説明

キャップトレッド用ゴム組成物及びスタッドレスタイヤ

【課題】老化防止剤を増量することなく、耐熱性を高め、特にゴムの長時間使用による硬度変化等の性能変化(ゴムの硬化劣化)を抑制して、雪氷上性能を低下させることなく長寿命化でき、良好な雪氷上性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性が得られ、さらには加硫時間を短縮でき、架橋効率を高めることができるゴム組成物、及びそれをタイヤのキャップトレッドに用いたスタッドレスタイヤを提供する。
【解決手段】イソプレン系ゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、アロマオイルと、ベンゼン環にアルキル基、アリール基又はアラルキル基から選ばれる置換基を一つあるいは二つ持つベンゾチアゾール及び/又はジベンゾチアジルジスルフィドと、チウラム系加硫促進剤とを含有し、ゴム成分100質量部に対して、シリカの含有量が15〜80質量部、アロマオイルの含有量が15〜80質量部であるキャップトレッド用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いたスタッドレスタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、氷雪路面走行用としてスパイクタイヤの使用やタイヤへのチェーンの装着が行われてきたが、粉塵問題等の環境問題が生じるため、これに代わる氷雪路面走行用タイヤとしてスタッドレスタイヤが開発された。スタッドレスタイヤは、一般路面に比べ、路面凹凸が大きい雪上路面で使用されるため、材料面及び設計面での工夫がなされている。例えば、低温特性に優れたジエン系ゴムを配合し、また軟化効果を高めるために軟化剤を多量に配合したゴム組成物が開発されてきた。
【0003】
軟化剤としては、低温特性(雪氷上性能(雪氷上制動性能))の向上効果が高いミネラルオイル(パラフィン系オイル)が使用されることが多い。しかし、ミネラルオイルを配合すると、充分な耐摩耗性が得られないという問題がある。
【0004】
上記問題に対して、ミネラルオイルをアロマオイルに変更すると、良好な耐摩耗性が得られる一方、低温特性が低下するという問題がある。これに対して、アロマオイルと共にシリカを併用することにより、良好な耐摩耗性を低下させることなく、低温特性を向上させることができるが、耐摩耗性と低温特性(雪氷上性能)の両立は充分ではなかった。
【0005】
一方、従来からタイヤ等に用いられるゴム組成物には、ゴム組成物の耐熱性を高めるために老化防止剤が広く使用されている。老化防止剤としては、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)やN−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(IPPD)等のアミン系老化防止剤が汎用的に用いられている。
【0006】
スタッドレスタイヤは経年劣化(硬化劣化)により硬度が上昇すると、雪氷上性能が大幅に低下するおそれがある。そのため、従来から、老化防止剤を増量する方法、または軟化剤を選択する方法などで対応してきた。しかし、老化防止剤を増量する方法では、老化防止剤のタイヤ表面への析出により表面が茶変色し、タイヤの外観不良を引き起こす等の問題がある。また、軟化剤を選択する方法では、軟化剤の種類によっては雪氷上性能そのものの低下を引き起すため、雪氷上性能と硬化劣化防止性能の両立は充分ではなかった。
【0007】
従って、老化防止剤を増量させることなく、耐熱性を向上し、長寿命化でき、さらに耐摩耗性と雪氷上性能を両立できるゴム組成物の提供が望まれている。
【0008】
特許文献1には、ジエン系ゴムに、老化防止剤としてのN−(1−メチルヘプチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、及びワックスを配合したゴム組成物が開示されている。しかし、耐熱性を改善しつつ、耐摩耗性と雪氷上性能を両立するという点では未だ改善の余地を残すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−324779公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記課題を解決し、老化防止剤を増量することなく、耐熱性を高め、特にゴムの長時間使用による硬度変化等の性能変化(ゴムの硬化劣化)を抑制して、雪氷上性能を低下させることなく長寿命化でき、良好な雪氷上性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性が得られ、さらには加硫時間を短縮でき、架橋効率を高めることができるゴム組成物、及びそれをタイヤのキャップトレッドに用いたスタッドレスタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、多量のアロマオイルと、多量のシリカを併用することにより、耐摩耗性と雪氷上性能を両立できることを見出したが、オイルを多量に配合するため、経年劣化(硬化劣化)により硬度が大きく上昇し、経年に伴い雪氷上性能が大きく低下するという新たな問題が生じた。
