キャパシタモジュール製造用治具及びそれを用いたキャパシタモジュールの製造方法
【課題】引出電極同士の接続部の機械的強度が強固であり、かつ電気抵抗が低いキャパシタモジュールを簡便にかつ効率的に製造することが可能となるキャパシタモジュール製造用治具を提供する。
【解決手段】本発明に係るキャパシタモジュール製造用治具は、引出電極同士を仮接続した複数個のキャパシタセルを搭載するベース部材110と、仮接続した引出電極同士を下部から支持する複数の櫛歯を有する櫛歯部材140と、仮接続した引出電極同士を上部から押圧し固定する押圧固定部材170と、からなることを特徴とする。
【解決手段】本発明に係るキャパシタモジュール製造用治具は、引出電極同士を仮接続した複数個のキャパシタセルを搭載するベース部材110と、仮接続した引出電極同士を下部から支持する複数の櫛歯を有する櫛歯部材140と、仮接続した引出電極同士を上部から押圧し固定する押圧固定部材170と、からなることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電気二重層キャパシタセルを直列接続して構成されるキャパシタモジュールを製造するために用いられるキャパシタモジュール製造用治具及びそれを用いたキャパシタモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタにおいては、一般に円筒型などその他の形態に比べて積層型はエネルギー密度が高い。積層型の電気二重層キャパシタセルは、分極性電極をセパレータともに積層した積層体に引き出し電極を取り付け、さらに積層体に電解液を含浸させた後、ラミネートフィルムに入れられ、ラミネートの開口部から引き出し電極が引き出された状態で密封されてなる。
【0003】
非特許文献1に記載されているように、電気二重層キャパシタは耐電圧が低いために、複数のキャパシタセルを直列接続してキャパシタモジュールを構成して利用される。このように積層型のキャパシタセルを直列接続して利用する際には、充放電に伴いキャパシタセルが積層面に垂直な方向に膨張収縮するので適当な加圧機構を設ける(特許文献1)。また、特許文献2には、その図15に関連して、複数の電気二重層キャパシタセルの引出電極同士が直列接続されて構成されたキャパシタモジュールが開示されている。
【非特許文献1】岡村廸夫著「電気二重層キャパシタと蓄電システム」日刊工業新聞社発行、2005年9月30日第3版第1刷、第8頁〜第9頁、第150頁〜第157頁
【特許文献1】特開2005−93492号公報
【特許文献2】特開2008−153282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載のように複数の電気二重層キャパシタセルの引出電極同士を直列接続してキャパシタモジュールを製造するにあたっては、引出電極同士の接続部では、ある程度の機械的強度を確保しつつ、かつ当該接続部の電気抵抗を抑制するように接続する必要がある。しかしながら、特許文献2に記載の発明では、このような接続部を効率よく簡便に製造するための治具や方法が開示されておらず、問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであって、請求項1に係る発明は、引出電極同士を仮接続した複数個のキャパシタセルを搭載するベース部材と、仮接続した引出電極同士を下部から支持する複数の櫛歯を有する櫛歯部材と、仮接続した引出電極同士を上部から押圧し固定する押圧固定部材と、からなることを特徴とするキャパシタモジュール製造用治具である。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載のキャパシタモジュール製造用治具において、前記ベース部材には側壁部が設けられており、前記側壁部の天面部に前記櫛歯部材が脱着可能とされることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載のキャパシタモジュール製造用治具において、前記押圧固定部材には、前記仮接続した引出電極同士の上部の一部を露出する切り欠き部が設けられることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のキャパシタモジュール製造用治具において、前記櫛歯部材の前記櫛歯にはネジ穴が設けられることを特徴とする。
【0009】
また、請求項5に係る発明は、請求項4に記載のキャパシタモジュール製造用治具において、前記押圧固定部材の装着は、取り付けネジによって前記ネジ穴を利用して行われることを特徴とする。
【0010】
また、請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のキャパシタモジュール製造用治具を用いたキャパシタモジュールの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るキャパシタモジュール製造用治具及びそれを用いたキャパシタモジュールの製造方法によれば、キャパシタセルの引出電極同士の接続部の機械的強度が強固であり、かつ電気抵抗が低いキャパシタモジュールを簡便にかつ効率的に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具で扱う電気二重層キャパシタセル10の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100の斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100のベース部材110の斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100の櫛歯部材140の斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100の押圧固定部材170の斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図10】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図11】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における櫛歯部材140の装着を説明する図である。
【図12】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図13】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における押圧固定部材170の装着を説明する図である。
【図14】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図15】ブラインドリベット20による引出電極の固着を説明する図である。
【図16】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図17】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における溶接パターンを説明する図である。
【図18】本発明の他の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100’の斜視図である。
