説明

キャブレタ

【課題】 エンジンの急減速時に排気管内のアフタバーンを効果的に防止するキャブレタを提供する。
【解決手段】 吸気管内の負圧に連動して作動するダイアフラム21にバルブシャフト20を介して排気ポートへの二次空気の供給を制御するエアカットバルブ19を連結する。バルブシャフト20を軸受部29のシャフト孔29Cに気密的に挿通する。バルブシャフト20に溝20Aを設ける。シャフト孔29Cに交差してパイロットエア通路29A、29Bを設ける。バルブシャフト20の溝20Aとシャフト孔29Cに交差するパイロットエア通路29A、29Bとによりスプール弁を構成する。上記構成をキャブレタに一体的に設け、セカンドエアバルブ機能とコースティングリッチャ機能をキャブレタに持たせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コースティングリッチャ機能を備えたキャブレタと排気ガス浄化のために内燃機関の排気系に2次空気を供給する2次空気供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、排気ガスの浄化のために排気ポートに2次空気を供給する2次空気供給装置が知られている(特許文献1)。しかし排気ポートに2次空気を供給すると、アフタバーン発生の頻度が上昇するという問題がある。特に急減速時には、A/Fリーンにより失火が起こり、2次空気が供給された排気管内で再着火して大きな爆発音を発生することがある。
【0003】
このような問題を防止するために、急減速時に発生する吸気管の負圧を感知してキャブレタのパイロット系からの燃料供給量を増大させるコースティングリッチャをキャブレタに搭載し、排気管内で再着火が発生しないレベルまでA/Fを濃くする構成が知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特許第2825062号公報
【特許文献2】特許第3424135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
またより効果的にアフタバーンを防止するために、コースティングリッチャの採用に加え、2次空気供給装置における2次空気の供給を上記急減速時、負圧を検知して停止する構成がある。しかしこの場合、動作が類似する機構を重複して採用することになる。そして2つの装置間の動作を同期させることが難しいため作動タイミングのバラツキを考慮し排ガス値を犠牲にした設定をしなければならない。この課題を1個のアクチュエータで2次空気供給装置とコースティングリッチャを機能させることでバラツキのファクタを減らして対応するものである。
【0005】
本願発明は、制御する空気量は異なるが類似の動作をする機構が重複して(一方はキャブレタに装置し、他方はシリンダヘッドの排気通路近傍に装着されて)コストを押し上げていることに鑑みてなされたものであり、これらをキャブレタに集約して一体化し、大幅なコストダウンを達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るキャブレタは、内燃機関の吸気系に設けられるキャブレタであって、キャブレタの本体に排気ポートに2次空気を供給するセカンドエアバルブのエアカット機構が一体的に設けられたことを特徴としている。
【0007】
キャブレタは更に、急減速により生じる吸気管の負圧を感知してパイロット系流量を増加するコースティングリッチャ機構を備え、エアカット機構とコースティングリッチャ機構の通路開閉動作を同一のアクチュエータによって機能させる。
【0008】
エアカット機構は、エアカットバルブとこれに連結されるバルブシャフトとを備えるとともに、コースティングリッチャ機構は、バルブシャフトとこれと交差するパイロットエア通路とを備え、バルブシャフトがスプール弁としてパイロットエア通路の開閉を行なう。
【0009】
バルブシャフトに穴または溝が設けられ、この穴または溝がパイロットエア通路と交差するときにパイロットエア通路が開かれる。エアカットバルブ閉弁時にパイロットエア通路は閉じられ、エアカットバルブ開弁時にパイロットエア通路は開かれる。またエアカットバルブは、減速時の吸気管負圧の上昇を感知して閉弁される。エアカットバルブの開閉は、例えばバルブシャフトを介して接続されたダイアフラムの作動により行なわれ、ダイアフラムは吸気管内の負圧に連動して作動される。
【0010】
