説明

キーボード装置及びその制御方法

【課題】いたずらやオペレータのミスによって通常動作以外の状況に陥ることがなく、安定した動作状況を維持することができ、コンピュータの動作にも対応することができ、コンピュータのオペレーティングシステム、デバイスドライバ等の影響を受けることがなく、不特定多数のオペレータが操作する環境下でも安定して動作するようにする。
【解決手段】所定のアプリケーションソフトウェアが起動する時に連続発行された所定のコマンドをコンピュータから受信すると、キー制御コマンドの受信を認識するキー制御コマンド認識手段と、操作されたキーがキー制御コマンドの対象となる制限キーであるか否かを判断する制限キー判断手段と、制限キーのキーデータのコンピュータへの送信を禁止し、制限キー以外のキーのキーデータのコンピュータへの送信を許可するキーデータ送信制御手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーボード装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、キャッシュレジスタ、PDA(Personal Digital Assistant)等の入力装置であるキーボード装置においては、該キーボード装置のボタンやパネルのタッチ枠等、すなわち、キーがオペレータによって押されたりタッチされたりしたとき、すなわち、押下されたとき、一般に、前記キーボード装置が有する入力検出手段が、押下されたキーに割り当てられたキーコードを認識して、該キーコードを前記キーボード装置の上位装置であるパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、キャッシュレジスタ、PDA等の演算装置(CPU又はMPU)に送信するようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図2は従来のキーボード装置の一例を示す図である。
【0004】
図において、50は従来のキーボード装置であり、図示されないパーソナルコンピュータ等の上位装置に接続され、該上位装置の入力装置として機能する。この場合、キーボード装置50は、前記上位装置にインストールされたオペレーティングシステム(Operating System:OS)、アプリケーションソフトウェア(Application Software:AP)等が発揮する様々な機能を活かすために配設された多様なキーを有する。
【0005】
例えば、前記上位装置がデスクトップタイプのパーソナルコンピュータである場合、前記キーボード装置50は、文字や数字を入力するためのANK(Alphabet、Numeric、Kana)キー、特定のファンクションを機能させるファンクションキー、他のキーとのコンビネーションで操作させる併押下キー等のように、100を超える数のキーを有する。
【0006】
また、前記キーボード装置50は、多数のキーから成るキースイッチ群が構成されるマトリクスと、上位装置との送受信処理やキースキャン処理を行うマイクロコントローラと、キーボードの動作モードを示すインジケータとを有する。
【0007】
次に、前記従来のキーボード装置50の動作について説明する。
【0008】
図3は従来のキーボード装置の動作を示すフローチャートである。
【0009】
電源が投入されると、まず、キーボード装置50は、イニシャル処理を実行し、ROMテスト、RAMテスト等のセルフテストの実行、及び、I/Oポート等の初期設定を行う。
【0010】
続いて、前記キーボード装置50は、キースキャン処理を実行し、キーの押下検出を行う。続いて、前記キーボード装置50は、上位装置から送信要求がありか否かを判断する。そして、送信要求がある場合には、コマンド受信処理を実行し、上位装置からコマンドを受信する。続いて、前記キーボード装置50は、コマンド処理を実行し、上位装置から受信したコマンドを処理する。
【0011】
続いて、前記キーボード装置50は、検出キーありか否かを判断する、すなわち、オペレータによって押下されたキー又は押下から開放されたキーを検出したか否かを判断する。なお、上位装置から送信要求がありか否かを判断して送信要求がない場合には、前記キーボード装置50は、直ちに、検出キーありか否かを判断する。
【0012】
そして、検出キーがある場合、前記キーボード装置50は、キーデータ送信処理を実行し、オペレータによって押下されたキー又は押下から開放されたキーについてのデータであるキーデータを上位装置に送信する。その後、前記キーボード装置50は、再度、キースキャン処理を実行し、以降の動作を繰り返す。なお、検出キーありか否かを判断して検出キーがない場合には、前記キーボード装置50は、直ちに、キースキャン処理を実行し、以降の動作を繰り返す。
【0013】
