいは、特定の酵素の正常量を上回る事を特徴とする形質転換植物を、センス(すなわち正常)方向のその酵素の遺伝子を用いて植物を形質転換することにより、作製することができる。本発明の形質転換タバコ植物のニコチン濃度は、標準ニコチン分析により検出できる。従って、非形質転換対照植物と比較して、QPRTase濃度を減少させた形質転換植物は対照よりもニコチン濃度が低く、従って、非形質転換対照植物と比較して、QPRTase濃度を上昇させた形質転換植物は対照よりもニコチン濃度が高い。
【0031】
本発明のアンチセンス法に利用される異種配列は、QPRTase mRNA全体またはその一部に対して相補的なRNA産物を産生する様に選択される。配列は、天然のメッセンジャーRNAの近接配列の全てに対して相補的であり、すなわち5'末端またはキャッピング部位の近位、キャッピング部位から下流、キャッピング部位と開始コドンの間の内因性mRNA配列に対して相補的であり、非コーディング領域の全てまたは一部をカバーし、非コーディング領域とコーディング領域に渡って、コーディング領域の全てまたは一部に対して相補的で、コーディング領域の3’末端に相補的で、あるいはmRNAの3’-非翻訳領域に相補的であってもよい。適切なアンチセンス配列は、少なくとも約13から約15個のヌクレオチド、少なくとも約16から約21個のヌクレオチド、少なくとも約20個のヌクレオチド、少なくとも約30個のヌクレオチド、少なくとも約50個のヌクレオチド、少なくとも約75個のヌクレオチド、少なくとも約100個のヌクレオチド、少なくとも約125個のヌクレオチド、少なくとも約150個のヌクレオチド、少なくとも約200個のヌクレオチド、またはそれ以上である。更に、配列はその3’末端または5'末端で延長または短縮できる。
【0032】
特定のアンチセンス配列およびアンチセンス配列の長さは、所望の阻害度、アンチセンス配列の安定性等によって変わる。本技術に精通する者は、本技術において利用可能な技術と本明細書に提供されている情報を用いて、適切なQPRTaseアンチセンス配列を選択できる。本明細書の図2Aと配列番号1を参照すると、本発明のオリゴヌクレオチドはアンチセンス方向のQPRTasecDNA配列の連続断片で、レシピエント植物細胞に形質転換される時、所望の効果を達成できる十分な長さである。
【0033】
本発明は、ニコチン産生のセンス共抑制の方法においても利用できる。本発明の実施に使用されるセンスDNAは、植物細胞において発現される時、十分な長さを持ち、その植物細胞において、本明細書に報告されているように、植物のQPRTaseタンパク質の天然の発現を抑制する。この様なセンスDNAは、本質的にQPRTase酵素をコードするゲノムまたは相補DNA全体、あるいはその断片で、この様な断片は典型的には、少なくとも15ヌクレオチド長を有する。細胞において天然の遺伝子の発現を引き起こすセンスでの長さを確認する方法は、本技術において公知である。
【0034】
本発明の別の実施例において、Nicotina植物細胞は、酵素的RNA分子(すなわち、“リボザイム”)をコードするDNA断片を含むDNA構築物により形質転換され、この酵素的RNA分子は、本明細書に記載されているように、植物QPRTaseをコードするDNAのmRNA転写物に対して作用する(即ち切断する)。リボザイムは、標的mRNAの接近可能領域に結合する基質結合領域と、RNAの切断を触媒する領域を含み、翻訳とタンパク質産生を阻害する。結合領域は、標的mRNA配列に相補的なアンチセンス配列を含み、触媒モティーフは、ハンマーヘッドモティーフまたはヘアピンモティーフの様なその他のモティーフである。RNA標的内リボザイム切断部位が、まず標的分子のリボザイム切断部位を探索することにより同定される(例えば、GUA、GUUまたはGUC配列)。一旦同定されたならば、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15個、20個、30個またはそれ以上のリボヌクレオチドの短いRNA配列は、予想される構造的特徴に関して評価される。候補となる標的の適性も、本技術において公知のリボヌクレアーゼ保護分析を用いて、相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリッド形成が可能かどうかを検討することにより評価される。酵素的RNA分子をコードするDNAは、構築物の技術に従って、産生される。例えば、T. Cech et al., 米国特許No.4,987,071; Keene et al.,米国特許No.5,559,021; Donson et al.,米国特許No.5,589,367; Torrence et al.,米国特許No.5,583,032; Joyce,米国特許No.5,580,967; Gold et al.米国特許No.5,595,877; Wagner et al.,米国特許No.5,591,601;および米国特許No.5,622,854を参照(これらの発見は引用する事により全体を本明細書の一部を成す事とする。)。植物細胞におけるこの様な酵素的RNA分子の産生とQPRTaseタンパク質産生の阻害により、アンチセンスRNA分子の産生と本質的に同じ方法で、すなわち、酵素を産生する細胞においてmRNAの翻訳を阻害することにより、植物細胞内のQPRTase活性を低下させる。“リボザイム”という言葉は、本明細書においては(エンドリボヌクレアーゼのような)酵素として作用するRNA含有核酸を意味し、“酵素的RNA分子”と互換性のある言葉である。本発明は更に、リボザイムをコードするDNA、発現ベクターに挿入されたリボザイムをコードするDNA、この様なベクターを含む宿主細胞、およびリボザイムを用いて植物におけるQPRTase産生を減少させる方法も含む。
