説明

ギヤ軸受け装置、ギヤ位置切換装置、及び画像記録装置

【課題】駆動伝達時に伝達ギヤが軸方向へずれることを防止することにより、駆動源から駆動部への駆動伝達の途切れの問題を解決すること。
【解決手段】プリンタ部11は、モータからの駆動力の伝達を切り換える駆動伝達機構70を有する。駆動伝達機構70は、支軸73にスライド可能に支持された入力レバー74とコイルバネ65と第1切換ギヤ71とを有する。支軸73と第1切換ギヤ71との間に規制機構80が設けられている。第1切換ギヤ71は、給紙ローラ25に駆動力を伝達する第2出力ギヤ172噛み合い可能である。第1切換ギヤ71が第1位置に配置された状態で駆動伝達されると、規制機構80の突部81が溝82に入り込み、軸方向への移動を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動部へ駆動力を伝達する出力ギヤと駆動源からの駆動力を受ける伝達ギヤとが互いの噛合位置を切換可能に支持されたギヤ軸受け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、給紙トレイから排紙トレイへ記録用紙が搬送される過程において、記録ヘッドから被記録媒体へインクを選択的に吐出して画像記録を行う。給紙トレイから用紙搬送路への記録用紙の給送や、用紙搬送路における記録用紙の搬送は、給紙ローラや搬送ローラと称されるローラが、記録用紙に圧接して回転されることによって行われる。これらローラの駆動源としてモータが用いられ、モータから各ローラへの駆動伝達は、複数のギヤが組み合わされた駆動伝達機構により実現される(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
特許文献2に記載の従来の画像記録装置には、駆動源であるモータから各駆動部への駆動伝達を切り換える駆動伝達切換手段が設けられている。この駆動伝達切換手段は、キャリッジ移動位置に応じて切換ギヤの位置を変えることによって、切換ギヤから複数の伝動ギヤへの駆動伝達を切り換えるものであり、これにより、各伝動ギヤに対応する各駆動部へ択一的に駆動力が伝達される。この駆動伝達切換手段によれば、1つの駆動源から、例えば、画像記録の際には搬送ローラなどに駆動伝達を行い、パージの際にはメンテナンスユニットなどに駆動伝達を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−314341号公報
【特許文献2】特開2007−90761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、切換ギヤは支軸の軸方向へ移動可能なように支軸に支持されているため、駆動源の駆動力が切換ギヤや伝動ギヤを経て駆動部に伝達されている際に、過度な負荷が切換ギヤに伝達されると、切換ギヤが支軸の軸方向へずれてしまい、駆動の伝達が途切れてしまうという問題が生じる。このような現象は、切換ギヤと支軸との軸受けのギャップや、切換ギヤの軸受け穴の内面の微小な傾斜などが原因となって生じる。特に、いわゆる光沢紙と呼ばれる厚手の記録用紙が搬送される場合は、通常の記録用紙に比べて搬送ローラによる搬送負荷が増す。したがって、従来の画像記録装置では、切換ギヤへの負荷を抑制するために、光沢紙に画像記録する場合は、通常よりも搬送速度を減速せざるを得なかった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動伝達時に伝達ギヤが支軸の軸方向へずれることを防止することにより、駆動源から駆動部への駆動伝達の途切れの問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、駆動部へ力を伝達する出力ギヤと、上記出力ギヤの中心軸と平行な支軸と、上記支軸に回転可能に支持されつつ、上記出力ギヤに噛み合う第1位置と上記第1位置から上記支軸の軸方向へ隔てられ上記出力ギヤに噛み合わない第2位置との間で移動可能に上記支軸に支持され、駆動源から伝達された回転力を受ける伝達ギヤと、上記第1位置に配置された上記伝達ギヤと上記支軸との軸受け部に設けられ、上記伝達ギヤから上記出力ギヤへの駆動伝達時に上記支軸に垂直な方向の力を受けることにより、上記伝達ギヤを上記第1位置に位置決めさせるとともに上記支軸の軸方向への移動を規制する規制機構と、を具備するギヤ軸受け装置として構成されている。
【0008】
この構成によれば、第1位置に伝達ギヤが配置されることによって、駆動源の回転力が伝達ギヤ、出力ギヤを経て駆動部へ伝達される。伝達ギヤから出力ギヤへ駆動伝達されているときに、伝達ギヤに入力される回転力と駆動部における負荷とによって、伝達ギヤには回転方向の力に加えて支軸に垂直な方向の力が加えられる。これにより、伝達ギヤは当該力によって一方向へ押圧されるため、支軸の外周面の一部に当接した状態で支軸の周りを回転しつつ駆動伝達する。規制機構は、上記垂直方向の力を受けたときに、伝達ギヤを第1位置に位置決めさせるとともに、支軸の軸方向への移動を規制する。このため、駆動伝達時に伝達ギヤに過大な負荷がかかったとしても、伝達ギヤが軸方向へずれなくなり、駆動伝達が途切れることもない。
【0009】
(2) 上記規制機構の具体例としては、上記伝達ギヤの回転方向へ延びる第1溝と上記伝達ギヤが上記第1位置に配置されたときに上記第1溝に対向するよう配置され上記第1溝に進入可能な突部とを備えた機構が考えられる。この場合、上記伝達ギヤの軸受け穴の内面又は上記支軸の外周面のいずれか一方に上記第1溝が設けられ、いずれか他方に上記突部が設けられている。
【0010】
この構成であれば、駆動伝達時に支軸に垂直な方向の力が加えられた場合に、突部が第1溝に進入する。これにより、支軸の軸方向に対して伝達ギヤと支軸とが係合するため、伝達ギヤが軸方向へずれなくなる。
【0011】
(3) 上記出力ギヤは、上記駆動源からの回転力を受ける上記伝達ギヤの入力点とは反対側の出力点で上記伝達ギヤと噛み合う位置に配置されている。この場合、上記支軸の外周面に設けられた上記第1溝又は上記突部は、上記伝達ギヤの外周面における上記入力点と上記出力点との中間点に対応する部位に設けられていることが好ましい。
【0012】
この構成であれば、伝達ギヤから出力ギヤへ駆動伝達されると、入力点で入力される回転力と出力点にかかる駆動部の負荷とによって、入力点と出力点とを結ぶ線分に垂直な方向の力が伝達ギヤに加えられる。この場合は、伝達ギヤは、その外周面上に存在する2つの上記中間点のいずれか一方へ押圧される。なお、押圧される向きは、上記入力点に入力される回転力の方向によって異なる。この場合、上記第1溝又は上記突部は、支軸の外周面において、少なくとも押圧される向きとは反対側の中間点に対応する部位に設けられていればよい。
