説明

キャンディ製造方法

【課題】果糖の混合比率が50%以上であっても歯脆さが良好でかつ歯付きし難いハードキャンディを容易に製造することができるキャンディ製造方法を提供する。
【解決手段】果糖からなる第1原料と、無水麦芽糖、含水麦芽糖、ショ糖、パラチニット、ラクチュロース及びラフィノースのうちの少なくとも1以上を含む第2原料とを有し、前記第1原料を重量率で50%以上含むキャンディ原料を、苦味発生を回避できる最高温度から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温までの間の温度で加熱溶融する工程と、溶融したキャンディ原料を所定形状に成形し冷却する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果糖を用いたキャンディの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記果糖は、ブドウ糖よりも肝臓や筋肉でグリコーゲンへの変化率が高く、運動中の低血糖を防ぐ効果がある。また、果糖は、血中インシュリンを上昇させる作用が小さいので、例えば糖尿病患者用などの甘味料として広く使われている。
【0003】
そこで、上述の果糖を用いた、携帯し易いハードキャンディの出現が望まれている。しかし、運動中の低血糖を効率よく防ぐべく高濃度の果糖を使用してハードキャンディを製造する場合には、歯に付着し易くまた硬すぎるという難点があった。
【0004】
ところで、果糖は果物などに多く含まれており、果物の果汁を用いてハードキャンディを製造する方法が提案されている。この方法は、果汁を真空濃縮機による減圧下にて110〜130℃に加熱しながら水分を脱去して高濃縮し、スタンピングマシン等により成形する方法である(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−166478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した提案方法による場合には、真空減圧を行う必要があり、製造が大掛かりになるという難点があった。
【0007】
そこで、真空減圧を省略すべく、水分の無いまたは低い単糖類を用いてハードキャンディを製造することが考えられる。その場合において、粉末の果糖を、上述したように高濃度で使用して製造したキャンディの場合には、歯に付着し易くまた硬すぎるため、粉末の果糖に他の単糖類と混合して果糖の混合比率を下げるようにしてもよいが、あまり果糖の混合比率を下げすぎると運動中の低血糖を防ぐ効果が低下する等の問題があり、一方、果糖の混合比率(重量比率)を50%以上にすると、成形不良や固化しない等の難点や、得られたハードキャンディの歯脆さが悪くなったり、歯付きし易くなったりして良好な食感が得られない等の難点があり、更には加熱溶融温度が高い場合には着色して味が苦くなるという課題もあった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の課題を解決すべくなされたもので、果糖の混合比率が50%以上であっても良好な食感を有し、しかも苦味のないハードキャンディを容易に製造することができるキャンディ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のキャンディ製造方法は、果糖からなる第1原料と、無水麦芽糖、含水麦芽糖、ショ糖、パラチニット、ラクチュロース及びラフィノースのうちの少なくとも1以上を含む第2原料とを有し、前記第1原料を重量率で50%以上含むキャンディ原料を、苦味発生を回避できる最高温度から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度で加熱溶融する工程と、溶融したキャンディ原料を所定形状に成形し冷却する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明方法による場合には、キャンディ原料の50%(重量率)以上が果糖からなる第1原料であっても、その第1原料に対して、無水麦芽糖、含水麦芽糖、ショ糖、パラチニット、ラクチュロース及びラフィノースのうちの少なくとも1以上を含む第2原料を加えて、苦味発生を回避できる最高温度以下の温度で加熱溶融するので、苦味が発生することがない。また、苦味発生を回避できる最高温度から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度で加熱溶融すれば、歯脆さが良好でかつ歯付きし難い、良好な食感のハードキャンディを製造することができるので、温度管理を確実に行うことで良品を容易に得ることが可能になる。更に、従来のように真空減圧を用いる必要がないので、このことによっても果糖を用いたハードキャンディを容易に製造することができる。−
このキャンディ製造方法において、前記第2原料が含水麦芽糖を含む場合には、前記第1原料を重量率で50%以上78%以下とし、前記最高温度を182℃とすることが好ましい。また、前記第2原料が無水麦芽糖を含む場合、前記第1原料を重量率で50%以上90%以下とし、前記最高温度を184℃とすることが好ましい。更に、前記第2原料がパラチニットを含む場合、前記第1原料を重量率で50%以上70%以下とし、前記最高温度を185℃とすることが好ましい。更にまた、前記第2原料がラクチュロースを含む場合、前記第1原料を重量率で50%以上80%以下とし、前記最高温度を181℃とすることが好ましい。更にまた、前記第2原料がラフィノースを含む場合、前記第1原料を重量率で50%以上70%以下とし、前記最高温度を182℃とすることが好ましい。更にまた、前記第2原料がショ糖を含む場合、前記第1原料を重量率で50%以上65%以下とし、前記最高温度を184℃とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明方法による場合には、果糖の混合比率が50%以上であっても良好な食感を有し、しかも苦味のないハードキャンディを加熱溶融する温度を管理するだけで容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】果糖に無水麦芽糖を加える場合における果糖含有量と加熱温度との関係を示す図である。
【図2】果糖に含水麦芽糖を加える場合における果糖含有量と加熱温度との関係を示す図である。
【図3】果糖にショ糖を加える場合における果糖含有量と加熱温度との関係を示す図である。
【図4】果糖にパラチニットを加える場合における果糖含有量と加熱温度との関係を示す図である。
【図5】果糖にラクチュロースを加える場合における果糖含有量と加熱温度との関係を示す図である。
【図6】果糖にラフィノースを加える場合における果糖含有量と加熱温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明のハードキャンディ製造方法につき説明する。
【0014】
(第1実施形態)
この第1実施形態のハードキャンディ製造方法では、第1原料としての単糖類である果糖と、第2原料としての二糖類である無水麦芽糖とを有し、果糖を重量率において50%以上90%以下で含むキャンディ原料を、苦味発生を回避できる最高温度184℃から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度で加熱溶融する工程と、溶融したキャンディ原料を所定形状に成形し冷却する工程とを含む。
【0015】
【表1】