【図19】本発明の他の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図20】本発明の電気二重層キャパシタモジュールの製造方法によって製造されたモジュールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具で扱う電気二重層キャパシタセル10の斜視図である。この電気二重層キャパシタセル10は積層型の電気二重層キャパシタセルである。より具体的には、キャパシタ本体については、正の電極体(正極体)と負の電極体(負極体)をこれらの間にセパレータを介在させつつ交互に重ねることにより所定の積層体に組成される。正極体および負極体は、集電極とその両面に形成される分極性電極(活性炭電極)とから平板状に構成される。これら集電極は、矩形状の金属箔(アルミニウム箔)からなり、矩形平面の一辺に片側へ寄せて帯状の導電部(リード)が一体形成される。導電部は同極同士が集束され接合され、正の引出電極12、負の引出電極13とされる。
【0014】
そして、金属層を含む積層構造の樹脂フィルム(たとえば、アルミラミネート)から形成される容器部11の周縁において、正の引出電極12、負の引出電極13の一部が引き出され、一辺を除く三辺が熱溶着(ヒートシール)される。より具体的には、容器部11は正の引出電極12、負の引出電極13が突き出る一辺を開口可能とされており、そして、その開口部から内部に電解液を注入し、電解液の含浸処理などが終わると、真空ポンプにより空気や水分を除去した状態において、残りの一辺が熱溶着(ヒートシール)され、電気二重層キャパシタセル10が製作される。
【0015】
概略、以上のようにして構成される電気二重層キャパシタセル10は、耐電圧が低いために、複数個を直列接続した電気二重層キャパシタモジュールとして利用される。このとき、一の電気二重層キャパシタセル10の正の引出電極12と、他の電気二重層キャパシタセル10の負の引出電極13とを接続する必要があるが、本発明のキャパシタモジュール製造用治具では特にこの接続を簡便にかつ効率よく行い得る特徴点を有するものであるので、これについて以下詳細に説明する。
【0016】
電気二重層キャパシタセル10同士を接続する際には、正の引出電極12はX−X’線により切断しA−A’線で90°折り曲げ加工を施し、また、負の引出電極13はY−Y’線により切断しB−B’線で90°折り曲げ加工を施す。このとき、正の引出電極12と、負の引出電極13とは互いに逆方向に折り曲げ加工がなされ、図2に示すように引出電極はL字状とされる。また、正の引出電極12及び負の引出電極13には、リベットを挿通するためのリベット穴14を設ける加工を施す。なお、引出電極の切断工程、引出電極の折り曲げ工程、引出電極にリベット穴14を穿設する工程の順序は任意とすることが可能である。
【0017】
ここで、引出電極の折り曲げ工程では、図2(A)及び図2(B)の2パターンの電気二重層キャパシタセル10を用意しておき、セル同士を接続するに際しては、図3に示すように、図2(A)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→図2(B)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→図2(A)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→図2(B)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→・・・の順序とする。電気二重層キャパシタモジュールを構成する際に接続する電気二重層キャパシタセル10の数は任意である。引出電極を接続する前段としては、接続する電気二重層キャパシタセル1
0をまとめて仮組するが、このとき隣り合う電気二重層キャパシタセル10の引出電極に設けられたリベット穴14の位置が一致するようにして引出電極を重ね合わせて仮接続する。
【0018】
図4は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図であり、複数の電気二重層キャパシタセル10をまとめて仮組し、フレーム部材50に収納した様子を示している。なお、図4には示されていないが、フレーム部材50内には、複数の電気二重層キャパシタセル10を積層方向に押圧する付勢手段などが設けられている。また、フレーム部材50は最終製品であるキャパシタモジュールの一部を構成するものである。
【0019】
本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具は、以上のようにフレーム部材50内に仮組みされた複数の電気二重層キャパシタセル10の引出電極同士の接続を行うためのものであり、以下、本発明のキャパシタモジュール製造用治具についてより詳細に説明する。図5は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100の斜視図である。図5において、110はベース部材、140は櫛歯部材、160は取り付けネジ、170は押圧固定部材、190は取り付けネジをそれぞれ示している。図5は被製造物を除いたキャパシタモジュール製造用治具100のみを図示するものであり、実際のキャパシタモジュールの製造においては、先のフレーム部材50に収容された複数の電気二重層キャパシタセル10を組み付けつつ、このようなキャパシタモジュール製造用治具100に組み付けつつ利用される。
【0020】
以下、キャパシタモジュール製造用治具100を構成する各部位についてより詳細に説明する。図6は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100のベース部材110の斜視図である。
【0021】
ベース部材110には、フレーム部材50に収容された複数の電気二重層キャパシタセル10を載置するための基底部111が底面部に設けられており、この基底部111の両側部には、側壁部112が基底部111から立設するようにして設けられている。それぞれの側壁部112の天面部113には、櫛歯部材140をネジ留めするために用いられる取り付けネジ穴115が設けられており、このような取り付けネジ穴115によって、櫛歯部材140は天面部113に対して脱着可能とされている。本実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100では、両側の天面部113で合計8つの櫛歯部材140がそれぞれ2本の取り付けネジ160によって天面部113に取り付けられるようになっている。
【0022】
本実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100では、このベース部材110を構成するためにアルミニウムが主な材料として用いられている。これはキャパシタモジュール製造用治具100全体を軽量に構成し、当該治具を載置する自動溶接機(不図示)などの負荷を減らすためである。なお、ベース部材110に用いる材料としてはアルミニウムに限定されることなく任意の金属材料を用いることが可能である。
【0023】
次に、キャパシタモジュール製造用治具100を構成する櫛歯部材140についてより詳細に説明する。図7は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100の櫛歯部材140の斜視図である。
【0024】
櫛歯部材140は、天面部113に直接搭載される取り付け基部141と、この取り付け基部141から延在する複数(本実施形態では5本)の櫛歯部144とから構成されている。それぞれの櫛歯部144の間にはわずかな間隔のスリットが設けられている。このスリットの間隔は、電気二重層キャパシタセル10の引出電極12、13を通すことがで
きる程度のものである。取り付け基部141には、櫛歯部材140を天面部113にネジ留めする際に用いられる取り付けネジ160を挿通するための挿通穴142が設けられている。
【0025】
