説明

キャビネット取付装置

【課題】キャビネット取付装置2aの取付対象がどのような形状であっても容易、かつ、確実に取付けることができるようにする。
【解決手段】キャビネット取付装置2aにおける左右側板14bの付根部分にヒンジ部16を介して形成された長板状の耳板17と、左右の該耳板17に形成された貫通孔25aと、左右のヒンジ部16の一部を開口して形成された左右バンド孔18bとを備えて、当該キャビネット取付装置2aを壁等の平面に取付ける際には貫通孔25aを介してねじ止し、ポール等の円形体や手摺り等の矩形体に取付ける際には左右バンド孔18bに取付バンドを挿通し、耳板17がヒンジ部16で曲がって該円形体や矩形体の形状に沿うように当該耳板17を押付けながら取付けることができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雷サージや電力線の混触から通信機器を保護する加入者保安器、光ケーブル通信線の成端部、電力メータ等が収納される箱状のキャビネットを家屋の壁等の平面体、ポール等の円形体、手摺り等の矩形体に取付ける際に、取付の仲立ちに用いられるキャビネット取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加入者保安器、成端箱、電力メータ等を設置する際には、外壁等にネジ穴を開けてそのキャビネット等をネジ止めして取付ける方法が一般的である。しかし、壁に穴を開けることは雨漏りの原因になったりするため、バンドにより固定する方法も提案されている。
【0003】
また、加入者保安器、成端箱を個々に設けると、設置スペースの確保等が困難になるため、当該保安器等に装着するアタッチメントを具備する構成も提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特願2001−335601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、取付場所が壁等の平面体を主眼として考えられているため、これ以外のポール等の円形体や手摺りのような矩形体に取付けるためには、別途取付具を準備する用意する必要があった。即ち、施工時には取付対象の形状等に応じた取付具を準備する必要があり部材管理が面倒であると共に、在庫管理の工数が必要になる問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、取付対象がどのような形状であっても容易、かつ、確実に取付けることができるようにしたキャビネット取付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、雷サージや電力線の混触から通信機器を保護する加入者保安器、光ケーブル通信線の成端部、電力メータ等のキャビネットが係合して、当該キャビネットを家屋の壁等の平面体、ポール等の円形体或いは手摺り等の矩形体に取付けるキャビネット取付装置において、該キャビネット取付装置が概略箱体をなし、その左右側板の付根部分にヒンジ部を介して設けられた長板状の耳板と、左右の該耳板に形成された貫通孔と、左右のヒンジ部の一部を開口して形成された左右バンド孔とを備えて、該キャビネット取付装置を平面体に取付ける際には貫通孔を介してねじ止めして取付け、円形体や矩形体に取付ける際には左右バンド孔に取付バンドを挿通し、耳板がヒンジ部で曲がって該円形体や矩形体の形状に沿うように当該耳板を押付けながら取付けるようにしたものである。
【0007】
これによりキャビネットを平面体、円形体、矩形体のいずれの取付対象に対しても容易、かつ、確実に取付けることができるようになり、専用取付具の準備や在庫管理の煩わしさが省けると共に施工性が向上する。
【0008】
請求項2に係る発明は、箱状のキャビネット取付装置における底板に、その上下側板近傍を開口して形成した上下バンド孔を設けて、当該上下バンド孔に取付バンドを挿通して、円形体や矩形体に取付けるようにしたものである。
【0009】
これによりキャビネットを平面体、円形体、矩形体のいずれの取付対象に対しても容易、かつ、確実に取付けることができるようになり、専用取付具の準備や在庫管理の煩わしさが省けると共に施工性が向上する。
【0010】
請求項3に係る発明は、左右又は上下のバンド孔に挿通した取付バンドの接触する孔壁が、該取付バンドと略一様に接触して当該取付バンドからの荷重を分散させるように傾斜して設けたものである。
