説明

キャップ付印鑑

【課題】部材のがたつきを抑止し、キャップを開閉する際の質感を向上させ、更に、がたつきにより部材が外れることを防止するキャップ付き印鑑を提供する。
【解決手段】本体1に取り付けられた固定レール7と、その上端にヒンジ部12cが形成され、固定レール7にスライド自在に取り付けられたスライド部材12と、ヒンジ部12cに、結合部2aでヒンジ結合され、印鑑収納部1aの開口部を閉塞・開放するキャップ2と、キャップ2が閉塞している状態で、その一端が結合部2aと当接して、キャップ2の開放を防止するスライド部材12にスライド自在に取り付けられたクリップ4を有し、スライド部材12に、クリップ4と当接する突起12iを形成して、クリップ4とスライド部材12とのがたつきを防止する。スライド部材12下端を下側に延出し、クリップ4の側板部4aと当接する傾動抑止片12kを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として印鑑付ボールペンのようなポケットに収納して携行する印鑑に適したキャップ付印鑑に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポケットに収納して携行する印鑑付筆記具は、特許文献1に示されるような印鑑付筆記具が提案されている。特許文献1に示される印鑑付筆記具150は、図15に示されるように、筆記具本体101の上端に、印鑑収納部101aを形成し、当該印鑑収納部101aから露出するように印鑑103を収納したものである。この印鑑付筆記具150には、胸ポケットに引っ掛けることができるようにクリップ107が設けられている。印鑑103を使用しない時には、筆記具本体101の上部にヒンジ結合されたキャップ102が、印鑑収納部101aの開口部を閉塞し、印鑑103の印字面で胸ポケット等が汚れることを防止している。
【0003】
キャップ102の開閉機構は、筆記具本体101の一側面と離間して当該一側面に取り付けられたクリップ107に、スライド部材112をスライド自在に取り付け、このスライド部材112の上端に形成されたヒンジ部112cに、キャップ102を結合部102aでヒンジ結合することにより実現している。また、不用意にキャップ102が開くことを防止するために、キャップ102の開閉機構には、ロック機構が設けられている。このロック機構は、スライド部材112に、ロック部材104をスライド自在に取り付け、キャップ102が閉じている状態では、ロック部材104の上端に形成されたロック片104dが、キャップ102の結合部102aと当接し、キャップ102が開くことを防止することにより実現している。なお、ロック部材104には、ロック部材104がスライド部材112に対してスライドすることを防止するロックボタン115が取り付けられている。キャップ102を開く場合には、ロックボタン115を押して、ロック部材104とスライド部材112がロックしている状態を解除し、ロック部材104を下側にスライドさせて、ロック片104dと結合部102aとの当接を解除して、キャップ102を開く。
【0004】
しかしながら、このような構成では、キャップ102の開閉機構やロック機構の構造上、スライド部材112とロック部材104間にクリアランスが必要であり、ロック部材104がスライド部材112に対してがたついてしまい、キャップ102を開閉する際の節度感が悪く、製品の質感が悪化してしまうという問題があった。更に、最悪の場合には、ロック部材104が外れてしまう可能性があった。
【0005】
【特許文献1】特開平9−39353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決し、部材のがたつきを抑止し、キャップを開閉する際の質感を向上させ、更に、がたつきにより部材が外れることを防止するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、
上端が開口した印鑑収納部1aを有する本体1と、
前記印鑑収納部1a内に収納され、その先端が前記印鑑収納部1aの開口部から突出した印鑑3と、
前記本体1の一側面に沿って、当該一側面と離間して前記本体1に取り付けられた固定レール7と、
その上端にヒンジ部12cが形成され、前記固定レール7と対向して、当該固定レール7にスライド自在に取り付けられたスライド部材12と、
前記スライド部材12のヒンジ部12cに、その一側面に形成された結合部2aでヒンジ結合され、前記印鑑収納部1aの開口部を閉塞・開放するキャップ2と、
