説明

キーシート用部材、その製造方法、キーパネルおよび電子機器

【課題】キートップの底面側に、ミラーインク層などのような金属成分を含む加飾層を設けたキーシート用部材を製造する場合においても、当該加飾層とキートップの底面側との界面近傍での剥離が抑制されること。
【解決手段】樹脂製のキートップ20と、キートップの片面に設けられ、金属成分を含む高輝性インクを用いて形成された加飾層18と、加飾層18上に設けられた保護層14と、キートップ20の上記加飾層18が設けられた側に配置されるベースシート10と、保護層14とベースシート10との間に配置される接着層12と、を少なくとも備え、保護層14が、紫外線硬化型樹脂を用いて形成されたことを特徴とするキーシート用部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーシート用部材、その製造方法、キーパネルおよび電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの各種電子機器に設けられているキーシートには、多様なデザインニーズがあり、このようなニーズのひとつとして、金属調のデザインが挙げられる。金属調のデザインを有するキーシートとしては、たとえば、アルミニウム箔とバインダー樹脂と溶剤とを含有するミラーインクを用いて形成された表示印刷層をキートップの底面又は天面に設けたキーシート用カバーが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−5237号公報(請求項1、4、段落番号0006〜0008、0018等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このミラーインクを用いて形成される層(以下、「ミラーインク層」と称す場合がある)による金属調や金属光沢感をより強調するためには、ミラーインク層中に占めるアルミニウム箔などのような金属調を呈する色材成分の割合できるだけ多くする必要がある。
しかし、アルミニウム箔などの金属粒子は、顔料や染料などの通常の色材と異なり、周囲に存在する樹脂材料等に対して化学的結合等の形成により接着力を発現する官能基を有していない。このため、ミラーインク層などの塗工層中において、金属粒子とその周囲に存在する樹脂材料等との接着力は、通常の色材とその周囲に存在する樹脂材料等との接着力よりも弱い。このため、ミラーインク層中に溶剤成分が浸透すると、金属粒子とその周囲の樹脂材料等との剥離が生じ易い。
【0005】
また、ミラーインク層中において同一方向に積層配列されることで巨視的に鏡面の表面状態を作り出す金属箔片は、略球形状の顔料と比べて、単位体積当たりの表面積が相対的に大きい。よって、塗工層中における顔料の配合量と金属箔片の配合量とが同程度の場合、顔料よりも金属箔片の方が、塗工層を補強する効果を有する樹脂材料に対する接触面積が大きくなる。それゆえ、顔料と樹脂材料との界面に溶剤成分が入りこむ場合と比べて、金属箔片と樹脂材料との界面に溶剤成分が入りこんだ場合、界面での接着強度の低下が著しい。以上に説明したような理由から、キートップの底面側にミラーインク層を設けた金属調のキーシート用部材を製造しようとした場合、キートップとミラーインク層との界面近傍での剥離が生じ易い。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、キートップの底面側に、ミラーインク層などのような金属成分を含む加飾層を設けたキーシート用部材を製造する場合においても、当該加飾層とキートップの底面側との界面近傍での剥離が抑制されたキーシート用部材、その製造方法、当該キーシート用部材を用いたキーパネルおよび電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、
本発明のキーシート用部材は、樹脂製のキートップと、キートップの片面に設けられ、金属成分を含む高輝性インクを用いて形成された加飾層と、加飾層上に設けられた保護層と、キートップの加飾層が設けられた側に配置されるベースシートと、保護層とベースシートとの間に配置される接着層と、を少なくとも備え、保護層が、紫外線硬化型樹脂を用いて形成されたことを特徴とする。
【0008】
本発明のキーシート用部材の一実施態様は、加飾層に含まれる上記金属成分の含有量が10質量%以上80質量%以下の範囲内であることが好ましい。