このようにして、前記キーボード装置50は、オペレータによって押下又は開放されたすべてのキーについてのキーデータを順次上位装置に送信する。そして、該上位装置は、キーボード装置50から受信したキーデータを判断し、オペレーティングシステム上やアプリケーションソフトウェア上で、文字の入力や特定のファンクションとして機能させる。
【0014】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS51 イニシャル処理を実行する。
ステップS52 キースキャン処理を実行する。
ステップS53 上位装置から送信要求がありか否かを判断する。送信要求がある場合はステップS54に進み、送信要求がない場合はステップS56に進む。
ステップS54 コマンド受信処理を実行する。
ステップS55 コマンド処理を実行する。
ステップS56 検出キーありか否かを判断する。検出キーがある場合はステップS57に進み、検出キーがない場合はステップS52に戻る。
ステップS57 キーデータ送信処理を実行し、その後、ステップS52に戻り、以降の動作を繰り返す。
【0015】
次に、インジケータコマンドの動作例について説明する。ここでは、Num Lockの例について説明する。
【0016】
図4は従来のインジケータコマンドの動作例を示す図である。
【0017】
まず、前記上位装置は、キーボード装置50からNum Lockの押下キーデータを受信すると(図4(1))、インジケータコマンドを発行する(図4(2))。該インジケータコマンドは、キーボード装置50のインジケータの点灯/消灯を制御するコマンドである。
【0018】
そして、前記キーボード装置50は、上位装置からインジケータコマンドを正常に受信すると、Acknowledge(ACK)を返信する(図4(3))。続いて、前記上位装置は、キーボード装置50からAcknowledgeを受信した後、該当するインジケータ(この場合、Num Lock)の点灯/消灯データとしての点灯/消灯パラメータを発行してキーボード装置50に送信する(図4(4))。そして、該キーボード装置50は、上位装置から点灯/消灯パラメータを受信すると、Acknowledgeを返信する(図4(5))。
【0019】
また、前記キーボード装置50は、Num Lockインジケータを搭載していれば、Num Lockインジケータを点灯/消灯させるとともに、自身のNum LockのステータスをOFFからONへ変化させる。なお、前記キーボード装置50がNum Lockのステータスを管理するのは、Num Lockのステータスに応じてキーデータの前後に特定のデータを付加する必要があるキーがあるためである。
【0020】
前記Num Lockインジケータの状態は、該当キーの押下/開放で交互に変化する。例えば、Num LockがOFFの時にNum Lockキーを押下すると、その結果、Num LockはONに移行し、逆に、Num LockがONの時にNum Lockキーを押下すると、Num LockはOFFに移行する。このように、インジケータコマンドは、対象キーの押下をトリガに発行されるコマンドである。
【特許文献1】特開平4−205218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、前記従来のキーボード装置50においては、オペレータが押下したすべてのキーについてのキーデータが上位装置に送信されてしまう。このようなキーデータの中には、特殊機能のためのキー、例えば、上位装置の画面切替やシャットダウンに関するキーのキーデータ、特殊ファンクションに関するキーのキーデータ、キーボードの動作モードに関するキーのキーデータ等も含まれており、必要なとき以外に操作されると、上位装置やキーボード装置50の動作に影響を与えるキーのキーデータも存在する。
【0022】
上位装置が個人用パーソナルコンピュータのような装置である場合には、起動されるアプリケーションソフトウェアは多様であり、それぞれの目的に応じたキーが必要になると考えられる。しかし、上位装置が不特定多数のオペレータが操作する端末のような装置である場合には、使用される目的が限定されているので、起動されるアプリケーションソフトウェアも固定されている場合が多い。
【0023】
このような場合には、対応するキーも限られており、キーボード装置50のすべてのキーを機能させる必要はない。また、いたずらや誤操作によって、必要のないキーが機能してしまうことで、上位装置やキーボード装置50の動作に影響を与えてしまうような可能性もある。
【0024】