【0016】
表1は、果糖の配合比率を、100重量%、90重量%、85重量%、80重量%、70重量%、65重量%、60重量%、50重量%と変化させ、残りを無水麦芽糖としたキャンディ原料を用いてキャンディを製造した場合において、加熱温度(℃)と、水分(計算値)と、得られたキャンディの歯脆さの評価及び歯付きし難さの評価とを纏めるとともに、苦味の評価についても表した表である。なお、果糖には、一例として加藤化学株式会社製の商品名「純果糖」である粒状のものを用いており、他の実施形態でも同様である。また、無水麦芽糖には、一例として株式会社林原商事製の商品名「ファイントース」を用いた。
【0017】
上記歯脆さの評価と、歯付きし難さの評価とは、良好な食感のハードキャンディとして商品となり得るか否かの指標となり、共に二重丸( ◎ )であるものは商品となり得ることを表す。なお、歯脆さとは、噛むと砕け易いことをいい、歯付きし難さとは、歯に付着し難いことをいう。歯脆さの評価については、× : 悪い、△ : やや悪い、○ : やや良好、◎ : 良好を示し、歯付きし難さの評価についても同様であり、例えば○〜△や△〜×などの「〜」は、○と△の中間レベル、△と×の中間レベルを言う。この「〜」については、以下においても同様である。また、苦味についても評価を行っていて、0は苦味なし、1はやや苦い、2は苦い、3は極めて苦いことを示し、数字が大になる程苦くなる評価であり、表中の「−」については評価を行っていないことを表す。これらの評価の仕方は、以下同様である。
【0018】
表1中の実施例1〜7における加熱温度は、各実施例で得られたキャンディの歯脆さの評価と歯付きし難さの評価とを共に良好にすることができる下限の加熱温度である。なお、実施例1〜7における果糖と無水麦芽糖との配合比率は、実施例1では90重量%:10重量%、実施例2では85重量%:15重量%、実施例3では80重量%:20重量%、実施例4では70重量%:30重量%、実施例5では65重量%:35重量%、実施例6では60重量%:40重量%、実施例7では50重量%:50重量%である。
【0019】
図1は、実施例1〜7において、果糖の含有量(重量%)を横軸、加熱温度を縦軸にとったとき、歯脆さの評価および歯付きし難さの評価を良好にできる下限の加熱温度と、果糖の含有量との関係を示すグラフである。
【0020】
この図1より理解されるように、歯脆さの評価および歯付きし難さの評価が良好となる下限の加熱温度は、果糖の含有量が増加するに伴って上昇するように変化する。
【0021】
そして、上記下限の加熱温度よりも高い温度で加熱溶融させた場合にも、歯脆さの評価および歯付きし難さの評価を良好となし得る。つまり、表1に戻り、実施例8は、実施例6と同じ配合比率で、加熱温度を実施例6の145℃から175℃に変化させ、実施例9は、実施例7と同じ配合比率で、加熱温度を実施例7の142℃から175℃に変化させている。このように加熱温度を下限の加熱温度よりも高くさせた実施例8、9にあっては、歯脆さの評価および歯付きし難さの評価を良好になし得る。
【0022】
しかし、加熱温度を高くし過ぎる場合には、苦味が発生する。例えば、果糖が100重量%で無水麦芽糖を加えていない比較例1、比較例5及び比較例7の場合には、加熱温度が169℃(比較例1)では苦味が0であるが、加熱温度が184℃(比較例5)、192℃(比較例7)では苦味が1、3になり、苦味が発生する。
【0023】
このような苦味の発生は、果糖の配合比率が高い場合、例えば果糖が100重量%または90重量%程度の場合に起こり易い。果糖が100重量%の場合は上述した通りであり、果糖が90重量%の比較例2〜4では、加熱温度が173℃(比較例3)、145℃(比較例4)のときに苦味が無く、加熱温度が187℃(比較例2)の高温になると苦味(苦味基準2)が起こる。
【0024】
以上のことを考慮して、苦味の発生を抑制することが可能な最高温度について求めると、果糖と無水麦芽糖との配合比率が90重量%:10重量%のときに、苦味が発生せずしかも歯脆さの評価及び歯付きし難さの評価が共に良好であった184℃になる。
【0025】
したがって、本実施形態にあっては、果糖の配合比率が50重量%〜90重量%で、残りが無水麦芽糖であり、加熱温度が苦味発生を回避できる最高温度184℃から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度である場合に商品となり得ることが理解される。なお、配合比率により変化する下限の加熱温度のうち、本実施形態で最も低い温度は、実施例7の下限の加熱温度142℃である。
【0026】
よって、本実施形態では、キャンディ原料の50重量%以上が果糖からなる第1原料であっても、その第1原料に対して無水麦芽糖を加えて、苦味発生を回避できる最高温度(184℃)以下の温度で加熱溶融するので、苦味が発生することがない。また、苦味発生を回避できる最高温度(184℃)から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度で加熱溶融すれば、歯脆さが良好でかつ歯付きし難い、良好な食感のハードキャンディを製造することができるので、温度管理を確実に行うことで良品を容易に得ることが可能になる。更に、従来のように真空減圧を用いる必要がないので、このことによっても果糖を用いたハードキャンディを容易に製造することが可能になる。
【0027】
図1に示す果糖の含有量と下限の加熱温度との関係は、果糖含有量(重量%)をx、下限の加熱温度(℃)をyとすると、下限の加熱温度yと果糖含有量xとの間には、下記の(式1)が成立する。
【0028】
y≧0.0263x −2.6001x+206 ・・・(式1)