【0009】
本発明のキーシート用部材の他の実施態様は、接着層が、シアノアクリレート系接着剤を用いて形成されるものであることが好ましい。
【0010】
本発明のキーシート用部材の他の実施態様は、接着層が、印刷インクを用いて形成されるものであることが好ましい。
【0011】
本発明のキーシート用部材製造方法は、金属成分を含む高輝性インクを用いて加飾層を形成する加飾層形成工程と、加飾層上に、紫外線硬化型樹脂を用いて保護層を形成する保護層形成工程と、溶剤を含む接着剤を、保護層表面およびベースシート表面から選択される少なくとも一方の表面に塗布した後、キートップとベースシートとを接着する接着工程と、を少なくとも経ることにより、本発明のキーシート用部材を製造することを特徴とする。
【0012】
本発明のキーパネルは、本発明のキーシート用部材を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の電子機器は、本発明のキーパネルを備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の電子機器の一実施態様は、携帯電話であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、キートップの底面側に、ミラーインク層などのような金属成分を含む加飾層を設けたキーシート用部材を製造する場合においても、当該加飾層とキートップの底面側との界面近傍での剥離が抑制されたキーシート用部材、その製造方法、当該キーシート用部材を用いたキーパネルおよび電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態のキーシート用部材の層構造の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態のキーシート用部材は、樹脂製のキートップと、キートップの片面に設けられ、金属成分を含む高輝性インクを用いて形成された加飾層と、加飾層上に設けられた保護層と、キートップの加飾層が設けられた側に配置されるベースシートと、保護層とベースシートとの間に配置される接着層と、を少なくとも備え、保護層が、紫外線硬化型樹脂を用いて形成されたことを特徴とする。
【0018】
本実施形態のキーシート用部材では、キートップの片面、すなわち、ベースシートが配置される側の面(底面)に金属成分を含む高輝性インクを用いて形成された加飾層が設けられる。この加飾層は、何がしかのデザイン性の付与や文字情報の表示等を目的として設けられる一般的な加飾層と比べると、色材として機能する金属成分と樹脂成分と界面の接着力が弱い。それゆえ、本来的には、加飾層とキートップとの界面近傍での剥離が生じ易いと言える。しかしながら、上述したような保護層を設けた本実施形態のキーシート用部材では、この剥離の発生を抑制できる。このような効果が得られる理由は以下の通りであると推定される。
【0019】
まず、従来のキーシート用部材の製造に際しては、キートップの底面に加飾層を形成し、必要に応じて更にその他の層を形成した後、キートップの底面側とベースシートとを溶剤を含む接着剤により貼り合わせる。しかし、接着剤をキートップの底面側に塗布した後、または、接着剤をベースシート側に塗布して貼り合わせ後は、接着剤中に残留していた溶剤は、加飾層側へと拡散する。この際、既に乾燥固化した状態にある加飾層は、再び溶剤を吸収して膨潤することになる。しかしながら、層の柔軟性を支配する樹脂成分との接着力の弱い金属成分を含む加飾層では、樹脂成分と金属成分との界面近傍での剥離破壊を伴うことなく、膨潤による層の変形を緩和することが難しい。そして、この場合は、キートップと加飾層との界面近傍で剥離が生じる。したがって、剥離を抑制するためには、接着剤中に残留している溶剤が、加飾層側へと拡散しないようにする必要がある。
【0020】
