説明

キャリア、現像剤、およびプロセス

【課題】現像剤中での使用に適したキャリアおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】磁性コアと、前記コアの表面の少なくとも一部を覆うポリマーコーティングであって、脂肪族シクロアクリラートおよび酸性アクリラートモノマーを含む複数のモノマーに由来するコポリマーを含むポリマーコーティングと、を含むキャリアであり、前記ポリマーコーティングが直径40nm〜200nmの粒子として前記コアに塗布され、前記粒子が加熱により前記キャリアコアの表面に融着されている、キャリア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア、現像剤、およびキャリアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真印刷で用いられるトナー粒子は種々のプロセスで製造され得る。そのようなプロセスの1つは、界面活性剤を用いてラテックスエマルションを形成してトナー粒子を形成する乳化凝集(「EA」)プロセスを含む。
【0003】
EAプロセスでは非晶性ポリエステルと結晶性ポリエステルを組み合せて用いてもよい。この樹脂の組み合わせによって、光沢度が高く、比較的低い融点特性(低溶融(low−melt)、超低溶融(ultra low melt)、またはULMと呼ばれることもある。)を有するトナーが得られ、これは、エネルギー効率を良くし、印刷速度を速くする。EAトナー粒子と添加剤の使用は、特に帯電領域(ここでは粒子表面上に結晶性ポリエステルがあるとAゾーンでの帯電不良につながり得る)において、最適なトナー性能を得るために重要となりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6120967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
EA法によるULMトナーの形成におけるポリエステルおよび添加剤の使用の改善に対する継続的なニーズが存在する。
【0006】
本発明は、現像剤中での使用に適したキャリアおよびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により、本発明により下記が提供される。
【0008】
<1> 磁性コアと、
前記コアの表面の少なくとも一部を覆うポリマーコーティングであって、脂肪族シクロアクリラートおよび酸性アクリラートモノマーを含む複数のモノマーに由来するコポリマーを含むポリマーコーティングと、
を含むキャリアであり、前記ポリマーコーティングが直径40nm〜200nmの粒子として前記コアに塗布され、前記粒子が加熱により前記キャリアコアの表面に融着されている、キャリア。
<2> 少なくとも1つの樹脂を含むトナーと、
コアおよび前記コアの少なくとも一部を覆うポリマーコーティングを含むキャリアであって、前記ポリマーコーティングが脂肪族シクロアクリラートおよび酸性アクリラートモノマーを含む複数のモノマーに由来するコポリマーを含む、キャリアと、
を含む現像剤組成物。
<3> 少なくとも1つの界面活性剤、脂肪族シクロアクリラート、及び酸性アクリラートモノマーを含むエマルションを形成する工程と;
前記脂肪族シクロアクリラートおよび酸性アクリラートモノマーを重合させてコポリマー樹脂を形成する工程と;
前記コポリマー樹脂を回収する工程と;
前記コポリマー樹脂を乾燥させて粉体コーティングを形成する工程と;
前記粉体コーティングをコアに塗布する工程と;
を含むプロセス。
【0009】
ある実施形態では、本開示のキャリアは、磁性コアと、コアの表面の少なくとも一部を覆うポリマーコーティングと、を含み、ポリマーコーティングはコポリマーを含み、ポリマーコーティングは、必要に応じてさらにカーボンブラックを含んでいてもよく、コポリマーは脂肪族シクロアクリラートおよび酸性アクリラートを含む複数のモノマーに由来し、ポリマー樹脂コーティングは直径約40〜約200nmの粒子としてキャリアに塗布され、粒子は加熱によりキャリアコア表面に融着されている。
【0010】
ある実施形態では、本開示の現像剤は、少なくとも1つの樹脂を含むトナーであって、着色剤、ワックス、またはその組合せ等の、1または複数の成分を必要に応じてさらに含んでもよいトナーと、コアおよびコア表面の少なくとも一部を覆うポリマーコーティングを含むキャリアと、を含み、ポリマーコーティングはコポリマーを含み、ポリマーコーティングは、必要に応じてさらにカーボンブラックを含んでいてもよく、コポリマーは脂肪族シクロアクリラートおよび酸性アクリラートモノマーを含む複数のモノマーに由来する。
【0011】
本開示のプロセスは、ある実施形態では、少なくとも1つの界面活性剤と、脂肪族シクロアクリラートと、酸性アクリラートモノマーと、を含むエマルションであって、必要に応じてさらにカーボンブラックを含んでいてもよいエマルションを形成する工程、脂肪族シクロアクリラートと酸性アクリラートモノマーを重合させてコポリマー樹脂を形成する工程、コポリマー樹脂を回収する工程、コポリマー樹脂を乾燥させて粉体コーティングを形成する工程、ならびに粉体コーティングをコアに塗布する工程、を含むものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示のキャリアを含むトナーの、60分間のAゾーンおよびCゾーンにおける帯電を、対照と比較したグラフである。
【図2】本開示のキャリアを含むトナーの相対湿度(RH)感受性を対照と比較したグラフである。
【図3A】対照のキャリアを含む第1のトナー(図3A)の、Aゾーンにおけるトナー濃度とq/dの関係を示すグラフである。
【図3B】本開示のキャリアを含む第2のトナー(図3B)の、Aゾーンにおけるトナー濃度とq/dの関係を示すグラフである。