【0013】
(4) 上記伝達ギヤは、水平方向へ延びる上記支軸に支持されている。この場合、上記入力点は、上記支軸の軸心を通る鉛直線と上記伝達ギヤの外周面とが交差する位置に設定されている。
【0014】
この構成では、上記第1溝又は上記突部は、上記鉛直線上に設けられていない。このため、駆動部に負荷がかかっていない状態では、伝達ギヤにはその自重による力のみが加えられる。つまり、伝達ギヤは重量によって鉛直下向きへ引っ張られている。このとき、支軸は、上記第1溝や突部が設けられていない部分で伝達ギヤを支持する。したがって、駆動部に負荷がかかっていない状態では、規制機構による軸方向への規制が作用しないので、伝達ギヤは支軸を軸方向へ円滑に移動可能となる。
【0015】
(5) 上記第1溝は、当該第1溝の底部へ向けて傾斜する傾斜面を有することが好ましい。
【0016】
これにより、駆動伝達がされていない場合に突部が第1溝に入り込んでいても、上記傾斜面に沿って突部が案内されることによって伝達ギヤは支軸の軸方向へ容易に移動可能である。
【0017】
(6) 上記規制機構は、上記支軸の外周面に設けられ、上記伝達ギヤが上記第1位置に配置されたときに上記伝達ギヤの軸受け穴の内面に対向するように配置され、少なくとも上記軸受け穴の幅よりも大きい第2溝を備えたものであってもよい。
【0018】
このような構成であっても、駆動伝達時に支軸に垂直な方向の力が加えられた場合に、伝達ギヤの軸受け穴の部分が第2溝に入り込むため、支軸の軸方向に対して伝達ギヤと支軸とが係合し、伝達ギヤが軸方向へずれなくなる。
【0019】
(7) 上記出力ギヤは、上記駆動源からの回転力を受ける上記伝達ギヤの入力点とは反対側の出力点で上記伝達ギヤと噛み合う位置に配置されている。この場合は、上記支軸の外周面に設けられた上記第2溝は、上記伝達ギヤの外周面における上記入力点と上記出力点との中間点に対応する部位に設けられていることが好ましい。
【0020】
この構成であれば、伝達ギヤから出力ギヤへ駆動伝達されると、入力点で入力される回転力と出力点にかかる駆動部の負荷とによって、入力点と出力点とを結ぶ線分に垂直な方向の力が伝達ギヤに加えられる。この場合は、伝達ギヤは、その外周面上に存在する2つの上記中間点のいずれか一方へ押圧される。なお、押圧される向きは、上記入力点に入力される回転力の方向によって異なる。この場合、このような構成であれば、第2溝は、支軸の外周面において、少なくとも押圧される向きとは反対側の中間点に対応する部位に設けられていればよい。
【0021】
(8) 上記伝達ギヤは、水平方向へ延びる上記支軸に支持されており、
上記入力点は、上記支軸の軸心を通る鉛直線と上記伝達ギヤの外周面とが交差する位置に設定されている。
【0022】
この構成では、上記第2溝は、上記鉛直線上に設けられていない。このため、駆動部に負荷がかかっていない状態では、伝達ギヤにはその自重による力のみが加えられる。つまり、伝達ギヤは重量によって鉛直下向きへ引っ張られている。このとき、支軸は、上記第2溝が設けられていない部分で伝達ギヤを支持する。したがって、駆動部に負荷がかかっていない状態では、規制機構による軸方向への規制が作用しないので、伝達ギヤは支軸を軸方向へ円滑に移動可能となる。
【0023】
(9) 上記第2溝は、上記支軸の外周面から当該第2溝の底部へ向けて傾斜する傾斜面を有することが好ましい。
【0024】
これにより、駆動伝達がされていない場合に伝達ギヤの軸受け穴の部分が第2溝に入り込んでいても、上記傾斜面に沿って突部が案内されることによって伝達ギヤは支軸の軸方向へ容易に移動可能である。
【0025】
(10) また、本発明は、上述したいずれかのギヤ軸受け装置と、上記第1位置又は上記第2位置のいずれかに上記伝達ギヤを保持するように付勢する付勢部材と、上記支軸の軸方向へ移動可能に上記支軸に設けられ、上記付勢部材の付勢力よりも大きい外力を受けることにより上記伝達ギヤを押圧しつつ上記軸方向へ移動して上記伝達ギヤを上記付勢部材による保持位置とは異なる位置へ移動させるレバー部材と、を具備するギヤ位置切換装置として構成されていてもよい。
【0026】
(11) また、上述のギヤ位置切換装置と、記録ヘッドを搭載して上記支軸の軸方向と同方向へ往復動されるキャリッジと、を具備する画像記録装置として構成されていてもよい。この場合、上記レバー部材は上記キャリッジの移動領域に交差するように上記キャリッジ側へ延出されており、移動する上記キャリッジが上記レバー部材に当接したときに上記付勢部材の付勢力よりも大きい外力が上記レバー部材に入力されるように構成されている。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、駆動伝達時に伝達ギヤが軸方向へずれることが防止される。その結果、駆動源から駆動部への駆動伝達の途切れが生じなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の実施形態の一例である複合機10の外観斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部11の縦断面構造を示す模式断面図である。
【図3】図3は、プリンタ部11の主要構成を示す平面図である。
【図4】図4は、ギヤユニット110の構成及び伝達経路を示す模式図である。
【図5】図5は、規制機構80を説明するための模式図であり、(A)には図4における切断線VA−VAの断面図が示されており、(B)には、規制機構80の拡大断面図が示されており、(C)には図4における切断線VC−VCの拡大断面図が示されている。
【図6】図6は、入力レバー74の位置及びギヤユニット110の動作を説明するための模式図である。
【図7】図7は、規制機構80の動作を説明するための模式図であり、(A)にはギヤユニット110の構成を示す模式図が示されており、(B)には非駆動伝達時における(A)の切断線VIIB−VIIBの断面図が示されており、(C)には駆動伝達時における(A)の切断線VIIB−VIIBの断面図が示されており、(D)には、(C)の切断線VIID−VIIDの断面図が示されている。
【図8】図8は、本発明の変形例を説明するためのギヤユニット110の模式断面図である。
