説明

キャップ及び蓋付容器

【課題】開栓の際の異音の発生を防止したキャップ及びこれを備える蓋付容器を提供すること。
【解決手段】中栓2として、容器本体50の開口部50aに嵌着される本体側筒状部6と、その先端にスコア7を介して連設されている分離部4とを備え、上蓋を容器本体の開口部へねじ込むことによって分離部のフランジ4dを上蓋の上端内壁から下方に延びる環状の突出部9によって保持させ、上蓋を容器本体から離反させる際に上蓋とともに分離部を本体筒状部から離反させて開口を形成するキャップにおいて、フランジの周面に肉薄の拡設部4eを形成し、中栓のフランジが上蓋の突出部の内周面を摺動する際に、突出部とフランジとによって画成される空間内の空気が薄肉の拡設部を介して徐々に排出させることによって異音の発生を防止している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトル状の容器の口部に設けられるキャップと、かかるキャップを備える蓋付容器とに関する。
【背景技術】
【0002】
公知の蓋付容器には、キャップとして、中栓と上蓋とを備え、中栓として、ボトルの開口部に嵌着される本体側筒状部と、その先端にスコアを介して連設されている分離部とを設けたものが存在する(特許文献1の図10参照)。
【0003】
このキャップでは、上蓋をボトルの開口部へねじ込むことによって本体側筒状部から分離された分離部を、上蓋の上端内壁から下方に延びる環状の突出部によって保持させることとしている。
【0004】
このキャップは、上蓋を容器口部にねじ込むだけで簡単に開栓を行なうことができ、開栓によって分離された分離部を上蓋の上端内壁に保持させて開封後のシールとして機能させることができるので、極めて操作性すなわち使い勝手がよい。
【0005】
ところで、特許文献1に記載のキャップを備えた蓋付容器では、上蓋の上端内壁から下方に延びる環状の突出部で中栓の分離部を保持させることから、環状の突出部の内周面と分離部の外周面とを密接させなくてはならない。すると、環状の突出部に分離部が入り込む際に、突出部と分離部との間で圧縮された空気が一気に噴出され、それにより異音が発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO2007/126062号のパンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、開栓の際の異音の発生を防止したキャップ及びこれを備える蓋付容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るキャップは、(a)容器本体とともに内容物を封入する密閉空間を形成し、密閉空間に開口部を形成するための分離部を有する中栓と、(b)分離部を中栓から分離して開口部を形成することを可能にするとともに分離部の分離に際して当該分離部を保持する保持手段とを有する上蓋とを備えるキャップであって、(c)中栓は、分離部によって閉塞される上部開口を有し当該上部開口において分離部に連設されるとともに周縁において容器本体に係止される本体部を有し、(d)保持手段は、上蓋の上端壁下面から下方に延びるとともに分離部の上部に形成されたフランジに係合可能な環状の突出部とを有し、(e)フランジは、当該フランジの周縁から延びる薄肉の拡設部を有する。
【0009】
上記キャップでは、上蓋を容器本体の奥に向けて前進させる開封時(最初の開栓時)に、中栓のフランジが上蓋の突出部の内周面を摺動する際に、突出部とフランジとによって画成される空間内の空気が薄肉の拡設部を介して徐々に排出される。これにより、開封の動作が滑らかになり、フランジ周辺から異音が発生することを防止できる。なお、薄肉の拡設部を設けず突出部の内周面にフランジの全周面が密着した状態で、突出部とフランジとによって画成される空間内の空気が圧縮されると、フランジの移動の抵抗になるばかりでなく、圧縮された空気が突出部の内周面とフランジの周面との間から突然噴出することによる異音を発生する場合があるが、本発明のようにフランジの周縁から延びる薄肉の拡設部を設けることで、上記のような問題が防止される。
【0010】
本発明の具体的な側面では、上蓋が、開口部の形成のための開封動作の際に、上蓋を締め込む方向に回すことによって突出部を分離部のフランジに係合させるとともに分離部を中栓から分離し、開口部の形成後の開閉動作の際に、突出部によって分離部を保持して分離部とともに移動する。この場合、開封後に突出部に分離部を保持させることができるので、分離部がゴミとなることを防止でき、分離部を例えば栓のように機能させることができる。