【図4A】対照のキャリアを含む第1のトナーおよび本開示のキャリアを含む第2のトナーにおける、Aゾーンにおける補間された摩擦帯電(interpolated triboelectric charging)とエアロゾルによる曇り(aerosol clouding)の関係を示すグラフである。
【図4B】対照のキャリアを含む第1のトナーおよび本開示のキャリアを含む第2のトナーにおける、Aゾーンにおけるトナー濃度とエアロゾルによる曇りの関係を示すグラフである。
【図5】第1の対照キャリアおよび第2の本開示のキャリアの抵抗率の測定値を比較した図である。
【図6】他のキャリアコーティングと比較した、本開示のキャリアを含むトナーで得られた、mol%に対する酸価のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ある実施形態では、本発明は、コーティングされたコアを含むキャリア粒子を提供する。ある実施形態では、コアはコア金属でもよい。コーティングは、ポリマーを含んでいてもよく、ポリマーに、必要に応じてカーボンブラック等の着色剤と組み合わせてもよい。
種々の好適な固体コア材料を本開示のキャリアおよび現像剤に用いることができる。
【0014】
コア金属上のポリマーコーティングはラテックスを含む。
【0015】
シクロアクリラートは、キャリアコアのポリマーコーティングとして用いられるコポリマー中に、たとえばコポリマーの約85重量%〜約99重量%、ある実施形態ではコポリマーの約90〜約97重量%の量で存在してもよい。酸性アクリラートは、そのようなコポリマー中に、たとえばコポリマーの約0.1重量%〜約5重量%、ある実施形態でコポリマーの約1重量%〜約3重量%の量で存在してもよい。
【0016】
ポリマーコーティングの形成方法は当業者に公知であり、実施形態では、モノマーの乳化重合が、ポリマーコーティングの形成に用いられるものの1つとして挙げられる。
【0017】
重合プロセス中、反応物質を混合容器等の適したな反応器に添加してもよい。適切な量の出発材料を必要に応じて溶媒に溶解してもよく、必要に応じて用いてもよい開始剤を溶液に添加した後、少なくとも1つの界面活性剤と接触させてエマルションを形成してもよい。エマルション中でコポリマーを形成してもよく、それをその後回収してキャリア粒子のポリマーコーティングとして用いてもよい。
【0018】
特定の界面活性剤またはその組合せの選択およびそれぞれの使用量は当業者が想定できる範囲内である。
【0019】
実施形態では、ポリマーコーティングの形成に用いられるラテックスを形成するために開始剤を添加してもよい。
【0020】
開始剤は、モノマーの、たとえば約0.1〜約8重量パーセント、ある実施形態では約0.2〜約5重量パーセント等の適した量で添加されてもよい。
【0021】
エマルションの形成において、出発材料、界面活性剤、必要に応じて用いてもよい溶媒、および必要に応じて用いてもよい開始剤は、当業者に公知の任意の手段を用いて混合され得る。実施形態では、反応混合物は、たとえば温度を約10〜約100℃、ある実施形態では約20〜約90℃、別の実施形態では約45〜約75℃に維持しながら(これらの範囲外の温度を用いてもよい)、たとえば約1分〜約72時間、ある実施形態では約4〜約24時間混合され得るが、時間はこの範囲外であってもよい。
【0022】
当業者には、種々の分子量のポリエステルを生成するために反応条件、温度、および開始剤添加量等の最適化が変わり得ること、および同等の技術を用いて構造的に関連する出発材料を重合化してもよいことが理解されよう。
【0023】
キャリアのコーティングとして用いられるコポリマーが形成されると、濾過、乾燥、遠心分離、噴霧乾燥、およびこれらの組合せ等の当業者に公知の任意の技術によりエマルションから回収してよい。
【0024】
ある実施形態では、キャリアのコーティングとして用いられるコポリマーが得られた後、例えば、必要に応じて減圧下で行なってもよい凍結乾燥、噴霧乾燥、およびこれらの組合せ等の当業者に公知の任意の方法でこれを乾燥させて粉体形状にしてよい。
【0025】
コポリマー粒子のサイズは直径約40ナノメートル〜約200ナノメートルでもよく、ある実施形態では直径約60ナノメートル〜約120ナノメートルでもよい。
【0026】
実施形態では、乾燥されたポリマーコーティングの粒子サイズが大きすぎる場合、粒子を均質化または超音波処理して更に粒子を分散させて、凝集体またはゆるく結合した粒子を全てばらばらにすることで、上記のサイズの粒子を得てもよい。ホモジナイザー(すなわち高剪断デバイス)を用いる場合、ホモジナイザーは、たとえば約6,000rpm〜約10,000rpm、実施形態では約7,000rpm〜約9,750rpmの速度で、たとえば約0.5分〜約60分、実施形態では約5分〜約30分の間作動され得る。
【0027】
キャリアコーティングとして用いられるコポリマーのガラス転移温度(Tg)は約85〜約140℃でもよく、ある実施形態では約100〜約130℃であり得る。
【0028】
キャリアコーティングとして用いられるコポリマーの酸価は約4.5mgKOH/g〜約30mgKOH/gでもよく、ある実施形態では約5mgKOH/g〜約20mgKOH/gであり得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、キャリアコーティングは導電性成分を含んでもよい。好適な導電性成分としては、例えばカーボンブラックが挙げられる。
【0030】
導電性は、半導電性磁気ブラシ現像によりベタ領域を良好に現像するのに重要であり、この現像は導電性が低いと薄くなり得る。
【0031】
