説明

キャッシュされたサービス取得データにおける動的なサービスのフィルタリング

受信機において、電源がオンになった後、または、物理的なチャンネルの変更の後、電子サービス・ガイド(ESG)・データが以前にキャッシュされたサービスに関連するアクティビティについて、物理的なチャンネルが監視される。サービスのESGデータには、サービスに関連付けられたインターネット・プロトコル(IP:internet protocol)など、幾らかのサービス識別情報が含まれる。サービスに関連するアクティビティについての、物理的なチャンネルの監視は、サービスに関連付けられたIPアドレスを調べることによって行われる。アクティビティが検出されると、サービスがアクティブであり、そのキャッシュされたデータが有効であると判定される。キャッシュされたESGデータに含まれるサービス取得データは、ユーザにサービスを提供するために使用される。従って、本発明は、新たなESGデータの受信を待機する必要無しに、サービスがアクティブであると検出されるとすぐに、キャッシュされたESGデータを使用してユーザにサービスを提供できるようにする。アクティビティが検出されていないサービスのキャッシュされたESGデータは、使用されず、特定の期間経過した後、キャッシュから削除されるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する特許出願)
本出願は、米国特許法第119条(e)項に基づいて2008年7月2日付で出願された米国仮出願第61/077,543号の利益を主張するものであり、あらゆる目的のため、その開示内容および包袋記録(審査経過記録)内容の全体を本願に盛り込んだものとする。
【0002】
本発明は、一般的には、通信システムに関し、より具体的には、ディジタル放送システムおよび電子サービス・ガイド・サービスに関する。
【背景技術】
【0003】
通常、ディジタル・テレビジョン放送システムは、特に、サービスの取得、サービスの情報、さらに、スケジュールに関するデータを送信する電子サービス・ガイド(ESG:electronic service guide)・メカニズムの機能を提供する。ESGメカニズムによって提供される情報を通じて、エンド・ユーザは、興味のあるサービスおよびアイテムを選択し、自己の端末上に保存されたアイテムを見つけることができる。ESG情報が提供されるサービスの例としては、特に、オーディオ、ビデオ、およびファイルのダウンロード・サービス、さらに、ESG自体が挙げられる。標準化されるESGフォーマットの例としては、DVB‐CBMS、TV‐Anytime、さらに、オープン・モバイル・アライアンス(OMA:Open Mobile Alliance)によって規定されるものが挙げられる。
【0004】
インターネット・プロトコル(IP)・ベースのサービスのカプセル化を用いたディジタル放送システムにおいては、所与のサービスのためのデータは、1つ以上のIPストリームのセットとして表され、各ストリームは、何らかのIPアドレス(および/またはポート)に関連付けられている。例えば、IPカプセル化スキームは、DVB‐Hのために特定され、さらに、ATSC‐M/Hのために提案されている。所与の物理的なチャンネル上で利用可能な様々なサービスのためのIPストリームは、データの時間バーストとして、多重化され、放送(ブロードキャスト)される。受信機がユーザに対し、ユーザによって選択されたサービス(例えば、選択されたネットワークTVチャンネルのビデオ・ストリーム)を提供する際、受信機は、ブロードキャストされるデータの時間バースト内で全てのデータ(例えば、全ての利用可能なTVチャンネルのビデオ・ストリーム)を受信するが、選択されたサービスに関連付けられたサービスのみを選択、処理、提供する。IPベースのシステムでは、このような関連付けは、通常、選択されたサービスに関連付けられたIPアドレスを用いて行われる。ESGメカニズムによって提供されたサービス取得データは、例えば、セッション記述プロトコル(SDP:Session Description Protocol)シンタックスを用いて、所与のサービスに関連するIPアドレスを識別する。ESG自体が多重化データ内のサービスとなる場合もある。
【0005】
所与の物理的なチャンネル上で利用可能な各サービスのセットのためのESGデータは、通常同一の物理的なチャンネル上で送信される。従って、或る物理的なチャンネルのESGデータを受信しようとする際には、受信機は、まず、そのチャンネルにチューニングしなくてはならない。電源がオンになった後、または、所与のチャンネルにチューニングした後、受信機が十分なESGデータを受信してそのチャンネルで提供されているサービスを識別してユーザにサービスを提供するには、数秒間必要となることがある。
【0006】
所与の物理的なチャンネルのサービス取得データをキャッシュし、この情報がチャンネルの変更後、または、電源をオフにし、再びオンとなった後も利用できるようにすることによって、受信機のユーザ・エクスペリエンスが向上する。元のチャンネルに戻った後、または、電源がオンになった後、最後の有効な設定は、サービス取得データの受信によって、この設定が有効でない旨が受信機に通知されるまでは、依然として有効なものであると仮定される。