【0011】
本発明の別の側面では、本体部が、上部開口を画成する本体側筒状部を有し、分離部が、本体側筒状部に対して内径側及び外径側のいずれか一方にオフセットさせた分離部側筒状部を有する。この場合、開封時に分離部を本体部から分離した後に、再度、上蓋を容器本体にねじ込み或いは押し込む際に、分離部側筒状部と本体側筒状部とが重なるように嵌合され、それによって開封後も分離部と本体部との液密が図れる。つまり、開封後に上蓋を閉止した際の液漏れを防止できる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、環状の突出部が、フランジの周縁に沿って当該フランジに略平行に延びる。この場合、環状の突出部の幅、弾性等の調整によって、保持手段の突出部による分離部のフランジの保持力を適度に調整することができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、薄肉の拡設部が、フランジの延びる面に垂直な方向に貫通する切欠きを有する。この場合、上蓋の突出部と中栓の分離部のフランジとによって画成される空間内の空気が、薄肉の拡設部に設けた切欠きを介して確実に排出されるので、異音の発生をより確実に防止することができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、切欠きが拡設部の全周に亘って複数箇所に略等間隔で形成されている。この場合、上蓋の突出部と中栓の分離部のフランジとによって画成される空間内の空気が、フランジの全周から排出されるので、分離部が均一な抵抗によって突出部内に進入する。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、上蓋の突出部が、内周面において、分離部のフランジを突出部内に収容した状態で、分離部の下面周縁下部に位置して、分離部を係止する環状の膨出部を有する。この場合、分離部が膨出部によって上蓋の突出部内に確実に保持される。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、上蓋の突出部が、内周面において、分離部のフランジを突出部内に収容した状態で、フランジの薄肉の拡設部を収容する環状の保持溝を有する。この場合、分離部が保持溝によって上蓋の突出部内に確実に保持される。
【0017】
本発明のさらに別の側面では、上蓋の突出部が、内周面において、フランジの延びる面に垂直な方向に延びる通気溝を有する。この場合、上蓋の突出部と中栓の分離部のフランジとによって画成される空間内の空気が、突出部の内周面に設けた通気溝を介して確実に排出される。
【0018】
本発明のさらに別の側面では、上蓋を螺合によって容器本体の開口部に結合させてもよい。この場合、上蓋の回転動作に伴って分離部が中栓から分離されて、開口部が形成されるとともに、分離部を上蓋の保持手段に保持させることができるので、開口作業が容易になる。
【0019】
本発明のさらに別の側面では、上蓋を、容器本体の開口部に装着される取付部と、ヒンジを介して取付部に連結され、下面に環状突出部を備える開閉蓋とによって構成してもよい。この場合、中栓を開封した後は、開閉蓋によりワンタッチで簡単にキャップの開放や閉止といった開閉動作を行うことができる。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る蓋付容器は、(a)容器本体を構成し、内容物たる液体を収納する容器本体と、(b)容器本体の口部に設けられる上記いずれかのキャップとを備える。
【0021】
上記蓋付容器では、上記いずれかのキャップを用いるため、上蓋の回転動作に伴って簡易かつ確実に開口動作即ち中栓の開封を行うことができ、また、小口径の中栓であってもデザインが制限されず、さらに、開封後に食卓等にごみを出さない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るキャップを説明するための断面図である。
【図2】本発明に係るキャップの分解斜視図である。
【図3】本発明に係るキャップの中栓の要部を拡大して示すもので、(a)は中栓の分離部の平面図、(b)はその要部断面図である。
【図4】(a)〜(c)は、図2におけるA,B,C部を拡大して示した断面図である。
