説明

キャリングバッグ

【課題】生産性が高く、製造コストが低くて済むキャリングバッグを提供する。
【解決手段】並列状態に並べられた複数本の飲料缶からなる容器群の上面を覆うトップパネルと、このトップパネルの両側部に連設され容器群の側部を覆う左右のサイドパネルと、これらのサイドパネルの先端に連設され互いに係合しえる係止部を有するボトムパネルとを備えたブランクからなり、前記ボトムパネルを係合することにより前記容器群の上部、側部及び下部を囲繞して包装するキャリングバッグであって、前記ブランクが、印刷を施した基材a1 と印刷を施さない基材a2 の2種類の基材を印刷が見える状態で貼り合わせてなる積層シートS1 を用いて作製されている。ブランクの製造に際し、各基材a1 ,a2 を巻取で扱えることから、生産性を高くすることができ、しかも、貼合せ時に表裏基材の見当合わせが不要であるため、2番給紙の付いた印刷機であれば対応可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶ビールや缶ジュースなどをまとめて購入するときに持ち帰りやすくするためのキャリングバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ビール、ジュース、お茶などの飲料を充填した各種の飲料缶が販売されており、通常これらの飲料缶は店頭や自動販売機で1本ずつ販売されるが、一方では、消費者がまとめ買いをしやすいように、複数本を収納して持ち運べるようにしたいわゆるキャリングバッグが広く利用されている。
【特許文献1】実用新案登録第3030134号公報
【特許文献2】特開2003−155060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のキャリングバッグは、シート状の厚紙を枚葉印刷機で印刷し、その後で打ち抜き加工することでブランクを作製していたので、生産性が低く、コストの高いものになっていた。では、なぜ生産性の高い巻取(ロール)にしていないかと言うと、「ロール方式にすると、厚紙なので巻数を増やせないため、用紙掛け替えが煩雑になる。」、「厚紙なので巻きグセが付きやすいため、打ち抜き加工後の組み立て時にトラブルを生じやすい。」といった課題があり、これらを解決することが難しいからである。
【0004】
そして、またなぜ「厚紙」を使用しているのかと言うと、「販売商品が重量物なので強度が必要である。」、「キャリングバッグは無償の販促物でしかないのでお金が掛けられないので、高価な合成樹脂シートを使用することができない。」、「中身が見えなくなるので、美麗印刷ができないと販促効果が期待できないため、印刷が可能な用紙が必須である。」といった理由が挙げられる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、生産性が高く、製造コストが低くて済むキャリングバッグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、並列状態に並べられた複数本の飲料缶からなる容器群の上面を覆うトップパネルと、このトップパネルの両側部に連設され容器群の側部を覆う左右のサイドパネルと、これらのサイドパネルの先端に連設され互いに係合しえる係止部を有するボトムパネルとを備えたブランクからなり、前記ボトムパネルを係合することにより前記容器群の上部、側部及び下部を囲繞して包装するキャリングバッグであって、前記ブランクが、印刷を施した基材と印刷を施さない基材の2種類の基材を印刷が見える状態で貼り合わせてなる積層シートを用いて作製されたことを特徴とする。
【0007】
そして、上記構成からなるキャリングバッグにおいて、ブランクの積層シートは、2種類の基材の双方にそれぞれ紙基材を使用したものであってもよいし、或いは、2種類の基材の一方に紙基材を使用し、他方に合成樹脂フィルムを使用したものであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のキャリングバッグは、それを構成するブランクが、2種類の基材を貼り合わせた積層シートを用いて作製したものであるので、そのブランクの製造に際し、各基材を巻取で扱えることから、生産性を高くすることができ、しかも、貼合せ時に表裏基材の見当合わせが不要であるため、2番給紙の付いた印刷機であれば対応可能である。そして、用途に応じて、広範な用紙種から一般用紙、フィルムを選定することができるので、低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明に係るキャリングバッグの一例を示す斜視図、図2は図1のキャリングバッグを組み立てるブランクの展開図である。
