説明

キラルジヒドロベンゾフラン類化合物の製造方法及びそれに使用する触媒

【課題】化学工業技術分野におけるキラルジヒドロベンゾフラン類化合物を製造する方法及びそれに使用する触媒を提供すること。
【解決手段】本発明は一般式IIIで表される2−アリルフェノール類化合物を原料とし、軸性キラル金属錯体を触媒とし、反応溶媒中で、酸化剤が存在する条件下で反応させて、一般式IVで表されるキラルジヒドロベンゾフラン類化合物を製造するものである。本発明は軸性キラル金属錯体を触媒とし、非常に高い反応活性と99%にも達するエナンチオ選択性を有し、各種不斉触媒反応に応用できるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学工業技術分野の化合物の製造方法及びそれに使用する触媒に関するものであり、具体的にはキラルジヒドロベンゾフラン類化合物の製造方法及びそれに使用する触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軸性キラル配位子BINAPの金属ルテニウム錯体が、香料、医薬品、及びその中間体、例えば(−)−メントール、ナプロキセン、ビタミンE、モルヒネ及びカルバペネム等の中間体の合成への応用に成功して以来、新型の軸性キラル金属錯体の合成及び応用研究は不斉触媒の一つの主要な研究分野としてますます重視されるようになってきた。これまでに、既に大量の軸性キラル金属錯体が開発されてきており、各種反応への応用に成功している。
【0003】
既存技術の文献の検索から、張緒穆教授らが以下の非特許文献1に発表した論文及びGuiry教授らが以下の非特許文献2に発表した論文において、彼らが軸性キラル金属錯体の設計開発に対して研究の概括を行ったことがわかる。これらの文献から、軸性キラル金属錯体の設計開発に以下のような欠点及び欠陥が存在していることがわかる。総合的に見るとここ十年来、軸性キラル金属触媒の開発では、いずれもまず軸性キラル配位子を得て、次に金属に配位させて軸性キラル金属触媒を得ている。原子経済の観点から見て、このような設計の配位子は以下のような比較的明確な限界を有している。光学的に純粋な軸性キラル配位子を得ることは比較的困難であり、往々にして大量のキラル分解試薬でラセミ配位子に対して分解を行うか、または複雑な分離手段を用いる必要がある。現在のビフェニル配位子設計の限界から、新たな設計概念を有する軸性キラル金属触媒の開発が重要になってきたことがわかる。
【0004】
2−イソプロピル−2,3−ジヒドロベンゾフラン骨格を含む大部分の化合物は生理活性を有することが既に実証されている。一連の天然物及び合成薬物中にはいずれもその構造ユニットが含まれる。Wacker型環化反応が、オレフィン官能化でこのタイプのキラル化合物を合成する最も有効な方法の一つであり、複素環式化合物を合成する重要な方法でもあることが既に実証されている。しかし、現在開発されている軸性キラルビスオキサゾリン配位子は該反応の触媒作用において基質の適用性が劣るという問題があるため、新型の軸性キラル金属錯体を触媒として開発し、キラルジヒドロベンゾフラン類化合物を合成することは重要な現実的意義を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】張緒穆ら、"New Chiral Phosphorus Ligands for Enantioselective Hydrogenation(不斉水素化反応を利用した新型のキラルホスフィン配位子)"、Chem. Rev.、103、 p.3029-3070
【非特許文献2】Guiryら、"Recent Developments in the Application of Oxazoline-Containing Ligands in Asymmetric Catalysis(オキサゾリン含有配位子の不斉触媒における研究の進展)"、Chem. Rev.、104、p.4151-4202
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、既存の技術の欠陥に対し、キラルジヒドロベンゾフラン類化合物の製造方法及びそれに使用する触媒を提供することにあり、それを用いて既存の技術の欠陥を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の手段によって前記の目的を実現したものである。すなわち、本発明に係るキラルジヒドロベンゾフラン類化合物の製造方法は、具体的には、以下の一般式IIIで表される2−アリルフェノール類化合物を原料とし、軸性キラル金属錯体を触媒とし、酸化剤が存在する条件下で、反応溶媒中で反応させて、以下の一般式IVで表されるキラルジヒドロベンゾフラン類化合物を製造するものである。
