説明

キャスタブル耐火物の施工方法

【課題】被施工面とキャスタブル耐火物の間に充分な付着力が働かず、且つ型枠が使用できない状況下において、被施工面上にキャスタブル耐火物層を安定的に形成することが可能なキャスタブル耐火物の施工方法を提供する。
【解決手段】水滴の接触角θが110°以上である被施工面13上若しくは7°以下である被施工面14上に、水滴10の接触角θが7°超110°未満である表面処理層を形成した後、表面処理層上にキャスタブル耐火物を塗布する。被施工面13、14上に表面処理層を形成する方法としては、水滴10の接触角θが7°超110°未満であるシート状の材料を被施工面13、14上に固着すればよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業炉及びその付帯設備のライニング材として使用されるキャスタブル耐火物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱炉、溶解炉、熱処理炉等の工業炉及びその付帯設備では、鉄皮を被覆するライニング層が、稼働面側に配置されるウェア層と、その背面に配置されるパーマ層とから概略構成されている。また近年では、炉体からの放散熱を低減させて溶融金属の温度降下を防止すると共に、鉄皮への熱負荷を低減させるため、パーマ層と鉄皮の間に断熱材を介装することも行われている。
【0003】
ライニング材には、定形耐火物(耐火物煉瓦)を用いる場合と、不定形耐火物(キャスタブル耐火物)を用いる場合があるが、施工の容易さ並びに省力化等の観点からキャスタブル耐火物が使用されることが多い。しかし、セラミックファイバー等の断熱耐火物の上にキャスタブル耐火物層を形成する場合、キャスタブル耐火物に含まれる水分が断熱耐火物に吸い出されてしまい、キャスタブル耐火物の施工品質が劣化するという問題がある。
【0004】
そこで、特許文献1では、金属製の外皮材(鉄皮)の内側に、熱膨張差を調整吸収する無機質材を貼り付ける工程と、無機質材に撥水処理を施す工程と、撥水処理を施した無機質材に不定形耐火断熱材(キャスタブル耐火物)をライニングする工程とを備える中間ストークの製造方法の発明が開示されている。
【0005】
他方、熱伝導率が概ね0.1W/mKを下回るような微細多孔性断熱材が最近、広く使用されるようになってきている。この微細多孔性断熱材は、シリカSiO、アルミナAl等による球状微粒子から構成されていることが殆どであり、これら金属酸化物の表面は親水性を有している。このため、水(液体状態のHO)が染み込み易く、染み込んだ水によって構成粒子の配列が崩れ、断熱性が大きく低下する。
【0006】
これを防止するため、微細多孔性断熱材に隣接してキャスタブル耐火物を施工する場合、これら両者の間に水分の移動を阻止する保護板を設ける技術(特許文献2参照)や、微細多孔性断熱材及び/又はキャスタブル耐火物に耐水性塗料を塗装する技術(特許文献3参照)が開示されている。また、微細多孔性断熱材に撥水処理を行うことも一般に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−272448号公報
【特許文献2】特開2003−42667号公報
【特許文献3】特開2010−236782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、キャスタブル耐火物から水分が吸い出されることによるキャスタブル耐火物の施工品質劣化を防止するため、あるいは、被施工面となる微細多孔性断熱材の断熱性能劣化を防止するため、キャスタブル耐火物が施工される被施工面に撥水処理が施されることがある。
【0009】
しかし、撥水性(疎水性)を有する被施工面にキャスタブル耐火物を施工した場合、被施工面とキャスタブル耐火物との間に充分な付着力が働かないため、キャスタブル耐火物が自重で剥離して落下してしまうことがある。但し、枠掛け流し込み工法にてキャスタブル耐火物を被施工面に施工する場合は、被施工面に撥水処理が施されていても施工の障害とはならない。枠掛け流し込み工法とは、被施工面に対して所定の隙間を設けて型枠を対向配置し、水練りしたキャスタブル耐火物をこの隙間に流し込んで静置することにより養生硬化させ、硬化後に脱枠する方法である。
枠掛け流し込み工法の場合、隙間に流し込まれたキャスタブル耐火物は、養生硬化するまでの間、型枠によって保持されるため、剥離して落下することはない。因みに、特許文献1では、段落[0027]に「撥水剤が乾燥した後に、内型を嵌め込み、内型と加熱膨張性シート材が貼り付けられた外皮材との間に表1に記載の配合からなる不定形耐火断熱物を振動を与えながら流し込んだ。」と記載されている。
