説明

キャビネット

【課題】引戸とキャビネットの側板との間に指を挟んでも、安全に使用ができ、前後の引戸により前面開口が閉扉時において、物品収容部を露出させずにキャビネットの見栄えを向上させるキャビネットを提供する。
【解決手段】
左右方向に移動可能な引き違い式の前部引戸4と後部引戸3により、キャビネット本体2の前面開口を開閉するようにしたキャビネット1において、前部引戸4および後部引戸3を、キャビネット本体2における外側板7の前端より前方において開閉するように支持し、閉扉時における外側板7の少なくとも一部の前縁と前部引戸4または後部引戸3との間に、手の指を側方より挿入しうる間隙を設け、この間隙を、外側板7に設けた弾性閉塞片5により閉塞しうるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右方向に移動可能な引き違い戸により、キャビネット本体の前面開口を開閉するようにしたキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のキャビネットは、例えば特許文献1に記載されているように、キャビネットの前面開口に、前後の引戸を、左右方向に移動可能なように設けて、前面開口を閉じた際、キャビネット内の物品収納部が露出しないように、前後の引戸の内方の側端部同士が前後に重なり合う状態で、前後の引戸の外方の側端部がキャビネットの外側板にそれぞれ当接させるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−169912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されているキャビネットは、引戸の操作に不練れな使用者がキャビネットの前面開口を閉じる際、引戸の外方の側端部とキャビネットの外側板との間に指を挟むおそれがある。
【0005】
このような指を挟む状態を防止するために、前後の引戸とキャビネットの側壁との間の間隙を指の太さより広くすればよいが、このようにすると、キャビネット内の物品収納部が間隙から露出したり、キャビネットの見栄えが低下したりする。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、構造が簡単で、万一、引戸の外方の側端部とキャビネットの外側板との間に指を挟んでも、安全に使用することができ、かつ、閉扉時において、物品収容部を露出させることなく、見栄えを向上させることができるようにしたキャビネットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)左右方向に移動可能な引き違い式の前部引戸と後部引戸により、キャビネット本体の前面開口を開閉するようにしたキャビネットにおいて、前記前部引戸および後部引戸を、前記キャビネット本体における外側板の前端より前方において開閉するように支持し、閉扉時における前記外側板の少なくとも一部の前縁と前記前部引戸または後部引戸との間に、手の指を側方より挿入しうる間隙を設け、この間隙を、前記外側板に設けた弾性閉塞片により閉塞しうるようにする。
【0008】
このような構成とすると、閉扉時における外側板の少なくとも一部の前端と前部引戸または後部引戸との間に使用者の指が挟まれても、指が弾性閉塞片に当接して、弾性閉塞片が左右方向に撓むだけであるので、指に与える衝撃を緩和することができる。
また、弾性閉塞片は、閉扉時における外側板の前端と前部引戸または後部引戸との間に形成される間隙を閉塞するので、外側方よりキャビネット本体内の物品収納部が露出することがなく、キャビネットの見栄えを向上させることもできる。
【0009】
(2)上記(1)項において、前部引戸における外側端部に、後方に向かって突出し、かつ後部引戸を開いたときに、後部引戸の側端面に当接して、後部引戸の移動を規制する規制片を設け、この規制片の後端を、後部引戸の後面と同一面上に位置するようにする。
【0010】
このような構成とすると、規制片の後端が後部引戸の後面と同一面上に位置するので、規制片および後部引戸の後面と左右の外側板の前端および弾性閉塞片との距離が同一になり、弾性閉塞片の前後方向の長さを統一でき、キャビネットの構造を簡易にすることができる。
また、左右の引戸を、前後軸回りに180度回転させて使用する場合にも、両引戸に対する外側板および弾性閉塞片の形状等を変更することなく使用することができる。
【0011】
(3)上記(1)または(2)項において、間隙を、外側板の前端における上下方向の全長に亘って設け、それに伴って、弾性閉塞片も、外側板の前端における上下方向の全長に亘って設ける。
【0012】