【0011】
このキャリングバッグAは、並列状態に並べられた6本の飲料缶Cからなる容器群を束ねるもので、容器群の上面を覆うトップパネル1と、このトップパネル1の両側部に連設され容器群の側部を覆う左右のサイドパネル2,3と、これらのサイドパネル2,3の先端に連設され互いに係合しえる係止部4a,5aを有するボトムパネル4,5とを備えており、ボトムパネル4,5を係合することにより容器群の上部、側部及び下部を囲繞して包装するようになっている。このキャリングバッグAを組み立てるブランクBは、印刷を施した基材と印刷を施さない基材の2種類の基材を印刷が見える状態で貼り合わせてなる積層シートを図2の形状で打ち抜くことで作製される。
【0012】
通常のキャリングバッグは、飲料缶を包み込むと内側は見えないため、片面印刷のみでよいことから、表側の基材にのみ印刷があり、裏側の基材は白紙のままでよい。したがって、積層シートを構成する2種類の基材の貼り合わせ時に表裏の基材の見当合わせが不要であるため、2番給紙の付いた印刷機であれば対応可能である。そして、2種類の基材は、用途に応じて、広範な用紙種から一般用紙やフィルムを選定することができる。
【0013】
例えば、裏側の基材として薄い合成樹脂フィルムを使用し、表側の基材に従来の半分程度の厚みの紙基材を使用すれば、コストと強度のバランスを確保することができ、また合成樹脂フィルムのもつ耐水性により、キャリングバッグごと保冷しておいて、持ち帰り後にキャリングバッグごと買い物袋から取り出すときにも、結露水分による強度低下を抑制することができる。
【0014】
さらに、表側の基材に透明な合成樹脂フィルムを用いれば、光沢感に優れた意匠性の高い印刷とすることができる。例えば、通常の美麗印刷を施した紙基材の上に、ポリエチレンやポリプロピレンからなる汎用的な透明合成樹脂フィルムを貼り合わせるか、透明合成樹脂フィルムの裏面から美麗印刷を施し、このあと裏側基材となる紙と貼り合わせることで意匠性を高めることができる。そして、いずれの方法であっても、印刷絵柄は透明樹脂フィルムに保護された状態となることから、流通中に何らかの原因で荷扱い等に多少の難があっても、内部に設けられた絵柄自身は品位を保つことができる。なお、使用する合成樹脂フィルムの特徴によっては、光沢感の少ないものや不透明なものであってもよい場合もある。
【0015】
紙基材に貼り合わせる合成樹脂フィルムは、PETに限らず、PPやPEN、或いはPLAなどの生分解性フィルムでも構わないし、貼り合わせに使用する接着剤も、樹脂系やその性状は特に限定されない。用途や要求品質に応じて、樹脂であれば、SBR系、アクリル系、EVA系、酢ビ系、PVA系など自由に選択可能であり、また性状もエマルジョン(通常は水系)、ディスパージョン、水溶液、有機溶剤タイプ、電離線硬化タイプなど、好適に利用可能である。
【0016】
図3はブランクを作製する装置の一例を示す概略構成図であり、この装置は通常の印刷機に2番給紙を取り付け、さらにダイカッターを取り付けたものである。
【0017】
この図3の装置では、まず、第1給紙ロールR1 から第1基材a1 を繰り出してこれに印刷を施す。すなわち、繰り出した第1基材a1 を搬送しながら、印刷ユニット11〜14、ドライヤー15,16を順次通過させて印刷を施す。図では第1基材a1 の下面側に印刷が施される。一方、第2給紙ロールR2 から第2基材a2 を繰り出し、コーターユニット21、ドライヤー22を通過させ、貼合せ部Lにて第1基材a1 に重ね合わせた後、ドライヤー31にて乾燥させて両基材a1 ,a2 を貼り合わせた積層シートSとする。そして、積層シートSのまま搬送しながら、ダイカッター32でブランクBを打ち抜き、打ち抜いた後は、ブランク以外の部分を滓上げして除去する。
【0018】