【図5】(a)〜(d)は、本発明に係るキャップの動作を示した断面図である。
【図6】(a)〜(c)は、本発明に係るキャップの動作における上蓋の突出部と中栓のフランジとの接触状態を示した断面図である。
【図7】第2実施形態に係るキャップを説明するための断面図である。
【図8】図7に示したキャップの作動を説明するための断面図である。
【図9】(a)〜(d)は、第3実施形態に係るキャップを説明するための断面図である。
【図10】第4実施形態に係るキャップを説明するための断面図である。
【図11】(a)及び(b)は、図10に示したキャップの作動を説明するための断面図である。
【図12】本発明に係るキャップの変形例を説明する拡大断面図である。
【図13】本発明に係るキャップの別の変形例を説明する平面図である。
【図14】本発明に係るキャップのさらに別の変形例を説明する平面図である。
【図15】本発明に係るキャップのさらに別の変形例を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下、図1乃至図6を参照して、本発明の第1実施形態に係るキャップ及び蓋付容器について説明する。
【0024】
キャップ1は、図1に示すように、ボトルである容器本体50の口部50aに装着されており、蓋本体である中栓2と、上蓋である上蓋3とを備える。キャップ1と容器本体50とは、液体を収納して保存するための蓋付容器100となっている。
【0025】
中栓2は、樹脂製の一体成形品であり、図2にも示すように、分離部4と、嵌合部5と、本体側筒状部6とを備える。ここで、嵌合部5と本体側筒状部6とは、中栓2の本体部20を構成する。
【0026】
中栓2の分離部4は、本体側筒状部6に対して当該本体側筒状部6の肉厚だけ内径側にオフセットさせた分離部側筒状部4bを備えている。この分離部側筒状部4bには、その上部開口を閉塞する天井壁4cが張設されている。また、天井壁4cには、半径方向外方に延びるフランジ4dが形成されている。このフランジ4dの周面下部には、図3(a)及び3(b)に示すように、全周に亘って薄肉、例えば、フランジ4dの厚み1.2mmに対して0.2mm程度の厚さで、フランジ4dの直径22mmに対して0.3mm程度の幅の環状の鍔状で肉薄の拡設部4eが形成されている。そして、この肉薄の拡設部4eには、その周方向等間隔で複数箇所、例えば3箇所に幅1mm程度の切欠き4fが形成されている。そして、分離部側筒状部4bの下端は、図3(b)に示すように、本体側筒状部6の上端と肉薄のスコア7によって連設されている。
【0027】
図2に示すように、中栓2の嵌合部5は、容器本体50の口部50aの外周壁に密着して固定される外筒部5aと、口部50aの内周壁に密着して固定される内筒部5bと、口部50aに密着して外筒部5aと内筒部5bとを連結する水平部5cとを有して構成される。そして、外筒部5aには、図4(b)に示すように、外周面全周に亘る環状凹部5dが形成され、内周面下部全周に亘る環状突起5eが形成されている。また、内筒部5bには、図4(c)に示すように、外周面全周に亘る2条の環状リブ5fが形成されている。そして、環状突起5eと環状リブ5fとは、容器本体50の口部50aに圧接して、中栓2をより強固に容器本体50に係止し、凹部5dは、上蓋3と中栓2との接触を回避して上蓋3の操作性の向上、また中栓を本体から分別するときの離脱性を改善するためのものである。
【0028】
図2に示す中栓2の本体側筒状部6は、全体として円錐筒状に形成され、上端部において上方に向けて口径が増大するリップ6aを有し(図3(b)参照)、容器本体50内の液体を注ぎ出す際の液切れを良くする。
【0029】
中栓2は、打栓により容器本体50とともに内容物を気密又は液密に封入する密閉空間を形成する。中栓2のうち、分離部4は、図3(b)に拡大して示すように、スコア7において中栓2の開封即ち中栓2の最初の開栓の際に切り取られ、開口部OPを形成する(図1,5(d)等参照)。
【0030】
上蓋3は、樹脂製の一体成形品であり、側面壁3aと上端壁3bとを備える。側面壁3aと上端壁3bとは、ドーム状の外観を形成し、中栓2を埃、水気等の外部環境から保護している。側面部3aは、螺合部である雌ネジ11aを有しており、容器本体50の側面に形成された雄ネジ11bに螺合する。これにより、上蓋3は、容器本体50の軸心に沿って容器本体50の奥に向けて前進したり後退したりすることになり、開栓・開封の動作を可能とするとともに、容器本体50との着脱が可能となっている。