【0010】
しかし、被施工面とウェアライニング材の間にキャスタブル耐火物を設ける場合など、スタッド金物等が邪魔になって型枠が設置できず、枠掛け流し込み工法以外の施工方法によりキャスタブル耐火物を施工しなければならない場合がある。型枠を使用せずにキャスタブル耐火物を施工するためには、被施工面とキャスタブル耐火物の間に付着力が働くことが必要であるが、被施工面が撥水性を有する場合、充分な付着力が働かないため、キャスタブル耐火物が被施工面から自重で剥離して落下する。特に、ウォーキングビーム式の熱延用連続加熱炉におけるスキッドビームの下面にキャスタブル耐火物を施工する場合、この現象が顕著となる。
【0011】
一方、親水性が過剰な被施工面にキャスタブル耐火物を施工する場合にも、上記と同様の現象が起きることを本発明者等は発見した。即ち、親水性が過剰な被施工面上にキャスタブル耐火物を施工した場合、被施工面とキャスタブル耐火物との間の界面に水分が引き込まれるように集まって水膜を形成し、キャスタブル耐火物が付着力を失って被施工面から脱落し易くなる。
【0012】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、被施工面とキャスタブル耐火物の間に充分な付着力が働かず、且つ型枠が使用できない状況下において、被施工面上にキャスタブル耐火物層を安定的に形成することが可能なキャスタブル耐火物の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、被施工面とキャスタブル耐火物との間の付着力発生メカニズムについて鋭意検討を行った。その結果、以下に述べる(1)及び(2)の知見を得、これに基づいて、(3)の発明に想到した。
【0014】
(1)被施工面が撥水性(疎水性)を有する場合、具体的には、被施工面上の水滴の接触角が110°以上である場合、キャスタブル耐火物を該被施工面上に施工すると、被施工面に接触するキャスタブル耐火物がはじかれてしまう。このため、被施工面とキャスタブル耐火物との間に充分な付着力が働かず、キャスタブル耐火物が脱落し易くなる。
(2)被施工面が過剰な親水性を有する場合、具体的には、被施工面上の水滴の接触角が7°以下である場合、キャスタブル耐火物を該被施工面上に施工すると、被施工面とキャスタブル耐火物との間の界面に水分が引き込まれるように集まって水膜を形成する。このため、キャスタブル耐火物は付着力を失って脱落し易くなる。また、被施工面近傍のキャスタブル耐火物は、上記現象によって水分を失い、充分な施工品質を確保できなくなる。その結果、キャスタブル耐火物が脱落する場合もある。
【0015】
(3)被施工面とキャスタブル耐火物との間の付着力を確保することにより、型枠を使用せずに所定の厚みのキャスタブル耐火物層を上記被施工面上に形成するためには、上記被施工面の最表面上に、水滴の接触角が7°を超え110°未満である層を設ければよい。
【0016】
即ち、本発明に係るキャスタブル耐火物の施工方法は、水滴の接触角が110°以上若しくは7°以下である被施工面上に、水滴の接触角が7°超110°未満である表面処理層を形成した後、該表面処理層上にキャスタブル耐火物を塗布することを特徴としている。
【0017】
図1は、水平な表面を有する固体基質11上に形成された水滴10に作用する界面張力を示した模式図である。図1において、水滴10と固体基質11と空気12の境界点を起点とし、境界点から水滴10の表面に向けて引いた接線の方向に作用する、水滴10の表面張力(水滴10と空気12との間に作用する界面張力)をγ、水滴10と固体基質11との間に作用する界面張力をγSL、固体基質11の表面張力(固体基質11と空気12との間に作用する界面張力)をγとすると、水滴10の接触角θは、γとγSLの間の角度となり、次式が成立する。
γ=γSL+γ・cosθ
【0018】
また、「塗布する」とは、枠掛け流し込み工法以外の方法により、被施工面上にキャスタブル耐火物層を形成する方法の総称であり、具体的には、鏝塗り、パッチング、乾式吹付け、湿式吹付け等にて被施工面上にキャスタブル耐火物層を施工する方法を指す。
【0019】