【0035】
本発明の実施に使用される核酸配列には、配列番号1と配列の類似性を有するもの、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を;有するタンパク質をコードするものが含まれる。この定義は、QPRTaseタンパク質における自然の対立遺伝子変動を包含することを意図している。従って、配列番号1のDNAとハイブリッド形成し、QPRTase、特に植物QPRTase酵素の発現をコードするDNA配列も、本発明の実施に使用される。
【0036】
複数の形態のタバコQPRTase酵素が存在する。1つの酵素に複数の形態が存在するのは、遺伝子産物が翻訳後修飾されたこと、またはNtQPT1遺伝子に複数の形態が存在する事による。
【0037】
QPRTase活性を有するタンパク質の発現をコードするその他のDNA配列が、配列番号1のDNAまたは配列番号2として提供されるタンパク質をコードするその他のDNA配列とハイブリッド形成するのを可能にする条件を、ルーチン法で決定することができる。例えば、この様な配列のハイブリッド形成は、緩和されたストリンジェンシーまたは厳密な条件でも実施できる(例えば、標準in situハイブリッド形成検定法において本明細書に配列番号2として記載されているタンパク質をコードするDNAに対する60℃または70℃でもよい、0.3M NaCl、0.03Mクエン酸ナトリウム、0.1%SDSの洗浄ストリンジェンシーにより表される条件。J. Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual(第2版,1989)(Cold Spring Harbor Laboratory)を参照)。一般に、この様な配列は、配列番号1として示される配列、または配列番号2のタンパク質をコードするDNA配列と、65%、75%、80%、85%、90%または95%もの類似性がある。(配列の類似性は、並べた2つの配列の最大マッチングを検討して決定される;マッチングさせた2つの配列のいずれかのギャップを、マッチングを最大にするために検討する。10以下のギャップの長さが好ましく、5以下のギャップの長さがより好ましくは、2以下のギャップの長さが更に好ましい。
【0038】
mRNA濃度が約0.05%のポリ(A+)RNAと低値のcDNAクローンの分離が可能な分別ハイブリッド形成法を利用できる。M. Conkling et al., Plant Physiol. 93, 1203-1211(1990)を参照。簡単に述べると、cDNAライブラリは、植物組織(例えば、根および/または葉)から逆転写されたmRNAの一本鎖cDNAプローブを用いてスクリーニングされる。分別スクリーニングの場合、ニトロセルロースまたはナイロン膜を5xSSCに浸し、96ウェル吸引マニホルドの中に設置し、マスタープレートから各ウェルに150μLの一晩静置培養物を移し、全ての液体がフィルターを通過するまで減圧をかける。マルチプルピペッターを用いて150μLの変性液(0.5M NaOH,1.5M NaCl)を各ウェルに入れ、約3分間そのままにする。上記の様に吸引をかけ、フィルターを除去し、0.5M トリス塩酸(pH8.0)、1.5M NaClの中で中和する。次に、真空内で2時間焼固し、適切なプローブと共にインキュベーションする。ナイロン膜フィルターを使用し、マスタープレートを-70℃で7%DMSO中に保存することにより、フィルターは複数のプローブを用いて複数回スクリーニングでき、数年間の保存後に適切なクローンを回収できる。
【0039】
本明細書に使用されている様に、“遺伝子”という言葉は、(1)プロモーターを含む上流(5')調節シグナル、(2)遺伝子の産物、タンパク質またはRNAを特定するコーディング領域、(3)転写終結およびポリアデニル化シグナルを含む下流(3')領域、(4)効率的で特異的な発現に必要な関連配列を組み込むDNA配列を意味する。 本発明のDNA配列は、本明細書に提供されている配列(配列番号1)、またはこれらの遺伝子の対立遺伝子または多形性変異体である同等のヌクレオチド配列、またはそのコーディング領域から本質的に構成される。
【0040】
本明細書および請求項における“実質的な配列類似性”というフレーズの使用は、本明細書に開示され、請求されている真の配列と僅かな重大でない配列の変動を有するDNA、RNA、またはアミノ酸配列が、本発明の配列と同等であると見なされることを意味する。この点に関しては、“僅かな重大でない配列の変動”とは“類似の”配列(すなわち、本明細書に開示および請求されているDNA、RNA、またはタンパク質と実質的な配列類似性を有する配列)が、本発明において開示および請求されている配列と機能的に同等であることを意味する。機能的に同等の配列は、本明細書に開示および請求されている核酸およびアミノ酸組成物と実質的に同じ組成物を産生するために実質的に同じ方法で機能する。
【0041】
本明細書に提供されているDNA配列は、種々の宿主細胞の中に形質転換できる。望ましい成長および取り扱い特性を有する種々の適切な宿主細胞は、本技術において容易に入手できる。
【0042】
DNA、RNA、ポリペプチドまたはタンパク質の変更遺伝子に関して、本明細書および請求項における“分離された”または“実質的に純粋な”というフレーズの使用は、その様に呼ばれるDNA、RNA、ポリペプチドまたはタンパク質が、それらの生体内細胞環境から人為的に分離されたことを意味する。
【0043】