【0031】
上蓋3は、上端壁3bにその下面から下方に延びる環状の突出部9を備えている。図4(a)に拡大して示すように、突出部9の内周面9aは、図面で上下に延びる上蓋3の回転軸と平行に形成され、その外周面9bは、下端にゆくにしたがって厚みが薄くなるようにテーパ状に形成されている。これにより、突出部9の下端部は変形が容易になる。そして、内周面9aの高さ方向中間部には、開封時にフランジ4dに係合するための環状の膨出部9cが形成され、その膨出部9cの上方にフランジ4dの拡設部4eを収容する環状の保持溝9dが形成されている。つまり、上端壁3bは、環状の膨出部9c及び環状の保持溝9dを備えることで、分離部4を確実に保持可能とする保持部として機能する。
【0032】
以下、キャップ1による蓋付容器100の開封動作について図5及び図6を参照しながら説明する。
【0033】
まず、図5(a)に示すように、上蓋3が螺合部11aの回転動作前の基準位置にある。この状態では、キャップ1が封止された状態にあり、図6(a)に示すように、中栓2のフランジ4dの周面が、拡設部4eを撓めた状態で上蓋3の突出部9の内周面9aに当接している。この際、突出部9とフランジ4dとによって、空気の溜まった空間SPが画成されている。
【0034】
この状態から上蓋3を締め込む方向即ち時計回りに回転させると、図5(b)に示すように、それに伴って突出部9が降下する。その際、フランジ4dは、図6(b)に示すように、拡設部4cが撓められた状態で突出部9cの内周面に対して摺動する。この際、空間SPに溜まった空気は、フランジ4dの外延の拡設部4eに設けた複数の切欠き4fを滑らかに通過し、空気漏れの音をほとんど発生しない。
【0035】
そして、フランジ4dの外延は、膨出部9cを越えて奥の内周面9a内にフランジ4dが収容され、膨出部9cがフランジ4dの周縁下面に係合する。この状態においては、図6(c)に示すように、フランジ4dが膨出部9cによって下面から係止され、拡設部4eが保持溝9dに収容されて突出部9内に係止される。それによって、分離部4が上蓋3の突出部9内に確実に保持される。
【0036】
さらに上蓋3を締め込むと、図5(c)に示すように、中栓2の分離部4が上蓋3の上端壁3bによって下方に押し込まれる。すると、低い破裂音を伴ってスコア7が切断され、分離部4が筒状部6に挿嵌される。つまり、分離部4が本体部20から切り離され本体部20の筒状部6から離脱可能となる。
【0037】
この状態で、図5(d)に示すように、上蓋3を緩める方向即ち反時計回りに回転させると、上蓋3に伴って分離部4が中栓2の筒状部6から離脱される。以上のようにして、中栓2は開封され、形成された開口部OPから容器本体50内の液体を注ぎ出すことが可能となる。また、上蓋3は、容器本体50に対して着脱自在となる。
【0038】
上蓋3の雌ネジ11aを容器本体50の雄ネジ11bに再び螺合させ、上蓋3を時計方向に回転させると、上述した開封によって上蓋3に保持されている分離部4が、中栓2の本体側筒状部6の開口部OPに嵌合され、開口部OPが塞がれる。この状態は、図5(c)と同様になる。この際に、分離部4は、内側シール栓として機能する。
【0039】
以上のように、本実施形態では、キャップ1での開封動作において、分離部4を中栓2から切り取るので、比較的簡単な構造でありながら、上蓋たる上蓋3の回転動作に伴うキャップ1の開封即ち中栓2の開封が可能となり、分離された分離部4は上蓋3に保持される。
【0040】
また、本実施形態では、中栓2のフランジ4dが上蓋3の突出部9の内周面9aを摺動する際に、突出部9とフランジ4dとによって画成される空間SP内の空気が拡設部4eの切欠き4fから徐々に抜き出される。これは、突出部9の内周面9aにフランジ4dの周面が密着した状態で、突出部9とフランジ4dとによって画成される空間内の空気が圧縮されると、フランジ4dの移動の抵抗になるばかりでなく、圧縮された空気が突出部9の内周面9aとフランジ4dの周面との間から突然噴出することによる異音を発生する場合があるが、空間SPを外部と連通させる切欠き4fによってそれを防止する。よって、拡設部4eの幅及び厚みと切欠き4fの大きさ及び数は、突出部9及びフランジ4dの材質、大きさ等によって適宜に設定される。
【0041】
なお、本実施形態では、中栓2は、打栓式複合キャップであり、嵌合部5を用いて打栓により容器本体50とともに内容物を気密又は液密に封入するものとしているが、打栓に限らず、例えばスクリュー式や溶着によるシーリングによっても容器本体50の内容物たる液体の収納が可能である。