前記キャップ2が閉塞している状態で、前記結合部2aと当接して、キャップ2の開放を防止する、前記スライド部材12と対向して、当該スライド部材12にスライド自在に取り付けられたロック片4dを有し、
前記ロック片4dを前記スライド部材12に対して下側にスライドさせると、当該ロック片4dの前記結合部2aへの当接が解除されて、キャップ2の開放が可能になるキャップ付印鑑において、
前記スライド部材12に、ロック片4d側に突出する突起12iを形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、突起12iの縦断面形状を円弧形状にしたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、突起12iとヒンジ部12eの厚さ寸法の合計を、ロック片4dと固定レール7の離間寸法と同一に設定したことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3に記載の発明において、ロック片4dを、本体1の一側面に沿って延出させて表部4eを形成し、更に、前記表部4eの両側縁を本体1の一側面側に延出させて側板部4aを形成してクリップ4とし、
スライド部材12を、前記表部4eと一対の側板部4aとから構成される空間内に配設したことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、スライド部材12下端を、下側に延出し、クリップ4の側板部4aと当接する傾動抑止片12kを設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、傾動抑止片12kの、表部4aと対向する角12mを切り落として、傾斜縁12nを形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明は、スライド部材12に、ロック片4d側に突出する突起12iを形成したことを特徴とする。
このため、スライド部材12とロック片4dとの間に大きな隙間が生じることが無く、ロック片4dがスライド部材12に対してがたつくことを抑止することが可能となり、キャップ2を開閉する際の節度感が良好となり、製品の質感を向上させることが可能となった。また、ロック片4dがスライド部材12に対してがたつくことがないので、ロック片4dがスライド部材12から外れることを防止することが可能となった。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、突起12iの縦断面形状を円弧形状にしたことを特徴とする。
このため、突起12iがロック片4dと点接触するので、ロック片4dをスライド部材12に対してスムーズにスライドさせることが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、突起12iとヒンジ部12eの厚さ寸法の合計を、ロック片4dと固定レール7の離間寸法と同一に設定したことを特徴とする。
このため、ロック片4dが、常に、スライド部材12の突起12iと当接し、ロック片4dの固定レール7に対するがたつきを完全に防止することが可能となる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3に記載の発明において、ロック片4dを、本体1の一側面に沿って延出させて表部4eを形成し、更に、前記表部4eの両側縁を本体1の一側面側に延出させて側板部4aを形成してクリップ4とし、
スライド部材12を、前記表部4eと一対の側板部4aとから構成される空間内に配設したことを特徴とする。
このため、クリップ4の側板部4aが、スライド部材12の両幅部分と当接するので、クリップ4がスライド部材12に対してがたつくことを抑止することが可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、スライド部材12下端を、下側に延出し、クリップ4の側板部4aと当接する傾動抑止片12kを設けたことを特徴とする。
このため、スライド部材12の長さ寸法を長くすることにより、クリップ4のスライド部材12に対する傾動を抑止し、クリップ4をスライドさせる際の、クリップ4のスライド部材12に対する揺動を抑止することが可能となる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、傾動抑止片12kの、表部4aと対向する角12mを切り落として、傾斜縁12nを形成したことを特徴とする。