【0007】
しかしながら、キャッシュされたサービス取得データに依存すると、特に、所与のチャンネル上で提供される各サービスのセットが動的である場合には、問題が生じることがある。例えば、様々なサービスを提供する放送システムにおいては、システムの運用者にとって、所与の時点で利用可能な各サービスのセットを動的に制御できることが望ましい。例えば、モバイル放送サービスは、昼間、ユーザが自宅にいない、外出しているときに最も使用される。同様に、高解像度(HD:high definition)テレビジョン・サービスは、ユーザが大画面HD端末に対するアクセスのある自宅にいることの多い、ゴールデンタイムの視聴時間帯の間に使用最もされる。このため、システムの運用者は、昼間の時間帯には、モバイル・サービスに対してより多くの帯域幅を割り当てることを選択し、また、夜間の時間帯には、HDサービスに対してより多くの帯域幅を割り当てるであろう。例えば、昼間には、標準解像度(SD:standard definition)サービスを2つのモバイル・サービスと共に提供し、HDサービスを提供しないが、夜間には、標準解像度(SD)サービスと高解像度(HD)サービスを提供し、モバイル・サービスを提供しない。このようなサービスにおける変更に対応するために、所与の物理的なチャンネル上でブロードキャストされる各サービスのセットが日中に変更されることがある。この場合には、以前にキャッシュされたサービス取得データは、現在利用可能な各サービスのセットを正確に反映しないことがある。更新されたESGデータが受信されるまで、受信機は、キャッシュされたサービス取得データが既に有効ではなくなっているサービスをユーザに提供することができない。従って、サービスを利用可能であるかどうかが変更された場合、受信機でESGデータをキャッシュすることで、受信機が再び有効なサービス取得データを受信するまでは、ユーザにサービスが提供されないため、ユーザ・エクスペリエンスが低下する。
【0008】
幾つかのESG規格は、ESGデータの各フラグメント(断片)が有効である場合に、時間枠を識別するフィールドを提供している。例えば、オープン・モバイル・アライアンス(OMA:Open Mobile Alliance)「モバイル放送サービスのためのサービス・ガイド(Service Guide for Mobile Alliance)」の仕様は、所与のサービスのために有効な時間枠を識別する「〜から有効(validFrom)」フィールドと「〜まで有効(validTo)」フィールドを提供している(例えば、モバイル放送サービスのためのOMA‐BCASTサービス・ガイド、ドラフト・バージョン1.1、2009年5月19日参照)。しかしながら、これらのフィールドを適用できるかどうかは、上述した問題に関して制限される。これらのフィールドは、有効枠の日付/時間を絶対的に識別できるようにする。これにより、受信機によるこれらのフィールドの使用は、キャッシュされたESGデータに含まれている時間枠のみに限定される。受信機の電源がオフにされ、後になって適用可能な有効枠外の時間に電源がオンに戻るような可能性は非常に大きい。
【0009】
さらに、キャッシュされたESGデータからのこれらのフィールドの使用により、オフラインとなる前には明確に定まった終了時間を持たないライブ・イベントをサービスが放送(ブロードキャスト)する場合には、問題が生ずる。「〜まで有効(validTo)」フィールドは、ライブ・イベントの終了時間(従って、サービスの有効性)を最良に推測したものを表しているにすぎないため、上述したサービス提供遅延の問題が生ずる。
【発明の概要】
【0010】
本発明の例示的な方法においては、受信機において、電源がオンになった後、または、物理的なチャンネルの変更の後、電子サービス・ガイド(ESG)・データが以前にキャッシュされたサービスに関連するアクティビティについて、物理的なチャンネルが監視される。サービスのESGデータには、サービスに関連付けられたインターネット・プロトコル(IP:internet protocol)など、幾らかのサービス識別情報が含まれる。サービスに関連するアクティビティについての、物理的なチャンネルの監視は、サービスに関連付けられたIPアドレスを調べることによって行われる。アクティビティが検出されると、サービスがアクティブであり、そのキャッシュされたデータが有効であると判定される。キャッシュされたESGデータに含まれるサービス取得データは、ユーザにサービスを提供するために使用される。従って、例示的な方法は、新たなESGデータの受信を待機する必要無しに、サービスがアクティブであると検出されるとすぐに、キャッシュされたESGデータを使用してユーザにサービスを提供できるようにする。アクティビティが検出されていないサービスのキャッシュされたESGデータは、使用されず、特定の期間経過した後、キャッシュから削除されるようにしてもよい。
【0011】
本発明に係る例示的な実施の形態は、受信機の電源がオンになった際、または、物理的なチャンネルに変更があった際に、物理的なチャンネル上で利用可能なサービスを高速に取得することを可能にする。これにより、所与の物理的なチャンネル上での動的なサービスのスケジューリングが容易になる。
