説明

キャップ

【課題】 裾巻き工程時にブリッジが破断することを抑制する。
【解決手段】 天板部11と、天板部11の周縁部から略垂下してなる周壁部12とが備えられ、周壁部12には、周方向に延びるスリット部17aがブリッジ17bを介して周方向に複数形成された破断容易部17が備えられ、破断容易部17の上端に第1ビード部16aが連設されるとともに、破断容易部17の下端に第2ビード部16bが連設され、これらの第1、第2ビード部16a、16bはそれぞれ、径方向外方へ膨出し、かつ周方向に延びるビード膨出部16c、16dを備えるキャップ10であって、第1、第2ビード膨出部16c、16dのうち、少なくとも一方は、ブリッジ17bと対応する位置を回避するように断続的に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトル缶の口金部に螺着されるキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、飲料を充填、密封して販売する容器として、例えば下記特許文献1に示されるように、ボトル缶の口金部にキャップが螺着されてなるキャップ付ボトル缶が採用されている。この種のキャップ付ボトル缶に供されるキャップは、一般に、図3に示すように、天板部11、および該天板部11の周縁部から略垂下してなる周壁部112とが備えられ、該周壁部112には、周方向に延びるスリット部17aがブリッジ117bを介して周方向に複数形成された破断容易部117が備えられている。
【0003】
さらに、該破断容易部117の上端に第1ビード部116aが連設されるとともに、破断容易部117の下端に第2ビード部116bが連設されている。これらの第1、第2ビード部116a、116bはそれぞれ、径方向外方へ膨出し、かつ周方向の全周に亙って延在するビード膨出部116a、116bにより構成されるとともに、ブリッジ117bを介して互いに連結された構成とされている(以下、第1ビード部116aのビード膨出部116aを「第1ビード膨出部116a」といい、第2ビード部116bのビード膨出部116bを「第2ビード膨出部116b」という)。
【0004】
この種のキャップ100は、一般に、アルミニウム合金等からなる圧延材を打ち抜き加工する等してカップ状のキャップ素体を形成した後に、キャップ成形用ツールにより、前記キャップ素体の周壁部にその全周に亙って成形加工を施すことによって形成される。
【0005】
以上のように構成されたキャップ100は、ボトル缶の口金部に配置された後に、天板部11の周縁部が缶軸方向下方に向けて押圧されて段部が形成され(段部形成工程)、その後、この押圧を維持した状態で、雌ねじ形成予定部15の外周面を、前記口金部の雄ねじ部に沿うように径方向内方へ向けて押圧して雌ねじ部を形成するとともに(雌ねじ部形成工程)、周壁部112の開放端部(フレア)18を、前記雄ねじ部の缶軸方向下端に連設されて径方向外方へ膨出した膨出部に巻き込ませるように径方向内方へ向けて押圧することによって(裾巻き工程)、ボトル缶口金部に螺着される。
【特許文献1】特開2003−072798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記従来のキャップ100は、前述のように、第1、第2ビード部116a、116bが、互いにブリッジ117bを介して連結されているので、図4に示すように、ブリッジ117bの当該キャップ100の軸線方向における両端部が、凸曲面状とされた第1、第2ビード部116a、116bのブリッジ117b側の各端部を構成するように湾曲若しくは傾斜することとなる。そのため、次のような問題が生じていた。
【0007】
すなわち、ボトル缶口金部における前記膨出部の形状ばらつき等に起因して、天板部11の周縁部を缶軸方向下方に押圧した状態で前記裾巻き工程を経るときに、前記周壁部112の開放端には、その周方向の位置によって、缶軸方向に引張される部分および圧縮される部分が生ずる場合がある。このうち、特に圧縮される部分に位置するブリッジ117bには、その前記傾斜等した形状に起因して、缶軸方向の圧縮荷重のみならず、図4に示すように、第1ビード部116a側の端部を支点とした曲げモーメントMも作用する場合があり、前記裾巻き工程時にこのブリッジ117bが破断し易くなるおそれがあった。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、裾巻き工程時にブリッジが破断することを抑えることができるキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明のキャップは、天板部と、該天板部の周縁部から略垂下してなる周壁部とが備えられ、前記周壁部には、周方向に延びるスリット部がブリッジを介して周方向に複数形成された破断容易部が備えられ、該破断容易部の上端に第1ビード部が連設されるとともに、前記破断容易部の下端に第2ビード部が連設され、これらの第1、第2ビード部はそれぞれ、径方向外方へ膨出し、かつ周方向に延びるビード膨出部を備えるキャップであって、前記第1、第2ビード部の前記ビード膨出部のうち、少なくとも一方は、前記ブリッジと対応する位置を回避するように断続的に形成されていることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、前記第1、第2ビード部の前記ビード膨出部のうち、少なくとも一方は、前記ブリッジと対応する位置を回避するように断続的に形成されているので、キャップの軸線に対するブリッジの傾斜角度を最小限に抑えることが可能になる。これにより、天板部の周縁部を缶軸方向下方に押圧した状態で裾巻き工程を経る際に、前記周壁部の開放端部に缶軸方向の圧縮荷重が作用する部分が生じた場合においても、この部分に位置するブリッジに生ずる曲げモーメントを最小限に抑制することが可能になり、前記裾巻き工程時にブリッジが破断することを抑えることができる。