また、それぞれの櫛歯部144には、ネジ穴145が設けられている。このネジ穴145は押圧固定部材170をネジ留めする際に用いられる。また、櫛歯部144のネジ穴14は電気二重層キャパシタセル10の引出電極同士をリベット留めする際にも余裕空間として用いられる。このようなリベット留めにも用いられるために、フレーム部材50に収納した電気二重層キャパシタセル10を、櫛歯部材140によって本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100に取り付けたときには、電気二重層キャパシタセル10の引出電極12及び引出電極13のリベット穴14と、ネジ穴14とは略一致するようなレイアウトとなっている。
【0026】
本実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100では、上記の櫛歯部材140は、銅などの熱伝導性に優れる金属材料が用いられる。櫛歯部材140の櫛歯部144は、電気二重層キャパシタセル10の引出電極12、13を下部から支持するようにして用いられる。そして、引出電極12、13が、櫛歯部144によって支持された状態で、引出電極同士の溶接工程が実行されることが想定さている。このような溶接工程において発生する熱が、引出電極から容器部11側に伝導することは好ましくないため、本実施形態では櫛歯部材140に熱伝導性に優れる銅などの金属材料を用いて、引出電極から容器部11側に溶接に伴う熱が伝導することを抑制している。ちなみに、引出電極12、13の材料にはアルミニウムが用いられている。したがい、引出電極12、13に用いるアルミニウムの融点は、櫛歯部材140に用いる銅の融点より低いので、引出電極12、13と櫛歯部材140とが溶着することがない。
【0027】
次に、キャパシタモジュール製造用治具100を構成する押圧固定部材170についてより詳細に説明する。図8は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100の押圧固定部材170の斜視図である。押圧固定部材170は、仮接続されている電気二重層キャパシタセル10の引出電極同士を上部から押圧し固定する部材であり、長手方向に延びる主幹部171と、この主幹部171から直角方向に枝分かれするようにして延びる枝部172とから構成されている。また、それぞれの枝部172には、挿通穴175が設けられており、この挿通穴175によって押圧固定部材170が櫛歯部材140のネジ穴145にネジ留めされるようになっている。また、枝部172と枝部172との間には、切り欠き部173が設けられており、押圧固定部材170が櫛歯部材140に取り付けられたときに、この切り欠き部173から仮組みされている引出電極が露出するような配置となっている。
【0028】
本実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100では、このような押圧固定部材170は、銅などの熱伝導性に優れる金属材料が用いられる。押圧固定部材170は、電気二重層キャパシタセル10の引出電極12、13を上部から押圧・固定するようにして用いられる。そして、引出電極12、13が、押圧固定部材170によって押圧・固定された状態で、引出電極同士の溶接工程が実行されることが想定さている。このような溶接工程において発生する熱が、引出電極から容器部11側に伝導することは好ましくないため、本実施形態では押圧固定部材17に熱伝導性に優れる銅などの金属材料を用いて、引出電極から容器部11側に溶接に伴う熱が伝導することを抑制している。
【0029】
次に、以上のように構成される本実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100によって、キャパシタモジュールを製造する手順について説明する。図9は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。まず、ベース部材110が、櫛歯部材140、押圧固定部材170などが装着されていない
状態で用意される。このベース部材110の基底部111には、仮組されている電気二重層キャパシタセル10が収納されているフレーム部材50が載置される。
【0030】
次に、順次8つの櫛歯部材140を装着していくが、図10に示すように、櫛歯部材140の櫛歯部144を交互に、仮接続されている引出電極同士の下部に挿通させるようにしてセットする。図10に示す例では、櫛歯部材140におけるa、c、eがふられた櫛歯部144が引出電極下部に挿通される。図11は、本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における櫛歯部材140の装着を説明する図であり、図10におけるC−C’断面を模式的に示す図である。図10(A)は櫛歯部材140が装着される前の仮組み状態の引出電極を示しており、図10(B)は櫛歯部材140が装着された後の仮組み状態の引出電極を示している。図10(B)に示すように、櫛歯部144のネジ穴145が、引出電極12、13のリベット穴14の位置と略一致するようにして、櫛歯部材140がセットされる。以上のような手法によってセットされた櫛歯部材140は、ベース部材110の天面部113に、取り付けネジ160によって固定される。
【0031】
次に、図12示すように押圧固定部材170によって、引出電極12、13の上部を押圧するようにして固定する。図12は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。図12に示すように押圧固定部材170を装着すると、押圧固定部材170の枝部172と枝部172との間の切り欠き部173からは、仮組みされている引出電極が露出するような状態とされる。
【0032】
図13は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における押圧固定部材170の装着を説明する図であり、図12におけるC−C’断面を模式的に示す図である。図13(A)は押圧固定部材170が装着される前の仮組み状態の引出電極を示しており、図13(B)は押圧固定部材170が装着された後の仮組み状態の引出電極を示している。図13(B)に示すように、枝部172と枝部172との間の切り欠き部173からは、引出電極12、13の一部分が露出するようにしてセットされる。また、押圧固定部材170の枝部172は引出電極12、13と接触している箇所で、引出電極12、13で押圧・固定するようになっている。以上のような手法によってセットされた押圧固定部材170は、櫛歯部材140に取り付けネジ190によって固定される。
【0033】
次に、上記のように仮組みされた複数個の電気二重層キャパシタセル10の引出電極部のリベット穴14には、図14に示すようにブラインドリベット20が挿通される。挿通されたブラインドリベット20は不図示の専用の治具を用いることで、重ね合わされた引出電極同士を固着することができる。図14は、ブラインドリベット20と電気二重層キャパシタセル10との関係を明瞭に示すために、本実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100から、ブラインドリベット20と電気二重層キャパシタセル10を抜き出して示した図である。
【0034】
ここで、ブラインドリベット20によって、正の引出電極12と負の引出電極13とを固着するときのブラインドリベット20の固着動作について説明する。図15はブラインドリベット20による引出電極の固着を説明する図である。図15は正の引出電極12、負の引出電極13とブラインドリベット20との模式的な断面を示す図であり、図15(A)はブラインドリベット20がリベット穴14に挿通された状態、図15(B)は正の引出電極12と負の引出電極13とが固着された状態をそれぞれ示している。
【0035】
ブラインドリベット20は、接合対象を固着するリベット本体部30とマンドレル40とから構成されている。リベット本体部30には円筒状のスリーブ部31と、このスリーブ部31の軸径より大径なフランジ部32とから構成されており、スリーブ部31にマンドレル40が貫通するよう配されている。マンドレル40はシャフト部41と、シャフト