【0012】
上述した内容に鑑み、さらに、詳細な実施の形態の説明および図面から理解できるように、他の実施の形態、さらに、特徴事項についても想定可能であり、これらは、本発明の原理の範囲に含まれる。
【0013】
次に、本発明の実施の形態に係る装置および/または方法の幾つかの実施の形態について、例示的な目的のみで、さらに、添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の原理に係る例示的なシステムのブロック図である。
【図2】本発明の原理に係るキャッシュされた電子サービス・ガイド(ESG:electronic service guide)・データの有効性を更新する例示的な方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のコンセプトの範囲外の、各図に示される各要素は、周知であり、詳細には説明しない。例えば、本発明のコンセプトの範囲外の、DMT(Discrete
Multitone)伝送(直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)や符号化直交周波数分割多重(COFDM:Coded Orthogonal Frequency Division Multiplexing)とも呼ばれる)については、よく知られているものと想定されるため、本明細書中では説明しない。また、テレビ放送、受信機及びビデオ符号化については、良く知られているものと想定されるため、本明細書中では説明しない。例えば、本発明のコンセプトの範囲外の、NTSC(National Television Systems Committee)、PAL(Phase Alternation Lines)、SECAM(SEquential Couleur Avec Memoire)、ATSC(Advanced Television Systems Committee)、中国デジタル・テレビ・システム(GB)20600−2006、さらに、DVB-Hなどの各テレビ規格の現在勧告、提案されている勧告については、良く知られているものと想定される。同様に、本発明のコンセプトの範囲外の、8値残留側波帯(8‐VSB)直交振幅変調(QAM:Quadrature
Amplitude Modulation)などの他の伝送コンセプト、無線周波数(RF)フロントエンド(例えば、低ノイズ・ブロック、チューナ、ダウンコンバータなど)、復調器、コリレータ(相関器)、リークインテグレータ及びスクエアラなどの受信機コンポーネントについても良く知られているものと想定される。さらに、本発明のコンセプトの範囲外の、インターネット・プロトコル(IP)、インターネット・プロトコル・エンキャプスレータ(IPE:Internet Protocol Encapsulator)、リアルタイム・トランスポート・プロトコル(RTP:Real‐time Transport Protocol)、RTPコントロール・プロトコル(RTCP:RTP Control Protocol)、ユーザ・データグラム・プロトコル(UDP:User Datagram Protocol)、伝送制御プロトコル(TCP:Transmission Control Protocol)、セッション記述プロトコル(SDP:Session Description Protocol)、単方向伝送によるファイル配送(FLUTE:File Delivery over Unidirectional Transport)プロトコル、さらに、非同期層符号化(ALC:Asynchronous Layered Coding)プロトコルなどのプロトコルについても良く知られているものと想定され、本明細書中では説明しない。同様に、本発明のコンセプトの範囲外の、(MPEG(Moving Picture Expert Group)‐2システム規格(ISO/IEC13818−1)などの)トランスポート・ビット・ストリームを生成するためのフォーマット化および符号化方法は公知であるため、本明細書中では説明しない。さらに、本発明のコンセプトは、従来のプログラミング技術を用いて実施することができるため、本明細書中では説明しない。最後に、各図面を通して同様の参照符号は同様の要素を表す。
【0016】
本発明の原理に係る例示的なシステムを図1に示す。1つ以上の入力信号101に基づき、送信器105は、物理的なチャンネルを介して受信装置150などの、1つ以上の受信機に信号106を送信する。OFDMシステムにおいては、例えば、信号106は、受信機がこの信号106の受信のためにチューニングできる1つ以上の周波数チャンネルを介して放送(ブロードキャスト)される。1つ以上の入力信号101は、例えば、ストリーミング・オーディオ/ビデオ・サービス、ファイル・ダウンロード・サービスなど、放送信号106を介して提供される様々なサービスのソースからのものである。
【0017】