【0008】
本発明の一般式IVで表されるキラルジヒドロベンゾフラン類化合物の製造方法における反応式は以下の通りである。
【0009】
【化1】

【0010】
前記反応溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、トリフルオロエタノール等である。
【0011】
前記酸化剤は、酸素、過酸化水素水、p−ベンゾキノン、m−クロロ過安息香酸等である。
【0012】
前記反応温度は0℃〜100℃、反応時間は12〜72時間である。
【0013】
前記触媒の使用量は、一般式IIIで表される2−アリルフェノール類化合物に対して1〜20mol%である。
【0014】
本発明に係るキラルジヒドロベンゾフラン類化合物の製造に使用する触媒は軸性キラル金属錯体であり、以下の一般式Iで表される単金属核2,2’,6,6’−テトラオキサゾリンビフェニル軸性キラル錯体(S,aS)又は以下の一般式IIで表される二金属核2,2’、6,6’−テトラオキサゾリンビフェニル軸性キラル錯体(S,aS)からなる。
【0015】
【化2】

【0016】
【化3】

【0017】
前記軸性キラル金属錯体触媒については、2,2’,6,6’−テトラオキサゾリンビフェニルと各種金属イオンとをモル比で1:0.5〜3の割合で有機溶媒中に溶解し、10〜60分撹拌して製造される。各種金属イオンは、Pd(II)、Cu(I)、Cu(II)、Ag(I)、Zn(II)、Ti(IV)、Rh(I)、Ru(II)、Ni(II)、Mg(II)、Sc(III)、Eu(III)、La(III)、Ce(IV)又はCr(II)である。
【0018】
前記有機溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、トリフルオロエタノール等である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、現在の軸性キラル触媒を製造する際に軸性キラル配位子を使用しなければならないという限界を回避することができるとともに、単一の軸性キラル配位子が引き起こす可能性のある資源の浪費などの問題を回避できる。しかも合成方法は簡単であり、しかも高い反応活性及びエナンチオ選択性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の反応経路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の構想は、ビフェニル軸のオルト位が全て配位基に置換されたとき、高度の対称性から、以下に示す化合物Vは軸性キラルを有さないが、金属イオンと配位し架橋を構築すると、新型の軸性キラル触媒の生成に導くことができる(以下の反応式参照)というものである。オキサゾリン環上中心のキラル性(オキサゾリン環上4位の炭素原子がS体を有している場合)の影響により、以下に示す金属錯体(S,aR)−I又は以下に示す金属錯体(S,aR)−IIを形成するときは、2つのオキサゾリン環上の置換基の間に比較的大きな立体障害が発生し、金属錯体が生成されにくくなる。しかし以下に示す金属錯体(S,aS)−I又は以下に示す金属錯体(S,aS)−IIを形成するときは、2つのオキサゾリン環上の置換基の間の立体障害は比較的小さく、金属錯体が比較的生成されやすい。したがって2,2’,6,6’−ビフェニルテトラオキサゾリン配位子が金属イオンと配位するとき、選択的に立体障害の小さい金属錯体[(S,aS)−I又は(S,aS)−II]を生成することができ、さらには個別のものに到達できる選択性が得られる可能性もある。
【0022】
【化4】

【0023】
本発明によれば、2,2’,6,6’−テトラオキサゾリンビフェニル配位子を各種金属イオンに配位させて配位誘導した軸性キラル金属錯体を得ることができる。このタイプの錯体を触媒としてキラルジヒドロベンゾフラン化合物IVの製造に適用することで、高い反応活性及び99%eeにも達するエナンチオ選択性が得られる。同様に、このタイプの触媒は不斉シクロプロパン化反応、オレフィンの不斉酸化反応、及び分子内[2+1]環付加反応等の各種不斉反応に応用でき、比較的良好な将来的な実用価値を有する。
【0024】
本発明に従い製造される、一般式IVで表されるキラルジヒドロベンゾフラン類化合物は、例えば香料及び医薬品並びにそれらの中間体として有用な化合物である。
【実施例】
【0025】
以下に本発明の実施例を詳細に説明する。これらの実施例は本発明の技術方案を前提として実施し、詳細な実施方法及び具体的な操作過程を示すものであるが、本発明の保護範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