【0042】
また、上記実施形態では、分離部側筒状部4bを本体部側筒状部6よりも本体部側筒状部6の肉厚分だけ内側にオフセットさせた中栓2を示しているが、分離部側筒状部4bを本体側筒状部6よりも本体部側筒状部6の肉厚分だけ外側にオフセットさせたものとすることもできる。
【0043】
また、上記実施形態において、分離部側筒状部4bの外周面と本体側筒状部6の内周面との少なくとも一方に、環状の低い突起であるシールを設けることができる。このようなシールを設けることによって、分離部側筒状部4bと本体側筒状部6との間に確実な液密状態を確保することができる。つまり、最初の開封後に繰返される再使用に際して液漏れを確実に防ぐことができる。
【0044】
なお、上記実施形態において、分離部4の分離部側筒状部4bと本体部20の本体側筒状部6とは、水平断面が円形を成しているが、それらは相対的に回転することはなく、上下方向に摺動する関係にある。したがって、それらの水平断面形状は、多角形,非円形であってもよい。
【0045】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態に係るキャップ及び蓋付容器について説明する。なお、第2実施形態のキャップ等は、第1実施形態のキャップ等を変形したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態のキャップ1や蓋付容器100と同様であるものとする。
【0046】
図7に示すように、第2実施形態に係るキャップ101の上蓋103は、側面壁103aの下端に、バージンリングBRを備えている。バージンリングBRは、環状のバンドであり、適宜な箇所に切込みが形成されている。そして、上蓋103は、容器本体150の口部150aに螺合され、バージンリングBRの下端が容器本体150の口部150aの周面に形成された膨出部151に近接して位置される。
【0047】
この上蓋103では、中栓102の分離部4を本体部120から切り離す際に、先ず、上蓋103を締め込む方向即ち時計回りに回転させる。すると、図8に示すように、バージンリングBRが容器本体150の膨出部151によって拡げられ、そして側面壁103aから離脱される。上蓋103をさらに時計回りに回転させると、本体部120から分離部4が切り離され、突出部9内に保持される。
【0048】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態に係るキャップ及び蓋付容器について説明する。なお、第3実施形態のキャップ等は、第1実施形態のキャップ等を変形したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態のキャップ1や蓋付容器100と同様であるものとする。
【0049】
図9(a)〜9(d)に示すように、第3実施形態に係るキャップ201の上蓋203は、ヒンジキャップ式のものであり、容器本体250の口部250aに係合する取付部207と、ヒンジ部HGを介して取付部207に連結される開閉蓋208とを有する。上蓋203の一部である取付部207は、下端部内壁の拡径部の少なくとも一箇所に突起部TPを有する。これに対して、容器本体250は、口部250aの雌ネジ11aの下方に、円周上断続的に段部BPを有している。そして、段部BPの上に突起部TPが乗った状態となることで、口部250aの雌ネジ11aと取付部207の雄ネジ11bとが深くねじ込まれないようになっている。
【0050】
以下、上蓋203での中栓202の開封の動作について説明する。図9(b)は、中栓202の開封を行うために上蓋203を捻る(例えば半回転させる)ことにより、突起部TPと、円周上断続的に設けられた段部BPとが重ならないように位置合せを行った状態を示すものである。この場合、上蓋203の取付部207の内壁に設けられた段差状の当接部WAが段部BPの上に乗る位置まで上蓋203全体を押し込むことが可能となる。つまり、上蓋203の回転動作により分離部4を中栓202から分離して開口部OP(図9(d)参照)を形成することが可能となる。以上のように、突起部TPと段部BPとは、上蓋203の回転動作により位置合せを行い、容器本体250の奥に向けて前進させる押し込みを行うことにより開口部OPを形成するための押込手段として機能する。また、突起部TPと段部BPとは、中栓の不用意な開封を防止できるとともに回転動作と押込動作とにより比較的簡易かつ確実に開口部OPの形成を行うことを可能にしている。