そこで、本発明者は、さらに検討を行った結果、多量のアロマオイルと、多量のシリカに加えて、イソプレン系ゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、下記式(I)及び/又は(II)で表される化合物を配合することにより、良好な耐摩耗性と雪氷上性能を両立しつつ、耐熱性を改善でき、特にゴムの硬化劣化の抑制が可能となり、上記新たな問題をも解決できることを見出した。しかし、この方法でも、加硫時間の増大や架橋効率の低下という更なる問題が生じた。そこで、本発明者は、鋭意検討の結果、上記成分に、さらに、チウラム系加硫促進剤を配合することにより、良好な耐摩耗性と雪氷上性能の両立、及び耐熱性の改善(特にゴムの硬化劣化の抑制)を実現しつつ、加硫時間の短縮、架橋効率の向上が可能となり、上記更なる問題をも解決することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、イソプレン系ゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、アロマオイルと、下記式(I)及び/又は(II)で表される化合物と、チウラム系加硫促進剤とを含有し、ゴム成分100質量部に対して、シリカの含有量が15〜80質量部、アロマオイルの含有量が15〜80質量部であるキャップトレッド用ゴム組成物に関する。
【0012】
【化1】

(式(I)、(II)において、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。但し、R及びRが同時に水素原子である場合を除く。)
【0013】
上記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、シリカの含有量が40〜80質量部、アロマオイルの含有量が35〜80質量部であることが好ましい。
【0014】
上記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、チウラム系加硫促進剤の含有量が0.1〜1.2質量部であることが好ましい。
【0015】
上記イソプレン系ゴムがイソプレンゴム、天然ゴム及び改質天然ゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0016】
上記化合物が下記式(III)で表される化合物であることが好ましい。
【化2】

【0017】
上記ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴム及びブタジエンゴムの合計含有量が30〜100質量%であることが好ましい。
【0018】
上記ゴム組成物は、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量100質量%中のシリカの含有量が50質量%以上であることが好ましい。
【0019】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したキャップトレッドを有するスタッドレスタイヤに関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、イソプレン系ゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分に、特定量のシリカ、特定量のアロマオイル、上記式(I)及び/又は(II)で表される化合物、チウラム系加硫促進剤を配合しているので、良好な初期の雪氷上性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性が得られ、さらに耐熱性を改善でき、特にゴムの長時間使用による硬度変化等の性能変化(特にはゴムの硬化劣化)の抑制が可能となり、経年に伴う雪氷上性能の低下の抑制が可能となる。さらに、加硫時間を短縮でき、架橋効率も向上できる。
このような硬化劣化の抑制効果は、SBR及びカーボンブラックの配合系等のSBR系や、ミネラルオイルを配合した場合に比べて非常に大きい。
また、架橋効率が改善されるため、転がり抵抗性能、耐摩耗性、ウェットグリップ性能を改善することができる。従って、6PPD等の老化防止剤を増量することなく、良好な雪氷上性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を維持しつつゴム組成物を長寿命化でき、さらに加硫時間の短縮、架橋効率の向上も可能であるため、スタッドレスタイヤのキャップトレッドに好適に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のゴム組成物は、イソプレン系ゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、特定量のシリカと、特定量のアロマオイルと、上記式(I)及び/又は(II)で表される化合物と、チウラム系加硫促進剤とを含む。
【0022】
特定量のシリカと、特定量のアロマオイルを配合することにより、耐摩耗性と雪氷上性能を高度に両立できる。また、特定量のシリカを配合することにより、スタッドレスタイヤの弱点とされるウェットグリップ性能をも向上できる。
さらに、ゴム成分としてイソプレン系ゴム及びブタジエンゴムを使用するとともに、さらに上記式(I)、(II)で表される化合物を配合することにより、耐摩耗性と雪氷上性能を高度に両立しつつ、特定量のアロマオイルを配合することにより低下してしまう耐熱性を改善でき、ゴムの長期使用による硬度変化等の性能変化、特にゴムの硬化劣化の抑制が可能となる。