これに対して、本実施形態のキーシート用部材では、貼り合わせ後に形成される接着層と、加飾層との間に保護層が設けられている。このため、接着剤中に残留している溶剤が、加飾層へと拡散するためには、保護層を通過しなければならない。しかしながら、この保護層は、紫外線硬化型樹脂のように、溶剤含有量が非常に少ない材料を用いて形成されている。それゆえ、このような材料により形成された保護層は、多量の溶剤が揮発して乾燥固化した場合と比べて非常に緻密な構造を有している。このため、接着剤中に残留している溶剤分子のような嵩の小さい分子であっても、保護層中を拡散するのが困難である。これに加えて、保護層中には、その形成の際に残留している溶剤の量が少ないため、接着層から拡散してきた溶剤を吸収してそのままトラップし続ける能力が高い。それゆえ、保護層を設けることにより、接着剤層中に残留している溶剤の加飾層への拡散を抑制でき、結果として、加飾層とキートップとの剥離を抑制することができる。なお、保護層の形成に際しては、紫外線硬化型樹脂の代わりに、溶媒含有量の少ない水系インクを用いてもよい。
【0021】
以上に説明した本実施形態のキーシート用部材は、(i)樹脂製のキートップの片面に、金属成分を含む高輝性インクを用いて加飾層を形成する加飾層形成工程と、(ii)加飾層上に、紫外線硬化型樹脂を用いて保護層を形成する保護層形成工程と、(iii)溶剤を含む接着剤を、保護層表面およびベースシート表面から選択される少なくとも一方の表面に塗布した後、キートップとベースシートとを接着する接着工程と、を少なくとも経ることにより製造することができる。なお、この他に、必要に応じてその他の工程を実施することもできる。たとえば、ボタン操作の際に、押圧力を入力信号に変換するタクティールスイッチに対して、指先の押圧力をタクティールスイッチに伝達する押圧子が、キーシート用部材の表面側から完全に隠蔽されるように、樹脂材料と白色顔料とを主成分とする隠蔽層を形成する隠蔽層形成工程を、加飾層形成工程後、かつ、保護層形成工程前に実施してもよい。次に、本実施形態のキーシート用部材を構成する各部材の詳細について説明する。
【0022】
−キートップ−
キートップは光透過性を有する。ここで、「光透過性」とは、本願明細書において可視光域の波長(約400〜800nm)の光に対する透過率が60%〜100%の範囲であることを意味し、80%〜100%の範囲内が好ましい。透過率が、60%未満では、夜間の屋外などの暗い場所でLED等のバックライトによりキーシート用部材を裏面側から照光しても、十分な視認性が確保できない。このキートップは熱可塑性樹脂を用いて射出成型により作製したものでもよいし、金型に流し込んだ紫外線硬化型樹脂を光硬化させて作製したものでもよい。また、キートップを構成する樹脂材料としては、たとえば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)、PMMA樹脂、PBT樹脂、PA樹脂(ポリアミド樹脂)が挙げられる。
【0023】
−加飾層−
加飾層は、オフセット印刷、スクリーン印刷などの公知の印刷方法によりキートップの底面に形成される。ここで、加飾層形成用の材料としては、固形分として色材成分と樹脂成分とを含むインクを用いる。ここで、色材としては、加飾層の色調および光沢感の調整を目的として用いられる物であれば特に限定されないが、顔料、金属薄片、フレーク状ガラスの表面に金属および/または金属酸化物をコーティングした光輝性無機顔料などが挙げられ、2種類以上を併用してもよい。なお、金属調のデザインを付与する観点からは、色材として、アルミニウム箔などの金属薄片を用いた加飾層形成用の材料(高輝性インク(いわゆるミラーインク))を用いることが特に好ましい。このミラーインクとしてはアルミニウム箔などの金属成分と樹脂成分とを含むものであれば特に制限なく利用できるが、全固形分中に占め金属成分の含有割合は10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、10質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。全固形分中に占め金属成分の含有割合を10質量%以上とすることにより、よりメタリック感の高いキーシートを得ることができる。また、全固形分中に占め金属成分の含有割合を80質量%以下とすることにより、加飾層中に柔軟性を有する樹脂成分がより多く含まれ、加飾層自体の強度が増加する。このため、加飾層側の破壊に起因する剥離をより容易に抑制できる。
【0024】
−保護層−
保護層は、加飾層の表面に直接形成してもよいし、加飾層表面に隠蔽層などのその他の層を形成してから、この層の表面に形成してもよい。また、保護層は、オフセット印刷やスクリーン印刷などの公知の印刷方法により形成することができる。
【0025】