本発明は、前記従来のキーボード装置の問題点を解決して、コンピュータのアプリケーションソフトウェアが発行する標準のAPI(Application Programming Interface)コマンドを利用して、限定された状況で特定のキーのみを機能させ、不要なキーを無効にするようにして、いたずらやオペレータのミスによって通常動作以外の状況に陥ることがなく、安定した動作状況を維持することができ、コンピュータの動作にも対応することができ、コンピュータのオペレーティングシステム、デバイスドライバ等の影響を受けることがなく、不特定多数のオペレータが操作する環境下でも安定して動作するキーボード装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
そのために、本発明のキーボード装置においては、オペレーティングシステム及び該オペレーティングシステム上で作動するアプリケーションソフトウェアがインストールされたコンピュータに接続されたキーボード装置であって、所定のアプリケーションソフトウェアが起動する時に連続発行された所定のコマンドを前記コンピュータから受信すると、キー制御コマンドの受信を認識するキー制御コマンド認識手段と、操作されたキーが前記キー制御コマンドの対象となる制限キーであるか否かを判断する制限キー判断手段と、前記制限キーのキーデータの前記コンピュータへの送信を禁止し、制限キー以外のキーのキーデータの前記コンピュータへの送信を許可するキーデータ送信制御手段とを有する。
【0026】
本発明の他のキーボード装置においては、さらに、前記コマンドは標準のAPIコマンドである。
【0027】
本発明のキーボード装置の制御方法においては、オペレーティングシステム及び該オペレーティングシステム上で作動するアプリケーションソフトウェアがインストールされたコンピュータに接続されたキーボード装置の制御方法であって、所定のアプリケーションソフトウェアが起動する時に所定のコマンドが連続発行されると、該コマンドの対象となる制限キーのキーデータの前記コンピュータへの送信を禁止し、制限キー以外のキーのキーデータの前記コンピュータへの送信を許可する。
【0028】
本発明の他のキーボード装置の制御方法においては、さらに、前記コマンドは標準のAPIコマンドである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、キーボード装置は、コンピュータのアプリケーションソフトウェアが発行する標準のAPIコマンドを利用して、限定された状況で特定のキーのみを機能させ、不要なキーを無効にする。これにより、いたずらやオペレータのミスによって通常動作以外の状況に陥ることがなく、安定した動作状況を維持することができ、コンピュータの動作にも対応することができ、コンピュータのオペレーティングシステム、デバイスドライバ等の影響を受けることがなく、不特定多数のオペレータが操作する環境下でも安定して動作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
図1は本発明の実施の形態におけるキーボード装置及び上位装置の状態遷移を示す図である。
【0032】
図において、11は本実施の形態におけるキーボード装置であり、上位装置12に接続され、該上位装置12の入力装置として機能する。前記上位装置12は、CPU、MPU等のプロセッサ、半導体メモリ、磁気ディスク等の記憶装置、入出力インターフェイス等を備えるコンピュータであり、例えば、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、キャッシュレジスタ、PDA、サーバ・クライアントシステムにおけるサーバやクライアント等であるが、いかなる種類のコンピュータであってもよい。
【0033】
また、前記キーボード装置11は、有線又は無線によって前記上位装置12に通信可能に接続された装置であり、多数のキーから成るキースイッチ群が構成されるマトリクスと、前記上位装置12との送受信処理、キースキャン処理等を行うプロセッサを含むマイクロコントローラと、キーボード装置11の動作モードを示すLED(Light Emitting Diode)等から成るインジケータとを有する。なお、前記キーボード装置11は、いわゆる、101キーボードであってもよいし、104キーボードであってもよいし、106キーボードであってもよいし、108キーボードであってもよいし、いかなる種類のキーボードであってもよい。また、キーの数及び配列も、例えば、JIS配列、ASCII配列等に準ずるものであってもよいし、前記図2に示されるような従来のキーボード装置50と同様のものであってもよいし、いかなる種類のものであってもよい。
【0034】
そして、前記上位装置12には、オペレーティングシステムがインストールされており、また、該オペレーティングシステム上で作動するアプリケーションソフトウェアもインストールされている。なお、アプリケーションソフトウェアは、APIを介して、オペレーティングシステム上で作動する。前記APIは、オペレーティングシステムやミドルウェアが提供している機能をアプリケーションソフトウェアから呼び出すために使用される。