【0011】
これにより、取付バンドからの荷重でキャビネット取付装置が変形したり破損したりする事態が抑制でき、信頼性が向上する。
【0012】
請求項4に係る発明は、左右の耳板を連結するように設けられたベース板と、該ベース板に対して固定可能に設けられて、キャビネットに出入りする光ケーブル通信線等の外線をベース板と共に挟んで支持する押板とを設けたものである。
【0013】
これにより、キャビネットに出入りする外線をベース板に宛い、その上から押板を当てて固定するだけで、この外線を容易に支持できるようになり施工性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、キャビネット取付装置が概略箱体をなし、その左右側板の付根部分にヒンジ部を介して設けられた長板状の耳板と、左右の該耳板に形成された貫通孔と、左右のヒンジ部の一部を開口して形成された左右バンド孔とを備えて、該キャビネット取付装置を平面体に取付ける際には貫通孔を介してねじ止めして取付け、円形体や矩形体に取付ける際には左右バンド孔に取付バンドを挿通し、耳板がヒンジ部で曲がって該円形体や矩形体の形状に沿うように当該耳板を押付けながら取付けるようにしたので、キャビネットを平面体、円形体、矩形体のいずれの取付対象に対しても容易、かつ、確実に取付けることができるようになり、専用取付具の準備や在庫管理の煩わしさが省けると共に施工性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施例を図を参照して説明する。キャビネット取付装置は家屋の壁等の平面体、ポール等の円形体或いは手摺り等の矩形体に取付けられて、このキャビネット取付装置に雷サージや電力線の混触から通信機器を保護する加入者保安器、光ケーブル通信線の成端部、電力メータ等のキャビネットが係合することで、該キャビネットを取付けるものである。
【0016】
図1は、本発明にかかるキャビネット取付装置2a(2)の斜視図であり、図2は図1におけるAA矢視における断面図である。
なお、図1においては取付バンド8を点線で示している。また、本発明で上下左右を言うときは、図1を基準としたものであることを注記する。
【0017】
キャビネット取付装置2aは、ポリエチレンやポリプロピレン等の耐候性の強い樹脂を材料として形成された概略箱体をなし、その底板14cの端部には上下側板14a,14a及び左右側板14b,14bが立設され、また左右の側板14bにおける付根部分には耳板17が設けられている。
【0018】
耳板17は、当該耳板17より肉薄に形成されたヒンジ部16により左右側板14bと連結され、該耳板17と底板14cとのなす面の角度が変えられるように該ヒンジ部16で曲がるようになっている。
また、耳板17には、キャビネット取付装置2aを家屋の壁等にネジ止めする際に用いる貫通孔25aが形成されている。
【0019】
底板14cの上下側板14a近傍には、当該底板14cを貫通してなる上下バンド孔18a,18aが形成され、ヒンジ部16には、底板14cの裏面に挿通する左右バンド孔18b,18bが形成されている。
この上下左右のバンド孔18a、18bは、ステンレス鋼等からなる取付バンド8が挿通する孔で、上下バンド孔18a,18aは上下側板14aの略真中、左右バンド孔18b,18bは左右側板14bの略真中に設けられている。
【0020】
上下側板14aの略真中には、それぞれ2本の切込み19が形成され、この切込み19で挟まれた側板14aの開口側端部に係合部20が設けられている。
この係合部20は、加入者保安器等のキャビネットに予め設けられている凹部等の被係合部と係合することにより、当該キャビネットとキャビネット取付装置2aとを係合させる作用をなすものである。
従って、図1等におけるように係合部20が凸状体の場合には、キャビネットにはこれと嵌合する凹状体の被係合部が形成されていることになり、逆に係合部20が凹状体であれば被係合部は凸状体に形成されていることになる。
また、図1等においては、上下側板14aにかかる係合部20を設けた場合を示しているが、左右側板14bに設けても良いことは明らかであり、さらには両方の側板14a,14bに設けても良い。
【0021】