【0051】
図9(c)は、上蓋203が押し込まれた状態を示す図である。この押込動作により中栓202の分離部4が本体部220から切り離される。より詳しく説明すると、押込動作により突出部9が中栓202のフランジ4dに嵌合し、図4(a)に示す突出部9の突出部9cと同様に機能する爪209aがフランジ4dの周縁下面に係合し、さらに、フランジ4dが上蓋203の上端壁203bによって下方に押し込まれる。以上により、中栓202の分離部4が本体部220から切り離される。また、この際、取付部207が、容器本体250に係合した状態となる。さらに、分離部4が上蓋203の突出部9内に保持される。ここでは図示を省略するが、分離部4のフランジ4dの外周には、図3(B)に示す拡設部4eと同様の肉薄の拡設部が形成されている。
【0052】
以上のようにして、中栓202の開封動作がなされた後は、開閉蓋208が図9(c)に示すようにキャップ201の開口部OPを覆う閉状態と、図9(d)に示すように開口部OPを開放する開状態とをとることによって、キャップ201又は上蓋203の開閉が可能になっている。この際、中栓202の開封動作時に切り離された分離部4は、開閉蓋208の突出部9に嵌合しているため、開閉蓋208に保持された状態となっている。従って、分離部4は、中栓202の開封後に開口部OPを塞ぐことができる内側シール栓として機能する。
【0053】
〔第4実施形態〕
以下、本発明の第4実施形態に係るキャップ及び蓋付容器について説明する。なお、第4実施形態のキャップ等は、第1実施形態のキャップ等を変形したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態のキャップ1や蓋付容器100と同様であるものとする。
【0054】
図10に示すように、第4実施形態に係るキャップ301は、樹脂で成形されており、中栓302と上蓋303とが、一物品として一体成形されたものとなっている。
【0055】
上蓋である上蓋303は、ヒンジキャップ式のものであり、中栓302に係合する取付部307と、ヒンジ部HGを介して取付部307に連結される開閉蓋308とを有する。
【0056】
ここで、開閉蓋308は、ヒンジ部HGを介して取付部307に連結されていることにより、後述する中栓302の開封動作を行った後のキャップ301の使用に際して、つまり、最初の開封後の再使用の開閉に際して、開口部を覆う閉状態と開口部を開放する開状態とに保持可能である。
【0057】
さらに、この実施形態では、上蓋303の取付部307の内周面から側方に延びた突起部307aと、中栓302の嵌合部305の上端部外周とが、肉薄のスコアSC2によって連設されている。これにより、中栓302と上蓋303とは、一物品として一体成形されたものとなっている。尚、後述するように、取付部307は、雌ネジ11aの雄ネジ11bに対する回転動作に伴って、肉薄のスコアSC2に沿って中栓302の嵌合部305から切り離される。
【0058】
このように構成されたキャップ301では、後に詳述するように、中栓302の分離部4を押下可能な上蓋303の上端壁303bによって、分離部4を本体側筒状部306から切り離すことができる。また、上蓋303に形成された突出部309と、分離部4に形成したフランジ4dとによって、分離部4を上蓋303側に保持することができ、上蓋303を回転させながら行う中栓302の開封に伴って、上蓋303を容器本体350の奥に向けて前進させることになり、分離部4を中栓302から分離して開口部を形成することができる。
【0059】
図11(a)、図11(b)は中栓302の開封動作について示す図である。以下、図11(a)、図11(b)を参照して中栓302の開封動作を説明する。
【0060】
中栓302の分離部4を本体部320から切り離すには、先ず、上蓋303を締め込む方向即ち時計回りに回転させる。すると、図11(a)に示すように、バージンリングBRが容器本体350の膨出部351によって拡げられて側面壁303aから離脱される。また、突出部309が中栓302のフランジ4dと嵌合する。つまり、分離部4が上蓋303側に保持される。
【0061】
さらに、上蓋303を締め込むと、中栓302の分離部4が上蓋303の上端壁303bによって下方に押し込まれる。すると、スコアSC1が切断され、分離部4が本体部320の筒状部306に挿嵌される。つまり、分離部4が本体部320から切り離される。