上述したように、被施工面上の水滴の接触角が110°以上である場合、キャスタブル耐火物を該被施工面上に施工すると、被施工面に接触するキャスタブル耐火物がはじかれてしまう。一方、被施工面上の水滴の接触角が7°以下である場合、キャスタブル耐火物を該被施工面上に施工すると、被施工面とキャスタブル耐火物との間の界面に水分が引き込まれるように集まって水膜を形成し、キャスタブル耐火物は付着力を失って脱落し易くなる。そこで、本発明に係るキャスタブル耐火物の施工方法では、水滴の接触角が7°を超え110°未満である表面処理層を被施工面上に形成するものである。
【0020】
また、本発明に係るキャスタブル耐火物の施工方法では、前記表面処理層は、水滴の接触角が7°超110°未満であるシート状の材料を前記被施工面上に固着することによって形成するようにしてもよい。
ここで、「シート状の材料」とは、帯状、布状、紙状など、幅及び長さに比べて厚さが薄く、可撓性を有する材料をいう。
また、「固着する」とは、被施工面を覆うようにシート状の材料を配置し、シート状の材料が被施工面から剥離しないように、該シート状の材料を被施工面上に固定することをいう。従って、シート状の材料を被施工面に貼り付けても良いし、糸や針金等の線材でシート状の材料を被施工面に縛り付けたり、シート状の材料をステープル等で被施工面に固定しても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るキャスタブル耐火物の施工方法では、水滴の接触角が110°以上若しくは7°以下である被施工面上に、水滴の接触角が7°超110°未満である表面処理層を形成した後、該表面処理層上にキャスタブル耐火物を塗布するので、被施工面とキャスタブル耐火物との間の付着力が表面処理層によって確保される。その結果、被施工面上にキャスタブル耐火物層が安定的に形成され、被施工面からキャスタブル耐火物が剥離して落下することがない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】水滴の接触角を説明するための模式図である。
【図2】水平な表面を有する被施工面上に形成される水滴の形状を示した模式図であり、(A)は被施工面が撥水性を有する場合、(B)は被施工面が高い親水性を有する場合をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態に付き説明し、本発明の理解に供する。
【0024】
本発明に係るキャスタブル耐火物の施工方法は、水滴の接触角が110°以上若しくは7°以下である被施工面上にキャスタブル耐火物を施工する際、水滴の接触角が7°を超え110°未満である表面処理層を被施工面上に設け、該表面処理層上にキャスタブル耐火物を塗布するものである。
【0025】
図2は、水平な表面を有する被施工面13、14に水滴10を落としたときに、被施工面13、14上に形成される水滴10の形状を示した模式図である。図2(A)に示すように、被施工面13が撥水性を有する場合、水滴10の接触角θは大きくなる。一方、図2(B)に示すように、被施工面14が高い親水性を有する場合、水滴10の接触角θは小さくなる。
【0026】
本発明における技術思想は以下の2点に要約できる。
(a)被施工面とキャスタブル耐火物との間に、キャスタブル耐火物との付着性が良好な表面処理層を形成する。
(b)被施工面及び表面処理層の濡れ性に着目し、被施工面及び表面処理層の濡れ性を水滴の接触角で定量的に評価する。
【0027】
本発明に係るキャスタブル耐火物の施工方法は、上記技術思想に基づき、水滴の接触角が110°以上である濡れにくい(撥水性(疎水性)がある)被施工面、若しくは水滴の接触角が7°以下である濡れやすい(親水性が過剰に高い)被施工面とキャスタブル耐火物との間に、水滴の接触角が7°超110°未満である適度な濡れ性を有する表面処理層を形成するものである。
なお、本発明では、被施工面とキャスタブル耐火物との間の付着力確保が重要であり、被施工面を構成する材料の内部における水滴の接触角が110°以上若しくは7°以下であっても、なんら問題はない。
【0028】
[被施工面]
被施工面における水滴の接触角が110°以上である例としては、例えば下記の2ケースが挙げられる。
(A)セラミックファイバーやケイ酸カルシウム系断熱ボード等の断熱耐火物を施工した後に、該断熱耐火物を被施工面としてキャスタブル耐火物を施工する場合、前記断熱耐火物について撥水処理を行うことが多い。これは、キャスタブル耐火物を施工した際、キャスタブル耐火物の水分が前記断熱耐火物によって吸い出されてしまうことによる、キャスタブル耐火物の施工品質劣化を防止するためである。
【0029】