このような構成とすると、前部引戸または後部引戸の外側端における上下方向のどのような部位を掴んで開閉操作する場合でも、指挾みによる衝撃を緩和することができ、安全性をより高めることができる。
【0013】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、キャビネット本体内における左右方向の中間部に中仕切板を設け、この中仕切板の少なくとも一部の前縁と後部引戸の背面との間に、手の指を外側方より挿入しうる間隙を設け、この間隙を、前記中仕切板に設けた弾性閉塞片により閉塞しうるようにする。
【0014】
このような構成とすると、後部引戸を開いたときに、後部引戸と中仕切板との間に指が挟まれても、指が弾性閉塞片に当接して、弾性閉塞片が左右方向に撓むだけであるので、指に与える衝撃を緩和させることができ、安全性を高めることができる。
【0015】
(5)上記(1)から(4)項のいずれかにおいて、前部引戸および/または後部引戸を筆記ボードとする。
【0016】
このような構成とすると、キャビネットの前部引戸および/または後部引戸を筆記ボードとして使用できるので、利便性が向上し、特に教室用の什器として好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、構造が簡単で、万一、引戸の外方の側端部とキャビネットの外側板との間に指を挟んでも、安全に使用でき、かつ、閉扉時において、物品収容部を露出させることなく、見栄えを向上させることができるようにしたキャビネットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のキャビネットの一実施形態の斜視図である。
【図2】図1のII−II線における横断平面図である。
【図3】図2のIII−III線における拡大縦断側面図である。
【図4】後部引戸を閉じる状態における左側部の拡大横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1〜図4は、本発明のキャビネットの一実施形態を示す。
【0020】
図1および図2に示すように、キャビネット1は、横長箱状のキャビネット本体2と、このキャビネット本体2の前方に設けた後部引戸3と、この後部引戸3の前方に設けた前部引戸4と、閉扉時における後部引戸3、および/または前部引戸4とキャビネット本体2との間に形成される間隙を閉塞する弾性閉塞片5、5とからなっている。
【0021】
キャビネット本体2は、底板6と、左右の外側板7、7と、後面板8と、天板9と、2枚の内側板10、10を重合して固着した中仕切板11とからなっている。
因みに、この例では、前面が開口する2個の筐体を左右に並べて結合することにより、互いに重合する内側板10、10をもって、中仕切板11を構成してある。
【0022】
左右の外側板7、7の内側面の前後部、および左右の内側板10、10の外面前後部には、それぞれ上下方向を向く角管状の補強部7a、10aが形成されている。
【0023】
図3に示すように、底板6の前端部、および天板9の前端部には、それぞれ左右方向を向く角管状の補強部6a、9aが、互いに対向するように設けられている。
【0024】
これらの上下の補強部9a、6aの前面には、嵌合孔12、13がそれぞれ設けられており、各嵌合孔12、13に、それぞれガイド支持板14、15の後半部を嵌合し、その後半部を各補強部9a、6a内に設けた補強部材16、17に、それぞれ前後2本の止めねじ18をもって固着することにより、ガイド支持板14、15は、その前半部が各補強部9a、6aより前方に突出するようにして、キャビネット本体2の前面上下部に取り付けられている。
【0025】
上方のガイド支持板14の前半部には、下面に前後1対の左右方向を向く案内溝19、19を設けた上部ガイド部材20が重合され、止めねじ21をもって固着されている。
【0026】
上部ガイド部材20における前後の案内溝19の側端部には、ゴムまたは合成樹脂製のストッパを兼ねる閉塞部材22が、止めねじ(図示略)をもって固着されている。
【0027】
下方のガイド支持板15の前半部上面には、上面に左右方向を向く前後1対のガイドレール23を設けた下部ガイド部材24が嵌合され、止めねじ25をもって固着されている。
【0028】
図1〜図3に示すように、後部引戸3および前部引戸4は、前面を筆記面としたホワイトボード等の方形の筆記ボード3a、4aを、方形の枠体3b、4b内に嵌着したものよりなっている。
後部引戸3の枠体3bにおける左側部前面には、上下方向に長い手掛け部26が凹設されており、前部引戸4の枠体4bにおける左右の両側部前面には、上下方向に長い手掛け部27、28が凹設されている。
【0029】
前部引戸4の枠体4bの左端部前面における手掛け部27より下方の部分には、シリンダ錠29が取り付けられている。