本開示のポリマーコーティングを、必要に応じてカーボンブラック等の導電性成分とともに、添加すると、相対湿度約20〜約95パーセント、実施形態では約40〜約90パーセントにおいて、現像剤の摩擦電気的な反応が増加して画像品質性能が向上し得ることを見出した。
【0032】
本開示のコーティングされたキャリアと共に用いられるトナーの摩擦帯電量は、約15μC/g〜約60μC/gでもよく、ある実施形態では約20μC/g〜約55μC/gであり得る。
【0033】
上記のように、ある実施形態では、ポリマーコーティングを乾燥させてもよく、その後、乾燥粉体としてコアキャリアに塗布され得る。粉体コーティングプロセスは従来の溶液コーティングプロセスとは異なる。溶液コーティングでは、コーティングプロセス中で溶媒に樹脂を可溶性にすることができる組成および分子量特性を有するコーティングポリマーが必要である。これは通常、最も強固なコーティングを提供しない粉体コーティングに比べて比較的低いMwを必要とする。粉体コーティングプロセスでは溶媒溶解性は必要ないが、粒子サイズが約10nm〜約2ミクロンの微粒子として樹脂がコーティングされることが必要であり、粒子サイズは、ある実施形態では約30nm〜約1ミクロン、また、ある実施形態では約50nm〜約400nmでもよい。
【0034】
コアにコポリマーを塗布した後、コーティング材料がキャリアコア表面を流動できるように加熱を開始してもよい。粉体粒子であり得るコーティング材料の濃度および加熱パラメータは、キャリアコア表面でコーティングポリマーの連続膜が形成できるようにまたはキャリアコアの選択された領域のみがコーティングされるように選択され得る。実施形態では、ポリマー粉体コーティングを含むキャリアは、たとえば約170℃〜約280℃、ある実施形態では約190℃〜約240℃の温度に、例えば約10分〜約180分、ある実施形態では約15分〜約60分の間、ポリマーコーティングが溶融してキャリアコア粒子に融着できるように、加熱され得る。キャリア表面にマイクロ粉体を取り込ませた後、コーティング材料がキャリアコア表面を流動できるようにするために加熱を開始してもよい。ある実施形態では、マイクロ粉体を、ロータリーキルン中でまたは熱せられた押出装置を通過させることで、キャリアコアに融着してもよい。
【0035】
ある実施形態では、コーティングによる被覆はキャリアコアの約10〜約100パーセントを覆う。金属キャリアコアの選択された領域が被覆されずにまたは露出されて残っている場合、コア材料が金属であればキャリア粒子は電気伝導特性を有し得る。
【0036】
その後、コーティングされたキャリア粒子は冷却されてもよく(ある実施形態では室温に冷却されてもよい)、そしてトナー形成に使用するために回収され得る。
【0037】
実施形態では、本開示のキャリアは、必要に応じてカーボンブラックを含んでいてもよい本開示のポリマーコーティング約0.5〜約10重量%(ある実施形態では約0.7〜約5重量%でもよく、また、これらの範囲外の量を用いてもよい)でコーティングされた、サイズが約25μm〜約100μm(ある実施形態では約50μm〜約75μmでもよく、また、これらの範囲外のサイズであってもよい)のコア(ある実施形態ではフェライトコアでもよい)を含んでいてもよい。
【0038】
したがって、本開示のキャリア組成物および製造方法を用いれば、いくつもの異なる組合せを用いることで、選択された高い摩擦帯電特性および/または導電率を有する現像剤を作製することができる。
【0039】
このように作製されたコーティングされたキャリアを、必要に応じて着色剤を含んでいてもよいトナー樹脂と混合することで、本開示のトナーが形成され得る。
【0040】
本開示のトナーの形成にはあらゆるラテックス樹脂が用いられ得る。そのような樹脂は、任意の好適なモノマーから得られうる。用いる任意のモノマーは、用いる特定のポリマーに応じて選択され得る。
ある実施形態では、樹脂は、非晶性樹脂、結晶性樹脂及び/又はそれらの組み合わせであってもよい。
結晶性ポリエステル樹脂は、酸(ジカルボン酸)成分およびアルコール(ジオール)性成分から合成してもよい。以下では、「酸由来成分」は、ポリエステル樹脂を合成する前の酸成分を起源とする構成部分を指し、「アルコール由来成分」は、ポリエステル樹脂を合成する前のアルコール成分を起源とする構成部分を指す。
【0041】
「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)で段階的に吸熱量が変化するものではなく、明確な吸熱ピークを示すものを意味する。しかし、結晶性ポリエステル主鎖と少なくとも1つのその他の成分を共重合することで得られるポリマーも、その他の成分の量が50重量%以下であれば、結晶性ポリエステルと呼ぶ。
【0042】
結晶性ポリエステル樹脂は、従来の公知の方法を用いて、前述のモノマー成分から選択される成分の組合せから合成され得る。直接重縮合におけるモル比は通常1/1である。エステル交換法では、減圧下で留去することができるエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、またはシクロヘキサンジメタノール等のモノマーを過剰に用いてもよい。
ある実施形態では、樹脂は、必要に応じて触媒の存在下で、ジオールと二価酸を反応させることで形成されるポリエステル樹脂でもよい。
【0043】
結晶性樹脂は、例えば、トナー成分の約5重量パーセント〜約50重量パーセント、ある実施形態ではトナー成分の約10重量パーセント〜約35重量パーセントの量で存在してもよい。結晶性樹脂は、たとえば約30〜約120℃、ある実施形態では約50〜約90℃といった種々の融点を有し得る。結晶性樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定される数平均分子量(M)が例えば約1,000〜約50,000でもよく、ある実施形態では約2,000〜約25,000でもよく、ポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィーで測定される重量平均分子量(M)が例えば約2,000〜約100,000でもよく、ある実施形態では約3,000〜約80,000でもよい。結晶性樹脂の分子量分布(M/M)は、例えば約2〜約6でもよく、ある実施形態では約3〜約4でもよい。