【図9】図9は、本発明の各変形例を説明するための模式図であり、図4における切断線VC−VCの拡大断面図が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0030】
図1は、本発明の実施形態に係る複合機10の外観を示す斜視図である。以下の説明においては、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7を定義し、開口13が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8を定義し、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9を定義する。
【0031】
複合機10は、高さ(上下方向7の長さ)に対して横幅(左右方向9の長さ)及び奥行き(前後方向8の長さ)が大きい薄型の直方体に概ね形成されている。複合機10の下部にインクジェット記録方式のプリンタ部11が設けられている。複合機10は、ファクシミリ機能、印刷機能、スキャナ機能、及び、コピー機能などの各種の機能を有している。印刷機能としては、記録用紙の表面(第1面)及び裏面(第2面)の両面に画像を記録する両面印刷機能を有している。なお、印刷機能以外の機能は任意であり、例えば、スキャン機能やコピー機能、ファクシミリ機能を有しない印刷機能のみを有するプリンタとして本発明の画像記録装置が実施されてもよい。
【0032】
プリンタ部11は、正面に開口13が形成されたケーシング(筐体)14を有する。ケーシング14内にプリンタ部11の各構成要素が配設されている。開口13からケーシング14の内部に至る空間に給紙カセット19が装着されている。給紙カセット19は、開口13を通じてケーシング14内に前後方向8に挿抜可能に構成されている。
【0033】
[プリンタ部11]
図2に示されるように、プリンタ部11には、給紙カセット19が設けられている。給紙カセット19は、下段に給紙トレイ20を有し、上段に排紙トレイ21を有する。給紙カセット19は、プリンタ部11の最も底側に設けられている。給紙トレイ20に収容された記録用紙は、給紙ローラ25によって給送される。給紙トレイ20から給送された記録用紙は、用紙搬送路23によって下方から上方へUターンするように案内されて記録ユニット24へ搬送され、記録ユニット24によって画像記録が行われた後、給紙トレイ20の上段にある排紙トレイ21へ排出される。
【0034】
給紙トレイ20は、後方側の上面が開口された容器形状であり、その内部空間に、記録用紙などのシート部材が積層状態で収容される。本実施形態では、給紙ローラ25が上記開口から内部空間に挿通されて、記録用紙の上面に当接される。給紙トレイ20には、例えば、A3サイズ以下のA4サイズ、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙が収容可能である。
【0035】
給紙カセット19の後方側には、給紙ローラ25が設けられている。給紙ローラ25は、給紙トレイ20に積載された記録用紙を用紙搬送路23へ供給する。給紙ローラ25は、プリンタ部11内に設けられたASF(Auto Sheet Feed)モータ65(本発明の駆動源の一例、図4参照)のCW方向又はCCW方向の駆動力(回転力)が図示しないギヤ伝達機構を介して駆動伝達されて回転する。給紙ローラ25は、支持アーム26の先端に回転可能に支持されている。支持アーム26の基端側は、給紙トレイ20の上側に架設された駆動軸28に回動可能に支持されている。支持アーム26は、給紙ローラ25の重量又はバネなどに付勢されて下側へ回動されている。給紙ローラ25が給紙トレイ20における最上位置の記録用紙に接触した状態で給紙ローラ25が回転されると、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、少なくとも最上位置の記録用紙が用紙搬送路23に向けて給送される。
【0036】
本実施形態では、給紙ローラ25は、ASFモータ65から伝達されたCW方向又はCCW方向の駆動力を受けて所定方向へ回転される。この駆動力が伝達されることによって、給紙ローラ25は、給紙トレイ20に収容された記録用紙を給紙することができる。このように、記録用紙を給紙可能な駆動力が伝達されたときに、後述する規制機構80が作用することにより、後述する第1切換ギヤ71の支軸73の軸方向への移動が規制される。
【0037】
給紙トレイ20の後方端部の上方には用紙搬送路23が形成されている。用紙搬送路23は、給紙トレイ20の後方端部から上方へ延び、続いて前方側へ湾曲して、複合機10の後方から前方側へ延び、記録ユニット24を経て排紙トレイ21へ通じている。つまり、用紙搬送路23は、図2において横向き略U字形状に構成されている。用紙搬送路23は、記録ユニット24などが配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。
【0038】
[記録ユニット24]
図2に示されるように、用紙搬送路23に記録ユニット24が設けられている。記録ユニット24は、用紙搬送路23を搬送される記録用紙に対して画像を記録するものである。記録ユニット24は、キャリッジ38と、インクジェット記録方式の記録ヘッド39とを備える周知の画像記録手段である。
【0039】
図3に示されるように、用紙搬送路23の上側に一対のガイドレール43,44が設けられている。一対のガイドレール43,44は、用紙搬送路23の上側において記録用紙の搬送方向に所定距離を隔てられて、記録用紙の搬送方向と直交する左右方向9に延設されている。ガイドレール43,44は、プリンタ部11のケーシング14内に設けられて、プリンタ部11を構成する各部材を支持するフレームの一部を構成している。キャリッジ38は、ガイドレール43,44を跨ぐように載置されて、ガイドレール43,44上を記録用紙の搬送方向と直交する左右方向9へ往復動可能である。
【0040】
キャリッジ38における搬送方向上流側の端部がガイドレール43上に載置され、下流側の端部がガイドレール44上に載置されることによって、キャリッジ38がガイドレール43,44の長手方向(左右方向9)に沿って摺動可能となっている。ガイドレール44における搬送方向上流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。ガイドレール43,44に担持されたキャリッジ38は、縁部45をローラ対などの挟持部材により摺動可能に挟持している。これにより、キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向に対して位置決めされつつ、左右方向9に摺動可能になる。