本明細書に使用されているように、“天然のDNA配列”または“自然のDNA配列”とは、非形質転換細胞または組織から分離できるDNA配列を意味する。天然のDNA配列は、例えば部位指向性突然変異により、人工的に変更されていない配列である。一旦天然のDNA配列が同定されれば、本技術において公知の組み換えDNA技術を用いて、天然のDNA配列を有するDNA分子を化学的に合成または産生できる。本明細書に使用されている様に、天然の植物で配列は、非形質転換植物細胞または組織から分離可能である。本明細書に使用されている様に、天然のタバコで配列は、非形質転換タバコ細胞または組織から分離できる。
【0044】
本発明のDNA構築物、または“転写カセット”は、5'から3’方向の転写、本明細書において検討されているプロモーター、プロモーターと機能的に関連している本明細書において検討されているDNA配列、および任意でRNAポリメラーゼの終結シグナルおよびポリアデニラーゼのポリアデニル化シグナルの終結配列を含む。これらの調節領域の全てが、形質転換される組織の細胞において機能可能でなくてはならない。適切な終結シグナルの全てが、本発明の実施に使用でき、その例として以下が含まれるが、それらに限定されない。ノパリンシンターゼ(nos)終結因子、オクタピンシンターゼ(ocs)終結因子、CaMV終結因子、または転写開始領域と同じ遺伝子から得られる、あるいは異なる遺伝子から得られる天然の終結シグナルである。例えば、上記Rezian et al.(1988)、および上記Rodermel et al. (1988)を参照。
【0045】
本明細書に使用されている様に、“機能的に関連している”という言葉は、その機能が他者により影響される一本鎖DNA分子のDNA配列を意味する。従って、プロモーターがDNAの転写に影響を及ぼし得る場合には、プロモーターはDNAと機能的に関連している(すなわち、DNAはプロモーターの転写調節下にある。)。プロモーターは、DNAの“上流”にあると表現され、これは言い換えればプロモーターの“下流”にあると表現される。
【0046】
転写カセットを、少なくとも1つの複製系も有するDNA構築物の中に提供することができる。好都合には、ColE1、pSC101、pACYC184等の大腸菌において機能する複製系を有するのが一般的である。この方法において、各操作後の各段階で、得られた構築物をクローニングし、配列決定することが可能で、操作の適切性を決定することができる。更に、または大腸菌複製系の代わりに、pRK290等のP-1不和合プラスミドの複製系の様な、広範にわたる宿主の複製系を利用できる。複製系に加えて、少なくとも1つのマーカーがしばしば存在し、これは1種類以上の宿主において有用であるか、あるいは個々の宿主に対して異なるマーカーが存在する。すなわち、あるマーカーは原核宿主において選択のために使用され、別のマーカーは、真核宿主、特に植物宿主において選択のために利用される。マーカーは、抗生物質、毒素、重金属等の殺生物剤に対する防御作用を有し、栄養要求性宿主に原栄養性を与えることにより補足性を提供し、あるいは植物における新しい化合物の産生により視認可能な表現型を提供することができる。
【0047】
種々の構築物、転写カセット、マーカー等を含む種々の断片は、適切な複製系の制限酵素による切断と特定の構築物または断片の利用可能な部位への挿入により連続的に導入される。結合とクローニング後、DNA構築物は更なる操作のために分離される。これらの技術全てが、J. Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual(第二版、1989)(Cold Spring Harbor Laboratory)により示されているように、文献に広く例示されている。
【0048】
本発明の核酸構築物により植物組織を形質転換するために利用できるベクターには、アグロバクテリウムベクターと弾道ベクターの両者と、またDNAを介する形質転換に適したベクターが含まれる。
【0049】
“プロモーター”という言葉は、コーディング配列の効率的な発現に必要なシグナルを組み込んだDNA配列の一領域を意味する。これには、RNAポリメラーゼが結合する配列が含まれるが、その様な配列に限定されるのではなく、タンパク質翻訳の調節に関与する領域と共に他の調節タンパク質が結合する領域も含まれ、コーディング配列も含まれる。
【0050】
本発明の実施に使用されるプロモーターは、構成的活性プロモーターである。植物において機能できる多くの構成的活性プロモーターが利用できる。好ましい例は、多くの植物組織において構成的に発現されるカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターである。あるいは、下記に更に詳細に説明されているように、プロモーターは根に特異的なプロモーターまたは根の皮層に特異的なプロモーターである。
【0051】