【0035】
本実施の形態においては、アプリケーションソフトウェアが操作することができる標準のAPIのうち、インジケータの点灯及び/又は消灯を指示するインジケータコマンドを使用することによって、前記キーボード装置11に対して特定のキーの無効化及び/又は有効化の設定が行われる。
【0036】
通常、インジケータコマンドは、「背景技術」の項でも説明したように、例えば、キーボード装置において、Num Lock、Scroll Lock、Caps Lock等の対象となるキーが押下されたときに、上位装置からキーボード装置に対し、該当するインジケータの点灯及び/又は消灯を指示するコマンドである。しかし、本実施の形態では、対象となるキーの押下がなされない状態でインジケータコマンドを連続発行することによって、通常のインジケータコマンドと識別可能なものとし、特定のキーの無効化及び/又は有効化にインジケータコマンドを使用する。つまり、対象となるキーの押下がなされない状態でのインジケータコマンドの連続発行を、特定のキーの無効化及び/又は有効化を指示するキー制御コマンドの発行とする。
【0037】
図に示されるように、上位装置12の電源が投入されると、オペレーティングシステムが起動され、イニシャル処理が実行された後(図1(a))、キーボード装置11はキースキャン状態となる。そして、キーボード装置11のすべてのキーが機能する。また、所定のアプリケーションソフトウェアは、起動する時に、任意のインジケータコマンドを連続発行する(図1(b))。
【0038】
これにより、キーボード装置11のキーは、特定のキー以外が無効化される。その結果、前記所定のアプリケーションソフトウェアの作動中は、特定のキーのみが機能し、該特定のキー以外のキーは、オペレータによって押下されても機能しない。
【0039】
また、前記所定のアプリケーションソフトウェアは、終了する時に、再度、任意のインジケータコマンドを連続発行する(図1(c))。その結果、キーボード装置11は元の状態に復帰し、すべてのキーが機能する。
【0040】
このようにして、前記所定のアプリケーションソフトウェアの作動中に限り、キーボード装置11のキーを制限することができる。
【0041】
本実施の形態において、前記キーボード装置11は、機能の観点から、コマンドを受信すると該コマンドがインジケータコマンドであるか否かを判断するコマンド判断手段と、受信したコマンドがインジケータコマンドであれば対象となるキーの押下状態を確認する押下状態確認手段と、インジケータコマンドが点灯を指示する点灯コマンドであるか消灯を指示する消灯コマンドであるかを確認する点灯消灯確認手段と、点灯コマンドの受信回数をカウントするカウント手段と、点灯コマンドの連続受信回数を確認する連続受信回数確認手段と、点灯コマンドを連続受信した場合にキー制御コマンドであると認識するキー制御コマンド認識手段とを有する。
【0042】
また、前記キーボード装置11は、キースキャンに関する機能の観点から、キーを検出したときに検出したキーが前記キー制御コマンドの対象であって機能が制限される制限キーであるか否かを判断する制限キー判断手段と、検出したキーが制限キーであれば動作させるキーを制限するキー制御コマンドを受信済みであるか否かを判断するキー制御コマンド受信済み判断手段と、キー制御コマンドを受信済みであれば検出したキーが押下されたキーであるか開放されたキーであるかを確認する押下開放確認手段と、検出したキーが押下されたキーであればキー押下検出済みと認識するキー押下検出済み認識手段と、検出したキーが開放されたキーであればキー開放検出済みと認識するキー開放検出済み認識手段と、動作可能なキーが検出されたときにインジケータコマンドの対象となるキーであって押下されたキーであるか否かを判断する対象キー押下判断手段と、インジケータコマンドの対象となるキーであって押下されたキーであれば対象キー押下検出済みと認識するキー押下検出済み認識手段とを有する。さらに、制限キーのキーデータの上位装置12への送信を禁止し、制限キー以外のキーのキーデータの上位装置12への送信を許可するキーデータ送信制御手段を有する。
【0043】
次に、前記構成のキーボード装置11の動作について説明する。まず、動作の概略について説明する。
【0044】
図5は本発明の実施の形態におけるキーボード装置から上位装置に送信されるキーデータの例を示す図である。
【0045】
ここでは、機能が制限される制限キーを“A”と称することとする。
【0046】
所定のアプリケーションソフトウェアが起動する前の状態では、キーボード装置11は、通常のキースキャン状態となっているので、すべてのキーについて、オペレータによって押下されたことが検出される毎に、キーデータを上位装置12に送信する。また、押下から開放されたことが検出されたときも、同様に、キーデータを上位装置12に送信する。