但し、この関係式は最小二乗法により得たものであるので、図1に示すバラツキを考慮して良品を得るために、温度管理には、関係式よりも低温側となった果糖含有量70%および90%の加熱温度の誤差(約−1℃)を管理温度とするように、下記の(式2)を用いる。
【0029】
y≧0.0263x −2.6001x+205 ・・・(式2)

また、表1の比較例6のように、実施例3と同じ配合比率で、加熱温度を下限の加熱温度である167℃(実施例3)よりも低い146℃に降下した場合には、当然のことながら、歯脆さの評価及び歯付きし難さの評価が共に悪くなる。
【0030】
(第2実施形態)
この第2実施形態では、第1原料としての単糖類である果糖と、第2原料としての二糖類である含水麦芽糖とを有し、果糖を50重量%以上78重量%以下で含むキャンディ原料を、苦味発生を回避できる最高温度182℃から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度で加熱溶融する工程と、溶融したキャンディ原料を所定形状に成形し冷却する工程とを含む。
【0031】
【表2】

【0032】
表2は、果糖の配合比率を、80重量%、78重量%、70重量%、60重量%、50重量%と変化させ、残りを含水麦芽糖としたキャンディ原料を用いてキャンディを製造した場合において、得られたキャンディの歯脆さの評価および歯付きし難さの評価が共に二重丸( ◎ )になる加熱温度(℃)と水分(計算値)とを纏めるとともに、苦味の評価についても表した表である。なお、含水麦芽糖には、一例として株式会社林原商事製の商品名「サンマルトS」を用いた。
【0033】
表2中の実施例10〜13における加熱温度は、各実施例で得られたキャンディの歯脆さの評価および歯付きし難さの評価を共に良好にすることができる下限の加熱温度である。なお、各実施例における果糖と含水麦芽糖との配合比率は、実施例10では78重量%:22重量%、実施例11では70重量%:30重量%、実施例12では60重量%:40重量%、実施例13では50重量%:50重量%である。
【0034】
図2は、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も良好である実施例10〜13において、果糖の含有量(重量%)を横軸、加熱温度を縦軸にとったとき、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も良好にできる下限の加熱温度と、果糖の含有量との関係を示すグラフである。
【0035】
この図2より理解されるように、歯脆さの評価および歯付きし難さの評価が良好となる下限の加熱温度は、果糖の含有量が増加するに伴って上昇するように変化する。
【0036】
そして、上記下限の加熱温度よりも低い温度で加熱溶融させた場合には、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も低下する。例えば、実施例11と同じ果糖と含水麦芽糖との配合比率で、加熱温度を実施例11の170℃(下限の加熱温度)よりも低い145℃にした比較例23の場合、および、実施例12と同じ果糖と含水麦芽糖との配合比率で、加熱温度を実施例12の161℃(下限の加熱温度)よりも低い145℃にした比較例24の場合には、共に歯脆さの評価も歯付きし難さの評価もやや悪いになる。
【0037】
これに対し、上記下限値よりも高い温度で加熱溶融させた場合には、歯脆さの評価および歯付きし難さの評価を良好となし得る。つまり、表2に戻り、果糖と含水麦芽糖との配合比率が実施例13と同じで、加熱温度を実施例13の156℃(下限の加熱温度)よりも高い171℃にした実施例14では、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も共に良好となっている。
【0038】
しかし、本実施形態にあっても、加熱温度を高くし過ぎる場合には、苦味が発生する。例えば、果糖と含水麦芽糖との配合比率が80重量%:20重量%の比較例21及び比較例22に関し、加熱温度が170℃(比較例22)では苦味が0であるが、加熱温度が187℃(比較例21)では苦味が1になり、苦味が発生する。
【0039】
以上のことを考慮して、苦味の発生を抑制することが可能な最高温度について求めると、実施例10に示すように果糖と含水麦芽糖との配合比率が78重量%:22重量%のときに、苦味が発生せず、しかも歯脆さの評価及び歯付きし難さの評価が共に良好であった182℃になる。
【0040】
したがって、本実施形態にあっては、果糖の配合比率が50重量%〜78重量%で、残りが含水麦芽糖であり、加熱温度が苦味発生を回避できる最高温度182℃から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度である場合に商品となり得ることが理解される。配合比率により変化する下限の加熱温度のうち、本実施形態で最も低い温度は、実施例13の下限の加熱温度156℃である。
【0041】
よって、本実施形態では、キャンディ原料の50重量%以上が果糖からなる第1原料であっても、その第1原料に対して含水麦芽糖を加えて、苦味発生を回避できる最高温度(182℃)以下の温度で加熱溶融するので、苦味が発生することがない。また、苦味発生を回避できる最高温度(182℃)から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度で加熱溶融すれば、歯脆さが良好でかつ歯付きし難い、良好な食感のハードキャンディを製造することができるので、温度管理を確実に行うことで良品を容易に得ることが可能になる。更に、従来のように真空減圧を用いる必要がないので、このことによっても果糖を用いたハードキャンディを容易に製造することが可能になる。
【0042】
図2に示す果糖の含有量と下限の加熱温度との関係は、果糖含有量(重量%)をx、下限の加熱温度(℃)をyとすると、下限の加熱温度yと果糖含有量xとの間には、下記の(式3)が成立する。
【0043】
y≧0.0258x −2.3767x+210.5 ・・・(式3)

但し、この関係式は最小二乗法により得たものであるので、図2に示すバラツキを考慮して良品を得るために、温度管理には、関係式よりも低温側となった果糖含有量70%の加熱温度の誤差(約−0.5℃)を管理温度とするように、下記の(式4)を用いる。
【0044】
y≧0.0258x −2.3767x+210 ・・・(式4)
【0045】
(第3実施形態)
この第3実施形態では、第1原料としての単糖類である果糖と、第2原料としての二糖類であるショ糖とを有し、果糖を重量率において50重量%以上65重量%以下で含むキャンディ原料を、苦味発生を回避できる最高温度184℃から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度で加熱溶融する工程と、溶融したキャンディ原料を所定形状に成形し冷却する工程とを含む。
【0046】
【表3】

