説明

キーボード及びそれを備える電子機器

【課題】美観を損ねることなく浸水の有無を検出することが可能なキーボード及びそれを備える情報機器を提供すること。
【解決手段】ポータブルコンピュータは、キーボードを備える。キーボードは、ベース部30、文字キー群31、機能キー群及び水溶性インク50を有する。各キーは、キートップ41及びリンク部43有しており、キートップ41は、リンク部43を介してベース部30上に設けられている。水溶性インク50は、ベース部30のカバー34上に印刷されることで配置されている。水溶性インク50は、蛍燐光体を含み、可視光では視認できないものとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーボード及びそれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筐体の内部に水溶性インクが直接付着された携帯情報端末機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この携帯情報端末機では、水没した際に水溶性インクが溶出すこととなるので、過去に水没があったか否かの判定ができるようになっている。
【特許文献1】特開2005−208342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような携帯情報端末機では、水没によって、閉じられた筐体の内部にまで水が浸入したことを確実に検知するために、筐体の内部等のある程度隠れた位置に水溶性インクが設けられている。そのため、携帯情報端末機の外観への影響を考慮する必要がなかった。
【0004】
しかし、パーソナルコンピュータやPDA等において、ユーザがデータの入力操作を行うために用いられるキーボードは、机の上等に置かれて使用されることが多く、キーボードが水没するということは考えにくい。そのため、キーボードの浸水の有無を検出するためには、キーボードの内部ではなく、ある程度露出した部分に水溶性インクを付着させる必要がある。しかしながら、このようにキーボードの露出した部分に水溶性インクを付着させると、キーボードの美観を損なう虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、美観を損ねることなく浸水の有無を検出することが可能なキーボード及びそれを備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るキーボードは、複数のキートップが互いに所定の間隔を有してベース部上に配列され、ベース部の上方から見たときに隣り合うキートップの間隙からベース部が露出しているキーボードであって、ベース部の表面には、ルミネセンスを発する材料を含むと共に可視光では視認できない水溶性インクが配置されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る電子機器は、複数のキートップが互いに所定の間隔を有してベース部上に配列され、ベース部の上方から見たときに隣り合うキートップの間隙からベース部が露出しているキーボードを備える電子機器であって、ベース部の表面には、ルミネセンスを発する材料を含むと共に可視光では視認できない水溶性インクが表面に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、美観を損ねることなく浸水の有無を検出することが可能なキーボード及びそれを備える電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0010】
図1〜図7を参照して、第1実施形態に係るポータブルコンピュータ11について説明する。図1は、第1実施形態に係るポータブルコンピュータの斜視図である。図2は、第1実施形態に係るポータブルコンピュータが備えるキーボードの正面図である。図3は、第1実施形態に係るポータブルコンピュータが備えるキーボードからキートップを取り外した状態を示すキーボードの正面図である。図4は、第1実施形態に係るポータブルコンピュータが備えるキーボードにおける「H」キーの断面図である。図5は、第1実施形態に係るポータブルコンピュータが備えるキーボードにおいて、キートップの一部を切り欠いて示す「H」キーの正面図である。図6は、水溶性インクの滲みの様子を示す図である。図7は、図5のVII−VII線断面図である。
【0011】
ポータブルコンピュータ11は、図1に示されるように、筐体12、ディスプレイ13、タッチパッド14及びキーボード15を備えている。
【0012】