ある実施形態では、前述したように、ラテックス樹脂として不飽和非晶性ポリエステル樹脂を用いてもよい。
【0044】
ある実施形態では、樹脂のガラス転移温度は約30℃〜約80℃でもよく、ある実施形態では約35℃〜約70℃であり得る。ある実施形態では、トナー中に用いられる樹脂の溶融粘度は、約130℃において約10Pa・S〜約1,000,000Pa・Sでもよく、ある実施形態では約20Pa・S〜約100,000Pa・Sであり得る。
【0045】
1、2、またはそれ以上のトナー樹脂を用いてもよい。2種以上のトナー樹脂を用いる実施形態では、トナー樹脂は任意の好適な比率(例えば重量比)であってよく、例えば約10%(第1の樹脂)/90%(第2の樹脂)〜約90%(第1の樹脂)/10%(第2の樹脂)であり得る。
【0046】
ある実施形態では、樹脂は乳化重合法で形成されてもよい。
【0047】
ある実施形態では、トナー組成物の形成に用いられる着色剤、ワックス、およびその他の添加剤は、界面活性剤を含む分散物の形態であってよい。更に、トナー粒子の形成は、樹脂およびトナーのその他の成分を1または複数の界面活性剤中に入れ、エマルションを形成し、トナー粒子を凝集および融合させ、必要に応じて洗浄および乾燥し、回収する、乳化凝集法でなされ得る。
【0048】
1、2またはそれ以上の界面活性剤を用いてよい。界面活性剤はイオン界面活性剤および非イオン界面活性剤から選択され得る。キャリアコアのポリマーコーティングとして用いられるコポリマーを形成する際に使用されるものとして前述した、任意の界面活性剤を用いることができる。
【0049】
添加する着色剤としては、染料、顔料、染料の混合物、顔料の混合物、染料と顔料の混合物等の種々の公知の好適な着色剤がトナー中に含められ得る。着色剤は、例えばトナーの約0.1重量パーセント〜約35重量パーセント、トナーの約1重量パーセント〜約15重量パーセント、またはトナーの約3重量パーセント〜約10重量パーセントの量でトナーに含められ得るが、これらの範囲外の量であってもよい。
【0050】
必要に応じて、トナー粒子の形成において、樹脂および必要に応じて用いる着色剤にワックスも組み合せてよい。ワックスを含める場合、ワックスは、例えばトナー粒子の約1重量パーセント〜約25重量パーセントでもよく、ある実施形態ではトナー粒子の約5重量パーセント〜約20重量パーセントの量で存在し得るが、これらの範囲外の量であってもよい。
選択され得るワックスとしては、例えば重量平均分子量約500〜約20,000のワックスでもよく、ある実施形態では重量平均分子量約1,000〜約10,000のワックスでもよいが、分子量はこれらの範囲外であってもよい。
【0051】
トナー粒子は当業者に公知の任意の方法で製造され得る。以下では乳化凝集法についてのトナー粒子の製造に関する実施形態が記載されているが、米国特許第5,290,654号および同第5,302,486号に開示されている懸濁・カプセル化法等の化学的方法を含む、任意の好適なトナー粒子製造方法を用いることができる。ある実施形態では、トナー組成物およびトナー粒子は、小サイズの樹脂粒子を適切なトナー粒子サイズまで凝集させた後融合させて最終的なトナー粒子の形状およびモルホロジーを得る凝集融合プロセスにより製造され得る。
【0052】
ある実施形態では、トナー組成物は、必要に応じて用いてもよい着色剤と、必要に応じて用いてもよいワックスと、任意のその他の所望のまたは必要な添加剤の混合物と、前述の樹脂を含むエマルションとを、必要に応じて前述したように界面活性剤中で、凝集させ、その後、凝集混合物を融合させることを含む方法等の乳化凝集法で製造され得る。混合物は、界面活性剤を含む分散液の形態でもよい着色剤および必要に応じてワックスまたはその他の材料を、エマルションに添加することで調製してもよく、エマルションは、樹脂を含有する2種以上のエマルションの混合物であってもよい。得られた混合物のpHは、例えば酢酸、硝酸等の酸で調整され得る。ある実施形態では、混合物のpHは約4〜約5に調整されてもよく、この範囲外のpHであってもよい。更に、実施形態では混合物を均質化してよい。混合物を均質化する場合、均質化は、約600〜約4、000回転毎分で混合することで行なうことができるが、この範囲外の速度を用いてもよい。均質化は、例えばIKA社製ウルトラタラックスT50プローブホモジナイザー等の任意の好適な手段で行なうことができる。
【0053】
上記混合物の調製後、混合物に凝集剤を添加してよい。任意の好適な凝集剤を用いてトナーを形成することができる。
【0054】
凝集剤は、トナーの形成に用いられる混合物に、例えば混合物中の樹脂の約0.1重量%〜約8重量%の量で添加してもよく、ある実施形態では約0.2〜約5重量%の量で添加してもよく、別の実施形態では約0.5〜約5重量%の量で添加され得るが、これらの範囲外の量であってもよい。これにより、凝集に十分な量の凝集剤が提供される。
【0055】
粒子の凝集およびその後の融合を制御するために、ある実施形態では、凝集剤を混合物に時間をかけて計量添加してよい。例えば、凝集剤は混合物に約5〜約240分かけて計量添加されてもよく、ある実施形態では約30〜約200分かけて計量添加され得るが、所望によりまたは必要に応じてより長いまたは短い時間であってもよい。凝集剤の添加はまた、混合物を撹拌条件下、ある実施形態では約50rpm〜約1,000rpm、別の実施形態では約100rpm〜約500rpm(これらの範囲外の速度を用いてもよい。)に維持しながら、前述の樹脂のガラス転移温度よりも低い温度、ある実施形態では約30℃〜約90℃、実施形態では約35℃〜約70℃(これらの範囲外の温度を用いてもよい)に維持しながら行われてもよい。