アンチセンス配列は、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターを利用することにより、形質転換タバコ植物において発現されている。例えば、Cornelissen et al., “Both RNA Level and Translation Efficiency are Reduced by Anti-Sense RNA in Transgenic Tobacco”, Nucleic Acids Res. 17, pp. 833-43 (1989; Rezaian et al.,“Anti-Sense RNAs of Cucumber Mosaic Virus in Transgenic Plants Assessed for Control of the Virus”, Plant Molecular Biology 11, pp.463-71 (1988); Rodermel et al.,“Nuclear-Organelle Interactions: Nuclear Antisense Gene Inhibits Ribulose Bisphosphate Carboxylase Enzyme Levels in Transformed TObacco Plants”, Cell 55, pp.673-81 (1988); Smith et al., “Antisense RNA Inhibition of Polygalacturonase Gene Expression in Transgenic Tomatoes”、Nature 334, pp.724-26 (1988); Van der Krol et al., “An Anti-Sense Chalcone Synthase Gene in Transgenic Plants Inhibits Flower Pigmentation”, Nature 333, pp. 866-69(1988)を参照
【0052】
本発明の形質転換タバコ細胞および植物におけるQPRTase発現には、CaMG 35Sプロモーターの利用が好ましい。タバコの根におけるその他の組み換え遺伝子の発現におけるCaMVプロモーターの利用が報告されている(Lam et al.,“Site-Specific Mutations Alter In Vitro Factor Binding and Change Promoter Expression Pattern in Transgenic Plants”, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 86, pp. 7809-94 (1989); Poulsen et al.“Dissection of 5' Upstream Sequences for Selective Expression of the Nicotina plumbaginifolia rbcS-8E Gene”, Mol. Gen. Genet. 214, pp.16-23(1988))。
【0053】
根組織においてのみ活性を有するその他のプロモーター(根に特異的なプロモーター)も、本発明の方法に特に適している。例えば、Conkling et al.の米国特許No.5,459,252; Yamamoto et al., The Plant Cell, 3:371 (1991) 。根の皮層に特異的なプロモーターTobRD2も利用できる。例えば、現在Conkling et al.に認可された米国特許出願SN 08/508,786;PCT WO 975261を参照。本明細書に引用されている全ての特許は、引用する事により全て本明細書の一部を成す事とする。 本発明の形質転換タバコ細胞および植物を産生するために使用されるQPRTase組み換えDNA分子およびベクターは、更に優性選択可能マーカー遺伝子を含むことができる。タバコに使用するための適切な優性選択可能マーカーには、特にネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(NPTII)、ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT)およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)をコードする抗生物質耐性遺伝子が含まれる。タバコに使用するのに適した別の構築物の優性選択可能マーカーは、メトトレキセート耐性ジヒドロ葉酸レダクターゼをコードする突然変異によるジヒドロ葉酸レダクターゼが含まれる。適切な抗生物質耐性遺伝子を含むDNAベクター、および対応する抗生物質は市販されている。
【0054】
その抗生物質に対して、選択された優性選択可能マーカー遺伝子産物が耐性を付与している、適切な濃度の抗生物質(またはタバコ細胞に対して通常は毒性を有するその他の化合物)を含む培養培地に、混合された細胞集団を入れることにより、形質転換タバコ細胞は周囲の非形質転換細胞集団から選択される。従って、形質転換されたタバコ細胞だけが生存し、増殖する。
【0055】
本発明の組み換え植物の作製方法は、一般に、まず再生可能な植物細胞(典型的には、再生可能な組織に存在する植物細胞)を提供する。次に、植物細胞を、本発明の転写カセットを含むDNA構築物を用いて形質転換し(本明細書に記載されているように)、組み換え植物が形質転換植物細胞から再生させる。下記に説明されているように、形質転換段階は、本技術において公知の方法により実施され、転写カセットを含む微粒子による植物細胞のボンバーディング、転写カセットを有するTiプラスミドを含むAgrobacterium tumefaciensによる細胞感染、または形質転換植物の酸に適したその他の技術が含まれるが、これらに限定されない。 本発明の実施に有用な多くのアグロバクテリウムベクター系が構築物である。例えば、米国特許No.4,459,355は、Tiプラスミドを含むアグロバクテリウムを用いる双子葉植物を含む形質転換され易い植物の形質転換方法を開示している。アグロバクテリウムベクターを用いる木本植物の形質転換が米国特許No.4,795,855に開示されている。更に、Schilperoort et al.の米国特許No.4,940,838は、本発明の実施に有用な一対のアグロバクテリウムベクター(すなわち、アグロバクテリウムがTiプラスミドのvir領域を有する1つのプラスミドと、T領域は持つがvir領域は持たないもう1つのプラスミドを含むもの。)を開示している。