部41の先端に配されたヘッド部42とを有している。ブラインドリベット20が正の引出電極12及び負の引出電極13それぞれのリベット穴14に挿通された後に、専用の治具にてマンドレル40を上昇させることで、リベット本体部30におけるスリーブ部31が変形してバルジ部33を構成すると共に、シャフト部41が引っ張り破壊されて図15(B)のような固着を行うことができる。本発明の電気二重層キャパシタモジュールの製造方法では、このようなブラインドリベット20が用いられているので、引出電極の一方側からのみの固着作業で済み、作業性を向上させることが可能となる。ブラインドリベット20によって、それぞれの電気二重層キャパシタセル10の引出電極が固着されると、図16に示すような状態となる。上記のようなブラインドリベット20を用い、溶接工程の前段で引出電極同士を固着することは、引出電極同士の接平面Pを密着させることとなり、これによって溶接の仕上がりが向上し、接続部での強度が向上し、電気抵抗が抑制される。
【0036】
図16は、電気二重層キャパシタセル10が本実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100に完全にセットされて、さらにブラインドリベット20が施された状態を示している。次に引出電極を溶接する工程を実施する。YAGレーザー溶接では重ね合わせられた引出電極部の上側の引出電極に、片側からYAGレーザーを照射し、照射部を溶融させることによって重ね合わされた引出電極同士を接続する。このようなYAGレーザー溶接による溶接パターンについて説明する。図17は本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における溶接パターンを説明する図である。図17は溶接パターンを説明するために本実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100から、電気二重層キャパシタセル10を抜き出して示した図である。図17に示す例は、引出電極部におけるリベット本体部30の両側に、YAGレーザーによってジグザグの照射を2回繰り返したパターンである。引出電極部におけるリベット本体部30近傍に施すYAGレーザー照射については、ジグザグの照射を2回繰り返すパターンのほか任意のパターンとすることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、押圧固定部材170がセットされるときには、櫛歯部材140の櫛歯部144間のスリットがほぼ目隠しされた状態となるので、YAGレーザー時に発生するスパッタが電気二重層キャパシタセル10の容器部11に落ちることがほとんどなく、当該スパッタによって容器部11を破損することがない。
【0038】
以上、本発明に係るキャパシタモジュール製造用治具及びそれを用いたキャパシタモジュールの製造方法によれば、キャパシタセルの引出電極12、13同士の接続部の機械的強度が強固であり、かつ電気抵抗が低いキャパシタモジュールを簡便にかつ効率的に製造することが可能となる。
【0039】
次に本発明の他の実施形態について説明する。図18は本発明の他の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100’の斜視図であり、図19は本発明の他の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。図18は先の実施形態における図5に相当するものであり、図19は先の実施形態における図16に相当するものである。
【0040】
本実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100’が、先の実施形態と異なる点は押圧固定部材の形状であり、その他は同様であるので説明を省略する。先の実施形態における押圧固定部材170は、長手方向に延びる主幹部171と、この主幹部171から直角方向に枝分かれするようにして延びる枝部172とから構成される一つの部材であったが、本実施形態で用いられる押圧固定部材180は、プレート状の複数の部材であり、その中心に取り付けネジ190を挿通するための挿通穴(不図示)が設けられるようになっている。
【0041】
先の実施形態では、製造対象となるキャパシタモジュールは、キャパシタモジュールを構成する電気二重層キャパシタセル10の数が既定であるものであったが、本実施形態では、キャパシタモジュールを構成する電気二重層キャパシタセル10の数は任意のものを製造対象とすることができるため、製造するキャパシタモジュールの仕様変更などに対してよりフレキシブルに対応することが可能となる。
【0042】
図20は本発明に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法によって製造されたモジュールの斜視図である。図20はレーザー溶接工程後に、押圧固定部材170及び櫛歯部材140を取り外し、ベース部材110から取り出した電気二重層キャパシタモジュールを示している。このように、本発明に係るキャパシタモジュール製造用治具及びそれを用いたキャパシタモジュールの製造方法によれば、キャパシタセルの引出電極同士の接続部の機械的強度が強固であり、かつ電気抵抗が低いキャパシタモジュールを簡便にかつ効率的に製造することが可能となる。
【0043】
なお、本実施形態でも、先の実施形態と同様の効果を享受することができるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
10・・・電気二重層キャパシタセル、11・・・容器部、12・・・(正の)引出電極、13・・・(負の)引出電極、14・・・リベット穴(ボルト穴)、20・・・ブラインドリベット、30・・・リベット本体部、31・・・スリーブ部、32・・・フランジ部、33・・・バルジ部、40・・・マンドレル、41・・・シャフト部、42・・・ヘッド部、50・・・フレーム部材、110・・・ベース部材、111・・・基底部、112・・・側壁部、113・・・天面部、115・・・取り付けネジ穴、140・・・櫛歯部材、141・・・取り付け基部、142・・・挿通穴、144・・・櫛歯部、145・・・ネジ穴、160・・・取り付けネジ、170・・・押圧固定部材、171・・・主幹部、172・・・枝部、173・・・切り欠き部、175・・・挿通穴、180・・・(プレート状)押圧固定部材、190・・・取り付けネジ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電気二重層キャパシタセルを直列接続して構成されるキャパシタモジュールを製造するために用いられるキャパシタモジュール製造用治具及びそれを用いたキャパシタモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタにおいては、一般に円筒型などその他の形態に比べて積層型はエネルギー密度が高い。積層型の電気二重層キャパシタセルは、分極性電極をセパレータともに積層した積層体に引き出し電極を取り付け、さらに積層体に電解液を含浸させた後、ラミネートフィルムに入れられ、ラミネートの開口部から引き出し電極が引き出された状態で密封されてなる。
【0003】
非特許文献1に記載されているように、電気二重層キャパシタは耐電圧が低いために、複数のキャパシタセルを直列接続してキャパシタモジュールを構成して利用される。このように積層型のキャパシタセルを直列接続して利用する際には、充放電に伴いキャパシタセルが積層面に垂直な方向に膨張収縮するので適当な加圧機構を設ける(特許文献1)。また、特許文献2には、その図15に関連して、複数の電気二重層キャパシタセルの引出電極同士が直列接続されて構成されたキャパシタモジュールが開示されている。