(B)Wacker-Chemie GmbH社製のWDS(登録商標)や日本マイクロサーム(株)製のマイクロサームなどの微細多孔性断熱材を施工した後に、該微細多孔性断熱材を被施工面としてキャスタブル耐火物を施工する場合、前記微細多孔性断熱材について撥水処理を行うことが多い。これは、キャスタブル耐火物を施工した際、キャスタブル耐火物の水分が前記微細多孔性断熱材に吸収されることによる、前記微細多孔性断熱材の断熱性低下を防止するためである。
【0030】
一方、被施工面における水滴の接触角が7°以下である例としては、例えば下記の2ケースが挙げられる。
(A)セラミックファイバーやケイ酸カルシウム系断熱ボード等の断熱耐火物を施工した後に、該断熱耐火物を被施工面としてキャスタブル耐火物を施工する場合、前記断熱耐火物に撥水処理を行わず、前記断熱耐火物を被施工面としてキャスタブル耐火物を施工することが考えられる。ケイ酸カルシウム系断熱ボード等の断熱耐火物について撥水処理しない場合、該断熱耐火物の吸水性が高いため、水滴の接触角は7°以下となる。
(B)撥水処理が施されていない微細多孔性断熱材を被施工面としてキャスタブル耐火物を施工することが考えられる。
【0031】
[水滴の接触角が7°超110°未満である表面処理層を形成する方法]
上記被施工面に、水滴の接触角が7°を超え110°未満である表面処理層を形成する方法として、例えば、水滴の接触角が7°を超え110°未満のシート状の材料を上記被施工面に固着する方法がある。
【0032】
シート状の材料を被施工面に固着する工法としては、シート状の材料の一方の面に粘着剤を塗りつけておき、その粘着力によってシート状の材料を被施工面に貼り付ける方法がある。この工法に用いるシート状の材料としては、例えば一般に広く市販されている粘着テープ類が使用可能であるが、中でもスフモフ、ポリエステル、ポリエチレン製等の布を基材とした布粘着テープがコストや作業性の点から好適である。
【0033】
また、粘着剤以外の方法としては、糸や針金等の線材によってシート状の材料を被施工面に縫い付けたり、巻き付けたり、縛り付ける方法や、シート状の材料をステープル等で被施工面に固定する方法等が考えられる。なお、当然ながら、粘着剤と線材等の方法とを併用してもよい。
【0034】
[キャスタブル耐火物の塗布方法]
以下、キャスタブル耐火物の塗布方法について例を挙げて説明する。
なお、以下の各工法とも、表面処理層が形成された被施工面に対するキャスタブル耐火物の付着力によって、キャスタブル耐火物層が被施工面上に保持される。また、スタッド金物やハンガー煉瓦等を併用した場合、これらが養生硬化後のキャスタブル耐火物層の保持に寄与する。
(A)鏝塗り工法
水練りしたキャスタブル耐火物を被施工面上に盛り付け、鏝若しくは手指等を用いてキャスタブル耐火物を押し広げるように成形することにより、被施工面上にキャスタブル耐火物層を形成する。その後静置することによりキャスタブル耐火物層を養生硬化させる。
【0035】
(B)パッチング工法
粘土状に調整された水練りキャスタブル耐火物(一般にプラスティック耐火物と呼ばれる。)を被施工面上に盛り付け、ランマーもしくは手指、鏝等を用いてキャスタブル耐火物を押し広げるように成形する。その後静置することによりキャスタブル耐火物層を養生硬化させる。
【0036】
(C)乾式吹付け工法
乾式吹付け用キャスタブル耐火物粉体を圧送用空気流中に所定の速度で切出すことにより、ホースを経由して乾式吹付け用キャスタブル耐火物粉体を吹付けノズルへ向けて送給する。そして、吹付けノズルから乾式吹付け用キャスタブル耐火物粉体を吹き出させる直前に、所定の割合の水分を乾式吹付け用キャスタブル耐火物粉体に添加して被施工面上に吹付けることにより、被施工面上にキャスタブル耐火物層を形成する。その後静置することによりキャスタブル耐火物層を養生硬化させる。
【0037】
(D)湿式吹付け工法
湿式吹付け用キャスタブル耐火物を水練りした後、湿式吹付け用キャスタブル耐火物を圧送用空気流中に所定の速度で切出すことにより、ホースを経由して湿式吹付け用キャスタブル耐火物を吹付けノズルへ向けて送給する。そして、吹付けノズルから湿式吹付け用キャスタブル耐火物を吹き出させる直前に、所定の割合の硬化促進剤を湿式吹付け用キャスタブル耐火物に添加して被施工面上に吹付けることにより、被施工面上にキャスタブル耐火物層を形成する。その後静置することによりキャスタブル耐火物層を養生硬化させる。
【0038】
[水滴の接触角の測定方法]