受信装置150は、DTV受信機などの受信機155と、プロセッサ160と、メモリ170などのデータ・ストレージと、ユーザ入力/出力インタフェース・ブロック180とを含む。従って、受信装置150は、プロセッサをベースとする装置である。例えば、受信装置150は、特に、携帯電話、モバイルTV、セットトップ・ボックス(STB)、または、ディジタルTV(DTV)セットなどである。組み込まれたディスプレイやユーザ入力ボタンを含む携帯電話などの装置においては、ユーザI/Oブロック180は、ディスプレイやボタンを表す。しかしながら、STBなどの装置においては、ユーザI/Oブロック180は、例えば、HDTVモニタ(図示せず)とのインタフェースとなる高解像度マルチメディア・インタフェース(HDMI:High‐Definition Multimedia Interface)・モジュールを表す。
【0018】
受信機155は、受信信号151によって表される、送信機105からブロードキャストされる信号106を受信する。受信機155は、送信機105などの複数の送信機からブロードキャストされる複数の信号を受信することが可能である。この場合、受信信号151は、このような信号の幾つかの組み合わせを表す。通常、ユーザ入力に基づいて、受信機155は、受信信号151に含まれるブロードキャスト信号のうちの1つにチューニングするか、1つを選択し、信号156を生成する。従って、送信機105からブロードキャストされた信号106を受信するように受信機155がチューニングされる場合には、信号156は、信号106を表す。送信機105および受信機155の実施態様および動作は、従来通りのものとすることができる。
【0019】
パケットをベースとするシステムにおいては、信号106および信号156は、データのパケットを伝送し、各パケットは、受信装置150への物理的なチャンネルを介して提供される1つ以上のサービスに関連付けられている。上述したように、このようなサービスには、特に、ESG、オーディオ、ビデオ、および、ファイルのダウンロード・サービスが含まれる。
【0020】
図1に示すように、信号156は、以下により詳細に説明する処理を行うために、プロセッサ160に提供される。プロセッサ160は、ユーザI/Oブロック180とメモリ170とに双方向バス166を介して結合され、メモリ170にデータを書き込み、メモリ170からデータを読み出すことができる。ランダム・アクセス・メモリ(RAM)などをメモリ170とすることができる。メモリ170は、受信装置150の電源がダウンしている間、または、アクティブでない間、コンテンツを保持するように企図されている。
【0021】
プロセッサ160は、信号156を介してプロセッサ160によって受信されたESGに関連するパケットから抽出される情報に基づいてメモリ170内のESGキャッシュ175を構築し、保持する。通常、相異なるサービスが相異なる物理的なチャンネル上で提供されるため、ESGは、通常、チャンネル独自のものである。従って、相異なるチャンネル上では相異なるESG情報が伝送される。このため、プロセッサ160は、好ましくは、受信機155がチューニングする各物理的なチャンネルのESGデータをキャッシュする。キャッシュされたESGデータは、各チャンネルのための個別のキャッシュ、または、複数のチャンネルのためのより大きなキャッシュに整理される。簡略化のため、1個のESGキャッシュ175のみを図示し、ESGキャッシュ175が1つの物理的なチャンネルのESGデータのみを含むものと想定する。
【0022】
ESGキャッシュ175は、関連付けられた物理的なチャンネル上で利用可能なサービスの各々のESGデータを含む。キャッシュされたESGデータは、このESGデータに関連するサービスを識別する情報に関連付けられる。従って、図1に示されるように、ESGキャッシュ175は、一般的に、対応するサービス識別情報(SID1〜SIDn)を有するESGデータ(ESG1〜ESGn)のテーブルとして整理することができる。サービス識別情報には、他のものが含まれる場合もあるが、例えば、IPアドレス、ポート番号、MPEGパケット識別子(PID)が含まれる。好ましくは、サービス識別情報は、パケット・ヘッダなどに含まれる情報であり、符号化されたペイロード・データの復号や大規模な処理を必要とすることなく、容易に調べることができるものである。さらに、サービスとサービス識別情報との間の関連付けは、時折変更されることが想定されるが、好ましくは、このような変更がESGデータの放送(ブロードキャスト)よりも頻繁に発生しないようにする。
【0023】
例示的な実施の形態においては、キャッシュされたESGデータは、サービス取得データを含む。サービス取得データは、サービスを取得する際に受信機が使用するために所与のシステムが放送(ブロードキャスト)するESGデータの一部である。サービス取得データは、所与のシステムが使用するどのようなフォーマットでもよく、標準的なものでもよく、独自のものでもよい。例として、OMA‐BCASTをベースとするシステムでは、サービス取得データは、モバイル放送サービスのためのOMA‐BCASTサービス・ガイド、ドラフト・バージョン1.1、2009年5月19日の内で記載されているSDPフラグメントを含むであろう(RFC4566、セッション記述プロトコルについても参照されたい)。OMA‐BCASTサービス・ガイドは、サービスの取得に必要な各パラメータを提供する幾つかのメカニズムを記載する。サービスに関連付けられたIPアドレスは、例えば、OMA‐BCASTサービス・ガイド(例えば、セクション5.1.2.4を参照)に記載されたアクセス・フラグメントのSDP要素から取得することができる。このような実施の形態においては、受信機は、アクセス・フラグメントを含むXMLをキャッシュするであろう。アクセス・フラグメントは、SDPを含む。