さらに、上記成分に、チウラム系加硫促進剤を配合することにより、良好な耐摩耗性と雪氷上性能の両立、及び耐熱性の改善(特にゴムの硬化劣化の抑制)を実現しつつ、さらに、上記成分を配合することにより生じる加硫時間の増大や架橋効率の低下という上記更なる問題を解決することができる(架橋効率の向上と加硫時間の短縮を達成できる)。さらには、チウラム系加硫促進剤により架橋効率が高まることによってゴム組成物中でゴム分子間をつなぐ有効な架橋に関与しない硫黄が減るため、それらの無駄な硫黄が劣化時に変化し、硬化劣化等を引き起こすことを防ぐことができる。また、架橋効率の改善により、転がり抵抗性能、耐摩耗性、ウェットグリップ性能を改善することができる。
【0023】
ここで、ゴムの硬化劣化とは、劣化因子として酸素が存在する条件下で熱が加わったときに、ゴムが初期状態に比べ硬くなる劣化現象のことであり、本発明では、このような劣化を効果的に抑制できる。このような硬化劣化抑制効果は、いわゆる耐熱疲労性(ブローやチャンクの発生の防止)、耐熱ダレ性とは異質の効果であって、イソプレン系ゴムとシリカと式(I)、(II)の化合物との3成分を使用した場合に特異的に奏する。
【0024】
さらに、これら3成分を用いた場合には、耐熱性の改善効果(特に、硬化劣化抑制効果)が相乗的に生じ、例えば、スチレンブタジエンゴムに、シリカや式(I)、(II)の化合物を配合した場合に比べて、非常に大きな硬化劣化抑制効果が生じる。
また、これら3成分に加えてアロマオイルを配合した場合には、これら3成分に加えてミネラルオイルを配合した場合に比べて、非常に大きな硬化劣化抑制効果が生じる。
【0025】
本発明では、ゴム成分としてイソプレン系ゴムが使用される。本発明では、イソプレン骨格を持つゴムを使用しているにもかかわらず、耐熱性(特に硬化劣化抑制効果)を改善できる。イソプレン系ゴムとしては、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、改質天然ゴム等が挙げられる。NRには、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(HPNR)も含まれ、改質天然ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等が挙げられる。また、NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。なかでも、安価であるという理由から、NR、IRが好ましい。
【0026】
イソプレン系ゴムの含有量は、ゴム成分100質量%中、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。20質量%未満であると、硬化劣化抑制効果が十分に得られないおそれがある。また、イソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。80質量%をこえると、ブタジエンゴムの含有量が低下し、スタッドレスタイヤとして必要な低温特性(雪氷上性能)を確保することができないおそれがある。
【0027】
本発明では、ゴム成分としてイソプレン系ゴムと共にブタジエンゴム(BR)が使用される。BRを配合することにより、良好な低温特性(雪氷上性能)が得られる。
【0028】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、BR1250H、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。なかでも、低温特性(雪氷上性能)の確保という理由から、シス含有量が90質量%以上のBRが好ましい。
【0029】
BRの含有量は、ゴム成分100質量%中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。10質量%未満であると、スタッドレスタイヤとして必要な低温特性(雪氷上性能)を確保することができないおそれがある。また、BRの含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。80質量%をこえると、イソプレン系ゴムの含有量が低下し、硬化劣化抑制効果が十分に得られないおそれがある。
【0030】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴム及びブタジエンゴムの合計含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは100質量%である。イソプレン系ゴム及びブタジエンゴムの合計含有量が高いほど、低温特性(雪氷上性能)に優れる。
【0031】
イソプレン系ゴム、BRの他に、ゴム成分として使用できるものとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
本発明では特定量のシリカが使用される。これにより、耐熱性(特に硬化劣化抑制効果)を改善できるとともに、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、スタッドレスタイヤとして必要な雪氷上性能を発揮できる。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(無水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。シリカは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは80m/g以上、さらに好ましくは100m/g以上である。50m/g未満では、ゴムの補強性が低下する傾向がある。