水滴の接触角は、JISR3257:1999『基板ガラス表面のぬれ性試験方法』を用いて測定すればよい。本発明では、『6.静滴法』記載の方法により測定した水滴の接触角を用いる。
また、吸水性がある被施工面に対しては、JISR2205−1992『耐火れんがの見掛気孔率・吸水率・比重の測定方法』の4.1.2項、4.1.4項を準用した以下の手順により試料(被施工面)を調整した後、JISR3257:1999に記載の静滴法にて接触角を測定する。
(1)吸水性がある被施工面に蒸留水を充分に散布することにより、被施工面を飽水させる。
(2)湿布(事前に蒸留水にて充分に濡らした後、水分をよく絞った布)により被施工面をぬぐって、被施工面の表面水滴を除去する。
(3)すみやかにJISR3257:1999に記載の静滴法にて被施工面の接触角を測定する。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、水滴の接触角が110°以上若しくは7°以下である被施工面の例、並びに水滴の接触角が7°超110°未満である表面処理層を設ける方法の例についてそれぞれ説明したが、本発明がそれらの例に限定されるものではないことは言うまでもない。
【実施例】
【0040】
本発明に係るキャスタブル耐火物の施工方法の効果を検証するため、ウォーキングビーム式の熱延用連続加熱炉のスキッドビームに対して耐火物ライニング施工比較試験を実施した。実施した試験の一覧を表1に示す。同表に示した各接触角は、上述した[水滴の接触角の測定方法]によって測定した値を示している。
【0041】
【表1】

【0042】
耐火物ライニングの対象は、スキッドビームの水冷パイプである。水冷パイプの外表面に、表1の「被施工面」欄に記載された断熱材を施工した後、同表の「表面処理槽」欄に記載の表面処理を該断熱材の表面に対して実施した。その後、表面処理層上に断熱キャスタブル耐火物を鏝塗り施工し、施工結果の評価を行った。
【0043】
なお、型枠を用いないキャスタブル耐火物の施工方法として、鏝塗り、パッチング、乾式吹付け、湿式吹付けがあるが、このうち最も付着性に対する要求が厳しいのは、鏝塗り施工である。一般に、混練に用いる水分添加量が多いほど被施工面への付着性が求められる。しかし、鏝塗り施工より水分添加量が多い乾式吹付けの場合、数層に分けてキャスタブル耐火物層を形成すること、吹付け用空気流により水分蒸発が促進されること、キャスタブル耐火物層形成から養生硬化がある程度進むまでの時間が数秒〜数分間と短いこと等、付着性に対する要求は、それほど厳しくない。このため、本比較試験における被施工面への断熱キャスタブル施工方法としては、鏝塗り施工を採用した。
【0044】
全ての実施例において、被施工面上にキャスタブル耐火物層が安定的に形成され、被施工面からキャスタブル耐火物が剥離して落下することがなかった。詳細には、実施例1及び4については、鏝塗り中に断熱キャスタブル耐火物が被施工面よりも鏝に粘り着く傾向があり、断熱キャスタブル耐火物層の厚みも15〜20mm程度が限界であった。このため、実施例1及び4の施工後の評価は○とした。また、実施例2及び3は、施工性が良好で、断熱キャスタブル耐火物層の厚みも容易に40mmとすることができた。このため、実施例2及び3の施工後の評価は◎とした。
一方、比較例は全て、鏝塗り中に断熱キャスタブル耐火物が被施工面から脱落して施工できなかったため、施工後の評価は×とした。
【符号の説明】
【0045】
10:水滴、11:固体基質、12:空気、13、14:被施工面、θ:接触角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水滴の接触角が110°以上若しくは7°以下である被施工面上に、水滴の接触角が7°超110°未満である表面処理層を形成した後、該表面処理層上にキャスタブル耐火物を塗布することを特徴とするキャスタブル耐火物の施工方法。
【請求項2】
請求項1記載のキャスタブル耐火物の施工方法において、前記表面処理層は、水滴の接触角が7°超110°未満であるシート状の材料を前記被施工面上に固着することによって形成することを特徴とするキャスタブル耐火物の施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−251694(P2012−251694A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123598(P2011−123598)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】