このシリンダ錠29は、閉扉時にキー(図示略)を挿入して、施錠方向に回動させることにより、ロックピン(図示略)が後部引戸3と係合して施錠され、キーを解錠方向に回動して、抜くことにより、ロックピンが後部引戸3から離脱して解錠されるようになっている。
【0030】
図3に示すように、後部引戸3の枠体3bにおける下端両側部には、下端に左右方向を向くガイド溝30aを有する左右1対の摺動体30(その左方のもののみを図示する)が設けられ、また枠体3bにおける上端両側部には、垂直軸31a回りに回転可能とした左右1対のガイドローラ31(その左方のもののみを図示する)が設けられている。なお、摺動体30に代えて、戸車(図示略)を用いることもある。
【0031】
後部引戸3は、ガイドローラ31を後方の案内溝19に嵌合し、摺動体30を後方のガイドレール23に跨嵌することにより、後方のガイドレール23に沿って、左右方向に円滑に摺動しうるようになっている。
また、前部引戸4も、図示は省略してあるが、後部引戸3と同様に、摺動体30およびガイドローラ31を備え、ガイドローラ31を前方の案内溝19に嵌合させて、摺動体30を前方のガイドレール23に跨嵌することにより、前方のガイドレール23に沿って左右方向に円滑に摺動しうるようになっている。
【0032】
後部引戸3の左右方向の幅は、キャビネット本体2の前面開口のほぼ半分を閉塞しうるものとしてある(図2参照)。
前部引戸4の左右方向の幅は、後部引戸3のそれよりも若干大とし、前部引戸4における枠体4bの右側部後面には、後方に向かって突出し、かつ後部引戸3を開いたときに、後部引戸3の右側端面に当接して、後部引戸3が前部引戸4より右方へ移動しないように規制する規制片32を設けてある。この規制片32の後端は、後部引戸3の後面と同一面上に位置するようにしてある。
【0033】
このように、引違い式の後部引戸3と前部引戸4とは、キャビネット本体2における左右の外側板7、7の前端より前方において開閉するように支持され、左右の外側板7、7の前端および中仕切板11の前端と、後部引戸3の後面および前部引戸4における規制片32の後端との間には、手の指を側方より挿入しうる間隙が形成されている。
【0034】
図2に示すように、キャビネット本体2における左右の外側板7の前方の補強部7aの内側面、および中仕切板11における左方の内側板10の前方の補強部10aの左側面には、上記各間隙の少なくとも一部、好ましくは全部を閉塞する弾性閉塞片5が、取付部材33をもって取付けられている。
【0035】
この取付部材33は、図4に示すように、外向コ字状をなし、その前端の外向片33aを、弾性閉塞片5における平面視内向コ字状の基部5aの差込溝5bに差し込んだ状態で、外側板7における前方の補強部7aの内側面に当接し、止めねじ34をもって補強部7aに固着することにより、弾性閉塞片5の基部5aを補強部7aと外向片33aとにより挾着し、弾性閉塞片5における基部5aの前面の左右方向の中間部に、前向きに突設された中空の可撓片5cを、前方を向くようして保持している。
【0036】
この例では、左右および中間のすべての弾性閉塞片5の前後方向の長さを同一としているが、例えば、規制片32を設けない場合等においては、右外側板7における弾性閉塞片5の前後方向の長さを、左外側板7における弾性閉塞片5の長さより大とし、閉扉時の前部引戸4の外側端(右側端)と右外側板7の前端との間に形成される間隙の少なくとも一部、好ましくは全部を閉塞するようにすることもある。
【0037】
右外側板7および中仕切板11への弾性閉塞片5の取付構造は、左外側板7への弾性閉塞片5の取付構造と左右対称となるので、それらについての詳細な説明は省略する。
【0038】
次に、図1〜図4を参照して、本実施形態のキャビネットにおける開閉動作について説明する。
【0039】
後部引戸3と前部引戸4を閉じているときは、後部引戸3の左側端は、左外側板7における弾性閉塞片5と前後方向にほぼ整合し、かつ前部引戸4の右側端の規制片32は、右外側板7における弾性閉塞片5と前後方向に整合し、キャビネット本体2内の物品収容部が外部に露呈することはない(図1および図2参照)。
【0040】
後部引戸3を開いた状態から、後部引戸3の左側端部を把持して閉じる際の閉じ終わる直前に、図4に示すように、後部引戸3における左側端部の裏面に掛けた指Fが、左外側板7における弾性閉塞片5に当接するが、そのとき、弾性閉塞片5の可撓片5cが、2点鎖線で示すように、外側方に弾性撓曲することにより、指Fに与える衝撃を緩和することができる。また、指Fが、左外側板7の前縁に直接当接するわけでないので安全である。さらに、指Fが、左外側板7における弾性閉塞片5に当接することにより、使用者に注意を促すことができるので、より安全性を高めることができる。