このため、クリップ4をスライドさせる際に、前記角12mがクリップ4の表部4eの裏面と接触することを防止し、クリップ4をスライド部材12に対してスムーズにスライドさせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、図1〜図12に本発明の好ましい実施の形態(第1の実施形態:印鑑付筆記具50)について本発明を説明する。1はボールペン等の筆記具本体である。筆記具本体1の上端には、筒状で上部が開口した形状の印鑑収納部1aが形成されている。印鑑収納部1a内には、印鑑3が収納されている。印鑑3の上端は印鑑収納部1aの開口部から更に上方に突出している。筆記具本体1の上端には、印鑑収納部1aの開口部を閉塞・開放するキャップ2が配設されている。
【0020】
キャップ2は、図1や図2に示されるように、クリップ4の上端付近にヒンジ結合され、ロック機構5を設けた開閉機構6により、開閉されるものである。図2〜図7に示されるように、開閉機構6は、固定レール7、クリップ4、キャップ2、スライド部材12、ロック機構5とから構成されている。ロック機構5は、キャップ2が閉塞した状態を保持して、不用意にキャップ2が開くことを防止する機構である。ロック機構5は、クリップ4、スライド部材12、ロックボタン5、スプリング受け部材16、コイルスプリング17とから構成されている。以下、開閉機構6及びロック機構5を中心に、印鑑付筆記具50を構成する各部材について詳細に説明する。
【0021】
固定レール7は、縦長の板形状をしている。固定レール7は、筆記具本体1の上部一側面に、筆記具本体1の一側面に沿って、連結部材8を介して取り付けられている。つまり、固定レール7は、筆記具本体1の一側面から離間している。図6に示されるように、固定レール7基端の外側の角7bは切り落とされていて、尖鋭な形状の当接部7aとなっている。
【0022】
図9にスライド部材12の詳細図を示し、以下、スライド部材12の説明をする。図9において、[1]はスライド部材12の上面図、[2]はスライド部材12の側面図、[3]はスライド部材12の裏面図、[4]は[2]のC矢視図である。本実施形態では、スライド部材12は、金属板材を折り曲げ形成したものであるが、スライド部材12はこれに限定されない。図9に示されるように、スライド部材12は、ロック部12a、側板部12b、ヒンジ部12c、抱持部12dとから構成されている。
【0023】
ロック部12aは、長方形板形状をしている。ロック部12aの中央部には、長方形状のロック穴12fが形成されている。ロック穴12fの一端には、スライド穴12gが形成されている。ロック穴12fとスライド穴12gは、一体となっている。スライド穴12gの端部は、半円形状をしている。スライド穴12fの幅寸法eは、ロック穴12fの幅寸法dよりも狭くなっている。
【0024】
ヒンジ部12cは、ロック部12aの一端を、側板12b側に丸めて形成したものであり、軸穴12eが形成されている。
【0025】
側板部12bは、ロック部12aの両側縁を、同じ方向に90°折り曲げて形成している。側板部12bの下端には、側板部12bの下端に沿って、スライド溝12hが連通形成されている。ヒンジ部12cと反対側の側板部12bの端部には、ヒンジ部12cと反対側方向に延出する傾動抑止片12kが形成されている。図9の[1]、[2]に示されるように、傾動抑止片12kは、ロック部12aよりも更に延出している。図9の[2]に示されるように、傾動抑止片12k先端のロック部12a側の角12mは切り落とされ、傾斜縁12nが形成されている。
【0026】
ヒンジ部12cが形成されている側の、ロック部12aの端部には、側板部12bの形成方向と反対側に突出する突起12iが形成されている。突起12iは半球形状であり、突起12iの縦断面形状は円弧形状となっている。
【0027】
図9の[2]、[4]において、抱持部12dは、側板部12bの下方に延設されている。図9の[4]において、抱持部12dの下端は、内側に折り曲げられて、抱持片12jとなっている。一対の抱持部12dと、抱持片12jにより構成される空間は、固定レール配置部12pとなっている。
【0028】
図4、図5、図8に示されるように、スライド部材12の固定レール配置部12pに、固定レール7が配置されている。スライド部材12の抱持部12dと抱持片12jで、固定レール7を抱持し、スライド部材12が固定レール7にスライド自在に取り付けられている。スライド部材12のロック部12aは、固定レール7と対向している。
【0029】
