説明

キャップソシフォン−フルベソンス糖熱水抽出物及びこれを主成分にする抗癌剤

本発明は緑藻類葛青海藻科キャップソシフォン-フルベソンス(学名:Capsosiphon fulvescens)を急速凍結して乾燥させた後、粉碎した固形粉を水に浸漬して80℃で抽出した後、アルコールに沈澱させて製造したキャップソシフォン-フルベソンス糖抽出物とこの抽出物を主成分にする抗癌剤に係り、本発明のキャップソシフォン-フルベソンス糖熱水抽出物はキャップソシフォン-フルベソンスの糖成分を効果的に抽出するのみならず、前記熱水抽出物を主成分にする抗癌剤は人の胃癌細胞と大腸癌細胞に対して毒性なしに癌細胞にだけ特異的な成長を阻害して抗癌剤として優秀な效果を持つ有用な物質で、本発明によるキャップソシフォン-フルベソンス糖抽出物は医薬組成物、機能性食品または健康補助食品などの原料に使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCapsosiphon fulvescens(韓国語で"メセングイ"で発音して;以下、"キャップソシフォン-フルベソンス"と言う。)糖熱水抽出物及びこれを主成分にする抗癌剤に係り、もっと詳しくは緑藻類葛青海藻科キャップソシフォン-フルベソンス(学名;Capsosiphon fulvescens)を急速凍結して乾燥させた後、粉碎した固形物を水に浸漬して80℃で抽出した後、アルコールに沈澱させて製造したキャップソシフォン-フルベソンス糖抽出物とこの抽出物を主成分にする抗癌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現代人たちは西欧化された食習慣の変化によって成人病発生率が高くなり、そして、世界的に大幅な発癌率の増加を毎年導いている。韓国国内でも例外ではなく、胃癌、肝癌、大腸癌、乳房癌などの患者の数が毎年増加する趨勢を見せている。これによって現在まで癌の治療法に関する研究が活発に続けられており、正常細胞に対しては毒性が少なくて癌細胞にだけ特異的に作用する新規坑癌活性物質の開発の必要性が顕著になっている。
【0003】
一方、キャップソシフォン-フルベソンスは清浄海域で育つ葛青海藻科に属する緑藻類として、毎年12月から2月の冬の期間が天然の味を感じることができる最も良い季節である。昔は海苔養殖場でキャップソシフォン-フルベソンスが問題の原因となっていたため塩酸を撒布して、とり除いたりしていた。しかし、最近キャップソシフォン-フルベソンスが鉄分、カリウム、ヨードなど各種無機塩類とビタミンA、Cなどを多量含んでおり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の予防、鎮静効果が優れるだけでなく、二日酔い解消作用も優秀であり、食道楽家たちの間で名声を得ている。しかし冬季を除き天然のキャップソシフォン-フルベソンスを採取することができず、環境に鋭敏で汚染物質が流入されれば生育が低下し、上記で説明したように少しの塩酸だけあっても溶けてしまうため、人工で大量生産する海苔のように手軽く得ることができなかった。したがって、採取時期に制限がある天然のキャップソシフォン-フルベソンスの本来の味、効果をそのまま現わすことができる安全な食品としての開発と機能性物質の獲得を通じて利用可能性を高める必要がある。
【0004】
本発明者たちは、上述したような産業的に利用可能で経済的に効率の高い坑癌活性物質の開発に対する要求に応じるため鋭意研究した結果、前記のような特徴を持ったキャップソシフォン-フルベソンスを特定の方法で利用することにより、上記の問題点を解決する方法を見いだし、本発明を完成するにいたった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は産業的に利用可能で経済的に効率の高い坑癌活性物質を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、採取時期に制限がある天然のキャップソシフォン-フルベソンスの本来の味、効果をそのまま現わすことができる安全な食品としての開発と機能性物質の獲得を通じて利用可能性が高い組成物の提供とこれを利用した医薬組成物または機能性食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための本発明のキャップソシフォン-フルベソンス糖熱水抽出物は、緑藻類葛青海藻科キャップソシフォン-フルベソンス(学名;Capsosiphon fulvescens)を-70℃ないし-80℃の急速凍結庫で凍結させた後、凍結乾燥器で乾燥して、これを粉碎して得た固形粉を80℃ないし100℃で加熱して濾過した熱水抽出液に約2倍のアルコールを添加して90%以上沈澱させて製造することを特徴とする。
