説明

キャパシタ及びその製造方法

【課題】電極が金属微粒子から形成され、従来よりも緻密な構造を有する金属電極であり、高い静電容量を有するキャパシタを提供する。
【解決手段】少なくとも対向する金属電極、高分子電解質、及び、電解液を含むキャパシタであって、前記金属電極が、前記高分子電解質と接し、前記金属電極を構成する領域が、平均粒子径が1μm以下の金属微粒子からなり、前記高分子電解質が、イオン交換樹脂であることを特徴とするキャパシタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも対向する金属電極、高分子電解質、及び、電解液を含有するキャパシタ、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタは、コンデンサまたは蓄電器(キャパシタ)と呼ばれ、電極間に電荷を貯える装置あるいは回路素子である。キャパシタは、近年、パソコンや携帯端末等のメモリのバックアップ用電源としての用途を初め、瞬時の停電対応用電源、または太陽電池と組み合わせたソーラー発電エネルギー貯蔵システム等の用途に用いることができるために注目されている。
【0003】
キャパシタに用いられる電極には、主に、金属電極と炭素電極が存在する。炭素電極は、活性炭等の炭素材料を用いた電極であり、比表面積が大きいため、静電容量の大容量化に適している。しかし、粉末化した炭素材料を混練して使用するため、粉体を取り扱う必要があり、取り扱いが難しく、作業性に欠ける。
【0004】
また、電極が炭素材料から形成される場合、金属板等の集電体を必要とすることとなる。また、集電体を用いないキャパシタとするためには、ボタン型とするなど形状が限定されてしまい、キャパシタ形状の設計の自由度が減り、各種用途により所望の形状とすることができない問題が生じる。
【0005】
さらに、炭素材料からなる電極ごとに集電体を用いた場合には、集電体の厚さの分だけキャパシタが厚くなり、薄型化することができない問題が生じる。そのため、キャパシタに用いられる電極には、集電体を必要としない、金属電極を用いることが好ましい。
【0006】
前記金属電極を用いたキャパシタ(コンデンサ)には、高分子薄膜上に金属電極を形成した高分子フィルムコンデンサが開示されている(例えば、特許文献1参照)。前記高分子フィルムコンデンサは、面積1cmにおいて、厚さ0.35〜0.41μmの静電容量が、0.015〜0.02μFであり、厚さ0.8〜1.8μmの静電容量が、25〜40μFであり、これらの静電容量では、実用化するには、十分ではなく、更なる静電容量の向上が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−8153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、電極が、金属微粒子からなり、従来よりも緻密な構造を有する金属電極であり、高い静電容量を有するキャパシタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の目的を達成するため、蓄電素子の構成について鋭意検討した結果、下記のキャパシタを用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のキャパシタは、少なくとも対向する金属電極、高分子電解質、及び、電解液を含むキャパシタであって、前記金属電極が、前記高分子電解質と接し、前記金属電極を構成する領域が、平均粒子径が1μm以下の金属微粒子からなり、前記高分子電解質が、イオン交換樹脂を含有するものであることを特徴とする。
【0011】
本発明のキャパシタは、前記金属微粒子が、靄状、雲状、霞状、霧状、及び、綿(ワタ)状からなる群より選択される少なくとも1種の形状を形成していることが好ましい。
【0012】
本発明のキャパシタは前記電解液が、電解質塩を含み、前記電解質塩が、リチウム、セシウム、及び、ルビジウムからなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ金属のハロゲン化物、前記アルカリ金属のクラウンエーテルの包摂体、及び、前記アルカリ金属の酢酸塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
本発明のキャパシタは、前記電解液が、電解質塩を含み、前記電解質塩が、炭素数1〜4のアルキル基を有する4級アンモニウムの、ハロゲン化塩、4フッ化ホウ素塩、及び、酢酸塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
本発明のキャパシタは、前記電解液が、分子量50〜400のエーテル基含有化合物を含有することが好ましい。
【0015】
本発明のキャパシタは、前記電解液が、金属イオン及び/又は4級アンモニウムイオンで置換されたフッ素系イオン交換樹脂を含有し、前記金属イオンが、リチウムイオン、セシウムイオン、及び、ルビジウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種であり、前記フッ素系イオン交換樹脂が、前記電解液中で溶解していることが好ましい。
【0016】
本発明のキャパシタは、前記電解液が、金属イオン及び/又は4級アンモニウムイオンで置換された親水性高分子電解質を含有し、前記金属イオンが、リチウムイオン、セシウムイオン、及び、ルビジウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種であり、前記親水性高分子電解質が、ヒアルロン酸及び/又はフコイダンであることが好ましい。
【0017】
本発明のキャパシタは、前記高分子電解質の外側に向かって、前記金属電極を構成する金属微粒子が、リッチな領域を有し、前記高分子電解質の中心に向かって、前記高分子電解質が、リッチな領域を有することが好ましい。
【0018】
本発明のキャパシタは、前記金属電極と、前記高分子電解質との界面の2電極のサイクリックボルタムメトリー法による静電容量が、5mF/cm以上であることが好ましい。
【0019】
また、本発明のキャパシタの製造方法は、前記キャパシタの製造方法であって、無電解メッキ方法により、高分子電解質(イオン交換樹脂)上に金属電極を形成するものであり、前記イオン交換樹脂を、少なくともアルコール類を含む溶媒により膨潤させる前処理工程と、前記イオン交換樹脂に金属錯体を吸着させる吸着工程と、前記金属錯体が吸着したイオン交換樹脂に還元剤溶液を接触させる還元工程と、を含み、前記還元工程が、複数濃度の還元剤溶液を用いることが好ましい。
【0020】
本発明のキャパシタの製造方法は、前記還元工程が、低濃度の還元剤溶液から段階的に高濃度の還元剤溶液を接触させるものであり、前記複数濃度の還元剤溶液の濃度が、0.005〜10重量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のキャパシタは、静電容量が大きいため、例えば、瞬時の停電の際におけるバックアップ用電源などとして広く用いることができる。しかも、金属電極を備えているので、集電板を用いる必要がなく、部品の数も少なくてすみ、薄型化及び小型軽量化が容易であり、有用である。また、本発明のキャパシタの製造方法は、従来の金属電極を備えたキャパシタに比べて、静電容量が大きなキャパシタを得ることができる。さらに、本発明のキャパシタの製造方法において、無電解メッキ方法の前処理工程として、膨潤工程を実施し、更に、還元工程として、複数濃度の還元剤溶液を用いて、金属錯体が吸着した高分子電解質に還元剤溶液を接触・還元(メッキ)することにより、平均粒子径の非常に小さな金属微粒子からなる緻密な構造を有する金属電極を形成することができ、この緻密な構造を有することにより、従来品にはない大きな静電容量を示すキャパシタを得ることができ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】シート状にメッキして金属電極としたキャパシタの厚さ方向の断面について、走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影された電子顕微鏡写真の図(×500倍)。
【図2】シート状にメッキして金属電極としたキャパシタの厚さ方向の断面について、走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影された電子顕微鏡写真の図(×3000倍)。
【図3】シート状にメッキして金属電極としたキャパシタの厚さ方向の断面について、走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影された電子顕微鏡写真の図(×5000倍)。
【図4】円筒状にメッキして金属電極としたキャパシタの厚さ方向の断面について、走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影された電子顕微鏡写真の図(×2000倍)。
【図5】電解質塩の違いによる充放電特性の比較の図。
【図6】4層積層における充放電特性の図。
【図7】2層積層における充放電特性の図。
【図8】単層における充放電特性。
【図9】従来のシート状にメッキして金属電極としたキャパシタの厚さ方向の断面について、走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影された電子顕微鏡写真の図(×300倍)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<キャパシタの製造方法>
本発明のキャパシタの製造方法は、無電解メッキ方法により、高分子電解質(イオン交換樹脂)上に金属電極を形成するものであり、(i)前記高分子電解質(イオン交換樹脂)を、少なくともアルコール類を含む溶媒により膨潤させる前処理工程と、(ii)無電解メッキ方法である、前記イオン交換樹脂に金属錯体を吸着させる吸着工程と、前記金属錯体が吸着したイオン交換樹脂に還元剤溶液を接触させる還元工程と、を含む。以下に、本発明のキャパシタの製造方法について、詳細に説明する。
【0024】
(高分子電解質)