【0026】
本発明の実施例の経路図は図1に示した通りである。
【0027】
〔実施例1〕
化合物(S,aS)−II(R1=Ph、R2=R3=R4=H、M=Pd)の合成
窒素ガスの存在下で、前記の一般式Vで表される化合物(7.4mg、10.08mmol)とPd(OCOCF32(6.7mg、20.15mmol)をテトラヒドロフラン中に溶解し10分間撹拌して二金属核軸性キラル触媒(S,aS)−IIを得た。その収率は95%であった。
【0028】
特性パラメーターは以下の通りであった。
1H NMR (400 MHz, acetone-d6) ( 7.90-8.00 (m, 6 H, ArH), 7.35-7.39 (m, 12 H, ArH), 7.01-7.04 (m, 8 H, ArH), 5.11 (dd, J = 7.2, 10.8 Hz, 4 H, OCH), 4.88 (dd, J = 9.2, 10.4 Hz, 4 H, NCH), 4.49 (dd, J = 6.4, 9.6 Hz, 4 H, OCH)
【0029】
〔実施例2〕
化合物(S,aS)−II(R1=t−Bu、R2=R3=R4=H、M=Pd)の合成
本実施例の合成方法は実施例1と同じである。
【0030】
特性パラメーターは以下の通りであった。
1H NMR (400 MHz, acetone-d6): ( 8.32 (d, J = 3.6 Hz, 4 H, ArH), 8.18 (dd, J = 7.2, 8.4 Hz, 2 H, ArH), 4.53 (t, J = 9.2, 4 H, NCH), 4.45 (dd, J = 5.2, 9.2 Hz, 4 H, OCH), 3.95 (dd, J = 5.6, 10.0 Hz, 4 H, OCH), 0.83 (s, 36 H, CH3)
【0031】
〔実施例3〕
化合物(S,aS)−II(R1=i−Pr、R2=R3=R4=H、M=Pd)の合成
本実施例の合成方法は実施例1と同じである。
【0032】
特性パラメーターは以下の通りであった。
1H NMR (400 MHz, acetone-d6): ( 8.33 (d, J = 8.0 Hz, 4 H, ArH), 8.21 (dd, J = 7.2, 8.8 Hz, 2 H, ArH), 4.57 (t, J = 9.2, 4 H, NCH), 4.26 (dd, J = 6.0, 8.8 Hz, 4 H, OCH), 3.65-3.71 (m, 4 H, OCH), 1.32 (d, J = 6.4 Hz, 12 H, CH3), 1.03-1.12 (m, 4 H, CH), 0.49 (d, J = 6.8 Hz, 12 H, CH3)
【0033】
〔実施例4〕
化合物(S,aS)−II(R1=i−Pr、R2=R3=R4=H、M=Cu)の合成
窒素ガスの存在下で、前記の一般式Vで表される化合物(14.6mg、19.87mmol)と2当量のCuI(7.6mg、39.90mmol)をテトラヒドロフラン有機溶媒中に溶解し10分間撹拌して二金属核軸性キラル触媒(S,aS)−IIを得た。その収率は97%であった。
【0034】
特性パラメーターは以下の通りであった。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): ( 0.45 (d, J = 6.8 Hz, 12 H, CH3), 0.61 (d, J = 6.8 Hz, 12 H, CH3), 1.54-1.64 (m, 4 H, CH), 4.17 (dd, J = 12.8, 20.8 Hz, 4 H,NCH), 4.22 (dd, J = 8.4, 16 Hz, 4 H, OCH), 4.52 (dd, J = 8.4, 9.6 Hz, 4 H, OCH), 7.54 (dd, J = 7.2, 8.4 Hz, 2 H, ArH), 7.69 (d, J = 7.2 Hz, 4 H, ArH)
【0035】
〔実施例5〕
化合物(S,aS)−II(R1=Ph、R2=R3=R4=H、M=Cu)の合成
本実施例の合成方法は実施例4と同じである。
【0036】
特性パラメーターは以下の通りであった。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): ( 4.24 (t, J = 9.2 Hz, 4 H,NCH), 4.85 (dd, J = 8.8, 10.4 Hz, 4 H, OCH), 5.48 (dd, J = 9.2, 10.8 Hz, 4 H, OCH), 6.86-6.88 (m, 8 H, ArH), 7.13-7.21 (m, 12 H, ArH), 7.43 (t, J = 8.0 Hz, 2 H, ArH), 7.66 (d, J = 8.0 Hz, 4 H, ArH)
