説明

キャピラリ、及び、それを用いたコンバイナ、及び、コンバイナの製造方法

【課題】 光の損失を低減することができるコンバイナを実現可能なキャピラリ、及び、それを用いたコンバイナ、及び、コンバイナの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 キャピラリ40は、長手方向に沿って複数の貫通孔41,42が形成され、長手方向に垂直な面における中心から所定の範囲内において、ガラスを透過する特定の波長のレーザ光を吸収する特定の元素が、所定の範囲外よりも高い濃度で添加されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の損失を低減することができるコンバイナを実現可能なキャピラリ、及び、それを用いたコンバイナ、及び、コンバイナの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅用光ファイバを用いたファイバレーザ装置は、集光性に優れ、パワー密度が高い小さなビームスポットが得られ、更に、非接触加工が可能であることから、レーザ加工分野、医療分野等、様々な分野において用いられている。特に加工分野や医療分野において用いられるファイバレーザ装置においては、高出力化がされている。
【0003】
ファイバレーザ装置に用いる増幅用光ファイバは、活性元素が添加されたコアと、コアの外周面を覆うクラッドとを備えている。そして、増幅用光ファイバのクラッドを伝播する励起光が活性元素に吸収されることで、活性元素が励起状態とされて、励起状態とされた活性元素の誘導放出により、コアを伝播する被増幅光が増幅されて出射されるというものである。クラッドに励起光を入射する方式として、増幅用光ファイバの端面から励起光を入射するエンドポンプ方式があり、この方式においては、一般的に増幅用光ファイバの端面に接続された複数の励起ファイバから増幅用光ファイバに励起光が入射される。この励起ファイバといった複数の光ファイバを1本の光ファイバに接続する場合、複数の光ファイバの位置を正確に合わせるため、円柱状のガラスに複数の貫通孔が形成されたキャピラリが用いられる場合がある。
【0004】
下記特許文献1には、このようなキャピラリを用いたコンバイナが記載されている。このコンバイナは、次のように製造される。まず、キャピラリの複数の貫通孔のそれぞれに光ファイバを挿入する。そして、貫通孔に光ファイバが挿入されたキャピラリを火炎トーチ等を用いて加熱溶融し、挿入された光ファイバとキャピラリとを一体化する。次に、マルチコアファイバ等の光ファイバに、キャピラリと一体化されたそれぞれの光ファイバをキャピラリと共に端面接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−277582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記コンバイナの製造過程において、キャピラリに挿入された光ファイバが、キャピラリを加熱する際に歪んでしまうと、光の損失を起こす虞がある。このため、光ファイバは、過剰に加熱されない方が良い。
【0007】
しかし、上述のようにキャピラリを火炎等で加熱する場合、キャピラリは、側面方向から加熱される。このとき、火炎に近い側は、加熱され易く、火炎から遠い側は加熱されづらい傾向がある。従って、火炎から遠い側の光ファイバを適切にキャピラリと一体化するためにキャピラリを加熱すると、火炎に近いが側の光ファイバが過剰に加熱され、光ファイバの外周面が歪んでしまう場合がある。このように外周面が歪んだ光ファイバにおいては、上述のように光の損失を起こす虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、光の損失を低減することができるコンバイナを実現可能なキャピラリ、及び、それを用いたコンバイナ、及び、コンバイナの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するためにレーザ光によりキャピラリを加熱する方法を検討した。具体的には、キャピラリに用いるガラスに、ガラスを透過する特定の波長のレーザ光を吸収する特定の元素を一様に添加し、この特定の波長のレーザ光をキャピラリに照射してキャピラリを加熱するというものである。これにより上記課題を解決することができると考えた。しかし、このようなキャピラリの加熱の方法では、火炎による加熱の方法と同様にして、キャピラリのレーザ光が照射される側が過剰に加熱される傾向があるということが分かった。そこで、本発明者は、更に鋭意検討を進めて、本発明をするに至った。
【0010】
すなわち、本発明のキャピラリは、長手方向に沿って複数の貫通孔が形成され、前記長手方向に垂直な面における中心から所定の範囲内において、ガラスを透過する特定の波長のレーザ光を吸収する特定の元素が、前記所定の範囲外よりも高い濃度で添加されていることを特徴とするものである。
【0011】
このようなキャピラリに光ファイバが挿入された状態で、特定の波長のレーザ光を照射することで、キャピラリの中心から所定の範囲に添加された特定の元素がレーザ光を吸収して発熱し、キャピラリと光ファイバとを一体化することができる。このときキャピラリは、中心側において発熱し、この熱が中心側から外周側に向けて伝導する。従ってキャピラリにおけるレーザ光が照射される側と、レーザ光が照射される側と反対側との温度差を抑制でき、キャピラリを全体的に加熱することができる。このためキャピラリの貫通孔に挿入された一部の光ファイバが過剰に加熱されて外周面が歪んでしまうことを防止することができる。このため、このようなキャピラリを用いることにより、光の損失を低減することができるコンバイナを実現することができる。