【0041】
ガイドレール44の上面には、ベルト駆動機構46が配設されている。ベルト駆動機構46は、用紙搬送路23の幅方向(左右方向9)の両端付近にそれぞれ設けられた駆動プーリ47と従動プーリ48との間に、内側に歯が設けられた無端環状のベルト49が張架されてなるものである。駆動プーリ47の軸にはCRモータ(不図示)から駆動力(回転力)が入力され、駆動プーリ47の回転によりベルト49が周運動する。
【0042】
ガイドレール43には、レバーガイド91が設けられている。なお、図4では、レバーガイド91の図示が省略されている。レバーガイド91は、ガイドレール43のメインテナンス機構55側に形成された図示しない嵌合孔に嵌め込まれてガイドレール43に固定されている。レバーガイド91の下方に駆動切換機構70(本発明のギヤ位置切換装置の一例)が配置されている。レバーガイド91は、内側に所定形状のガイド孔95が形成された略平板状の部材である。ガイド孔95には、後述する入力レバー74の入力部77が下側から挿入されて、ガイドレール43の上側へ突出される。ガイド孔95に挿入された入力部77は、外力が付与されていなければ、ガイド孔95における装置内側(図3の左側)の端部に当接された第1駆動伝達位置P1に維持される。本実施形態では、入力部77が第1駆動伝達位置P1にあるときに、第1切換ギヤ71が第2出力ギヤ172(本発明の出力ギヤの一例)と噛み合うことができる位置(以下「第1位置」という。)に配置されている。
【0043】
キャリッジ38は、その底面側においてベルト49に固着されている。したがって、CRモータ(不図示)によるベルト49の周運動に基づいて、キャリッジ38が縁部45を基準としてガイドレール43,44上を往復動する。このようなキャリッジ38に記録ヘッド39が搭載されて、記録ヘッド39が、用紙搬送路23の幅方向(左右方向9)を所定方向として往復動される。
【0044】
図3に示されるように、キャリッジ38の後方側の端部には、後方側(紙面上側)へ水平に突出するガイド片92が設けられている。搬送方向上流側へ水平方向に突出するガイド片92が設けられている。ガイド片92はキャリッジ38とともにガイドレール43の延出方向へ往復動される。キャリッジ38の移動過程において、ガイド片92が、ガイド孔95からガイドレール43の上側へ突出する入力部77(図4参照)と当接する。これにより、入力部77がキャリッジ38によって押されることによって、入力レバー74の位置が変えられる。入力部77の位置は、キャリッジ38の往復位置を制御することにより任意に選択的に変更することができる。入力レバー74の入力部77が所定の位置(後述する第1駆動伝達位置P1、第2駆動伝達位置P2、第3駆動伝達位置P3)に選択的に移動されると、後述するギヤユニット110の第1切換ギヤ71(本発明の伝達ギヤの一例)及び第2切換ギヤ72が入力部77の位置に対応する位置に位置決めされる。
【0045】
図2に示されるように、記録ユニット24よりも搬送方向の上流側には、一対の搬送ローラ60及びピンチローラ61が設けられている。ピンチローラ61は搬送ローラ60の下側に圧接状態で配置されている。搬送ローラ60は、プリンタ部11内に設けられたLF(Line Feed)モータ66(図4参照)の駆動力(回転力)が駆動伝達されて、連続的に回転駆動され、或いは所定の改行幅で間欠駆動される。搬送ローラ60及びピンチローラ61間に記録用紙が進入すると、記録用紙は挟持されつつ、プラテン42上へ搬送される。
【0046】
記録ユニット24よりも搬送方向の下流側には、排紙ローラ62及び拍車ローラ63が設けられている。拍車ローラ63は排紙ローラ62の上側に圧接状態で配置されている。排紙ローラ62と搬送ローラ60との間には、ギヤ等の駆動伝達機構が設けられている。したがって、排紙ローラ62は、LFモータ66の駆動力が上記駆動伝達機構を介して伝達されることにより、搬送ローラ60と同時に連続的に回転駆動され、或いは所定の改行幅で間欠駆動される。排紙ローラ62及び拍車ローラ63は、画像記録済みの記録用紙を挟持して排紙トレイ21へ搬送する。
【0047】
図3に示されるように、プラテン42における幅方向(左右方向9の方向)の両側のうち、一方にメインテナンス機構55が配設され、他方にフラッシング部56が配設されている。図3において、メインテナンス機構55は正面から見て右端部に設けられ、フラッシング部56は左端部に設けられている。フラッシング部56は、フラッシングと呼ばれる記録ヘッド39からのインクの空吐出にて吐出される廃インクを受けるための部位である。フラッシング部56内にはスポンジやフェルト等が敷設されており、フラッシングにて吐出されたインクは、このスポンジやフェルト等に回収されて図示しない廃インク吸収体に保持される。
【0048】
メインテナンス機構55は、記録ヘッド39のノズルから気泡や異物を吸引除去する負圧パージ動作や、記録ヘッド39のノズル面を図示しないワイパで清掃するワイプ動作、更には記録ヘッド39内に設けられたサブタンク内の気泡を除去する排気動作等を行うことにより記録ヘッド39の状態を常に最良の状態に維持する機構である。メインテナンス機構55は、記録ヘッド39のノズルや記録ヘッド39の排気口を覆うキャップ57(図3参照)を有する。キャップ57は、公知のリフトアップ機構51(図4参照)によって上下動されて記録ヘッド39のノズル面や排気口面と接離する。図3には示されていないが、メインテナンス機構55は、さらに吸引ポンプ52(図4参照)を有する。吸引ポンプ52は、キャップ57と接続されており、吸引ポンプ52が動作されることによって、キャップ57の内部が負圧にされる。キャップ57が記録ヘッド39と接触してノズル及び排気口をそれぞれ覆った状態において吸引ポンプ52が作動されると、記録ヘッド39から気泡や異物が吸引除去される。メインテナンス機構55における吸引ポンプ52は、LFモータ66の駆動力が駆動伝達されることによって動作される。また、メインテナンス機構55におけるリフトアップ機構51は、ASFモータ65の駆動力が駆動伝達されることによって動作される。つまり、メインテナンス機構55における吸引ポンプ52及びリフトアップ機構51それぞれが、本発明における駆動部に相当する。このようにメインテナンス機構55及びフラッシング部56が用いられることにより、記録ヘッド39内の気泡や混色インクの除去、乾燥防止などのメインテナンスが行われる。