前記高分子電解質としては、金属錯体を十分に吸着させるために、イオン交換樹脂を用いるが、好ましくは、フッ素系イオン交換樹脂や、炭素系イオン交換樹脂などを用いることができ、より好ましくは、フッ素系イオン交換樹脂である。前記フッ素系イオン交換樹脂は、特に限定されるものではなく、公知の樹脂を用いることができ、スルホン酸基や、カルボキシル基などの親水性官能基を導入したものを用いることができる。前記フッ素系イオン交換樹脂の具体例としては、パーフルオロカルボン酸樹脂、パーフルオロスルホン酸樹脂を用いることができ、例えばNafion樹脂(パーフルオロスルホン酸樹脂、DuPont社製)、フレミオン(パーフルオロカルボン酸樹脂またはパーフルオロスルホン酸樹脂、旭硝子社製)を用いることができる。前記イオン交換樹脂は、電解質塩のイオン種を選択する自由度が大きく、用途や特性に応じた組み合わせの幅を広げることができることから、陽イオン交換樹脂であることが好ましい。なお、前記高分子電解質は、無電解メッキ方法により得られるキャパシタとして形状に適した形状の高分子電解質成形品を用いることができ、膜状、板(シート)状、筒(円筒)状、柱状や管状等の所望の形状を用いることができる。
【0025】
本発明のキャパシタに用いられる前記高分子電解質は、イオン交換樹脂を含むものであり、特に限定されないが、たとえば、前記イオン交換樹脂がフッ素系のイオン交換樹脂であるパーフルオロカルボン酸樹脂またはパーフルオロスルホン酸樹脂である場合には、これらパーフルオロカルボン酸樹脂またはパーフルオロスルホン酸樹脂のイオン交換容量としては、1.0〜1.8meq/gのものを用いることが好ましく、より好ましくは、1.2〜1.6meq/gである。前記範囲内にあるフッ素系イオン交換樹脂を用いることにより、静電容量と素子としての造膜特性、及び、メッキ特性(適性)に優れ、有用である。
【0026】
(i)前処理工程
本発明のキャパシタの製造方法において、無電解メッキ方法の事前に行われる前処理工程として、前記高分子電解質(イオン交換樹脂)を膨潤させる膨潤工程を行う。前記膨潤工程は、膨潤溶媒として、前記イオン交換樹脂に、少なくともアルコール類を含む溶媒を浸透させることにより、膨潤した前記イオン交換樹脂を得ることができる。なお、前記イオン交換樹脂の膨潤した状態での厚さを前記イオン交換樹脂の乾燥した状態での厚さに対して110%以上とする膨潤が好ましく、より好ましくは、125%以上である。前記膨潤工程を経ることにより、無電解メッキ方法の吸着工程において、金属錯体が前記イオン交換樹脂の表面から、内部へ吸着しやすくなり、また、還元工程においても、還元剤溶液中の還元剤が、イオン交換樹脂表面から、内部へと吸着しやすくなると考えられる。
【0027】
また、前記膨潤工程が行われた無電解メッキ方法により得られた高分子電解質上に金属電極(金属層)が形成されたキャパシタは、従来のキャパシタに比べて金属電極(金属層)の静電容量が大きい。前記無電解メッキ方法により得られたキャパシタの金属電極では、高分子電解質と金属電極との界面において、金属電極の断面が、倍率1000倍の走査電子顕微鏡(SEM)写真により観察できる従来の大きなフラクタル状の構造(金属粒子の平均粒子径はおおよそ1μmを超え、100μm程度まで)よりも、更に小さく、倍率5000〜10000倍のSEM写真でも、細部を観察することができない程度に、緻密な金属微粒子からなる構造であり、その構造(経常)は、金属微粒子の密度が低い靄状、雲状、霞状、霧状、及び、ワタ(綿)状等の形状(金属微粒子の平均粒子径は、1μm以下)を有している。これは、キャパシタを得た後であって、高分子電解質が収縮した際においても、膨潤時に形成された靄(もや)状等の構造がその形状をとどめているものと考えられる。
【0028】
前記の少なくともアルコール類を含む溶媒としては、架橋した高分子を良く膨潤させることができる溶媒であり、高分子電解質を構成するイオン交換樹脂の種類により異なるが、例えば、溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、ジエチレングリコール、グリセリン等を用いることが好適である。特に、前記膨潤工程において、前記イオン交換樹脂が、パーフルオロカルボン酸樹脂またはパーフルオロスルホン酸樹脂などのフッ素系イオン交換樹脂を用いる場合に、メタノール及び/又はエタノール、またはメタノール及び/又はエタノールを含み、更に他の溶媒を含む混合溶媒を浸透させて、前記高分子電解質(イオン交換樹脂)を膨潤させることが好ましい。これらの溶媒は、膨潤がしやすく、取り扱いが容易であり、作業性が良好であるから特に好ましい。また、高分子電解質を膨潤させることにより、高分子電解質の結晶化度が低下し、特に高分子電解質中の官能基を有する側鎖の絡み合いが緩和され、側鎖についてのセグメント運動の自由度が増大する。
【0029】
前記前処理工程は、温度及び浸漬時間等の条件が特に限定されるものではないが、温度20℃以上であることが効率よく膨潤するために好ましく、より好ましくは、30℃以上であり、特に好ましくは、35〜55℃である。
【0030】
前記前処理工程において、膨潤した前記高分子電解質を得る方法としては、少なくともアルコール類を含む溶媒中に、高分子電解質(イオン交換樹脂)を浸漬させる方法を用いてもよく、また前記溶媒を高分子電解質の表面に塗布する方法を用いても良いが、高分子電解質を浸漬させる方法を用いることが、作業が容易であるため、好ましい。
【0031】
前記膨潤工程を経て還元工程行った場合、上述のように金属錯体が高分子電解質(イオン交換樹脂)内部に入り込み、これが還元工程により金属微粒子となり、倍率5000〜10000倍のSEM写真でも、細部を観察することができない程度の金属微粒子(1μm以下)がお互い繋がることにより、金属電極が電解質上に形成されるものである。本発明のキャパシタは、このようにして高分子電解質上に金属電極が形成されるのであるから、金属電極と高分子電解質の界面は、必ずしも明確なものではなく、高分子電解質外側付近に金属成分がリッチな領域があり、高分子電解質の中心に向かうにつれ、段階的に(徐々に)、高分子電解質成分がリッチになる構造をとりうる。すなわち本発明のキャパシタにおける金属電極とは、電解質上に明確な金属電極が層として存在している必要はなく、少なくとも高分子電解質の外側近辺に存在する金属が互いに繋がることにより、電極として使用可能な通電性の良い部分が形成されていることで足りるものである。従って本発明のキャパシタでは、金属電極の層と高分子電解質の層とが、目視による明確な界面を持たない構造であって、高分子電解質の層としての抵抗値を有する高分子電解質部分が、金属を主成分として含み、電極として使用可能な通電性の良い部分で両側から挟まれた構造(少なくとも対向する金属電極)をとることもできる。
【0032】
(ii)無電解メッキ方法
(吸着工程)
本発明のキャパシタの製造方法における吸着工程は、金属錯体溶液を高分子電解質(イオン交換樹脂)に塗布してもよいが、高分子電解質を金属錯体溶液に浸漬させることにより行えば、作業が容易であるために好ましい。
【0033】
前記吸着工程は、高分子電解質に金属錯体を吸着させる工程であれば、温度及び浸漬時間等の条件が特に限定されるものではないが、温度20℃以上であることが効率よく膨潤するために好ましく、より好ましくは、30℃以上であり、特に好ましくは、35〜55℃である。また、前記吸着工程は、金属錯体が高分子電解質中へ容易に吸着させるために、金属錯体溶液中に、前処理工程において用いられるアルコール類を含む溶媒を含んでいても良い。ここで、前記吸着工程の金属錯体溶液は、還元されることにより形成される金属電極(金属層)が、電極として機能することができる金属の錯体を含むものであれば、特に限定されるものではないが、たとえば、フェナントロリン金属錯体、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤を用いたキレート化金属錯体等が挙げられる。また前記金属錯体は、導電性を確保できる金属であって、無電解メッキ方法として用いることができる金属錯体であれば、特に限定されるものではない。
【0034】
(還元工程)
本発明の還元工程は、前記吸着工程により高分子電解質中に吸着された金属錯体を還元し、金属を析出させる工程である。また、本発明の還元工程は、複数濃度の還元剤溶液を用いることが好ましく、更に、前記還元工程が、低濃度の還元剤溶液から段階的に高濃度の還元剤溶液を接触させるものであり、前記複数濃度の還元剤溶液の濃度が、0.005〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.008〜8重量%であり、特に好ましくは、0.01〜6重量%である。前記範囲内にある濃度の還元剤溶液を、低濃度のものから、段階的に(徐々に)高濃度のものを、複数回(複数濃度)に分けて、金属錯体が吸着した高分子電解質に接触させることにより、平均粒子径が非常に小さい金属微粒子からなる金属電極を形成することができ、有用である。また、低濃度の還元剤溶液を接触させることにより、高分子電解質界面付近において、金属微粒子の密度の高い緻密な領域が形成され、更に還元剤溶液の濃度を上げていくことや、還元剤溶液の接触回数を調整すること、接触時の温度条件などを調整すること等により、金属微粒子の密度の異なる(ここでは、密度の低い)領域(層)を、複数層にわたり、形成することができる。なお、本発明は、このように低濃度の還元剤溶液から、段階的に(徐々に)高濃度の還元剤溶液を接触させることにより、金属微粒子の繋がりにより形成される従来のフラクタル構造の形成を抑え、金属微粒子の平均粒子径が1μm以下の状態で、緻密な金属電極(金属層)を形成することができる。この様に従来のフラクタル構造(図9)を形成しない金属電極は、比表面積がフラクタル構造等を形成する従来よりも、非常に広く、大きなキャパシタ容量を得ることができる。
【0035】
また、前記還元剤溶液は、還元剤が溶解されているものであれば、高分子電解質の形状にかかわらず、特に限定されるものではない。前記還元剤としては、高分子電解質に吸着される金属錯体溶液に使用される金属錯体の種類に応じて、種類を適宜選択して使用することができ、例えば亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム等を用いることができる。なお、金属錯体を還元する際に、必要に応じて、酸またはアルカリを添加してもよい。前記還元剤溶液の濃度は、金属錯体の還元により析出させる金属量を得ることができるのに十分な量の還元剤を含んでいればよく、特に限定されるものではないが、通常の無電解メッキにより電極を形成する場合に用いられる金属錯体溶液と同等の濃度を用いることも可能である。また、還元剤溶液中には、アルコール類を含む溶媒を用いることもできる。