また、シリカのNSAは、好ましくは300m/g以下、より好ましくは250m/g以下、さらに好ましくは200m/g以下である。300m/gを超えると、ゴム粘度が大きくなり、加工性が悪化する傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0034】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、15質量部以上、好ましくは40質量部以上、より好ましく50質量部以上である。15質量部未満では、硬化劣化抑制効果、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、及び雪氷上性能が十分に得られない。また、シリカの含有量が40質量部以上の場合に、特に良好なウェットグリップ性能、耐摩耗性、雪氷上性能が得られる。該シリカの含有量は、80質量部以下、好ましくは70質量部以下である。80質量部をこえると、加工性及び作業性が悪化する。また、フィラー量の増加により低温特性(雪氷上性能)が低下する。
【0035】
本発明のゴム組成物には、シリカとともに、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどのスルフィド系が挙げられる。また、メルカプト系、ビニル系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系なども挙げられる。なかでも、シランカップリング剤の補強性効果と加工性という点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを用いることが好ましい。これらのシランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。1質量部未満では、破壊強度、耐摩耗性が大きく低下する傾向がある。また、該シランカップリング剤の含有量は、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。15質量部を超えると、シランカップリング剤を添加することによる破壊強度、耐摩耗性の増加や転がり抵抗低減などの効果が充分に得られない傾向がある。
【0037】
本発明では、加硫促進剤として、下記式(I)及び/又は(II)で表される化合物とチウラム系加硫促進剤が併用される。ゴム成分として、イソプレン系ゴムとBRを含むゴム組成物の場合には、耐熱性や耐老化性に劣る場合があり、長期使用による硬度変化等の性能変化(特に硬化劣化)が大きくなる場合があるが、式(I)、(II)の化合物の使用によって性能変化を抑制できる。しかしその一方で、加硫時間の増大、架橋効率の低下が起きてしまう。これに対し、グアニジン系促進剤を併用すると、架橋効率の低下については多少改善されるが、未だ不十分である。また、スコーチタイムが短くなり、ゴムやけの懸念もある。本発明では、チウラム系加硫促進剤という特定の加硫促進剤を併用しているため、適正な耐スコーチ性を得ながら、架橋効率を十分に改善できる。従って、未加硫ゴム組成物において良好な耐スコーチ性を保持しつつ、加硫時間を短縮でき、また加硫ゴム組成物の転がり抵抗特性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能の改善、さらにはより一層の架橋効率の改善もできる。
【0038】
【化3】

(式(I)、(II)において、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。但し、R及びRが同時に水素原子である場合を除く(即ち、同一の環に結合しているR及びRがともに水素原子である化合物を除く)。)
【0039】
、Rとしては、アルキル基の炭素数は1〜10、アリール基の炭素数は6〜10、アラルキル基の炭素数は7〜10が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。R〜Rの炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。アルキル基、アリール基、アラルキル基のなかでも、アルキル基が好ましく、該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2である。また、Rがアルキル基、Rが水素原子であることが好ましい。この場合、硬化劣化抑制効果が良好に得られる。
【0040】
上記式(I)で表される化合物の具体例としては、ビス(4−メチルベンゾチアゾリル−2)−ジスルフィド、ビス(4−エチルベンゾチアゾリル−2)−ジスルフィド、ビス(5−メチルベンゾチアゾリル−2)−ジスルフィド、ビス(5−エチルベンゾチアゾリル−2)−ジスルフィド、ビス(6−メチルベンゾチアゾリル−2)−ジスルフィド、ビス(6−エチルベンゾチアゾリル−2)−ジスルフィド、ビス(4,5−ジメチルベンゾチアゾリル−2)−ジスルフィド、ビス(4,5−ジエチルベンゾチアゾリル−2)−ジスルフィド、ビス(4−フェニルベンゾチアゾリル−2)−ジスルフィド、ビス(5−フェニルベンゾチアゾリル−2)−ジスルフィド、ビス(6−フェニルベンゾチアゾリル−2)−ジスルフィド等が挙げられる。