図10にクリップ4の詳細図を示し、以下、クリップ4の説明をする。図10において、[1]はクリップ4の上面図、[2]はクリップ4の側面図、[3]はクリップ4の裏面図、[4]は[2]のD−D断面図である。本実施形態では、クリップ4は、金属板材を折り曲げて形成したものであるが、クリップ4はこれに限定されない。図10に示されるように、クリップ4は、縦長板形状の表部4eの両側縁を同じ方向に90°折り曲げて、側板部4aを形成している。
【0030】
表部4eの基端部分には、ロックボタン用穴4bが形成されている。両側板部4aの外縁は、更に内側に折り曲げられて、係合片4cが形成されている。係合片4cが形成されている位置は、クリップ4の長手方向に関し、ロックボタン用穴4bが形成されている位置と同じ位置である。表部4eの基端には、ロック片4dが延出形成されている。
【0031】
図4、図5、図8に示されるように、クリップ4の係合片4cは、スライド部材12のスライド溝12hと係合し、クリップ4はスライド部材12にスライド自在に取り付けられている。スライド部材12のスライド溝12hの長さ寸法hは、クリップ4の係合片4cの長さ寸法iよりも長くなっているので、クリップ4がスライド部材12に対して、スライドできるようになっている。クリップ4の表部4e及びロック片4dは、スライド部材12のロック部12aと対向している。
【0032】
図4、図5、図8に示されるように、スライド部材12の両側板部12bは、クリップ4の表部4eと一対の側板部4aとから構成される空間内に配置されている。また、対向する側板部4aの内側寸法qを、対向する側板部12b外側寸法p(図9の[1]に示す)よりも僅かに大きく設定している。このため、クリップ4の側板部4aが、スライド部材12の側板部12bと当接し、クリップ4がスライド部材12に対してがたつくことを抑止している。
【0033】
図2に示されるように、クリップ4の先端は、筆記具本体1の一側面と当接している。クリップ4の側板部4aと筆記具本体1の一側面との間で、胸ポケット等を挟持し、印鑑付筆記具50を胸ポケット等に差し込んで保持することができるようになっている。
【0034】
図11にロックボタン15の詳細図を示し、以下、ロックボタン15について説明をする。図11において、[1]はロックボタン15の上面図、[2]はロックボタン15の側面図、[3]はロックボタン15の下面図、[4]は[1]のE−E断面図、[5]はロックボタン15の斜視図である。ロックボタン15は、ブロック形状のロック部15aと、このロック部15a上に突設されたボタン部15bとから構成されている。
【0035】
ロック部15aの縦寸法aは、スライド部材12のロック穴12fの縦寸法cよりも僅かに小さくなっている。ロック部15aの幅寸法bは、スライド部材12のロック穴12fの幅寸法dよりも僅かに小さくなっている。このため、ロック部15aは、スライド部材12のロック穴12f内に侵入することができるようになっている。一方で、ロック部15aの幅寸法bは、スライド部材12のスライド穴12fの幅寸法eよりも大きくなっている。このため、ロックボタン15のロック部15aは、スライド部材12のスライド穴12f内に侵入できないようになっている。また、ロックボタン15のボタン部15bの幅寸法fは、スライド部材12のスライド穴12gの幅寸法eよりも僅かに小さくなっている。このため、ロックボタン15のボタン部15bが、スライド部材12のスライド穴12g内に侵入することができるようになっている。
【0036】
ロック部15bの底面には、スプリング穴15cが形成されている。
【0037】
ボタン部15bの外縁形状は、クリップ4のロックボタン用穴4bの外縁形状よりも僅かに小さくなっている。本実施形態では、ボタン部15b及びロックボタン用穴4bの外縁形状は、長穴形状をしている。ボタン部15bは、クリップ4のロックボタン用穴4b内に侵入することができるようになっている。
【0038】
図12に、スプリング受け部材16の詳細図を示し、以下、スプリング受け部材16について説明をする。図12において、[1]はスプリング受け部材16の上面図、[2]はスプリング受け部材16の側面図である。スプリング受け部材16は、基板16aと、この基板16aに突設された支持部16bとから構成されている。支持部16bの断面形状は、円形状をしている。
【0039】