【0012】
さらに、前記元素の添加濃度は、前記長手方向に垂直な面における外周側から前記中心側にかけて徐々に高くされていることが好ましい。
【0013】
このように元素を添加することにより、中心側ほどレーザ光の吸収効率が高くなる。従って、キャピラリの側面側からレーザ光を照射する場合に、元素に吸収されることで、キャピラリの中心にレーザ光が到達するまでに、レーザ光の強度が弱くなったとしても、キャピラリの中心側において発熱することができる。従って、レーザ光を吸収する元素が添加される所定の範囲内において、外周側と中心側とが、適切に発熱するようバランスさせることができる。
【0014】
なお、このような添加濃度は、外周側から中心側にかけて、ステップ状に徐々に高くされても良く、なだらかな勾配で徐々に高くされても良い。
【0015】
また、前記所定の範囲よりも外周側の範囲には、前記特定の元素が添加されていないことが好ましい。
【0016】
キャピラリの外周側にレーザ光を吸収する元素を添加しないことにより、外周側でレーザ光が吸収されることを防止することができる。
【0017】
前記所定の範囲よりも外周側の範囲には、前記特定の波長のレーザ光と異なる波長の第2のレーザ光を吸収する第2の特定の元素が添加されていることとしても良い。
【0018】
このような構成のキャピラリにおいては、外周側を第2のレーザ光により加熱することで、更にキャピラリ全体を加熱することができる。
【0019】
また、本発明のコンバイナは、長手方向に沿って複数の貫通孔が形成され、前記長手方向に垂直な面における中心から所定の範囲内において、ガラスを透過する特定の波長のレーザ光を吸収する特定の元素が、前記所定の範囲外よりも高い濃度で添加されているキャピラリと、前記キャピラリのそれぞれの前記貫通孔に挿入されると共に、前記キャピラリと一体化される複数の光ファイバと、前記キャピラリ及び前記複数の光ファイバの端面が接続される他の光ファイバと、を備えることを特徴とするものである。
【0020】
このようなコンバイナは、キャピラリが貫通孔に挿入された一部の光ファイバが過剰に加熱されて外周面が歪んでしまうことを防止することができるため、光の損失を低減することができる。
【0021】
また、本発明のコンバイナの製造方法は、長手方向に沿って複数の貫通孔が形成され、前記長手方向に垂直な面における中心から所定の範囲内において、ガラスを透過する特定の波長のレーザ光を吸収する特定の元素が、前記所定の範囲外よりも高い濃度で添加されているキャピラリのそれぞれの貫通孔に、光ファイバを挿入する挿入工程と、前記キャピラリの側面方向から前記特定の波長のレーザ光を照射して、前記キャピラリを加熱し、それぞれの前記光ファイバと前記キャピラリとを一体化する一体化工程と、前記キャピラリ及びそれぞれの前記光ファイバの端面を、他の光ファイバに接続する接続工程と、を備えるものである。
【0022】
このようなコンバイナの製造方法によれば、上述のようにキャピラリの中心側から発熱することにより、キャピラリを全体的に加熱することができ、キャピラリの貫通孔に挿入された一部の光ファイバが過剰に加熱されて外周面が歪んでしまうことを防止することができる。このため、このようなキャピラリを用いることにより、光の損失を低減することができるコンバイナを実現することができる。
【0023】
更に、前記特定の波長のレーザ光は、互いに異なる複数の方向から照射されることが好ましく、この場合においては、さらにキャピラリを全体的に加熱することができる。
【0024】
また、前記キャピラリにおける前記所定の範囲よりも外周側の範囲には、前記特定の波長のレーザ光と異なる波長の第2のレーザ光を吸収する第2の特定の元素が添加されており、前記一体化工程において、さらに前記キャピラリの側面方向から前記第2のレーザ光を照射して、前記キャピラリを加熱することが好ましい。
【0025】
第2のレーザ光により、中心側に加えて、外周側をも加熱することで、更にキャピラリ全体を加熱することができる。従って、キャピラリの貫通孔に挿入された一部の光ファイバが過剰に加熱されることを更に抑制することができる。
【0026】
更に、前記第2のレーザ光は、互いに異なる複数の方向から照射されることが好ましく、この場合においては、さらにキャピラリを全体的に加熱することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明によれば、光の損失を低減することができるコンバイナを実現可能なキャピラリ、及び、それを用いたコンバイナ、及び、コンバイナの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係るコンバイナを用いたファイバレーザ装置を示す図である。
【図2】図1に示す増幅用光ファイバの長手方向に垂直な断面における構造を示す図である。
【図3】図1のコンバイナを示す図である。
【図4】図3のコンバイナの長手方向に垂直な断面における構造の様子を示す図である。
【図5】図4のキャピラリの様子を示す図であり、
【図6】コンバイナの製造工程を示すフローチャートである。
【図7】挿入工程後の様子を示す図である。
【図8】一体化工程の様子を示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るコンバイナに用いるキャピラリの様子を示す図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るコンバイナに用いるキャピラリの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るキャピラリ、及び、それを用いたコンバイナ、及び、コンバイナの製造方法の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るコンバイナを用いたファイバレーザ装置1を示す図である。