【0024】
ESGデータが信号156を介してプロセッサ160によって受信されると、このESGデータは、キャッシュ175にキャッシュされる。受信装置150の電源をオンにした際、または、受信機155がキャッシュされたESGデータに関連する物理的なチャンネルにチューニングを行った際、以下に説明する例示的な方法に従って、プロセッサ160は、キャッシュされたESGデータの有効性を更新する。キャッシュされたESGデータは、依然として有効である限り、(ユーザI/O180を介して)サービスを受信装置150のユーザに提供するために使用される。有効でないと判定されたキャッシュされたデータは、使用されず、キャッシュから削除されるようにしてもよい。
【0025】
図2は、キャッシュされたESGデータを取り扱うための本発明に係る例示的な方法のフローチャートである。上述したように、受信装置150は、ステップ210において表されているように、時折ESGデータを受信する。ESGデータの受信は、規則的な間隔で、定期的に発生することもあれば、ランダムに発生することもある。ステップ220において、受信されたESGデータがメモリ170にキャッシュされる。幾らかの時間が経過した後、ステップ230において、受信装置150の電源がオンになる、または、受信機155を新たな物理的なチャンネルに再度チューニングするなどのイベントが発生し、この後、以前にキャッシュされたESGデータが有効で無くなり、これにより、キャッシュされたESGデータの有効性が当然に更新される。特に、ESGデータが最後にキャッシュされた後、或る期間が終了するなど、他のイベントの発生をきっかけとしてこのような更新が行われることも想定される。
【0026】
ステップ240において、サービス識別情報(SID:service identification information)のリストがキャッシュされたESGデータに基づいて組み立てられる。上述したように、各サービスのためにキャッシュされたESGデータは、サービス取得データと、サービスに関連付けられた1つ以上のIPアドレスなど、サービスを識別する情報を含む。このような識別情報として、他には、例えば、UDPポート番号、MPEGパケット識別子(PID)が挙げられる。さらに、キャッシュされたデータは、キャッシュされたESGデータ(例えば、サービス取得データ)の有効時間枠を識別するための「〜から有効(validFrom)」フィールドと「〜まで有効(validTo)」フィールドを含んでいてもよい。このようなデータおよびサービス識別情報を使用することによって、各サービスのためにキャッシュされたESGデータに従って現在アクティブであるべきサービスについて、識別情報のリストが組み立てられる。
【0027】
ステップ250において、受信装置150のプロセッサ160は、信号156において入来する多重化データに対し、上述したサービス識別情報のリスト内で識別されたサービスに関連付けられたデータを調べる。換言すれば、プロセッサ160は、入来する多重化データ上で受信された各パケットのヘッダを調べ、リストに存在する識別情報(例えば、IPアドレス、ポート番号、MPEG PID)を含んでいるかどうかを判定する。リストに存在する識別情報が入来するストリームにおいて検出される場合には、このような識別情報に対応するサービスがアクティブであると判定され、キャッシュ175内のサービスのために既にキャッシュされているESGデータの有効性が確認される。ステップ260において、これらのサービスのためのESGキャッシュ・エントリーは、「確認済」などとマークされ、プロセッサ160またはESGキャッシュ175に対するアクセスを有する他のエンティティに対し、これらのESGキャッシュ・エントリーが有効であると信頼できる旨、知らせる。よって、ESGデータがアクティブであると示すサービスに対応する入来するデータ・ストリームにおいて検出される識別情報については、キャッシュされたESGデータは、有効であるとみなされ、このサービスをユーザに提供するために使用できる。従って、サービスがアクティブであると検出されるとすぐに、サービスのために以前にキャッシュされたサービス取得データを使用してユーザに提供するためのサービスを取得することができ、電源がオンになった後、または、物理的なチャンネルの変更の後に、更新されたESGデータの受信待機に伴う遅延が回避される。より多くのデータ・バーストが受信されるほど、追加的なサービスがアクティブであると検出されるため、ユーザに提供するためにこれらを利用できるようにもなる。
【0028】