【0036】
また、本発明のキャパシタの製造方法においては、吸着工程と還元工程とが繰り返し行われることにより、金属電極と高分子電解質との界面の静電容量を、従来の値よりも大きくすることができる。本発明において、前記吸着工程と前記還元工程とを交互に繰り返して行う場合には、前記吸着工程の後に前記還元工程を行うことを組として、この組を好ましくは4回以上、更に好ましくは8回以上、特に好ましくは、10回以上行うことで、更に大きな静電容量を有するキャパシタを容易に得ることができる。なお、この際の還元工程における還元剤溶液の濃度は、低濃度の還元剤溶液から、段階的に濃度を上げていくことにより、具体的には、はじめに、低濃度の還元剤溶液を接触させた場合には、高分子電解質界面付近において、金属微粒子の密度の高い緻密な(高密度)領域が形成され、更に還元剤溶液の濃度を上げていくことや、更には温度条件などを変えることにより、金属微粒子の密度の異なる、つまりは低密度の領域(層)を形成することができる。
【0037】
(金属電極)
本発明のキャパシタで用いることのできる金属電極の材料には特に制限されず、上述した金属錯体溶液等を用いて製造することができる。たとえば、高分子電解質の溶媒として水を用いる場合には、金属電極には、金、白金、パラジウム等の貴金属の金属を用いることが好ましい。一方、キャパシタの溶媒として高沸点の非水極性液体を用いる場合では、上記以外の金属材料も好適に用いることができる。例えば、無電解析出が可能であるコバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、白金、金、鉛、ビスマスといった金属や、単体では無電解析出が困難であるが、他の金属との共存により析出可能であるホウ素、窒素、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、亜鉛、モリブデン、タングステン、レニウム、チタン等の金属も好適に用いることができる。中でもインジウム、鉛、亜鉛、スズ、カドミウム、ビスマス、アンチモン、銅、銀、鉄、ニッケル、チタンが好ましい。特に好ましい金属は、スズ、銅、鉄、ニッケルである。またこれらの金属を合金として使用することも可能である。なお、キャパシタの溶媒に水を用いて、かつ上記貴金属以外の鉄、銅、銀、アルミニウム等錆び易い金属を電極とする方法として、酸化皮膜を設ける等の公知の防錆処理を施すことにより、金属電極として使用することもできる。
【0038】
(金属電極の形状)
図1は、シート状にメッキして金属電極としたキャパシタの厚さ方向の断面について、走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影された電子顕微鏡写真の図(×500倍)である。
【0039】
さらに図1の一部を拡大して撮影した図2は、シート状にメッキして金属電極としたキャパシタの厚さ方向の断面について、走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影された電子顕微鏡写真の図(×3000倍)である。前記図2において、上部の白く見える部分が高分子電解質であり、そのすぐ下に密度の高い緻密な構造を有する金属成分(金属電極部分:1)が認められ、更にその下のうっすらとぼやけた部分が、靄状、雲状、霞状、霧状、及び、綿状からなる群より選択される少なくとも1種の形状からなる金属成分(金属電極部分:2)を観察することができる。
【0040】
図3は、シート状にメッキして金属電極としたキャパシタの厚さ方向の断面について、走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影された電子顕微鏡写真の図(×5000倍)である。キャパシタの金属電極は、高分子電解質表面に形成され、かつ、高分子電解質内部に侵入して、形成されている。この様態の金属電極を有するキャパシタとするには、高分子電解質表面上にまず核となる平均粒子径が1μm以下の複数の金属微粒子を析出させ、次に当該金属粒子を成長させて金属粒子同士間で金属結合することにより、高分子電解質の境界領域に金属電極を形成する。なお、本発明においては、前記還元工程を実施する場合に、還元剤溶液の濃度として、低濃度の還元剤溶液から、段階的に濃度を上げていくことにより、はじめに、低濃度の還元剤溶液を接触させた場合には、高分子電解質界面付近において、金属微粒子の密度の高い緻密な(高密度)領域が形成され、更に還元剤溶液の濃度を上げていくことや、更には温度条件などを変えることにより、金属微粒子の密度の異なる、つまりは低密度の領域(層)を、複数層形成することができる。このようなキャパシタは、界面における金属電極と高分子電解質とが強く、緻密に結合するので、前記界面における電子移動をスムーズに行うことができ、キャパシタとして好ましい特性を発揮させることができ、更に、キャパシタとしての一体性が向上することにより、機械的強度が向上する。
【0041】
図4は、円筒状にメッキして金属電極としたキャパシタの厚さ方向の断面について、走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影された電子顕微鏡写真の図(×2000倍)である。図4の右側の、白色及び灰色部分が、密度の高い緻密な構造を有する金属成分(金属電極部分:1)であり、その左の中央側の、うっすらとぼやけた部分が、靄状、雲状、霞状、霧状、及び、ワタ(綿)状からなる群より選択される少なくとも1種の形状からなる金属成分(金属電極部分:2)である。なお、円筒状メッキを施した場合、理由は明らかではないが、円筒の内側部分は、金属微粒子の密度の低い靄状等の構造を示し、外側部分は、内側に比べて、金属微粒子の密度の高い構造を示すことが確認されている。
【0042】
(洗浄工程)
前記吸着工程と前記還元工程とを繰り返して行う場合において、還元剤を高分子電解質より除去して、吸着工程における金属錯体の吸着を容易に行うために、還元工程の後に洗浄工程を行い、前記洗浄工程の後に吸着工程を行うことが好ましい。前記洗浄工程としては、特に限定されるものではなく、水洗して還元剤も除去してもよい。
【0043】
(電解液)
本発明のキャパシタは、電解質塩を含む電解液により、高分子電解質(層)が膨潤した状態にあるものであることが好ましい。電解液(膨潤溶液)は、非水系(有機系)電解液であっても良いし水系電解液であってもよい。また、前記高分子電解質中に電解液の溶媒分子を若干含んだ状態であっても良い。なお、電解液として、水を使用した場合には、キャパシタの充電・放電過程での金属のイオン化を防止するために、上述のように電極には貴金属を用いることが好ましい。一方、溶媒として、非水系の極性液体を用いることもできる。高い誘電率、分解電圧を有する非水系の極性液体を溶媒とした場合には、電位窓が広がり、電気分解が起こりにくくなり、電気化学的に安定になるため、耐電圧が高くなり、エネルギー密度が大きくなる。また、非水の極性液体を溶媒にすれば、水を溶媒とした場合にはキャパシタの電極として使用が難しかった貴金属以外の金属を電極とすることができ、コスト面においても有利である。
【0044】
前記非水系の電解液に含まれる溶媒として、具体的には、プロピレンカーボネイト、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、N−メチルアセトアミド、スルホランエチレンカーボネイト、グルタロニトリル、アジポニトリル、ニトロメタン、ニトロエタン、ピリジン、好ましくは、プロピレンカーボネイト、n−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N−メチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、更に好ましくはプロピレンカーボネイト、N−メチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、1,4−ジオキソランなどの非水の極性液体を挙げることができ、特に好ましい極性液体として、プロピレンカーボネイトを挙げることができる。
【0045】
本発明のキャパシタは、前記電解液が、電解質塩を含むことが好ましく、前記電解質塩は、特に限定されるものではないが、例えば、リチウム、セシウム、及び、ルビジウムからなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ金属のハロゲン化物、前記アルカリ金属のクラウンエーテルの包摂体、及び、前記アルカリ金属の酢酸塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これら電解質塩を含有することにより、高静電容量となり、有用である。
【0046】
また、前記電解液が、電解質塩を含み、前記電解質塩が、炭素数1〜4のアルキル基を有する4級アンモニウムの、ハロゲン化塩、4フッ化ホウ素塩、及び、酢酸塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これら電解質塩を含有することにより、高静電容量となり、有用である。
【0047】
前記炭素数1〜4のアルキル基を有する4級アンモニウムのハロゲン化塩、4フッ化ホウ素塩、及び、酢酸塩を構成する陽イオンには、たとえば、(C、(C(CH)N、(CHなどの炭素数が1〜4の範囲内であるアルキル基を有するテトラアルキルアンモニウムイオンを用いることができ、なかでもイオンの大きさが小さい(C、(C(CH)Nなどを好適に使用できる。前記イオンの大きさができるだけ小さくすることにより、本発明のキャパシタは静電容量を大きくすることができる。
【0048】
また、前記炭素数1〜4のアルキル基を有する4級アンモニウムのハロゲン化塩、4フッ化ホウ素塩、及び、酢酸塩を構成する陰イオンとしては、Cl、Br、I、を用いることができる。なかでもClが、イオン半径が小さく、高静電容量となり、好ましい。
【0049】