【0047】
表3は、果糖の配合比率を、80重量%、70重量%、65重量%、60重量%、50重量%と変化させ、残りをショ糖としたキャンディ原料を用いてキャンディを製造した場合において、得られたキャンディの歯脆さの評価と歯付きし難さの評価とが共に二重丸( ◎ )になる加熱温度(℃)と水分(計算値)とを纏めるとともに、苦味の評価についても表した表である。なお、ショ糖には、一例として日新製糖株式会社製の商品名「フロストシュガーFS−2」を用いた。
【0048】
表3中の実施例20〜22における加熱温度は、各実施例で得られたキャンディの歯脆さの評価と歯付きし難さの評価とを共に良好にすることができる下限の加熱温度である。なお、各実施例における果糖とショ糖との配合比率は、実施例20では65重量%:35重量%、実施例21では60重量%:40重量%、実施例22では50重量%:50重量%である。
【0049】
図3は、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も良好である実施例20〜22において、果糖の含有量(重量%)を横軸、加熱温度を縦軸にとったとき、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も良好にできる下限の加熱温度と、果糖の含有量との関係を示すグラフである。
【0050】
この図3より理解されるように、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も良好となる下限の加熱温度は、果糖の含有量が増加するに伴って上昇するように変化する。
【0051】
そして、上記下限の加熱温度よりも低い温度で加熱溶融させた場合には、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も低下する。例えば、果糖とショ糖との配合比率が実施例21と同じで、加熱温度を実施例21の181℃(下限の加熱温度)よりも低い175℃にした比較例33の場合には、歯脆さの評価が良好でも歯付きし難さの評価が良好〜やや良好になる。
【0052】
これに対し、上記下限の加熱温度よりも高い温度で加熱溶融させた場合には、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も良好となし得るものの、加熱温度を高くし過ぎる場合には、苦味が発生する。例えば、果糖とショ糖との配合比率が80重量%:20重量%の比較例30、32の場合には、加熱温度が192℃(比較例30)で苦味が3に、187℃(比較例32)で苦味が1〜2になり、また、果糖とショ糖との配合比率が70重量%:30重量%の比較例31の場合には、加熱温度が185℃で苦味が1になっている。
【0053】
以上のことを考慮して、苦味の発生を抑制することが可能な最高温度について求めると、実施例20に示すように果糖とショ糖との配合比率が65重量%:35重量%のときに、苦味が発生せず、しかも歯脆さの評価及び歯付きし難さの評価が共に良好であった184℃になる。
【0054】
したがって、本実施形態にあっては、果糖の配合比率が50重量%〜65重量%で、残りがショ糖であり、加熱温度が苦味発生を回避できる最高温度184℃から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度である場合に商品となり得ることが理解される。配合比率により変化する下限の加熱温度のうち、本実施形態で最も低い温度は、実施例22の下限の加熱温度178℃である。
【0055】
よって、本実施形態では、キャンディ原料の50重量%以上が果糖からなる第1原料であっても、その第1原料に対してショ糖を加えて、苦味発生を回避できる最高温度(184℃)以下の温度で加熱溶融するので、苦味が発生することがない。また、苦味発生を回避できる最高温度(184℃)から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度で加熱溶融すれば、歯脆さが良好でかつ歯付きし難い、良好な食感のハードキャンディを製造することができるので、温度管理を確実に行うことで良品を容易に得ることが可能になる。更に、従来のように真空減圧を用いる必要がないので、このことによっても果糖を用いたハードキャンディを容易に製造することが可能になる。
【0056】
図3に示す果糖の含有量と下限の加熱温度との関係は、果糖含有量(重量%)をx、下限の加熱温度(℃)をyとすると、下限の加熱温度yと果糖含有量xとの間には、下記の(式5)が成立する。
【0057】
y≧0.02x +1.9x+223 ・・・(式5)

この関係式は最小二乗法により得たものであるが、図3に示すようにバラツキが極めて小さいため、温度管理には、上記式5を用いる。
【0058】
(第4実施形態)
この第4実施形態では、第1原料としての単糖類である果糖と、第2原料としての二糖類であるパラチニットとを有し、果糖を50重量%以上70重量%で含むキャンディ原料を、苦味発生を回避できる最高温度185℃から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度で加熱溶融する工程と、溶融したキャンディ原料を所定形状に成形し冷却する工程とを含む。
【0059】
【表4】