入来するストリーム内で検出されない上述したリスト内の識別情報については、対応するキャッシュされたESGデータがユーザにサービスを提供するために使用されない。ステップ260において、このようなキャッシュされたESGデータは、「未確認」などとマークされ、プロセッサ160またはESGキャッシュ175に対するアクセスを有する他のエンティティに対し、これらのESGキャッシュ・エントリーが有効であると信頼できない旨、知らせる。有効性が確認されていないキャッシュされたESGデータは、新たなESGデータで上書きされるまでキャッシュに残される。代替的には、所定の期間が終了した後、リスト内のサービス識別情報に関連してアクティビティが検出されないと、ステップ260において、識別情報に関連付けられ、キャッシュされたESGデータが無効であると判定され、これに応じてキャッシュされたESGデータがマークされるか、または、キャッシュから削除される。例えば、キャッシュされたESGデータが無効であることを判定する期間は、所定の期間であってもよいし、所定数の受信されるデータ・バーストであってもよい。
【0029】
上述のように更新された、キャッシュされたESGデータは、ステップ210でESGデータが再び受信されるまで使用される。こステップ210の時点で、ESGキャッシュ175は、新たに受信されたESGデータで更新される。
【0030】
なお、通常、受信機は、物理層での時間バースト内で全てのデータを受信する。従って、所与の物理的なチャンネル上で受信される全てのデータを分析するために、受信機にとって追加的な受信負荷が生ずるものではない。
【0031】
上述したように、受信されたデータ・バースト内のサービス識別情報は、データ・バーストにおける各パケットのヘッダを調べることによって、監視することができる。例示的な実施の形態においては、このような監視は、上述したESGキャッシュ・リスト内の各IPアドレス(およびポート)のためのソケットを開くことによって行われる。そのようなソケット上でデータが受信されると、関連付けられたサービスがアクティブであると検出され、そのサービスのためにキャッシュされたESGデータが有効であると確認される。ドライバ・スタックは、実際にパケット・ヘッダを分析し、各パケットを適切なソケットに仕向ける役目を担う。受信機の電源がオンになっている間にソケットは開いたままにして、データが受信されるサービスがアクティブであるとマークされるようにする。
【0032】
省電力については、受信機の受信を、現在選択されているサービスに関連するデータのバーストのみに制限するタイム・スライス・メカニズムが公知である。タイム・スライスは、現在使用されているサービスに関連しないバーストの受信を停止させることによって電力消費を削減するものである。例示的に説明した方法では、サービスがまだ使用されていないとき(例えば、電源投入後、または、物理的なチャンネルの変更の後)のような、有効なサービスを速やかに取得することが望ましい場合には、タイム・スライスは無関係であり、無効にされる。
【0033】
上記に鑑み、上述した内容は、単に本発明の原理を例示するものに過ぎず、当業者であれば、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、本発明の原理を具体化する数多くの代替的な構成を想起できることが理解できよう。例えば、別個の機能的要素として例示されている場合であっても、これらの機能的要素を1つ以上の集積された回路の形態で実施することができる。同様に、別個の要素として図示されている場合であっても、各要素のいずれかまたは全てを、記憶されたプログラムによって制御されるプロセッサ、例えば、各ステップのうちの1つ以上に対応する関連するソフトウエアを実施するディジタル信号プロセッサまたは汎用プロセッサで実施してもよい。このようなソフトウエアは、様々な適切なストレージ媒体のいずれかにより実施される。さらに、本発明の原理は、例えば、衛星、Wi‐Fi(Wireless‐Fidelity)、携帯電話などの他のタイプの通信システムにも適用可能である。実際、本発明のコンセプトは、固定式の受信機にも、モバイルの受信機にも適用可能である。従って、例示的な実施の形態に対し、様々な変更を施すことができ、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、他の構成を想起することもできることが理解できよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子サービス・ガイド(ESG)方法であって、
物理的なチャンネル上で利用可能な複数のサービスのためのESGデータを受信するステップであって、前記ESGデータが前記複数のサービスの各々のためのサービス取得データを含む、前記ステップと、
前記ESGデータを保存するステップと、
前記複数のサービスのうちの少なくとも1つに関連するアクティビティのために前記物理的なチャンネルを監視するステップであって、前記物理的なチャンネル上で前記サービスに関連するアクティビティが検出された場合にサービスがアクティブなサービスであると判定される、前記ステップと、
アクティブなサービスのための前記保存されたサービス取得データを使用するステップであって、ユーザに該アクティブなサービスを提供する、前記ステップと、を備える、前記方法。