ここで、保護層形成用の材料として用いられる紫外線硬化型樹脂としては、ウレタン系、エポキシ系、ポリエステル系、イミド系のアクリレートやメタクリレートの他、フェノール変性、ビスフェノール変性されたアクリレート、メタクリレートでもよい。
【0026】
保護層の厚みとしては特に限定されないが、接着剤中に残留している溶剤が、加飾層へと拡散するのをより確実に抑制するためには、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。なお、厚みの上限は特に限定されないが、実用上は20μm以下とすることが好ましい。
【0027】
−隠蔽層−
本実施形態のキーシート用部材には、必要に応じて隠蔽層を、加飾層と保護層との間に設けることができる。この隠蔽層は、樹脂成分と白色顔料とを主成分として含む材料を用いて、オフセット印刷、スクリーン印刷などの公知の印刷方法により形成することができる。なお、保護層が、十分な隠蔽性を有している場合には、隠蔽層を設けなくてもよい。保護層に対して隠蔽性を付与/保護層の隠蔽性を高める方法としては、たとえば、保護層形成用の材料に白色顔料を添加する方法が挙げられる。
【0028】
−ベースシート−
ベースシートとしては、予めフィルム状に形成されたシートを用いることができ、キートップと接着される面と反対側の面に、予め押圧子(凸部)が設けられていてもよい。このベースシートを構成する材料としては、たとえば、ウレタン樹脂やシリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などを用いることができる。
【0029】
−接着層−
接着層は、オフセット印刷、スクリーン印刷などの公知の印刷方法により保護層表面およびベースシート表面から選択される少なくとも一方の表面に塗布した後、上記キートップとベースシートとを接着する接着工程を経て形成される。なお、接着剤の塗付後は、そのまま貼り合わせを行ってもよいが、ハンドリング性を向上させるために、室温または高温乾燥を行い、接着剤の種類や使用量等に応じて、60℃〜100℃の範囲内で、少なくとも2分〜90分間の乾燥処理を行う。また、貼り合わせに際しては、単に圧着するだけでなく、圧着と同時に加熱する接着方式(いわゆる融着)を採用してもよい。
【0030】
なお、貼り合わせに用いられる接着剤としては、特に限定されるものではないが、たとえば、シアノアクリレート系の接着剤、または、印刷インクを用いることができる。ここで、印刷インクを用いる場合は、融着により接着を行うことが好ましい。
【0031】
ここで、「印刷インク」とは、溶媒により希釈され、かつ、印刷可能なウレタン系またはエポキシ系の反応型接着剤を意味する。
【0032】
−キーシート用部材の具体例−
次に、本実施形態のキーシート用部材の具体例を図面により説明する。図1は本実施形態のキーシート用部材の層構造の一例を示す模式断面図である。図1に示すキーシート用部材1は、ベースシート10の表面に、接着層12、保護層14、隠蔽層16、加飾層18およびキートップ20がこの順に積層された層構造を有している。なお、保護層14が隠蔽層16の機能も発揮する場合、隠蔽層16は省略することができる。
【0033】
−キーパネル、電子機器−
本実施形態のキーパネルは、少なくとも本実施形態のキーシート用部材を備えたものである。ここで、本願明細書において、「キーパネル」とは操作スイッチを有する操作盤のことである。キーパネルは、スイッチ操作による操作対象となる電子機器本体と一体に設けられたものであってもよいし、スイッチ操作による操作対象となる電子機器本体と物理的に分離して設けられたものであってもよい。なお、後者の場合は、キーパネルと電子機器とが、有線接続されるタイプであってもよいし、キーパネルと電子機器とが赤外線通信などによって信号のやり取りが可能なワイヤレスタイプであってもよい。代表的な例としては、エアーコンディショナ、インターホン、テレビ等のリモートコントローラ、デスクトップタイプのパーソナルコンピューターのキーボードなどに用いられる操作盤が挙げられる。また、キーパネルを備えた電子機器(キーパネルが電子機器本体と一体化した電子機器)としては、電子辞書、携帯電話、電卓、ノートタイプのパーソナルコンピューター、パーソナルディジタルアシスタンス(PDA)、MP3プレーヤ等の音楽再生機能を持つ携帯型プレーヤなどが挙げられる。
【0034】