【0056】
所定の所望の粒子サイズが得られるまで粒子を凝集させてよい。所定の所望のサイズとは、形成前に決定される得られるべき所望の粒子サイズを意味し、粒子サイズは、成長プロセス中、そのような粒子サイズに達するまでモニターされる。成長プロセス中にサンプルを取り、例えばコールターカウンターを用いて、平均粒子サイズを解析してもよい。したがって、撹拌しながら、高温を維持するか例えば温度約30℃〜約99℃にゆっくりと昇温し、混合物をこの温度で約0.5〜約10時間、ある実施形態では約1〜約5時間(これらの範囲外の時間であってもよい。)維持することで凝集を進行させて、凝集粒子を得てよい。所定の所望の粒子サイズに達したら、成長プロセスを停止させる。ある実施形態では、所定の所望の粒子サイズは前述のトナー粒子サイズの範囲内である。
【0057】
凝集剤を添加した後の粒子の成長および成形は、任意の好適な条件下で達成され得る。例えば、成長および成形は、凝集が融合とは別に起こる条件下で行われ得る。凝集および融合の段階を別々にするために、凝集プロセスは、前述したように樹脂のガラス転移温度よりも低い温度であり得る温度、例えば約40℃〜約90℃、ある実施形態では約45℃〜約80℃(この範囲外の温度であってもよい。)等の高温の剪断条件下で行ってよい。
【0058】
トナー粒子が所望の最終サイズに達したら、混合物のpHを、塩基を用いて、例えば約3〜約10、ある実施形態では約5〜約9に調整してもよいが、これらの範囲外のpHであってもよい。pH調整を利用してトナー成長を凍結、すなわち停止しうる。トナー成長を停止するために用いられる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、およびその組合せ等のアルカリ金属水酸化物等の任意の好適な塩基が含まれ得る。ある実施形態では、上記の所望の値へのpH調整を支援するためにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を添加してもよい。
【0059】
ある実施形態では、トナーの形成に用いるための前述した任意の樹脂を含む樹脂をトナー粒子に塗布して、トナー粒子を覆うシェルを形成してよい。
【0060】
所望の粒子サイズまで凝集させて、必要に応じて任意のシェルを付与した後、粒子を所望の最終形状に融合させてよく、融合は、例えば、トナー粒子の形成に用いられる樹脂のガラス転移温度以上であり得る約45℃〜約100℃、ある実施形態では約55℃〜約99℃(これらの範囲外の温度を用いてもよい。)に混合物を加熱し、且つ/または撹拌を、例えば約100rpm〜約1000rpm、ある実施形態では約200rpm〜約800rpm(これらの範囲外の速度であってもよい。)に弱めることで達成される。所望の形状が得られるまで、シスメックスFPIA 2100分析装置を用いるなどして、融着した粒子の形状係数または円形度を測定することができる。
【0061】
より高い温度またはより低い温度を用いてもよい。なお、温度はバインダーに用いられる樹脂に応じて変わると理解される。融合は、約0.01〜約9時間、ある実施形態では約0.1〜約4時間(これらの範囲外の時間であってもよい。)かけて達成され得る。
【0062】
凝集および/または融合後、混合物は約20〜約25℃等の室温まで冷却され得る。冷却は、所望により急速であってもよく、ゆっくりであってもよい。好適な冷却方法としては、反応器を囲むジャケットへの冷水の導入が含まれ得る。冷却後、トナー粒子を必要に応じて水で洗浄し、乾燥させてよい。乾燥は、例えば凍結乾燥等の任意の好適な乾燥方法で達成され得る。
【0063】
前述したように、本開示のコーティングされたキャリアをこれらのトナー粒子と組み合わせてもよい。ある実施形態ではトナー粒子は所望によりまたは必要に応じて、その他の必要に応じて用いる添加剤を含んでもよい。例えば、トナーは、更なる正または負の帯電制御剤を、例えばトナーの約0.1〜約10重量パーセント、実施形態ではトナーの約1〜約3重量パーセントの量で含んでいてもよい(これらの範囲外の量を用いてもよい)。
【0064】
形成後に、トナー粒子を流動助剤等の外添剤粒子とブレンドしてもよく、これらの添加剤はトナー粒子の表面に存在し得る。
【0065】
一般的に、トナーの流動性、摩擦の増加、混合制御、現像および転写安定性の向上、ならびにより高いトナーブロッキング温度を得るために、トナー表面にシリカを塗布してもよい。相対湿度(RH)安定性の向上、摩擦制御、ならびに現像および転写安定性の向上のために、TiOを塗布してもよい。潤滑特性、現像剤の導電性、摩擦増加を得るため、トナーとキャリア粒子の接触回数を増やしてより高いトナーの帯電量および帯電安定性を可能にするために、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、および/またはステアリン酸マグネシウムも必要に応じて外添剤として用いてもよい。ある実施形態では、フェロ・コーポレーション(Ferro Corporation)から入手可能なステアリン酸亜鉛Lとして知られる市販のステアリン酸亜鉛を用いてもよい。外部表面添加剤は、コーティングと共に用いてもよく、コーティングなしに用いてもよい。
【0066】
これらの各外添剤は、トナーの約0.1重量パーセント〜約5重量パーセントの量で存在してもよく、ある実施形態ではトナーの約0.25重量パーセント〜約3重量パーセントの量で存在し得るが、添加剤の量はこれらの範囲外であってもよい。ある実施形態では、トナーは、例えば、約0.1重量パーセント〜約5重量パーセントのチタニア、約0.1重量パーセント〜約8重量パーセントのシリカ、および約0.1重量パーセント〜約4重量パーセントのステアリン酸亜鉛を含んでもよい(これらの範囲外の量であってもよい)。