筐体12は、キーボード支持部21及び脚部(図示せず)を有する。キーボード支持部21は、筐体12の上面側に設けられている。キーボード支持部21は、筐体12の上方に向けて開放する凹部又は開口部であって、キーボード15を支持する。脚部は、筐体12の下面側で且つディスプレイ13寄りの部分に設けられている。脚部は、筐体12から突出しており、ポータブルコンピュータ11が例えば机の天板に置かれたときに天板に接触する。そのため、キーボード15は手前が低くなる姿勢に傾斜することとなり、キーボード15の操作性が高められる。
【0013】
キーボード15は、図2に示されるように、ベース部30、複数の文字キーからなる文字キー群31、複数の機能キーからなる機能キー群32及び水溶性インク50を有する。
【0014】
ベース部30は、筐体12のキーボード支持部21と嵌合可能な大きさを有する板状体となっている。ベース部30は、図4に示されるように、金属製の補強板33、補強板33の表面を被い柔軟性を有するカバー34及びフィルム状の回路基板35を有している。ベース部30は、中央部Sがわずかに低くなるようにその周囲が反っている。このため、ベース部30をキーボード支持部21に固定する際に、ベース30の四隅をねじ止めしても、キーボード本体26の中央部Sが盛り上がるのが防止される
【0015】
文字キー群31は、ベース部30の上面央部に設けられている。文字キー群31は、「A」から「Z」までのアルファベットと、「1」から「0」までの数字とに個別に対応するキーを含んでいる。文字キー群31には、例えば、「B」キー31b、「H」キー31h、「G」キー31gがある。「B」キー31b、「H」キー31h、「G」キー31gは、キーボード15の中央部Sに設けられている。なお、文字キー群31は、本実施形態において、一般的な「QWERTY配列」となるように配置されているが、これに限られず、「DVORAK配列」等の他の配列であってもよい。
【0016】
機能キー群32は、ベース部30の上面で、文字キー群31の周囲に設けられている。機能キー群32は、「スペース」キー32p、「Enter」キー32e及び「Shift」キー32sを含んでいる。「スペース」キー32pは、キーボード本体26の中央部Sで、手前の位置38に設けられている。「Shift」キー32sは、「スペース」キー32pを間に挟んでキーボード本体26の幅方向に互いに振り分けられている。
【0017】
文字キー群31及び機能キー群32の各キーは、図4に示されるように、扁平な台形状のキートップ41と、キートップ41を昇降自在に支持する支持機構42とを有している。
【0018】
文字キー群31及び機能キー群32の各キーのキートップ41は、図2及び図5に示されるように、互いに所定の間隔を有してベース部30上に配列されている。そのため、ベース部30の表面(カバー34)は、ベース部30の上方から見たときに、隣り合うキートップ41の間隙から露出している。
【0019】
文字キー群31の各キーのキートップ41は、図2に示されるように、略正方形をなしている。一方、機能キー群32のうち「スペース」キー32pのキートップ41は、文字キー群31の各キーの4倍〜5倍長い幅寸法を有する略長方形をなしている。また、機能キー群32のうち「Shift」キー32sのキートップ41は、文字キー群31の各キーより2倍長い幅寸法を有する略長方形をなしている。このため、これらの機能キー群32のキートップ41は、文字キー群31のキートップ41よりも面積が大きくなっている。
【0020】
キートップ41は、図4に示されるように、斜め下向きに延出する縁41Aを有している。ユーザが手でキートップ41を押し下げると、キートップ41は、図4に2点銀線で示す押し下げ位置まで下降する。ユーザがキートップ41から手を離すと、弾性部材45によりキートップ41が図4に実線で示す待機位置まで上昇する。
【0021】
支持機構42は、リンク部43、リンク受け部44及び弾性部材45を含んでいる。リンク部43は、リンク受け部44とキートップ41との間に伸縮可能に介在されて、キートップ41を下から支えている。リンク受け部44は、例えば補強板33に直接取り付けられている。弾性部材45は、キートップ41を上側に弾性的に付勢している。ベース部30のカバー34は、リンク受け部44に対応する部分に略方形の切り欠き34aを有している。
【0022】
水溶性インク50は、図3〜図6に示されるように、ベース部30の表面で、且つ、ベース部30の上方から見たときにキートップ41によって覆われている部分及びキートップ41によって覆われていない部分に配置されている。具体的には、水溶性インク50は、本実施形態において、切り欠き部34aを除くカバー34上に水玉模様状となるように印刷されている。この水溶性インク50は、可視光では視認できないが、所定の光が照射されたときに発光することで視認可能となるような蛍光体や、自身が発光することで例えば暗所にて視認可能となるような燐光体といった蛍燐光体(ルミネセンスを発する材料)を含んでいる。すなわち、ルミネセンスを発する材料とは、蛍光体及び燐光体の少なくとも一方をいう。
【0023】