また、前記電解液が、分子量50〜400のエーテル基含有化合物を含有することが好ましく、たとえば、ポリエチレングリコール(PEG)や、グリセロールカーボネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、及び、これらの類縁化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、特に好ましくは、PEGや、グリセロールカーボネートを含むことである。前記PEG等の化合物を電解液に含有させることにより、イオン伝導性が良好となり、静電容量が大幅に増大し、好ましい。特に本発明においては、電解液に特定の電解質塩とともに、これらの化合物を配合することにより、より優れた静電容量を有するキャパシタを得ることができ、有効である。なお、電解液中の前記PEG等の化合物の含有量としては、その他の溶媒に対する溶解限度まで、配合することができる。
【0050】
前記電解液が、金属イオン及び/又は4級アンモニウムイオンで置換されたフッ素系イオン交換樹脂を含有し、前記金属イオンが、リチウムイオン、セシウムイオン、及び、ルビジウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種であり、前記フッ素系イオン交換樹脂が、前記電解液中で溶解していることが好ましい。また、前記4級アンモニウムイオンとしては、炭素数1〜4のアルキル基を有する4級アンモニウムイオンが好ましく、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムがより好ましい。
【0051】
前記フッ素系イオン交換樹脂としては、たとえば、スルホン酸基、カルボキシル基などの親水性官能基を導入したパーフルオロスルホン酸樹脂やパーフルオロカルボン酸樹等の粉体などであって、電解液中に溶解することができるものであることが好ましい。
【0052】
前記電解液が、金属イオン及び/又は4級アンモニウムイオンで置換された親水性高分子電解質を含有し、前記金属イオンが、リチウムイオン、セシウムイオン、及び、ルビジウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、前記4級アンモニウムイオンとしては、炭素数1〜4のアルキル基を有する4級アンモニウムイオンが好ましく、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムがより好ましい。更に、前記親水性高分子電解質が、ヒアルロン酸及び/又はフコイダンであることが好ましい。前記親水性高分子電解質を用いることにより、詳細な理由は明らかではないが、静電容量を向上させることができる。
【0053】
本発明のキャパシタに用いられる電解液には、上述した電解質塩に、更に特性を損なわない範囲であれば、公知の電解質塩を含むことができる。また、常温で液体であるイオン性液体(常温溶融塩)を用いることも可能である。
【0054】
前記電解液に含まれる電解質塩等は、単独で使用してもよく、混合してもよいが、前記電解液中の含有量としては、好ましくは、0.1〜2.0mol/lであり、より好ましくは、0.6〜1.5mol/lである。前記範囲内にあると、高静電容量となり、好ましい。
【0055】
(静電容量)
本発明のキャパシタの静電容量は、サイクリックボルタムメトリー法で5mF/cm2以上、或いは定電流放電法による静電容量が5F/cm以上であることが好ましく、前記静電容量の上限は限定されるものではない。キャパシタの金属電極(金属層)の静電容量の値は、大きければ大きいほどキャパシタ容量が大きくなるので、実用的用途に好適に用いることができる。前記静電容量は、より多くの実用的用途に用いることができるので、サイクリックボルタムメトリー法で8mF/cm以上であることがより好ましく、10mF/cm以上であることがさらに好ましい。これを定電流放電法でいえば、静電容量が8F/cm以上であることより好ましく、10F/cm以上であることがさらに好ましい。本発明のキャパシタを用いることにより、キャパシタが乾燥した膜厚を換算して160μmとした場合であっても、静電容量がサイクリックボルタムメトリー法で5mF/cm以上の大きな容量のキャパシタを得ることができる。また、本発明のキャパシタは、低印加電圧でも従来の静電容量を得ることができるのでエネルギー効率も良い。キャパシタの乾燥膜厚を160μmに換算した静電容量の値を得る場合には、実際に測定で得られた電気二重層の値に、測定に用いたキャパシタの厚さ(d)〔μm〕で160μmを除した値(160/d)を乗ずることにより得ることができる。なお、本発明のキャパシタは、キャパシタとしての厚さが特に限定されるものではない。また、本発明のキャパシタは、リーク電流が小さく、温度特性及び耐久性が従来のキャパシタよりも優れている。
【0056】
本願のキャパシタの静電容量(面積)は、下記の2電極のサイクリックボルタムメトリー法及び定電流放電法により測定された静電容量である。2電極のサイクリックボルタムメトリー法の場合、キャパシタの静電容量は、電圧が−0.5V〜+0.5Vの範囲であり、走査電圧速度が10mV〜1000mV/secである測定条件において、3サイクル目の値として得ることができる。一方、キャパシタの静電容量(体積)は、定電圧充電もしくは定電流充電後に蓄電された電荷を一定の電流値で放電した時の電位減衰の経時変化において0電位に至るまでの総電荷放出量を積分して求め、膜厚で除した値として得ることができる。
【0057】
〔キャパシタ素子の構造〕
本発明のキャパシタは、固体電解質層と該固体電極層を挟んで形成された2つの固体電極層からなるキャパシタ素子を積層、折畳、又は捲回させて、更にコイン型やラミネート型に形成し、これをキャパシタ缶又はラミネートパック等のキャパシタ容器に収容し、キャパシタ缶であれば封缶、ラミネートパックであればヒートシールする方法により、キャパシタ部品として組み立てることができる。また、前記方法において、キャパシタ容器を封缶若しくはヒートシールする前に、容器を特定の電解質溶液で充填して、キャパシタ部品を得ることもできる。本発明のキャパシタを有底筒状の外装ケースに収納し、外装ケースの開口端部を弾性部材からなる封口体で封口することで、チップ部品であるキャパシタ部品を得ることができる。本発明のキャパシタを収納したケースには、線膨張率の小さい絶縁物質を充填しても良い。
【0058】
本発明のキャパシタは、ガスケットを介して金属蓋によって密封したコイン型、正極と負極との間にセパレータを介して巻回してなる素子を電解液とともに金属ケース中に収容して封口した巻回型、正極となる電極及び負極となる電極との間にセパレータを介して積層してなる素子の積層体が組み込まれた積層型等いずれの型でも使用できる。積層型が採用される場合においては、キャパシタを陽極同士および陰極同士が重なるように積層しても良い。
【0059】
本発明のキャパシタは、大型平板の積層型固体電解コンデンサとすることができる。また、本発明のキャパシタは、金属電極をU型または管状とすることもできる。管状の金属電極は、円形管、三角形管、方形管、長方形管、多角形管とすることができる。本発明のキャパシタは、キャパシタ自体の形状も任意であり、該形状に角部を有する場合においては、熱的ストレス、機械的ストレス、並びに樹脂外装体との熱膨脹差に起因する歪みによる損傷若しくは漏れ電流不良を防止するために、該角部に所定曲率の曲面を形成することができる。
【0060】
また、本発明のキャパシタは、電極積層型や断面楕円状捲回型のキャパシタ部品とすることができる。キャパシタ素子を巻回する場合においては、ビニロン繊維を主体とするビニロン不織布をセパレータとして、セパレータを介して巻回されたキャパシタ素子を用いて巻回型のキャパシタ部品とすることもできる。前記の巻回型のキャパシタ部品においては、捲回されたキャパシタ素子の外周面に絶縁保護層を設けても良い。捲回した構成のキャパシタにおいては、前記キャパシタの捲回長さ方向に線状体が蛇行状態で連続して介在されていることにより、該線状体をリードとして用いることもできる。なお、本発明のキャパシタを巻回したキャパシタとして用いる場合においては、キャパシタを巻き止めるためのテープの長さを、コンデンサ素子の外周の長さよりも短くしても良い。
【0061】
本発明のキャパシタは、複数個を一つの部品として並べて一体的にパッケージして、アレイ型に構成しても良い。また、前記キャパシタにおいて単一のシート状固体電解質にマス目状パターンの電極を形成してマス目毎にキャパシタを得て、各陰極層の表面と陰極リードフレームとをワイヤーボンダーを用いて金属ワイヤーに接合するか、または、各陰極層の表面の少なくとも一部に金属箔片を接合した後、該金属箔片の表面と陰極リードフレームとを、ワイヤーボンダーを用いて金属ワイヤーで接合しても良い。
【0062】
ボタン型のキャパシタ部品において、金属容器の下底部と上蓋部を絶縁性のリングパッキンにより密閉されるように接合されて、該金属容器内に前記キャパシタ素子を入れることができる。
【0063】
また、前記キャパシタ素子の表面を樹脂で被覆した後、有底筒状のアルミニウムケースに挿入し、開口部を絞り加工によってゴム封口して、エージングを行い、キャパシタ部品を形成しても良い。なお、封口部材の物性の改善による封止力の向上を適宜行うことができる。また、封口部材については、キャパシタ側に配された水素ガスを透過しない又は透過しにくい材料からなる一層目と電解コンデンサの外面側に配された弾性を有し前記一層目よりも水素ガスを透過しやすい材料からなる二層目との二層構造からなる封口部材を形成しても良い。キャパシタをケースに収納する際において、該封口部材の一層目をその上下から挟むようにケース外周面に押圧溝を形成して、開口部を封口しても良い。また、キャパシタを第1のケースが第2のケースに収納し、第2のケースの開口部をゴム等の弾性部材で封口し、前記キャパシタのリード端子が前記弾性封口部材を貫通して外部に引き出される様に構成しても良い。
【0064】