【0011】
ここで、前記第1ビード部におけるビード膨出部の径方向外方へ向けた膨出量は、前記第2ビード部におけるビード膨出部より大きくされ、少なくとも前記第1ビード部におけるビード膨出部は、前記ブリッジと対応する位置を回避するように断続的に形成されていることが望ましい。
この場合、少なくとも前記第1ビード部のビード膨出部が、前記ブリッジと対応する位置を回避するように断続的に形成されているので、ブリッジの前記傾斜角度を最小限に抑えることを確実に実現することができる。しかも、第1ビード部におけるビード膨出部の前記膨出量の方を大きくしていることから、雌ねじ部形成工程において、前記周壁部の外周面を、天板部側から当該周壁部の開放端側に移動しつつ、径方向内方へ向けて押圧するねじ切りローラが、前記第1ビード部を乗越えて、ブリッジを破断させることを回避することが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、裾巻き工程時にブリッジが破断することを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1および図2は、本発明の一実施形態を示すものである。本実施形態のキャップ10は、例えばアルミニウム合金等により形成され、図1に示すように、天板部11と、該天板部11の周縁部から略垂下してなる周壁部12と、天板部11の内側に配設されたライナー19とが備えられている。
【0014】
周壁部12には、径方向内方に向って凹とされた凹部が周方向に間隔をあけて複数形成され、当該周壁部12の上端部を構成するナール部13と、該ナール部13の下端(周壁部12の開放端側)に連設され、当該ナール部13より小径とされたグルーブ14と、該グルーブ14の下端に連設されるとともに、当該グルーブ14より大径の平滑面とされた雌ねじ形成予定部15と、該雌ねじ形成予定部15の下端に連設され、径方向外方へ膨出した第1ビード部16aと、該第1ビード部16aの下端に連設され、周方向に延びるスリット部17aがブリッジ17bを介して周方向に複数形成された破断容易部17と、該破断容易部17の下端に連設されるとともに、径方向外方へ膨出した第2ビード部16bと、該第2ビード部16bの下端に連設され、当該周壁部12の開放端部を構成する平滑面とされたフレア18とが備えられている。
【0015】
ここで、本実施形態のスリット部17aは、二つの長辺が周方向に延在するような側面視矩形状の凹部とされるとともに、天板部11側に位置する前記長辺に、周壁部12の厚さ方向に貫通する切込み(スリット)が入っている。また、第1、第2ビード部16a、16bは、前記圧延材に打ち抜き加工等が施されて形成されたカップ状のキャップ素体における、全体が平滑面とされた周壁部の内周面を径方向外方へ向けて押圧することにより形成される。
【0016】
そして、本実施形態の第1、第2ビード部16a、16bはそれぞれ、図1に示すように、径方向外方へ膨出し、かつ周方向に延びるビード膨出部16c、16dを備えている(以下、第1ビード部16aのビード膨出部16cを「第1ビード膨出部16c」といい、第2ビード部16bのビード膨出部16dを「第2ビード膨出部16d」という)。また、第1、第2ビード膨出部16c、16dのうち、少なくとも一方は、ブリッジ17bと対応する位置を回避するように断続的に形成されている。
【0017】
本実施形態では、第1ビード膨出部16cの径方向外方へ向けた膨出量が、第2ビード膨出部16dより大きくされている。また、第1、第2ビード膨出部16c、16dの双方が前記断続的に形成されている。すなわち、第1、第2ビード部16a、16bはそれぞれ、第1、第2ビード膨出部16c、16dが、平滑面とされた未加工部16e、16fを介して周方向に複数形成された構成とされている。
以上により、雌ねじ形成予定部15と、第1ビード部16aの未加工部16eと、ブリッジ17bと、第2ビード部16bの未加工部16fと、フレア18とが段差なく滑らかに連結され、これにより、ブリッジ17bは、キャップ10の軸線が延びる方向と略平行に延在するような構成とされている。
【0018】
このように構成されたキャップ10は、図2に示すように、ライナー19の下面がボトル缶口金部21の開口端面(上端面)と当接するように配置された後に、天板部11の周縁部が缶軸方向下方に向けて押圧されて段部11aが形成されることにより、ライナー19の下面がボトル缶口金部21のカール部21aに密接される(段部形成工程)。そして、前記押圧を維持した状態で、口金部21の雄ねじ部21bに沿うように、雌ねじ形成予定部15の外周面を径方向内方へ向けて押圧することにより、雄ねじ部21bに螺合する雌ねじ部15aを形成し(雌ねじ部形成工程)、ボトル缶雄ねじ部21の缶軸方向下端に連設され、径方向外方へ膨出した膨出部21cに沿うように、フレア18の外周面を径方向内方へ向けて押圧することにより、フレア18を膨出部21cに巻き込ませる(裾巻き工程)。