【非特許文献1】岡村廸夫著「電気二重層キャパシタと蓄電システム」日刊工業新聞社発行、2005年9月30日第3版第1刷、第8頁〜第9頁、第150頁〜第157頁
【特許文献1】特開2005−93492号公報
【特許文献2】特開2008−153282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載のように複数の電気二重層キャパシタセルの引出電極同士を直列接続してキャパシタモジュールを製造するにあたっては、引出電極同士の接続部では、ある程度の機械的強度を確保しつつ、かつ当該接続部の電気抵抗を抑制するように接続する必要がある。しかしながら、特許文献2に記載の発明では、このような接続部を効率よく簡便に製造するための治具や方法が開示されておらず、問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであって、請求項1に係る発明は、引出電極同士を仮接続した複数個のキャパシタセルを搭載するベース部材と、仮接続した引出電極同士を下部から支持する複数の櫛歯を有する櫛歯部材と、仮接続した引出電極同士を上部から押圧し固定する押圧固定部材と、からなることを特徴とするキャパシタモジュール製造用治具である。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載のキャパシタモジュール製造用治具において、前記ベース部材には側壁部が設けられており、前記側壁部の天面部に前記櫛歯部材が脱着可能とされることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載のキャパシタモジュール製造用治具において、前記押圧固定部材には、前記仮接続した引出電極同士の上部の一部を露出する切り欠き部が設けられることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のキャパシタモジュール製造用治具において、前記櫛歯部材の前記櫛歯にはネジ穴が設けられることを特徴とする。
【0009】
また、請求項5に係る発明は、請求項4に記載のキャパシタモジュール製造用治具において、前記押圧固定部材の装着は、取り付けネジによって前記ネジ穴を利用して行われることを特徴とする。
【0010】
また、請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のキャパシタモジュール製造用治具を用いたキャパシタモジュールの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るキャパシタモジュール製造用治具及びそれを用いたキャパシタモジュールの製造方法によれば、キャパシタセルの引出電極同士の接続部の機械的強度が強固であり、かつ電気抵抗が低いキャパシタモジュールを簡便にかつ効率的に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具で扱う電気二重層キャパシタセル10の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100の斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100のベース部材110の斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100の櫛歯部材140の斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100の押圧固定部材170の斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図10】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図11】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における櫛歯部材140の装着を説明する図である。
【図12】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図13】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における押圧固定部材170の装着を説明する図である。
【図14】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図15】ブラインドリベット20による引出電極の固着を説明する図である。
【図16】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図17】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における溶接パターンを説明する図である。
【図18】本発明の他の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100’の斜視図である。
【図19】本発明の他の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図20】本発明の電気二重層キャパシタモジュールの製造方法によって製造されたモジュールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具で扱う電気二重層キャパシタセル10の斜視図である。この電気二重層キャパシタセル10は積層型の電気二重層キャパシタセルである。より具体的には、キャパシタ本体については、正の電極体(正極体)と負の電極体(負極体)をこれらの間にセパレータを介在させつつ交互に重ねることにより所定の積層体に組成される。正極体および負極体は、集電極とその両面に形成される分極性電極(活性炭電極)とから平板状に構成される。これら集電極は、矩形状の金属箔(アルミニウム箔)からなり、矩形平面の一辺に片側へ寄せて帯状の導電部(リード)が一体形成される。導電部は同極同士が集束され接合され、正の引出電極12、負の引出電極13とされる。
【0014】
そして、金属層を含む積層構造の樹脂フィルム(たとえば、アルミラミネート)から形成される容器部11の周縁において、正の引出電極12、負の引出電極13の一部が引き出され、一辺を除く三辺が熱溶着(ヒートシール)される。より具体的には、容器部11は正の引出電極12、負の引出電極13が突き出る一辺を開口可能とされており、そして、その開口部から内部に電解液を注入し、電解液の含浸処理などが終わると、真空ポンプにより空気や水分を除去した状態において、残りの一辺が熱溶着(ヒートシール)され、電気二重層キャパシタセル10が製作される。
【0015】
概略、以上のようにして構成される電気二重層キャパシタセル10は、耐電圧が低いために、複数個を直列接続した電気二重層キャパシタモジュールとして利用される。このとき、一の電気二重層キャパシタセル10の正の引出電極12と、他の電気二重層キャパシタセル10の負の引出電極13とを接続する必要があるが、本発明のキャパシタモジュール製造用治具では特にこの接続を簡便にかつ効率よく行い得る特徴点を有するものであるので、これについて以下詳細に説明する。
【0016】
電気二重層キャパシタセル10同士を接続する際には、正の引出電極12はX−X’線により切断しA−A’線で90°折り曲げ加工を施し、また、負の引出電極13はY−Y’線により切断しB−B’線で90°折り曲げ加工を施す。このとき、正の引出電極12と、負の引出電極13とは互いに逆方向に折り曲げ加工がなされ、図2に示すように引出電極はL字状とされる。また、正の引出電極12及び負の引出電極13には、リベットを挿通するためのリベット穴14を設ける加工を施す。なお、引出電極の切断工程、引出電極の折り曲げ工程、引出電極にリベット穴14を穿設する工程の順序は任意とすることが可能である。