本発明のキャパシタにおいて、固体電解質と該固体電解質を挟んで形成された2つの金属電極とからなるキャパシタ素子を少なくとも2以上積層し、前記キャパシタ素子の陽極となる電極層に接続された陽極端子と陰極となる電極層に導電性接着剤を介して接続された陰極端子の一部が外表面に露呈するように前記キャパシタ素子の積層体を絶縁性の外装樹脂で被覆した構成としても良い。前記外装樹脂は、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を熱硬化することで、外装ケースとして用いることができる。積層型キャパシタ部品においては、リードフレームを面取り、つまり稜角の部分を少し平らに削ったり、丸味をつけたりして稜角部付近の素子の応力集中を緩和出来るように加工を施しておくことが好ましい。また、外装樹脂の外側のリードフレームを外装樹脂に沿って折曲げて外部リードとして積層型キャパシタ部品としても良い。また、外装樹脂については陽極導出線側の陽極導出面と対向する面とを研削するようにしたものとしてもよい。
【0065】
また前記キャパシタに外装を形成する場合には、樹脂を充填し、陰極導出部に角錐または円錐形状の外装樹脂部を金型にて形成し、該外装樹脂部を破断、除去して、前記キャパシタの電極を露出させた構成を用いても良い。
【0066】
外装樹脂の形成方法としては、一般に、エポキシ系の熱硬化性樹脂を使用して、ディップ成型(リード線タイプ)またはモールド成型(チップタイプ)により形成することができる。
【0067】
また、前記キャパシタは、側面を樹脂により被覆しても良く、電極よりも固体電解質層が突き出している場合には、その突出し部分を熱可塑性樹脂により埋めてもよい。また、角部分や綾線部分等の耐電圧が向上することから、本発明のキャパシタの固体電解質層に肉厚が薄い部分の表面に絶縁性樹脂層を設けることもできる。
【0068】
前記キャパシタ部品の構成において、金属電極に上に電極端子を接続することができる。前記電極端子を前記金属電極に接続する方法としてはカーボンペースト及び/又は銀ペーストを含む導電性接着剤を用いて、通電可能なように接続する方法を代表的に挙げることができる。また、前記電極端子を接続する際に、カーボンペースト、銀ペースト、若しくは金属部材を介在させて、前記金属層と前記電極端子とを接続しても良い。また、前記キャパシタ部品は、前記金属電極の表面に被覆層を設けること、前記電極端子(電極タブ部)に電気化学的な酸化皮膜層を設けること、または所定のセラミックス若しくは絶縁性の樹脂層(エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンやポリプロピレン等)をアルミニウム等の金属製の電極端子の表面に設けることにより、端子/電極の電位差コントロールや電位差電流を原因とする電気化学反応をコントロールすることができる。また、前記電極端子を、ポリピロールやスチレンスルホン酸などの特定の有機化合物と溶媒との混合物で処理することにより、漏れ電流を低下させることもできる。また、電極端子を設ける替わりに、銅などの金属箔を貼付けて集電部を形成し、該集電部にリードを接続しても良い。なお、前記電極端子は、繰り返し曲げ強度を備えることが好ましい。前記電極端子は、ワイヤー状であっても平型であっても良い。なお、前記酸化被膜層は、漏れ電流を防止するために、酸化皮膜中の不純物(皮膜の欠陥)を低減することが好ましい。また、デバイスの実装時に耐えることができる端子強度等の機械的強度が要求される用途についてはニッケル系金属(42アロイ等)が使用されている。前記電極端子は、陽極端子について、V字状の溝を有する略Vブロック形状として、前記陽極棒に対してその軸線と直交する方向から係合可能なように形成しても良い。
【0069】
前記キャパシタ素子を取り付けるための平坦部と、その平坦部に続く丸棒部と、その丸棒部に溶接部を介して固定される引出し線とからなるキャパシタ用タブ端子を用いることもできる。
【0070】
前記キャパシタ部品において、金属電極上に更に金属箔を設置して、引出電極部を設けても良い。前記引出電極部を束ねて重層部を作り、該重層部とリード部とを接続してもよい。また、エッチング処理により表面を粗面化した金属箔の表面を、金属表面に被着させることもできる。
【0071】
また、前記金属電極の一端に電極リードピンを形成しても良い。前記金属電極の植立端は、屋根形に盛り上げられた曲面又は連接面からなるように形成することができる。前記電極リードピン植立端は、角錐状、円錐状、ドーム状、蒲鉾状、切妻状、寄棟状から選ばれる屋根形に盛り上げられ、該屋根形の頂部又は稜部に、前記電極リードピンが植立されることができる。植設される電極リードピン若しくは電極リード線に固定電解質の這い上がり防止板を設ける場合には、這い上がり防止板の突設部がキャパシタ素子面に当接するように、前記這い上がり防止板を電極リードピン若しくは電極リード線に挿通しても良い。
【0072】
陽極端子のL字形脚部の一端を該L字形の外側へ向けて更に折り曲げて陽極リードピンに溶接し、陽極端子のL字形脚部の内側面を外装樹脂層に密着させることもできる。
【0073】
前記キャパシタ部品において、チップ型とする場合には、前記電極端子または前記重層部に接続されたリードに外部陽極端子を溶接し、エポキシ樹脂を用いたトランスファーモールド工法で外装を施した後、陽、陰両外部端子の外装樹脂から出た部分を外装樹脂に沿って折り曲げ、整形して、チップ型キャパシタ部品を形成することができる。また、陰極の電極端子の一部が外部に表出した外装樹脂層における陰極導出面は、表面導電体層が形成され、次いで高温中での電圧印加処理(エージング処理)と高温雰囲気中での熱処理のいずれか一方もしくは両方が施され、その後、前記表面導電体層が除去されても良い。
【0074】
本発明のキャパシタにおいては、キャパシタを被覆する外装樹脂の表面上に直接形成した金属層よりなる外部電極であって、且つこの外部電極と前記キャパシタの陽極電極および陰極電極を電気的に接続した外部電極を形成しても良い。なお、前記外部電極は、前記外装樹脂における陽極導出線及び/または陰極導出層の表出部を含む外部電極形成部に、無電解メッキ金属層を含むベース金属層を設けて形成しても良い。なお、外部電極若しくは電極端子と導出線との接続のために、接続部に無電解めっきを施しても良い。
【0075】
前記外部陽端子は、陽極に植立された陽極リードに外部陽極リードフレームを溶接した後、この溶接点を含む陽極リード導出面をモールドして、絶縁部材を形成し、次に、絶縁部材より導出した外部陰極リードフレームを切断し、絶縁部材に沿って折り曲げて外部陽極端子を形成しても良い。
【0076】
また、コ字型の断面を有する陰極端子板を陰極引出し層の底面および側面に嵌合させ、陰極端子板を除いたキャパシタ素子の周面に樹脂外装体を形成し、なおかつ、陽極端子板を陽極リードの引出し側において陰極端子板と対向するようにして上記樹脂外装体上に被せて、陰極端子及び陽極端子を設けても良い。
【0077】
本発明のキャパシタを用いたキャパシタ部品については、陽極リードに離型材を塗布し、同陰極端子板の露出面に離型剤を塗布した後、キャパシタ素子を樹脂液中に浸漬し、引き上げてその樹脂液を乾燥させてキャパシタの側面および段部を含む上面側にかけて樹脂外装体を形成し、次に対向する側縁に一対のフランジを有する陽極端子板をそのフランジを段部に係合させるようにしてキャパシタ素子の上面側に装着した後、同陽極端子板を陽極リードに接続し、陰極端子板および陽極リードに塗布されている離型材を除去することにより、通電性を確保した状態で樹脂外装を形成しても良い。前記フランジは断面コ字状であっても良い。
【0078】
前記チップ型キャパシタ部品についは、キャパシタ部品の底面の所定深さの陽極側段部および陰極側段部をそれぞれ陽極側と陰極側とに形成し、L字状に形成された陰極端子板をキャパシタ素子の陰極側側面から陰極側段部にかけて取り付けた後、陰極端子板に離型材を塗布して、該キャパシタ素子を樹脂液中に浸漬し、引き上げてその樹脂液を乾燥させて該キャパシタの陽極側段部を含めた周面に樹脂外装体を形成し、次にL字状に折り曲げられた陽極端子板を陽極側側面から陽極側段部にかけて取り付け、同陽極端子板を設けることにより該キャパシタ部品を得ても良い。また、前記陽極外部電極層側の前記陽極体の断面近傍に、陽極に絶縁樹脂を含浸せしめた絶縁樹脂含浸部を形成し、前記絶縁樹脂含浸部の形成領域で、前記陽極と前記陽極外部電極層とが電気的に接続するように、チップ状キャパシタ部品を構成しても良い。
【0079】
本発明のキャパシタを用いたキャパシタ部品は、キャパシタにおける電極の一体に陽極引き出し部を設け、かつこの陽極引き出し部としてマスキング用のレジスト膜を施した部分の延長部分に曲げ部と接続部を設け、さらに陰極導電体層および陽極引き出し部の設けられた接続部に別個のコム端子を接続しても良い。また、本発明のキャパシタを用いたキャパシタ素子に用いられる陽極用リード線は、引き出し面側の綾線部分の一部をR状にした陽極リード線としても良い。
【0080】
本発明のキャパシタにおいて樹脂により外装が形成される場合には、外装樹脂の表面に防湿性のコーティング材を塗布してもよい。また、本発明のキャパシタ部品を構成する各部分においては、固体電解質及び電極の湿潤を阻害しない程度に、撥水樹脂などの撥液性の樹脂を塗布しても良い。リードにおいては、リード付け根部分に絶縁物質等からなる保護層を形成して、短絡現象若しくは腐食を防止しても良い。
【0081】
また、複数枚のキャパシタ素子を積層してなるキャパシタ素子積層体を用いる場合において、外装部材の一方の側面に陰極層を、他方の側面に陽極層を備えてなるように構成することもできる。
【0082】
また、前記キャパシタ素子においては、金属電極のコーナー部を導電性高分子層で十分に被覆してショートを防ぐこともできる。
【0083】
また、前記キャパシタ素子の金属電極上に、更にカーボン層を形成し、該カーボン層上に銀ペーストを塗布して複層化された電極層を形成しても良い。
【0084】
前記キャパシタ部品においては、さらに集電板を設けても良い。前記集電板は、白金、導電性ブチルゴム等の導電性ゴムなどで形成してもよく、またアルミニウム、ニッケル等の金属の溶射によって形成してもよく、上記電極層の片面に金属メッシュを付設したものとしてもよい。
【0085】
前記キャパシタ部品においては、積層型のキャパシタ部品の組立を行う際には、必要な耐電圧分のセルをパッキン若しくはテフロン(登録商標)のスペーサと交互に積み重ねて、最後にエンドプレートで挟んで締め付けることにより密閉構造を形成することができる。また、この際において、エンドプレートをそれぞれ締め付け板と集電板に分離し、柔軟性シートを締め付け板と集電板との間に挟み、上下の締め付け板をボルトで締め付け、柔軟性シートを介して集電板とキャパシタ素子とを上下から押さえつけ密閉することもできる。