【0031】
図1に示すように、ファイバレーザ装置1は、種光を出力する種光源10と、光ファイバ増幅器2とを主な構成として備えており、MO−PA(Master Oscillator Power Amplifier)型のファイバレーザ装置とされる。
【0032】
種光源10は、例えば、レーザダイオードから成るレーザ光源や、ファブリペロー型やファイバリング型のファイバレーザ装置から構成されている。なお、種光源10から出力される種光は、信号光と呼ばれる場合があるが、特に種光に信号が重畳されている訳ではない。種光源10は、種光ファイバ15に接続されている。従って、種光源10から出力される種光は、種光ファイバ15を伝播する。
【0033】
また、光ファイバ増幅器2は、励起光を出力する励起光源20と、増幅用光ファイバ30と、種光源10から出力される種光、及び、励起光源20から出力される励起光を増幅用光ファイバ30に入力するためのコンバイナ3とを主な構成として備える。
【0034】
励起光源20は、複数のレーザダイオード(LD)21から構成される。また、励起光源20には、それぞれ励起ファイバ25が接続されている。従って、それぞれのLD21から出力される励起光は、励起ファイバ25を伝播する。
【0035】
図2は、図1に示す増幅用光ファイバ30の長手方向に垂直な断面における構造を示す図である。図2に示すように、増幅用光ファイバ30は、コア36と、コア36を被覆するクラッド37と、クラッド37を被覆する樹脂クラッド38とから構成されるダブルクラッドファイバとされている。クラッド37の屈折率はコア36の屈折率よりも低く、樹脂クラッド38の屈折率はクラッド37の屈折率よりもさらに低くされている。また、コア36の直径は、例えば、28μmとされ、クラッド37の外径は、例えば400μmとされ、樹脂クラッド38の外径は、例えば、450μmとされている。
【0036】
また、コア36を構成する材料としては、例えば、励起光源20から出力される励起光により励起状態とされるイッテルビウム(Yb)等の活性元素添加されたガラス(石英)が挙げられる。このような活性元素としては、希土類元素が挙げられ、希土類元素としては、上記Ybの他にツリウム(Tm)、セリウム(Ce)、ネオジウム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、エルビウム(Er)等が挙げられる。さらに活性元素として、希土類元素の他に、ビスマス(Bi)やクロム(Cr)等が挙げられる。また、コア36を構成するガラスには、必要に応じてコア36の屈折率を上昇させるゲルマニウム等の元素が添加される。また、クラッド37を構成する材料としては、コア36を構成するガラスに屈折率を上昇させる元素が添加されている場合には、例えば、何らドーパントが添加されていないガラスが挙げられ、コア36を構成するガラスに屈折率を上昇させる元素が添加されていない場合には、屈折率を低下させるフッ素等のドーパントが添加されたガラスが挙げられる。また、樹脂クラッドを構成する材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂が挙げられる。
【0037】
なお、上述のように増幅用光ファイバ30のコア36にドーパントとしてYbが添加されている場合においては、上述の種光源10から出力される種光は、特に制限されるものではないが、波長が1080nmのレーザ光とされ、さらに、それぞれのLD21から出力される励起光は、特に制限されないが、例えば910nmのレーザ光とされる。
【0038】
図3は、図1のコンバイナ3を示す図であり、図4は、図3のコンバイナ3の長手方向に垂直な断面における構造の様子を示す図である。図3及び図4に示すように、コンバイナ3は、貫通孔41及び複数の貫通孔42が形成されるキャピラリ40と、キャピラリ40の貫通孔41に挿入される種光ファイバ15と、それぞれの貫通孔42に挿入される励起ファイバ25と、キャピラリ40に端面接続されるブリッジファイバ50とを主な構成として備える。なお、図3においては、理解の容易のため、キャピラリ40とブリッジファイバ50と増幅用光ファイバ30とを離間して示している。
【0039】
キャピラリ40は、円柱状の外形をしており、径方向の中心において、一方の端面43から他方の端面44まで貫通する貫通孔41が、長手方向に沿って形成されており、貫通孔41を囲むように、励起ファイバ25と同数の貫通孔42が、一方の端面43から他方の端面44まで長手方向に沿って形成されている。このキャピラリ40の直径は必要な直径の貫通孔41,42を形成できる限りにおいて、特に限定されないが、例えば1000μmとされる。
【0040】
そして、種光ファイバ15における種光源10に接続される側と反対側の端部が、キャピラリ40の貫通孔41に一方の端面43から他方の端面44まで挿入されており、それぞれの励起ファイバ25における励起光源20に接続される側と反対側の端部が、それぞれの貫通孔42に一方の端面43から他方の端面44まで挿入されている。さらに、この状態において、貫通孔41、42がコラプスされており、種光ファイバ15及びそれぞれの励起ファイバ25とキャピラリ40とが一体とされている。なお、種光ファイバ15及びそれぞれの励起ファイバ25とキャピラリ40とが一体とされた状態で、キャピラリ40内における種光ファイバ15の外周面及び励起ファイバ25の外周面は、歪みが抑制されている。
【0041】