【0017】
ここで、引出電極の折り曲げ工程では、図2(A)及び図2(B)の2パターンの電気二重層キャパシタセル10を用意しておき、セル同士を接続するに際しては、図3に示すように、図2(A)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→図2(B)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→図2(A)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→図2(B)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→・・・の順序とする。電気二重層キャパシタモジュールを構成する際に接続する電気二重層キャパシタセル10の数は任意である。引出電極を接続する前段としては、接続する電気二重層キャパシタセル1
0をまとめて仮組するが、このとき隣り合う電気二重層キャパシタセル10の引出電極に設けられたリベット穴14の位置が一致するようにして引出電極を重ね合わせて仮接続する。
【0018】
図4は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図であり、複数の電気二重層キャパシタセル10をまとめて仮組し、フレーム部材50に収納した様子を示している。なお、図4には示されていないが、フレーム部材50内には、複数の電気二重層キャパシタセル10を積層方向に押圧する付勢手段などが設けられている。また、フレーム部材50は最終製品であるキャパシタモジュールの一部を構成するものである。
【0019】
本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具は、以上のようにフレーム部材50内に仮組みされた複数の電気二重層キャパシタセル10の引出電極同士の接続を行うためのものであり、以下、本発明のキャパシタモジュール製造用治具についてより詳細に説明する。図5は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100の斜視図である。図5において、110はベース部材、140は櫛歯部材、160は取り付けネジ、170は押圧固定部材、190は取り付けネジをそれぞれ示している。図5は被製造物を除いたキャパシタモジュール製造用治具100のみを図示するものであり、実際のキャパシタモジュールの製造においては、先のフレーム部材50に収容された複数の電気二重層キャパシタセル10を組み付けつつ、このようなキャパシタモジュール製造用治具100に組み付けつつ利用される。
【0020】
以下、キャパシタモジュール製造用治具100を構成する各部位についてより詳細に説明する。図6は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100のベース部材110の斜視図である。
【0021】
ベース部材110には、フレーム部材50に収容された複数の電気二重層キャパシタセル10を載置するための基底部111が底面部に設けられており、この基底部111の両側部には、側壁部112が基底部111から立設するようにして設けられている。それぞれの側壁部112の天面部113には、櫛歯部材140をネジ留めするために用いられる取り付けネジ穴115が設けられており、このような取り付けネジ穴115によって、櫛歯部材140は天面部113に対して脱着可能とされている。本実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100では、両側の天面部113で合計8つの櫛歯部材140がそれぞれ2本の取り付けネジ160によって天面部113に取り付けられるようになっている。
【0022】
本実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100では、このベース部材110を構成するためにアルミニウムが主な材料として用いられている。これはキャパシタモジュール製造用治具100全体を軽量に構成し、当該治具を載置する自動溶接機(不図示)などの負荷を減らすためである。なお、ベース部材110に用いる材料としてはアルミニウムに限定されることなく任意の金属材料を用いることが可能である。
【0023】
次に、キャパシタモジュール製造用治具100を構成する櫛歯部材140についてより詳細に説明する。図7は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100の櫛歯部材140の斜視図である。
【0024】
櫛歯部材140は、天面部113に直接搭載される取り付け基部141と、この取り付け基部141から延在する複数(本実施形態では5本)の櫛歯部144とから構成されている。それぞれの櫛歯部144の間にはわずかな間隔のスリットが設けられている。このスリットの間隔は、電気二重層キャパシタセル10の引出電極12、13を通すことがで
きる程度のものである。取り付け基部141には、櫛歯部材140を天面部113にネジ留めする際に用いられる取り付けネジ160を挿通するための挿通穴142が設けられている。
【0025】
また、それぞれの櫛歯部144には、ネジ穴145が設けられている。このネジ穴145は押圧固定部材170をネジ留めする際に用いられる。また、櫛歯部144のネジ穴14は電気二重層キャパシタセル10の引出電極同士をリベット留めする際にも余裕空間として用いられる。このようなリベット留めにも用いられるために、フレーム部材50に収納した電気二重層キャパシタセル10を、櫛歯部材140によって本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100に取り付けたときには、電気二重層キャパシタセル10の引出電極12及び引出電極13のリベット穴14と、ネジ穴14とは略一致するようなレイアウトとなっている。
【0026】
本実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100では、上記の櫛歯部材140は、銅などの熱伝導性に優れる金属材料が用いられる。櫛歯部材140の櫛歯部144は、電気二重層キャパシタセル10の引出電極12、13を下部から支持するようにして用いられる。そして、引出電極12、13が、櫛歯部144によって支持された状態で、引出電極同士の溶接工程が実行されることが想定さている。このような溶接工程において発生する熱が、引出電極から容器部11側に伝導することは好ましくないため、本実施形態では櫛歯部材140に熱伝導性に優れる銅などの金属材料を用いて、引出電極から容器部11側に溶接に伴う熱が伝導することを抑制している。ちなみに、引出電極12、13の材料にはアルミニウムが用いられている。したがい、引出電極12、13に用いるアルミニウムの融点は、櫛歯部材140に用いる銅の融点より低いので、引出電極12、13と櫛歯部材140とが溶着することがない。
【0027】
次に、キャパシタモジュール製造用治具100を構成する押圧固定部材170についてより詳細に説明する。図8は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100の押圧固定部材170の斜視図である。押圧固定部材170は、仮接続されている電気二重層キャパシタセル10の引出電極同士を上部から押圧し固定する部材であり、長手方向に延びる主幹部171と、この主幹部171から直角方向に枝分かれするようにして延びる枝部172とから構成されている。また、それぞれの枝部172には、挿通穴175が設けられており、この挿通穴175によって押圧固定部材170が櫛歯部材140のネジ穴145にネジ留めされるようになっている。また、枝部172と枝部172との間には、切り欠き部173が設けられており、押圧固定部材170が櫛歯部材140に取り付けられたときに、この切り欠き部173から仮組みされている引出電極が露出するような配置となっている。