図2、図4、図6、図8に示されるように、キャップ2が閉じられた状態では、ボタン部15は、ボタン部15bがクリップ4のロックボタン用穴4b内に侵入して互いに係合し、且つ、ロック部15aがスライド部材12のロック穴12f内に侵入して互いに係合した状態で、クリップ4内に配設されている。スプリング受部材16の支持部16bが、ロックボタン15のスプリング穴15c内に侵入した状態で、スプリング受け部材16が、固定レール7上に配設されている。ロックボタン15のスプリング穴15c内には、コイルスプリング17が配設されている。コイルスプリング17内に、スプリング受部材16の支持部16bが侵入して、支持部16bがスプリング17を支持している。コイルスプリング17の一端は、スプリング受部材16の基板16aと当接し、基板16aがコイルスプリング17の一端を受けている。
【0040】
キャップ2が閉じられた状態では、ロックボタン15は、コイルスプリング17により、クリップ4のロックボタン用穴4b側に付勢され、ボタン部15bがロックボタン用穴4bから外部へ突出している。ロックボタン15のボタン部15bがクリップ4のロックボタン用穴4bから突出しているので、ロックボタン15がクリップ4と一体となって移動するようになっている。この状態では、ロックボタン15の係合部15aが、スライド部材12の係合穴12fと係合し、スライド穴12g側に移動することができないので、クリップ4が、スライド部材12に対してスライドしないようになっている。
【0041】
ロックボタン15の係合部15aが、スライド部材12の係合穴12fと係合している状態(図2、図4、図6、図8の状態)から、ロックボタン15のボタン部15を押し下げると、ロックボタン15の係合部15aと、スライド部材12の係合穴12fとの係合が外れる。この状態では、クリップ4を筆記具本体1の先端側にスライドさせることができるようになっている。図3、図5、図7は、クリップ4を筆記具本体1の先端側にスライドさせた状態である。なお、スプリング17を、スプリング受け部材16の基板16aで受けることにしたので、スプリング17が直接固定レール7と接触することなく、スムーズにクリップ4をスライドさせることができるようになっている。
【0042】
図1の[2]は、キャップ2のヒンジ結合部分の詳細図である。キャップ2は、扁平な有底筒状をしている。図1〜図3に示されるように、キャップ2の一側面には、結合部2aが突設されている。結合部2aには、結合部2aの幅方向を連通するヒンジ穴2bが形成されている。また、結合部2aの側端面上には、ロック凹部2cが凹陥形成されている。図1の[2]に示されるように、ロック凹部2cの幅寸法jは、クリップ4のロック片4dの幅寸法kよりも大きくなっている。このため後述するように、クリップ4のロック片4dが、キャップ2のロック凹部2c内に侵入することができるようになっている。
【0043】
枢軸21が、キャップ2のヒンジ穴2b及びスライド部材12の軸穴12e内に配設されて、キャップ2がスライド部材12にヒンジ結合されている。図2や図3に示されるように、キャップ2の結合部2aの内側には、スライド部材12のヒンジ部12cを押圧する折曲スプリング20が取り付けられている。折曲スプリング20は、キャップ2を常時閉じる方向に付勢し、キャップ2が確実に筆記具本体1の印鑑収納部1aを閉塞するようになっている。
【0044】
図1や図2に示されるように、キャップ2を閉じた状態では、クリップ4のロック片4dは、キャップ2のロック凹部2cと当接し、ロックしている。このため、キャップ2が開かないようになっている。
【0045】
一方で、前述したように、ロックボタン15を押圧して、クリップ4を筆記具本体1の先端側にスライドさせると、クリップ4のロック片4dが、キャップ2のロック凹部2cから退避し、キャップ2を開くことが可能な状態となる。更に、クリップ4を筆記具本体1の先端側にスライドさせると、キャップ2の結合部2aの内側が、固定レール7の当接部7aと当接し、キャップ2が、スライド部材12の軸穴12eを中心に回動し、キャップ2が開く。前述したように、固定レール7基端の外側の角7bを切り落としたので(図6に示す)、クリップ4を筆記具本体1の先端側にスライドさせると、スライド部材12のヒンジ部12cが固定レール7上に導かれるようになっている。
【0046】
更に、クリップ4を筆記具本体1の先端側にスライドさせると、キャップ2が、筆記具本体1の一側面に退避し、キャップ2が印鑑3の先端から突出しない状態(図3の状態)になり、印鑑3を押印することが可能となる。この状態では、コイルスプリング17が、スプリング受け部材16を固定レール7に圧接するので、印鑑3の印字面を下側に向けても、キャップ2やクリップ4が重力により下側にスライドすることがなく、キャップ2が閉じられることがない。
【0047】
なお、キャップ2が完全に開いた図3の状態では、クリップ4のロック片4dの先端が、キャップ2のロック凹部2cと当接し、キャップ2が更に開く方向に回動することを防止している。このため、キャップ2が、がたつかずに、筆記具本体1に対して固定されるようになっている。