また、図3、図4に示すように、種光ファイバ15は、コア16と、コア16を被覆するクラッド17とを有し、例えば、シングルモードファイバとされる。クラッド17の屈折率は、コア16の屈折率よりも低くされている。また、コア16の直径は、例えば4μmとされ、クラッド17の外径は、例えば、125μmとされている。また、種光ファイバ15のコア16を構成する材料としては、例えば、ゲルマニウムが添加されたガラスが挙げられ、クラッド17を構成する材料としては、例えば、添加物のないガラスが挙げられる。
【0042】
複数の励起ファイバ25は、励起光源20のLD21の数と同じ数とされ、それぞれの励起ファイバ25は、コア26と、コア26を被覆するクラッド27とを有し、例えば、マルチモードファイバとされる。それぞれの励起ファイバ25のクラッド27の屈折率は、コア26の屈折率よりも低くされる。また、それぞれの励起ファイバ25のコア26の直径は、例えば、105μmとされ、クラッド27の外径は、例えば、125μmとされている。また、それぞれの励起ファイバ25のコア26を構成する材料としては、例えば、何もドーパントが添加されていないガラスが挙げられ、クラッド27を構成する材料としては、例えば、フッ素が添加されたガラスが挙げられる。
【0043】
キャピラリ40は、ガラス(石英)から構成されている。そして、キャピラリ40の屈折率は、種光ファイバ15のクラッド17の屈折率よりも低いことが好ましい。このように構成することにより、種光ファイバ15のクラッド17を伝播する光が、キャピラリ40に伝播することを抑制することができる。このように構成するには、例えば、種光ファイバ15のクラッド17を何らドーパントが添加されていないガラスから構成し、キャピラリ40をフッ素が添加されたガラスから構成すれば良い。或いは、キャピラリ40の屈折率は、種光ファイバ15のクラッド17の屈折率と同等であり、かつ、励起ファイバ25のクラッド27の屈折率よりも高いことがやはり好ましい。このように構成することにより、種光ファイバ15のクラッド17を伝播する光が、キャピラリ40に伝播することがあるが、この光が励起ファイバ25のクラッド27に伝播することを抑制することができる。このように構成するには、例えば、種光ファイバ15のクラッド17、及び、キャピラリ40を何らドーパントが添加されていないガラスから構成し、励起ファイバ25のクラッド27をフッ素が添加されたガラスから構成すれば良い。
【0044】
図5は、図4のキャピラリの様子を示す図であり、具体的には、図5(A)は、キャピラリ40の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図で、図5(B)は、キャピラリ40に添加される特定の元素の濃度分布の様子を示す図である。
【0045】
キャピラリ40には、キャピラリ40を構成するガラスを透過する特定の波長のレーザ光を吸収する特定の元素が添加されている。なお、理解の容易のため、図5(B)においては、貫通孔42が形成されていないものとして、特定の限度の濃度分布を示している。図5に示すように、この特定の元素は、キャピラリ40の長手方向に垂直な面における中心から所定の範囲内である領域ARにおいて一定の濃度で添加されている。なお、図5(A)において破線で示すように、本実施形態の領域ARは、貫通孔42の僅かに外側とされている。そして、キャピラリ40における領域ARよりも外周側の範囲である領域ARには、この特定の元素が添加されていない。本実施形態においては、キャピラリ40には、特定の元素として、サマリウム(Sm)が添加されている。サマリウムは、波長が1064nmのレーザ光を吸収し、この波長のレーザ光は、キャピラリを構成するガラスを透過する。
【0046】
また、図3に示すようにブリッジファイバ50は、径方向の中心に設けられるコア56と、コア56を被覆するクラッド58とを有しており、一方の端部の外径が縮径されているテーパファイバである。具体的には、ブリッジファイバ50のキャピラリ40と端面接続される側は、キャピラリ40と同等の外径を保っており、途中から外形が徐々に小さくされることで、キャピラリ40側と反対側の端部が、最も縮径されている。ブリッジファイバ50におけるキャピラリ40側の直径は、キャピラリ40の直径と同様とされ、キャピラリ40側と反対側は、増幅用光ファイバ30のクラッド37と同様とされる。
【0047】
また、クラッド58の屈折率は、コア56の屈折率よりも低くされている。このようなコア56の材料としては、例えば、ゲルマニウムが添加されたガラスが挙げられ、クラッド58を構成する材料としては、例えば、添加物のないガラスが挙げられる。
【0048】
そして、ブリッジファイバ50の縮径されていない側の端面51とキャピラリ40の他方の端面44とが接続されることにより、種光ファイバ15のコア16とブリッジファイバ50のコア56とが接続され、それぞれの励起ファイバ25のコア26とブリッジファイバ50のクラッド58とが接続されている。このようにしてコンバイナ3は、構成されている。
【0049】
また、コンバイナ3において、ブリッジファイバ50の縮径されている側の端面52と増幅用光ファイバ30の一方側の端面が接続されて、ブリッジファイバ50のコア56と増幅用光ファイバ30のコア36とが接続され、ブリッジファイバ50のクラッド58と増幅用光ファイバ30のクラッド37とが接続されている。こうして、ブリッジファイバ50を介して、種光ファイバ15のコア16と増幅用光ファイバ30のコア36とが結合され、励起ファイバ25のコア26と増幅用光ファイバ30のクラッド37とが結合される。
【0050】
このようなファイバレーザ装置1は、次のように動作する。
【0051】