【0028】
本実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100では、このような押圧固定部材170は、銅などの熱伝導性に優れる金属材料が用いられる。押圧固定部材170は、電気二重層キャパシタセル10の引出電極12、13を上部から押圧・固定するようにして用いられる。そして、引出電極12、13が、押圧固定部材170によって押圧・固定された状態で、引出電極同士の溶接工程が実行されることが想定さている。このような溶接工程において発生する熱が、引出電極から容器部11側に伝導することは好ましくないため、本実施形態では押圧固定部材17に熱伝導性に優れる銅などの金属材料を用いて、引出電極から容器部11側に溶接に伴う熱が伝導することを抑制している。
【0029】
次に、以上のように構成される本実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100によって、キャパシタモジュールを製造する手順について説明する。図9は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。まず、ベース部材110が、櫛歯部材140、押圧固定部材170などが装着されていない
状態で用意される。このベース部材110の基底部111には、仮組されている電気二重層キャパシタセル10が収納されているフレーム部材50が載置される。
【0030】
次に、順次8つの櫛歯部材140を装着していくが、図10に示すように、櫛歯部材140の櫛歯部144を交互に、仮接続されている引出電極同士の下部に挿通させるようにしてセットする。図10に示す例では、櫛歯部材140におけるa、c、eがふられた櫛歯部144が引出電極下部に挿通される。図11は、本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における櫛歯部材140の装着を説明する図であり、図10におけるC−C’断面を模式的に示す図である。図10(A)は櫛歯部材140が装着される前の仮組み状態の引出電極を示しており、図10(B)は櫛歯部材140が装着された後の仮組み状態の引出電極を示している。図10(B)に示すように、櫛歯部144のネジ穴145が、引出電極12、13のリベット穴14の位置と略一致するようにして、櫛歯部材140がセットされる。以上のような手法によってセットされた櫛歯部材140は、ベース部材110の天面部113に、取り付けネジ160によって固定される。
【0031】
次に、図12示すように押圧固定部材170によって、引出電極12、13の上部を押圧するようにして固定する。図12は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。図12に示すように押圧固定部材170を装着すると、押圧固定部材170の枝部172と枝部172との間の切り欠き部173からは、仮組みされている引出電極が露出するような状態とされる。
【0032】
図13は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における押圧固定部材170の装着を説明する図であり、図12におけるC−C’断面を模式的に示す図である。図13(A)は押圧固定部材170が装着される前の仮組み状態の引出電極を示しており、図13(B)は押圧固定部材170が装着された後の仮組み状態の引出電極を示している。図13(B)に示すように、枝部172と枝部172との間の切り欠き部173からは、引出電極12、13の一部分が露出するようにしてセットされる。また、押圧固定部材170の枝部172は引出電極12、13と接触している箇所で、引出電極12、13で押圧・固定するようになっている。以上のような手法によってセットされた押圧固定部材170は、櫛歯部材140に取り付けネジ190によって固定される。
【0033】
次に、上記のように仮組みされた複数個の電気二重層キャパシタセル10の引出電極部のリベット穴14には、図14に示すようにブラインドリベット20が挿通される。挿通されたブラインドリベット20は不図示の専用の治具を用いることで、重ね合わされた引出電極同士を固着することができる。図14は、ブラインドリベット20と電気二重層キャパシタセル10との関係を明瞭に示すために、本実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100から、ブラインドリベット20と電気二重層キャパシタセル10を抜き出して示した図である。
【0034】
ここで、ブラインドリベット20によって、正の引出電極12と負の引出電極13とを固着するときのブラインドリベット20の固着動作について説明する。図15はブラインドリベット20による引出電極の固着を説明する図である。図15は正の引出電極12、負の引出電極13とブラインドリベット20との模式的な断面を示す図であり、図15(A)はブラインドリベット20がリベット穴14に挿通された状態、図15(B)は正の引出電極12と負の引出電極13とが固着された状態をそれぞれ示している。
【0035】
ブラインドリベット20は、接合対象を固着するリベット本体部30とマンドレル40とから構成されている。リベット本体部30には円筒状のスリーブ部31と、このスリーブ部31の軸径より大径なフランジ部32とから構成されており、スリーブ部31にマンドレル40が貫通するよう配されている。マンドレル40はシャフト部41と、シャフト
部41の先端に配されたヘッド部42とを有している。ブラインドリベット20が正の引出電極12及び負の引出電極13それぞれのリベット穴14に挿通された後に、専用の治具にてマンドレル40を上昇させることで、リベット本体部30におけるスリーブ部31が変形してバルジ部33を構成すると共に、シャフト部41が引っ張り破壊されて図15(B)のような固着を行うことができる。本発明の電気二重層キャパシタモジュールの製造方法では、このようなブラインドリベット20が用いられているので、引出電極の一方側からのみの固着作業で済み、作業性を向上させることが可能となる。ブラインドリベット20によって、それぞれの電気二重層キャパシタセル10の引出電極が固着されると、図16に示すような状態となる。上記のようなブラインドリベット20を用い、溶接工程の前段で引出電極同士を固着することは、引出電極同士の接平面Pを密着させることとなり、これによって溶接の仕上がりが向上し、接続部での強度が向上し、電気抵抗が抑制される。
【0036】
図16は、電気二重層キャパシタセル10が本実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100に完全にセットされて、さらにブラインドリベット20が施された状態を示している。次に引出電極を溶接する工程を実施する。YAGレーザー溶接では重ね合わせられた引出電極部の上側の引出電極に、片側からYAGレーザーを照射し、照射部を溶融させることによって重ね合わされた引出電極同士を接続する。このようなYAGレーザー溶接による溶接パターンについて説明する。図17は本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における溶接パターンを説明する図である。図17は溶接パターンを説明するために本実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100から、電気二重層キャパシタセル10を抜き出して示した図である。図17に示す例は、引出電極部におけるリベット本体部30の両側に、YAGレーザーによってジグザグの照射を2回繰り返したパターンである。引出電極部におけるリベット本体部30近傍に施すYAGレーザー照射については、ジグザグの照射を2回繰り返すパターンのほか任意のパターンとすることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、押圧固定部材170がセットされるときには、櫛歯部材140の櫛歯部144間のスリットがほぼ目隠しされた状態となるので、YAGレーザー時に発生するスパッタが電気二重層キャパシタセル10の容器部11に落ちることがほとんどなく、当該スパッタによって容器部11を破損することがない。