【0060】
表4は、果糖の配合比率を、80重量%、70重量%、60重量%、50重量%と変化させ、残りをパラチニットとしたキャンディ原料を用いてキャンディを製造した場合において、得られたキャンディの歯脆さの評価と歯付きし難さの評価とが共に二重丸( ◎ )になる加熱温度(℃)と水分(計算値)とを纏めるとともに、苦味の評価についても表した表である。なお、パラチニットには、一例として三井製糖株式会社製の商品名「粉末還元パラチノース」を用いた。
【0061】
表4中の実施例30〜32における加熱温度は、各実施例で得られたキャンディの歯脆さの評価と歯付きし難さの評価とを共に良好にすることができる下限の加熱温度である。なお、各実施例における果糖とパラチニットとの配合比率は、実施例30では70重量%:30重量%、実施例31では60重量%:40重量%、実施例32では50重量%:50重量%である。
【0062】
図4は、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も良好である実施例30〜32において、果糖の含有量(重量%)を横軸、加熱温度を縦軸にとったとき、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も良好にできる下限の加熱温度と、果糖の含有量との関係を示すグラフである。
【0063】
この図4より理解されるように、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も良好となる下限の加熱温度は、果糖の含有量が増加するに伴って上昇するように変化する。
【0064】
そして、前同様に、上記下限の加熱温度よりも低い温度で加熱溶融させた場合には、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も低下し、一方上記下限の加熱温度よりも高い温度で加熱溶融させた場合には、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も良好となし得るものの、加熱温度を高くし過ぎる場合には、苦味が発生する。例えば、実施例31では苦味が0であるが、果糖とパラチニットとの配合比率が80重量%:20重量%で、加熱温度が190℃の比較例40では、苦味(評価2)が発生する。
【0065】
以上のことを考慮して、苦味の発生を抑制することが可能な最高温度について求めると、実施例30に示すように果糖とパラチニットとの配合比率が70重量%:30重量%のときに、苦味が発生せず、しかも歯脆さの評価及び歯付きし難さの評価が共に良好であった185℃になる。
【0066】
したがって、本実施形態にあっては、果糖の配合比率が50重量%〜70重量%で、残りがパラチニットであり、加熱温度が苦味発生を回避できる最高温度185℃から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度である場合に商品となり得ることが理解される。配合比率により変化する下限の加熱温度のうち、本実施形態で最も低い温度は、実施例32の下限の加熱温度160℃である。
【0067】
よって、本実施形態では、キャンディ原料の50重量%以上が果糖からなる第1原料であっても、その第1原料に対してパラチニットを加えて、苦味発生を回避できる最高温度(185℃)以下の温度で加熱溶融するので、苦味が発生することがない。また、苦味発生を回避できる最高温度(185℃)から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度で加熱溶融すれば、歯脆さが良好でかつ歯付きし難い、良好な食感のハードキャンディを製造することができるので、温度管理を確実に行うことで良品を容易に得ることが可能になる。更に、従来のように真空減圧を用いる必要がないので、このことによっても果糖を用いたハードキャンディを容易に製造することが可能になる。
【0068】
図4に示す果糖の含有量と下限の加熱温度との関係は、果糖含有量(重量%)をx、下限の加熱温度(℃)をyとすると、下限の加熱温度yと果糖含有量xとの間には、下記の(式6)が成立する。
【0069】
y≧0.025x +1.75x+185 ・・・(式6)

この関係式は最小二乗法により得たものであるが、図4に示すようにバラツキが極めて小さいため、温度管理には上記式6を用いる。
【0070】
(第5実施形態)
この第5実施形態では、第1原料としての単糖類である果糖と、第2原料としての二糖類であるラクチュロースとを有し、果糖を50重量%以上80重量%以下で含むキャンディ原料を、苦味発生を回避できる最高温度181℃から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度で加熱溶融する工程と、溶融したキャンディ原料を所定形状に成形し冷却する工程とを含む。
【0071】
【表5】

【0072】
表5は、果糖の配合比率を、90重量%、80重量%、70重量%、60重量%、50重量%と変化させ、残りをラクチュロースとしたキャンディ原料を用いてキャンディを製造した場合において、得られたキャンディの歯脆さの評価と歯付きし難さの評価とが共に二重丸( ◎ )になる加熱温度(℃)と水分(計算値)とを纏めるとともに、苦味の評価についても表した表である。なお、ラクチュロースには、一例として森永乳業株式会社製の商品名「ラクチュロースパウダーMLC−9」を用いた。
【0073】
表5中の実施例40〜43における加熱温度は、各実施例で得られたキャンディの歯脆さの評価と歯付きし難さの評価とを共に良好にすることができる下限の加熱温度である。なお、各実施例における果糖とラクチュロースとの配合比率は、実施例40では80重量%:20重量%、実施例41では70重量%:30重量%、実施例42では60重量%:40重量%、実施例43では50重量%:50重量%である。
【0074】
図5は、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も良好である実施例40〜43において、果糖の含有量(重量%)を横軸、加熱温度を縦軸にとったとき、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も良好にできる下限の加熱温度と、果糖の含有量との関係を示すグラフである。
【0075】
この図5より理解されるように、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も良好となる加熱温度の下限値は、果糖の含有量が増加するに伴って上昇するように変化する。
【0076】
そして、上記下限の加熱温度よりも低い温度で加熱溶融させた場合には、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も低下する。例えば果糖とラクチュロースとの配合比率が80重量%:20重量%である、比較例50および比較例51において、加熱温度が低い147℃(比較例51)では歯脆さの評価も歯付きし難さの評価もやや悪いものとなる。これに対し、加熱温度が高い184℃(比較例50)では歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も良好となし得ることが判明した。
【0077】
しかし、本実施形態にあっても、加熱温度を高くし過ぎる場合には、苦味が発生する。例えば、果糖とラクチュロースとの配合比率が80重量%:20重量%である前述した比較例50と、比較例51とにおいて、加熱温度が低い147℃(比較例51)では苦味の評価が0であるが、加熱温度が高い184℃(比較例50)では苦味の評価が2になり、苦味が発生する。更に、果糖の配合比率を90重量%に高めた比較例52でも、苦味の評価が2になり、苦味が発生する。
【0078】
以上のことを考慮して、苦味の発生を抑制することが可能な最高温度について求めると、果糖とラクチュロースとの配合比率が80重量%:20重量%のときに、苦味が発生せず、しかも歯脆さの評価及び歯付きし難さの評価が共に良好であった181℃になる。
【0079】
したがって、本実施形態にあっては、果糖の配合比率が50重量%〜80重量%で、残りがラクチュロースであり、加熱温度が苦味発生を回避できる最高温度181℃から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度である場合に商品となり得ることが理解される。配合比率により変化する下限の加熱温度のうち、本実施形態で最も低い温度は、実施例43の下限の加熱温度142℃である。
【0080】
よって、本実施形態では、キャンディ原料の50重量%以上が果糖からなる第1原料であっても、その第1原料に対してラクチュロースを加えて、苦味発生を回避できる最高温度(181℃)以下の温度で加熱溶融するので、苦味が発生することがない。また、苦味発生を回避できる最高温度(181℃)から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度で加熱溶融すれば、歯脆さが良好でかつ歯付きし難い、良好な食感のハードキャンディを製造することができるので、温度管理を確実に行うことで良品を容易に得ることが可能になる。更に、従来のように真空減圧を用いる必要がないので、このことによっても果糖を用いたハードキャンディを容易に製造することが可能になる。
【0081】
図5に示す果糖の含有量と下限の加熱温度との関係は、果糖含有量(重量%)をx、下限の加熱温度(℃)をyとすると、下限の加熱温度yと果糖含有量xとの間には、下記の(式7)が成立する。
【0082】
y≧0.02x +1.28x+156 ・・・(式7)