【0047】
したがって、“A”キーが押下されると、押下された“A”キーについてのキーデータが、“A”キー押下データとしてキーボード装置11から上位装置12に送信される(図5(1))。同様に、“A”キーが押下から開放されると、開放された“A”キーについてのキーデータが、“A”キー開放データとしてキーボード装置11から上位装置12に送信される(図5(2))。
【0048】
しかし、前記所定のアプリケーションソフトウェアが起動した後は、特定のキー以外が無効化され、特定のキー以外のキーは押下されても機能しない。
【0049】
したがって、“A”キーが押下されても、“A”キー押下データはキーボード装置11から上位装置12に送信されない(図5(3))。同様に、“A”キーが押下から開放されても、“A”キー開放データはキーボード装置11から上位装置12に送信されない(図5(4))。
【0050】
次に、前記キーボード装置11が上位装置12からコマンドを受信した場合の動作について説明する。
【0051】
図6は本発明の実施の形態におけるキーボード装置のコマンド受信処理の動作を示すフローチャートである。
【0052】
キーボード装置11は、上位装置12からコマンドを受信すると、まず、受信したコマンドがインジケータコマンドであるか否かを判断する。そして、受信したコマンドがインジケータコマンドでない場合には、通常のコマンド処理を実行する。
【0053】
また、受信したコマンドがインジケータコマンドである場合、キーボード装置11は、オペレータによってインジケータの対象となるキーが押下されたか否か、すなわち、対象となるキーの押下があるか否かを判断する。例えば、受信したコマンドがNum Lockキーのインジケータコマンドである場合、通常、Num Lockキーのインジケータコマンドは、Num Lockキーの押下をトリガに発行されるのであるから、キーボード装置11は、Num Lockキーの押下があったか否かを判断する。この動作は、受信したインジケータコマンドが、通常のインジケータコマンドであるか、特定のキーの無効化及び/又は有効化に使用する本実施の形態特有のインジケータコマンドであるかを識別するために行われる。
【0054】
そして、対象となるキーの押下がない場合、キーボード装置11は、インジケータコマンドが点灯を指示する点灯コマンドであるか消灯を指示する消灯コマンドであるか、すなわち、インジケータコマンドが点灯か消灯かを確認する。ここで、点灯コマンドである場合、キーボード装置11は、点灯コマンドの受信回数をカウントし、コマンド受信カウンタを1だけインクリメントする。続いて、キーボード装置11は、点灯コマンドの連続受信回数を確認し、点灯コマンドを連続して2回受信したか否か、すなわち、コマンド受信カウンタのカウント値が2であるか否かを判断する。
【0055】
ここで、点灯コマンドを連続して2回受信した場合、キーボード装置11は、受信した点灯コマンドはキー制御コマンドであると認識する。すなわち、キー制御コマンド受信と認識する。続いて、キーボード装置11は、コマンド受信カウンタをクリアし、1回目の点灯コマンドでLEDを点灯させているので元に戻し(消灯させ)、インジケータステータスもクリアする。つまり、キー制御コマンド機能時はLEDコマンドとしては機能しない。
【0056】
また、点灯コマンドを連続して2回受信したか否かを判断して点灯コマンドを連続して2回受信しなかった場合、キーボード装置11は、そのまま、通常のコマンド処理を実行する。
【0057】
一方、対象となるキーの押下があるか否かを判断して対象となるキーの押下がある場合、キーボード装置11は、コマンド受信カウンタをクリアする。続いて、キーボード装置11は、対象となるキーの押下をクリアし、通常のコマンド処理を実行する。また、インジケータコマンドが点灯を指示する点灯コマンドであるか消灯を指示する消灯コマンドであるかを確認して消灯コマンドである場合も、キーボード装置11は、コマンド受信カウンタをクリアし、対象となるキーの押下をクリアし、通常のコマンド処理を実行する。
【0058】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 受信したコマンドがインジケータコマンドであるか否かを判断する。受信したコマンドがインジケータコマンドである場合はステップS2に進み、受信したコマンドがインジケータコマンドでない場合は通常のコマンド処理を実行する。
ステップS2 対象となるキーの押下があるか否かを判断する。対象となるキーの押下がある場合はステップS8に進み、対象となるキーの押下がない場合はステップS3に進む。