【0056】
微粒子は植物細胞の弾道形質転換に適切である、本発明のDNA構築物を有する微粒子も、本発明の形質転換植物の作製に有用である。微粒子は植物細胞の中に推進され、形質転換植物細胞が産生され、形質転換植物細胞から植物が再生される。適切な弾道細胞形質転換の方法と装置は全て、本発明の実施に利用できる。装置および手順の具体例がSanford and Wolf,米国特許No.4,945,050およびChristou et al., 米国特許No.5,015,580に開示されている。弾道形質転換法を使用する場合、転写カセットは、形質転換される細胞の中に複製または組み込むことが可能なプラスミドの中に組み入れることができる。この様な系における利用に適した微粒子の例は、1から5μmの金の球が含まれる。DNA構築物は、沈殿の様な適切な全ての技術により微粒子に沈積される。
【0057】
植物種は、本技術において公知の手順に従って、植物細胞原形質体のDNAを介する形質転換と、その後の形質転換原形質体からの植物の再生により、本発明のDNA構築物を用いて形質転換することができる。タバコ原形質体のDNA含有リポソームとの融合、またはエレクトロポレーションによる方法は、本技術において公知である(Shillito et al.,“Direct Gene Transfer to protoplasts of Dicotyledonous and Monocotyledonous Plants by a Number of Methods, Including Electroporation”, Methods in Enzymology 153,pp.313-36 (1987))。 本明細書に使用されている様に、形質転換とは、外因性DNAにより安定して形質転換された形質転換細胞を産生するための、外因性DNAの細胞内導入を意味する。
【0058】
形質転換細胞を、本技術において公知のタバコ細胞および組織培養技術を応用して、無傷のタバコ植物を再生させる。植物再生方法は、形質転換方法と両立するように選択される。形質転換タバコ植物におけるQPRTase配列の安定した存在性と方向は、調節された交配から生じた子孫に適用されるDNA分析の標準法により明らかにされる様に、QPRTase配列のメンデル遺伝により確認できる。形質転換細胞から形質転換タバコ植物の再生後、導入されたDNA配列は従来の植物交配法により、不適当な実験を行わずに、その他のタバコ変種に容易に移入される。
【0059】
例えば、導入遺伝子の分離を分析するために、再生された形質転換植物(R)を成熟するまで成長させ、ニコチン濃度を分析し、自家受粉させ、R植物を産生する。同型接合R植物を同定するために、形質転換R植物を成熟するまで成長させ、自家受粉させる。同型接合R植物はR子孫を産生し、この場合植物は全て導入遺伝子を持っており、異型接合R植物は3:1に分離する。
【0060】
ニコチンは、タバコ植物を害虫による被害から守る天然の殺虫剤として作用する。従って、更なる殺虫作用を付与する導入遺伝子により本発明の方法により産生される低ニコチンまたはニコチンを含まない植物を更に形質転換することが望ましい。
【0061】
本発明において使用するための好ましい植物は、N. tabacumおよびN. glutinosaを含むNicotinaすなわちタバコ種である。タバコのどの系でもどの品種でも利用できる。好ましい系は、Nic1/Nic2ダブル突然変異体の様なニコチン含有量が既に低い系である。
【0062】
器官形成または胚形成のいずれによってでも、その後のクローン増殖が可能な植物組織は全て、本発明のベクターにより形質転換できる。本明細書に使用されている様に、“器官形成”という言葉は、苗条および根が分裂組織中心から連続して発生する過程を意味し、本明細書に使用されている様に、胚形成という言葉は、体細胞または配偶子から苗条と根が協調して同時に発生する過程を意味する。選択される特定の組織は、形質転換される特定の種に利用でき、それに最も適したクローン増殖系に応じて変わる。組織標的の具体例として、葉の円盤状組織、花粉、胚、子葉、胚軸、癒傷組織、既存の分裂組織(例えば、頂端分裂組織、腋芽、および根の分裂組織)および誘導された分裂組織(例えば、子葉分裂組織および胚軸分裂組織)が含まれる。
【0063】
本発明の植物は種々の形態を取り得る。植物は、形質転換細胞と非形質転換細胞のキメラが可能である;植物はクローン形質転換体が可能である(例えば、形質転換された全ての細胞が転写カセットを含む);植物は形質転換組織と非形質転換組織の接ぎ木が可能である(例えば、柑橘種において、接ぎ穂に接ぎ木された形質転換された根株)。形質転換植物は、クローン増殖または従来の品種改良技術などの種々の方法により繁殖させることが可能である。例えば、第一世代(即ちT1)形質転換植物は、自家受精し、同型第二世代(すなわちT2)形質転換植物を生じ、T2植物は従来の品種改良技術により更に繁殖させることができる。優性の選択可能なマーカー(例えば、nptII)は、品種改良を補助するために、転写カセットと結合することができる。
【0064】
前記の観点から、本発明の実施に使用可能な植物には、Nicotiana 属が含まれることは明白である。
【0065】
上記の組み換えDNA法に精通する者にとって、形質転換タバコ細胞および植物を構築するために、適切な機能的に関連された調節配列と共に、センス方向に結合されたQPRTase cDNA全長またはQPRTase染色体遺伝子全長を利用できることは明らかである。(本技術に精通する者にとって、センス方向の遺伝子を発現するための適切な調節配列が、上記のプロモーターおよびポリアデニル化/ 転写終結配列の他に、公知の真核翻訳開始配列のいずれか1つを含むことは明らかである。)この様な形質転換タバコ植物は、QPRTase濃度の上昇を特徴とし、従って、非形質転換対照タバコ植物よりもニコチン含有量が高いことを特徴とする。