まず、励起光源20の複数のLD21から励起光が出力される。出力される励起光は、上述のように、例えば、910nmの波長とされる。それぞれのLD21から出力された励起光は、それぞれの励起ファイバ25を伝播し、コンバイナ3において、ブリッジファイバ50の縮径されていない側の端面51からクラッド58に入力する。このとき上述のように、キャピラリ40内におけるそれぞれの励起ファイバ25の外周面は、歪みが抑制されているため、コンバイナ3において励起光が損失することが抑制されている。そして、クラッド58から増幅用光ファイバ30のクラッド37に入力して、クラッド37を主に伝播する。
【0052】
また、種光源10から種光が出力される。出力される種光は、上述のように、例えば、1080nmの波長とされる。そして、種光は、種光ファイバ15のコア16を伝播して、コンバイナ3において、ブリッジファイバ50のコア56に入力する。このとき上述のように、キャピラリ40内における種光ファイバ15の外周面は、歪みが抑制されているため、コンバイナ3において種光が損失することが抑制されている。そして、種光は、ブリッジファイバ50のコア56から、増幅用光ファイバ30のコア36に入力して、コア36を伝播する。
【0053】
そして、増幅用光ファイバ30において、クラッド37を伝播する励起光がコア36を通過するときに、コア36に添加されている活性元素を励起状態として、励起状態とされた活性元素の誘導放出により、コア36を伝播する種光が増幅される。こうして、増幅された種光が出力光として、増幅用光ファイバ30から出力される。
【0054】
このようなファイバレーザ装置1は、上述のようにコンバイナ3において、種光ファイバ15及び励起ファイバ25の外周面が歪んでおらず、種光及び励起光の損失が少ない。従って、効率の良い光の増幅が行われ、パワーの大きな出力光を得ることができる。
【0055】
次にコンバイナ3の製造方法について、説明する。
【0056】
図6は、コンバイナ3の製造工程を示すフローチャートである。図6に示すように、本実施形態のコンバイナ3は、キャピラリ40と、種光ファイバ15と、励起ファイバ25と、ブリッジファイバ50とを準備する準備工程P1と、キャピラリ40のそれぞれの貫通孔41、42に、種光ファイバ15、励起ファイバ25を挿入する挿入工程P2と、キャピラリ40の側面方向から特定の波長のレーザ光を照射して、キャピラリ40を加熱し、種光ファイバ15及びそれぞれの励起ファイバ25とキャピラリ40とを一体化する一体化工程P3と、キャピラリ40及び種光ファイバ15及びそれぞれの励起ファイバ25を、ブリッジファイバに接続する接続工程P4と、を備える。
【0057】
<準備工程P1>
キャピラリ40を準備する。キャピラリ40の準備は、例えば、次のように行う。まず、図5(A)に示す領域ARよりも外周側の領域ARとなる第1のガラス管を準備する。この第1のガラス管には、特定の元素(本実施形態においてはサマリウム)が添加されていない。次に、この第1のガラス管の貫通孔内に、第1のガラス管の内径よりも僅かに外径が小さく、貫通孔41に対応する貫通孔を有する第2のガラス管を挿入する。この第2のガラス管を構成するガラスには、特定の元素が図5(B)に示す濃度で一様に添加されている。次に、第2のガラス管の貫通孔に所定の圧力を加えながらコラプスして、第1のガラス管と第2のガラス管とを一体化する。このとき、一体化されたガラス体の径方向の中心には貫通孔41に対応する貫通孔が形成されている。そして、この貫通孔を囲むように複数の貫通孔を貫通孔42と対応するように形成する。この貫通孔は、ドリル等を用いて形成し、その後、内壁面を研磨すれば良い。こうして、キャピラリ40となる母材を得る。このキャピラリ40の母材は、中心から所定の範囲の領域に特定の元素が一様に添加されている。なお、キャピラリ40を構成するガラスに、フッ素が添加される場合は、キャピラリ40となる母材を構成するガラスの全体にフッ素が添加される。
【0058】
次に、この母材のそれぞれの貫通孔内に所定の圧力を加えながら加熱して、母材を線引きする。そして、線引したガラス体を所定の長さに切断し、図5に示すキャピラリ40を得る。
【0059】
更に、種光ファイバ15、励起ファイバ25を準備する。種光ファイバ15及び励起ファイバ25は、コアとクラッドが共にガラスから成る、一般的なシングルモードファイバやマルチモードファイバを準備すれば良い。
【0060】
さらにブリッジファイバを準備する。ブリッジファイバ50の準備においては、キャピラリ40と同じ外径を有する光ファイバを、加熱しながら延伸して、適切な部位で切断する。こうして、一方側の外径がキャピラリ40と同じ外径であり、他方側の外径が増幅用光ファイバ30のクラッド37と同じ外径のブリッジファイバ50を得る。
【0061】
<挿入工程P2>
次にキャピラリ40の貫通孔41に種光ファイバ15の端部を挿入すると共に、キャピラリ40の貫通孔42にそれぞれの励起ファイバ25の端部を挿入する。こうして、図7に示すように、キャピラリ40のそれぞれの貫通孔41、42に種光ファイバ15、及び、それぞれの励起ファイバ25が挿入された状態となる。
【0062】
<一体化工程P3>