【請求項2】
前記ESGデータは、サービス識別データを含み、アクティビティのために前記物理的なチャンネルを監視する前記ステップは、前記複数のサービスのうちの少なくとも1つのサービス識別データのための物理的なチャンネルを調べるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サービス識別データは、インターネット・プロトコル(IP)・アドレス、ポート番号、およびパケット識別子(PID)のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
サービス識別データのための前記物理的なチャンネルを調べるステップは、パケット・ヘッダを分析するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのサービスのための前記ESGデータは、前記ESGデータの有効時間枠を示すデータを含み、前記少なくとも1つのサービスのためのアクティビティは、前記有効時間枠内であるかどうかが監視される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
アクティビティのために前記物理的なチャンネルを監視する前記ステップは、電源のオンとチャンネル変更のイベントのうちの少なくとも一方の後に実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
所定の期間内にアクティビティが検出されないサービスのために保存されたESGデータを削除するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
電子サービス・ガイド(ESG)装置であって、
物理的なチャンネル上で利用可能な複数のサービスのための、前記物理的なチャンネル上のデータを受信する受信機であって、前記データがESGデータを含み、前記ESGデータが前記複数のサービスの各々のためのサービス取得データを含む、前記受信機と、
前記ESGデータを保存するデータ・ストレージと、
前記複数のサービスのうちの少なくとも1つに関連するアクティビティのために前記物理的なチャンネル上で受信されたデータを監視するプロセッサであって、前記物理的なチャンネル上で前記サービスに関連するアクティビティが検出された場合にサービスがアクティブなサービスであると判定する、前記プロセッサと、
ユーザ・インタフェースと、を備え、前記プロセッサは、アクティブなサービスのための前記保存されたサービス取得データを使用して前記アクティブなサービスを前記ユーザ・インタフェースを介してユーザに提供する、前記電子サービス・ガイド装置。
【請求項9】
前記ESGデータは、サービ識別データを含み、前記プロセッサは、前記複数のサービスのうちの少なくとも1つのサービス識別データのための物理的なチャンネルを調べることによって、前記物理的なチャンネル上で受信される前記データを監視する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記サービス識別データは、インターネット・プロトコル(IP)・アドレス、ポート番号、およびパケット識別子(PID)のうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、パケット・ヘッダを分析することによってサービス識別データのための前記物理的なチャンネルを調べる、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つのサービスのための前記ESGデータは、前記ESGデータの有効時間枠を示すデータを含み、前記プロセッサは、前記少なくとも1つのサービスに関連するアクティビティのための前記物理的なチャンネル上で受信された前記データが有効時間枠内であるかどうかを監視する、請求項8に記載の装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、電源のオンとチャンネル変更のイベントのうちの少なくとも一方の後に前記アクティビティの前記物理的なチャンネル上で受信された前記データを監視する、請求項8に記載の装置。
【請求項14】
前記プロセッサは、所定の期間内にアクティビティが検出されないサービスについては、ESGデータを前記データ・ストレージから削除する、請求項8に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−527142(P2011−527142A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516328(P2011−516328)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/003853
【国際公開番号】WO2010/002442
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】1−5, rue Jeanne d’Arc, 92130 ISSY LES MOULINEAUX, France
【Fターム(参考)】