【0066】
従って、QPRTase酵素濃度を減少または増加させるためのQPRTaseDNA配列の利用、およびそれによるタバコ植物におけるニコチン含有量の減少または増加が本発明の範囲であることは明らかである。
【0067】
本明細書に使用されている様に、作物とは、農業用地に一緒に植えられた、同じ属に属する本発明の多数の植物を含む。“農業用地”とは、農地または温室の普通の土地を意味する。従って、本発明は、QPRTase活性を変え、従って、同じ種および品種の非形質転換植物の同様の作物と比較すると、同じ作物ニコチン濃度が増加または減少した植物の作物を産生する方法を提供する。
【実施例1】
【0068】
<分離および配列決定>
TobRD2 cDNA(Conkling et al., Plant Phys. 93, 1203(1990))を配列決定し、本明細書に配列番号1として提供し、推定アミノ酸配列を配列番号2とした。推定アミノ酸配列は、細胞質ゾルタンパク質と予測された。植物のQPRTase遺伝子は報告されていないが、GenBankデータベースを用いてNtQPT1アミノ酸配列を比較すると(図3)、特定の細菌およびその他のタンパク質と限定された配列に類似性があることが明らかにされた;キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRTase)活性が、S. typhimurium、大腸菌およびN. tabacum 遺伝子に関して証明されている。NtQPT1によりコードされるQPRTaseは、Arabidopsis QPRTase遺伝子の一部を表すと思われるArabidopsis EST(発現配列標識)hairetu(Genbank 受け入れ番号F20096)によりコードされる推定ペプチド断片と類似性がある。
【実施例2】
【0069】
<In-situハイブリッド形成>
根の種々の組織におけるTobRD2 mRNA転写物の空間的分布を明らかにするために、in situ ハイブリッド形成を非形質転換植物において実施した。TobRD2のアンチセンス鎖の根組織におけるTobTD2 mRNAへのin situハイブリッド形成は、Meyerowitz, Plant Mol. Biol. Rep. 5,242(1987)およびSmith et al., Plant Mol. Biol. Rep. 5, 237 (1987)に報告されている技術を用いて行われた。7日令の苗木の根をリン酸緩衝グルタルアルデヒドに固定し、Paraplast Plus (Monoject Inc.,セントルイス、ミズリー州)に包埋し、8mmの厚さで切片を作製し、横断切片と縦断切片を得た。35S-ATPの存在下にin vitroで合成されたアンチセンスTobRD2転写物を使用した。標識されたRNAをアルカリ処理により加水分解し、使用前に100から200塩基量平均長が得られた。
【0070】
ハイブリッド形成は、ハイブリッド形成溶液1mL あたり5x106カウント/分(cpm)の標識RNAにより、50%ホルムアミドにおいて42℃で16時間行われた。曝露後、スライドガラスを現像し、明視野および暗視野顕微鏡により視覚化した。
【0071】
ハイブリッド形成シグナルは、根の皮層の細胞に局在した(結果は表示されていない)。同じ切片の明視野および暗視野像の両者の比較により、TobRD2転写物は、根皮層の柔組織細胞に局在した。ハイブリッド形成シグナルは、表皮または中心柱には視認されなかった。
【実施例3】
【0072】
<Nic1およびNic2タバコ突然変異体におけるTobRD2 mRNA濃度とニコチン濃度との相関関係>
TobRD2定常期mRNA濃度をNic1およびNic2突然変異タバコ植物において検討した。Nic1およびNic2はキノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ活性と腐敗性メチルトランスフェラーゼ活性を調節することが知られており、ニコチン産生の共優性調節因子である。図5Aおよび5Bの結果は、TobRD2発現がNic1とNic2により調節されていることを示している。
【0073】
RNAを野生型Burley 21(Nic1/Nic1 Nic2/Nic2)タバコ植物の根;Nic1-Burley 21(nic1/nic1 Nic2/Nic2)の根;Nic2-Burley 21(Nic1/Nic1 nic2/nic2)の根;Nic1-Nic2-Burley 21の根(nic1/nic1 nic2/nic2)から分離した。
【0074】
4種類のBurley 21 タバコ植物系(nic)を土壌で種子から1ヶ月間成長させ、温室内の空気を含ませた栄養液中の水栽培箱に移した。これらの系は、2つの低ニコチンの遺伝子座を除いて同遺伝子型で、Nic1/Nic1 Nic2/Nic2、Nic1/Nic1 nic2/nic2、nic1/nic1 Nic2/Nic2、nic1/nic1 nic2/nic2の遺伝子型を有する。根は、遺伝子型毎に約20例の植物から採取し、RNA分離のためにプールした。Sambrook et al.(1989)の方法に従って、それぞれの遺伝子型の全RNA(1μg)を1.1M ホルムアルデヒドを含む1%アガロースゲルで電気泳動にかけ、ナイロン膜に移した。膜を32P-標識TobRD2 cDNA断片とハイブリッド形成させた。TobRD2転写物の相対強度をデンシトメトリーにより測定した。図5(無地の棒)は、4種類の遺伝子型のそれぞれに関する相対的転写物濃度を示す。4種類の遺伝子型の相対的ニコチン濃度(Nic1/Nic1 Nic2/Nic2)は斜線棒により表示されている。