また、パイロットエア通路は、例えば2系統のパイロットエア通路の一方に対応し、パイロットエア通路およびセカンドエアカットバルブの上流側は、キャブレタのエアクリーナ側エアファンネル部へと連結される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、コースティングリッチャ付キャブレタにセカンドエアバルブ(2次空気供給装置)を更に一体化させて、エンジンへの装着コストを低減し、手離れのよいキャブレタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるキャブレタが適用されたエンジンの吸気系、排気系の全体的な構成を模式的に示す図である。
【0013】
図1に示されるように、シリンダヘッド1の吸気ポート2には、吸気管3が取り付けられ、吸気管3はキャブレタ10を介してエアクリーナ4に連結される。一方、排気ポート5には排気管6が取り付けられ、排気管6は触媒コンバータが設けられた排気マフラ7に連結される。
【0014】
また排気ポート5には、排気系に2次空気を供給する2次空気供給管8が設けられており、2次空気供給管8は、キャブレタ10に一体的に設けられたエアカットバルブ機構に連結される。
【0015】
次に図2〜図5を参照して、本発明の一実施形態であるキャブレタ10の構造の概要について説明する。図2は、キャブレタ10をエアクリーナ4に連結される上流側から見た正面図であり、図3は図2においてキャブレタ10を左側から見た側面図である(すなわち、図3の右側がエアクリーナ側に接続される)。また図4は、図2においてキャブレタ10を右側から見た側面図であり、図5は頂面図である。
【0016】
本実施形態においてキャブレタ10は、摺動弁式のものが図示されている。キャブレタ10の本体には、吸気通路11が設けられる。図3〜図5、図7の各図において、吸気通路11の中心軸がX−X’線(Xが上流側、X’が下流側)として描かれる。吸気通路11にはスロットルバルブ12が設けられ、本実施形態において、スロットルバルブ12は例えば略円筒形の摺動弁である。図2に吸気通路11のベンチュリ部11Aを通して見える摺動弁12の一部が描かれている。
【0017】
摺動弁12は、キャブレタ10の本体内に形成され、吸気通路11に直交して上下方向(図2〜図4において)に延在する摺動筒13(図7、8、10参照)内に昇降自在に装置される。すなわち、ベンチュリ部11Aの開度は、摺動弁12の摺動筒13内での昇降動作により調整される。また、摺動弁12の昇降動作は、例えば摺動弁12の頂部に連結されたアクセルワイヤ(不図示)により操作され、アクセルワイヤは、キャブレタ10の本体頂面に連結された管14を通してアクセル(不図示)へと導かれる。
【0018】
また、従来周知のように、摺動弁12の底面からは、摺動弁12の軸方向に沿ってジェットニードル12Aが延出し、ベンチュリ部11Aの底面に形成され、フロート室15と吸気通路11とを連通するニードルジェット16に挿通される。
【0019】
キャブレタ10の上部であって、摺動筒13の横には、2次空気の供給を制御するエアカットバルブ機構およびパイロットジェットへの空気の供給を制御するコースティングリッチャ機構を一体的に構成する空気制御機構17が設けられる。なお、空気制御機構17に連結されたアウトレット管18は、図1の2次空気供給管8へと連結され、2次空気を排気ポート5へと供給する。
【0020】
次に図6〜図10を参照して、本実施形態の空気制御機構17の構成について説明する。図6は、図2のC−C線に沿った断面図であり、図7は図2のA−A線に沿った断面図である。また、図8は図4のB−B線に沿った断面図であり、図9は図4のD−D線に沿った断面図である。図10は、吸気通路11に連結された負圧導入路の配置を示す図である。
【0021】
空気制御機構17において、二次空気の供給を制御するエアカットバルブ19は、バルブシャフト20を介してダイアフラム21に連結される。ダイアフラム21は、第1受圧室22と第2受圧室23とを気密的に隔て、ダイアフラム21は、第1および第2受圧室22、23間の圧力差により作動される。また、第1受圧室22は、負圧導入路22A(図10参照)を介して吸気通路11のスロットルバルブ12の下流側に連通される。すなわち、第1受圧室22内の圧力は、吸気通路11内に発生した負圧に連動して変動する。また、第2受圧室23は、例えば図示しない通路を介して外部へと連通され、その圧力は大気圧に維持される。
【0022】