この関係式は最小二乗法により得たものであるので、図5に示すバラツキを考慮して良品を得るために、温度管理には、関係式よりも低温側となった果糖含有量60%の加熱温度の誤差(約−1℃)を管理温度とするように、下記の(式8)を用いる。
【0083】
y≧0.02x +1.28x+155 ・・・(式8)
【0084】
(第6実施形態)
この第6実施形態では、第2原料をこれまでの二糖類に代えて、三糖類であるラフィノースを用いており、具体的には以下のように製造を行う。すなわち、第1原料としての単糖類である果糖と、第2原料としての三糖類であるラフィノースとを有し、果糖を50重量%以上70重量%で含むキャンディ原料を、苦味発生を回避できる最高温度182℃から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度で加熱溶融する工程と、溶融したキャンディ原料を所定形状に成形し冷却する工程とを含む。
【0085】
【表6】

【0086】
表6は、果糖の配合比率を、80重量%、70重量%、60重量%、50重量%と変化させ、残りをラフィノースとしたキャンディ原料を用いてキャンディを製造した場合において、得られたキャンディの歯脆さの評価と歯付きし難さの評価とが共に二重丸( ◎ )になる加熱温度(℃)と水分(計算値)とを纏めた表である。なお、ラフィノースには、一例として日本甜菜製糖株式会社製の商品名「ニッテンラフィノースFP」を用いた。
【0087】
表6中の実施例51〜53における加熱温度は、各実施例で得られたキャンディの歯脆さの評価と歯付きし難さの評価とを共に良好にすることができる下限の加熱温度である。なお、各実施例における果糖とラフィノースとの配合比率は、実施例51では70重量%:30重量%、実施例52では60重量%:40重量%、実施例53では50重量%:50重量%である。
【0088】
図6は、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も良好である実施例51〜53において、果糖の含有量(重量%)を横軸、加熱温度を縦軸にとったとき、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も良好にできる下限の加熱温度と、果糖の含有量との関係を示すグラフである。
【0089】
この図6より理解されるように、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も良好となる下限の加熱温度は、果糖の含有量が増加するに伴って上昇するように変化する。
【0090】
そして、上記下限の加熱温度よりも低い温度で加熱溶融させた場合には、前述の他の実施形態と同様に、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も低下するが、上記下限の加熱温度よりも高い温度で加熱溶融させた実施例51〜53の場合には、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も良好となし得る。しかし、加熱温度を高くし過ぎる場合には、苦味が発生する。
【0091】
以上のことを考慮し、苦味の発生を抑制することが可能な最高温度について求めると、果糖とラフィノースとの配合比率を70重量%:30重量%のときに、苦味が発生せず、しかも歯脆さの評価及び歯付きし難さの評価を共に良好にする182℃になる。なお、実施例51よりも果糖の配合比率が80重量%と高い比較例60の場合には、苦味(評価1)が発生する。
【0092】
したがって、本実施形態にあっては、果糖の配合比率が50重量%〜70重量%で、残りがラフィノースであり、加熱温度が苦味発生を回避できる最高温度182℃から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度である場合に商品となり得ることが理解される。配合比率により変化する下限の加熱温度のうち、本実施形態で最も低い温度は、実施例53の下限の加熱温度175℃である。
【0093】
よって、本実施形態では、キャンディ原料の50重量%以上が果糖からなる第1原料であっても、その第1原料に対してラフィノースを加えて、苦味発生を回避できる最高温度(182℃)以下の温度で加熱溶融するので、苦味が発生することがない。また、苦味発生を回避できる最高温度(182℃)から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度で加熱溶融すれば、歯脆さが良好でかつ歯付きし難い、良好な食感のハードキャンディを製造することができるので、温度管理を確実に行うことで良品を容易に得ることが可能になる。更に、従来のように真空減圧を用いる必要がないので、このことによっても果糖を用いたハードキャンディを容易に製造することが可能になる。
【0094】
図6に示す果糖の含有量と下限の加熱温度との関係は、果糖含有量(重量%)をx、下限の加熱温度(℃)をyとすると、下限の加熱温度yと果糖含有量xとの間には、下記の(式9)が成立する。
【0095】
y≧−0,005x+0.95x+140 ・・・(式9)

この関係式は最小二乗法により得たものであるが、図6に示すようにバラツキが極めて小さいので、温度管理にはこの式9を用いる。
【0096】
(第7実施形態)
以上の各実施形態では、水を加えていないキャンディ原料を用いているが、本発明は水を加えたキャンディ原料を用いても実施することが可能である。
【0097】
【表7】