【0075】
図5は、基準量として野生型Burley 21 (Nic1/Nic1 Nic2/Nic2)に見いだされる濃度を用いて、相対的な定常期のTobRD2のmRNA濃度を比較したものである。Nic1/Nic2ダブル突然変異体のTobRD2 mRNA濃度は、野生型タバコの約25%であった。図5Bは更に、本具体例において検討したほぼ同遺伝子系における相対的ニコチン濃度を比較したものである(無地の棒はTobRD2転写物濃度を示す;斜線の棒はニコチン濃度を示す。)。ニコチン濃度とTobRD2転写物濃度の間には密接な相関関係があった。
【実施例4】
【0076】
<TobRD2 mRNA濃度に及ぼす先端切断部位の影響>
タバコ植物の花の頭状花序の除去(先端切断)により根の成長を促進し、その植物の葉のニコチン含有量を増加させることは公知である。植物の先端切断は商業的タバコ栽培において標準的実施事項であり、成長条件の公知の組み合わせにおいて特定のタバコ植物の先端切断を行う至適時期は、本技術において通常の技術を有する者により容易に決定できる。
【0077】
タバコ植物(N. tabacum SR1)は、土壌において種子から1ヶ月間成長させ、砂の入ったポットに移した。開花し始めるまで、植物を更に2ヶ月間温室で成長させた。次に、頭状花序と2つの節を4例の植物から除去した(先端切断)。表示された時間の後、各植物から根の一部を収穫し、RNA抽出のためにプールした。Sambrook et al.(1989)の方法に従って、各時点の全RNA(1μg)を1.1M ホルムアルデヒドを含む1%アガロースゲルで電気泳動にかけ、ナイロン膜に移した。膜を32P-標識TobRD2 cDNA断片とハイブリッド形成させた。先端切断した場合(無地の棒)あるいは先端切断しない場合(斜線の棒)の、(0時間と比較した)各時間に関するTobRD2転写物の相対強度をデンシトメトリーにより測定した。
【0078】
相対的TobRD2濃度を24時間にわたり根組織において測定した;結果を図6に示す(無地の棒は、先端切断植物における転写物濃度を示し、斜線の棒は非先端切断対照におけるTobRD2転写物濃度を示す。)。タバコ植物の先端切断から6時間以内に、先端切断植物においてTobRD2のmRNA濃度は約8倍に増加し、対照植物においては同じ時期にわたり増加は認められなかった。
【実施例5】
【0079】
<配列番号1のDNAによるQPRTase欠失細菌突然変異体の補完性>
大腸菌TH265株は、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ欠失突然変異体(nadC−)で、従って、ニコチン酸を含まない培地では成長できない。
TH265細胞を、配列番号1のDNAを含む発現ベクター(pWS161)を用いて形質転換するか、あるいは発現ベクター(pKK2233)のみを用いて形質転換した。形質転換細菌の成長を、TH265(pKK233)形質転換体の成長と、非形質転換TH265 nadC-突然変異体と比較した。成長をME最小培地(ニコチン酸を含まない)とニコチン酸を添加したME最小培地で比較した。
【0080】
QPRTaseに突然変異を有する大腸菌株(nadC)、TH265はDr.K.T.Hughes(Hughes et al., J.Bact.175:479(1993)のご厚意により提供された。Sambrook et al(1989)に報告されているように、細胞はLB培地で維持され、能力細胞が調製された。発現プラスミドは、Tacプロモーターの調節下にクローニングされたTobRD2 cDNAによりpKK2233(Brosius, 1984)において構築された。得られたプラスミド、pWS161をTH265細胞の中に形質転換した。次に、形質転換細胞を補足剤としてニコチン酸を含む(0.0002%)または含まない最小培地(Vogel and Bonner, 1956)寒天プレートで平板培養した。TH265細胞単独およびpKK2233により形質転換されたTH265を対照として使用するために、同様のプレートで平板培養した。
【0081】
結果を図4に示す。配列番号1のDNAを用いて形質転換されたTH265のみがニコチン酸を含まない培地において成長した。これらの結果から、TH265細菌細胞において配列番号1のDNAが発現した場合に、これらの細胞にNadC+の表現型が現れる事から、この配列がQPRTaseをコードすることが確認される。この様にして、TobRD2の名称はNtQRTに変わった。
【実施例6】
【0082】
<タバコ植物の形質転換>
アンチセンス方向の配列番号1のDNAは、植物のプロモーター(CaMV 35S またはTobRD2根の皮層に特異的なプロモーター)と機能的に関連し、2種類の異なるDNAカセット:CaMV35Sプロモーター/アンチセンス配列番号1およびTobRD2プロモーター/アンチセンス配列番号1を産生する。
【0083】
野生型タバコ系と低ニコチンタバコ系、例えば、野生型Burley 21 タバコ(Nic1+/Nic2+)および同型接合nic1-/nic2-Burley 21が形質転換のために選択された。DNAカセットのそれぞれを使用して、各系由来の複数のタバコ植物細胞が形質転換されている。形質転換は、アグロバクテリウムベクター、例えば、Tiボーダー配列とnptII遺伝子(カナマイシンに対する抵抗性と、nosプロモーター(nptII)の調節を提供する)を有するアグロバクテリウム二成分ベクターを用いて実施される。