【0037】
〔実施例6〕
キラルジヒドロベンゾフラン化合物IV(R5=H、R6=CH3)の合成
【0038】
パラジウムトリフルオロアセテート(14.0mg、0.042mmol)と前記の一般式Vで表される化合物V(R1=Ph、R2=R3=R4=H)(15.4mg、0.021mmol)を1mlのメタノール溶液中で10分間撹拌して、前記の一般式IIで表される触媒を合成した。室温で、該溶液中にp−ベンゾキノン(181.6mg、1.68mmol)と前記の一般式IIIで表される化合物(R5=H、R6=CH3)(74.0mg、0.42mmol)のメタノール溶液(0.5ml)を加えた。その後60℃に加熱して24時間反応させた。反応終了後、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶出液は石油エーテル及び酢酸エチル)で、前記の一般式IVで表される化合物(R5=H、R6=CH3)を得た(65.2mg、89%、90%ee)。
【0039】
特性パラメーターは以下の通りであった。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): ( 1.55 (s, 3 H, CH3), 1.83 (dd, J = 0.8, 1.6 Hz, 3 H, CH3), 3.02 (d, J = 16.0 Hz, 1 H, CH), 3.26 (d, J = 15.2 Hz, 1 H, CH), 4.84 (m, 1 H, CH), 5.09 (m, 1 H, CH), 6.79 (d, J = 7.2 Hz, 1 H, ArH), 6.83 (m, 1 H, ArH), 7.10-7.15 (m, 2 H, ArH), 13C NMR (400 MHz, CDCl3): ( 158.9, 147.7, 128.0, 126.5, 124.9, 120.0, 109.9, 109.4, 89.7, 41.3, 26.0, 18.7
【0040】
〔実施例7〕
キラルジヒドロベンゾフラン化合物IV(R5=7−CH3、R6=CH3)の合成
本実施例の合成方法は実施例6と同じである。収率は69%、鏡像体過剰率は99%eeであった。
【0041】
特性パラメーターは以下の通りであった。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) ( 1.57 (s, 3 H, CH3), 1.83 (s, 3 H, CH3), 2.24 (s, 3 H, CH3), 3.03 (d, J = 15.6 Hz, 1 H, CH), 3.26 (d, J = 15.6 Hz, 1 H, CH), 4.84 (br, 1 H, CH), 5.10 (br, 1 H, CH), 6.75 (t, J = 8.0 Hz, 1 H, ArH), 6.96 (t, J = 7.2 Hz, 2 H, ArH), 13C NMR (100 MHz, CDCl3) ( 157.4, 147.9, 129.1, 125.7, 122.2, 119.9, 119.5, 109.7, 89.2, 41.7, 26.2, 18.7, 15.3
【0042】
〔実施例8〕
キラルジヒドロベンゾフラン化合物IV(R5=H、R6=H)の合成
本実施例の合成方法は実施例6と同じである。収率は87%、鏡像体過剰率は94%eeであった。
【0043】
特性パラメーターは以下の通りであった。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): ( 7.11-7.16 (m, 2 H, ArH), 6.76-6.88 (m, 2 H, ArH), 6.05 (dd, J = 17.6, 11.2 Hz, 1 H, CH), 5.31 (dd, J = 17.2, 0.8 Hz, 1 H, CH), 5.10 (dd, J = 10.4, 0.8 Hz, 1 H, CH), 3.18 (d, J = 14.2 Hz, 1 H, CH2), 3.06 (d, J = 15.6 Hz, 1 H, CH2), 1.56 (s, 3 H, CH3); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): ( 158.8, 141.8, 128.2, 126.6, 125.2, 120.4, 113.0, 109.6, 87.7, 42.2, 26.3
【0044】
〔実施例9〕
キラルジヒドロベンゾフラン化合物IV(R5=5−Ph、R6=H)の合成