【0041】
弾性閉塞片5における可撓片5cは、左右方向に可撓性を有するとともに、中空構造をもって変形可能であるので、指Fを弾性閉塞片5と後部引戸3との間から容易に引き離すことができる。
【0042】
以上は、左外側板7に設けた弾性閉塞片5の作用および効果についてであるが、右外側板7および中仕切板11に設けた弾性閉塞片5も、同様の作用を有し、同様の効果を奏することができる。
【0043】
以上説明したように、このキャビネット1によると、左右の外側板7、7における弾性閉塞片5、5は、キャビネット本体2内における物品収容部を外側方に露出させないので、キャビネット1の見栄えを向上されることができる。
【0044】
また後部引戸3または前部引戸4の閉扉時に、左右の弾性閉塞片5、5が指Fの挾み込みを防止し、万一、指Fが挟まれた場合は衝撃を緩和することができる。さらに中仕切板11における弾性閉塞片5も、後部引戸3または前部引戸4の開扉時に、指Fの挾み込みを防止し、万一、指Fが挟まれた場合は衝撃を緩和することができ、安全性を向上させることができる。
【0045】
本発明のキャビネットは、上記実施形態に限定されるものではない。
上記実施形態において、規制片32を、前部引戸4の右側端部に設けるものとしてあるが、前部引戸4と後部引戸3の配置を左右に入れ替え、前部引戸4の左側端部に設けるものとすることもある。要は、後部引戸3の左右いずれか一方の移動を規制するようにすればよい。
また、各弾性閉塞片5を、外側板7の前縁の全長に亘って設けてあるが、例えば、外側板7の前縁の一部に後方に凹入し、手の指を側方より挿入しうる切欠きを設け、この切欠きを閉塞しうるように弾性閉塞片5を設けてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 キャビネット
2 キャビネット本体
3 後部引戸
3a筆記ボード
3b枠体
4 前部引戸
4a筆記ボード
4b枠体
5 弾性閉塞片
5a基部
5b差込溝
5c可撓片
6 底板
6a補強部
7 外側板
7a補強部
8 後面板
9 天板
9a補強部
10 内側板
10a補強部
11 中仕切板
12、13 嵌合孔
14、15 ガイド支持板
16、17 補強部材
18 止めねじ
19 案内溝
20 上部ガイド部材
21 止めねじ
22 閉塞部材
23 ガイドレール
24 下部ガイド部材
25 止めねじ
26、27、28 手掛け部
29 シリンダ錠
30 摺動体
30aガイド溝
31 ガイドローラ
31a垂直軸
32 規制片
33 取付部材
33a外向片
34 止めねじ
F 指

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に移動可能な引き違い式の前部引戸と後部引戸により、キャビネット本体の前面開口を開閉するようにしたキャビネットにおいて、
前記前部引戸および後部引戸を、前記キャビネット本体における外側板の前端より前方において開閉するように支持し、閉扉時における前記外側板の少なくとも一部の前縁と前記前部引戸または後部引戸との間に、手の指を外側方より挿入しうる間隙を設け、この間隙を、前記外側板に設けた弾性閉塞片により閉塞しうるようにしたことを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
前部引戸における外側端部に、後方に向かって突出し、かつ後部引戸を開いたときに、後部引戸の側端面に当接して、後部引戸の移動を規制する規制片を設け、この規制片の後端を、後部引戸の後面と同一面上に位置するようにした請求項1記載のキャビネット。
【請求項3】
間隙を、外側板の前端における上下方向の全長に亘って設け、それに伴って、弾性閉塞片も、外側板の前端における上下方向の全長に亘って設けた請求項1または2記載のキャビネット。
【請求項4】
キャビネット本体内における左右方向の中間部に中仕切板を設け、この中仕切板の少なくとも一部の前縁と後部引戸の背面との間に、手の指を外側方より挿入しうる間隙を設け、この間隙を、前記中仕切板に設けた弾性閉塞片により閉塞しうるようにした請求項1〜3のいずれかに記載のキャビネット。
【請求項5】
前部引戸および/または後部引戸を、筆記ボードとした請求項1〜4のいずれかに記載のキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−102467(P2012−102467A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249440(P2010−249440)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】