【0049】
[駆動切換機構70]
以下、ASFモータ65及びLFモータ66の2つのモータから給紙ローラ25、吸引ポンプ52、リフトアップ機構51などの各駆動部へ駆動伝達を切り換えるための駆動切換機構70について説明する。駆動切換機構70は、ガイドレール43,44などにより構成されるフレームの右側に配置されて、ASFモータ65及びLFモータ66それぞれから独立に出力される2系統の駆動力を、各駆動部へ択一的に伝達するものである。
【0050】
図4に示されるように、駆動切換機構70は、第1切換ギヤ71や第2切換ギヤ72などからなるギヤユニット110(本発明のギヤ軸受け装置の一例)を有する。ギヤユニット110は、図示しないフレームなどに支持されている。ギヤユニット110は、フレームにおいて水平方向に支持された1本の支軸73(本発明の支軸の一例)に第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72が回転可能に支持されている。また、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72は、支軸73の軸方向へスライド移動可能なように支軸73に支持されている。
【0051】
図4に示されるように、ASFモータ65の駆動力は第1切換ギヤ71に伝達される。ASFモータ65から受けた回転駆動力によって第1切換ギヤ71が回転される。ASFモータ65から第1切換ギヤ71に至る伝達機構としては、複数のギヤからなるギヤ列が考えられる。このギヤ列は、ASFモータ65の出力ギヤ75と第1切換ギヤ71との間に設けられており、ASFモータ65の回転駆動力を第1切換ギヤ71に伝達する。上記ギヤ列において、第1切換ギヤ71と噛合する入力ギヤ67の厚み(軸方向の長さ)は、支軸73における第1切換ギヤ71のスライド範囲に対して十分に厚いので、第1切換ギヤ71のスライド範囲において、第1切換ギヤ71と入力ギヤ67とは常時噛合される。第1切換ギヤ71は、入力ギヤ67と噛合した状態で、支軸73の軸方向へ移動可能である。なお、本実施形態では、入力ギヤ67は第1切換ギヤ71の鉛直上方に配置されている。したがって、第1切換ギヤ71は、支軸74の軸心を通る鉛直線と支軸73の外周面とが交差する2つ接合点のうち、上側の接合点で入力ギヤ67と噛み合っている。
【0052】
LFモータ66の駆動力は、第2切換ギヤ72に伝達される。LFモータ66から受けた回転駆動力によって第2切換ギヤ72が回転される。LFモータ66から第2切換ギヤ72に至る伝達機構としては、例えば、搬送ローラ60の一端に図示しない伝達ギヤを搬送ローラ60と同軸かつ一体に回転するように設け、この伝達ギヤと第2切換ギヤ72とを複数のギヤからなるギヤ列を介して接続することにより実現可能である。LFモータ66の出力ギヤ76は、搬送ローラ60の他端にギヤ連結されている。LFモータ66の駆動力が搬送ローラ60の他端に入力されると、搬送ローラ60が回転されるとともに、第2切換ギヤ72がLFモータ66の駆動力に応じて回転駆動される。上記ギヤ列において、第2切換ギヤ72と噛合する入力ギヤ68の厚み(軸方向の長さ)は、支軸73における第2切換ギヤ72のスライド範囲に対して十分に厚いので、第2切換ギヤ72のスライド範囲において、第2切換ギヤ72と入力ギヤ68とは常時噛合される。第2切換ギヤ72は、入力ギヤ68と噛合した状態で、支軸73の軸方向へ移動可能である。
【0053】
[ギヤユニット110]
図4に示されるように、ギヤユニット110は、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72に加えて、第1コイルバネ111と、第2コイルバネ112と、入力レバー74とが支軸73に支持されてなる。これら各部材は、支軸73の軸線方向にスライド可能に支持されている。支軸73は、図示しないフレームに固定されており、水平方向に支持されている。
【0054】
第1切換ギヤ71は、第2切換ギヤ72よりも右側に配置されている。支軸73の軸方向(図3の左右方向9)は、キャリッジ38が往復動する方向と一致する。この支軸73に沿って第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72がスライド移動されることにより、第1切換ギヤ71は、後述する第1出力ギヤ171及び第2出力ギヤ172それぞれとの噛合が選択される。また、第2切換ギヤ72は、フリーの状態か後述の第3出力ギヤ173との噛合かが選択される。
【0055】
[規制機構80]
本実施形態では、図5に示されるように、第2出力ギヤ172と噛み合うことができる第1位置に配置された第1切換ギヤ71と支軸73との軸受け部に、規制機構80(本発明の規制機構の一例)が設けられている。規制機構80は、第1切換ギヤ71を支軸73の軸方向へ移動させないように規制するものである。詳細には、ASFモータ65の回転力が第1切換ギヤ71及び第2出力ギヤ172を経て給紙ローラ25に伝達されることによって、支軸73がその軸方向に垂直で水平方向の力を受けた場合に、規制機構80は第1切換ギヤ71を上記第1位置に位置決めさせるとともに、支軸73の軸方向への第1切換ギヤ71の移動を規制するものである。
【0056】
規制機構80は、図5(B)に示されるように、第1切換ギヤ71の軸孔71Aの内面に形成された突部81(本発明の突部の一例)と、支軸73に形成された溝82(本発明の第1溝の一例)とにより構成されている。突部81は、軸孔71Aに内面において、左右方向9の中央付近に設けられている。この突部81は、第1切換ギヤ71の回転方向に沿って連続して形成されている。つまり、突部81は、軸孔71Aの内面において環状に形成されている。一方、溝82は、上記第1位置に第1切換ギヤ71が配置されたときに突部81と対向する外周面に形成されている。この溝82は、溝82の底部へ向けて傾斜する2つの傾斜面83A,83Bを有している。溝82は、突部81を溝内部に完全に没入させることが可能な形状及び深さに形成されている。溝82は、支軸73の外周面の一部に形成されている。具体的には、溝82は、図5(C)に示されるように、支軸73の外周面において、前方側の側部及び後方側の側部の両方に設けられている。言い換えると、入力ギヤ67が第1切換ギヤ71の上方に配置され、後述するように第2出力ギヤ172が第1切換ギヤ71の下方に配置されている構成において、溝82は、入力ギヤ67による力の入力点(第1切換ギヤ71の上端)と出力ギヤ172に力が伝達される出力点(第1切換ギヤ71の下端)とを結ぶ外周面に沿った円弧の中間点に対応する支軸74の外周面上の部位に設けられている。