水溶性インク50は、水に濡れると、溶出して滲んだ状態となる(図6参照)。そのため、キーボード15に所定の光を照射し、又はキーボード15を暗所に置いて水溶性インク50の発光状態の変化を観察することで、キーボード15についての浸水の有無が検知できるようになっている。なお、水溶性インク50のカバー34への印刷は、例えばインクジェット方式による印刷やスタンプを押印することによって行うことができる。また、カバー34は、一般に、柔らかいシート状の部材からなっているので、カバー34に水溶性インクの印刷を容易に行うことができるものとなっている。
【0024】
ここで、図7を参照して、「H」キー31hを例に、キーの詳細な構造について説明する。回路基板35は、絶縁体で構成される基板本体36と、基板本体36に所定のパターンで配置された一対の配線37とを備えている。弾性部材45は、円柱形状の軸部47と、軸部47を支持する半球形状のドーム部48とを有している。軸部47の下端に、導電性の材料で構成される接点47aが設けられている。
【0025】
ユーザが指でキートップ41を押し下げると、弾性部材45が押しつぶされる(図7の2点鎖線参照)。弾性部材45の押しつぶしにより、接点47aが両配線37に接触し、通電状態になる。通電状態になると、「H」の文字情報が、ポータブルコンピュータ11に入力される。
【0026】
以上のように、第1実施形態においては、水溶性インク50がベース部30のカバー34上に印刷されている。そして、水溶性インク50は、可視光において視認できず、蛍燐光体(ルミネセンスを発する材料)を含んでいる。そのため、第1実施形態のようにキーボード15の操作者の目に触れることがあるベース部30のカバー34に水溶性インク50が印刷されていても、美観を損ねることなくキーボード15の浸水の有無を検出することが可能となっている。
【0027】
また、第1実施形態においては、水溶性インク50がベース部30の表面全体に配置されている。そのため、ベース部30の上方から見たときにキートップ41に覆われていない部分において、水溶性インク50が露出している。その結果、キーボード15についての浸水の有無が検出しやすくなっている。
【0028】
また、第1実施形態においては、水溶性インク50がベース部30の表面全体に配置されているので、キーボード15に浸水があった場所を正確且つ確実に特定することができる。そのため、キーボード15の故障が浸水によるものであるのか否かについての詳細な証拠が得られ、故障原因を正確且つ確実に判断することができるようになっている。
【0029】
また、第1実施形態においては、水溶性インク50がベース部30のカバー34に印刷されている。そのため、水溶性インクを塗布した浸水検出シートをベース部のカバー等に貼り付けてキーボードの浸水の有無を検出するような場合と比較して、工数及び製造コストを削減することができる。その結果、ベース部30の表面の広範囲にわたって水溶性インク50を印刷しても、製造コストを低く押させることが可能となっている。
【0030】
また、水溶性インク50は印刷によってベース部30の表面に配置されているので、浸水検出シートと比較して厚みが極めて薄い。そのため、第1実施形態では、ベース部30の表面で、且つ、ベース部30の上方から見たときにキートップ41によって覆われている部分にも水溶性インク50が配置されているが、キートップ41の押下に影響を与えることがほとんどなくなっている。
【0031】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、第1実施形態では電子機器の一例としてポータブルコンピュータ11を用いて本発明を説明したが、デスクトップパソコンのようなその他の電子機器に本発明を適用してもよい。
【0032】
また、第1実施形態ではベース部30の表面全体に水溶性インク50を配置していたが、これに限られない。具体的には、図8及び図9に示されるように、ベース部30の表面で、且つ、ベース部30の上方から見たときにキートップ41によって覆われている部分(すなわち、キートップ41の下方)に水溶性インク50を配置してもよい。また、図10及び図11に示されるように、ベース部30の表面で、且つ、ベース部30の上方から見たときにキートップ41によって覆われていない部分(すなわち、ベース部30の表面のうち露出している部分)に水溶性インク50を配置してもよい。
【0033】
また、第1実施形態では水溶性インク50をベース部30のカバー34上に水玉模様状となるように印刷していたが、これに限られない。具体的には、図12及び図13に示されるように、水溶性インク50をベース部30のカバー34上に格子状となるように印刷してもよい。また、水溶性インク50をその他の種々の模様やランダムなパターンとして印刷することもできる。
【0034】