【0048】
なお、図3に示されるように、クリップ4の途中部分に、筆記具本体1側に突出する突起22を設けると、うっかりキャップ2を閉じ忘れた状態で、胸ポケットにクリップ4を引っ掛けて、印鑑付筆記具50を胸ポケットに差し込んだ場合であっても、胸ポケットの上端に、前記突起22が引っかかり、図3において、クリップ4が上方にスライドし、キャップ2が自動的に閉じる。このため、キャップ2が開いた状態で、印鑑付筆記具50が胸ポケットの差し込まれることがなく、印鑑3で胸ポケットが汚れることを防止することが可能となる。
【0049】
(本発明の作用)
本発明では、キャップ2を開ける際及びキャップ2を閉じる際の、クリップ4のがたつきを防止するために、スライド部材12のロック部12aに突起12iを設けている。図7に示されるように、スライド部材12の突起12iとヒンジ部12cの厚さ寸法の合計寸法nを、クリップ4の表部4eと固定レール7との離間寸法mと、殆ど同一又は僅かに小さい寸法に設定している。このため、クリップ4の表部4eの裏面側が、常に、スライド部材12の突起12iと当接し、クリップ4の固定レール7に対するがたつきを防止することが可能となっている。
【0050】
また、本実施形態では、図7に示されるように、突起12iの縦断面形状を円弧形状としたので、突起12iがクリップ4の表部4eの裏面と点接触し、クリップ4をスライドさせる際の摺動抵抗を低減することができ、クリップ4をスライド部材12に対してスムーズにスライドさせることが可能となっている。
【0051】
更に、本発明では、側板部12bの端部に傾動抑止片12kを形成し、側板部12bの長さ寸法r(図9に示す)を長くしている。このため、図13に示されるように、傾動抑止片12kが無い場合(図13の[1])のスライド部材12に対するクリップ4の傾動角度αに比べて、傾動抑止片12kを設けると(図13の[2])、スライド部材12に対するクリップ4の傾動角度βを小さくすることができ、クリップ4のスライド部材12に対する傾動を抑止し、クリップ4をスライドさせる際のクリップ4のスライド部材12に対する揺動を抑止することが可能となる。
【0052】
また本実施形態では、図6に示されるように、傾動抑止片12k先端の角12mを切り落として、傾斜縁12nを形成したので、クリップ4をスライドさせる際に、前記角12mがクリップ4の表部4eの裏面と接触することを防止し、クリップ4がスライド部材12に対してスムーズにスライドするようになっている。
【0053】
(第2の実施形態の説明)
図14に第2の実施形態の印鑑付筆記具60の横断面図を示し、以下第2の実施形態について本発明を説明する。第2の実施形態の印鑑付筆記具60は、クリップ4を短くして、ロック部材4fとし、固定レール7の先端に、筆記具本体1の一側面と当接するクリップホルダー24を取り付け、固定レール7にクリップとしての機能を持たせた実施形態である。ロック部材4fの構造は、クリップとして機能しない以外は、第1の実施形態のクリップ4と同じ構造である。
【0054】
(総括)
なお、筆記具の上部に印鑑を設けた実施形態について本発明を説明したが、本発明のキャップ付印鑑は、これに限定されず、筆記具を有さないキャップ付き印鑑について本発明を適用可能なことは言うまでもない。
【0055】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うキャップ付印鑑もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態を示した、印鑑付筆記具の正面図及び要部拡大図である。
【図2】要部の側断面図である。(キャップを閉じた状態)
【図3】要部の側断面図である。(キャップを開けた状態)
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】図3のB−B断面図である。
【図6】スライド機構の断面図である。(キャップを閉じた状態)
【図7】スライド機構の断面図である。(キャップを開けた状態)
【図8】ロック機構の断面図である。(図2のA−A断面)
【図9】スライド部材の詳細図である。
【図10】クリップの詳細図である。
【図11】ロックボタンの詳細図である。
【図12】スプリング受けの詳細図である。
【図13】傾動抑止片の作用の説明図である。
【図14】第2の実施形態の側断面図である。
【図15】従来の印鑑付筆記具の側断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 筆記具本体