本実施形態のキーシート用部材をキーパネルとして利用する場合、キーシート用部材の裏面(キートップの加飾層が設けられた側の面)又は側面に光源が更に設けられる。ここで、「光源」とは、裏面側を照射するために自らが発光する光源を意味する。なお、光源がキーシート用部材の側面側に配置される場合は、キーシート用部材の裏面側に、導光板のように光源から照射される光を裏面側に導く部材を、キーシート用部材と略平行に配置し、この部材の側面側に光源を配置する。ここで自らが発光する光源としては、LEDやエレクトロルミネッセンスシート(ELシート)等が利用できる。
【0035】
本実施形態の電子機器は、上述したキーパネルを電子機器本体と一体的に有するものであればその用途は特に限定されないが、携帯型の電子機器;例えば、携帯電話、電子辞書、PDA、ノートタイプのパーソナルコンピューターなどであることが好ましく、特に携帯電話であることが最も好ましい。
【実施例】
【0036】
以下に本発明を、実施例を挙げてより具体的に説明するが本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0037】
(実施例3)
図1に示す層構造を有するキーシート用部材を以下の手順で準備した。まず、ポリカーボネート製のキートップの底面にミラーインク(MIR9100、帝国インキ社製)を印刷して、厚みが2μmの加飾層を形成した。次に、この加飾層の表面に隠蔽層形成用の材料(MIB、帝国インキ社製)を印刷して、厚みが5μmの隠蔽層を形成した。続いて、この隠蔽層の表面に紫外線硬化型樹脂からなるUVインク(UV−PAL、帝国インキ社製)を印刷し、さらに紫外線照射を行うことで、厚みが10μmの保護層を形成した。その後、この保護層の表面に印刷インク系の接着剤(SG740、セイコーアドバンス社製)を印刷し、80℃で30分間の乾燥処理を行った。なお、各材料の印刷は、スクリーン印刷により実施した。
【0038】
次に、キートップの接着剤が塗付された面と、ベースシート(ウレタン樹脂製、MF100T、日清紡ケミカル製)とを150℃で10秒間、加熱加圧することで接着し、キーシート用部材を得た。なお、加飾層の形成に使用したミラーインクの全固形分中に占める金属成分の割合、すなわち、加飾層中の金属成分含有量は、40質量%であった。
【0039】
(実施例1、2、4、5、7、8)
実施例3において、加飾層中の金属成分含有量を表1に示すように変更した以外は、実施例3と同様にしてキーシート用部材を作製した。なお、ミラーインク(MIR9100、帝国インキ社製)に対してアルミニウムペースト(TR−2100、旭化成ケミカルズ社)、または、MIR9100メジウムベース(帝国インキ社製)を添加して金属成分の含有割合を調整したミラーインクを用いることで、加飾層中の金属成分含有量を表1に示す値となるように調整した。
【0040】
(実施例6)
実施例3において、印刷インク系の接着剤の代わりに、シアノアクリレート系接着剤(201、東亜合成社製)を用い、かつ、接着剤印刷後の乾燥処理を省略した以外は、実施例3と同様にしてキーシート用部材を得た。
【0041】
(比較例1)
保護層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にしてキーシート用部材を得た。
【0042】
(比較例2)
保護層を形成しなかった以外は、実施例2と同様にしてキーシート用部材を得た。
【0043】
(比較例3)
保護層を形成しなかった以外は、実施例3と同様にしてキーシート用部材を得た。
【0044】
(比較例4)
保護層を形成しなかった以外は、実施例4と同様にしてキーシート用部材を得た。
【0045】
(比較例5)
実施例3において、UVインクを用いて形成された保護層の代わりに、溶剤系2液硬化型インク(IPS、帝国インキ製造社製)を用いて保護層を形成した以外は実施例3と同様にしてキーシート用部材を得た。なお、この溶剤系インクの溶剤含有量は60質量%である。また、保護層の形成に際しては、溶剤系インクを印刷後、80℃で30分間乾燥処理した。
【0046】
<評価>
各実施例および比較例のキーシート用部材について、垂直引張り試験を行い、接着強度および剥離箇所の観察を行った。また、得られたキーシートのメタリック感についても評価した。結果を表1および表2に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