上下のバンド孔18a,18aにおける底板14cの表面側のコーナ形状は、図3(a)に示すように、直角形状にしてもよいが、この場合には取付バンド8からの荷重がコーナに集中してしまい、破損の原因になり易い。このような場合には、図3(b)に示すように、このコーナ部にテーパを付けると荷重集中が抑制でき破損等が防止できるようになる。さらには、図3(c)に示すように一様傾斜のテーパではなく、曲率を持ったテーパとすることにより、荷重分散効果を向上させて上記破損等を効果的に抑制することが可能になる。
【0022】
キャビネット取付装置は概略上述したような構成であるが、図4に示す構成のキャビネット取付装置2b(2)、図5に示す構成のキャビネット取付装置2c(2)であっても良い。
図4に示すキャビネット取付装置2bは、耳板17が左右側板14bと同じ長さに形成され、貫通孔25bがその中間点の位置に形成された点が相違している。この貫通孔25bは、キャビネット取付装置2bを家屋の壁等にネジ止めする際に用いる孔である。
【0023】
また、図5に示すキャビネット取付装置2cは、耳板17の下端部を連結するように外線支持具28を設けた構成である。この外線支持具28は、加入者保安器等のキャビネットに出入する外線を支持固定するために用いられ、ベース板26と押板27とから構成されて、押板27の一端がベース板26に一体に形成されている。
そして、押板27の他端には貫通孔が形成され、この貫通孔と対向する位置のベース板26に雌ネジが形成され又は埋込まれている。
【0024】
無論、この押板27をベース板26に固定する方法は、ネジ止めに限らず、図6(a)に示すように、押板27に係合爪28を形成し、ベース板26にこの係合爪28が嵌合する係合孔29を形成した構成であっても良い。また、押板27はベース板26と一体に形成しなくてもよく、図6(b)に示すように左右端部をネジ30により固定する構成であっても良い。
【0025】
次に、このような構成のキャビネット取付装置の取付方法を説明する。その際キャビネット取付装置としては、図1に示すキャビネット取付装置2aを例に説明する。キャビネット取付装置2aは、図7に示すように壁のような平面体31、図8に示すように手摺りのような矩形体32、図9に示すようにポールのような円形体33等の種々の被取付体に取付けることが可能である。
【0026】
平面体31に取付ける場合には、キャビネット取付装置2aをこの平面体31の被取付体に宛い、貫通孔25aを介して木ネジ等で固定する。
【0027】
また、矩形体32に取付ける場合には、取付バンド8をキャビネット取付装置2aに形成した上下バンド孔18aに挿通して矩形体32を抱込み、当該取付バンド8の端部を緊結する。
【0028】
一方、ポールのような円形体33の場合には、原則縦方向に伸びるポールを想定しており、この場合は左右バンド孔18bに取付バンド8を挿通して取付ける。
【0029】
このようにして取付られたキャビネット取付装置2aの係合部20に、キャビネット35に設けられている被係合部を係合させて取付ける。
このとき、雨等が外線の出入口からキャビネット35に侵入しないように当該出入口が下側になるようにして係合させることが好ましい。
しかし、上下左右の側板に設けられている係合部20が非対称であると、キャビネット取付装置2aの取付状況により外線の出入口が下側に位置しなくなる場合があるので、上下左右の側板で係合部20を対称に設けることが好ましく、また上下左右の側板全てに係合部20を対称に設けてもよい。
【0030】
図10は、図9におけるBB矢視断面の部分図である。取付バンド8は、耳板17の上から当該耳板17を円形体33に押付けるように巻かれている。耳板17は、この取付バンド8からの力によりヒンジ部16で曲がり円形体33の側面に密接して、図9に示すように、ポールの長手方向に対して傾いたりすることがない。従って、円形体33に取付ける際にも取付安定性を確保することができる。なお、図9における矢印は、この傾き方向を示している。
【0031】
また、取付バンド8はキャビネット取付装置2aの底板14cの裏面に位置するため、取付バンド8を強固に締め付けても、底板14cに力が加わることがない。底板14cに力が加わらないため、キャビネット取付装置2aが変形して、蓋13が外れやすくなったりすることが無く、また底板14c等が割れたりすることがない。従って、信頼性の高い取付が可能になる。
【0032】