ステップS3 インジケータコマンドが点灯か消灯かを確認する。インジケータコマンドが点灯コマンドである場合はステップS4に進み、インジケータコマンドが消灯コマンドである場合はステップS8に進む。
ステップS4 点灯コマンドの受信回数をカウントし、コマンド受信カウンタを1だけインクリメントする。
ステップS5 点灯コマンドを連続して2回受信したか否かを判断する。点灯コマンドを連続して2回受信した場合はステップS6に進み、点灯コマンドを連続して2回受信しなかった場合は通常のコマンド処理を実行する。
ステップS6 受信した点灯コマンドはキー制御コマンド受信と認識する。
ステップS7 コマンド受信カウンタをクリアし、インジケータを消灯及びインジケータステータスをクリアする。
通常のコマンド処理を実行する。
ステップS8 コマンド受信カウンタをクリアする。
ステップS9 対象となるキーの押下をクリアし、通常のコマンド処理を実行する。
【0059】
次に、キー制御コマンドが発行された後、すなわち、所定のアプリケーションソフトウェアが起動した後におけるキースキャン処理について説明する。
【0060】
図7は本発明の実施の形態におけるキーボード装置のキースキャン処理の動作を示すフローチャートである。
【0061】
まず、キーボード装置11は、キーの押下を検出したか否か、すなわち、検出キーありか否かを判断する。そして、キーの押下を検出しない場合には次の処理を実行する。
【0062】
また、キーの押下を検出した場合、キーボード装置11は、押下を検出したキーが機能が制限される制限キーであるか否か、すなわち、“A”キーであるか否かを判断する。そして、制限キーである場合、キーボード装置11は、キーの動作を制限するコマンドを受信済みであるか否か、すなわち、キー制御コマンド受信済みであるか否かを判断する。
【0063】
ここで、キーの動作を制限するコマンドを受信済みである場合、キーボード装置11は、押下を検出したキーを無効化する必要があるので、押下を検出したキーが押下されたキーであるか開放されたキーであるか、すなわち、検出キーが押下か開放かを判断する。そして、キーボード装置11は、押下を検出したキーが押下されたキーであれば、キー押下検出済みとして処理し、押下を検出したキーが開放されたキーであれば、キー開放検出済みとして処理し、キースキャン処理を終了する。その結果、動作に不要である“A”キーの押下データも開放データもキーボード装置11から上位装置12に送信されないので、オペレータによって動作に不要である“A”キーが操作されても、上位装置12が対応した動作をすることがない。
【0064】
また、押下を検出したキーが機能が制限されるキーであるか否かを判断して機能が制限されるキーでない場合、キーボード装置11は、押下を検出したキーがインジケータコマンドの対象となるキーであるか否か、すなわち、インジケータコマンド対象キー押下であるか否かを判断する。そして、インジケータコマンドの対象となるキーである場合には、キーボード装置11は、インジケータコマンドの対象となるキーの押下が検出されたことを示すキーデータをセットする、すなわち、対象となるキー押下ありをセットする。そして、キーボード装置11は、キーデータ送信処理を実行してセットしたキーデータを上位装置12に送信し、キースキャン処理を終了する。
【0065】
なお、押下を検出したキーがインジケータコマンドの対象となるキーであるか否かを判断してインジケータコマンドの対象となるキーでない場合、キーボード装置11は、そのまま、キーデータ送信処理を実行する。また、キーの動作を制限する制限コマンドを受信済みであるか否かを判断して受信済みでない場合も、同様に、そのまま、キーデータ送信処理を実行する。
【0066】
このように、キーボード装置11がキー制御コマンドを受信した後は、制限キーのキーデータの上位装置12への送信が禁止され、制限キー以外のキーのキーデータの上位装置12への送信は許可される。したがって、動作に不要とされる制限キーがいくら押下されても検出されることがなく、制限キー以外の動作に必要とされるキーのみを機能させることが可能となる。
【0067】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS11 検出キーありか否かを判断する。キーの押下を検出した場合はステップS12に進み、キーの押下を検出しない場合は次の処理を実行する。
ステップS12 “A”キーであるか否かを判断する。“A”キーである場合はステップS13に進み、“A”キーでない場合はステップS17に進む。
ステップS13 キー制御コマンド受信済みであるか否かを判断する。キー制御コマンドを受信済みである場合はステップS14に進み、キー制御コマンドを受信済みでない場合はステップS19に進む。
ステップS14 押下を検出したキーが押下されたキーであるか開放されたキーであるかを判断する。押下を検出したキーが押下されたキーであればステップS15に進み、押下を検出したキーが開放されたキーであればステップS16に進む。