【0057】
本実施形態では、第1切換ギヤ71が上記第1位置に配置され、その状態で支軸73の軸方向に垂直で水平方向の力が付与されていない場合は、第1切換ギヤ71は規制機構80によって規制されない。つまり、第1切換ギヤ71は支軸73を軸方向へスライド可能である。このため、第1切換ギヤ71が支軸73を軸方向へスライド可能なように、突部82の内径φ1は、支軸73の外径φ2よりも大きく設計されている(φ1>φ2)。
【0058】
図4に示されるように、第2切換ギヤ72は、第1切換ギヤ71側へ延出された円筒部79を有する。この円筒部79は、その延出端が第1切換ギヤ71に当接して第1切換ギヤ71と第2切換ギヤ72との離間距離を一定に保持するとともに、第2コイルバネ112の付勢力を第1切換ギヤ71に伝達するものである。円筒部79の寸法は、後述する出力ギヤ171〜173の厚みや数などによって決定される。
【0059】
入力レバー74は、第1切換ギヤ71よりも右側に配置されている。この入力レバー74と、上述のレバーガイド91とによって、第1切換ギヤ71が後述する第1出力ギヤ171及び第2出力ギヤ172のいずれかに噛合可能に位置決めされ、且つ、第2切換ギヤ72がフリーの位置か後述の第3出力ギヤ173に噛合可能な位置のいずれかに位置決めされる。
【0060】
図4に示されるように、入力レバー74は、支軸73に外嵌される筒状の円筒部78と、円筒部78から径方向に突設された入力部77とを有する。ギヤユニット110が支持フレーム120に装着された状態で、入力レバー74の入力部77がレバーガイド91のガイド孔95に挿入される。円筒部78は、支軸73に外嵌されて軸方向にスライド自在且つ回転自在である。円筒部78がスライドされると、入力部77は、支軸73の軸方向へスライドし、円筒部78が支軸73の周りに回転すると、入力部77も同方向に回転する。
【0061】
第1コイルバネ111は、入力レバー74よりも右側に配置されている。また、第2コイルバネ112は、第2切換ギヤ72よりも左側に配置されている。
【0062】
ギヤユニット110が図示しないフレームに装着された状態で、第1コイルバネ111及び第2コイルバネ112は圧縮されている。つまり、第1コイルバネ111及び第2コイルバネ112は所謂圧縮バネとして機能している。第1コイルバネ111及び第2コイルバネ112は、支軸73の軸方向に伸縮可能に設けられている。入力レバー74は、第1コイルバネ111によって第1切換ギヤ71側(図4の矢印85の方向)へ付勢されている。また、第2切換ギヤ72は、第2コイルバネ112によって第1切換ギヤ71側(図4の矢印86の方向)へ付勢されている。つまり、第1切換ギヤ71と第2切換ギヤ72とは、相反する方向へ付勢する2つのコイルバネ111,112によって、互いに接近する方向へ付勢されている。なお、2つのコイルバネ111,112によって付勢されて互いに当接された第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72は、それぞれ、支軸73の周りを独立して回転可能である。
【0063】
本実施形態では、第1コイルバネ111の付勢力(矢印85の方向の付勢力)は、第2コイルバネ112の付勢力(矢印86の方向の付勢力)より大きい。したがって、第2切換ギヤ72、第1切換ギヤ71、入力レバー74は、外力が付与されなければ、第1コイルバネ111に付勢されて、第2コイルバネ112を圧縮させるとともに、支軸73を矢印85へ向かってスライドする。そして、入力レバー74の入力部77がガイド孔95の内側端部(図4の左側端部)に当接すると、矢印85方向のスライドが停止する。このとき、入力部77は、第1駆動伝達位置P1に配置される。この第1駆動伝達位置P1において、第1切換ギヤ71は第2出力ギヤ172と噛み合っており、第2切換ギヤ72はフリー状態となっている。入力部77にガイド片92が当接して、該入力部77がガイド片92に押されると、入力部77は、各切換ギヤ71,72による駆動伝達を切り換えるために、第2駆動伝達位置P2または第3駆動伝達位置P3に移動する。
【0064】
[出力ギヤ171〜173]
図4に示されるように、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72の下方には、支軸73と平行な支軸180に第1出力ギヤ171、第2出力ギヤ172及び第3出力ギヤ173が並列に配置されている。つまり、支軸73は、各出力ギヤ171〜173の回転方向に直交する方向と平行である。第1出力ギヤ171及び第2出力ギヤ172は、第1切換ギヤ71と噛み合うことが可能な位置に配置されている。第3出力ギヤ173は第2切換ギヤ72と噛み合うことが可能な位置に配置されている。本実施形態では、第1出力ギヤ171、第2出力ギヤ172及び第3出力ギヤ173は、その厚み等が異なるが、外径は同等である。第1出力ギヤ171、第2出力ギヤ172及び第3出力ギヤ173は、支軸180に、装置外側(図4の右側)から順に装置内側(図4の左側)へ並べられている。
【0065】
出力ギヤ171〜173は、各駆動部に駆動力をそれぞれ伝達するためのものである。図4に示されるように、第1出力ギヤ171は、キャップ57を上下動させるリフトアップ機構51などへの駆動伝達を行う。第2出力ギヤ172は、給紙ローラ25の駆動伝達を行う。第2出力ギヤ172から給紙ローラ25に至る伝達経路には、ワンウェイクラッチ或いは遊星ギヤなどの伝達切換機構が設けられている。したがって、ASFモータ65がCW方向に回転駆動されると、給紙ローラ25のみに回転駆動力が伝達され、CW方向に回転駆動されると、給紙ローラ25への駆動伝達は遮断される。第3出力ギヤ173は、メインテナンス機構55における吸引ポンプ52などへの駆動伝達を行う。このように、第1出力ギヤ171、第2出力ギヤ172及び第3出力ギヤ173は、複数の各駆動部に駆動力をそれぞれ伝達すべく割り当てが定められている。第1出力ギヤ171、第2出力ギヤ172及び第3出力ギヤ173から各駆動部への駆動伝達機構は、ギヤ列やベルトなどを用いた公知の駆動伝達機構を採用することができ、本発明の要旨には直接影響しないので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0066】