【0084】
形質転換細胞が選択され、形質転換タバコ植物(R)が再生される。R植物を成熟するまで成長させ、ニコチン濃度を検討する;形質転換タバコ植物の部分集合は、非形質転換対照植物と比較して、有意に低い濃度を示す。
【0085】
次に、R植物を自家受粉させ、形質転換遺伝子の分離をR子孫において分析する。R子孫を成熟するまで成長させ、自家受粉させる;R子孫における導入遺伝子の分離から、R植物は導入遺伝子に関して同型接合である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タバコのキノレートホスホリボシルトランスフェラーゼのメッセンジャーRNAの少なくとも30個の連続したヌクレオチドにハイブリダイズする単離された核酸であって、
a)配列番号1のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド(但し、核酸は配列番号1のヌクレオチド配列の相補物の全長配列ではない)、
b)上記a)に少なくとも90%同一であるヌクレオチド
からなる群から選択される核酸。
【請求項2】
5’から3’の方向に、植物細胞で機能できるプロモーターと、前記プロモーターの下流に配置され、前記プロモーターに機能的に関連している請求項1に記載された核酸とを含んでなる核酸構築物。
【請求項3】
請求項2の核酸構築物を含む植物細胞。
【請求項4】
請求項3の植物細胞を含むトランスジェニックタバコ植物。
【請求項5】
キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRTase)の発現が減少したトランスジェニックタバコ植物の作成方法であって、
タバコ植物細胞を請求項2に記載された核酸構築物により形質転換して、対照タバコ植物細胞と比べて、QPRTaseの発現が減少した形質転換タバコ植物細胞を作成するステップと、
形質転換したタバコ植物細胞をトランスジェニックタバコ植物に成長させるステップと
を含み、これにより前記トランスジェニックタバコ植物はQPRTaseの発現が減少する方法。
【請求項6】
植物の葉におけるニコチンレベルが減少したトランスジェニックタバコ植物の作成方法であって、
タバコ植物細胞を請求項2に記載された核酸構築物により形質転換して、形質転換したタバコ植物細胞を作成するステップと、
形質転換したタバコ植物細胞をトランスジェニックタバコ植物に成長させるステップと
を含み、これにより前記トランスジェニックタバコ植物は、対照タバコ植物と比べて葉におけるニコチンレベルが減少する方法。
【請求項7】
前記タバコ植物は、バレー種である請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
トランスジェニックタバコの種子を生産する方法であって、
請求項5〜7のいずれか1項に記載のトランスジェニックタバコ植物又はその子孫を種子ができるまで成長させるステップと、
前記トランスジェニックタバコ植物の種子を前記トランスジェニック植物から収集するステップと
を含む方法。
【請求項9】
対照タバコ植物と比較してニコチンの量が減少している、請求項2に記載された核酸構築物を含むトランスジェニックタバコ植物。
【請求項10】
トランスジェニックタバコ植物である請求項9に記載されたトランスジェニックタバコ植物の子孫。
【請求項11】
トランスジェニックタバコ植物の種子である請求項9又は10のトランスジェニックタバコ植物の種子。
【請求項12】
(a)又は(b)のヌクレオチド配列の少なくとも約50個の連続したヌクレオチドの核酸配列を含んでなる請求項1に記載の核酸。
【請求項13】
(a)又は(b)のヌクレオチド配列の少なくとも約75個の連続したヌクレオチドの核酸配列を含んでなる請求項1に記載の核酸。
【請求項14】
(a)又は(b)のヌクレオチド配列の少なくとも約100個の連続したヌクレオチドの核酸配列を含んでなる請求項1に記載の核酸。
【請求項15】
(a)又は(b)のヌクレオチド配列の少なくとも約125個の連続したヌクレオチドの核酸配列を含んでなる請求項1に記載の核酸。
【請求項16】
(a)又は(b)のヌクレオチド配列の少なくとも約150個の連続したヌクレオチドの核酸配列を含んでなる請求項1に記載の核酸。
【請求項17】
(a)又は(b)のヌクレオチド配列の少なくとも約200個の連続したヌクレオチドの核酸配列を含んでなる請求項1に記載の核酸。
【請求項18】
DNAである請求項1及び12〜17のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項19】
RNAである請求項1及び12〜17のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項20】
検出可能な部分をさらに含む請求項1及び12〜19のいずれか1項に記載の核酸。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−112316(P2009−112316A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46336(P2009−46336)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【分割の表示】特願2008−1397(P2008−1397)の分割
【原出願日】平成10年6月10日(1998.6.10)
【出願人】(598139601)ノース・キャロライナ・ステイト・ユニヴァーシティ (11)
【Fターム(参考)】