ダイアフラム21は、例えば第1受圧室22内に設けられたスプリング等の付勢手段24により第1受圧室22側から第2受圧室23側へと所定の付勢力で押圧されている。したがって、ダイアフラム21に接続されたバルブシャフト20およびバルブシャフト21に連結されたエアカットバルブ19は、スプリング24により第1受圧室22側から第2受圧室23側へと向かう方向(開弁方向)に移動される。
【0023】
エアカットバルブ19は、アウトレット室25とインレット室26の間で2次空気の流通を制御する弁体である。アウトレット室25には、アウトレット管18が連結され、2次空気供給管8を介して排気ポート5へと連通される。一方、インレット室26にはエアクリーナ側(上流側)エアファンネル部に連通されるインレット管27(図7参照)が接続され、ベンチュリ上流部から2次空気およびパイロットエアがインレット室26へと導かれる。
【0024】
したがって、スプリング24の付勢力によりエアカットバルブ19が開弁しているときには、2次空気がインレット室26からアウトレット室25へと流通し、排気ポート5へと供給される。なお、アウトレット室25には、リード弁28が設けられ、アウトレット室25からインレット室26への逆流が防止される。
【0025】
バルブシャフト20は、インレット室26を横断してインレット室26内に設けられた軸受部29に形成されたシャフト孔29Cを通って、ダイアフラム21に連結される。軸受部29には、パイロットエア通路29A、29B(図6、図9参照)が、バルブシャフト20を挿通するシャフト孔29Cと交差して設けられる。
【0026】
パイロットエア通路29Aは、インレット室26とシャフト孔29Cとを連通し、パイロットエア通路29Bは、シャフト孔29Cとパイロットジェット30とを連通する。また、パイロットエア通路29Bの途中にはパイロットエア量を調整するエアスクリュ31が設けられる。本実施形態では、2系統のパイロットエア通路が設けられており、パイロットエア通路29A、29Bは、そのうちの1系統に対応する(なお、図2にもう一方の系統のパイロットエア通路32の入口が示される)。
【0027】
バルブシャフト20には、円環状の溝20Aが形成されており、バルブシャフト20がスプリング24により開弁方向に押圧され、エアカットバルブ19が全開されているとき、溝20Aは、パイロットエア通路29A、29Bの位置に配置される。すなわち、エアカットバルブ19が全開状態のときに、パイロットエア通路29A、29Bは、バルブシャフト20に設けられた溝20Aにより連通され、インレット室26の空気は、パイロットエア通路29A、溝20Aを介してパイロットエア通路29Bへと流通される。
【0028】
吸気通路11内に減速等により高負圧が発生し、負圧導入路22Aを通して第1受圧室22内の負圧が所定値を上回ると、ダイアフラム21はスプリング24の付勢力に抗して第2受圧室23側から第1受圧室22側に向かう方向(閉弁方向)に移動される。これにより、エアカットバルブ19は閉弁され、バルブシャフト20に設けられた溝20Aは、パイロットエア通路29A、29Bの位置からずれ、パイロットエア通路29A、29Bはバルブシャフト20により閉塞される(なお溝20A以外の場所において、バルブシャフトとシャフト孔29Cとは気密的に嵌合されている)。
【0029】
すなわち、エアカットバルブ19およびパイロットエア通路29A、29Bは、スプリング24の付勢力により通常は開弁された状態に維持されるが、エンジンの急な減速にともなって吸気通路11内に所定の負圧が発生すると、第1受圧室22の負圧が大きくなり、ダイアフラム21がスプリング24の付勢力に抗してエアカットバルブ19およびパイロットエア通路29A、29Bを閉じ、2次空気の流通およびパイロットエアの一方の流通を遮断する。
【0030】
以上のように、本実施形態のキャブレタによれば、エンジンが急減速する際に、排気通路への2次空気の供給を遮断するとともに、パイロットエアを遮断することにより吸気通路内の負圧を利用してより多くの燃料を供給することができ、A/Fをリッチな状態を実現することができる。これにより、アフタバーンの発生をより効果的に防止することができる。
【0031】
また、以上の構成によれば、簡略な構成でキャブレタにセカンドエアバルブ(2次空気供給装置)のエアカット機構を一体的に与えることができる。また、エアカットバルブのバルブシャフトをコースティングリッチャのスプール弁として利用することにより、コースティングリッチャ機能とエアカット機構とを一体化させ、一つのアクチュエータによってエアカット動作を機能させることができ、キャブレタ全体を小型化することが可能となり、部品数を低減しコストを削減することができる。
【0032】