本実施例の合成方法は実施例6と同じである。収率は87%、鏡像体過剰率は90%eeであった。
【0045】
特性パラメーターは以下の通りであった。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 7.50-7.57 (m, 2 H, ArH), 7.27-7.41 (m, 5 H, ArH), 6.85 (d, J = 8.8 Hz, 1 H, ArH), 6.08 (dd, J = 17.6, 10.8 Hz, 1 H, CH), 5.34 (dd, J = 17.2, 0.8 Hz, 1 H, CH), 5.11 (dd, J = 10.8, 0.8 Hz, 1 H, CH), 3.23 (d, J = 15.6 Hz, 1 H, CH2), 3.10 (d, J = 15.6 Hz, 1 H, CH2), 1.58 (s, 3 H, CH3); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): 158.6, 141.7, 141.5, 134.0, 128.8, 127.3, 127.2, 126.9, 126.6, 124.1, 113.1, 109.8, 82.2, 42.2, 26.3
【0046】
〔実施例10〕
キラルジヒドロベンゾフラン化合物IV(R5=5−F、R6=H)の合成
本実施例の合成方法は実施例6と同じであった。収率は89%、鏡像体過剰率は90%eeであった。
【0047】
特性パラメーターは以下の通りであった。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 6.77-6.85 (m, 2 H, ArH), 6.68 (dd, J = 4.4, 8.8 Hz, 1 H, ArH), 6.02 (dd, J = 17.2, 10.8 Hz, 1 H, CH), 5.30 (dd, J = 17.2, 0.8 Hz, 1 H, CH), 5.10 (dd, J = 10.8, 1.2 Hz, 1 H, CH), 3.15 (d, J = 16.0 Hz, 1 H, CH2), 3.04 (d, J = 15.6 Hz, 1 H, CH2), 1.54 (s, 3 H, CH3); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): 141.5, 114.3, 114.1, 113.1, 112.4, 112.1, 109.7, 109.6, 88.4, 42.3, 26.2
【0048】
〔実施例11〕
キラルジヒドロベンゾフラン化合物IV(R5=6−Me、R6=H)の合成
酢酸パラジウム(14.0mg、0.042mmol)と前記の一般式Vで表される化合物V(R1=Ph、R2=R3=R4=H)(15.4mg、0.021mmol)を1mlのアセトン溶液中で10分間撹拌して、前記の一般式IIで表される触媒を合成した。室温で、該溶液中にp−ベンゾキノン(181.6mg、1.68mmol)と前記の一般式IIIで表される化合物(R5=6−Me、R6=H)(74.0mg、0.42mmol)のアセトン溶液(0.5ml)を加えた。その後0℃に冷却し72時間反応させた。反応終了後、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶出液は石油エーテル及び酢酸エチル)で、前記の一般式IVで表される化合物(R5=6−Me、R6=H)を得た。収率は60%、鏡像体過剰率は92%eeであった。
【0049】
特性パラメーターは以下の通りであった。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): (d, J = 7.6 Hz, 1 H, ArH),6.67 (d, J = 7.2 Hz, 1 H, ArH), 6.64 (d, J = 8.0 Hz, 1 H, ArH), 6.01-6.10 (m, 1 H, CH), 5.29-5.35 (m, 1 H, CH), 5.07-5.12 (m, 1 H, CH), 3.11 (d, J = 15.6 Hz, 1 H, CH2), 2.99 (d, J = 15.6 Hz, 1 H, CH2), 2.22 (s, 3 H, CH3), 1.57 (s, 3 H, CH3); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): ( 158.8, 141.8, 128.2, 126.6, 125.2, 120.4, 113.0, 109.6, 87.7, 42.2, 26.3.