【0067】
実施形態では、本開示のトナーは超低溶融(ULM)トナーとして用いられ得る。ある実施形態では、外部表面添加剤を除いた、コアおよび/またはシェルを有する乾燥トナー粒子は、以下の特性の1または複数を有し得る:
(1)体積平均直径(「体積平均粒径」ともいう。)をトナー粒子の体積および直径の差について測定した。トナー粒子の体積平均直径は約3〜約25μm、ある実施形態では約4〜約15μm、別の実施形態では約5〜約12μmである(これらの範囲外の値であってもよい)。
(2)数平均粒度分布指標(GSDn)および/または体積平均粒度分布指標(GSDv):ある実施形態では、上記(1)に記載したトナー粒子は、約1.15〜約1.38の下側個数比GSDの非常に狭い粒子サイズ分布を、別の実施形態では約1.31未満の下側個数比GSDを有し得る(これらの範囲外の値であってもよい)。本開示のトナー粒子は上側体積GSDが約1.20〜約3.20、別の実施形態では約1.26〜約3.11であるようなサイズであり得る(これらの範囲外の値であってもよい)。体積平均粒径D50v、GSDv、およびGSDnは、ベックマンコールター社製マルチサイザー3等の機器をメーカーの取扱説明書に従って操作して測定され得る。代表的なサンプリングは以下のように行われ得る:少量のトナーサンプル(約1グラム)を取り、25マイクロメートルの篩に通し、その後、等張液に入れて約10%の濃度にし、その後、サンプルをベックマンコールター社製マルチサイザー3にかけてよい。
(3)約105〜約170、ある実施形態では約110〜約160の形状係数SF1*a(これらの範囲外の値であってもよい)。走査型電子顕微鏡法(SEM)および画像解析(IA)によりトナーの形状係数を求めるためにSEMを利用してもよい。平均粒子形状は、以下の形状係数SF1*aの式を用いて定量される:SF1*a=100πd/(4A)(式中、Aは粒子面積であり、dは粒子の主軸である)。完全な円形または球形の粒子の形状係数はちょうど100である。形状がより不規則または細長くなり、表面積が大きくなるほど、形状係数SF1*aは大きくなる。
(4)約0.92〜約0.99、別の実施形態では約0.94〜約0.975の円形度(これらの範囲外の値であってもよい)。粒子の円形度の測定に用いられる機器として、シスメックス社製のFPIA−2100が用いられうる。
【0068】
トナー粒子の特性は任意の好適な技術および装置で求めることができ、上記に示した機器および技術に限定されない。
【0069】
ある実施形態では、トナー粒子は、重量平均分子量(Mw)が約17,000〜約60,000ダルトン、数平均分子量(Mn)が約9,000〜約18,000ダルトン、MWD(トナー粒子のMwとMnの比、ポリマーの多分散性または幅を表す。)が約2.1〜約10であり得る(この範囲外の値であってもよい)。シアンよびイエロートナーの場合、ある実施形態では、トナー粒子は重量平均分子量(Mw)が約22,000〜約38,000ダルトン、数平均分子量(Mn)が約9,000〜約13,000ダルトン、MWDが約2.2〜約10であり得る(これらの範囲外の値であってもよい)。ブラックおよびマゼンタの場合、ある実施形態では、トナー粒子は、重量平均分子量(Mw)が約22,000〜約38,000ダルトン、数平均分子量(Mn)が約9,000〜約13,000ダルトン、MWDが約2.2〜約10であり得る(これらの範囲外の値であってもよい)。
【0070】
本開示に従って製造されたトナーは、極度の相対湿度(RH)条件に曝された時に優れた帯電特性を有し得る。低湿度ゾーン(Cゾーン)は約12℃/15%RH、高湿度ゾーン(Aゾーン)は約28°℃/85%RHであり得る。本開示のトナーは母トナーの帯電量と質量の比(Q/M)が約−5μC/g〜約−80μC/gでもよく、ある実施形態では約−10〜約−70μC/gであり得、表面添加剤をブレンドした後の最終トナーの帯電量は−15μC/g〜約−60μC/gでもよく、ある実施形態では約−20〜約−55μC/gであり得る。
【0071】
トナー粒子を本開示のコーティングされたキャリアと混合することで、現像剤組成物を作製してもよい。例えば、トナー粒子とコーティングされたキャリア粒子を混合して二成分現像剤組成物を得てもよい。キャリア粒子とトナー粒子は種々の好適な組合せで混合することができる。現像剤中のトナー濃度は、現像剤の約1〜約25重量%、ある実施形態では現像剤の全重量の約2〜約15重量%であり得、キャリアは現像剤の約80〜約96重量%、ある実施形態では現像剤の約85〜約95重量%の量で存在し得る。実施形態では、トナー濃度はキャリアの約90〜約98重量%であり得る。しかし、所望の特性を有する現像剤組成物を得るために、異なる割合のトナーおよびキャリアを用いてもよい。
【0072】
したがって、例えば本開示に従い、磁気ブラシ導電セルにより測定される導電率が、10ボルトにおいて約10〜約1014(オーム・cm)、ある実施形態では10ボルトにおいて約1010〜約1013(オーム・cm)、150ボルトにおいて約10〜約1013(オーム・cm)、ある実施形態では150ボルトにおいて約10〜約1012(オーム・cm)である現像剤を作製することができる。
【0073】
したがって、本開示のキャリアを含むトナーの摩擦帯電は約15μC/g〜約60μC/gでもよく、ある実施形態では約20μC/g〜約55μC/gであり得る。
【0074】