以下、切換ギヤ71,72の切換動作について簡単に説明する。図6(A)に示されるように、入力レバー74の入力部77が第1駆動伝達位置P1に配置された状態では、第1切換ギヤ71は、第2出力ギヤ172と噛み合う第1位置に配置されている。このとき第2切換ギヤ72はフリーの状態にある。図6(B)に示されるように、入力部77が第1駆動伝達位置P1から第2駆動伝達位置P2に移動されると、第1切換ギヤ71が第2出力ギヤ172から離れて第1出力ギヤ171と噛み合う位置(以下「第2位置」という。)に配置される。つまり、第1切換ギヤ71は、第2出力ギヤ172と噛み合わない第2位置に配置される。一方、第2切換ギヤ72は、フリーの状態を維持する。図6(C)に示されるように、入力部77が第2駆動伝達位置P2から第3駆動伝達位置P3に移動されると、第1切換ギヤ71は第1出力ギヤ171と噛合したまま軸方向へスライドする。一方、第2切換ギヤ72は、フリーの状態から第3出力ギヤ173と噛み合う位置に配置される。
【0067】
上述の如く構成されたギヤユニット110では、第1切換ギヤ71が第2出力ギヤ172と噛合する第1位置(図6(A)参照)から右側へ移動して第1出力ギヤ171に到達したときに、第1切換ギヤ71の歯と第1出力ギヤ171の歯とがずれているため、第1切換ギヤ71と第1出力ギヤ171とが上手く噛み合わない場合がある。また、第1切換ギヤ71が第2出力ギヤ172から第1出力ギヤ171に移ろうとするときに、第1切換ギヤ71の歯と第2出力ギヤ172の歯との面圧が大きくて、第1切換ギヤ71が第2出力ギヤ172から離れない場合もある。この場合、入力部77が第2駆動伝達位置P2に移動しても、第1切換ギヤ71が移動しないため、駆動伝達の切り換えができない。また、第2切換ギヤ72がフリーの状態から第3出力ギヤ173と噛合される際も、同様に、第2切換ギヤ72と第3出力ギヤ173とが上手く噛み合わない場合がある。そのため、本実施形態では、切換ギヤ71,72の駆動伝達が切り換えられる際に、切換ギヤ71,72と出力ギヤ171,173とを確実に噛み合わせるために、切換ギヤ71,72を所定回転量だけ往復回転させている。これにより、各ギヤの歯が互いに噛合可能に合わせられるため、或いは、各ギヤの歯と歯の面圧が解除されるため、各ギヤの駆動伝達の切り換えが円滑且つ確実に行われる。
【0068】
[本実施形態の作用・効果]
このようにギヤユニット110が構成されているため、図7(A)に示されるように、第1切換ギヤ71に重力以外の力が加えられていない場合は、自重によって第1切換ギヤ71が下方へ下がり、支軸73の外周面の上側と突部81とが当接した状態で第1切換ギヤ71が保持される。このとき、突部81は溝82に入り込んでいない。また、突部81には重力以外の負荷は加えられていない。したがって、第1切換ギヤ71は、ストレスなく支軸73の軸方向へ移動可能である。なお、図7(A)では、説明の便宜上、第1切換ギヤ71だけが断面図で示されている。
【0069】
一方、入力レバー74の入力部77が第1駆動伝達位置P1に配置され、第1切換ギヤ71が第2出力ギヤ172と噛合された状態にあるときに、ASFモータ65が駆動されると、図7(B)に示されるように、入力ギヤ74から第1切換ギヤ71に所定方向(例えばCCW方向)の回転力が伝達される。このとき、入力ギヤ74の歯が第1切換ギヤ71の歯を矢印88に示す方向(後方向)へ押圧する。また、第1切換ギヤ71から第2出力ギヤ172に回転力が伝達されるときは、給紙ローラ25による給送時の負荷や、給紙ローラ25の回転負荷、給紙ローラ25に至るまでの伝達機構の負荷などによって、第2出力ギヤ172の歯が第1切換ギヤ71の歯を矢印89に示す方向(後方向)へ押圧する。したがって、このような後方向の押圧力を受けることによって、図7(C)に示されるように、第1切換ギヤ71は、後方向へ押しつけられる。これによって、第1切換ギヤ71の突部81が支軸73の側部に設けられた溝82に没入し、その状態で保持される。このとき、図7(D)に示されるように、突部81が溝82に完全に没入した状態で、第1切換ギヤ71の軸孔71Aの内面と支軸73の外周面とが面接触する。つまり、後方向へ押しつけられた第1切換ギヤ71は、その軸孔71Aの内面が支軸73の外周面と面接触した状態で支軸73によって支持される。したがって、第1切換ギヤ71は、後方向へ強い負荷を受けたとしても、支軸73によって円滑に回転可能に支持される。また、突部81が溝82に入り込んでいるため、仮に第1切換ギヤ71が支軸73の軸方向へ予期せぬ力を受けて軸方向へ移動しても、突部81が溝82のいずれかの傾斜面(傾斜面83A又は傾斜面83B)に当接する。これにより、第1切換ギヤ71が軸方向へ移動しようとすることが妨げられる。つまり、第1切換ギヤ71は軸方向への移動が規制される。このため、給紙ローラ25を駆動させるための駆動力が入力ギヤ67から第1切換ギヤ71、第2出力ギヤ172を経て給紙ローラ25に駆動伝達される時に、第1切換ギヤ71に後方向への負荷がかかったとしても、第1切換ギヤ71が軸方向へずれなくなり、駆動伝達が途切れることがなくなる。
【0070】
また、溝82は傾斜面83A,83Bを有するため、給紙ローラ25を駆動させるための駆動力の駆動伝達が行われていない場合に突部81が溝82に入り込んでいても、上記傾斜面83A,83Bに沿って突部81が溝82の外へ円滑に案内される。そのため、第1切換ギヤ71は、支軸73の軸方向へ容易に移動可能である。なお、第1切換ギヤ71の噛合位置を第2出力ギヤ172から第1出力ギヤ171へ切り換える際に上述した往復回転が行われた場合に第1切換ギヤ71にかかる負荷は、給紙ローラ25に対する駆動伝達時にかかる負荷に比べて小さい。そのため、上記往復回転時においても、第1切換ギヤ71は、支軸73の軸方向へ容易に移動可能である。
【0071】
なお、上述の実施形態では、第1切換ギヤ71と支軸73との間に規制機構80を設けることとしたが、この規制機構80が第2切換ギヤ72と支軸73との間に設けられていてもよい。また、入力部77が第2駆動伝達位置P2又は第2駆動伝達位置P3(図6参照)に配置されたときに第1切換ギヤ71と第1出力ギヤ171とが噛み合う状態にあるときに、第1切換ギヤ71と支軸73との軸受け部に規制機構80が実現されていてもよい。この場合の規制機構80は、 図8に示されるように、第1切換ギヤ71の位置に対応する支軸73の外周面に上述した溝82を設けることで実現される。