【0050】
〔実施例12〕
キラルジヒドロベンゾフラン化合物IV(R5=6−Me、R6=H)の合成2
酢酸パラジウム(14.0mg、0.042mmol)と前記の一般式Vで表される化合物V(R1=Ph、R2=R3=R4=H)(15.4mg、0.021mmol)を1mlのトルエン溶液中で60分間撹拌して前記の一般式IIで表される触媒を合成した。室温で、該溶液中にp−ベンゾキノン(181.6mg、1.68mmol)と前記の一般式IIIで表される化合物(R5=6−Me、R6=H)(74.0mg、0.42mmol)のトルエン溶液(0.5ml)を加えた。その後100℃に加熱し12時間反応させた。反応終了後、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶出液は石油エーテル及び酢酸エチル)で、前記の一般式IVで表される化合物(R5=6−Me、R6=H)を得た。収率は89%、鏡像体過剰率は80%eeであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式IIIで表される2−アリルフェノール類化合物を原料とし、軸性キラル金属錯体を触媒とし、酸化剤が存在する条件下で、反応溶媒中で反応させることを特徴とする、以下の一般式IVで表されるキラルジヒドロベンゾフラン類化合物の製造方法。
【化1】

【請求項2】
前記反応溶媒が、アセトン、メタノール、エタノール、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、トリフルオロエタノールのうちの一種であることを特徴とする、請求項1に記載のキラルジヒドロベンゾフラン類化合物の製造方法。
【請求項3】
前記酸化剤が、酸素、過酸化水素水、p−ベンゾキノン、m−クロロ過安息香酸のうちの一種であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のキラルジヒドロベンゾフラン類化合物の製造方法。
【請求項4】
前記反応溶媒中で行う反応において、反応温度が0℃〜100℃、反応時間が12時間〜72時間であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載のキラルジヒドロベンゾフラン類化合物の製造方法。
【請求項5】
前記軸性キラル金属錯体触媒の使用量が、一般式IIIで表される2−アリルフェノール類化合物に対して1〜20mol%であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載のキラルジヒドロベンゾフラン類化合物の製造方法。
【請求項6】
以下の一般式Iで表される単金属核2,2’,6,6’−テトラオキサゾリンビフェニル軸性キラル錯体(S,aS)又は以下の一般式IIで表される二金属核2,2’、6,6’−テトラオキサゾリンビフェニル軸性キラル錯体(S,aS)からなることを特徴とする、請求項1に記載のキラルジヒドロベンゾフラン類化合物の製造方法に使用する触媒。
【化2】

【化3】

【請求項7】
請求項6記載の触媒の製造方法であって、
2,2’,6,6’−テトラオキサゾリンビフェニルと金属イオンとモル比で1:0.5〜3の割合で有機溶媒中に溶解し、10〜60分撹拌することを特徴とする触媒の製造方法。
【請求項8】
前記有機溶媒が、アセトン、メタノール、エタノール、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、トリフルオロエタノールのうちの一種であることを特徴とする、請求項7に記載の触媒の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−227673(P2009−227673A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65439(P2009−65439)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【出願人】(507190994)上海交通大学 (16)
【Fターム(参考)】