図4は図3の装置により作製されたブランクを構成する積層シートS1 の断面図であり、この積層シートS1 は、第1基材a1 に薄手の紙基材を用い、第2基材a2 に厚手の紙基材を用いたもので、第1基材a1 である薄手の紙基材の表側にインキbで印刷が施され、その裏側に第2基材a2 である厚手の紙基材が白紙のままで貼り合わされている。
【0019】
図5は図3の装置により作製されたブランクを構成する積層シートS2 の断面図であり、この積層シートS2 は、第1基材a1 に従来の半分程度の厚みの紙基材を用い、第2基材a2 に薄い合成樹脂フィルムを用いたもので、第1基材a1 である紙基材の表側にインキbで印刷が施され、その裏側に第2基材a2 である合成樹脂フィルムが貼り合わされている。この積層シートS2 は、コストと強度のバランスがよく、結露水分による強度低下を抑制することができる。
【0020】
図6は図3の装置により作製されたブランクを構成する積層シートS3 の断面図であり、この積層シートS3 は、第1基材a1 に透明合成樹脂フィルムを用い、第2基材a2 に従来の半分程度の厚みの紙基材を用いたもので、第1基材a1 である合成樹脂フィルムの表側にインキbで印刷が施され、その裏側に第2基材a2 である紙基材が貼り合わされている。
【0021】
図7はブランクを作製する装置の別の例を示す概略構成図であり、この装置では図3の装置において貼合せ部の前に印刷済みの基材を反転させるターンバーを配置している。
【0022】
この図7の装置では、第1給紙ロールR1 から第1基材a1 を繰り出してこれに印刷を施す。そして、ターンバーのある反転部Tを通過させて印刷面を上面側に反転させる。一方、第2給紙ロールR2 から第2基材a2 を繰り出し、貼合せ部Lにて第1基材a1 に重ね合わせた後、ドライヤー31にて乾燥させて両基材a1 ,a2 を貼り合わせた積層シートSとする。その後は図3で説明したのと同様、積層シートSのまま搬送しながら、ダイカッター32でブランクBを打ち抜き、打ち抜いた後は、ブランク以外の部分を滓上げして除去する。
【0023】
図8は図7の装置により作製されたブランクを構成する積層シートS4 の断面図であり、この積層シートS4 は、第1基材a1 に透明合成樹脂フィルムを用い、第2基材a2 に従来の半分程度の厚みの紙基材を用いたもので、第1基材a1 である透明合成樹脂フィルムの裏側にインキbで印刷が施され、その印刷面を覆うようにあて第2基材a2 である紙基材が貼り合わされている。この積層シートS4 は透明合成樹脂フィルムの内側が印刷面となり、光沢感に優れている。
【0024】
図9は図7の装置により作製されたブランクを構成する積層シートS5 の断面図であり、この積層シートS5 は、第1基材a1 に従来の半分程度の厚みの紙基材を用い、第2基材a2 に透明合成樹脂フィルムを用いたもので、第1基材a1 である紙基材の裏側にインキbで印刷が施され、その印刷面を覆うようにして第2基材a2 である透明合成樹脂フィルムが貼り合わされている。この積層シートS5 も透明合成樹脂フィルムの内側が印刷面となり、光沢感に優れている。
【0025】
本発明のキャリングバッグを組み立てるブランクを作製する上記の如き装置では、印刷方式も自由に選定可能である。例えば、表面側の基材にはオフセット方式で色再現性に優れた印刷を施しておき、この印刷済み基材に対して、オフセット方式では対応できないようなパール印刷や高輝度メタリック印刷をフレキソ方式やグラビア方式で追い刷りしてもよい。一般の輪転方式のオフ印刷機では、厚紙専用機でもない限り、厚手用紙といっても、見当合わせの点から通常は巻取状で提供される0.2mm厚程度までしか対応できないため、0.4mm厚程度の厚手用紙だと印刷はフレキソ方式などに限定されていた。フレキソ方式は、パールインキなど膜厚を必要とするインキに対しては好適であるものの、一方でベタとハイライトの両立再現性が難しいという課題があり、実用上は絵柄制約があった。つまり、本発明によれば、オフなどの既存設備を有効利用しながら、低コストで新規性を有するキャリングバッグを提供することが可能となる。
【実施例1】
【0026】