【0062】
また、上蓋303を締め込む方向に回転させることに伴って、スコアSC2が切断され、上蓋303の取付部307が中栓302から切り離される。この際、取付部307は、雌ネジ11aと雄ネジ11bとが螺合することにより容器本体350に係合する。
【0063】
以上のようにして、中栓302の開封動作がなされた後は、開閉蓋308が図11(a)に示すようにキャップ301の開口部OPを覆う閉状態と、図11(b)に示すように開口部OPを開放する開状態とをとることによって、キャップ301又は上蓋303の開閉が可能となっている。この際、中栓302の開封動作時に切り離された分離部4は、開閉蓋308の突出部309に嵌合しているため、開閉蓋308に保持された状態となっている。ここでは図示を省略するが、分離部4のフランジ4dの外周には、図3(B)に示す拡設部4eと同様の肉薄の拡設部が形成されている。
【0064】
〔第5実施形態〕
以下、本発明の第5実施形態に係るキャップ及び蓋付容器について説明する。なお、第5実施形態のキャップ等は、第1実施形態のキャップ等を変形したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態のキャップ1や蓋付容器100と同様であるものとする。
【0065】
図12に示すように、上蓋3から延びる突出部9の内周面の一箇所には、上下の軸方向に沿って(図1等に示すフランジ4dの延びる面に垂直な方向に)延びる通気溝9xが形成されている。この通気溝9xは、図3(a)に示すフランジ4dの拡設部4eに形成される切欠き4fと同様の機能を有するものであり、突出部9とフランジ4dとによって画成される空間内の空気を抜くために設けられている。なお、通気溝9xは、突出部9の内周面の一箇所に限らず、複数箇所に形成することができる。
【0066】
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第1実施形態では、図3(A)に示すように、分離部4のフランジ4dに設けた拡設部4eが同一平面上に形成されているが、図13に示すように、拡設部4eを構成する各部4e−1,4e−2,4e−3を軸AXの方向に関して互いに異なる高さ位置に配置することもできる。この際、切欠き4fは、各部4e−1,4e−2,4e−3の重なり部分に形成されている。また、図14に示すように、拡設部4eに対して軸AXの方向に関して異なる高さ位置に追加の拡設部504eを設けることもできる。この場合、拡設部4eと拡設部504eとが軸AXの方向から見て部分的に重畳している。さらに、図15に示すように、拡設部604eを周方向の位置で異なる高さに変化させることもできる。
【0067】
また、図3(b)等に示す分離部4のフランジ4dに形成される拡設部4eは、切欠き4fを設けることなく、全周に亘って形成されるものとできる。この場合も、拡設部4eの可撓性によって突出部9とフランジ4dとによって画成される空間SP中の空気を少ない抵抗でリークさせることができる。
【0068】
また、フランジ4dを上側で内側に折り返すようにしてフランジ4dの上部に筒状の部分を形成し、突出部9の外周にフランジ4dの筒状部より小径の鍔又はフランジを設けることで、フランジ4dと突出部9と内外を入れ替えることもできる。
【0069】
また、分離部4のフランジ4dの外周は、円形に限らず6角形、8角形等の多角形とすることができ、上蓋3から延びる突出部9の内側面も円形に限らず6角形、8角形等の多角形とすることができる。分離部4のフランジ4dの外周が多角形である場合、フランジ4dの外周に形成される拡設部4eは、多角形の辺状に延びるものとなる。
【符号の説明】
【0070】
1…キャップ、 2…中栓、 3…上蓋、 3a…側面壁、 3b…上端壁、 4…分離部、 4b…分離部側筒状部、 4c…天井壁、 4d…フランジ、 4e…拡設部、 4f…切欠き、 5…嵌合部、 5a…外筒部、 5b…内筒部、 5e…水平部、 5d…環状凹部、 5e…環状突起、 5f…環状リブ、 6…本体側筒状部、 6a…リップ、 7…スコア、 9…突出部、 9a…内周面、 9b…外周面、 9c…膨出部、 9d…切欠き、 11a…雌ネジ、 11b…雄ネジ、 20…本体部、 50…容器本体、 50a…口部、 100…蓋付容器、 OP…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体とともに内容物を封入する密閉空間を形成し、前記密閉空間に開口部を形成するための分離部を有する中栓と、