【0086】
本発明のキャパシタは、液への浸漬を容易とするために、電極の各面のうち少なくとも一つの面に、少なくとも一つの凹所を、当該凹所が少なくとも他の電極に達しないように設けても良い。
【0087】
また、キャパシタ部品を巻回型とする場合には、アルミニウム等の金属製ケースや合成樹脂製のケースにキャパシタ素子を収納し、密閉した構造を有している。例えば、キャパシタ素子をアルミニウム等からなる有底筒状の外装ケースに収納し、外装ケースとキャパシタ素子との間に、硬化時に吸湿性を有する樹脂を充填して、キャパシタ素子の少なくとも外周面に樹脂層を形成することもできる。なを、前記キャパシタ素子が非水系有機溶媒を電解質に用いている場合には、前記密閉構造においては、残留空気量を5%未満とすることが好ましい。また、前記キャパシタ部品においては、硬質部材と弾性部材を組み合わせてなる封口体を用いることにより、リード線に加わる機械的ストレスが内部に伝達することを防ぎ、内部への水分の侵入を防ぐことができる。
【0088】
薄肉部に開口部が生じて電解液が滲み出した場合に絶縁スリーブが滲み出し電解液中のイオンを捕捉するように、金属ケースの要部に薄肉部を設け、キャパシタを収納し電解液を充填し、絶縁スリーブにより該金属ケースを覆って被着してもよい。
【0089】
また、前記キャパシタ部品において、リードにも酸化皮膜を形成することができる。リードの接合部分に撥水性樹脂等を形成し、リードに固体電解質が付着するのを防止することもできる。接合されたリードの根元部にエポキシ樹脂等を形成し、ストレスを受けないようにリード根元部を補強し、酸化皮膜の欠陥発生を抑制して、より漏れ電流不良を低減することもできる。
【0090】
前記キャパシタ部品は、公知の構造とすることができ、適宜、絶縁性ガスケットを設けても良く、さらに封口後に所定の温度下において所定の電圧を印加することによる、公知のエージングを行うことができる。
【0091】
前記キャパシタ部品については、くし状に形成したアルミニウムリードフレームの先端部分を折曲げた複数のプラス端子群を備えていても良い。
【0092】
本発明のキャパシタは、固体電解質にマス目状に電極を形成して得たキャパシタシートを、マス目ごとに切断してキャパシタを得て、キャパシタ素子を形成するために、得られたキャパシタの電極を電極リード端子に接合させても良い。
【0093】
本発明のキャパシタは、湿潤性や含浸性を向上するために、固体電解質中に含まれる溶液中に界面活性剤を含んでも良い。
【0094】
本発明のキャパシタが絶縁容器内部に収納される場合において、キャパシタに伝わる機械的振動、衝撃を大幅に減衰するために、キャパシタ間、若しくはキャパシタと絶縁容器間のすき間に、ゲル状絶縁物及び弾性体に代表されるクッション材を満たしても良い。
【0095】
〔キャパシタ素子のサイズ〕
本発明のキャパシタは、公知のサイズとすることができ、例えば、7.3mm×4.3mm×2.0mmとすることができる。例えば、前記キャパシタは、縦寸法を通常10mm以上、好ましくは20mm以上であり、25〜50mmとすることができ、同様に、横寸法を、通常10mm以上、好ましくは20mm以上であり、25〜50mmとすることができる。また、本発明のキャパシタは、例えば、ケースサイズ10mmφ×16mmL、φ8×5L、4φ×7L、5φ×2.8L、または5φ×3L等の円筒形のキャパシタ部品とすることもできる。
【実施例】
【0096】
以下、本発明の実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0097】
[実施例1〜11、及び比較例1〜3]
実施例1〜11及び、比較例1〜3は、下記の方法により、キャパシタを形成した。なお、本発明は下記実施例等により、限定されるものではない。
【0098】
(金属電極形成工程)
乾燥時の膜厚が160μmの膜状高分子電解質(フッ素樹脂系イオン交換樹脂:パーフルオロカルボン酸樹脂、商品名「フレミオン」、旭硝子社製、イオン交換容量:1.4meq/g)について、それぞれ下記(1)〜(4)の工程を実施し、金属電極(金属層)が形成された高分子電解質を得た。なお、下記(2)及び(3)においては、還元剤溶液の濃度を、0.01重量%から、順に、0.02、0.03、0.05、0.08、0.1、0.12、0.2、0.3、0.5、0.7、1.0、2.0、3.0、5.0重量%というように濃度を上げていき、下記(2)及び(3)の組み合わせを、合計15回行い、緻密で微細な構造を有する金属(金)電極を形成した。
【0099】
(1)前処理工程:乾燥時の膜厚160μmの膜状高分子電解質(フッ素樹脂系イオン交換樹脂:パーフルオロカルボン酸樹脂、商品名「フレミオン」、旭硝子社製、イオン交換容量1.4meq/g)を膨潤溶媒であるメタノール中に20℃で30分以上浸漬した。膨潤した前記膜状高分子電解質の膜厚を測定して、乾燥膜厚に対して膨潤後の膜厚の増加した割合(膨潤度(%))を算出し、膨潤度が50%になるように前記膜状高分子電解質を膨潤溶媒に浸漬した。
(2)吸着工程:1.0重量%のジクロロフェナントロリン金塩化物水溶液に12時間浸漬し、成形品内にジクロロフェナントロリン金錯体を吸着させた。
(3)還元工程:亜硫酸ナトリウムを含む水溶液中で、吸着したジクロロフェナントロリン金錯体を還元して、膜状高分子電解質表面に金電極を形成させた。このとき、水溶液の温度を60〜80℃とし、亜硫酸ナトリウムを段階的に添加しながら、6時間ジクロロフェナントロリン金錯体の還元を行った。
更に、(2)の吸着工程を実施し、更に先の(3)の還元工程の際よりも、還元剤濃度の高い還元剤溶液を用いて、還元工程を実施し、前記(2)及び(3)の組み合わせを、15回行い、緻密な構造を有する金電極を形成した。
(4)洗浄工程:表面に金電極が形成した膜状高分子電解質を取り出し、70℃の水で1時間洗浄した。この場合、高分子電解質に含まれるイオン種は亜硫酸ナトリウム由来のナトリウムイオンとなる。
【0100】
(キャパシタの作成工程)
前記洗浄後の金属電極が形成された膜状高分子電解質Aを、表1に示す電解質塩を、溶媒としてポリエチレングリコール(関東化学社製、PEG、Mw=200)に溶解し、電解質塩の濃度を0.1mol/l(=M)の電解液を調製した。次いで、前記電解液に、前記高分子電解質を、60℃×10時間浸漬し、その後取り出して、24時間常温常圧下で、乾燥させた膜厚が約200μmのキャパシタを得た。
【0101】
〔評価〕
(SEM写真)
実施例2で得られたキャパシタをキャパシタ厚さ方向に対し垂直方向に切断して、断面を切り出し、切り出された断面にSEM観察のための所定の処理を施した後、当該断面をキャパシタのSEM写真(図1:倍率500倍、図2:倍率3000倍)で観察した。
【0102】
[実施例1〜6、比較例1〜2]
(静電容量)
実施例及び比較例のそれぞれについて、静電容量(面積)を測定した。表1の静電容量(面積)は、2電極のサイクリックボルタムメトリー法により測定された値である。サイクリックボルタムメトリー法の静電容量の実測には、商品名「Potentio Galvanostat Model263A」(Princeton Applied Research社製)を用いた。測定条件としては、電圧を−0.5V〜+0.5Vの範囲とし、走査電圧速度を1000mV/secとしたときの、3サイクル目の値を測定した。
【0103】
【表1】


注)RbCl:塩化ルビジウム、和光純薬工業社製
CsCl:塩化セシウム、和光純薬工業社製
LiCl:塩化リチウム、和光純薬工業社製
TEACl:テトラエチルアンモニウム、和光純薬工業社製
TEAOOCCH3・4H2O:Aldrich社製
TMAOOCCH3:酢酸テトラメチルアンモニウム、和光純薬工業社製
TMACl:テトラメチルアンモニウムクロライド、和光純薬工業社製
TPyNCl:テトラピリジルアンモニウムクロライド、和光純薬工業社製
TEABF4:四フッ化ホウ酸テトラエチルアンモニウム、関東化学社製
【0104】
[実施例7〜8、比較例3]
実施例7は、実施例2により得られたキャパシタを用いて、静電容量(体積)を下記の方法により、評価した。評価結果を図5及び表2に示した。
比較例3は、電解液に含まれる電解質塩を塩化セシウムに代えた以外は、実施例7と同様の方法にて、評価した。評価結果を図5及び表2に示した。
実施例8は、電解液に含まれる電解質塩(塩化セシウム)の濃度を1.0mol/l(M)に変えた以外は、実施例2(実施例7も同様)により得られたキャパシタと同様に方法にて、キャパシタを得た。このキャパシタを、1cm2角に、4枚にカットし、これらの内、1枚、2枚、及び4枚について、金属電極間を面状に接触させる形態で重ね合わせた状態で、実施例7と同様の方法にて、評価した。なお、図6〜8は、積層枚数(1枚:図8、2枚:図7、及び4枚:図6)に応じて比較した結果を示したものである。なお、充電条件としては、10V×10秒、放電条件(放電時の電流)としては、1mAで行い、充電終了から放電までの時間としては、15秒に設定した。評価結果を図6及び表2に示した。評価結果を図6〜8及び表2に示した。
【0105】
(静電容量)
実施例7〜8及び比較例3について、静電容量(体積)を測定した。表2の静電容量(体積)は、膨潤状態で、試料サイズが、縦5mm×横2mm×厚さ0.2mmの大きさのキャパシタを用い、定電圧充電もしくは定電流充電後に蓄電された電荷を一定の電流値で放電した時の電位減衰の経時変化において、0電位に至るまでの総電荷放出量を積分して求め、膜厚で除した値として得ることができる。
【0106】
前記静電容量(体積)の具体的な評価方法としては、充電条件として、5V×5minの定電圧とし、放電条件としては、0.01mA及び0.1mAの2段階で行った。評価条件としては、室温(25℃×30%RH)環境下で、サンプルに特別な被覆がない状態で、2枚の金電極に挟み込み、充放電装置(北斗電工社製、HJ−201B)に接続し、評価した。
【0107】
図5に示すように、塩化セシウムを電解質塩として用いた実施例7と、塩化ナトリウムを電解質塩として用いた比較例3とでは、外挿された破線の傾きより算出される静電容量の値から、電解液に添加した金属イオン種の違いにより、キャパシタ(素子)内に蓄えられた静電容量(電荷量)が、1桁(静電容量としては、10倍以上)異なることが、明らかとなった。