上記式(II)で表される化合物の具体例としては、2−メルカプト−4−メチルベンゾチアゾール、2−メルカプト−4−エチルベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メチルベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−エチルベンゾチアゾール、2−メルカプト−6−メチルベンゾチアゾール、2−メルカプト−6−エチルベンゾチアゾール、2−メルカプト−4,5−ジメチルベンゾチアゾール、2−メルカプト−4,5−ジエチルベンゾチアゾール、2−メルカプト−4−フェニルベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−フェニルベンゾチアゾール、2−メルカプト−6−フェニルベンゾチアゾール等が挙げられる。なかでも、ビス(4−メチルベンゾチアゾリル−2)−ジスルフィド、ビス(5−メチルベンゾチアゾリル−2)−ジスルフィド、メルカプト−4−メチルベンゾチアゾール、メルカプト−5−メチルベンゾチアゾールが好ましい。また、式(I)、(II)では、式(I)で表される化合物の方が好適に用いられる。さらに、上述した化合物のなかでも、下記式(III)で表される化合物(4m−MBTS)が特に好適に用いられる。以上の化合物を使用する場合、硬化劣化抑制効果が良好に得られる。
【0041】
【化4】

式(I)、(II)で表される化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。該化合物の市販品として、例えば、NOCIL社の製品を使用することができる。
【0042】
上記式(I)、(II)で表される化合物の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.4質量部以上である。0.1質量部未満では、硬化劣化抑制効果が十分に得られないおそれがある。該合計含有量は、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、さらに好ましくは2.0質量部以下である。5.0質量部を超えると、適切な架橋密度、架橋形態を維持するのが難しくなるおそれがある。
【0043】
チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドなどが挙げられる。なかでも、架橋効率の向上、適正な耐スコーチ性の保持、加硫時間の短縮、また、TMTD等に比べ毒性が低い点から、TMTM、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドが好ましい。
【0044】
チウラム系加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましく0.6質量部以上である。0.1質量部未満では、加硫時間の短縮、架橋効率の改善効果が充分に得られないおそれがある。該チウラム系加硫促進剤の含有量は、好ましくは1.2質量部以下、より好ましくは1.1質量部以下である。1.2質量部をこえると、チウラム系加硫促進剤がブルームしたり、スコーチタイムが短くなったり、コストが不必要に増大したりするおそれがある。また、雪氷上性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0045】
本発明では、上記式(I)、(II)で表される化合物、チウラム系加硫促進剤とともに、他の加硫促進剤を配合してもよく、この場合でも、硬化劣化抑制効果を好適に得ることができる。
他の加硫促進剤としては、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)、ジフェニルグアニジン(DPG)などが挙げられ、例えば、ゴム成分100質量部に対して、DPGを0.1〜2.0質量部配合してもよい。
【0046】
本発明では特定量のアロマオイルが使用される。これにより、耐摩耗性と雪氷上性能を高度に両立でき、さらに特定量のシリカと併用することにより、耐摩耗性と雪氷上性能をさらに高度に両立できる。また、ミネラルオイルを配合した場合に比べて、耐熱性(特に硬化劣化抑制効果)の改善効果が大きく、さらに、ウェットグリップ性能、耐摩耗性に優れ、加硫時間も短縮できる。
通常、オイル量を多くすると、経年劣化(硬化劣化)により硬度が大きく上昇し、経年に伴う雪氷上性能の低下を招いてしまう。本発明では、イソプレン系ゴムとシリカと上記式(I)、(II)で表される化合物を配合することにより、オイル量を特定量としても、硬化劣化を好適に抑制できるため、良好な耐摩耗性、雪氷上性能が得られ、さらに経年に伴う雪氷上性能の低下を抑制できる。
【0047】
アロマオイルとしては特に限定されず、例えば、出光興産(株)製のAC−12、AC−460、AH−16、AH−24、AH−58、ジャパンエナジー社製のプロセスNC300Sなどが挙げられる。アロマオイルは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
アロマオイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、15質量部以上、好ましくは35質量部以上、より好ましく50質量部以上である。15質量部未満では、充分な軟化効果を得ることができず、雪氷上性能が充分に得られない。また、アロマオイルの含有量が35質量部以上の場合に、特に良好なウェットグリップ性能、耐摩耗性、雪氷上性能が得られる。該アロマオイルの含有量は、80質量部以下、好ましくは70質量部以下である。80質量部をこえると、加工性の大幅な悪化、耐摩耗性の低下、硬化劣化抑制効果が低下する。