キャリアの導電率を測定するために、約30〜約50グラムのキャリアを、2つの円形の平行平板電極(半径=3センチメートル)の間に置き、4キログラムの重りで加圧して、厚さが約0.4〜約0.5センチメートルの層を形成させ、電極間に10ボルトの直流電圧を印加し、電圧印加の瞬間から1分後に、電極と電圧源の間の直流電流を直列に測定した。アンペアで表した電流にセンチメートルで表した層厚をかけ、cmで表した電極面積および電圧10ボルトで割り、(オーム・cm)−1で表される導電率を得た。電圧を150ボルトに上げ、再度測定し、電圧の値に150ボルトを用いて同じように計算した。
【0075】
本開示によれば、キャリアの抵抗率は、10ボルトで測定した時に約10〜約1014(オーム・cm)、150ボルトの時に約10〜約1013(オーム・cm)であり得る。
【0076】
本発明のキャリア粒子は、高速カラー電子写真方式システム、プリンター、デジタルシステム、電子写真方式とデジタルシステムの組合せを含む電子写真方式のコピー機およびプリンター等の複数の異なる画像形成システムおよびデバイス用に選択され得、バックグラウンドの付着が実質的にない優れたカラー画像が得られる。本明細書に記載の、例えば乾燥コーティングプロセスにより作製されたキャリア粒子を含む現像剤組成物は、静電複写方式または電子写真方式の画像形成システム、特に電子写真方式の画像形成および印刷プロセス、ならびにデジタルプロセスに有用であり得る。更に、本開示の導電性キャリア粒子を含む本開示の現像剤組成物は、比較的一定の導電性パラメータが望ましい画像形成方法で有用であり得る。更に、前述の画像形成システムにおいて、キャリア粒子とトナーの摩擦帯電は予め選択することができ、この帯電は、例えばキャリアコアに塗布されるポリマー組成物に依存し、場合によっては選択される導電性成分の種類および量にも依存する。
【0077】
前述の方法のいずれか1つ等の好適な画像現像方法によりトナー/現像剤で画像が形成された後、画像は紙等の受像媒体に転写され得る。ある実施形態では、トナーは、定着ロール部材を用いた画像現像デバイス中で画像を現像するために使用され得る。定着ロール部材は、当業者に公知の接触式の定着デバイスであり、ロールからの熱および圧力を用いてトナーが受像媒体に定着され得る。ある実施形態では、受像基体上での溶融後または溶融中、定着部材はトナーの溶融温度よりも高い温度、例えば約70℃〜約160℃、ある実施形態では約80℃〜約150℃、別の実施形態では約90℃〜約140℃に加熱され得る(これらの範囲外の温度を用いてもよい)。
【0078】
画像、特に本開示の現像剤組成物で得られるカラー画像は、実施形態において、例えば1,000,000回の画像形成サイクル等の長期間にわたる、容認可能なベタ、優れたハーフトーン、および背景の付着が容認可能なまたは実質的にない所望の線解像度、優れた彩度、優れた色強度、一定した色の彩度および強度を有する。
【実施例】
【0079】
以下の実施例は本開示の実施形態を説明するためのものである。これらの実施例は説明のみを目的とし、本開示の範囲を限定することを意図していない。また、特に断りのない限り、部および百分率は重量を基準とする。「室温」とは約20〜約25℃を意味する。
【0080】
実施例
<ラテックス>
第1のモノマーおよび第2のモノマーの乳化重合により生成したポリマー粒子を含むラテックスエマルションを以下のように調製した。約2.6mmolのラウリル硫酸ナトリウム(陰イオン乳化剤)および約21モルの脱イオン水を含む界面活性剤溶液を、ビーカー中でこれら2つを混ぜて約10分間混合することで調製した。次いで、この界面活性剤水溶液を反応器に移した。約450回転毎分(rpm)で撹拌しながら反応器を連続的に窒素でパージした。
【0081】
別途、約2mmolの過硫酸アンモニウム開始剤を約222mmolの脱イオン水に溶解して開始剤溶液を得た。
【0082】
別の容器で、以下の表1に示すような所定量の第1のモノマーおよび所定量の第2のモノマーを混合した。この溶液の約10重量パーセントを上記の水性界面活性剤混合物にシードとして添加した。次いで、昇温速度を約1℃/分に調節しながら反応器を約65℃まで加熱した。反応器の温度が約65℃に達した後、開始剤溶液をゆっくりと約40分かけて反応器に添加し、その後、定量ポンプを用いて反応器にエマルションの残りを約0.8重量%/分で連続的に供給した。全てのモノマーエマルションを主反応器に投入した後、更に2時間温度を約65℃に維持し、反応を完了させた。
【0083】
その後、冷却し、反応器温度を約35℃に降温させた。次いで、生成物を容器に回収し、凍結乾燥器を用いて乾燥させて粉体形態にした。反応物質の量を変えて、上記のプロセスで8種類のラテックスを作製した。反応物質およびこのように生成したコポリマーの特性の概要を以下の表1にまとめる。
【0084】
【表1】

【0085】
<比較例1および実施例1〜6>
以下のようにキャリアを作製した。35ミクロンフェライトコア(パウダーテック社(Powdertech)から市販)約120グラムを250mlのポリエチレン製のビンに入れた。そこに、表2に記載するように乾燥粉体ポリマーラテックス約0.912グラムおよび表2に記載するように5重量パーセントのキャボット社製(Cabot)VULCAN XC72(商標)カーボンブラック(コーティングの重量を基準)を添加した。次いで、ビンを密封し、CゾーンのTURBULA(商標)ミキサーに入れた。TURBULAミキサーを約45分間稼働させ、粉体をキャリアコア粒子上に分散させた。
【0086】
次に、HAAKE(商標)ミキサーを以下の状態に設定した:設定温度200℃(全てのゾーン);バッチ時間30分間;高剪断ローターで30RPM。HAAKE(商標)が作動温度に達した後、ミキサーの回転を開始させ、ブレンドをTURBULAミキサーからHAAKEミキサーに移した。約45分後、キャリアをミキサーから出し、45μmの篩で篩分した。上記のプロセスで12種類のキャリアを作製した。用いたコーティングおよびその量を含む生成されたキャリアの概要を以下の表2に示す。