図1に示すキャビネット取付装置2aのサイズとして横幅が約58mm、縦が約77mm、耳板17の横幅が9.5mmの場合に、直径80〜150mmのポールに適用した結果、安定、かつ、強固に取付けることができ、その際にキャビネット取付装置2aが変形したりすることがなかった。
無論、この数値は例示であって、耳板17が曲がる範囲で取付けることが可能であることは言うまでもない。
【0033】
なお、上記説明では、加入者保安器等のキャビネットがキャビネット取付装置に係合する構成であったが、加入者保安器等のキャビネットをキャビネット取付装置で兼用することも可能であり、本発明は係る利用形態を排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例の説明に適用されるキャビネットの斜視図である。
【図2】図1におけるAA断面図である。
【図3】バンド孔の形状を説明するための図である。
【図4】図1に示す構成に代わるキャビネットの斜視図である。
【図5】図1に示す構成に代わるキャビネットの斜視図である。
【図6】外線支持具の他の構成を示す図である。
【図7】本発明に係るキャビネットを壁のような平面体に取り付けた際の様子を示す図である。
【図8】本発明に係るキャビネットを手摺りのような矩形体に取り付けた際の様子を示す図である。
【図9】本発明に係るキャビネットをポールのような円形体に取り付けた際の様子を示す図である。
【図10】図9におけるBB断面における部分図である。
【符号の説明】
【0035】
2a,2b,2c(2) キャビネット取付装置
8 取付バンド
14a 上下側板
14b 左右側板
14c 底板
16 ヒンジ部
17 耳板
18a 上下バンド孔
18b 左右バンド孔
28 外線支持具
26 ベース板
27 押板
31 平面体
32 矩形体
33 円形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雷サージや電力線の混触から通信機器を保護する加入者保安器、光ケーブル通信線の成端部、電力メータ等のキャビネットが係合して、当該キャビネットを家屋の壁等の平面体、ポール等の円形体或いは手摺り等の矩形体に取付けるキャビネット取付装置において、
該キャビネット取付装置が概略箱体をなし、その左右側板の付根部分にヒンジ部を介して設けられた長板状の耳板と、
左右の該耳板に形成された貫通孔と、
左右の前記ヒンジ部の一部を開口して形成された左右バンド孔とを備えて、
該キャビネット取付装置を前記平面体に取付ける際には前記貫通孔を介してねじ止めして取付け、前記円形体や矩形体に取付ける際には前記左右バンド孔に取付バンドを挿通し、前記耳板が前記ヒンジ部で曲がって該円形体や矩形体の形状に沿うように当該耳板を押付けながら取付けることを特徴とするキャビネット取付装置。
【請求項2】
箱状の前記キャビネット取付装置における底板に、その上下側板近傍を開口して形成した上下バンド孔を設けて、当該上下バンド孔に取付バンドを挿通して、前記円形体や矩形体に取付けることを特徴とする請求項1記載のキャビネット取付装置。
【請求項3】
左右又は上下の前記バンド孔に挿通した前記取付バンドの接触する孔壁が、該取付バンドと略一様に接触して当該取付バンドからの荷重を分散させるように傾斜して設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のキャビネット取付装置。
【請求項4】
左右の前記耳板を連結するように設けられたベース板と、
該ベース板に対して固定可能に設けられて、前記キャビネットに出入りする光ケーブル通信線等の外線を前記ベース板と共に挟んで支持する押板とを設けたことを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載のキャビネット取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−59911(P2006−59911A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−238368(P2004−238368)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(000153720)株式会社白山製作所 (36)
【Fターム(参考)】