【0108】
図6〜8に示すように、キャパシタ(素子)の積層により、自己放電電圧もしくは放電開始電圧、あるいは電圧降下が積層数に応じて大きくなる一方で、放電時間は小さくなることが明らかとなった。概ねコンデンサの直列接続による効果が認められたことから本発明を用いればキャパシタ(素子)電極間に、集電極を用いる必要がないこと、及び昇電圧が極めて容易であることが確認された。
【0109】
【表2】

【0110】
[実施例9〜11]
実施例9〜11においては、以下に示した電解液を用いた以外は実施例1と同様の方法にて、キャパシタを得た。なお、実施例9〜11については、キャパシタの膜厚、及び、充放電条件をそれぞれ表3に示すように変えた場合の静電容量(面積)を評価することにより行った。
【0111】
[実施例9]
グリセロールカーボネート(宇部興産社製)100重量部と、10重量%に調製したセシウム置換フレミオン−メタノール溶液7重量部を、純水70重量部に溶解し、電解液を調製した。なお、セシウム置換フレミオンの調製方法としては、カリウム型フレミオンペレット(旭硝子社製、イオン交換容量1.8meq)10重量部を、純水1Lに、室温で一昼夜放置・膨潤させた後、塩化セシウム3重量部を添加・撹拌しながら、80℃×10時間保持し、交換イオンの置換を行い、濾過し、大量の水で洗浄した後、室温で5時間乾燥(自然乾燥)することにより、固形物であるセシウム置換フレミオンを得た。
【0112】
前記電解液に、前記洗浄後の金属電極が形成された膜状高分子電解質Aと膜厚が同じもの(乾燥厚:160μm)を、60℃×10時間浸漬し、その後取り出して、24時間常温常圧下で、乾燥させた膜厚が約200μmのキャパシタを得た。
【0113】
前記キャパシタ(素子)に対して、前記静電容量(体積)の具体的な評価方法としては、充電条件として、2.7V×15minの定電圧とした以外は、実施例7と同様の方法にて、評価した。
【0114】
[実施例10]
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬社製)100重量部と、10重量%に調製したテトラメチルアンモニウム置換フレミオン−メタノール溶液4重量部を純水100重量部に溶解し、電解液とした。なお、テトラメチルアンモニウム置換フレミオンの調製方法としては、カリウム型フレミオンペレット(旭硝子社製、イオン交換容量1.8meq)10重量部を、純水1Lに、室温で一昼夜放置・膨潤させた後、テトラメチルアンモニウムクロライド11重量部を添加・撹拌しながら、80℃×10時間保持し、交換イオンの置換を行い、濾過し、大量の水で洗浄した後、室温で3時間乾燥(自然乾燥)することにより、固形物であるテトラメチルアンモニウム置換フレミオンを得た。
【0115】
前記電解液に、前記洗浄後の金属電極が形成された膜状高分子電解質Aと膜厚が異なるもの(乾燥厚:50μm)を、60℃×10時間浸漬し、その後取り出して、3時間常温常圧下で、乾燥させた膜厚が約60μmのキャパシタを得た。
【0116】
前記キャパシタ(素子)に対して、前記静電容量(体積)の具体的な評価方法としては、充電条件として、30minの定電圧とした以外は、実施例9と同様の方法にて、評価した。
【0117】
[実施例11]
ポリエチレングリコール(関東化学社製、PEG、Mw=300)300重量部と、0.08重量%に調製したヒアルロン酸セシウム−メタノール/水(体積比3/1)混合溶液3重量部、酢酸セシウム(和光純薬工業社製)25重量部を、純水300重量部に溶解し、電解液とした。なお、ヒアルロン酸セシウムの調製方法としては、鶏冠由来のヒアルロン酸ナトリウム(和光純薬社製)1重量と、等重量の塩化セシウムとを、純水1Lに添加・撹拌しながら、80℃×3時間保持した後、エタノールを用いた再沈操作を3回繰り返すことにより、白色固形物であるヒアルロン酸セシウムを得た。
【0118】
前記電解液に、前記洗浄後の金属電極が形成された膜状高分子電解質Aと膜厚が異なるもの(乾燥厚:50μm)を、60℃×10時間浸漬し、その後取り出して、3時間常温常圧下で、乾燥させた膜厚が約65μmの電極表面に干渉縞が認められるキャパシタを得た。
【0119】
前記キャパシタ(素子)に対して、前記静電容量(体積)の具体的な評価方法としては、充電条件として、30minの定電圧とし、室温(25℃×30%RH)環境下と、40℃×65%RH環境下の2種類で評価した以外は、実施例9と同様の方法にて、評価した。
【0120】
【表3】

【0121】
(結果)
表1より、実施例1〜6においては、金属電極を形成する金属微粒子の大きさが1μm以下であり、静電容量が11.5mF/cm以上であることから、本発明のキャパシタにおける金属電極が、緻密な構造を形成していることによるものと推測される。
【0122】
実施例7においては、実用的な充電条件においての放電時の静電容量が20(F/cm)以上であり、十分な静電容量が得られることが確認できた。また、実施例8においては、複数枚のキャパシタ(素子)を積層することにより、集電極(集電体)を新たに設置することなく、使用することが確認でき、キャパシタの薄型化を実現できることが確認できた。
【0123】
また、実施例9〜11においては、約50〜120という大きな静電容量を得られることが確認され、金属微粒子の大きさだけでなく、電解液中に添加する電解質やその他の化合物により、静電容量の向上を図ることが可能であることを確認できた。なお、実施例9〜11においても、金属電極を構成する金属微粒子の平均粒子径は、1μm以下であった。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明のキャパシタは、公知の電気二重層キャパシタの用途に特に好適に用いることができ、蓄電用のデバイスとして様々な用途での利用可能性がある。特に本発明のキャパシタは、小型且つ軽量であることから、公知のキャパシタの用途に用いることができ、携帯用機械機器の電源用及び大容量の据え置き型電源用のキャパシタとして好適に用いることができる。特に、次世代低公害車の駆動電源、並びに自動車電装品の電源は、自然エネルギー発電の貯蔵用及び/または補助用電源は、植え込み可能な医療装置用の電源、携帯用電子機器のメモリバックアップ用電源、携帯可能な時計用電源、急速充電用蓄電器、デジタルカメラ用電源、電動玩具並びに持ち運び可能な家庭用電気製品用電源に好適に用いることができる。以下更に詳細な具体的用途を挙げる。
【0125】
本発明のキャパシタは、小型で軽量である特性により、携帯用機械機器の電源として好適であり、また大容量の電源が必要である場合においても占有空間を狭くすることができるので、大容量の据え置き型電源としても好適である。特に、本発明のキャパシタを用いたHEV、電気自動車、ハイブリッド自動車を含む次世代低公害車の自動車若しくは自動二輪車に用いる電源あるいは補助電源、電気自動車等の大電力型のパワーモジュール用電源、携帯可能な電話器に代表される情報通信機器の電力源、身分証明書用カード等のペーパー電池、太陽電池と併用したソーラー発電エネルギー貯蔵システム、並びに電池と組み合せたロードレベリング電源に好適に用いることができるものである。特に、燃料電池とキャパシタと電流出力型スイッチングレギュレータとを備えた電気自動車用のキャパシタとして好適に用いることができる。更に本発明のキャパシタを用いたカーオーディオ等の自動車電装品の電源は、本発明のキャパシタが軽量であることから車両の燃費の向上をすることができる。また、本発明のキャパシタを用いた太陽光発電システム、風力発電システム、風力・太陽光、ハイブリッド発電システム、波力発電システムに代表される自然エネルギー発電の貯蔵用及び/または補助用電源は、省スペースであり且つ大容量の電源として好適に用いることができる。本発明のキャパシタを用いた植え込み可能な医療装置は、キャパシタが軽量であることから、人体に対する重量による負担が少ないので、好適に用いることができる。本発明のキャパシタを用いたモバイルパソコン及び携帯電話、タイマー及び電源用時計機能に代表される携帯用電子機器の電源及びメモリバックアップ用の電源、ビデオカメラの電源或いは補助電源、携帯端末、パソコン、特にノート型パソコン等の電源及び瞬時停電対策用電源、本発明のキャパシタを用いた携帯可能な時計用の電源や寿命、温度特性及び高周波特性に優れたパソコンの電源回路、本発明のキャパシタを用いた急速充電用蓄電器、本発明のキャパシタを用いたデジタルカメラ用電源、本発明のキャパシタを用いた電動玩具並びに本発明のキャパシタを用いた電気シェーバ及び電気ポットに代表される持ち運び可能な家庭用電気製品用電源も、キャパシタが軽量であることから携帯性に優れている。
【0126】
本発明のキャパシタは、小型であって大容量であることから、公知の電気二重層キャパシタの用途以外の用途にも用いることができる。具体的には本発明のキャパシタは、小型であって大容量であることから、無停電電源装置、家庭用蓄電システム等屋外設置機器、バッテリとDC−DCコンバータとの間に並列につないだ自動車用電装機器の電源回路、スイッチングレギュレータ、モータ制御レギュレータ、コンピュータエレクトロニクス、テレビジョン受像機等に用いる陰極線管に使用されるフライバックトランス、オーディオ増幅器、サージプロテクタ、抵抗スポット溶接器のような電気装置、コージェネレーション設備、自家用発電装置、X線撮像パネル、高圧進相用コンデンサ(電力設備に用いるコンデンサ油浸紙フィルムコンデンサ)、岩盤などの被破壊物を破壊するための破壊装置、車両水没時の脱出装置、X線像(潜像)を画像信号として得るようにしたX線撮像装置、電池レス腕時計、表示パネルを用いた表示装置、液晶表示装置、特にプロジェクタ等に使用されるマトリクスの液晶表示装置陰極線管を用いた画像表示器、使い捨てカメラ、盗難防止を目的として商品等に貼着されて使用される共鳴ラベル、フラッシュ若しくはストロボ装置、並びに発光表示体についての電源若しくは補助電源として好適に用いることができる。
【0127】
特に、本発明のキャパシタは、大容量であることから、家電製品、工具若しくは電気自動車に組込(ビルトイン)の大パワーの動力源、受変電設備若しくは配電設備の蓄積デバイス、並びにエネルギー変換・貯蔵システムの補助貯電ユニットとして好適に用いることができる。本発明のキャパシタは、積層することにより、高電圧用途として用いることも可能である。