【0072】
また、上述の実施形態では、支軸73に溝82を設け、第1切換ギヤ71の軸孔71Aに突部81を設けることとしたが、これとは逆に、図9(A)に示されるように、支軸73において溝82が設けられていた箇所に突部97を設け、軸孔71Aにおいて突部81が設けられていた箇所に溝98を設けた変形例を採用することも可能である。なお、この変形例では、非駆動伝達時における第1切換ギヤ71の軸方向への移動を円滑にするために、軸孔71Aの縁部が面取り加工されている。
【0073】
また、図9(B)に示されるように、第1切換ギヤ72が上記第1位置に配置されたときに、軸孔71Aの内面に対向する支軸73の外周面だけに溝101(本発明の第2溝の一例)を設ける変形例を採用することも可能である。この場合、溝101は、少なくとも軸孔71Aの軸方向の幅よりも大きい幅に形成されている。この構成であっても、上述したように駆動伝達時に第1切換ギヤ71が矢印88,89に示す方向(後方向)へ押しつけられると、軸孔71Aが溝101に入り込む。このため、軸孔71Aの縁部が溝101に引っ掛かり、第1切換ギヤ71が軸方向へ移動しようとすることが規制される。なお、この変形例では、非駆動伝達時における第1切換ギヤ71の軸方向への移動を円滑にするために、軸孔71Aの縁部と溝101の端部が面取り加工されている。
【0074】
また、図9(C)に示されるように、支軸73に2つの環状の突部103を設けることにより、上記溝101が形成された変形例を採用することも可能である。なお、この変形例では、非駆動伝達時における第1切換ギヤ71の軸方向への移動を円滑にするために、軸孔71Aの縁部が面取り加工されている。
【符号の説明】
【0075】
10・・・複合機
25・・・給紙ローラ
38・・・キャリッジ
65・・・ASFモータ
67,68・・・入力ギヤ
70・・・駆動切換機構
71・・・第1切換ギヤ
73・・・支軸
80・・・規制機構
81・・・突部
82・・・溝
83A,83B・・・傾斜面
101・・・溝
110・・・ギヤユニット
171・・・第1出力ギヤ
172・・・第2出力ギヤ
173・・・第3出力ギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部へ力を伝達する出力ギヤと、
上記出力ギヤの中心軸と平行な支軸と、
上記支軸に回転可能に支持されつつ、上記出力ギヤに噛み合う第1位置と上記第1位置から上記支軸の軸方向へ隔てられ上記出力ギヤに噛み合わない第2位置との間で移動可能に上記支軸に支持され、駆動源から伝達された回転力を受ける伝達ギヤと、
上記第1位置に配置された上記伝達ギヤと上記支軸との軸受け部に設けられ、上記伝達ギヤから上記出力ギヤへの駆動伝達時に上記支軸に垂直な方向の力を受けることにより、上記伝達ギヤを上記第1位置に位置決めさせるとともに上記支軸の軸方向への移動を規制する規制機構と、を具備するギヤ軸受け装置。
【請求項2】
上記規制機構は、上記伝達ギヤの回転方向へ延びる第1溝と上記伝達ギヤが上記第1位置に配置されたときに上記第1溝に対向するよう配置され上記第1溝に進入可能な突部とを備え、
上記伝達ギヤの軸受け穴の内面又は上記支軸の外周面のいずれか一方に上記第1溝が設けられ、いずれか他方に上記突部が設けられている請求項1に記載のギヤ軸受け装置。
【請求項3】
上記出力ギヤは、上記駆動源からの回転力を受ける上記伝達ギヤの入力点とは反対側の出力点で上記伝達ギヤと噛み合う位置に配置されており、
上記支軸の外周面に設けられた上記第1溝又は上記突部は、上記伝達ギヤの外周面における上記入力点と上記出力点との中間点に対応する部位に設けられている請求項2に記載のギヤ軸受け装置。
【請求項4】
上記伝達ギヤは、水平方向へ延びる上記支軸に支持されており、
上記入力点は、上記支軸の軸心を通る鉛直線と上記伝達ギヤの外周面とが交差する位置に設定されている請求項3に記載のギヤ軸受け装置。
【請求項5】
上記第1溝は、当該第1溝の底部へ向けて傾斜する傾斜面を有する請求項2から4のいずれかに記載のギヤ軸受け装置。
【請求項6】
上記規制機構は、上記支軸の外周面に設けられ、上記伝達ギヤが上記第1位置に配置されたときに上記伝達ギヤの軸受け穴の内面に対向するように配置され、少なくとも上記軸受け穴の幅よりも大きい第2溝を備える請求項1に記載のギヤ軸受け装置。
【請求項7】
上記出力ギヤは、上記駆動源からの回転力を受ける上記伝達ギヤの入力点とは反対側の出力点で上記伝達ギヤと噛み合う位置に配置されており、
上記支軸の外周面に設けられた上記第2溝は、上記伝達ギヤの外周面における上記入力点と上記出力点との中間点に対応する部位に設けられている請求項6に記載のギヤ軸受け装置。
【請求項8】
上記伝達ギヤは、水平方向へ延びる上記支軸に支持されており、
上記入力点は、上記支軸の軸心を通る鉛直線と上記伝達ギヤの外周面とが交差する位置に設定されている請求項7に記載のギヤ軸受け装置。
【請求項9】
上記第2溝は、上記支軸の外周面から当該第2溝の底部へ向けて傾斜する傾斜面を有する請求項6から8のいずれかに記載のギヤ軸受け装置。
【請求項10】
請求項1から7のいずれかに記載のギヤ軸受け装置と、
上記第1位置又は上記第2位置のいずれかに上記伝達ギヤを保持するように付勢する付勢部材と、
上記支軸の軸方向へ移動可能に上記支軸に設けられ、上記付勢部材の付勢力よりも大きい外力を受けることにより上記伝達ギヤを押圧しつつ上記軸方向へ移動して上記伝達ギヤを上記付勢部材による保持位置とは異なる位置へ移動させるレバー部材と、を具備するギヤ位置切換装置。
【請求項11】
請求項10に記載のギヤ位置切換装置と、
記録ヘッドを搭載して上記支軸の軸方向と同方向へ往復動されるキャリッジと、を具備し、
上記レバー部材は上記キャリッジの移動領域に交差するように上記キャリッジ側へ延出されており、移動する上記キャリッジが上記レバー部材に当接したときに上記付勢部材の付勢力よりも大きい外力が上記レバー部材に入力されるように構成された画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−68110(P2011−68110A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223469(P2009−223469)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】