【0049】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、カーボンブラック等の充填剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、各種老化防止剤、ワックス、硫黄又は硫黄化合物等の加硫剤などを必要に応じて適宜配合することができる。
【0050】
使用できるカーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、特に限定されない。カーボンブラックを配合することにより、補強性を高めることができる。
【0051】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、70m/g以上が好ましく、90m/g以上がより好ましい。70m/g未満では、ゴムの補強性が低下する傾向がある。また、カーボンブラックのNSAは300m/g以下が好ましく、250m/g以下がより好ましく、150m/g以下がさらに好ましい。300m/gを超えると、ゴムの加工性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
【0052】
カーボンブラック及びシリカを配合する場合、カーボンブラック及びシリカの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上である。40質量部未満では、硬化劣化抑制効果が良好に得られないおそれがある。また、該合計含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。100質量部を超えると、フィラーの分散性が悪化するおそれがある。
【0053】
シリカ及びカーボンブラックの合計含有量100質量%中のシリカの含有量は、硬化劣化抑制効果、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、雪氷上性能が良好に得られるという理由から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上である。
【0054】
本発明では、老化防止剤として、破壊特性に優れる点から、アミン系老化防止剤が好適に使用され、その使用量を増加することなく、耐熱性(特に硬化劣化抑制効果)の改善が可能である。アミン系老化防止剤としては、例えば、ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系などのアミン誘導体が挙げられる。ジフェニルアミン系誘導体としては、例えば、p−(p−トルエンスルホニルアミド)−ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミンなどが挙げられる。p−フェニレンジアミン系誘導体としては、例えば、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(IPPD)、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
【0055】
アミン系老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上である。1質量部未満であると、破壊特性を向上できないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは6質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。6質量部を超えると、ブルームが表面に発生するおそれがある。
【0056】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで上記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
【0057】
本発明のゴム組成物は、スタッドレスタイヤのキャップトレッドとして用いられる。キャップトレッドとは、多層構造を有するトレッドの表層部である。2層構造のトレッドの場合には、表面層(キャップトレッド)及び内面層(ベーストレッド)から構成される。
【0058】
多層構造のトレッドは、シート状にしたものを、所定の形状に張り合わせる方法や、2本以上の押出し機に装入して押出し機のヘッド出口で2層以上に形成する方法により作製することができる。
【0059】
本発明のスタッドレスタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造できる。すなわち、ゴム組成物を未加硫の段階でキャップトレッドの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してスタッドレスタイヤを製造できる。
【0060】
本発明のスタッドレスタイヤは、乗用車用、トラック・バス用スタッドレスタイヤとして好適に用いられる。
【実施例】
【0061】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0062】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:RSS♯3
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス含有量97質量%、ML1+4(100℃)40、25℃における5%トルエン溶液粘度=48cps、Mw/Mn3.3)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のN220(NSA:111m/g)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラジルVN3(NSA:175m/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