【0087】
【表2】

【0088】
キャリアの抵抗率のデータを以下の表3にまとめる。
【0089】
【表3】

【0090】
表2に記載した種々のキャリアをゼロックス700デジタルカラープレスのシアントナーと混合することで現像剤を作製した。トナーの濃度は約5パーセント(pph)であった。現像剤を、AゾーンおよびCゾーンで一晩調整した後、密封し、Turbulaミキサーを用いて60分間撹拌した。
【0091】
100V/cmのフィールドを用いたチャージスペクトログラフ法により帯電特性を得た。帯電結果を以下の表4および図1に示す。
【0092】
【表4】

【0093】
更なる帯電データを図1に示す。表4および図1から分かるように、環式脂肪族アクリラートモノマーを酸性アクリラートモノマーと組み合わせて使用すると、環式脂肪族アクリラートモノマーのみを含むラテックスでコーティングされたキャリアと比べて、Aゾーンでの帯電が増加し、一方、Cゾーンでの帯電は同じに維持される。Cゾーンの帯電は、前述の比較例1のキャリアで作製された現像剤と比べて低く、規格内である。
【0094】
本開示の全ての粉体コーティングされたキャリアの相対湿度(RH)感受性を上記の表4に示し、図2にグラフとして記載する。これは高いほど良い。データから分かるように、これらの現像剤は、比較例1のキャリアを用いた現像剤よりもRH感度が良い(より高いA/C比)。
【0095】
機械試験
AゾーンにおいてゼロックスDC250プリンター中でゼロックス700デジタルカラープレスのシアントナーを用いて実施例6のキャリアのTCL(トナー濃度ラチチュード)試験を行い、トナーは同じで比較例1のキャリアを用いた現像剤と比較した。上記試験の結果を図に示す。図は、q/dおよびエアロゾルによる曇り(clouding)の比較を含む。より具体的には図3は、Aゾーンにおけるトナー濃度に対するq/dを含み、図3A〜3Bは、比較例1のキャリアを含む第1のトナーのAゾーンにおけるトナー濃度に対するq/dのグラフ(図3A)および実施例6のキャリアを含む第2のトナーのAゾーンにおけるトナー濃度に対するq/dのグラフ(図3B)である。これは高いほど良い。
【0096】
図4Aおよび4Bは、実施例6のキャリアを含む第1のトナーおよび比較例1のキャリアを含む第2のトナーについての、Aゾーンにおける補間された摩擦帯電とエアロゾルによる曇りの関係を表すグラフ(図4A)およびAゾーンにおけるトナー濃度とエアロゾルによる曇りの関係を表すグラフ(図4B)である。これは低いほど良い。
【0097】
図5は、実施例6のキャリアを含む第1のトナーと比較例1のキャリアを含む第2のトナーの抵抗率の測定値を比較したグラフである。
【0098】
図6は、本開示のキャリアを含むトナーについて得られた、その他のキャリアコーティングと比較した、mol%に対する酸価のグラフである。比較例1のキャリアを含む対照も含まれる。これは高いほど良い。
【0099】
全ての試験において、シクロヘキシルメタクリラートおよびβ−CEAを含む粉体コーティングされたキャリアの性能は比較例1のキャリアを上回っていた。キャリアの抵抗率の測定値は、本開示のラテックスがキャリアコアを適切にコーティングしていることおよびこれらのキャリアの抵抗率が比較例1のキャリアと近く、そのため現像剤の抵抗率の要件を満たすことを示した。
【0100】
種々の上記で開示したおよびその他の特徴および機能、またはその代替物は、多くのその他の異なるシステムまたは用途に望ましく組み合わせられ得ることが理解されよう。種々の現在予期または予想されない代替物、変更例、変形例、改善がその後当業者によりなされ得るが、それらも添付の特許請求の範囲に包含されることが意図される。請求項中に特に記載していない限り、請求項の工程または要素は、如何なる特定の順序、数、位置、大きさ、形状、角度、色、または材料についても明細書または他の請求項から示唆または導入されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性コアと、
前記コアの表面の少なくとも一部を覆うポリマーコーティングであって、脂肪族シクロアクリラートおよび酸性アクリラートモノマーを含む複数のモノマーに由来するコポリマーを含むポリマーコーティングと、
を含むキャリアであり、前記ポリマーコーティングが直径40nm〜200nmの粒子として前記コアに塗布され、前記粒子が加熱により前記キャリアコアの表面に融着されている、キャリア。
【請求項2】
少なくとも1つの樹脂を含むトナーと、
コアおよび前記コアの少なくとも一部を覆うポリマーコーティングを含むキャリアであって、前記ポリマーコーティングが脂肪族シクロアクリラートおよび酸性アクリラートモノマーを含む複数のモノマーに由来するコポリマーを含む、キャリアと、
を含む現像剤組成物。
【請求項3】
前記トナーが、少なくとも1つの結晶性樹脂と組み合わせた少なくとも1つの非晶性樹脂を含み、前記少なくとも1つの非晶性樹脂がポリエステルを含み、前記少なくとも1つの結晶性樹脂がポリエステルを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの界面活性剤、脂肪族シクロアクリラート、及び酸性アクリラートモノマーを含むエマルションを形成する工程と;
前記脂肪族シクロアクリラートおよび酸性アクリラートモノマーを重合させてコポリマー樹脂を形成する工程と;
前記コポリマー樹脂を回収する工程と;
前記コポリマー樹脂を乾燥させて粉体コーティングを形成する工程と;
前記粉体コーティングをコアに塗布する工程と;
を含むプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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