また更に、2次空気供給装置とコースティングリッチャとを別体とする場合のように、2次空気供給装置の作動とコースティングリッチャの作動とを同期させる特別の機構を設けることなく、これらを同期させることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、バルブシャフトに溝を設ける構成としたが、パイロットエア通路の流通制御のためのバルブシャフトの加工は溝に限られず、例えばバルブシャフト軸に孔などを設ける構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態であるキャブレタが適用されたエンジンの吸気系、排気系の全体的な構成を模式的に示す図である。
【図2】キャブレタをエアクリーナに連結される上流側から見た正面図である。
【図3】図2においてキャブレタを左側から見た側面図である。
【図4】図2においてキャブレタを右側から見た側面図である。
【図5】図2〜図4に示されたキャブレタの頂面図である。
【図6】図2のC−C線に沿った断面図である。
【図7】図2のA−A線に沿った断面図である。
【図8】図4のB−B線に沿った端面図である。
【図9】図4のD−D線に沿った断面図である。
【図10】吸気通路に連結された負圧導入路の配置を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 シリンダヘッド
3 吸気管
4 エアクリーナ
5 排気ポート
8 2次空気供給管
10 キャブレタ
11 吸気通路
13 摺動筒
17 空気制御機構
18 アウトレット管
19 エアカットバルブ
20 バルブシャフト
20A 溝
21 ダイアフラム
22 第1受圧室
22A 負圧導入路
23 第2受圧室
24 スプリング
25 アウトレット室
26 インレット室
27 インレット管
29 軸受部
29A、29B パイロットエア通路
30 パイロットジェット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気系に設けられるキャブレタであって、前記キャブレタの本体に排気ポートに2次空気を供給するセカンドエアバルブのエアカット機構が一体的に設けられたことを特徴とするキャブレタ。
【請求項2】
前記キャブレタが、急減速により生じる吸気管の負圧を感知してパイロット系流量を増加するコースティングリッチャ機構を備え、前記エアカット機構と前記コースティングリッチャ機構の通路開閉動作を同一のアクチュエータによって機能させることを特徴とする請求項1に記載のキャブレタ。
【請求項3】
前記エアカット機構が、エアカットバルブとこれに連結されるバルブシャフトとを備えるとともに、前記コースティングリッチャ機構が、前記バルブシャフトとこれと交差するパイロットエア通路とを備え、前記バルブシャフトがスプール弁として前記パイロットエア通路の開閉を行なうことを特徴とする請求項2に記載のキャブレタ。
【請求項4】
前記バルブシャフトに穴または溝が設けられ、前記穴または溝が前記パイロットエア通路と交差するときに前記パイロットエア通路が開かれることを特徴とする請求項3に記載のキャブレタ。
【請求項5】
前記エアカットバルブ閉弁時に前記パイロットエア通路が閉じられ、前記エアカットバルブ開弁時に前記パイロットエア通路が開かれることを特徴とする請求項3に記載のキャブレタ。
【請求項6】
前記エアカットバルブは、減速時の吸気管負圧の上昇を感知して閉弁されることを特徴とする請求項5に記載のキャブレタ。
【請求項7】
前記エアカットバルブの開閉が、前記バルブシャフトを介して接続されたダイアフラムの作動により行なわれ、前記ダイアフラムが前記吸気管内の負圧に連動することを特徴とする請求項3に記載のキャブレタ。
【請求項8】
前記パイロットエア通路が、2系統のパイロットエア通路の一方に対応することを特徴とする請求項3に記載のキャブレタ。
【請求項9】
前記パイロットエア通路および前記セカンドエアカットバルブの上流側が前記キャブレタのエアクリーナ側エアファンネル部へと連結されることを特徴とする請求項8に記載のキャブレタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−64138(P2007−64138A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253222(P2005−253222)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【Fターム(参考)】