前記分離部を前記中栓から分離して前記開口部を形成することを可能にするとともに前記分離部の分離に際して当該分離部を保持する保持手段とを有する上蓋とを備えるキャップであって、
前記中栓は、前記分離部によって閉塞される上部開口を有し当該上部開口において前記分離部に連設されるとともに周縁において前記容器本体に係止される本体部を有し、
前記保持手段は、前記上蓋の上端壁下面から下方に延びるとともに前記分離部の上部に形成されたフランジに係合可能な環状の突出部とを有し、
前記フランジは、当該フランジの周縁から延びる薄肉の拡設部を有することを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記上蓋は、前記開口部の形成のための開封動作の際に、前記上蓋を締め込む方向に回すことによって前記突出部を前記分離部の前記フランジに係合させるとともに前記分離部を前記中栓から分離し、前記開口部の形成後の開閉動作の際に、前記突出部によって前記分離部を保持して前記分離部とともに移動することを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記本体部は、上部開口を画成する本体側筒状部を有し、
前記分離部は、前記本体側筒状部に対して内径側及び外径側のいずれか一方にオフセットさせた分離部側筒状部を有することを特徴とする請求項2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記環状の突出部は、前記フランジの周縁に沿って当該フランジに略平行に延びることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項5】
前記薄肉の拡設部は、前記フランジの延びる面に垂直な方向に貫通する切欠きを有することを特徴とする請求項4に記載のキャップ。
【請求項6】
前記切欠きは、前記拡設部の全周に亘って複数箇所に略等間隔で形成されていることを特徴とする請求項5に記載のキャップ。
【請求項7】
前記上蓋の前記突出部は、内周面において、前記分離部の前記フランジを前記突出部内に収容した状態で、前記分離部の下面周縁下部に位置して、前記分離部を係止する環状の膨出部を有することを特徴とする請求項1から6までのいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項8】
前記上蓋の前記突出部は、内周面において、前記分離部の前記フランジを前記突出部内に収容した状態で、前記フランジの前記薄肉の拡設部を収容する環状の保持溝を有することを特徴とする請求項1から7までのいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項9】
前記上蓋の前記突出部は、内周面において、前記フランジの延びる面に垂直な方向に延びる通気溝を有することを特徴とする請求項1から8までのいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項10】
前記上蓋が螺合によって前記容器本体の開口部に結合されていることを特徴とする請求項1から9までのいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項11】
前記上蓋は、前記容器本体の開口部に装着される取付部と、ヒンジを介して前記取付部に連結され、下面に前記環状突出部を備える開閉蓋とを備えていることを特徴とする請求項1から10までのいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項12】
内容物たる液体を収納する容器本体と、前記容器本体の口部に設けられる請求項1から11までのいずれか一項に記載のキャップとを備える蓋付容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−224375(P2012−224375A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94502(P2011−94502)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000223193)東罐興業株式会社 (90)
【Fターム(参考)】