【0098】
表7は、水を加えたキャンディ原料を用い、第1実施形態と同様のハードキャンディ製造方法で得られたキャンディの歯脆さの評価と歯付きし難さの評価を纏めた表である。
【0099】
実施例61及び比較例71は、果糖と無水麦芽糖との配合比率を同一の80重量%:20重量%となし、各混合物に水を1.5重量%加えたキャンディ原料を用いており、実施例61では水を加えない場合の下限の加熱温度の167℃(表1の実施例3)に対して181℃で加熱し、一方の比較例71は、前記下限の加熱温度の167℃(表1の実施例3)とほぼ同じ温度の169℃で加熱している。これらの評価については、実施例61での歯脆さの評価と歯付きし難さの評価は、共に良好であるものの、比較例71では歯脆さの評価がやや良好、歯付きし難さの評価がやや悪いと悪化している。このことから、水を1.5重量%程度加える場合には、加熱温度は、水を加えない場合で歯脆さおよび歯付きし難さの両評価が良好になる下限の加熱温度よりも高くすることが望ましいことが理解される。
【0100】
このことは、果糖と無水麦芽糖との配合比率を変えた場合においても同様である。例えば、実施例62と比較例76とでは、果糖と無水麦芽糖との配合比を1:1とし、これに水を1.5〜1.6重量%程度加えている。そして、比較例76では、加熱温度を143℃と低くしているので、歯脆さはやや良好、歯付きし難さはやや悪く、一方、実施例62では、加熱温度を175℃と高くしているので、歯脆さ及び歯付きし難さは共に良好であった。
【0101】
しかし、上記1.5〜1.6重量%よりも水を更に増加させた場合、例えば比較例72〜75のように水を11重量%〜20重量%を加えた場合には、歯脆さの評価と歯付きし難さの評価が悪化する。より詳細には、果糖と無水麦芽糖との配合比率が共に同じで、加熱温度も181℃と同じである前記実施例61と比較例73とに関し、水を1.5重量%加えた実施例61では、歯脆さの評価と歯付きし難さの評価が共に良好であるにも拘わらず、水を20重量%加えた比較例73では歯脆さの評価が良好で歯付きし難さの評価がやや良好〜良好に悪化する。同様に、果糖と無水麦芽糖との配合比率が共に同じで、加熱温度も174〜175℃とほぼ等しい前述の実施例62と比較例74に関し、水を1.5重量%加えた実施例62では歯脆さの評価と歯付きし難さの評価が共に良好であるにも拘わらず、水を11重量%加えた比較例74では歯脆さの評価が良好で歯付きし難さの評価がやや良好〜良好に悪化する。更には、前述の実施例62と配合比率が同じであっても、水を20重量%加えた比較例75では、加熱温度が実施例62よりも少し低い170℃であるものの、歯脆さの評価がやや悪い、歯付きし難さの評価がやや悪い〜悪いと大幅に悪化する。
【0102】
したがって、以上のことから、果糖と無水麦芽糖とを混合したキャンディ原料に多少の水を加えてもよいが、多量の水を加えることは避けることが好ましい。
【0103】
【表8】