ミネラルオイル:出光興産(株)製のPS−32
アロマオイル:ジャパンエナジー社製のプロセスNC300S
ステアリン酸:日油(株)製の桐
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエースワックス
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤4m−MBTS:NOCIL社製のビス(4−メチルベンゾチアゾリル−2)−ジスルフィド(式(III)で表される化合物)
加硫促進剤TMTM:大内新興化学工業(株)製のノクセラーTS(テトラメチルチウラムモノスルフィド)
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)
【0063】
実施例1〜3及び比較例1〜7
表1に示す配合内容に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で15分間、0.5mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0064】
得られた各未加硫ゴム組成物をそれぞれキャップトレッドの形状に成型し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて170℃で15分間加硫することにより、試験用スタッドレスタイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を製造した。
【0065】
(劣化条件)
上記にて作製した加硫ゴム組成物、試験用スタッドレスタイヤを100℃のオーブンで180時間熱劣化させた。得られたものを劣化サンプル(熱劣化後の加硫ゴム組成物、熱劣化後の試験用スタッドレスタイヤ)とした。
【0066】
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物、試験用スタッドレスタイヤ、熱劣化後の加硫ゴム組成物、熱劣化後の試験用スタッドレスタイヤを使用して、下記の評価を行った。それぞれの試験結果を表1に示す。
【0067】
<加硫試験>
得られた未加硫ゴム組成物について、JIS K 6300に従い、振動式加硫試験機(JSR社製のキュラストメーター)を用い、測定温度170℃で加硫試験を行なって、時間とトルクとをプロットした加硫速度曲線を得た。
加硫速度曲線のトルクの最小値をML、最大値をMH、その差(MH−ML)をトルク上昇値(ME)とした。比較例1のトルク上昇値を100として、各例の結果を指数表示した。トルク上昇値が大きいほど、架橋効率が高く良好である。
また、最適加硫時間の指標となるML+0.95MEに到達する時間(95%トルク上昇点)T95(分)を読み取り、比較例1の時間T95を100として、各例の結果を指数表示した。加硫時間T95が大きいほど、加硫時間が長くなり、生産性に劣る。
【0068】
<硬度(−10℃)>
加硫ゴム組成物、熱劣化後の加硫ゴム組成物について、JIS K6253の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−硬さの求め方」に準じて、タイプAデュロメーターにより、−10℃における硬度を測定した。
【0069】
<Tg(ガラス転移温度)>
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度−100〜100℃、動歪み0.5%の条件下で各加硫ゴム組成物のtanδのピーク値を測定し、その測定値をTgとした。
【0070】
<雪氷上性能>
得られた試験用スタッドレスタイヤ(新品)(タイヤサイズ195/65R15)及び熱劣化後の試験用スタッドレスタイヤ(タイヤサイズ195/65R15)について、テスト車両として、国産のFR車(2000cc)を用いて、下記の条件において、雪氷上で時速30km/hでロックブレーキを踏み、制動停止距離を測定し、比較例1の制動停止距離を100として、下記式から雪氷上制動指数を指数表示した。なお、雪氷上制動指数が大きいほど、雪氷上制動性能(雪氷上性能)に優れることを示す。なお、テストを実施する前に試験用タイヤの表面をならすために、ならし走行を、おのおの100km実施した。
(氷上) (雪上)
試験場所: 北海道名寄テストコース 北海道名寄テストコース
気温: −1〜−6℃ −2〜−10℃
(雪氷上制動指数)=(比較例1の制動停止距離)/(各例の制動停止距離)×100
【0071】
<ウェットグリップ性能>
得られた試験用スタッドレスタイヤ(新品)を国産のFR車(2000cc)に装着し、ウェットアスファルト路面において、時速100kmからの制動停止距離を測定し、摩擦係数μを算出した。比較例1を100として、下記式によりウェットグリップ性能指数を算出した。ウェットグリップ性能指数が大きいほど、ウェットグリップ性能が良好であることを示す。
(ウェットグリップ性能指数)=(各例の摩擦係数μ)/(比較例1の摩擦係数μ)×100
【0072】
<耐摩耗性>
得られた試験用スタッドレスタイヤ(新品)(タイヤサイズ195/65R15)を国産のFF車(2000cc)に装着し、8000km走行した後のタイヤトレッド部の溝深さを測定し、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を算出し下記式により指数化した。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れていることを示す。