【0008】
本発明の他の構成によれば、前記アルコールは好ましくはエタノールである。
【0009】
本発明の他の構成によるキャップソシフォン-フルベソンス糖熱水抽出物を主成分にする抗癌剤は、緑藻類葛青海藻科キャップソシフォン-フルベソンス(学名;Capsosiphon fulvescens)を-70℃ないし-80℃の急速凍結庫で凍結させた後、凍結乾燥器で乾燥して、これを粉碎して得た固形粉を80℃ないし100℃で加熱して濾過した熱水抽出液に約2倍のアルコールを添加して90%以上沈澱させて得たキャップソシフォン-フルベソンス糖熱水抽出物を主成分にして、ここに食品学的または薬学的に許容されることができる物質を含むことを特徴とする。
【0010】
前記本発明によるキャップソシフォン-フルベソンス糖熱水抽出物を主成分にする抗癌剤は、細胞内に投与して、人の胃癌細胞と大腸癌細胞に対して毒性がなく、癌細胞にだけ特異的な成長を阻害することにより抗癌活性としての効果が確認された。
【0011】
以下、本発明を実施例を通じてもっと詳しく説明するが、本発明がここに限定されるのではないことは勿論である。
【発明の効果】
【0012】
前記のように構成される本発明のキャップソシフォン-フルベソンス糖熱水抽出物はキャップソシフォン-フルベソンスの糖成分を効果的に抽出するのみならず、前記熱水抽出物を主成分にする抗癌剤は、人の胃癌細胞と大腸癌細胞に対して毒性がなく、癌細胞にだけ特異的に成長を阻害する抗癌剤として優秀な効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施例1:キャップソシフォン-フルベソンス糖抽出物の製造
主に日本及び韓国などで海藻類の機能性及び効果、効能に対する研究が活発になされているが、抽出条件及び生理機能的な側面の基礎研究が大部分で、海藻類の種類による実際産業化側面での研究開発はまだ充分でない状態である。大部分の研究は、抽出条件において酸加水分解、アルカリ加水分解、熱水抽出などの方法を通じる物理、化学的特性の研究である。各抽出物により多様性のある機能が現われ、示されているから、効果的な抽出法が要求されている。海藻類を含んだ食材料内に生理活性物質を抽出するための前処理過程で一番多く使う方法が、食用可能な熱水抽出とエタノール抽出方法である。特に海藻類内に含有されている糖の抽出の場合、温度と時間、そして沈澱させる時のエタノール濃度によって抽出物の含量及び回収率に差が現われるから高い回収率のための最適条件を設定することが重要である。本実施例では食用可能な水とエタノールを使って糖に対する高い回収率を現わす方法を探索した。
【0014】
これを詳細に説明すれば、凍結乾燥後微細に粉砕されたキャップソシフォン-フルベソンス20gに10倍の水と80%エタノールを添加して最適温度を測定するために80℃、90℃、100℃で3時間撹拌(200rpm、Eyela、Japan)した。この抽出液を減圧して濾過紙(Whatman,No.3)で濾過した後、7,500rpmで10分間遠心分離して上澄み液を回収した。上澄み液に2倍の体積のエタノールを添加して、それぞれの抽出物内に存在する糖を沈澱させた。また、真空濃縮機(Eyela、Japan)でエタノールをとり除いて残った残渣は-80℃で急速凍結させた後、真空濃縮機を使って乾燥させた。
【0015】
下記の表1は、異なった抽出溶媒、異なった温度下での回収率を示す。
【0016】
【表1】

【0017】