次に貫通孔41、42に種光ファイバ15、及び、それぞれの励起ファイバ25が挿入されたキャピラリ40を加熱して、種光ファイバ15及びそれぞれの励起ファイバ25と、キャピラリ40とを一体化する。この加熱においては、キャピラリ40を構成するガラスを透過して、キャピラリ40に添加されている特定の元素により吸収される特定の波長のレーザ光を用いる。本実施形態のように、特定の元素としてサマリウムが添加されている場合には、上述のように波長が1064nmのレーザ光(例えば、Nd:YAGレーザ)を用いる。図8は、本工程の様子を示す図である。図8に示すように、レーザ光は、キャピラリ40の側面方向から照射する。するとキャピラリに添加されている特定の元素がレーザ光を吸収して発熱する。この特定の元素は、上述のようにキャピラリの中心から所定の範囲内である領域ARに添加されているため、キャピラリ40の中心側から発熱して、この熱が、キャピラリ40の外周側に伝導する。なお、図8に示すように、レーザ光を互いに異なる複数の方向から照射することが好ましい。このようにレーザ光を照射することにより、領域AR内における発熱量のばらつきを更に抑制することができる。
【0063】
こうして図3、4に示すように種光ファイバ15及び励起ファイバ25と、キャピラリ40とが一体化された状態となる。
<接続工程P4>
次に種光ファイバ15及び励起ファイバ25と一体化されたキャピラリ40と、ブリッジファイバ50とを接続する。この接続は、ブリッジファイバ50におけるキャピラリ40の外径と同じ外径を有する側の端面51と、キャピラリ40における種光ファイバ15及び励起ファイバ25が導出していない側の端面44とを対向させて、種光ファイバ15のコア16と、ブリッジファイバ50のコア56とが一致するようにして接続する。キャピラリ40とブリッジファイバ50との接続は、酸水素バーナやCoレーザ等を用いて、キャピラリ40及びブリッジファイバ50のそれぞれの端面を溶融して接続すれば良い。
【0064】
こうして、図3に示すコンバイナ3を得る。
【0065】
なお、増幅用光ファイバ30は、このコンバイナ3のブリッジファイバ50のキャピラリ40側と反対側の端面に接続する。この接続は、キャピラリ40とブリッジファイバ50との接続と同様に行えば良い。
【0066】
以上説明したように、本発明のキャピラリ40に種光ファイバ15や励起ファイバ25等の光ファイバが挿入された状態で、特定の波長のレーザ光を照射することで、キャピラリ40と種光ファイバ15や励起ファイバ25等の光ファイバとを一体化することができる。このときキャピラリ40は、上述のように中心側において発熱し、この熱が中心側から外周側に向けて伝導する。従ってキャピラリ40におけるレーザ光が照射される側と、レーザ光が照射される側と反対側との温度差を抑制でき、キャピラリを全体的に加熱することができる。このためキャピラリ40の貫通孔41、42に挿入された光ファイバの内一部の光ファイバが過剰に加熱されて、光ファイバの外周面が歪んでしまうことを防止することができる。このため、このようなキャピラリ40を用いることにより、光の損失を低減することができるコンバイナ3を実現することができる。
【0067】
このように本実施形態のコンバイナ3は、種光ファイバ15及び励起ファイバ25の外周面が歪んでしまうことが防止されているため、種光ファイバ15や励起ファイバ25を伝播する光の損失を抑制することができ、さらに、このコンバイナ3を用いた光ファイバ増幅器2やファイバレーザ装置1においては、励起光や種光の損失が抑制されるので、優れた増幅効率とすることができる。
【0068】
また、本実施形態のキャピラリ40においては、所定の範囲内の領域ARよりも外周側の範囲の領域ARには、特定の元素が添加されていないため、キャピラリ40の外周側においてレーザ光が吸収され、キャピラリ40の中心側における発熱量が低下することを防止することができる。
【0069】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図9を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。図9は、本実施形態のコンバイナに用いるキャピラリ40aの様子を示す図であり、具体的には、図9(A)は、キャピラリ40aの長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図で、図9(B)は、キャピラリ40aに添加される特定の元素の濃度分布の様子を示す図である。
【0070】
本実施形態のキャピラリ40aは、第1実施形態のキャピラリ40と同様の形状をしており、第1実施形態のキャピラリ40と同様にしてガラスから構成されている。ただし、本実施形態のキャピラリ40aは、中心から所定の範囲内である領域ARに添加される特定の元素の濃度が、キャピラリ40の外周側から中心側にかけてステップ状に徐々に高くされている点において、第1実施形態のキャピラリ40と異なる。なお、理解の容易のため、図9(B)においては、図5(B)と同様にして、貫通孔42が形成されていないものとして、特定の限度の濃度分布を示している。
【0071】
このようなキャピラリ40aは、次のように作製する。まず、第1実施形態におけるキャピラリの作製と同様にして、領域ARよりも外周側の領域ARとなる第1のガラス管を準備する。この第1のガラス管には、特定の元素が添加されていない。次に、この第1のガラス管の貫通孔内に、第1のガラス管の内径よりも僅かに外径が小さな第2のガラス管を挿入する。この第2のガラス管を構成するガラスには、特定の元素が僅かに添加されている。次に、第2のガラス管の貫通孔内に、第2のガラス管の内径よりも外径が僅かに小さな第3のガラス管を挿入する。この第3のガラス管を構成するガラスには、第2のガラス管よりも特定の元素が高い濃度で添加されている。このように次々にガラス管を内側に挿入し、内側のガラス管ほど特定の元素の濃度が高くされるようにする。そして、最後に貫通孔41となる部分にガラスロッドを挿入する。次に、中心にガラスロッドが挿入され、幾重にもガラス管が挿入されているガラス体を加熱してコラプスして、一体化する。次に、一体化されたガラス体の径方向の中心に貫通孔41に対応する貫通孔を形成し、さらに、この貫通孔を囲むように複数の貫通孔を貫通孔42と対応するように形成する。この貫通孔は、第1実施形態において、貫通孔42に対応する貫通孔を形成した方法と同様の方法により行えば良い。こうして、キャピラリ40aとなる母材を得る。このキャピラリ40aの母材は、中心から所定の範囲の領域に特定の元素が添加されて、この特定の元素の濃度は、外周側から中心側に向けてステップ状に徐々に高くされている。なお、キャピラリ40aを構成するガラスに、フッ素が添加される場合は、キャピラリ40aとなる母材を構成するガラスの全体にフッ素が添加される。