以上により、キャップ付ボトル缶22が得られる。
【0019】
このようなキャップ付ボトル缶22を開栓する際には、キャップ10を、その雌ねじ部15aがボトル缶雄ねじ部21bに対して緩まる方向に缶軸回りに相対的に回転させることにより、キャップ10をボトル缶口金部21に対して缶軸方向上方へ移動させる。この際、フレア18は膨出部21cに巻き込まれているので、キャップ10のフレア18側は前記移動が阻止されて、該移動の初期段階で、ブリッジ17bが破断されることとなり、破断容易部17よりも天板部11側のキャップ上部が、口金部21から取り外され、破断容易部17よりもフレア18側のキャップ下部が、口金部21に残存することとなる。
【0020】
以上説明したように本実施形態に係るキャップ10によれば、第1、第2ビード膨出部16c、16dの双方が、ブリッジ17bと対応する位置を回避するように断続的に形成されているので、キャップ10の軸線に対するブリッジ17bの傾斜角度を最小限に抑えることが可能になる。これにより、天板部11の周縁部を缶軸方向下方に押圧した状態で裾巻き工程を経る際に、周壁部12の開放端部(フレア18)に缶軸方向の圧縮荷重が作用する部分が生じた場合においても、この部分に位置するブリッジ17bに生ずる曲げモーメントを最小限に抑制することが可能になり、前記裾巻き工程時にブリッジ17bが破断することを抑えることができる。
【0021】
特に本実施形態では、第1ビード膨出部16cの前記膨出量を第2ビード膨出部16dよりも大きくしていることから、雌ねじ部形成工程において、雌ねじ形成予定部15の外周面を、天板部11側から当該周壁部12のフレア18側に移動しつつ、径方向内方へ向けて押圧するねじ切りローラが、第1ビード部16aを乗越えて、ブリッジ17bを破断させることを回避することが可能になる。
【0022】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、第1、第2ビード膨出部16c、16dの双方を前記断続的に形成した構成を示したが、いずれか一方についてのみ前記断続的に形成するようにしてもよい。この場合、前記膨出量の大きい第1ビード膨出部16cを前記断続的に形成するのが望ましい。
【0023】
また、前記実施形態のスリット部17aは、二つの長辺が周方向に延在するような側面視矩形状の凹部とされるとともに、天板部11側に位置する前記長辺に、周壁部12の厚さ方向に貫通する切込み(スリット)を入れたが、該切込みをフレア18側に位置する前記長辺に入れるようにしてもよい。
さらに、前記実施形態では、前記膨出量を、第1ビード膨出部16cの方を第2ビード膨出部16dより大きくしたが、同一にしてもよく、あるいは第2ビード膨出部16dの方を第1ビード膨出部16cより大きくしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
裾巻き工程時にブリッジが破断することを抑制することが可能になるキャップを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る一実施形態として示したキャップの半断面図である。
【図2】図1に示すキャップをボトル缶の口金部に螺着したキャップ付ボトル缶を示す概略図である。
【図3】本発明に係る従来例として示したキャップの半断面図である。
【図4】図3に示すキャップのX−X線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 キャップ
11 天板部
12 周壁部
16a 第1ビード部
16b 第2ビード部
16c 第1ビード膨出部
16d 第2ビード膨出部
17 破断容易部
17a スリット部
17b ブリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板部と、該天板部の周縁部から略垂下してなる周壁部とが備えられ、前記周壁部には、周方向に延びるスリット部がブリッジを介して周方向に複数形成された破断容易部が備えられ、該破断容易部の上端に第1ビード部が連設されるとともに、前記破断容易部の下端に第2ビード部が連設され、これらの第1、第2ビード部はそれぞれ、径方向外方へ膨出し、かつ周方向に延びるビード膨出部を備えるキャップであって、
前記第1、第2ビード部の前記ビード膨出部のうち、少なくとも一方は、前記ブリッジと対応する位置を回避するように断続的に形成されていることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
請求項1記載のキャップにおいて、
前記第1ビード部におけるビード膨出部の径方向外方へ向けた膨出量は、前記第2ビード部におけるビード膨出部より大きくされ、少なくとも前記第1ビード部におけるビード膨出部は、前記ブリッジと対応する位置を回避するように断続的に形成されていることを特徴とするキャップ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−213353(P2006−213353A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27507(P2005−27507)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(305060154)ユニバーサル製缶株式会社 (219)
【Fターム(参考)】