前記表1に示したように、キャップソシフォン-フルベソンス20gを他の二つの溶媒、すなわち水と80%エタノールを使って80℃、90℃、100℃で等しく3時間抽出して2倍のエタノールで沈澱させた。キャップソシフォン-フルベソンスの場合、今まで報告された他の海藻類が普通10%以下で回収されているのに対し、熱水抽出の時に21〜22%の高い回収率を現わし、これに比べてエタノール抽出の時は、糖の含量より蛋白質の含量が相対的に高く現われた。そして同じ熱水抽出条件において、80℃で抽出した回収率と100℃で抽出した回収率を比べて、回収率において大きく差が現われないので、80℃の水で抽出する方法が一番経済的であることを確認することができた。すなわち、キャップソシフォン-フルベソンス固形粉を80℃で3時間加熱して得た熱水抽出液に2倍のエタノールを添加して糖を沈澱させた時に、キャップソシフォン-フルベソンス固形粉重量の21.4%(20g中約4.28g)にあたる白色の粉末が、全体50.2%含有された炭水化物中約42.8%を生産し、回収された。
実施例2
前記実施例1の熱水抽出法で抽出時間による最適抽出時間を調査した。すなわち、キャップソシフォン-フルベソンス20gを10倍の水に浸漬した後、80℃で2時間、3時間、4時間それぞれ反応させた。前記実施例1で述べた手順と同様の方法で濾過し、残った濾過液に2倍のエタノールを添加した後沈澱した糖を測定して回収率を計算した。下記の表2に示すようにキャップソシフォン-フルベソンス糖熱水抽出物の場合、2時間加熱して抽出した時には全体20gの中で約35.8%が回収された。一方3時間加熱した時には65.4%の回収率を示した。しかし4時間加熱の時にはちょっと高い回収率を現わしたが、大きい差がなかったので燃料節約の観点で経済的に効果的な抽出時間は80℃で3時間であることを確認した。
【0018】
【表2】

【0019】
実施例3
前記実施例1及び2の結果を通じて、キャップソシフォン-フルベソンス固形粉の約50%を占める糖成分を一番効果的に製造する方法が確立された。したがって本実施例ではキャップソシフォン-フルベソンス固形粉重量の10倍ほどの溶媒、すなわち水を添加して80℃から3時間加熱抽出して濾過した後、得られた熱水抽出濾過液に2倍のエタノールを添加して沈澱させることでキャップソシフォン-フルベソンス糖熱水抽出物を製造した。
実験例1
韓国細胞株銀行(ソウル大学校医科大学)からヒト胃癌細胞(AGS)とヒト結腸癌細胞(HT-29)、正常大腸細胞(IEC-6)を分譲受けて実験室で培養しながら本実験に使った。AGSとHT-29細胞は100units/Mlペニシリン-ストレプトマイシンと10%FBSが含有されたRPMI1,640培地を使い、IEC-6細胞はDMEM培地を使って37℃、5%CO2インキュベータで培養した。培養中の細胞を一週間に2度再供給して、細胞がコンフルエント(confluent)になれば、燐酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した後、0.05%トリプシン溶液で附着した細胞を分離し、遠心分離した。次に、ピペットでそれぞれの細胞が均一に分散するようによく混合して、等しく分株した。
【0020】
本発明によるキャップソシフォン-フルベソンス抽出物の癌細胞成長抑制効果を実験するためにヒト結腸癌細胞とヒト胃癌細胞を96-ウェルプレートに5×104cell/wellとなるように均等に分株して、10%FBSを含むRPMI1,640培地に稀釈して培養した。24時間後、無血清RPMI1,640培地に交換して再度24時間培養した。その後、培地に前記実施例3で製造したキャップソシフォン-フルベソンス糖熱水抽出物を、様々な濃度で添加してさらに24時間培養した。24時間後、MTS/PMS溶液(CellTiter 96 Aqueous Non-Radioactive Cell Proliferation Assay Kit、Promega Co.、USA)を添加して37℃、5%CO2インキュベータで1時間培養した。ELISAプレートリーダーを使って光学密度または490mm波長で吸光度を測定した。
【0021】