【0072】
次に、第1実施形態と同様に、この母材のそれぞれの貫通孔内に所定の圧力を加えながら加熱して、母材を線引きする。そして、線引したガラス体を所定の長さに切断し、キャピラリ40aを得る。
【0073】
そして、このキャピラリ40a用いたコンバイナは、第1実施形態のキャピラリ40の代わりにキャピラリ40a用いること以外、第1実施形態と同様に製造すれば良い。従って、本実施形態のキャピラリ40aを用いたコンバイナは、第1実施形態のキャピラリ40の代わりに本実施形態のキャピラリ40aを用いられた構成となる。
【0074】
本実施形態のキャピラリ40aにおいては、特定の元素の濃度が、領域ARにおいて、外周側から中心側に向けてステップ状に徐々に高くされているため、キャピラリ40aの中心側ほどレーザ光の吸収効率が高くなる。従って、一体化工程において、キャピラリ40aの側面側からレーザ光を照射する場合に、キャピラリ40の中心にレーザ光が到達するまでに、このレーザ光が特定の元素に吸収されレーザ光の強度が弱くなったとしても、キャピラリ40aの中心側において発熱することができる。従って、レーザ光を吸収する特定の元素が添加される所定の範囲内ARにおける比較的外周側と、中心側とで、適切に発熱するようバランスさせることができる。従って、光の損失を更に低減することができるコンバイナを実現することができる。
【0075】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図10を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。図10は、本実施形態のコンバイナに用いるキャピラリ40bの様子を示す図であり、具体的には、図10(A)は、キャピラリ40bの長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図で、図10(B)は、キャピラリ40bに添加される特定の元素の濃度分布の様子を示す図である。
【0076】
図10に示すように、本実施形態のキャピラリ40bは、中心に設けられる貫通孔41を囲むように複数の貫通孔42aが形成されており、更に、貫通孔41及びそれぞれの貫通孔42aを囲むようにして、貫通孔42aの外周側に複数の貫通孔42bが形成されている。
【0077】
また、本実施形態においては、中心から所定の範囲の領域ARと、この所定の範囲よりも外周側の範囲の領域ARとの境界が、複数の貫通孔42aと複数の貫通孔42bとの間とされている。そして、本実施形態のキャピラリ40bは、第1実施形態のキャピラリ40と同様にしてガラスから構成され、領域ARには、第1実施形態と同様にして特定の元素が一様に添加されているが、領域ARには、特定の波長のレーザ光の波長と異なり、かつ、キャピラリ40bを構成するガラスを透過する波長の第2のレーザ光を吸収する第2の特定の元素が添加されている。この第2の特定の元素は、第1の特定の元素と異なる元素である。例えば、第1実施形態と同様にして、特定の元素がサマリウムである場合、第2の特定の元素は、例えば、ツリウム(Tm)とされる。サマリウムは、波長1064nmのレーザ光の吸収率が高いが、波長1650nmのレーザ光の吸収率が低い。一方、ツリウムは、波長1650nmのレーザ光の吸収率が高いが、波長1064nmのレーザ光の吸収率が低い。この場合、キャピラリに波長が1064nmのレーザ光を照射すると、第1実施形態と同様にして、キャピラリの中心側が加熱される。さらに、波長が1650nmのレーザ光を照射すれば、補填的にキャピラリの外周側をも加熱することができる。
【0078】
なお、図10(B)においては、特定の元素の濃度よりも第2の特定の元素の濃度が低く添加されている様子を示しているが、第2の特定の元素の濃度は、特定の元素の濃度よりも高くされても良く、同等とされても良い。
【0079】
このようなキャピラリ40bを準備するには、第1実施形態の準備工程において、第1のガラス管にツリウムを添加すれば良い。
【0080】
そして、このキャピラリ40b用いたコンバイナは、第1実施形態のキャピラリ40の代わりにキャピラリ40b用いること以外、第1実施形態と同様に製造すれば良い。従って、本実施形態のキャピラリ40bを用いたコンバイナは、第1実施形態のキャピラリ40の代わりに本実施形態のキャピラリ40bを用いられた構成となる。
【0081】
このような構成のキャピラリ40bにおいては、外周側を第2のレーザ光により加熱することで、更にキャピラリ全体を加熱することができる。
【0082】
以上、本発明について、第1〜第3実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
例えば、第2実施形態において、特定の元素の濃度が、外周側から中心側にステップ状に徐々に高くされたが、ステップ状ではなく、なだらかな勾配で徐々に高くされても良い。
【0084】
また、第3実施形態において、特定の元素や第2の特定の元素の濃度が、外周側から中心側にかけて徐々に高くされても良い。この場合、ステップ状に徐々に高くされても良く、なだらかな勾配で徐々に高くされても良い。