また、第1実施形態では水溶性インク50をベース部30の表面に配置していたが、これに限られない。具体的には、図14に示されるように、キートップ41の裏面に水溶性インク50を印刷するようにしてもよい。このようにすると、水がベース部30とキートップ41との間を満たす程度に浸入した事実を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態に係るポータブルコンピュータの斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るポータブルコンピュータが備えるキーボードの正面図である。
【図3】第1実施形態に係るポータブルコンピュータが備えるキーボードからキートップを取り外した状態を示すキーボードの正面図である。
【図4】第1実施形態に係るポータブルコンピュータが備えるキーボードにおける「H」キーの断面図である。
【図5】第1実施形態に係るポータブルコンピュータが備えるキーボードにおいて、キートップの一部を切り欠いて示す「H」キーの正面図である。
【図6】水溶性インクの滲みの様子を示す図である。
【図7】図5のVII−VII線断面図である。
【図8】第2実施形態に係るポータブルコンピュータが備えるキーボードからキートップを取り外した状態を示すキーボードの正面図である。
【図9】第2実施形態に係るポータブルコンピュータが備えるキーボードにおいて、キートップの一部を切り欠いて示す「H」キーの正面図である。
【図10】第3実施形態に係るポータブルコンピュータが備えるキーボードからキートップを取り外した状態を示すキーボードの正面図である。
【図11】第3実施形態に係るポータブルコンピュータが備えるキーボードにおいて、キートップの一部を切り欠いて示す「H」キーの正面図である。
【図12】第4実施形態に係るポータブルコンピュータが備えるキーボードからキートップを取り外した状態を示すキーボードの正面図である。
【図13】第4実施形態に係るポータブルコンピュータが備えるキーボードにおいて、キートップの一部を切り欠いて示す「H」キーの正面図である。
【図14】第5実施形態に係るポータブルコンピュータが備えるキーボードにおける「H」キーの断面図である。
【符号の説明】
【0036】
11…ポータブルコンピュータ、12…筐体、15…キーボード、31…文字キー群、31h…「H」キー、32…機能キー群、32p…「スペース」キー、32s…「Shift」キー、41…キートップ、41A…縁、50…水溶性インク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキートップが互いに所定の間隔を有してベース部上に配列され、前記ベース部の上方から見たときに隣り合う前記キートップの間隙から前記ベース部が露出しているキーボードであって、
前記ベース部の表面には、ルミネセンスを発する材料を含むと共に可視光では視認できない水溶性インクが配置されていることを特徴とするキーボード。
【請求項2】
前記水溶性インクは、前記ベース部の表面で、且つ、前記ベース部の上方から見たときに前記キートップによって覆われていない部分に配置されていることを特徴とする請求項1に記載されたキーボード。
【請求項3】
前記水溶性インクは、前記ベース部の表面で、且つ、前記ベース部の上方から見たときに前記キートップによって覆われている部分に配置されていることを特徴とする請求項1に記載されたキーボード。
【請求項4】
前記水溶性インクは、前記ベース部の表面で、且つ、前記ベース部の上方から見たときに前記キートップによって覆われている部分及び前記キートップによって覆われていない部分に配置されていることを特徴とする請求項1に記載されたキーボード。
【請求項5】
前記水溶性インクは、前記ベース部の表面に水玉模様状に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載されたキーボード。
【請求項6】
前記水溶性インクは、前記ベース部の表面に格子状に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載されたキーボード。
【請求項7】
複数のキートップが互いに所定の間隔を有してベース部上に配列され、前記ベース部の上方から見たときに隣り合う前記キートップの間隙から前記ベース部が露出しているキーボードを備える電子機器であって、
前記ベース部の表面には、ルミネセンスを発する材料を含むと共に可視光では視認できない水溶性インクが表面に配置されていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−165364(P2008−165364A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352203(P2006−352203)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】