【0104】
以上のことは、表8のように、果糖に対し、含水麦芽糖、ショ糖、パラチニットまたはラクチュロースを加え、更に水を加えた場合においても前同様であり、以下に詳述する。果糖と含水麦芽糖との配合比率が同じである実施例12(表2参照)と比較例80とを対比すると、水を20重量%加えた比較例80では、水を加えていない実施例12の下限の加熱温度(161℃)よりも高い温度(171℃)で加熱しているものの、歯脆さの評価と歯付きし難さの評価が共に悪くなる。また、果糖と含水麦芽糖との配合比率が比較例80とは異なるが、水を20重量%加え、かつ加熱温度が比較例80とほぼ同様な比較例81でも、歯脆さの評価と歯付きし難さの評価が共に悪化している。また、果糖にショ糖を加え、更に水を20重量%加えた比較例82では、果糖とショ糖との配合比率が同じで水を加えていない実施例22(表3参照)の下限の加熱温度(178℃)とほぼ同じ温度(180℃)で加熱しているものの、歯脆さの評価と歯付きし難さの評価が共に悪化している。更に、果糖にパラチニットを加え、更に水を20重量%加えた比較例83では、果糖とパラチニットとの配合比率が同じで水を加えていない実施例32(表4参照)の下限の加熱温度(160℃)よりも高い温度(171℃)で加熱していても、歯脆さの評価と歯付きし難さの評価が共に悪化している。更にまた、果糖にラクチュロースを加え、更に水を20重量%加えた比較例84では、果糖とラクチュロースとの配合比率が同じで水を加えていない実施例42(表5参照)の下限の加熱温度(150℃)とほぼ同じ温度(151℃)で加熱しており、歯脆さの評価と歯付きし難さの評価が共に悪化している。また、果糖にラクチュロースを加え、更に水を20重量%加えた比較例85では、果糖とラクチュロースとの配合比率が同じで水を加えていない実施例43(表5参照)の下限の加熱温度(142℃)よりも相当高い温度(171℃)で加熱しても、歯脆さの評価と歯付きし難さの評価は、比較例84よりも良いものではあるが、共に悪化している。よって、果糖に、含水麦芽糖、ショ糖、パラチニットまたはラクチュロースを加える場合にあっても、水を多量に添加することは避けることが好ましい。
【0105】
(他の実施形態)
なお、上述した実施形態では、第2原料としての二糖類である無水麦芽糖、含水麦芽糖、ショ糖、パラチニットおよびラクチュロース並びに三糖類であるラフィノースのうちのいずれか一つを、第1原料としての単糖類である果糖に加える場合について説明しているが、本発明はこれに限らない。例えば、無水麦芽糖、含水麦芽糖、ショ糖、パラチニット、ラクチュロース及びラフィノースのうちのいずれか2つ以上を果糖に加える場合においても、本発明は適用される。
【0106】
また、以上の説明では、第1原料としての果糖に、第2原料としての無水麦芽糖、含水麦芽糖、ショ糖、パラチニット、ラクチュロース及びラフィノースを加えて、キャンディ原料としているが、本発明はこのようなキャンディ原料に対し、更に副原料などを加えてもよい。
【0107】
更に、以上の説明では、果糖として、商品名「純果糖」である粒状のものを用いているが、本発明は粒状のものに限らず、結晶化した粉体(粒状よりも小径のもの)などを用いることができる。
【0108】
本発明における製法は、第1原料と第2原料とを準備し、次にこれら原料を、例えば加熱クッカー(図示せず)に装入し、第2原料の種類に応じた最高温度以下、その第2原料の重量%に応じた下限の加熱温度以上の温度に管理して溶融し、その後、その溶融物をデポジッターで金型へ充填して成形し、その後に所定温度以下に冷却し、離型することにより行われる。或いは、溶融物を冷却盤で冷却し、アームニーダー、バッチロール、ロープサイザー、スタンピングマシンで成形してもよい。また、上記副原料など加える場合には、第1原料と第2原料とを前同様の温度に管理して加熱溶融し、その後に冷却し、副原料などを溶融させるのに適当な温度になった時点で副原料などを添加して混合(溶融を要する副原料については溶融)させ、その後に、前同様にして成形し、冷却、離型することにより行われる。
【0109】
上記副原料を加える場合の製法の具体例としては、例えば、果糖に含水麦芽糖を加えて170℃に加熱溶融し、その後の冷却途中の135℃において、ホエイパウダーと抹茶パウダーとミルク香料とを添加して溶融し、その溶融物を成形、冷却、離型してキャンディ(実施例81とする)を製造した。また、同様に果糖に含水麦芽糖を加えて170℃に加熱溶融し、その後の冷却途中の135℃において、ココアパウダーとミルク香料とココア香料とを添加して溶融し、その溶融物を成形、冷却、離型してキャンディ(実施例82とする)を製造した。なお、実施例81のキャンディは、果糖、含水麦芽糖、ホエイパウダー、抹茶パウダーおよびミルク香料の配合比率は、57.5重量%、38.3重量%、2.4重量%、1.66重量%、0.14重量%で、製品水分(計算値)は1.7重量%であるので、下限の加熱温度(約158℃)以上で最高温度(182℃)以下の170℃を加熱温度とした。一方、実施例82のキャンディは、果糖、含水麦芽糖、ホエイパウダー、ココアパウダー、ミルク香料およびココア香料の配合比率は、55.6重量%、37.1重量%、4.7重量%、2.32重量%、0.14重量%、0.14重量%で、製品水分(計算値)は1.9重量%であるので、下限の加熱温度(約157℃)以上で最高温度(182℃)以下の170℃を加熱温度とした。
【0110】
製造された実施例81のキャンディにあっては、抹茶の味を呈し、歯脆さおよび歯付きし難さの評価は共に良好であった。一方、実施例82のキャンディにあっては、ココアの味を呈し、歯脆さおよび歯付きし難さの評価は共に良好であった。
【0111】
上記副原料に含まれる糖質としては、例えば無水ぶどう糖、乳糖、トレハロース、スタキオース、水飴、蜂蜜などの糖類や、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、還元パラチノース、還元水飴などの糖アルコール類が挙げられる。同じく脂質としては、例えば菜種油、大豆油、ごま油、ヤシ油などの植物油や、バター、ラード、ヘッドなどの動物油などが挙げられ、同じくたんぱく質としては、例えばコラーゲン、ケラチン、アルブミンなどが挙げられ、同じく各種エキスとしては、例えば梅エキス、人参エキス、ニンニクエキスなどの植物エキスや、シジミエキス、サメ軟骨エキスなどの動物エキス等が挙げられる。同じく乳製品としては、例えばバター、チーズなどが挙げられ、果汁としては、例えばりんごやミカンの果汁が挙げられ、香料としては、食品に添加されるフレーバーが用いられる。酸味料としては、例えばクエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸などが挙げられ、ビタミンとしては、例えばビタミンA、ビタミンB、ビタミンCなどが挙げられ、ミネラルとしては、例えばカルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられ、着色料としては、例えばウコン、クチナシなどが挙げられる。調味料としては、例えば醤油、ソース、スパイス、ハーブ、味噌などが挙げられ、増粘剤としては、例えばアラビアガム、寒天、カラギナンなどが挙げられ、乳化剤としては、例えばレシチン、モノグリセリドなどが挙げられる。
【0112】
また、味や香りの調整を行うべく酸味料や香料などの副原料を添加する場合には、味や香りが逃げないように適当な温度に冷却を行って酸味料や香料を混合し、その後、その混合物を成形し、冷却、離型することでハードキャンディを製造することが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
果糖からなる第1原料と、無水麦芽糖、含水麦芽糖、ショ糖、パラチニット、ラクチュロース及びラフィノースのうちの少なくとも1以上を含む第2原料とを有し、前記第1原料を重量率で50%以上含むキャンディ原料を、苦味発生を回避できる最高温度から良好な食感を得るのに必要な下限の加熱温度までの間の温度で加熱溶融する工程と、
溶融したキャンディ原料を所定形状に成形し冷却する工程と、
を含むことを特徴とするキャンディ製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のキャンディ製造方法において、
前記第2原料が含水麦芽糖を含む場合、前記第1原料を重量率で50%以上78%以下とし、前記最高温度を182℃とすることを特徴とするキャンディ製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のキャンディ製造方法において、
前記第2原料が無水麦芽糖を含む場合、前記第1原料を重量率で50%以上90%以下とし、前記最高温度を184℃とすることを特徴とするキャンディ製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のキャンディ製造方法において、
前記第2原料がパラチニットを含む場合、前記第1原料を重量率で50%以上70%以下とし、前記最高温度を185℃とすることを特徴とするキャンディ製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のキャンディ製造方法において、
前記第2原料がラクチュロースを含む場合、前記第1原料を重量率で50%以上80%以下とし、前記最高温度を181℃とすることを特徴とするキャンディ製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載のキャンディ製造方法において、
前記第2原料がラフィノースを含む場合、前記第1原料を重量率で50%以上70%以下とし、前記最高温度を182℃とすることを特徴とするキャンディ製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のキャンディ製造方法において、
前記第2原料がショ糖を含む場合、前記第1原料を重量率で50%以上65%以下とし、前記最高温度を184℃とすることを特徴とするキャンディ製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−94138(P2013−94138A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241546(P2011−241546)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(390029241)株式会社黄金糖 (4)
【Fターム(参考)】