【0085】
また、特定の元素や第2の特定の元素は、サマリウムやツリウムに限らず、他の元素とすることができる。例えば、ネオジム(Nd)であれば、波長1550nmのレーザ光を吸収し、かつ、ガラスを透過することができる。同様にプロセオジム(Pr)であれば、波長1450nmのレーザ光を吸収し、かつ、ガラスを透過することができる。このようにガラスを透過する波長のレーザ光を吸収する元素としては、上記の他に、例えば、イッテルビウム(Yb)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)を挙げることができる。
【0086】
また、第1、第2実施形態において、中心から所定の範囲外の領域ARにおいて、特定の元素が、所定の範囲内の領域ARよりも低い濃度で添加されていても良い。
【0087】
また、上記実施形態のコンバイナは、種光ファイバ15や励起ファイバ25と異なる他の光ファイバとしてのブリッジファイバ50がキャピラリ40に接続されていたが、本発明はこれに限らず、他の光ファイバとして増幅用光ファイバが用いられ、キャピラリ40と増幅用光ファイバ30とが直接接続されても良い。この場合、増幅用光ファイバ30のクラッド37の外径と、キャピラリ40の外径とが同じ大きさとされる。このように、キャピラリ40が接続される光ファイバは、特に限定されない。
【0088】
更に、キャピラリ40のそれぞれの貫通孔41,42に挿入される光ファイバも種光ファイバ15や励起ファイバ25に限定されず、他の光ファイバが挿入されても良い。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明したように、本発明によれば、光の損失を低減することができるコンバイナを実現可能なキャピラリ、及び、それを用いたコンバイナ、及び、コンバイナの製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0090】
1・・・ファイバレーザ装置
2・・・光ファイバ増幅器
3・・・コンバイナ
10・・・種光源
15・・・種光ファイバ
16・・・コア
17・・・クラッド
20・・・励起光源
25・・・励起ファイバ
26・・・コア
27・・・クラッド
30・・・増幅用光ファイバ
36・・・コア
37・・・クラッド
38・・・樹脂クラッド
40,40a,40b・・・キャピラリ
41,42,42a,42b・・・貫通孔
50・・・ブリッジファイバ
56・・・コア
58・・・クラッド
P1・・・準備工程
P2・・・挿入工程
P3・・・一体化工程
P4・・・接続工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って複数の貫通孔が形成され、前記長手方向に垂直な面における中心から所定の範囲内において、ガラスを透過する特定の波長のレーザ光を吸収する特定の元素が、前記所定の範囲外よりも高い濃度で添加されている
ことを特徴とするキャピラリ。
【請求項2】
前記元素の添加濃度は、前記長手方向に垂直な面における外周側から前記中心側にかけて徐々に高くされている
ことを特徴とする請求項1に記載のキャピラリ。
【請求項3】
前記所定の範囲よりも外周側の範囲には、前記特定の元素が添加されていないことを特徴とする請求項1または2に記載のキャピラリ。
【請求項4】
前記所定の範囲よりも外周側の範囲には、前記特定の波長のレーザ光と異なる波長の第2のレーザ光を吸収する第2の特定の元素が添加されていることを特徴とする請求項1に記載のキャピラリ。
【請求項5】
長手方向に沿って複数の貫通孔が形成され、前記長手方向に垂直な面における中心から所定の範囲内において、ガラスを透過する特定の波長のレーザ光を吸収する特定の元素が、前記所定の範囲外よりも高い濃度で添加されているキャピラリと、
前記キャピラリのそれぞれの前記貫通孔に挿入されると共に、前記キャピラリと一体化される複数の光ファイバと、
前記キャピラリ及び前記複数の光ファイバの端面が接続される他の光ファイバと、
を備えることを特徴とするコンバイナ。
【請求項6】
長手方向に沿って複数の貫通孔が形成され、前記長手方向に垂直な面における中心から所定の範囲内において、ガラスを透過する特定の波長のレーザ光を吸収する特定の元素が、前記所定の範囲外よりも高い濃度で添加されているキャピラリのそれぞれの貫通孔に、光ファイバを挿入する挿入工程と、
前記キャピラリの側面方向から前記特定の波長のレーザ光を照射して、前記キャピラリを加熱し、それぞれの前記光ファイバと前記キャピラリとを一体化する一体化工程と、
前記キャピラリ及びそれぞれの前記光ファイバの端面を、他の光ファイバに接続する接続工程と、
を備えるコンバイナの製造方法。
【請求項7】
前記特定の波長のレーザ光は、互いに異なる複数の方向から照射されることを特徴とする請求項6に記載のコンバイナの製造方法。
【請求項8】
前記キャピラリにおける前記所定の範囲よりも外周側の範囲には、前記特定の波長のレーザ光と異なる波長の第2のレーザ光を吸収する第2の特定の元素が添加されており、
前記一体化工程において、さらに前記キャピラリの側面方向から前記第2のレーザ光を照射して、前記キャピラリを加熱する
ことを特徴とする請求項6または7に記載のコンバイナの製造方法。
【請求項9】
前記第2のレーザ光は、互いに異なる複数の方向から照射されることを特徴とする請求項8に記載のコンバイナの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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