なお、表1および表2中、接着強度、剥離箇所、および、メタリック感の項目について示す結果は、以下に示す評価方法および評価基準に基づくものである。
【0050】
−接着強度−
接着強度の評価に際しては、引張り試験器(日本電産シンポ社製、FGP−10)を用いた。まず、キートップの上部をクランプに固定し、垂直引き上げ速度10mm/minにて、上方に向かって垂直に引き上げた。一方、ベースシートは、下方に力を加え固定した。そして、この際のキートップとベースシートとの剥離に要する最大応力を10個のサンプルについて測定し、その平均値を求めた。評価基準は以下の通りである。
◎:最大応力の平均値が、5kg/cm
以上
○:最大応力の平均値が、3kg/cm以上5kg/cm未満
△:最大応力の平均値が、1kg/cm以上3kg/cm未満
×:最大応力の平均値が、1kg/cm
未満
【0051】
−剥離箇所−
剥離箇所は、引っ張り試験終了後のキーシートを目視観察し、剥離が生じている箇所を確認することで評価した。評価基準は以下の通りである。
A:ベースシート側の破壊により剥離が発生
B:加飾層側の破壊により剥離が発生
C:キートップと加飾層との間の層間で剥離が発生
【0052】
−メタリック感−
メタリック感は、蛍光灯照明下の室内にてキーシートのキートップ側の面を目視観察して、金属調の度合いを評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:反射光の輝度が十分に高く、鏡面状態を呈している
○:金属調を呈するが、鏡面状態ではない。
△:反射光の輝度が低く、金属調の質感も低い。
【符号の説明】
【0053】
1 キーシート用部材
10 ベースシート
12 接着層
14 保護層
16 隠蔽層
18 加飾層
20 キートップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のキートップと、
該キートップの片面に設けられ、金属成分を含む高輝性インクを用いて形成された加飾層と、
該加飾層上に設けられた保護層と、
上記キートップの上記加飾層が設けられた側に配置されるベースシートと、
上記保護層と上記ベースシートとの間に配置される接着層と、を少なくとも備え、
上記保護層が、紫外線硬化型樹脂を用いて形成されたことを特徴とするキーシート用部材。
【請求項2】
請求項1に記載のキーシート用部材において、
前記加飾層に含まれる上記金属成分の含有量が10質量%以上80質量%以下の範囲内であることを特徴とするキーシート用部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載のキーシート用部材において、
前記接着層が、シアノアクリレート系接着剤を用いて形成されることを特徴とするキーシート用部材。
【請求項4】
請求項1または2のいずれか1つに記載のキーシート用部材において、
前記接着層が、印刷インクを用いて形成されることを特徴とするキーシート用部材。
【請求項5】
樹脂製のキートップの片面に、金属成分を含む高輝性インクを用いて加飾層を形成する加飾層形成工程と、
上記加飾層上に、紫外線硬化型樹脂を用いて保護層を形成する保護層形成工程と、
溶剤を含む接着剤を、上記保護層表面およびベースシート表面から選択される少なくとも一方の表面に塗布した後、上記キートップとベースシートとを接着する接着工程と、を少なくとも経ることにより、
請求項1〜4のいずれか1つに記載のキーシート用部材を製造することを特徴とするキーシート用部材製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のキーシート用部材を備えたことを特徴とするキーパネル。
【請求項7】
請求項6に記載のキーパネルを備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
携帯電話であることを特徴とする請求項7に記載の電子機器。

【図1】
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【公開番号】特開2011−138677(P2011−138677A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297585(P2009−297585)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】