1a 印鑑収納部
2 キャップ
2a 結合部
2b ヒンジ穴
2c ロック凹部
3 印鑑
4 クリップ
4a 側板部
4b ロックボタン用穴
4c 係合片
4d ロック片
4e 表部
4f ロック部材(第2の実施形態)
5 ロック機構
6 開閉機構
7 固定レール
7a 当接部
7b 角
8 連結部材
12 スライド部材
12a ロック部
12b 側板部
12c ヒンジ部
12d 抱持部
12e 軸穴
12f ロック穴
12g スライド穴
12h スライド溝
12i 突起
12j 抱持片
12k 傾動抑止片
12m 角
12n 傾斜縁
12p 固定レール配置部
15 ロックボタン
15a ロック部
15b ボタン部
15c スプリング穴
16 スプリング受け部材
16a 基板
16b 支持部
17 スプリング
20 折曲スプリング
21 枢軸
22 突起
24 クリップホルダー(第2の実施形態)
50 印鑑付筆記具(第1の実施形態)
60 印鑑付筆記具(第2の実施形態)
101 筆記具本体
101a 印鑑収納部
102 キャップ
102a 結合部
103 印鑑
104 ロック部材
104d ロック片
107 クリップ
112 スライド部材
112c ヒンジ部
115 ロックボタン
150 従来の印鑑付筆記具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端が開口した印鑑収納部(1a)を有する本体(1)と、
前記印鑑収納部(1a)内に収納され、その先端が前記印鑑収納部(1a)の開口部から突出した印鑑(3)と、
前記本体(1)の一側面に沿って、当該一側面と離間して前記本体(1)に取り付けられた固定レール(7)と、
その上端にヒンジ部(12c)が形成され、前記固定レール(7)と対向して、当該固定レール(7)にスライド自在に取り付けられたスライド部材(12)と、
前記スライド部材(12)のヒンジ部(12c)に、その一側面に形成された結合部(2a)でヒンジ結合され、前記印鑑収納部(1a)の開口部を閉塞・開放するキャップ(2)と、
前記キャップ(2)が閉塞している状態で、前記結合部(2a)と当接して、キャップ(2)の開放を防止する、前記スライド部材(12)と対向して、当該スライド部材(12)にスライド自在に取り付けられたロック片(4d)を有し、
前記ロック片(4d)を前記スライド部材(12)に対して下側にスライドさせると、当該ロック片(4d)の前記結合部(2a)への当接が解除されて、キャップ(2)の開放が可能になるキャップ付印鑑において、
前記スライド部材(12)に、ロック片(4d)側に突出する突起(12i)を形成したことを特徴とするキャップ付印鑑。
【請求項2】
突起(12i)の縦断面形状を円弧形状にしたことを特徴とする請求項1に記載のキャップ付き印鑑。
【請求項3】
突起(12i)とヒンジ部(12e)の厚さ寸法の合計を、ロック片(4d)と固定レール(7)の離間寸法と同一に設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のキャップ付き印鑑。
【請求項4】
ロック片(4d)を、本体(1)の一側面に沿って延出させて表部(4e)を形成し、更に、前記表部(4e)の両側縁を本体(1)の一側面側に延出させて側板部(4a)を形成してクリップ(4)とし、
スライド部材(12)を、前記表部(4e)と一対の側板部(4a)とから構成される空間内に配設したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のキャップ付き印鑑。
【請求項5】
スライド部材(12)下端を、下側に延出し、クリップ(4)の側板部(4a)と当接する傾動抑止片(12k)を設けたことを特徴とする請求項4に記載のキャップ付き印鑑。
【請求項6】
傾動抑止片(12k)の、表部(4a)と対向する角(12m)を切り落として、傾斜縁(12n)を形成したことを特徴とする請求項5に記載のキャップ付き印鑑。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−5890(P2010−5890A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167198(P2008−167198)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(390017891)シヤチハタ株式会社 (162)
【出願人】(391014790)加藤金属工業株式会社 (8)