図1及び図2はそれぞれキャップソシフォン-フルベソンス糖抽出物処理によるヒト胃癌細胞およびヒト結腸癌細胞の増殖抑制効果のMTT分析結果を示す。MTTは生きている細胞のミトコンドリア内膜に存在するオキシドレドクターゼの酵素作用によって還元されて、紫色の不溶性ホルマザン(fomazan)を生成する。このようにして生成されたホルマザンを溶解させてその着色の程度によって生存率を測定した。胃癌細胞株であるAGSと結腸癌細胞株であるHT-29のMTT分析結果によれば、キャップソシフォン-フルベソンス糖抽出物を0.25%濃度で添加した場合、対照群と比べた時、胃癌細胞の約40%、結腸癌細胞の約45%の細胞増殖抑制効果を現わした。一方癌細胞の対照群で使った正常細胞であるIEC-6小腸細胞の場合、等しい濃度で細胞増殖抑制が現われなかったので、胃癌及び結腸癌細胞のみを特異的にそして濃度依存的に細胞成長阻害する坑癌効果を示した。したがって、前記キャップソシフォン-フルベソンス糖熱水抽出物は正常細胞には無害で癌細胞のみを死滅させるということが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のキャップソシフォン-フルベソンス糖熱水抽出物はキャップソシフォン-フルベソンスの糖成分を効果的に抽出するのみならず、前記熱水抽出物を主成分にする抗癌剤は人の胃癌細胞と大腸癌細胞に対して毒性なしに癌細胞にだけ特異的な成長を阻害して抗癌剤として優秀な効果を持つ有用な物質で、本発明によるキャップソシフォン-フルベソンス糖抽出物は医薬組成物、機能性食品または健康補助食品などの原料で使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるキャップソシフォン-フルベソンス熱水抽出物の濃度別人体胃癌細胞に及ぶ影響を示したグラフである。
【図2】本発明によるキャップソシフォン-フルベソンス熱水抽出物の濃度別人体直腸癌細胞に及ぶ影響を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑藻類葛青海藻科キャップソシフォン-フルベソンス(学名:Capsosiphon fulvescens)を-70℃ないし-80℃の急速凍結庫で凍結させた後、凍結乾燥器で乾燥して、これを粉碎して得た固形粉を80℃ないし100℃で加熱して濾過した熱水抽出液に約2倍のアルコールを添加して90%以上沈澱させて製造することを特徴とするキャップソシフォン-フルベソンス糖熱水抽出物。
【請求項2】
前記アルコールは、エタノールであることを特徴とする請求項1に記載のキャップソシフォン-フルベソンス糖熱水抽出物。
【請求項3】
緑藻類葛青海藻科キャップソシフォン-フルベソンス(学名:Capsosiphon fulvescens)を-70℃ないし-80℃の急速凍結庫で凍結させた後、凍結乾燥器で乾燥して、これを粉碎して得た固形粉を80℃ないし100℃で加熱して濾過した熱水抽出液に約2倍のアルコールを添加して90%以上沈澱させて得たキャップソシフォン-フルベソンス糖熱水抽出物を主成分にして、ここに食品学的または薬学的に許容されることができる物質を含むことを特徴とする抗癌剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−508941(P2009−508941A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532159(P2008−532159)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【国際出願番号】PCT/KR2006/003589
【国際公開番号】WO2007/035030
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(508080458)プキョン ナショナル ユニヴァーシティ インダストリー−アカデミック コーオペレーション ファンデーション (1)
【氏名又は名称原語表記】PUKYONG NATIONAL UNIVERSITY INDUSTRY−ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】c/o Bukyong National University,San 100,Yongdang−dong, Nam−gu,Busan 608−739, Republic of Korea
【Fターム(参考)】