通常、0.4mm厚程度のキャリングバッグ用紙を使用すべきところ、50μm厚のPETと、美麗印刷した約0.2mm厚の包装用紙とをポリエステル樹脂からなる接着剤で貼り合わせることで、強度面、コスト面、意匠面とを具備したキャリングバッグを作製することができた。
【実施例2】
【0027】
また、一方を約0.05mm厚の美麗印刷済みのコート紙、他方を0.2mm厚の包装用紙とし、この両者をホットメルト系接着剤(約20μm厚)で貼り合わせたところ、十分な強度とコストを有するキャリングバッグを作製することができた。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明のキャリングバッグは、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0029】
例えば、上記の実施形態では、第1給紙ロールから第1基材を繰り出してこれに印刷を施すようにしたが、第1給紙ロールから印刷済みの巻取を供給するようにしてもよい。
【0030】
また、上記の実施形態では、貼合せ部で両基材を貼り合わせた積層シートをそのまま搬送しながらブランクに打ち抜いたが、積層シートを一旦巻き取ってから、別の打ち抜き工程に掛けるようにしてもよい。この場合、打抜きを直ぐに行うようにすれば、積層シートに巻きぐせは殆ど付かない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るキャリングバッグの一例を示す斜視図である。
【図2】図1のキャリングバッグを組み立てるブランクの展開図である。
【図3】ブランクを作製する装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】図3の装置により作製されたブランクの積層シートを示す断面図である。
【図5】図3の装置により作製されたブランクの積層シートを示す断面図である。
【図6】図3の装置により作製されたブランクの積層シートを示す断面図である。
【図7】ブランクを作製する装置の別の例を示す概略構成図である。
【図8】図7の装置により作製されたブランクの積層シートを示す断面図である。
【図9】図7の装置により作製されたブランクの積層シートを示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
A キャリングバッグ
B ブランク
C 飲料缶
L 貼合せ部
T 反転部
1 第1給紙ロール
2 第2給紙ロール
S 積層シート
1 〜S5 積層シート
1 第1基材
2 第2基材
b インキ
1 トップパネル
2,3 サイドパネル
4,5 ボトムパネル
4a,5a 係止部
11〜14 印刷ユニット
15,16 ドライヤー
21 コーターユニット
22 ドライヤー
32 ダイカッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列状態に並べられた複数本の飲料缶からなる容器群の上面を覆うトップパネルと、このトップパネルの両側部に連設され容器群の側部を覆う左右のサイドパネルと、これらのサイドパネルの先端に連設され互いに係合しえる係止部を有するボトムパネルとを備えたブランクからなり、前記ボトムパネルを係合することにより前記容器群の上部、側部及び下部を囲繞して包装するキャリングバッグであって、前記ブランクが、印刷を施した基材と印刷を施さない基材の2種類の基材を印刷が見える状態で貼り合わせてなる積層シートを用いて作製されたことを特徴とするキャリングバッグ。
【請求項2】
ブランクの積層シートが、2種類の基材の双方にそれぞれ紙基材を使用したものであることを特徴とする請求項1に記載のキャリングバッグ。
【請求項3】
ブランクの積層シートが、2種類の基材の一方に紙基材を使用し、他方に合成樹脂フィルムを使用したものであることを特徴とする請求項1に記載のキャリングバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−120256(P2009−120256A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298768(P2007−298768)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】