【0038】
以上、本発明に係るキャパシタモジュール製造用治具及びそれを用いたキャパシタモジュールの製造方法によれば、キャパシタセルの引出電極12、13同士の接続部の機械的強度が強固であり、かつ電気抵抗が低いキャパシタモジュールを簡便にかつ効率的に製造することが可能となる。
【0039】
次に本発明の他の実施形態について説明する。図18は本発明の他の実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100’の斜視図であり、図19は本発明の他の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。図18は先の実施形態における図5に相当するものであり、図19は先の実施形態における図16に相当するものである。
【0040】
本実施形態に係るキャパシタモジュール製造用治具100’が、先の実施形態と異なる点は押圧固定部材の形状であり、その他は同様であるので説明を省略する。先の実施形態における押圧固定部材170は、長手方向に延びる主幹部171と、この主幹部171から直角方向に枝分かれするようにして延びる枝部172とから構成される一つの部材であったが、本実施形態で用いられる押圧固定部材180は、プレート状の複数の部材であり、その中心に取り付けネジ190を挿通するための挿通穴(不図示)が設けられるようになっている。
【0041】
先の実施形態では、製造対象となるキャパシタモジュールは、キャパシタモジュールを構成する電気二重層キャパシタセル10の数が既定であるものであったが、本実施形態では、キャパシタモジュールを構成する電気二重層キャパシタセル10の数は任意のものを製造対象とすることができるため、製造するキャパシタモジュールの仕様変更などに対してよりフレキシブルに対応することが可能となる。
【0042】
図20は本発明に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法によって製造されたモジュールの斜視図である。図20はレーザー溶接工程後に、押圧固定部材170及び櫛歯部材140を取り外し、ベース部材110から取り出した電気二重層キャパシタモジュールを示している。このように、本発明に係るキャパシタモジュール製造用治具及びそれを用いたキャパシタモジュールの製造方法によれば、キャパシタセルの引出電極同士の接続部の機械的強度が強固であり、かつ電気抵抗が低いキャパシタモジュールを簡便にかつ効率的に製造することが可能となる。
【0043】
なお、本実施形態でも、先の実施形態と同様の効果を享受することができるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
10・・・電気二重層キャパシタセル、11・・・容器部、12・・・(正の)引出電極、13・・・(負の)引出電極、14・・・リベット穴(ボルト穴)、20・・・ブラインドリベット、30・・・リベット本体部、31・・・スリーブ部、32・・・フランジ部、33・・・バルジ部、40・・・マンドレル、41・・・シャフト部、42・・・ヘッド部、50・・・フレーム部材、110・・・ベース部材、111・・・基底部、112・・・側壁部、113・・・天面部、115・・・取り付けネジ穴、140・・・櫛歯部材、141・・・取り付け基部、142・・・挿通穴、144・・・櫛歯部、145・・・ネジ穴、160・・・取り付けネジ、170・・・押圧固定部材、171・・・主幹部、172・・・枝部、173・・・切り欠き部、175・・・挿通穴、180・・・(プレート状)押圧固定部材、190・・・取り付けネジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引出電極同士を仮接続した複数個のキャパシタセルを搭載するベース部材と、
仮接続した引出電極同士を下部から支持する複数の櫛歯を有する櫛歯部材と、
仮接続した引出電極同士を上部から押圧し固定する押圧固定部材と、からなることを特徴とするキャパシタモジュール製造用治具。
【請求項2】
前記ベース部材には側壁部が設けられており、前記側壁部の天面部に前記櫛歯部材が脱着可能とされることを特徴とする請求項1に記載のキャパシタモジュール製造用治具。
【請求項3】
前記押圧固定部材には、前記仮接続した引出電極同士の上部の一部を露出する切り欠き部が設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のキャパシタモジュール製造用治具。
【請求項4】
前記櫛歯部材の前記櫛歯にはネジ穴が設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のキャパシタモジュール製造用治具。
【請求項5】
前記押圧固定部材の装着は、取り付けネジによって前記ネジ穴を利用して行われることを特徴とする請求項4に記載のキャパシタモジュール製造用治具。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のキャパシタモジュール製造用治具を用いたキャパシタモジュールの製造方法。
【請求項1】
引出電極同士を仮接続した複数個のキャパシタセルを搭載するベース部材と、
仮接続した引出電極同士を下部から支持する複数の櫛歯を有する櫛歯部材と、
仮接続した引出電極同士を上部から押圧し固定する押圧固定部材と、からなることを特徴とするキャパシタモジュール製造用治具。
【請求項2】
前記ベース部材には側壁部が設けられており、前記側壁部の天面部に前記櫛歯部材が脱着可能とされることを特徴とする請求項1に記載のキャパシタモジュール製造用治具。
【請求項3】
前記押圧固定部材には、前記仮接続した引出電極同士の上部の一部を露出する切り欠き部が設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のキャパシタモジュール製造用治具。
【請求項4】
前記櫛歯部材の前記櫛歯にはネジ穴が設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のキャパシタモジュール製造用治具。
【請求項5】
前記押圧固定部材の装着は、取り付けネジによって前記ネジ穴を利用して行われることを特徴とする請求項4に記載のキャパシタモジュール製造用治具。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のキャパシタモジュール製造用治具を用いたキャパシタモジュールの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−23674(P2011−23674A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169690(P2009−169690)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(393013560)株式会社パワーシステム (127)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(393013560)株式会社パワーシステム (127)
【Fターム(参考)】
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