(耐摩耗性指数)=(各例のタイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離)/(比較例1のタイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離)×100
【0073】
<ブルーム>
得られた加硫ゴム組成物にブルームが生じていないかどうかを目視により評価した。
○:ブルームなし △:少しブルームが発生 ×:ブルームが多い
【0074】
【表1】

【0075】
表1により、イソプレン系ゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分に、特定量のシリカ、特定量のアロマオイル、上記式(I)及び/又は(II)で表される化合物(4m−MBTS)、チウラム系加硫促進剤(TMTM)を配合した実施例では、良好な雪氷上性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性が得られ、さらに熱劣化による硬度の上昇および熱劣化による雪氷上性能の低下を抑制することができた。また、トルク上昇値が低下したり、加硫時間T95が大幅に増大することもなかった。特に、シリカと、アロマオイルをそれぞれ60質量部配合した実施例1,2は、雪氷上性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性が非常に優れていた。
【0076】
一方、ミネラルオイルを20質量部配合し、4m−MBTS、TMTMを配合していない比較例1では、オイル量が少ないために、熱劣化による硬度の上昇および熱劣化による雪氷上性能の低下をある程度抑制できたが、各性能は実施例と比較して大幅に劣っていた。比較例1に対して、シリカ量、ミネラルオイル量を増量した比較例2では、比較例1よりも雪氷上性能等の性能は向上したものの、熱劣化による硬度の上昇および熱劣化による雪氷上性能の低下が大きかった。比較例2のミネラルオイルをアロマオイルに変更した比較例3においても、熱劣化による硬度の上昇および熱劣化による雪氷上性能の低下が大きかった。比較例3に4m−MBTSを配合した比較例4,5では、熱劣化による硬度の上昇および熱劣化による雪氷上性能の低下を抑制することができたものの、実施例と比べて、トルク上昇値が小さく(架橋効率が低く)、加硫時間T95が大きかった。実施例2のアロマオイルをミネラルオイルに変更した比較例6は、実施例2に比べて、熱劣化による硬度の上昇および熱劣化による雪氷上性能の低下の抑制効果、ウェットグリップ性能、耐摩耗性に劣り、加硫時間T95も大きかった。実施例3のアロマオイルをミネラルオイルに変更した比較例7も、実施例3に比べて、熱劣化による硬度の上昇および熱劣化による雪氷上性能の低下の抑制効果が劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、アロマオイルと、下記式(I)及び/又は(II)で表される化合物と、チウラム系加硫促進剤とを含有し、
ゴム成分100質量部に対して、シリカの含有量が15〜80質量部、アロマオイルの含有量が15〜80質量部であるキャップトレッド用ゴム組成物。
【化1】

(式(I)、(II)において、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。但し、R及びRが同時に水素原子である場合を除く。)
【請求項2】
ゴム成分100質量部に対して、シリカの含有量が40〜80質量部、アロマオイルの含有量が35〜80質量部である請求項1記載のキャップトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
ゴム成分100質量部に対して、チウラム系加硫促進剤の含有量が0.1〜1.2質量部である請求項1又は2記載のキャップトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
前記イソプレン系ゴムがイソプレンゴム、天然ゴム及び改質天然ゴムからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載のキャップトレッド用ゴム組成物。
【請求項5】
前記化合物が下記式(III)で表される化合物である請求項1〜4のいずれかに記載のキャップトレッド用ゴム組成物。
【化2】

【請求項6】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴム及びブタジエンゴムの合計含有量が30〜100質量%である請求項1〜5のいずれかに記載のキャップトレッド用ゴム組成物。
【請求項7】
シリカ及びカーボンブラックの合計含有量100質量%中のシリカの含有量が50質量%以上である請求項1〜6のいずれかに記載のキャップトレッド用ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したキャップトレッドを有するスタッドレスタイヤ。

【公開番号】特開2012−219124(P2012−219124A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83846(P2011−83846)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】