【0128】
本発明のキャパシタは、小型かつ大容量であるので用いられる装置の小型化が可能であることから、電気車駆動装置やインバータ装置に用いる制御モジュール、特に小型で冷却効率のよい水冷式制御モジュールに好適に用いることができる。またかかる性質から、加速度センサユニット、排気ガスや可燃ガスを測定するガスセンサ及びガス濃度制御器にも好適に用いることができる。更に本発明のキャパシタは、三端子の電気化学的デバイスとしての形態で、発熱抵抗式空気流量測定装置としても好適に用いることができる。
【0129】
本発明のキャパシタは、小型、大容量、かつ低等価直列抵抗であることから、半導体パッケージの最上層にチップ部品としてキャパシタ部品を搭載した半導体パッケージ、並びに基板にキャパシタ素子が組み込まれたプリント回路基板に好適に用いることができる。基板に前記キャパシタが組み込まれたプリント回路基板において、前記キャパシタを面実装または埋込実装したプリント配線基板は、該プリント配線基板が用いられる電子機器の小型化、高機能化、低コスト化に好適である。従って、前記キャパシタは、小型、大容量、低等価直列抵抗であるために、メモリ装置、特にDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ)やMMIC(モノリシック・マイクロ波集積回路)、並びに不揮発性強誘電体メモリ素子に好適に用いることができる。また、前記キャパシタは、小型、大容量、低等価直列抵抗であるために、LCR内蔵回路基板やノイズフィルタ等のフィルタ回路、強誘電体メモリ、ペロブスカイト型強誘電体、IC(Integrated
Circuit)カード等の薄型の半導体装置、強誘電体を用いたFeRAM、有機EL素子の発光素子アレイ、ICカードなどのICチップ、強誘電体キャパシタを有する半導体装置、並びに電力変換を行うスイッチング素子に好適に用いることができる。
【0130】
本発明のキャパシタは、電気電子機器の電源平滑用、ノイズ除去用および高周波でのESR値が要求される分野に適用が可能である。また、前記キャパシタは、コンバータやインバータが発生するノイズ成分である高周波の抑制作用を有するので、ノイズフィルタとしても好適である。従って、前記キャパシタが、小型化が容易で、大容量であり、低等価直列抵抗であることから、用いられる装置の小型化が可能であって、ノイズフィルタに用いることもできるので、プラズマ電位測定装置として好適に用いることができ、LC直列共振回路と共に備えることで触覚センサとして好適に用いることができる。さらに、かかる性質から、電気光学効果(ポッケルス効果)を利用して電圧を測定する光電圧センサ、光変換形計器用変圧器、高周波無線機器、衛星放送受信機器および無線LAN等の、取扱う信号の周波数が、概ね、400MHz〜20GHz(UHF〜SHF帯)の高周波機器におけるインピーダンス整合アンテナおよび指向性アンテナ等に関連して好適に実施されるインピーダンス整合器、携帯電話等の移動体通信機器に用いられるフィルタ部品、並びにテレビジョン信号受信用チューナにも好適に用いることができる。
【0131】
また、本発明のキャパシタは、家電製品、デバイス、設備、計測器または電気自動車を含む自動車若しくは自動二輪車における筐体、箱体、車台、シャーシ、車体、仕切り、支柱、カバー若しくはケースと、折り曲げ可能な金属板を電極層と接合して該金属板を接続することや銀ペーストを用いて直接接合することなどにより、実質的に一体化することが可能である。本発明のキャパシタと実質的に一体化した筐体、箱体、シャーシ、仕切り、カバー及びケーシングは、前記キャパシタが小型で、大容量で、しかも省スペース化に優れているので、電気自動車、電動自転車、電動車椅子、電動歩行器、電動スクータ、電動ランニングマシン、電動ゴルフカーの車台、シャーシ若しくは車体、ノート型パソコン、パーム型パソコン、携帯電話若しくは電動工具のパッケージングケース、または、太陽エネルギーを利用して発電する街灯の支柱とすることができる。
【0132】
また、本発明のキャパシタは、電力源としての用途以外にも、発電所などのボイラの給水、半導体製造工程、燃料電池発電等に用いられる純水の製造や、冷却塔用水の製造・循環使用、各種排水の回収に用いられる脱塩装置に用いることができる。前記キャパシタを用いて、原水中の各種イオンを除去するとともに、シリカをも除去して脱塩水や純水を得ることができ、さらには原水の起源や性状が変わった場合にもその前処理を変えることなくなくこれに対応して安定した水質の脱塩水や純水を製造し、またこれによって二次純水(超純水)の安定的な製造を可能とする脱塩装置とすることができる。
【0133】
本発明のキャパシタは、ディスプレイへの適用を可能な電気化学的素子に用いることができる。より具体的には、基板と前記基板上に設けられた一対の櫛形電極と前記櫛形電極に接して設けられ発光性物質および電解質を含む発光層とを具備する発光素子、電流制御用トランジスタ、および前記キャパシタからなる単位画素をマトリックス状に配列したアクティブマトリックス型の発光素子アレイを形成して、本発明のキャパシタをディスプレイに適用することにより適用することができる。
【符号の説明】
【0134】
1 金属微粒子の平均粒子径が1μm以下の電極形成部分(高密度部分)
2 金属微粒子の平均粒子径が1μm以下の電極形成部分(低密度部分・靄状部分)
3 金属微粒子の平均粒子径が1μmを超える電極形成部分(フラクタル状部分)
10 キャパシタ





【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも対向する金属電極、高分子電解質、及び、電解液を含むキャパシタであって、
前記金属電極が、前記高分子電解質と接し、
前記金属電極を構成する領域が、平均粒子径が1μm以下の金属微粒子からなり、
前記高分子電解質が、イオン交換樹脂を含有するものであることを特徴とするキャパシタ。
【請求項2】
前記金属微粒子が、靄状、雲状、霞状、霧状、及び、ワタ状からなる群より選択される少なくとも1種の形状を形成していることを特徴とする請求項1記載のキャパシタ。
【請求項3】
前記電解液が、電解質塩を含み、
前記電解質塩が、リチウム、セシウム、及び、ルビジウムからなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ金属のハロゲン化物、前記アルカリ金属のクラウンエーテルの包摂体、及び、前記アルカリ金属の酢酸塩からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載のキャパシタ。
【請求項4】
前記電解液が、電解質塩を含み、
前記電解質塩が、炭素数1〜4のアルキル基を有する4級アンモニウムのハロゲン化塩、4フッ化ホウ素塩、及び、酢酸塩からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のキャパシタ。
【請求項5】
前記電解液が、分子量50〜400のエーテル基含有化合物を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のキャパシタ。
【請求項6】
前記電解液が、金属イオン及び/又は4級アンモニウムイオンで置換されたフッ素系イオン交換樹脂を含有し、
前記金属イオンが、リチウムイオン、セシウムイオン、及び、ルビジウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記フッ素系イオン交換樹脂が、前記電解液中で溶解していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のキャパシタ。
【請求項7】
前記電解液が、金属イオン及び/又は4級アンモニウムイオンで置換された親水性高分子電解質を含有し、
前記金属イオンが、リチウムイオン、セシウムイオン、及び、ルビジウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記親水性高分子電解質が、ヒアルロン酸及び/又はフコイダンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のキャパシタ。
【請求項8】
前記金属電極と、前記高分子電解質との界面の2電極のサイクリックボルタムメトリー法による静電容量が、5mF/cm以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のキャパシタ。
【請求項9】
前記高分子電解質の外側に向かって、前記金属電極を構成する金属微粒子が、リッチな領域を有し、
前記高分子電解質の中心に向かって、前記高分子電解質が、リッチな領域を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のキャパシタ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のキャパシタの製造方法であって、
前記キャパシタの製造方法が、無電解メッキ方法により、高分子電解質中のイオン交換樹脂上に金属電極を形成するものであり、
前記イオン交換樹脂を、少なくともアルコール類を含む溶媒により膨潤させる前処理工程と、
前記イオン交換樹脂に金属錯体を吸着させる吸着工程と、
前記金属錯体が吸着したイオン交換樹脂に還元剤溶液を接触させる還元工程と、を含み、
前記還元工程が、複数濃度の還元剤溶液を用いることを特徴とするキャパシタの製造方法。
【請求項11】
前記還元工程が、低濃度の還元剤溶液から段階的に高濃度の還元剤溶液を接触させるものであり、
前記複数濃度の還元剤溶液の濃度が、0.005〜10重量%であることを特徴とする請求項10記載のキャパシタの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−109044(P2011−109044A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265555(P2009−265555)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(302014860)イーメックス株式会社 (49)
【Fターム(参考)】