ステップS15 キー押下検出済みとして処理し、キースキャン処理を終了する。
ステップS16 キー開放検出済みとして処理し、キースキャン処理を終了する。
ステップS17 インジケータコマンド対象キー押下であるか否かを判断する。インジケータコマンドの対象となるキーである場合はステップS18に進み、インジケータコマンドの対象となるキーでない場合はステップS19に進む。
ステップS18 対象となるキー押下ありをセットする。
ステップS19 キーデータ送信処理を実行し、キースキャン処理を終了する。
【0068】
このように、本実施の形態においては、上位装置12にインストールされた任意のアプリケーションソフトウェアの起動時に、キーボード装置11における必要以上のキーの動作を無効化するので、いたずら、オペレータのミス等によって通常動作以外の状況に陥ることなく、安定した動作の維持が可能となる。また、アプリケーションソフトウェア終了時には、キーボード装置11の動作を元に戻すので、上位装置12の本来の動作又は機能には、何ら影響なく対応することが可能である。
【0069】
さらに、本実施の形態は、対象となるアプリケーションソフトウェア及びキーボード装置11のみで対処しているので、上位装置12のオペレーティングシステム、デバイスドライバ等によって、何ら影響されることはない。
【0070】
なお、本実施の形態においては、アプリケーションソフトウェアが操作することができる標準のAPIのうち、インジケータの点灯及び/又は消灯を指示するインジケータコマンドの連続発行を利用して、キーボード装置11における特定のキーを無効化する例について説明したが、利用するコマンドはこれに限定されるものでなく、他の標準のAPIであっても可能である。
【0071】
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態におけるキーボード装置及び上位装置の状態遷移を示す図である。
【図2】従来のキーボード装置の一例を示す図である。
【図3】従来のキーボード装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】従来のインジケータコマンドの動作例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるキーボード装置から上位装置に送信されるキーデータの例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるキーボード装置のコマンド受信処理の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態におけるキーボード装置のキースキャン処理の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
11 キーボード装置
12 上位装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)オペレーティングシステム及び該オペレーティングシステム上で作動するアプリケーションソフトウェアがインストールされたコンピュータに接続されたキーボード装置であって、
(b)所定のアプリケーションソフトウェアが起動する時に連続発行された所定のコマンドを前記コンピュータから受信すると、キー制御コマンドの受信を認識するキー制御コマンド認識手段と、
(c)操作されたキーが前記キー制御コマンドの対象となる制限キーであるか否かを判断する制限キー判断手段と、
(d)前記制限キーのキーデータの前記コンピュータへの送信を禁止し、制限キー以外のキーのキーデータの前記コンピュータへの送信を許可するキーデータ送信制御手段とを有することを特徴とするキーボード装置。
【請求項2】
前記コマンドは標準のAPIコマンドである請求項1に記載のキーボード装置。
【請求項3】
(a)オペレーティングシステム及び該オペレーティングシステム上で作動するアプリケーションソフトウェアがインストールされたコンピュータに接続されたキーボード装置の制御方法であって、
(b)所定のアプリケーションソフトウェアが起動する時に所定のコマンドが連続発行されると、該コマンドの対象となる制限キーのキーデータの前記コンピュータへの送信を禁止し、制限キー以外のキーのキーデータの前記コンピュータへの送信を許可することを特徴とするキーボード装置の制御方法。
【請求項4】
前記コマンドは標準のAPIコマンドである請求項3に記載のキーボード装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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